説明

小型加速装置

【解決手段】
少なくとも1つのストリップ形状のブルームラインモジュールを備える小型線形加速器において、該ブルームラインモジュールは、第1及び第2の端部の間で伝播波面を案内し、第2の端部で出力パルスを制御する。各ブルームラインモジュールは、第1、第2及び大3の平坦コンダクターストリップを持ち、第1及び第2のコンダクターストリップの間に第1の誘電ストリップが配置され、第2及び第3のコンダクターストリップの間に第2の誘電ストリップが配置される。更に、小型線形加速器は、第2の平坦コンダクターストリップを高電位に帯電させるように接続された高電圧電源手段と、第2の平坦コンダクターストリップにおける前記高電位を、第1及び第3の平坦コンダクターストリップの少なくとも1つへと切り替えて、対応する該誘電ストリップにおいて伝播逆極性波面を伝達させるようにするための切り替え手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合衆国政府は、合衆国エネルギー省と、ローレンスリバモア研究所の作動のためのカリフォルニア大学との間の契約番号W−7405−ENG−48に準じる本発明において権利を有する。
【0002】
本出願は、ジョージ・J・キャポラソらによる「改善された小型加速器」と題された、2004年1月15日に出願された、仮出願番号60/536,943号における優先権を主張する。
【0003】
本発明は、線形加速器に係り、より詳しくは、誘電壁加速器と、絶縁壁に加速パルスを供給するため高い電場勾配で作動するパルス形成ラインと、に関する。
【背景技術】
【0004】
粒子加速器は、荷電粒子、例えば電子、陽子又は帯電した原子核を、原子核物理学者や素粒子物理学者により研究することができるように、該荷電粒子のエネルギーを増大させるため使用されている。高エネルギーの荷電粒子は、ターゲットとなる原子と衝突させるため加速され、その結果生じた生成物は、検出器を用いて観察される。非常に高いエネルギーでは、荷電粒子は、ターゲットの原子の原子核を破壊して他の粒子と相互作用することができる。このとき、物質の基本単位の性質及び振る舞いを明らかにする変換が生成される。粒子加速器は、核融合装置を開発しようとする努力並びに癌治療等の医療用途においても重要な道具である。
【0005】
荷電粒子を加速するため高速電気的パルスを発生する方法を提供するための粒子加速器の一つの型式は、カーダーに付与された米国特許番号5,757,146号に開示されており、カーダー特許では、切り替えられたとき高電圧を発生する一連に積み重ねられた円形モジュールからなる誘電壁式加速器(DWA)システムが示されている。これらのモジュールの各々は、非対称ブルームラインと称されており、米国特許番号2,465,840号に記載されており、該特許の内容はここで参照したことにより本願に組み込まれる。カーダー特許の図4A〜図4Bで最も良く理解することができるように、ブルームラインは、2つの異なる誘電層から構成される。各表面上で、誘電層の間には、2つの平行プレートの径方向伝達ラインを形成するコンダクターが存在している。当該構造の一方の側部は、低速ラインと称され、他方は、高速ラインと称されている。低速及び高速ラインの間の中央電極は、最初に高い電位に帯電される。2つのラインは逆極性を有するので、ブルームラインの内側直径(ID)に亘る正味の電圧は存在していない。表面フラッシュオーバー又は類似のスイッチにより当該構造の外側に亘って短絡回路を適用するとき、2つの逆極性波が開始され、該波はブルームラインのIDに向かって径方向内側に伝搬する。高速ラインにおける波は、低速ラインにおける波の到達前に当該構造のIDに到達する。高速波が構造のIDに到達したとき、当該ラインにおいてのみ反転する極性が存在し、非対称のブルームラインのIDに亘って正味の電圧を生じさせる。この高電圧は、低速ラインにおける波がIDに到達するまで持続する。加速器の場合には、荷電粒子ビームは、この期間の間に注入され、加速される。この態様において、カーダー特許におけるDWA加速器は、軸方向の加速場を提供し、当該場は、高い加速勾配を達成するため当該構造全体に亘って持続する。
【0006】
しかし、例えばカーダーのDWAのような現存する誘電壁式加速器は、幾つかの固有の問題を持っている。当該問題は、ビーム品質及び性能に影響を及ぼし得る。特に、幾つかの問題は、カーダーのDWAのディスク形状にあり、この形状は、装置全体を、加速荷電粒子の意図した使用に最適な状態よりも劣った状態にさせる。中央孔を備える平坦なコンダクターは、伝搬する波面を、当該中央孔へと径方向に収束させる。そのような形状では、波面は、出力パルスを歪め得る様々なインピーダンスに遭遇し、画定した時間依存のエネルギーゲインが電場を横断する荷電粒子ビームに分与されることを妨げる。その代わりに、当該構造により形成された電場を横断する荷電粒子ビームは、時間変動エネルギーゲインを受け取り、これは、加速器システムが当該ビームを適切に輸送することを防止し、当該ビームの使用を限定させる。
【0007】
更に加えて、当該構造のインピーダンスは、要求されたものよりも遙かに低くなり得る。例えば、要求された加速勾配を維持しつつミリアンペア以下のオーダーでビームを発生することがしばしば非常に望ましい。カーダー特許のディスク形状のブルームライン構造は、過剰レベルの電気的エネルギーをシステム内に蓄積させかねない。明らかな電気的非効率を超えて、システムが始動されるときビームに分配されない任意のエネルギーは、当該構造内に残り得る。そのような過剰エネルギーは、装置全体の性能及び信頼性に有害な効果を持ち、システムの時期尚早な故障を導きかねない。
【0008】
中央孔を備えた平坦なコンダクターに固有なもの(例えばディスク形状)は、当該電極の非常に延長された外周部である。その結果、当該構造を始動するための並列スイッチの数は、当該周辺部により決定される。例えば、10nsパルスより小さいパルスを生成するため使用される6インチ直径の装置では、最小でも、ディスク形状の非対称ブルームライン層当たり、10個のスイッチが設置されている。この問題は、このディスク形状のブルームライン構造の出力パルス長さが中央孔からの径方向の範囲に直接関連しているが故に長い加速パルスが要求されているとき、更に大きくなる。かくして、長いパルス幅が要求されたとき、これに対応してスイッチ箇所の増大が要求される。スイッチを始動する好ましい実施例は、レーザー又は他の類似の装置の使用であるので、非常に複雑な分配システムが要求される。その上、長いパルス構造は、製作が困難である大きな誘電シートを必要としている。このことは、そのような構造の重量も増大させかねない。例えば、本構成において、50nsのパルスを分配する装置は、メートル当たり数トン程度の重量となり得る。長いパルスによる欠点のうち幾つかは、非対称ブルームラインにおける3つのコンダクターにおいて螺旋溝を使用することにより軽減することができるが、これは、作動を禁止し得る破壊的な層間連結を生じさせかねない。即ち、ステージにつき、相当減少したパルス振幅(及び従ってエネルギー)が、当該構造の出力において出現し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、ブルームラインのコンセプトを同様に使用するが、パルス形状を制御し、これにより、画定された時間依存エネルギーゲインを電場を移動する荷電粒子ビームに分与する能力を有する線形粒子加速器のための改善した幾何学及び構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ブルームラインモジュールを備える小型線形加速器を備え、前記ブルームラインモジュールは、グラウンド電位に接続された第1の端部及び加速軸に隣接する第2の端部を有する第1の平坦コンダクターストリップと、前記第1の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第2の平坦コンダクターストリップであって、該第2の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位と高電圧電位との間を切り替え可能な第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第2の平坦コンダクターストリップと、前記第2の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第3の平坦コンダクターストリップであって、該第3の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位に接続された第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第3の平坦コンダクターストリップと、前記第1の平坦コンダクターストリップと前記第2の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第1の誘電定数を備えた第1の誘電材料から構成された第1の誘電ストリップと、前記第2の平坦コンダクターストリップと前記第3の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第2の誘電定数を備えた第2の誘電材料から構成された第2の誘電ストリップと、を備え、前記ブルームラインモジュールのストリップ構成は、前記第2の端部で生成された出力パルスを制御するため前記第1の端部から前記第2の端部まで伝播する電気信号波を案内する。
【0011】
本発明の別の態様は、ブルームラインモジュールを備える小型線形加速器を備え、前記ブルームラインモジュールは、グラウンド電位に接続された第1の端部及び加速軸に隣接する第2の端部を有する第1の平坦コンダクターストリップと、前記第1の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第2の平坦コンダクターストリップであって、該第2の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位と高電圧電位との間を切り替え可能な第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第2の平坦コンダクターストリップと、前記第2の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第3の平坦コンダクターストリップであって、該第3の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位に接続された第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第3の平坦コンダクターストリップと、前記第1の平坦コンダクターストリップと前記第2の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第1の誘電定数を備えた第1の誘電材料から構成された第1の誘電ストリップと、前記第2の平坦コンダクターストリップと前記第3の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第2の誘電定数を備えた第2の誘電材料から構成された第2の誘電ストリップと、前記第2の平坦コンダクターストリップを高電位に帯電させるように接続された高電圧電源手段と、前記第2の平坦コンダクターストリップにおける前記高電位を、前記第1及び第3の平坦コンダクターストリップの少なくとも1つへと切り替えて、対応する該誘電ストリップにおいて伝播逆極性波面を伝達させるようにするための切り替え手段と、を備え、前記ブルームラインモジュールのストリップ構成は、前記第2の端部で生成された出力パルスを制御するため前記第1の端部から前記第2の端部まで伝播する電気信号波を案内する。
【0012】
添付図面は、開示の一部に組み込まれ、該一部を形成する。
【実施例】
【0013】
ここで図面を参照すると、図1及び図2は、本発明の第1の実施例に係るコンパクト線形加速器を示している。該加速器は、全体として10で示されており、スイッチ18に接続された単一のブルームラインモジュール36を備えている。コンパクト加速器は、スイッチ18を介してブルームラインモジュール36に高電位を提供する適切な高電圧供給部(図示せず)も備えている。一般に、ブルームラインモジュールは、ストリップ構成、即ち、長い幅形状を持ち、典型的には、該形状は均一幅であるが、必ずしも均一幅である必要はない。図1及び図2に示された特定のブルームラインモジュール11は、第1の端部11と第2の端部12との間に延在すると共に長さlに比較して比較的狭い幅w(図2、4)を有する細長いビーム又は厚板状直線形態を持っている。ブルームラインモジュールのこのストリップ形状の構成は、第1の端部11から第2の端部12まで伝播する電気信号波を案内し、これによって第2の端部で出力パルスを制御するように作動する。特に、波面の形状は、モジュールの幅を適切に構成することにより、例えば、図6に示されるように幅をテーパー状に形成することにより、制御することができる。ストリップ形状に形成された形態は、カーダーのディスク形状モジュールに関して「発明の背景」欄で説明したように、本発明のコンパクト加速器が、中央孔に収束するように径方向に向けられたとき発生し得る、波面が伝播する際に変動するインピーダンスを克服することを可能にする。この態様において、平坦な出力(電圧)パルスは、パルスを歪めること無くモジュール10のストリップ又はビーム状形態により生成することができ、これにより、粒子ビームが時間変動するエネルギーゲインを受け取ることを防止することができる。本明細書及び請求の範囲で使用されるとき、第1の端部11は、スイッチ、例えばスイッチ19に接続された当該端部として特徴付けられ、第2の端部12は、粒子加速のための出力パルス領域等の負荷領域に隣接した端部として特徴付けられる。
【0014】
図1及び2に示されるように、基本ブルームラインモジュール10の幅狭いビーム状構成は、薄いストリップへと成形され、細長いがより厚いストリップとしても示されている誘電材料により分離されている、3つの平坦コンダクターを備えている。特に、第1の平坦コンダクターストリップ13及び中央の第2の平坦コンダクターストリップ15は、それらの間の空間を充電している第1の誘電材料14により分離されている。第2の平坦コンダクターストリップ15及び第3の平坦コンダクターストリップ16は、それらの間の空間を充電している第2の誘電材料17により分離されている。好ましくは、誘電材料により作られた分離は、平坦コンダクターストリップ13、15及び16を図示のように互いに平行となるように位置決めする。第3の誘電材料19は、平坦コンダクターストリップ及び誘電ストリップ13〜17に接続され、これらの端部を覆うものとして示されている。第3の誘電材料19は、波を結合するように作用し、パルス化した電圧のみが真空壁を横切ることを可能にし、かくして、応力が当該壁に適用される時間を減少し、より高い勾配さえも可能にしている。それは、波を変換する、即ち、電圧を設定し、加速器に該電圧を印加する前にインピーダンスを変化させるための領域として使用することもできる。かくして、第3の誘電材料19及び第2の端部12は、一般に、矢印20により示された負荷領域に隣接して示されている。特に、矢印20は、粒子加速器の加速軸を表し、粒子加速の方向を指し示している。加速の方向は、「発明の背景」欄に説明されているように、2つの誘電ストリップを通して、高速及び低速の伝達ラインの経路に依存していると認められる。
【0015】
図1では、スイッチ18が、各々の第1の端部、即ちモジュール36の第1の端部11において平坦なコンダクターストリップ13、15及び16に接続された状態で示されている。当該スイッチは、外側の平坦なコンダクターストリップ13、16を、最初にグラウンド電位に接続し、中央のコンダクターストリップ15を高電圧源(図示せず)に接続するように作用する。スイッチ18は、ブルームラインモジュールを通して伝搬する電圧波面を伝達させ、第2の端部で出力パルスを生成するように、第1の端部で電気的短絡を適用するように作動される。特に、スイッチ18は、ブルームラインモジュールが対称的又は非対称的作動のいずれかのために構成されるかに応じて、第1の端部から第2の端部まで絶縁耐力部の少なくとも1つで伝搬する逆極性の波面を伝達させることができる。非対称動作のために構成されたとき、図1及び図2に示されるように、ブルームラインモジュールは、異なる誘電定数と、カーダー特許に記載されたものに類似した態様で、誘電層14、17に関して異なる誘電定数と厚さ(d≠d)を備えている。ブルームラインの非対称的動作は、誘電層を通して異なる伝播波速度を発生させる。しかし、ブルームラインモジュールが、図12に示されるように対称的動作に対して構成されているとき、誘電率95、98は、同じ誘電定数を持ち、幅及び厚さも同じである(d=d)。加えて、図12に示されるように、磁性材料も、波面の伝播が当該ストリップ内で抑制されるように第2の誘電ストリップ98に近接して配置されている。この態様では、スイッチは、第1の誘電ストリップ95のみにおいて伝播逆極性波面を伝達させるように構成される。スイッチ18は、例えばガス吐出閉鎖スイッチ、表面フラッシュオーバー閉鎖スイッチ、ソリッドステートスイッチ、光伝導性スイッチ等、非対称又は対象のブルームラインモジュールの動作に適切なスイッチであることが認められよう。更に、スイッチ及び誘電材料の種類/寸法の選択が、メートル当たり20メガボルトを超えた勾配を始めとした様々な加速勾配で小型加速器が作動することを可能にするように適切に選択することができる。しかし、より低い勾配は、設計事項としても達成可能である。
【0016】
一つの好ましい実施例では、第2の平坦なコンダクターは、第1の誘電ストリップを介して特徴的なインピーダンスZ=k(w、d)により画定された厚さを有する。kは、第1の誘電材料の誘電率に対する透磁率の比率の平方根により定義された第1の誘電ストリップの第1の誘電定数であり、gは、隣接するコンダクターの幾何学的な効果により定義された関数であり、dは、第1の誘電ストリップの厚さである。第2の誘電ストリップは、第2の誘電ストリップを介して特徴的なインピーダンスZ=k(w、d)により画定された厚さを有する。この場合には、kは、第2の誘電ストリップの第2の誘電定数であり、gは、隣接するコンダクターの幾何学的な効果により定義された関数であり、wは、第2の平坦コンダクターストリップの幅であり、dは、第2の誘電ストリップの厚さである。この場合には、非対称のブルームラインモジュールに要求された異なる誘電率が異なるインピーダンスをもたらすので、該インピーダンスは、連係するラインの幅を調整することにより一定に保持される。かくして、負荷へのより大きいエネルギー輸送がもたらされる。
【0017】
図4及び図5は、第1及び第2の平坦コンダクターストリップ41の幅よりも狭い幅を備えた第2の平坦コンダクターストリップ42、並びに、第1及び第2の誘電ストリップ44、45を有するブルームラインモジュールの一実施例を示している。この特定の構成では、「発明の背景」欄で説明した破壊的な層間連結は、電極42が前後のブルームラインにエネルギーを容易に連結することができないので、電極41及び43の延長により抑制される。更には、モジュールの別の実施例は、出力パルス形状を制御し、成形するように、長さ方向lに沿って変化する幅を有する(図2、図4参照)。これは、モジュールが中央負荷領域に向かって径方向内側に延在するとき、幅のテーパー形状を示す図6において示されている。別の好ましい実施例では、ブルームラインモジュールの誘電材料及び寸法は、Zが実質的にZに等しいように選択される。前述したように、このインピーダンスのマッチングは、振動的な出力を形成する波の形成を防止する。
【0018】
好ましくは、非対称的ブルームライン構成では、第2の誘電ストリップ17は、例えば3:1等の、第1の誘電ストリップ14よりも実質的に小さい伝播速度を有する。ここで、伝播速度は、v及びvにより各々定義され、v=(με−0.5及びv=(με−0.5であり、透磁率μ及び誘電率εは、第1の誘電材料の材料定数であり、透磁率μ及び誘電率εは、第2の誘電材料の材料定数である。このことは、誘電定数、即ちμεを有する材料を、第2の誘電ストリップに対して第1の誘電ストリップの誘電定数よりも大きい定数μεを選択することにより達成することができる。図1に示されるように、例えば、第1の誘電ストリップの厚さは、dとして示され、第2の誘電ストリップの厚さは、dとして示されており、図示のdはdよりも大きい。dをd1よりも大きく設定することにより、異なる間隔と異なる誘電定数との組み合わせは、第2の平坦なコンダクターストリップ15の両側において、同じ特徴的なインピーダンスZをもたらす。特徴的なインピーダンスは、両半部分において同じであってもよいが、各々の半部分を通した信号の伝播速度は必ずしも同じである必要はないことを記載することができる。誘電ストリップの誘電定数及び厚さが、異なる伝播速度をもたらすように適切に選択することができるが、本発明の細長いストリップ形状の構成及び形態は、非対称のブルームラインのコンセプトを、異なる誘電定数及び厚さを有する誘電体を利用する必要は必ずしも無い。制御された波面の利点が本発明のブルームラインモジュールの細長いビーム状の幾何学及び形態により可能とされ、高い加速勾配を生成する特定の方法によって可能とされたのではないので、別の実施例は、対称的なブルームライン動作を含む図12に関して説明されたものなどのような代替のスイッチング構成を用いることができる。
【0019】
本発明の小型加速器は、代替例として、互いに整列した状態で積み重ねられた2つ以上の細長いブルームラインモジュールを有するように構成することができる。例えば、図3は、互いに整列して一緒に積み重ねられた2つのブルームラインモジュールを有する小型加速器21を示している。2つのブルームラインモジュールは、平坦なコンダクターストリップ32が両モジュールに共通である状態で平坦なコンダクターストリップと誘電ストリップ24〜32との交互構成のスタックを形成する。コンダクターストリップは、積み重ねモジュールの第1の端部22において、スイッチ33に接続される。誘電壁は、積み重ねモジュールの第2の端部23を覆う位置34において、加速軸矢印35により示された負荷領域に隣接して設けられる。
【0020】
本発明の小型加速器は、中央の負荷領域を周辺に沿って取り囲むように配置された少なくとも2つのブルームラインモジュールを備えて構成されていてもよい。更には、各々の周辺に沿って取り囲んだモジュールは、第1のモジュールと整列するように積み重ねられた1つ以上の追加のブルームラインモジュールを更に備えていてもよい。図6は、例えば、2つのスタック中央負荷領域56を取り囲んだ状態で、2つのブルームラインモジュールスタック51及び53を有する小型加速器50の実施例を示している。各々のモジュールスタックは、4つの独立に作動するブルームラインモジュール(図7)のスタックとして示され、連係するスイッチ52、54に別々に接続されている。互いに整列するブルームラインモジュールの積み重ねは、加速軸に沿ったセグメントの遮蔽率を増大させることが認められよう。
【0021】
図8及び図9では、小型加速器の別の実施例が、参照番号60で示されており、これは、65で示されたリング電極により各々の第2の端部で接続された、2つ以上のコンダクターストリップ、例えば62、63を有する。リング電極構成は、図6及び図7等の構成で生じ得る任意の方位角の平均化を克服するように作動し、1つ以上の周辺に沿って取り囲むモジュールが完全に中央負荷領域を取り囲むこと無しに中央負荷領域に向かって延在している。図9で最も良く理解することができるように、61及び62により表された各モジュールスタックは、連係するスイッチ62及び64に各々接続されている。更には、図8及び図9は、リング電極の内側直径に沿って配置された絶縁スリーブ68を示している。代替例として、別個の絶縁材料69がリング電極65の間に配置された状態で示されている。コンダクターストリップの間で使用される誘電材料に対する代替例として、伝導性フォイル66と絶縁性フォイル66’の交互層を利用してもよい。代替層は、モノリシックな誘電ストリップの代わりに薄層状構成として形成されていてもよい。
【0022】
図10及び図11は、小型加速器の2つの追加の実施例を示している。該実施例は、図10では参照番号70で示され、図11では参照番号80で示されており、各々は、非線形ストリップ形状の構成を備えたブルームラインモジュールを有している。この場合には、非線形ストリップ形状の形態は、曲線状又は蛇行状の形態として示されている。図10では、加速器70は、周方向に中央領域を取り囲みながら中央領域に向かって延在するように示された、4つのモジュール71、73、75及び77を備えている。各モジュール71、73、75及び77は、連係するスイッチ72、74、76及び78に各々接続されている。この構成から理解することができるように、各モジュールの第1の端部及び第2の端部の間の直接的な径方向距離は、非線形モジュールの長さ全体よりも小さく、電気的な伝達経路を増大させる一方で加速器の小型化を可能にしている。図11は、図10と同様の構成を示し、この加速器80は、中央領域を周方向に取り囲みながら中央領域に向かって延在するように示された4つのモジュール81、83、85及び87を持っている。各々のモジュール81、83、85及び87は、連係するスイッチ82、84、86及び88に各々接続されている。更にイは、モジュールの径方向内側の端部、即ち第2の端部は、リング電極89を使って互いに接続されており、図8で説明した利点を奏している。
【0023】
特定の作動シーケンス、材料、温度、パラメータ及び特定の実施例が説明され及び又は図示されたが、本願発明はこのような例に限定されるものではない。多数の変更及び変形が当業者には明らかとなり、本願発明は添付された請求の範囲によってのみ制限されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例に係るコンパクト加速器の単一ブルームラインモジュールの側面図である。
【図2】図2は、図1の単一ブルームラインモジュールの頂面図である。
【図3】図3は、第2の実施例に係る、2つのブルームラインモジュールを一緒に積み重ねさせたコンパクト加速器の側面図である。
【図4】図4は、モジュールの他の層よりも小さい幅を備えた中央コンダクターストリップを有する、本発明の第3の実施例に係る単一ブルームラインモジュールの頂面図である。
【図5】図5は、図4のライン4に沿って取られた拡大断面図である。
【図6】図6は、2つのブルームラインモジュールが、中央加速領域を周方向に取り囲むと共に該中央加速領域に向って径方向に延在する状態で示された、別の実施例に係るコンパクト加速器の平面図である。
【図7】図7は、図6のライン7に沿って取られた断面図である。
【図8】図8は、2つのブルームラインモジュールが、中央加速領域を周方向に取り囲むと共に該中央加速領域に向って径方向に延在し、一つのモジュールの平坦コンダクターストリップがリング電極により他のモジュールの対応する平坦コンダクターストリップに接続された状態で示された、別の実施例に係るコンパクト加速器の平面図である。
【図9】図9は、図8のライン9に沿って取られた断面図である。
【図10】図10は、連係するスイッチに各々接続された4つの非線形ブルームラインモジュールを有する、本発明の別の実施例の平面図である。
【図11】図11は、図10に類似しており、各々の第2の端部に4つの非線形ブルームラインモジュールの各々を接続するリング電極を備える、本発明の別の実施例の平面図である。
【図12】図12は、対称的なブルームライン動作のため、同じ誘電率及び同じ厚さの第1の誘電ストリップ及び第2の誘電ストリップを有する、図1に類似した本発明の別の実施例の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルームラインモジュールを備える小型線形加速器であって、
前記ブルームラインモジュールは、
グラウンド電位に接続された第1の端部及び加速軸に隣接する第2の端部を有する第1の平坦コンダクターストリップと、
前記第1の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第2の平坦コンダクターストリップであって、該第2の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位と高電圧電位との間を切り替え可能な第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第2の平坦コンダクターストリップと、
前記第2の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第3の平坦コンダクターストリップであって、該第3の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位に接続された第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第3の平坦コンダクターストリップと、
前記第1の平坦コンダクターストリップと前記第2の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第1の誘電定数を備えた第1の誘電材料から構成された第1の誘電ストリップと、
前記第2の平坦コンダクターストリップと前記第3の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第2の誘電定数を備えた第2の誘電材料から構成された第2の誘電ストリップと、
を備え、
前記ブルームラインモジュールのストリップ構成は、前記第2の端部で生成された出力パルスを制御するため前記第1の端部から前記第2の端部まで伝播する電気信号波を案内する、小型線形加速器。
【請求項2】
前記第2の平坦コンダクターストリップを高電位に帯電させるように接続された高電圧電源手段と、
前記第2の平坦コンダクターストリップにおける前記高電位を、前記第1及び第3の平坦コンダクターストリップの少なくとも1つへと切り替えて、対応する該誘電ストリップにおいて伝播逆極性波面を伝達させるようにするための切り替え手段と、
を更に備える、請求項1に記載の小型線形加速器。
【請求項3】
前記ブルームラインモジュールは、非線形でストリップ形状の形態を有する、請求項1に記載の小型線形加速器。
【請求項4】
前記第1のモジュールと整列した状態で積み重ねられた少なくとも1つの追加のブルームラインモジュールを更に備える、請求項1に記載の小型線形加速器。
【請求項5】
少なくとも1つの追加のブルームラインモジュールを更に備え、該モジュールは、前記加速軸のセグメントを周方向に取り囲み、周方向に取り囲む各々のモジュールは伝播逆極性波面を各々のモジュールを通して伝達させるため連係する切り替え手段に接続される、請求項1に記載の小型線形加速器。
【請求項6】
前記周方向に取り囲むモジュールの各々と整列した状態で積み重ねられた少なくとも1つの追加のブルームラインモジュールを更に備え、該積み重ねられた追加のモジュールは、前記加速軸の隣接するセグメントを周方向に取り囲む、請求項5に記載の小型線形加速器。
【請求項7】
前記周方向に取り囲むモジュールは、各々、非線形でストリップ形状の形態を有する、請求項5に記載の小型線形加速器。
【請求項8】
前記周方向に取り囲むモジュールの前記第1、第2及び第3の平坦コンダクターストリップは、各々の第2の端部において対応する第1、第2及び第3のリング電極に接続され、該リング電極は、前記加速軸の前記セグメントと連係する前記中央領域の周囲を取り囲んでいる、請求項5に記載の小型線形加速器。
【請求項9】
前記リング電極の内側直径に隣接した絶縁スリーブを更に備える、請求項8に記載の小型線形加速器。
【請求項10】
前記リング電極の間に絶縁スリーブを更に備える、請求項8に記載の小型線形加速器。
【請求項11】
前記第2の平坦コンダクターストリップは、式Z=k(w、d)により画定された幅wを持ち、前記第2の誘電ストリップは、式Z=k(w、d)により画定された厚さdを有する、請求項1に記載の小型線形加速器。
【請求項12】
はZに実質的に等しい、請求項11に記載の小型線形加速器。
【請求項13】
前記第2の平坦コンダクターストリップの幅wは、前記出力パルス形状を制御するように、該ストリップの長さlに沿って変化する、請求項11に記載の小型線形加速器。
【請求項14】
前記第2の平坦コンダクターストリップの幅wは、該ストリップの前記第2の端部に向かって先細に形成されている、請求項13に記載の小型線形加速器。
【請求項15】
少なくとも1つの追加のブルームラインモジュールを更に備え、該追加のブルームラインモジュールは、他のブルームラインモジュールと整列した状態に積み重ねられている、請求項13に記載の小型線形加速器。
【請求項16】
少なくとも1つの追加のブルームラインモジュールを更に備え、該追加のブルームラインモジュールは、前記加速軸のセグメントを周方向に取り囲み、各々周方向に取り囲むモジュールは、伝播逆極性波面を各々のモジュールを通して伝達させるための連係する切り替え手段に接続されている、請求項13に記載の小型線形加速器。
【請求項17】
前記周方向に取り囲むモジュールの各々と整列した状態で積み重ねられた少なくとも1つの追加のブルームラインモジュールを更に備え、これによって、該追加で積み重ねられたモジュールは、前記加速軸の隣接するセグメントを周方向に取り囲む、請求項16に記載の小型線形加速器。
【請求項18】
前記周方向に取り囲むモジュールは、非線形でストリップ形状の形態を有する、請求項16に記載の小型線形加速器。
【請求項19】
前記周方向に取り囲むモジュールは、各々の第2の端部において対応する第1、第2及び第3のリング電極に接続され、該リング電極は、前記加速軸の前記セグメントと連係する前記中央領域の周囲を取り囲んでいる、請求項16に記載の小型線形加速器。
【請求項20】
前記リング電極の内側直径に隣接した絶縁スリーブを更に備える、請求項19に記載の小型線形加速器。
【請求項21】
前記リング電極の間に絶縁スリーブを更に備える、請求項19に記載の小型線形加速器。
【請求項22】
少なくとも1つの誘電ストリップは、伝導性フォイル及び絶縁性フォイルの交互層を有する薄層構造を備えている、請求項1に記載の小型線形加速器。
【請求項23】
少なくとも1つの誘電ストリップは、伝導性フォイル及び絶縁性フォイルの交互層を有する薄層構造を備えている、請求項13に記載の小型線形加速器。
【請求項24】
前記ストリップにおいて波面の伝播を抑制するように、少なくとも1つの誘電ストリップに隣接した電磁気的材料を更に備える、請求項1に記載の小型線形加速器。
【請求項25】
前記ストリップにおいて波面の伝播を抑制するように、少なくとも1つの誘電ストリップに隣接した電磁気的材料を更に備える、請求項13に記載の小型線形加速器。
【請求項26】
ブルームラインモジュールを備える小型線形加速器であって、
前記ブルームラインモジュールは、
グラウンド電位に接続された第1の端部及び加速軸に隣接する第2の端部を有する第1の平坦コンダクターストリップと、
前記第1の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第2の平坦コンダクターストリップであって、該第2の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位と高電圧電位との間を切り替え可能な第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第2の平坦コンダクターストリップと、
前記第2の平坦コンダクターストリップに平行に隣接する第3の平坦コンダクターストリップであって、該第3の平坦コンダクターストリップは、グラウンド電位に接続された第1の端部と、前記加速軸に隣接した第2の端部と、を有する、前記第3の平坦コンダクターストリップと、
前記第1の平坦コンダクターストリップと前記第2の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第1の誘電定数を備えた第1の誘電材料から構成された第1の誘電ストリップと、
前記第2の平坦コンダクターストリップと前記第3の平坦コンダクターストリップとの間の空間を満たし、且つ、第2の誘電定数を備えた第2の誘電材料から構成された第2の誘電ストリップと、
前記第2の平坦コンダクターストリップを高電位に帯電させるように接続された高電圧電源手段と、
前記第2の平坦コンダクターストリップにおける前記高電位を、前記第1及び第3の平坦コンダクターストリップの少なくとも1つへと切り替えて、対応する該誘電ストリップにおいて伝播逆極性波面を伝達させるようにするための切り替え手段と、
を備え、
前記ブルームラインモジュールのストリップ構成は、前記第2の端部で生成された出力パルスを制御するため前記第1の端部から前記第2の端部まで伝播する電気信号波を案内する、小型線形加速器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−518248(P2007−518248A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549689(P2006−549689)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/001548
【国際公開番号】WO2005/072028
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】