説明

小型反応器用撹拌装置

【課題】延長シャフトと撹拌シャフトの空回りを防止でき且つ取り外しが容易な小型反応器用撹拌装置を提供する。
【解決手段】撹拌シャフトと翼とからなる小型反応器用撹拌翼と、延長シャフトと、前記小型反応器用撹拌翼の撹拌シャフトを通すことができる筒をなし、該筒には筒の軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピンを通すことができる孔が設けられている接続治具と、延長シャフト及び接続治具のそれぞれの接続部位に被せ両者を接続することができる弾性体チューブとからなり、撹拌シャフトの接続部位にはそれの軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピンを通すことができる貫通孔が在り、撹拌シャフトを接続治具の筒の中に通したときに接続治具の留めピン用孔と撹拌シャフトの留めピン用貫通孔とに留めピンを挿し通して撹拌シャフトと接続治具とが接続できる小型反応器用撹拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型反応器用撹拌装置に関する。詳細には、本発明は、延長シャフトと撹拌シャフトの空回りを防止でき、且つ撹拌シャフトの取り外しが容易な小型反応器用撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学反応実験においては、反応器に仕込まれた反応液を、モーターに接続された撹拌翼で撹拌して、化学反応をさせることがある。
撹拌翼は通常撹拌シャフトと翼とが一体となっている。モーターに撹拌シャフトを直接に接続することもあるが、化学反応実験の効率化のために、撹拌シャフトとモータとの間に延長シャフトを介在させ、延長シャフトと撹拌シャフトを軸継手で接続することが行われる。
軸継手には、2枚の円板(フランジ)を複数本のボルトで固定する形式のフランジ軸継手、2本の軸の間にゴムなどの軟質材料が挟まれる構造のゴム・樹脂軸継手、軸の継角度を自在に変えることができるユニバーサルジョイントなどが知られている。これらのうちフランジ軸継手やユニバーサルジョイントは取り外しに手間が掛かるので化学反応実験には適さない。
【0003】
ゴム・樹脂軸継手としては、弾性体チューブが化学反応実験においてよく使われる。この弾性体チューブを延長シャフトと撹拌シャフトのそれぞれの接続部位に被せることによって両者を取り外し自在に接続できる。弾性体チューブは、衝撃的な荷重を吸収することができるので化学反応実験において頻繁に利用される。弾性体チューブでは、高い粘度の反応液を撹拌する場合に、弾性体チューブに延長シャフトと撹拌シャフトのそれぞれの接続部位を深く差し込み、弾性体チューブと延長シャフトおよび撹拌シャフトとの間の滑りで空回りしないようにされる。ところが、弾性体チューブに、延長シャフトおよび撹拌シャフトを深く差し込むと取り外しが困難になり、無理な力を掛けて外そうとすると力が余ってフラスコなどの反応器を破損するおそれがある。
なお、記載すべき先行技術文献情報がないので、特許文献等の記載をしていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、延長シャフトと撹拌シャフトの空回りを防止でき、且つ撹拌シャフトの取り外しが容易な小型反応器用撹拌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、撹拌シャフトと翼とからなる小型反応器用撹拌翼と、モータからの回転力を伝えることができる延長シャフトと、前記小型反応器用撹拌翼の撹拌シャフトを通すことができる筒をなし、該筒には筒の軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピンを通すことができる孔が設けられている接続治具と、延長シャフト及び接続治具のそれぞれの接続部位に被せ両者を接続することができる弾性体チューブとからなり、前記撹拌シャフトの接続部位には撹拌シャフトの軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピンを通すことができる貫通孔が在り、撹拌シャフトを接続治具の筒の中に通したときに接続治具の留めピン用の孔と撹拌シャフトの留めピン用の貫通孔とに少なくとも一本の留めピンを軸に対して直角でない角度で挿し通して、前記撹拌シャフトと接続治具とが接続できる、小型反応器用用撹拌装置を用いることによって、延長シャフトと撹拌シャフトの空回りを防止でき、且つ取り外しが容易になることを見出した。本発明は、この知見に基づきさらに検討することによって完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明の小型反応器用撹拌装置は、延長シャフトと撹拌シャフトの空回りを防止でき、且つ撹拌シャフトの取り外しが容易である。その結果、化学反応操作の効率と安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の小型反応器用撹拌装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の小型反応器用撹拌装置の一実施形態を示す図である。
本発明の小型反応器用撹拌装置は、小型反応器用撹拌翼と、延長シャフトと、接続治具と、弾性体チューブとからなるものである。本発明において小型反応器は、例えば、実験室規模で用いられる反応器である。小型反応器はその規模が小さいだけである。従って、小型反応器は、実験用反応器に限られず、医薬品や遺伝子などの少量生産に用いられる工業用反応器も含む。
延長シャフト8は、モータからの回転力を伝えることができるものであれば特に制限されない。延長シャフトの長さおよび太さは、化学反応操作の規模に応じて適宜選択できる。
【0008】
弾性体チューブ7は、延長シャフト及び接続治具のそれぞれの接続部位に被せ両者を接続することができるものである。弾性体チューブは、延長シャフト8の外径および接続治具4の外径に適合する内径を有するものであれば、その大きさは特に限定されない。弾性体チューブの内径が延長シャフトの外径および接続治具の外径に対して太すぎる場合は、図1のごとく拡径部9を延長シャフトおよび/または接続治具に設けることができる。拡径部9は、径が太くなるものであれば特に限定されず、例えば、粘着テープをシャフト等に捲回することによって得ることができる。弾性体チューブを介在させることによって、モーターの回転開始時または回転停止時の衝撃的荷重や、反応器内において撹拌翼が何らかの原因で障害物に衝突したときなどの衝撃的荷重を吸収できる。
【0009】
小型反応器用撹拌翼は、翼1と撹拌シャフト2とからなるものである。図2は図1に示した小型反応器用撹拌装置に用いられる小型反応器用撹拌翼を示した図である。翼1と撹拌シャフト2とは一体成形されたものであってもよいし、ヒンジ等で撹拌シャフトに翼が接続されているものであってもよい。翼1は求められる撹拌状態に応じて、公知の形状の撹拌翼の中から選択することができる。
撹拌シャフト2の接続部位には撹拌シャフトの軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピン3を通すことができる貫通孔11が設けられている。貫通孔11が軸に対して直角でない角度で穿たれていると、撹拌シャフトの回転による遠心力で留めピンが抜けることを防ぐことができる。
【0010】
接続治具4は、前記小型反応器用撹拌翼の撹拌シャフト2を通すことができる筒をなしている。筒の内径は撹拌シャフト2の外径に適合するものであれば特に限定されない。筒の長さは特に制限されない。筒の弾性体チューブ側の外径は、弾性体チューブの内径に適合するものであれば特に制限されない。
該筒には筒の軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピンを通すことができる孔5が設けられている。孔5の軸に対する角度は、前記撹拌シャフトに設けた貫通孔11の軸に対する角度に合わせる。これによって、撹拌シャフトを接続治具の筒の中に通したときに接続治具の留めピン用の孔と撹拌シャフトの留めピン用の貫通孔とに少なくとも一本の留めピンを軸に対して直角でない角度で挿し通して、前記撹拌シャフトと接続治具とが接続できる。
【0011】
本発明では留めピンの抜き差しによって、撹拌シャフトを接続治具に接続したり、切り離したりすることが、容易にできるので、弾性体チューブの空回りを防ぐために該チューブにシャフトを深く差し込むことができる。その結果、化学反応操作の効率と安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の小型反応器用撹拌装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1に示した小型反応器用撹拌装置に用いられる小型反応器用撹拌翼を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1:翼;
2:撹拌シャフト;
3:留めピン;
4:接続治具;
5:留めピン用孔;
6:撹拌シャフト用孔;
7:弾性体チューブ;
8:延長シャフト;
9:拡径部;
10:モーター;
11:留めピン用貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌シャフトと翼とからなる小型反応器用撹拌翼と、
モータからの回転力を伝えることができる延長シャフトと、
前記小型反応器用撹拌翼の撹拌シャフトを通すことができる筒をなし、該筒には筒の軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピンを通すことができる孔が設けられている接続治具と、
延長シャフト及び接続治具のそれぞれの接続部位に被せ両者を接続することができる弾性体チューブとからなり、
前記撹拌シャフトの接続部位には撹拌シャフトの軸心を通り且つ軸に対して直角でない角度で穿った留めピンを通すことができる貫通孔が在り、撹拌シャフトを接続治具の筒の中に通したときに接続治具の留めピン用の孔と撹拌シャフトの留めピン用の貫通孔とに少なくとも一本の留めピンを軸に対して直角でない角度で挿し通して、前記撹拌シャフトと接続治具とが接続できる、小型反応器用撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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