説明

小規模商業施設の屋上緑化工法

【課題】本発明は、ヒートアイランドの大きな要因となりうる都市、及びその周辺部に無数に存在する小規模商業施設や公共施設に、施設を運用する側にも利益があり、地域社会にもヒートアイランドの問題解決策を提供する。
【解決手段】竹炭を利用したメンテナンスフリーの冷屋上緑化をおこなうことによって、施設を運営する側に房電気料金の節減を利益として提供し、都市部およびその周辺部のヒートアイランド防止に貢献することによって、地球温暖化防止を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメンテナンスフリーの緑化方式を用いて、ヒートアイランドを解消する都市部の小規模商業施設の屋上緑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市の中心部と郊外と比較して常に気温が高いということは、100年以上も前から報告されており、世界中の多くの都市でも確かめられている。この都市部の気温が周辺部より高くなる現象をヒートアイランド現象と呼びその対策が求められている。
【0003】
アスファルトの道路は昼間の太陽の熱射で深層まで高温となり、夜間に蓄積された熱が放出される。一方、樹木は大量の水を空気中に吐き出している。緑地面積が小さくなると植物や地表からの水分の蒸発量が減少し、蒸発潜熱が減少する。
【0004】
都市への人口の集中により各種のエネルギーの使用量が増え、排熱量が増加する。従って工場などエネルギー消費の多い分野では工場緑地法などが制定され一定の緑地面積を確保することとなっているが、小規模の商業施設などはなんら対策がなされていない。
【0005】
小規模施設であっても、24時間営業をおこなうコンビニエンスストアや、多くの人々が利用するスーパーやファミリーレストランなどは、緑化の工夫もされないまま大面積のアスファルトの駐車場を設置し、利用者サービスのための冷房施設などから、多くの熱を発散し続けている。
【0006】
研究者らは、小規模商業施設でも屋上緑化によって冷房費用が削減されることや、屋上緑化による草木からの蒸発潜熱によって、かなりの施設内の温度低下が得られることを実験によって突き止め、これを市場に販売することを考案した。
【0007】
本考案によれば、研究者らが開発した効率的な屋上緑化法で、メンテナンスのいらないメンテナンスフリーの省エネルギー施設が構築可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述する小規模商業施設とは、コンビニエンスストア、スーパー、ファミリーレストランや遊技場などがある。これらの施設は利用者のための駐車スペースが広範囲に設けられ、それに付随する形で施設が建設されている。
【0009】
従ってアスファルトに吸収された太陽熱は輻射熱となって施設内にも多く流入する。そのときの雰囲気温度は下図1に示すように、70度から75度にも達する。

【0010】
このように暖められた雰囲気温度は、利用客などの車による放熱によりさらに高められ、下図2に示すクーラー室外機などは十分な機能を働かせるためには更に大きなエネルギーを必要とする。

【0011】
このような小規模商業施設は、都市部および都市部近郊には数多く存在する。そしてこれらの施設には効果的な省エネルギー方法がない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために代表的な構成部材を例に挙げて説明するが、それにより本発明が本説明の形態に限定されるものではない。また、発明を分かりやすくするため、図による説明をおこなっているが、このような説明形態に限定されるものではない。また、説明が容易なように小規模商業施設を対象に記述しているが、同様の条件を満たす施設であれば、商業、公共いずれの施設であっても種類は問わない。
【0013】
前記目的を達成するため、発明者らは、小規模商業施設の屋根部分に屋上緑化をおこなった。降雨時には屋上緑化面に雨水が集められ、一定量を超えると取水タンクに水が貯蔵できる仕組みである。また、屋上緑化面には植物を植栽するが、植物の下に土、炭を埋設し貯水能力を有するように設置してある。
【0014】
土は植物の生育に必要な養分を供給するが、炭は植物に必要な養分と水分を蓄えることが出来る。発明者らのおこなった実験では、貯水タンクなしで、植物は45日間の無降水にも影響なく生育した。構造を下図3に示す。

【0015】
図3の▲1▼は雨水を集水するパイプであるが、無降水時に貯水タンクから潅水するパイプでもある。これにより異常渇水時でも、植物に効率的に潅水可能である。
【実施例】
【0016】
実験には竹炭を使用した。これは、竹炭が1gにつき300平方メートルに近い表面積を有する微細孔をもつことから、炭の中でも保水性が格段に高いことに起因する。
活性炭に較べ孔径が大きく、木炭に較べて孔径が小さいことが、植物の成育に良好な緑化資材となる特徴を持つ。
実験建造物は、地上3階建ての鉄筋コンクリート造の建築物である。
屋上の床面の構造は、表面から順に、防水シート厚さ1.2mm、断熱材(発泡ポリエチレン)厚さ30mm、コンクリート厚さ165mmとなっており、平均的レベルの外断熱だといえる。
【0017】
屋上表面は加硫ゴム系の防水シートになっており、アスファルトなどに近い特性を持つ。その上に6m×3.5m×0.2mのプラスチック製のボックスを木製の枠で囲ったものを設置し、その中に保水率向上を目的とした炭を5cm、その上に土壌を8cm敷き、芝を約80%、セダムを約10%、コケを10%植栽し、屋上緑化を行なった。
温度の計測は、屋上を緑化した部分の直下に当たる部分と、緑化していない屋上表面の直下に当たる部分の2箇所を測定した。
【0018】
屋上では、緑化を行なった部分の北側の端と南側の端の2箇所で、植生のある土壌表面の温度と土壌直下の防水シート表面の温度を、また、緑化部分よりも北側約50cm付近の防水シート表面の温度を、温度データロガー(TR−52,T&D)を用いて、10分間隔で測定、記録した。
緑化を行なった部分の両地点の温度には大差がなかったため、結果は、土壌表面、土壌直下それぞれに関して、北側と南側の平均値とした。防水シート表面の温度は、直射日光の影響を最小限に抑え、防水シート表面自体の温度を正確に測定するために、市販のストローの半筒にアルミホイルを巻いた日よけを作成し、センサー上にかぶせた。
さらに、外気の温度を、屋上表面から高さ約150cmの地点で、温湿度データロガー(TR−72S,T&D)を用いて10分間隔で測定、記録した。
【0019】
全屋根裏で、床面から高さ約10cmの地点にセンサーを設置し、屋根裏の空間の温度を10分間隔で測定、記録した。
測定には、温湿度データロガー(TR−72S、TR−72U,T&D、及び、3641,日置電機)を用いた。
【0020】
部屋温度は、部屋の中心付近で、天井から約50cmの高さにセンサーを設置し、部屋空間の気温を10分間隔で測定、記録した。測定には、温湿度データロガー(TR−72S、TR−72U,T&D、及び、3641,日置電機)を用いた。
【0021】
屋上で測定した全期間のデータのうち、8月1日から8月10日までのデータを下図4に示す。夏期(8、9月)の防水シート表面では、日中最高温度が60℃を超える日がほとんどであるのに対し、緑化土壌表面は、40℃を超える日は数日あるだけで、ほとんど30℃台までで抑えられており、外気温度よりも低い値になっている。

【0022】
屋根裏温度は実験場所屋根裏で測定した8月1日から8月10日までのデータを下図5に示す。屋上緑化部分は緑化していない部分に比較すると、常に2℃程度低い温度であった。最高温度は、緑化屋根裏で32.6℃、緑化をしない屋根裏で34.6℃であり(表5)、やはり、緑化を行なった方が2℃低い値であった。

【0023】
部屋温度を実験場部屋内で測定した8月1日から8月10日までのデータを下図6に示す。今回の温度測定を行なった部屋は、大学の施設であり、基本的に平日は人間が実際に活動している空間である。

最高温度は、緑化おこなった部屋で33.4℃、緑化していない部屋で34.7℃であり、緑化を行なった直下の部屋の方が、1.3℃低くなった。グラフには示さないが、秋期に関しては、夏期には2℃程度あった一日ごとの最低温度の差が無くなっているが、最高温度は、緑化をしていない部屋に比べ、緑化をした部屋の方が4℃程度も低くなり、さらに差が大きくなっている。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明では、これまでの屋上緑化なしの施設に比べて最大で4℃の温度低減効果を持つ。このことからコンビニエンスストアをモデルに実施する場合の実施要領を、下記、図1、図2の実施形態と各部位の名称を付す。
【産業上の利用分野】
【0033】
本発明はヒートアイランドの大きな要因となりうる都市、及びその周辺部に無数に存在する小規模商業施設や公共施設に、屋上緑化をおこなうことによって冷房電気料金の節減や、地域社会貢献度をアピールし、もって地球温暖化の防止に役立つ技術として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】緑化断面図である。
【図2】屋上緑化を施し水の循環を示した説明図である。
【符号の説明】
▲1▼ 水循環パイプ1
▲2▼ 水循環パイプ2
▲3▼ 通水体
▲4▼ 竹炭
▲5▼ 培養度
▲6▼ 植物(芝など)
▲7▼ 植物(芝など)
▲8▼ 循環パイプ3
▲9▼ 貯水タンク
▲10▼ 循環パイプ4
▲11▼ 循環モータ
▲12▼ 建造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小規模商業施設や公共施設において、竹炭や木炭などを用いてメンテナンス不要の屋上緑化を行うことで建物内部の冷房費用を節減する屋上緑化工法。
【請求項2】
都市部およびその周辺部におけるヒートアイランド防止のための小規模地域緑化方法。
【請求項3】
請求項1、請求項2に記載の緑地を形成する方法において、緑地から採取した雨水を循環させて屋上緑化の潅水や打ち水などに使用する雨水利用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−236379(P2007−236379A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106910(P2006−106910)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(500362992)
【出願人】(504357026)
【出願人】(506119523)
【Fターム(参考)】