尿中有形成分分析装置
【課題】尿中に含まれる細菌及び少なくとも赤血球を含む尿中有形成分の分析を高精度に行うことができる分析装置を提供する。
【解決手段】尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部と、それぞれのアリコートにそれぞれの染色試薬を混合する第1試料調製部及び第2試料調整部と、試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部5と、第1の試料が前記光学検出部にて検出された散乱光及び蛍光に基づいて、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定する第1測定手段と、第2の試料が当該光学検出部にて検出された散乱光及び蛍光に基づいて、尿中の細菌を測定する第2測定手段とを備えている。
【解決手段】尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部と、それぞれのアリコートにそれぞれの染色試薬を混合する第1試料調製部及び第2試料調整部と、試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部5と、第1の試料が前記光学検出部にて検出された散乱光及び蛍光に基づいて、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定する第1測定手段と、第2の試料が当該光学検出部にて検出された散乱光及び蛍光に基づいて、尿中の細菌を測定する第2測定手段とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は尿中有形成分分析装置に関する。さらに詳しくは、フローサイトメトリーを応用して尿中に含まれる成分を光学的に測定・分析する尿中有形成分分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尿中有形成分の一般的な測定項目には、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱及び細菌があるが、このうち、円柱とはTomm-Horsfallムコ蛋白が、少量の血漿蛋白(アルブミン)の存在のもとで腎尿細管腔内において凝固沈澱したものが基質となり、その基質内に血液細胞や腎尿細草上皮細胞などが包埋されたものである。円柱は、大きさが数十μm以上の大きなものが存在し、その形状からシリンダー(cylinder)又は尿細管腔を鋳型として形成されることからキャスト(cast)と呼ばれている(円柱の存在は尿細管腔に一時的な閉塞があったことを意味し、腎実質障害を示唆する所見として重要であり、とくに血液細胞、上皮円柱などを封入する物は臨床的意義が高い)。
【0003】
さらに、上皮細胞は、偏平上皮細胞と移行上皮細胞からなる。偏平上皮細胞は円形又は多角形の極めて薄いもので、尿道の一部が剥離したものであり、一方、移行上皮細胞は、梨型や紡績形など多様な形態を有し、腎盂、尿道膀胱及び内尿道口までを構成する細胞である。大きさは数十μmのものから、表層型では100μm以上の大きさのものまである。
【0004】
赤血球の測定は、腎臓の糸球体から尿道に至る経路における出血の有無を判定する上で重要であり、特に腎尿路系疾患、出血性疾患、白血病などの患者の尿に多く見られる。赤血球は一般に8μm前後の大きさで両面が凹状の円盤状の細胞であるが、尿中ではダメージを受けていることが多く、特に糸球体由来の赤血球は変形して、大きさも小さくなっている。さらにダメージを受けた赤血球は、溶血して内容物が溶出してしまっている。
【0005】
また、白血球は腎、尿路感染症、腎結核などの患者の尿に多く見られ、炎症や感染症を早期に発見することができる。大きさは6〜14μm位の大きさである。
細菌の測定は感染の有無を調べる検査であり、当該細菌の大きさは、球菌が0.5〜2μm位の球型の菌で、桿菌は長径が2〜10μm位の菌である。球菌は増殖すると、一列に数珠状に連なる連鎖型や、不規則に連なりブドウの房状に連なるブドウ型などの集塊となっている。
【0006】
従来より尿中の有形成分の分析は、一般検査室で主として顕微鏡を用いた目視検査により行われている。この方法では、まず、尿を遠心分離して濃縮し、その沈渣物を場合によっては染色後、顕微鏡スライド上に載置し、顕微鏡下で分類・計数を行っている。
この顕微鏡での検査は、まず100倍の低倍率視野(LPF)で尿中有形成分の有無、尿検体の状態を把握し、400倍の高倍率視野(HPF)で、各成分の分類が行われている。測定項目のうち、円柱は出現しているとしても個数は非常に少ないが、その検出は臨床的に有用性が高いので、低倍率視野(LPF)で探すようにされている。他の有形成分は高倍率視野(HPF)で分類され、赤血球、白血球は高倍率視野(HPF)で個数を報告するようにされている。
このように尿中有形成分検査は3つの要因を備えており、定性検査であり(細菌 ++)、定量検査であり(赤血球 5個/HPF)、形態検査である(変形赤血球を認む)といわれている。
【0007】
尿中有形成分検査の自動化としては、自動顕微鏡装置が提案されている。フロー式自動顕微鏡装置としては、UA−2000(シスメックス社製)が用いられており、この装置は尿検体を濃縮することなしに、扁平形のフローセルに流し、フローセルで流れているところを撮像して記憶する装置である。記憶された撮像画像は、大きさで仕分けられており、ユーザがその画像を見て、各有形成分に分類するようになっている。
【0008】
このような自動顕微鏡方式でも近年、有形成分を自動的に分類する装置が提案されているが、尿中有形成分は形態が多様であり、ダメージを受けた有形成分も多く、撮像画像を精度よく分類することには困難が伴っている。特に小型有形成分である、赤血球、とりわけ破砕赤血球、細菌、及び結晶を精度よく分類することは難しく、ユーザが再分類をするようにされている。
【0009】
尿中有形成分検査の自動分類装置として、フローサイトメータによる尿中有形成分測定装置UF−100(シスメックス社製)が提案されている。この装置では尿中有形成分を染色試薬で染色して、散乱光信号及び蛍光信号を組み合わせて、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱及び細菌の分類を行うものである。
分類試薬は各有形成分の膜および核を染色する色素が用いられ、尿中有形成分の形態を保持するような組成で構成されている(特許文献1参照)。前述したように、尿中有形成分は形態も多様であり、ダメージを受けた有形成分も多く、フローサイトメータの散乱光信号強度と蛍光信号強度を組み合わせるだけでは精度良く分類することは難しい。そこで散乱光信号の強度とパルス幅、蛍光信号の強度とパルス幅を組み合わせることによって、尿中有形成分をそれぞれ分類するようにされている(特許文献2参照)。このフローサイトメータによる尿中有形成分測定装置は、様々な工夫で尿中有形成分の分類、形態情報を提供するように構成されている。例えば、赤血球の散乱光信号を解析することによって、尿中赤血球の由来(糸球体由来または糸球体由来)の情報を提供している(特許文献3参照)。
この装置によって、尿中有形成分を自動的に分類することが可能となり、尿検査の自動化に大きく寄与している。
【0010】
このように散乱光信号や蛍光信号を様々解析する装置を用いても、測定精度が妨げられる検体がある。その原因としては、細菌の分類が困難な検体があることがあげられる。細菌は大きさがかなり小さい一方で、多様な形態をとる。例えば、小型の細菌、すなわち集塊状でない球菌だけが出現している検体があげられる。前記装置では、一度の測定で、大型有形成分(円柱、上皮細胞)、中型有形成分(白血球、赤血球)、小型有形成分(細菌)を測定するように構成されており、数十μmの大型有形成分を測定する必要があるために、1μm以下の細菌までも精度良く検出することは困難であった。尿中有形成分検査での細菌測定は、顕微鏡検査で細菌が確認できるほどの量が出現しているかを調べる検査であり、一般的に約104 /ml以上の細菌の有無を調べる検査である。104 /ml以上の濃度であれば、球菌が増殖して集塊状になっていることが多く、通常は尿中有形成分検査の要求を満たすものである。しかし、小型の球菌が集塊状になっていない検体を見過ごすことがあった。
【0011】
逆に大型の細菌、すなわち集塊が大きくなった球菌や大型の桿菌が出現した検体では、細菌の出現領域が広がり、赤血球や白血球の出現領域にまで入り込むことがあった。また赤血球や白血球の出現領域まで広がらなくても、粘液糸、酵母様真菌や精子と出現領域がオーバーラップして、細菌測定に誤った結果を出すことがあった。
【0012】
一方、尿の細菌検査も、臨床目的によってはより高感度な検査を行うことが要求されている。しかし、顕微鏡を用いた目視検査で、少ない数の細菌を検出することは、特に小型の細菌では難しく、高感度な検査には用いられていない。この場合は、試料を培養して細菌を検査する培養検査が、尿中有形成分検査とは別途細菌質検査室で行われている。培養検査には培養する日数がかかるため、培養せずに高感度な細菌検査を行うことが提案されている。
【0013】
フローサイトメータによる細菌分析、すなわち細菌を染色試薬で染色して、散乱光信号と蛍光信号とで細菌を測定する方法が提案されている。特許文献4、5には、細菌以外の夾雑物を溶解するようにカチオン性界面活性剤を含む染色試薬とすることで、細菌と同じ位の大きさの夾雑物が含まれている尿のような試料も精度良く測定する方法が記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開平8−170960号公報
【特許文献2】特開平5−322285号公報
【特許文献3】特開平11−296207号公報
【特許文献4】特開2001−258590号公報
【特許文献5】特開2002−202302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
尿中有形成分検査も前述した装置によって、自動化が進み、従来の顕微鏡検査より、検査の定量化が進んできている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、尿中有形成分検査の定量化、高精度化を向上させることができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点に係る尿中有形成分分析装置は、尿検体に第1の染色試薬及び第2の染色試薬を混合して試料を調製する試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定する第1測定手段と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、尿中の細菌を測定する第2測定手段と
を備えることを特徴としている。
【0017】
本発明の第1の観点に係る尿中有形成分分析装置では、1つの尿検体に対して第1の染色試薬及び第2の染色試薬を混合して試料を調製し、前記第1測定手段により少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定し、且つ前記第2測定手段により細菌を測定する構成としたので、1つの分析装置で少なくとも赤血球を含む尿中有形成分と細菌とをそれぞれ高精度に測定することが可能となる。そして、細菌だけを独立して測定していることから、前述したような細菌の存在に起因する、自動分類装置における信頼性の低下(細菌は、大きいものから小さいものまでそのサイズが多様であり、また分布に規則性がないことから、画像上、他の白血球や赤血球等の成分とクロスオーバーしてしまい、成分の正確な区分けを困難にしている)を抑制することができる。また、顕微鏡による再検を指示する「Review」の判定をする場合でも、信頼性が低い理由を付した「Review」の判定をすることができる。
【0018】
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部をさらに備え、前記試料調製部は、前記第1のアリコートに前記第1の染色試薬を混合して第1の試料を調製する第1試料調製部と、前記第2のアリコートに前記第2の染色試薬を混合して第2の試料を調製する第2試料調製部とを備え、前記第1測定手段は、前記第1試料調製部で調製された第1の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するように構成されており、前記第2測定手段は、前記第2試料調製部で調製された第2の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記尿中の細菌を測定するように構成されていることが好ましい。1つの尿検体から、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料と、細菌を測定するための第2の試料とをそれぞれ調製し、前記第1の試料により少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定し、且つ前記第2の試料により細菌を測定する構成とすることにより、より一層高精度に尿中有形成分と細菌とを測定することが可能となる。
また、光学検出部を第1の試料と第2の試料とで共用しているので、装置構成を簡略化することができ、製品コストを低減させるとともに、装置を小型化することができる。
【0019】
前記第2測定手段による測定結果に基づいて、前記第1測定手段による測定結果における細菌の影響を判定するように構成されていることが好ましい。第1測定手段の測定対象ある第1試料には細菌が含まれている場合があり、このため第1測定手段の測定結果に細菌が影響することがある。このように第1測定手段の測定結果に細菌の影響があったとしても、第2測定手段によって尿中の細菌を高精度に測定することができるため、第2測定結果を利用すれば第1測定結果における細菌の影響を判定することができる。
【0020】
前記散乱光受光部が、前記試料から発せられる前方散乱光及び側方散乱光を受光可能であり、前記第1測定手段が、両散乱光に基づく尿中有形成分の測定ができるように構成されているのが好ましい。この場合、側方散乱光を利用することで、例えば上皮と白血球、又は上皮と細菌とを区分けすることが可能となり、自動分類の精度を向上させる(例えば、擬陽性の判定を低減させる)ことができるとともに、顕微鏡による再検に廻す検体の数を減らすことができる。
【0021】
前記第1の染色試薬が、膜染色する色素を含有しており、前記第2の染色試薬が、核染色する色素を含有しているのが好ましい。尿中有形成分には、赤血球のような核を有しないものが含まれているため、第1の染色試薬が膜染色する色素を含有することにより、このような核を有しないものも含めて尿中有形成分を検出することができる。また、第2の染色試薬には核染色する色素が含有されているため、細菌の核が効果的に染色され、サイズの小さい細菌であっても当該細菌を精度よく測定することが可能となる。
【0022】
前記第2試料調製部を、前記第2のアリコートに界面活性剤を混合して前記第2の試料を調製するように構成することができる。この場合、界面活性剤により細菌膜にダメージを与えることができるため、第2の染色試薬が含有する色素により効率よく細菌の核を染色することができる。その結果、前記細菌の測定をさらに精度よく行うことができる。
【0023】
第2のアリコートに界面活性剤を混合する場合において、前記第1測定手段が測定動作を完了した後に、前記第2測定手段が測定動作を実行するように構成することができる。第2の試料には界面活性剤が含まれることから、細菌を測定した後に尿中有形成分の測定を行うと、試料のキャリーオーバーにより第1の試料に界面活性剤が混入し、赤血球を含む尿中有形成分の膜にダメージを与え当該尿中有形成分の測定に影響を与えることがあるが、かかる構成とすることにより、第1の試料に界面活性剤が混入するのを防止することができ、精度よく尿中有形成分の測定を行うことができる。
【0024】
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部をさらに備えることができる。試料の温度を高くするほど、当該試料に含まれる赤血球や細菌等の所定部位(膜や核)を速く染色することができ、測定時間を短縮することができるが、一方、赤血球は、高温によりダメージを受け易く、温度を高くしすぎると正確な測定を行うことができなくなる。そこで、他の尿中有形成分に比べて耐熱性の高い細菌を測定するための第2の試料の温度を尿中有形成分を測定するための第1の試料の温度よりも高くなるように調節することにより、換言すれば、第1試料調製部と第2試料調製部とをそれぞれ測定に適した温度に調節することにより、赤血球を含む尿中有形成分及び細菌をともに高精度に測定することができる。
【0025】
前記検体分配部が、尿検体を定量する定量機構からなっており、
前記温度調節部が、前記第1試料調製部の温度調節を行う第1温度調節部と、前記第2試料調製部の温度調節を行う第2温度調節部とで構成されており、且つ
前記定量機構、第2試料調製部及び第2温度調節部が、熱的に一体となるように構成されているのが好ましい。定量機構、第2試料調製部及び第2温度調節部を熱的に一体となるように構成することにより、定量機構にて温度調節された試料が第2試料調製部に供給される際に冷えるのを防止することができることから、温度調節のロスを低減させることができる。この場合、第2試料調製部よりも低温に保たれる第1試料調製部に供給される試料については、定量機構(第2の温度に保たれる)から供給される際に第1の温度付近に自然に低下するように流路を設定することができる。
【0026】
前記光源を半導体レーザとすることができる。光源として、低コスト、小型、低消費電力、且つ長寿命の半導体レーザを採用することにより、製品のコストを低減させるとともに、装置の小型化、省電力化及び長寿命化を図ることができる。
【0027】
前記第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬は、吸収波長のピークが前記半導体レーザの発光波長の近傍に存在するのが好ましい。第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬の吸収波長のピークを、半導体レーザの発光波長の近傍に存在するように選定することにより、染色された尿中有形成分及び細菌を半導体レーザにより測定することが可能になる。
【0028】
前記第2測定手段を、尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することができる。尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することにより、尿検査で求められている感度で細菌測定を行うことができる。
【0029】
また、本発明の第2の観点に係る尿中有形成分分析装置は、尿中に含まれる細菌と、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分とを測定する尿中有形成分分析装置であって、
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部と、
前記第1のアリコートに第1の染色試薬を混合して、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する第1試料調製部と、
前記第2のアリコートに第2の染色試薬を混合して、細菌を測定するための第2の試料を調製する第2試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部と
を備えることを特徴としている。
【0030】
本発明の第2の観点に係る尿中有形成分分析装置では、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、細菌を測定するための第2の試料を調製する第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部を備えている。前述したように、試料の温度を高くするほど、当該試料に含まれる赤血球や細菌等の所定部位(膜や核)を速く染色することができ、測定時間を短縮することができるが、一方、赤血球は、高温によりダメージを受け易く、温度を高くしすぎると正確な測定を行うことができなくなる。そこで、他の尿中有形成分に比べて耐熱性の高い細菌を測定するための第2の試料の温度を尿中有形成分を測定するための第1の試料の温度よりも高くなるように調節することにより、換言すれば、第1試料調製部と第2試料調製部とをそれぞれ測定に適した温度に調節することにより、赤血球を含む尿中有形成分及び細菌をともに高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の尿中有形成分分析装置によれば、尿中に含まれる細菌、及び少なくとも赤血球を含む尿中有形成分の両方の分析を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の尿中有形成分分析装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る尿中有形成分分析装置及びこれに付属したパソコンの斜視説明図である。なお、図1では、分かり易くするために尿中有形成分分析装置の構成要素を収容する筐体を部分的に省略している。
【0033】
[装置の構成]
図1において、尿中有形成分分析装置Uは、試料を調製するための試料調製部2と、サンプルラック(試験管立て)3を移送するラックテーブル4と、試料から尿中有形成分や細菌の情報を検出するための光学検出部5と、回路部14とを備えている。筐体側面にはアーム15を介して支持台16が取り付けられ、その上にパソコン13が設置されている。パソコン13は、尿中有形成分分析装置Uの回路部14とLAN接続されている。
【0034】
図2は前記試料調製部2及び光学検出部5の概略機能構成を示す図である。図において、試験管Tに入った尿(検体)は、吸引管17を用いて図示しないシリンジポンプにより吸引され、検体分配部1によって試料調製部へ分注される。本実施の形態における試料調製部は試料調製部(第1試料調製部)2uと試料調製部(第2試料調製部)2bとで構成されており、検体分配部1は、試料調製部2uと試料調製部2bのそれぞれに尿(検体)の定量されたアリコートが分配される。
【0035】
試料調製部2uの尿アリコートは、希釈液19uと染色液(染色試薬)18uが混合されて当該染色液(染色試薬)18uに含まれる色素により染色が施される。この染色試料は赤血球、白血球、上皮細胞、円柱等の比較的大きい尿中有形成分を分析するための懸濁液となる。
一方、 試料調製部2bの尿アリコートは、希釈液19bと染色液(染色試薬)18bが混合されて当該染色液(染色試薬)18bに含まれる色素により染色が施される。この染色試料は細菌を分析するための懸濁液となる。
【0036】
以上のようにして調製された2種類の懸濁液(試料)は、先に試料調製部2uの懸濁液(第1の試料)が光学検出部5に導かれ、シースフローセル51においてシース液に包まれた細い流れを形成し、そこに、レーザ光が照射される。その後同様に、試料調製部2bの懸濁液(第2の試料)が光学検出部5に導かれ、シースフローセル51において細い流れを形成し、レーザ光が照射される。このような動作は、後述のマイクロコンピュータ11(制御装置)の制御により、図示しない駆動部や電磁弁等を動作させることにより、自動的に行われる。
【0037】
図3は、光学検出部5の構成を示す図である。図において、コンデンサレンズ52は、光源である半導体レーザ53から放射されたレーザ光をシースフローセル51に集光し、集光レンズ54は尿中の有形成分の前方散乱光を散乱光受光部であるフォトダイオード55に集光する。また、他の集光レンズ56は前記有形成分の側方散乱光と側方蛍光とをダイクロイックミラー57に集光する。ダイクロイックミラー57は、側方散乱光を散乱光受光部であるフォトマルチプライヤ58へ反射し、側方蛍光を蛍光受光部であるフォトマルチプライヤ59の方へ透過させる。これらの光信号は、尿中の有形成分の特徴を反映したものとなっている。そして、フォトダイオード55、フォトマルチプライヤ58及びフォトマルチプライヤ59は光信号を電気信号に変換し、それぞれ、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL)を出力する。これらの出力は、図示しないプリアンプにより増幅された後、次段の処理に供される。
【0038】
なお、光源として、前記半導体レーザに代えてガスレーザを用いることもできるが、低コスト、小型、且つ低消費電力である点より半導体レーザを採用するのが好ましく、半導体レーザの採用により製品コストを低減させるとともに、装置の小型化及び省電力化を図ることができる。また、半導体レーザのうち、低コスト且つ長寿命であり、メーカーからの供給が安定していることから、赤色半導体レーザを用いるのが好ましい。
【0039】
図6は、尿中有形成分分析装置Uの全体構成を示すブロック図である。図において、尿中有形成分分析装置Uは、前述した検体分配部1、試料調製部2及び光学検出部5と、この光学検出部5の出力をプリアンプにより増幅したものに対して増幅やフィルタ処理等を行うアナログ信号処理回路6と、アナログ信号処理回路6の出力をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ7と、ディジタル信号に対して所定の波形処理を行うディジタル信号処理回路8と、ディジタル信号処理回路8に接続されたメモリ9と、アナログ信号処理回路6及びディジタル信号処理回路8と接続されたマイクロコンピュータ11と、マイクロコンピュータ11に接続されたLANアダプタ12とを備えている。外部のパソコン13は、このLANアダプタ12を介して尿中有形成分分析装置UとLAN接続されており、このパソコン13により、尿中有形成分分析装置Uで取得したデータの解析が行われる。前記アナログ信号処理回路6、A/Dコンバータ7、ディジタル信号処理回路8及びメモリ9は、光学検出部5の出力する電気信号に対する信号処理回路10を構成している。
【0040】
(尿中有形成分測定試薬)
これら尿中有形成分を測定する試薬としては、特開平8-170690に詳細な説明がある。この試薬の一つの実施形態は、染料としては、核を有していない有形成分をも染色するために、膜染色をする染料が選ばれる。試薬としては、赤血球溶血を防ぐ目的と安定した蛍光強度を得るために浸透圧補償剤が加えられ、分類測定に適するような浸透圧となるよう100〜600mOsm/kgに調整される。この試薬によって尿中有形成分の細胞膜、核(膜)が染色される。膜染色する色素を含有する染色試薬としては縮合ベンゼン誘導体が用いられ、例えば、シアニン系色素であるNK−529(商品名。林原生物化学研究所製)を用いることができる。なお、この染色試薬は、細胞膜だけでなく核膜も染色するようになっている。このような染色試薬を用いると、白血球や上皮等の有核細胞では、細胞質(細胞膜)における染色強度と核(核膜)における染色強度とが合わさり、これによって白血球や上皮等の有核細胞を赤血球等の核のない尿中有形成分と弁別することができる。
(細菌分析用試薬)
細菌を、同じ位の大きさの夾雑物が含まれている尿のような試料からも精度良く測定する試薬としては、特開2001−258590に詳細な説明がある。この試薬の一つの実施形態は、染料としては核酸を染色する染料が用いられる。
また、核染色する色素を含有する染色試薬としては、例えば、以下の(化1)に示される特開2002−202302号公報記載のシアニン系色素を用いることができる。
【0041】
【0042】
このうち、特に、次の(化2)に示されるシアニン系色素を好適に用いることができる。
【0043】
【0044】
この場合において、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための尿検体に加えられる染色試薬(第1の染色試薬)が膜染色する色素を含有し、一方、細菌を測定するための尿検体に加えられる染色試薬(第2の染色試薬)が核酸を染色する色素を含有しているのが好ましい。尿中有形成分には、赤血球のような核を有しないものが含まれているため、第1の染色試薬が膜染色する色素を含有することにより、このような核を有しないものも含めて尿中有形成分を検出することができる。また、第2の染色試薬が核染色する色素を含有することにより、細菌の核が効果的に染色され、サイズの小さい細菌であっても当該細菌を精度よく測定することが可能となる。
【0045】
また、前記第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬は、吸収波長のピークが前記半導体レーザの発光波長の近傍に存在するのが好ましい。第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬の吸収波長のピークを、半導体レーザの発光波長の近傍に存在するように選定することにより、染色された尿中有形成分及び細菌を半導体レーザにより測定することが可能になる。図4は、このような第1の染色試薬の一例(NK−529(商品名。林原生物化学研究所製)を含有する染色試薬))の吸収波長と吸光度との関係を示しており、赤色半導体レーザの発光波長(635nm)の近傍の640nmに吸収波長のピークが存在している。また、図5は、第2の染色試薬の一例(前記(化2)で示される、特開2002−202302号公報記載のシアニン系色素を含有する染色試薬))の吸収波長と吸光度との関係を示しており、赤色半導体レーザの発光波長(635nm)の近傍の636nmに吸収波長のピークが存在している。なお、図5は、試薬の温度が15℃の場合と35℃の場合について吸光度の変化が示されているが、常温前後の温度であれば、試薬の吸光度に大きな変化がないことが分かる。
【0046】
細菌測定用試薬、染料が膜を通過して染色が早く進むこと、粘液糸や赤血球破片などの夾雑物を収縮させるように、カチオン系界面活性剤が含まれる。
この場合、界面活性剤により細菌の細胞膜にダメージを与えることができるため、第2の染色試薬が含有する色素により効率よく細菌の核酸を染色することができる。その結果、前記細菌の測定を短時間の染色処理で、さらに精度よく行うことができる。なお、第2のアリコートに界面活性剤を混合する場合、尿中有形成分の測定が完了した後に細菌の測定が行われるように構成するのが好ましい。第2の試料には界面活性剤が含まれることから、細菌を測定した後に尿中有形成分の測定を行うと、試料のキャリーオーバーにより第1の試料に界面活性剤が混入し、赤血球を含む尿中有形成分の膜にダメージを与え当該尿中有形成分の測定に影響を与えることがあるが、かかる構成とすることにより、第1の試料に界面活性剤が混入するのを防止することができ、精度よく尿中有形成分の測定を行うことができる。
【0047】
本発明では、1つの尿検体から、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料と、細菌を測定するための第2の試料とをそれぞれ調製し、前記第1の試料により少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定し、且つ前記第2の試料により細菌を測定する構成としている。これにより、1つの分析装置で少なくとも赤血球を含む尿中有形成分と細菌とをそれぞれ高精度に測定することが可能となる。また、光学検出部を第1の試料と第2の試料とで共用しているので、装置構成を簡略化することができ、製品コストを低減させるとともに、装置を小型化することができる。
【0048】
図7は本実施の形態に係る尿中有形成分分析装置の定量機構及び試料調製部の概略斜視図であり、図8はその説明図である。本実施の形態では、所定量の尿検体を試料調製部(第1試料調製部)2uと試料調製部(第2試料調製部)2bとに分配する定量機構として、常用されているサンプリングバルブ30が採用されている。このサンプリングバルブ30は、2枚の円盤状の固定素子と、両固定素子に挟まれた可動素子とからなっており、前記可動素子はモータ31により回動操作される。
【0049】
前記サンプリングバルブ30は、互いに重ね合わされた2枚のアルミナセラミック製の円盤30a、30bを備えている。円盤30a、30bの内部には試料を流通するための流路が形成されており、一方の円盤30bがその中心軸を回転中心として回転することにより前記流路が分断され、これによって試料を定量するようになっている。かかるサンプリングバルブ30は、内部に試料用の流路32を有する流体カセット33を介して前記試料調製部2bと一体的に構成されている。すなわち、サンプリングバルブ30、流体カセット33及び試料調製部2bは、熱的に一体となるように、互いに密着した状態で配設されており、サンプリングバルブ30の温度が、試料調製部2bの温度と略等しくなるように構成されている。これに対し、試料調製部2uは、筐体に固定された取付プレート34に所定のクリアランスSを設けてボルト35で固定されており、このため試料調製部2uは、前記サンプリングバルブ30や試料調製部2bとは、熱的に略隔離された状態となっている。
【0050】
前記試料調製部2u及び試料調製部2bは、それぞれ温度調節部を構成するヒータ36u、36bによって加熱されるが、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する試料調製部2uの温度を第1の温度に調節するとともに、細菌を測定するための第2の試料を調製する試料調製部2bの温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節している。具体的には、試料調製部2uは35±2℃程度になるように、試料調製部2bは、これよりも高い42±2℃程度になるように調節される。試料の温度を高くするほど、当該試料に含まれる赤血球や細菌等の所定部位(膜や核)を速く染色することができ、測定時間を短縮することができるが、一方、赤血球は、高温によりダメージを受け易く、温度を高くしすぎると正確な測定を行うことができなくなる。そこで、他の尿中有形成分に比べて耐熱性の高い細菌を測定するための第2の試料の温度を尿中有形成分を測定するための第1の試料の温度よりも高くなるように調節することにより、換言すれば、試料調製部2uと試料調製部2bとをそれぞれ測定に適した温度に調節することにより、赤血球を含む尿中有形成分及び細菌をともに高精度に測定することができる。なお、試料調製部2uと試料調製部2bの温度は、例えばサーミスタにより測定することができる。そして、この測定結果に基づいて前記ヒータ36u、36bをオンオフ制御することにより、試料調製部2u及び試料調製部2bを前記所定範囲の温度に調節することができる。
【0051】
また、サンプリングバルブ30と試料調製部2bとを熱的に一体となるように構成することにより、サンプリングバルブ30にて温度調節された試料が試料調製部2bに供給される際に冷えるのを防止することができることから、温度調節のロスを低減させることができる。この場合、試料調製部2bよりも低温に保たれる試料調製部2uに供給される試料については、サンプリングバルブ30から供給される際に、前記クリアランスSを試料の流路が通るようにすることで自然に低下させることができる。
【0052】
[分析手順]
つぎに、図9〜10に示されるフローチャートに従って、本発明の尿中有形成分分析装置を用いた尿の分析手順について説明する。
【0053】
まず、ホストコンピュータで管理されている検体番号や、当該検体番号と関連付けられた患者の氏名、年齢、性別、診療科等の患者情報や、測定項目等の検体情報を予め当該ホストコンピュータから取得しておく(ステップS1)。ついで、測定実行の指示がパソコン13のキーボードやマウスからなる入力手段によりなされる(ステップS2)。この指示を受けて、試料入りの試験管Tが立てられたサンプルラック3がラックテーブル4により所定の吸引位置の移送される(ステップS3)。この吸引位置において、前記試験管Tが回転させられ、当該試験管Tの外周面に貼付されたIDラベルのバーコードが読み取られる(ステップS4)。これにより、試料の検体番号を知ることができ、この検体番号をステップS1において取得した検体情報と照合させることにより、当該試料の測定項目を特定することができる。
【0054】
ついで、吸引管17が下降して試験管T内の試料中に当該吸引管17の先端部が挿入され、この状態で前記試料を軽く吸引及び吐出することを繰り返すことにより、試料が攪拌される(ステップS5)。攪拌後、所定量(800μL)の試料が吸引され、サンプリングバルブ30によって、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分(SED)を測定するための試料を調製する試料調製部2uと、尿中に含まれる細菌(BAC)を測定するための試料を調製する試料調製部2bとにそれぞれ150μL及び62.5μLずつ分注される(ステップS7及びステップS11)。
【0055】
試料調製部2uには、前記試料とともに所定量の染色液(染色試薬)及び希釈液が定量されて分注される(ステップS8及びステップS9)。一方、試料調製部2bにも同様にして、前記試料とともに所定量の染色液(染色試薬)及び希釈液が定量されて分注される(ステップS12及びステップS13)。試料調製部2u及び試料調製部2bは、それぞれヒータ36u、36bによって所定温度になるように加温されており、この状態でプロペラ状の攪拌具(図示せず)により試料の攪拌が行われる(ステップS10及びステップS14)。なお、ステップS9において試料調整部2uに分注される希釈液には界面活性剤が含まれており、これにより細菌膜にダメージが与えられ、細菌の核を効率よく染色することが可能となる。
【0056】
ついで、光学検出部5のシースフローセル51にシース液が送液され(ステップS15)、その後、まず尿中有形成分(SED)測定用の試料が光学検出部5に導かれ、前記シースフローセル51においてシース液に包まれた細い流れ(シースフロー)が形成される(ステップS16)。そして、このようにして形成されたシースフローに半導体レーザ53からのレーザビームが照射される(ステップS17)。尿中有形成分の測定を先に行うのは、細菌測定用試料には界面活性剤が含まれることから、細菌を測定した後に尿中有形成分の測定を行うと、試料のキャリーオーバーにより尿中有形成分測定用の試料に界面活性剤が混入し、赤血球を含む尿中有形成分の膜にダメージを与え当該尿中有形成分の測定に影響を与えることがあるからである。
【0057】
前記レーザビームの照射により生じる尿中有形成分の前方散乱光、蛍光及び側方散乱光は、それぞれフォトダイオード55、フォトマルチプライヤ59及びフォトマルチプライヤ58により受光されて電気信号に変換され、前方散乱光信号(FSC)、蛍光信号(FL)及び側方散乱光信号(SSC)として出力される(ステップS18〜20)。これらの出力は、プリアンプにより増幅される(ステップS21〜23)。
【0058】
一方、尿中有形成分(SED)測定用の試料による測定が終了すると、引き続いてステップS14で調製された試料を用いて尿中の細菌が測定される。この場合、尿中有形成分の測定で用いた光学検出部5により、前記ステップS15〜23と同様にして前方散乱光信号(FSC)及び蛍光信号(FL)が出力され、且つ増幅される。
【0059】
増幅された前記前方散乱光信号(FSC)、蛍光信号(FL)及び側方散乱光信号(SSC)は、前記信号処理回路10(図6参照)においてディジタル信号に変換されるとともに所定の波形処理が施され(ステップS24〜27)、LANアダプタ12を介してパソコン13に送られる。なお、ステップS25における「FLH」は、蛍光信号(FL)を高いゲインで増幅した高感度なものであり、ステップS26「FLL」は同じく蛍光信号(FL)を低いゲインで増幅した低感度なものである。
【0060】
そして、パソコン13において尿中有形成分(SED)の生データが作成される(ステップS28)とともに、このデータに基づいてスキャッタグラムが作成される(ステップS29)。ついで、アルゴリズム解析により作成したスキャッタグラムのクラスタリングが行われ(ステップS30)、各クラスタ毎に粒子の計数が行われる(ステップS31)。
【0061】
また、細菌についても同様にして、増幅された前記前方散乱光信号(FSC)及び蛍光信号(FL)は、前記信号処理回路10においてディジタル信号に変換されるとともに所定の波形処理が施される(ステップS32〜34)。なお、ステップS32における「FSCH」は、前方散乱光信号(FSC)を高いゲインで増幅した高感度なものであり、ステップS33「FSCL」は同じく前方散乱光信号(FSC)を低いゲインで増幅した低感度なものである。
【0062】
そして、LANアダプタ12を介してパソコン13に送られる。そして、パソコン13において細菌(BAC)の生データが作成される(ステップS35)とともに、このデータに基づいてスキャッタグラムが作成される(ステップS36)。ついで、アルゴリズム解析により作成したスキャッタグラムのクラスタリングが行われ(ステップS37)、各クラスタ毎に粒子の計数が行われる(ステップS38)。
以上のようにして得られる測定結果は、パソコン13の表示手段であるディスプレイ上に表示される(ステップS39)。
【0063】
尿中有形成分(SED)の測定結果は、前方散乱光、側方散乱光及び蛍光の各信号からスキャッタグラムが生成される。
図11aは、横軸を蛍光強度(低感度)(FLL)とし、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムである。蛍光信号強度の大きな領域に核を有する大きな細胞である上皮細胞(EC)と白血球(WBC)が現れる。大半の上皮細胞は白血球より細胞が大きく、白血球より蛍光強度の大きな領域に出現するが、小型上皮細胞には白血球と出現領域がオーバラップするものもある。この両者を識別するために側方散乱光信号が用いられる。図11bは、横軸を蛍光強度(SSC)、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムである。上皮細胞は白血球より側方散乱光強度が大きい領域に出現するため、このスキャッタグラムより上皮細胞の識別が行われる。
【0064】
図11cは、横軸を蛍光強度(高感度)(FLH)とし、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムであり、蛍光強度が低い領域を表したものである。赤血球(RBC)は核を有していないので蛍光強度の低い領域に分布する。結晶によっては赤血球の出現領域に現れることもあるので、結晶の出現を確認するため側方散乱光信号が用いられる。図11bは、横軸を蛍光強度(SSC)とし、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムである。結晶は側方散乱光強度の分布中心が一定せず、大きい領域にも出現するため、このスキャッタグラムより赤血球との識別が行われる。
【0065】
図11dは、横軸を蛍光幅(FLLW)とし、縦軸を蛍光幅2(FLLW2)としたときのスキャッタグラムである。FLLWは、細胞膜が染色された有形成分を捉える蛍光信号の幅を表しており、FLLW2は、核などのより強い蛍光信号の幅を表している。図に示すように、円柱(CAST)のFLLWは大きく、内容物がある円柱(P.CAST)はFLLW2が大きい。また、内容物のない円柱(CAST)はFLLW2が低い領域に出現する。
【0066】
もう一方の細菌測定結果においては、前方散乱光信号と蛍光信号とからスキャッタグラムが生成される。
図11eは、横軸を蛍光強度(高感度)(B−FLH)とし、縦軸を前方散乱光強度(高感度)(B−FSC)としたときのスキャッタグラムである。尿中有形成分測定では、図11cのスキャッタグラムのように、細菌の出現領域は粘液糸(MUCUS)、YLC(酵母様真菌)、SPERM(精子)の出現領域とオーバラップする。しかし、細菌測定では、細菌測定試薬によって、粘液糸や赤血球破片などの夾雑物を収縮させるため、細菌だけが独立して出現する領域が現れるとともに、尿中有形成分測定の場合に比べて約10倍感度を上げて測定しているため、小型細菌も高精度に検出でき、正確な細菌測定結果が提供される。
【0067】
本発明では、前述したように、細菌だけを独立して測定していることから、細菌の存在に起因する、自動分類装置における信頼性の低下を抑制することができる。また、顕微鏡による再検を指示する「Review」の判定をする場合でも、信頼性が低い理由を付した「Review」の判定をすることができる。
【0068】
図11bに細菌(BACT)の標準的な出現領域を示しているが、出現領域は細菌の種類によって異なる。
図13は、球菌が大量に出現して連鎖している検体の測定例である。このスキャッタグラムでは、細菌(BACT)が出現している領域が、横軸(蛍光強度)に対して約45度の角度で分布している。つまり、細菌(BACT)が前方散乱光強度(FSC)の高い領域にも出現している。このような検体では、尿中有形成分(SED)測定において、広範な範囲で細菌が出現し、赤血球出現領域のうちの前方散乱光強度(FSC)の低い領域にまで細菌が現れてしまう。このような検体では赤血球測定の信頼性が低い。
一方、図12は、桿菌が含まれている検体の測定例である。このスキャッタグラムでは、細菌(BACT)が出現している領域が、横軸(蛍光強度)に対して低角度(約5〜10度)の角度で分布している。つまり、細菌(BACT)が前方散乱光強度(FSC)の低い領域に出現している。このような検体では、桿菌が大量に含まれていても、細菌出現領域は赤血球出現領域より前方散乱光強度(FSC)が低い領域であり、赤血球測定は細菌の影響を受けることがない。
同様に尿中有形成分(SED)測定での白血球(WBC)出現領域への細菌の影響も、細菌測定(BAC)での細菌分布から確認することができる。
【0069】
このように細菌測定(BAC)から、細菌の分布を得ることで、尿中有形成分(SED)の測定における細菌出現領域を推定することにより、他の有形成分の測定信頼性が確認される。したがって、細菌測定(BAC)の分布に応じて、顕微鏡による再検指示「Review」の判定をすることができ、擬陽性の判定を減らし、適切な再検指示をすることができる。また、信頼性の高い分画ができないことに起因する再検の判定を減らすこともできる。
【0070】
また、尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することができる。具体的には、測定時間を長く設定したり、測定試料の量を多く設定したりすることにより、5×103個/mlという低濃度の細菌を測定することができる。尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することにより、尿検査で求められている感度で細菌測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の尿中有形成分分析装置の一実施の形態及びこれに付属したパソコンの斜視説明図である。
【図2】尿中有形成分分析装置の試料調製部及び光学検出部の概略機能構成を示す図である。
【図3】光学検出部の構成を示す図である。
【図4】第1の染色試薬の一例の吸収波長と吸光度との関係を示す図である。
【図5】第2の染色試薬の一例の吸収波長と吸光度との関係を示す図である。
【図6】図1に示される尿中有形成分分析装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】尿中有形成分分析装置の定量機構及び試料調製部の概略斜視図である。
【図8】尿中有形成分分析装置の定量機構及び試料調製部の説明図である。
【図9】本発明の尿中有形成分分析装置を用いた尿の分析手順を示すフローチャート(前半部)である。
【図10】本発明の尿中有形成分分析装置を用いた尿の分析手順を示すフローチャート(後半部)である。
【図11】従来の自動分類装置において得られたスキャッタグラムの一例を示す図である。
【図12】図11と同じ検体について、本発明の尿中有形成分分析装置において得られた細菌系のスキャッタグラムを示す図である。
【図13】図11と同じ検体について、本発明の尿中有形成分分析装置において得られた沈査系のスキャッタグラムを示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 検体分配部
2 試料調製部
3 サンプルラック
4 ラックテーブル
5 光学検出部
13 パソコン
15 アーム
16 支持台
17 吸引管
18 染色液
19 希釈液
30 サンプリングバルブ
31 モータ
32 流路
33 流体カセット
34 取付プレート
36 ヒータ
U 尿中有形成分分析装置
T 試験管
S クリアランス
【技術分野】
【0001】
本発明は尿中有形成分分析装置に関する。さらに詳しくは、フローサイトメトリーを応用して尿中に含まれる成分を光学的に測定・分析する尿中有形成分分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尿中有形成分の一般的な測定項目には、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱及び細菌があるが、このうち、円柱とはTomm-Horsfallムコ蛋白が、少量の血漿蛋白(アルブミン)の存在のもとで腎尿細管腔内において凝固沈澱したものが基質となり、その基質内に血液細胞や腎尿細草上皮細胞などが包埋されたものである。円柱は、大きさが数十μm以上の大きなものが存在し、その形状からシリンダー(cylinder)又は尿細管腔を鋳型として形成されることからキャスト(cast)と呼ばれている(円柱の存在は尿細管腔に一時的な閉塞があったことを意味し、腎実質障害を示唆する所見として重要であり、とくに血液細胞、上皮円柱などを封入する物は臨床的意義が高い)。
【0003】
さらに、上皮細胞は、偏平上皮細胞と移行上皮細胞からなる。偏平上皮細胞は円形又は多角形の極めて薄いもので、尿道の一部が剥離したものであり、一方、移行上皮細胞は、梨型や紡績形など多様な形態を有し、腎盂、尿道膀胱及び内尿道口までを構成する細胞である。大きさは数十μmのものから、表層型では100μm以上の大きさのものまである。
【0004】
赤血球の測定は、腎臓の糸球体から尿道に至る経路における出血の有無を判定する上で重要であり、特に腎尿路系疾患、出血性疾患、白血病などの患者の尿に多く見られる。赤血球は一般に8μm前後の大きさで両面が凹状の円盤状の細胞であるが、尿中ではダメージを受けていることが多く、特に糸球体由来の赤血球は変形して、大きさも小さくなっている。さらにダメージを受けた赤血球は、溶血して内容物が溶出してしまっている。
【0005】
また、白血球は腎、尿路感染症、腎結核などの患者の尿に多く見られ、炎症や感染症を早期に発見することができる。大きさは6〜14μm位の大きさである。
細菌の測定は感染の有無を調べる検査であり、当該細菌の大きさは、球菌が0.5〜2μm位の球型の菌で、桿菌は長径が2〜10μm位の菌である。球菌は増殖すると、一列に数珠状に連なる連鎖型や、不規則に連なりブドウの房状に連なるブドウ型などの集塊となっている。
【0006】
従来より尿中の有形成分の分析は、一般検査室で主として顕微鏡を用いた目視検査により行われている。この方法では、まず、尿を遠心分離して濃縮し、その沈渣物を場合によっては染色後、顕微鏡スライド上に載置し、顕微鏡下で分類・計数を行っている。
この顕微鏡での検査は、まず100倍の低倍率視野(LPF)で尿中有形成分の有無、尿検体の状態を把握し、400倍の高倍率視野(HPF)で、各成分の分類が行われている。測定項目のうち、円柱は出現しているとしても個数は非常に少ないが、その検出は臨床的に有用性が高いので、低倍率視野(LPF)で探すようにされている。他の有形成分は高倍率視野(HPF)で分類され、赤血球、白血球は高倍率視野(HPF)で個数を報告するようにされている。
このように尿中有形成分検査は3つの要因を備えており、定性検査であり(細菌 ++)、定量検査であり(赤血球 5個/HPF)、形態検査である(変形赤血球を認む)といわれている。
【0007】
尿中有形成分検査の自動化としては、自動顕微鏡装置が提案されている。フロー式自動顕微鏡装置としては、UA−2000(シスメックス社製)が用いられており、この装置は尿検体を濃縮することなしに、扁平形のフローセルに流し、フローセルで流れているところを撮像して記憶する装置である。記憶された撮像画像は、大きさで仕分けられており、ユーザがその画像を見て、各有形成分に分類するようになっている。
【0008】
このような自動顕微鏡方式でも近年、有形成分を自動的に分類する装置が提案されているが、尿中有形成分は形態が多様であり、ダメージを受けた有形成分も多く、撮像画像を精度よく分類することには困難が伴っている。特に小型有形成分である、赤血球、とりわけ破砕赤血球、細菌、及び結晶を精度よく分類することは難しく、ユーザが再分類をするようにされている。
【0009】
尿中有形成分検査の自動分類装置として、フローサイトメータによる尿中有形成分測定装置UF−100(シスメックス社製)が提案されている。この装置では尿中有形成分を染色試薬で染色して、散乱光信号及び蛍光信号を組み合わせて、赤血球、白血球、上皮細胞、円柱及び細菌の分類を行うものである。
分類試薬は各有形成分の膜および核を染色する色素が用いられ、尿中有形成分の形態を保持するような組成で構成されている(特許文献1参照)。前述したように、尿中有形成分は形態も多様であり、ダメージを受けた有形成分も多く、フローサイトメータの散乱光信号強度と蛍光信号強度を組み合わせるだけでは精度良く分類することは難しい。そこで散乱光信号の強度とパルス幅、蛍光信号の強度とパルス幅を組み合わせることによって、尿中有形成分をそれぞれ分類するようにされている(特許文献2参照)。このフローサイトメータによる尿中有形成分測定装置は、様々な工夫で尿中有形成分の分類、形態情報を提供するように構成されている。例えば、赤血球の散乱光信号を解析することによって、尿中赤血球の由来(糸球体由来または糸球体由来)の情報を提供している(特許文献3参照)。
この装置によって、尿中有形成分を自動的に分類することが可能となり、尿検査の自動化に大きく寄与している。
【0010】
このように散乱光信号や蛍光信号を様々解析する装置を用いても、測定精度が妨げられる検体がある。その原因としては、細菌の分類が困難な検体があることがあげられる。細菌は大きさがかなり小さい一方で、多様な形態をとる。例えば、小型の細菌、すなわち集塊状でない球菌だけが出現している検体があげられる。前記装置では、一度の測定で、大型有形成分(円柱、上皮細胞)、中型有形成分(白血球、赤血球)、小型有形成分(細菌)を測定するように構成されており、数十μmの大型有形成分を測定する必要があるために、1μm以下の細菌までも精度良く検出することは困難であった。尿中有形成分検査での細菌測定は、顕微鏡検査で細菌が確認できるほどの量が出現しているかを調べる検査であり、一般的に約104 /ml以上の細菌の有無を調べる検査である。104 /ml以上の濃度であれば、球菌が増殖して集塊状になっていることが多く、通常は尿中有形成分検査の要求を満たすものである。しかし、小型の球菌が集塊状になっていない検体を見過ごすことがあった。
【0011】
逆に大型の細菌、すなわち集塊が大きくなった球菌や大型の桿菌が出現した検体では、細菌の出現領域が広がり、赤血球や白血球の出現領域にまで入り込むことがあった。また赤血球や白血球の出現領域まで広がらなくても、粘液糸、酵母様真菌や精子と出現領域がオーバーラップして、細菌測定に誤った結果を出すことがあった。
【0012】
一方、尿の細菌検査も、臨床目的によってはより高感度な検査を行うことが要求されている。しかし、顕微鏡を用いた目視検査で、少ない数の細菌を検出することは、特に小型の細菌では難しく、高感度な検査には用いられていない。この場合は、試料を培養して細菌を検査する培養検査が、尿中有形成分検査とは別途細菌質検査室で行われている。培養検査には培養する日数がかかるため、培養せずに高感度な細菌検査を行うことが提案されている。
【0013】
フローサイトメータによる細菌分析、すなわち細菌を染色試薬で染色して、散乱光信号と蛍光信号とで細菌を測定する方法が提案されている。特許文献4、5には、細菌以外の夾雑物を溶解するようにカチオン性界面活性剤を含む染色試薬とすることで、細菌と同じ位の大きさの夾雑物が含まれている尿のような試料も精度良く測定する方法が記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開平8−170960号公報
【特許文献2】特開平5−322285号公報
【特許文献3】特開平11−296207号公報
【特許文献4】特開2001−258590号公報
【特許文献5】特開2002−202302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
尿中有形成分検査も前述した装置によって、自動化が進み、従来の顕微鏡検査より、検査の定量化が進んできている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、尿中有形成分検査の定量化、高精度化を向上させることができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点に係る尿中有形成分分析装置は、尿検体に第1の染色試薬及び第2の染色試薬を混合して試料を調製する試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定する第1測定手段と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、尿中の細菌を測定する第2測定手段と
を備えることを特徴としている。
【0017】
本発明の第1の観点に係る尿中有形成分分析装置では、1つの尿検体に対して第1の染色試薬及び第2の染色試薬を混合して試料を調製し、前記第1測定手段により少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定し、且つ前記第2測定手段により細菌を測定する構成としたので、1つの分析装置で少なくとも赤血球を含む尿中有形成分と細菌とをそれぞれ高精度に測定することが可能となる。そして、細菌だけを独立して測定していることから、前述したような細菌の存在に起因する、自動分類装置における信頼性の低下(細菌は、大きいものから小さいものまでそのサイズが多様であり、また分布に規則性がないことから、画像上、他の白血球や赤血球等の成分とクロスオーバーしてしまい、成分の正確な区分けを困難にしている)を抑制することができる。また、顕微鏡による再検を指示する「Review」の判定をする場合でも、信頼性が低い理由を付した「Review」の判定をすることができる。
【0018】
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部をさらに備え、前記試料調製部は、前記第1のアリコートに前記第1の染色試薬を混合して第1の試料を調製する第1試料調製部と、前記第2のアリコートに前記第2の染色試薬を混合して第2の試料を調製する第2試料調製部とを備え、前記第1測定手段は、前記第1試料調製部で調製された第1の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するように構成されており、前記第2測定手段は、前記第2試料調製部で調製された第2の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記尿中の細菌を測定するように構成されていることが好ましい。1つの尿検体から、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料と、細菌を測定するための第2の試料とをそれぞれ調製し、前記第1の試料により少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定し、且つ前記第2の試料により細菌を測定する構成とすることにより、より一層高精度に尿中有形成分と細菌とを測定することが可能となる。
また、光学検出部を第1の試料と第2の試料とで共用しているので、装置構成を簡略化することができ、製品コストを低減させるとともに、装置を小型化することができる。
【0019】
前記第2測定手段による測定結果に基づいて、前記第1測定手段による測定結果における細菌の影響を判定するように構成されていることが好ましい。第1測定手段の測定対象ある第1試料には細菌が含まれている場合があり、このため第1測定手段の測定結果に細菌が影響することがある。このように第1測定手段の測定結果に細菌の影響があったとしても、第2測定手段によって尿中の細菌を高精度に測定することができるため、第2測定結果を利用すれば第1測定結果における細菌の影響を判定することができる。
【0020】
前記散乱光受光部が、前記試料から発せられる前方散乱光及び側方散乱光を受光可能であり、前記第1測定手段が、両散乱光に基づく尿中有形成分の測定ができるように構成されているのが好ましい。この場合、側方散乱光を利用することで、例えば上皮と白血球、又は上皮と細菌とを区分けすることが可能となり、自動分類の精度を向上させる(例えば、擬陽性の判定を低減させる)ことができるとともに、顕微鏡による再検に廻す検体の数を減らすことができる。
【0021】
前記第1の染色試薬が、膜染色する色素を含有しており、前記第2の染色試薬が、核染色する色素を含有しているのが好ましい。尿中有形成分には、赤血球のような核を有しないものが含まれているため、第1の染色試薬が膜染色する色素を含有することにより、このような核を有しないものも含めて尿中有形成分を検出することができる。また、第2の染色試薬には核染色する色素が含有されているため、細菌の核が効果的に染色され、サイズの小さい細菌であっても当該細菌を精度よく測定することが可能となる。
【0022】
前記第2試料調製部を、前記第2のアリコートに界面活性剤を混合して前記第2の試料を調製するように構成することができる。この場合、界面活性剤により細菌膜にダメージを与えることができるため、第2の染色試薬が含有する色素により効率よく細菌の核を染色することができる。その結果、前記細菌の測定をさらに精度よく行うことができる。
【0023】
第2のアリコートに界面活性剤を混合する場合において、前記第1測定手段が測定動作を完了した後に、前記第2測定手段が測定動作を実行するように構成することができる。第2の試料には界面活性剤が含まれることから、細菌を測定した後に尿中有形成分の測定を行うと、試料のキャリーオーバーにより第1の試料に界面活性剤が混入し、赤血球を含む尿中有形成分の膜にダメージを与え当該尿中有形成分の測定に影響を与えることがあるが、かかる構成とすることにより、第1の試料に界面活性剤が混入するのを防止することができ、精度よく尿中有形成分の測定を行うことができる。
【0024】
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部をさらに備えることができる。試料の温度を高くするほど、当該試料に含まれる赤血球や細菌等の所定部位(膜や核)を速く染色することができ、測定時間を短縮することができるが、一方、赤血球は、高温によりダメージを受け易く、温度を高くしすぎると正確な測定を行うことができなくなる。そこで、他の尿中有形成分に比べて耐熱性の高い細菌を測定するための第2の試料の温度を尿中有形成分を測定するための第1の試料の温度よりも高くなるように調節することにより、換言すれば、第1試料調製部と第2試料調製部とをそれぞれ測定に適した温度に調節することにより、赤血球を含む尿中有形成分及び細菌をともに高精度に測定することができる。
【0025】
前記検体分配部が、尿検体を定量する定量機構からなっており、
前記温度調節部が、前記第1試料調製部の温度調節を行う第1温度調節部と、前記第2試料調製部の温度調節を行う第2温度調節部とで構成されており、且つ
前記定量機構、第2試料調製部及び第2温度調節部が、熱的に一体となるように構成されているのが好ましい。定量機構、第2試料調製部及び第2温度調節部を熱的に一体となるように構成することにより、定量機構にて温度調節された試料が第2試料調製部に供給される際に冷えるのを防止することができることから、温度調節のロスを低減させることができる。この場合、第2試料調製部よりも低温に保たれる第1試料調製部に供給される試料については、定量機構(第2の温度に保たれる)から供給される際に第1の温度付近に自然に低下するように流路を設定することができる。
【0026】
前記光源を半導体レーザとすることができる。光源として、低コスト、小型、低消費電力、且つ長寿命の半導体レーザを採用することにより、製品のコストを低減させるとともに、装置の小型化、省電力化及び長寿命化を図ることができる。
【0027】
前記第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬は、吸収波長のピークが前記半導体レーザの発光波長の近傍に存在するのが好ましい。第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬の吸収波長のピークを、半導体レーザの発光波長の近傍に存在するように選定することにより、染色された尿中有形成分及び細菌を半導体レーザにより測定することが可能になる。
【0028】
前記第2測定手段を、尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することができる。尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することにより、尿検査で求められている感度で細菌測定を行うことができる。
【0029】
また、本発明の第2の観点に係る尿中有形成分分析装置は、尿中に含まれる細菌と、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分とを測定する尿中有形成分分析装置であって、
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部と、
前記第1のアリコートに第1の染色試薬を混合して、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する第1試料調製部と、
前記第2のアリコートに第2の染色試薬を混合して、細菌を測定するための第2の試料を調製する第2試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部と
を備えることを特徴としている。
【0030】
本発明の第2の観点に係る尿中有形成分分析装置では、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、細菌を測定するための第2の試料を調製する第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部を備えている。前述したように、試料の温度を高くするほど、当該試料に含まれる赤血球や細菌等の所定部位(膜や核)を速く染色することができ、測定時間を短縮することができるが、一方、赤血球は、高温によりダメージを受け易く、温度を高くしすぎると正確な測定を行うことができなくなる。そこで、他の尿中有形成分に比べて耐熱性の高い細菌を測定するための第2の試料の温度を尿中有形成分を測定するための第1の試料の温度よりも高くなるように調節することにより、換言すれば、第1試料調製部と第2試料調製部とをそれぞれ測定に適した温度に調節することにより、赤血球を含む尿中有形成分及び細菌をともに高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の尿中有形成分分析装置によれば、尿中に含まれる細菌、及び少なくとも赤血球を含む尿中有形成分の両方の分析を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の尿中有形成分分析装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る尿中有形成分分析装置及びこれに付属したパソコンの斜視説明図である。なお、図1では、分かり易くするために尿中有形成分分析装置の構成要素を収容する筐体を部分的に省略している。
【0033】
[装置の構成]
図1において、尿中有形成分分析装置Uは、試料を調製するための試料調製部2と、サンプルラック(試験管立て)3を移送するラックテーブル4と、試料から尿中有形成分や細菌の情報を検出するための光学検出部5と、回路部14とを備えている。筐体側面にはアーム15を介して支持台16が取り付けられ、その上にパソコン13が設置されている。パソコン13は、尿中有形成分分析装置Uの回路部14とLAN接続されている。
【0034】
図2は前記試料調製部2及び光学検出部5の概略機能構成を示す図である。図において、試験管Tに入った尿(検体)は、吸引管17を用いて図示しないシリンジポンプにより吸引され、検体分配部1によって試料調製部へ分注される。本実施の形態における試料調製部は試料調製部(第1試料調製部)2uと試料調製部(第2試料調製部)2bとで構成されており、検体分配部1は、試料調製部2uと試料調製部2bのそれぞれに尿(検体)の定量されたアリコートが分配される。
【0035】
試料調製部2uの尿アリコートは、希釈液19uと染色液(染色試薬)18uが混合されて当該染色液(染色試薬)18uに含まれる色素により染色が施される。この染色試料は赤血球、白血球、上皮細胞、円柱等の比較的大きい尿中有形成分を分析するための懸濁液となる。
一方、 試料調製部2bの尿アリコートは、希釈液19bと染色液(染色試薬)18bが混合されて当該染色液(染色試薬)18bに含まれる色素により染色が施される。この染色試料は細菌を分析するための懸濁液となる。
【0036】
以上のようにして調製された2種類の懸濁液(試料)は、先に試料調製部2uの懸濁液(第1の試料)が光学検出部5に導かれ、シースフローセル51においてシース液に包まれた細い流れを形成し、そこに、レーザ光が照射される。その後同様に、試料調製部2bの懸濁液(第2の試料)が光学検出部5に導かれ、シースフローセル51において細い流れを形成し、レーザ光が照射される。このような動作は、後述のマイクロコンピュータ11(制御装置)の制御により、図示しない駆動部や電磁弁等を動作させることにより、自動的に行われる。
【0037】
図3は、光学検出部5の構成を示す図である。図において、コンデンサレンズ52は、光源である半導体レーザ53から放射されたレーザ光をシースフローセル51に集光し、集光レンズ54は尿中の有形成分の前方散乱光を散乱光受光部であるフォトダイオード55に集光する。また、他の集光レンズ56は前記有形成分の側方散乱光と側方蛍光とをダイクロイックミラー57に集光する。ダイクロイックミラー57は、側方散乱光を散乱光受光部であるフォトマルチプライヤ58へ反射し、側方蛍光を蛍光受光部であるフォトマルチプライヤ59の方へ透過させる。これらの光信号は、尿中の有形成分の特徴を反映したものとなっている。そして、フォトダイオード55、フォトマルチプライヤ58及びフォトマルチプライヤ59は光信号を電気信号に変換し、それぞれ、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL)を出力する。これらの出力は、図示しないプリアンプにより増幅された後、次段の処理に供される。
【0038】
なお、光源として、前記半導体レーザに代えてガスレーザを用いることもできるが、低コスト、小型、且つ低消費電力である点より半導体レーザを採用するのが好ましく、半導体レーザの採用により製品コストを低減させるとともに、装置の小型化及び省電力化を図ることができる。また、半導体レーザのうち、低コスト且つ長寿命であり、メーカーからの供給が安定していることから、赤色半導体レーザを用いるのが好ましい。
【0039】
図6は、尿中有形成分分析装置Uの全体構成を示すブロック図である。図において、尿中有形成分分析装置Uは、前述した検体分配部1、試料調製部2及び光学検出部5と、この光学検出部5の出力をプリアンプにより増幅したものに対して増幅やフィルタ処理等を行うアナログ信号処理回路6と、アナログ信号処理回路6の出力をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ7と、ディジタル信号に対して所定の波形処理を行うディジタル信号処理回路8と、ディジタル信号処理回路8に接続されたメモリ9と、アナログ信号処理回路6及びディジタル信号処理回路8と接続されたマイクロコンピュータ11と、マイクロコンピュータ11に接続されたLANアダプタ12とを備えている。外部のパソコン13は、このLANアダプタ12を介して尿中有形成分分析装置UとLAN接続されており、このパソコン13により、尿中有形成分分析装置Uで取得したデータの解析が行われる。前記アナログ信号処理回路6、A/Dコンバータ7、ディジタル信号処理回路8及びメモリ9は、光学検出部5の出力する電気信号に対する信号処理回路10を構成している。
【0040】
(尿中有形成分測定試薬)
これら尿中有形成分を測定する試薬としては、特開平8-170690に詳細な説明がある。この試薬の一つの実施形態は、染料としては、核を有していない有形成分をも染色するために、膜染色をする染料が選ばれる。試薬としては、赤血球溶血を防ぐ目的と安定した蛍光強度を得るために浸透圧補償剤が加えられ、分類測定に適するような浸透圧となるよう100〜600mOsm/kgに調整される。この試薬によって尿中有形成分の細胞膜、核(膜)が染色される。膜染色する色素を含有する染色試薬としては縮合ベンゼン誘導体が用いられ、例えば、シアニン系色素であるNK−529(商品名。林原生物化学研究所製)を用いることができる。なお、この染色試薬は、細胞膜だけでなく核膜も染色するようになっている。このような染色試薬を用いると、白血球や上皮等の有核細胞では、細胞質(細胞膜)における染色強度と核(核膜)における染色強度とが合わさり、これによって白血球や上皮等の有核細胞を赤血球等の核のない尿中有形成分と弁別することができる。
(細菌分析用試薬)
細菌を、同じ位の大きさの夾雑物が含まれている尿のような試料からも精度良く測定する試薬としては、特開2001−258590に詳細な説明がある。この試薬の一つの実施形態は、染料としては核酸を染色する染料が用いられる。
また、核染色する色素を含有する染色試薬としては、例えば、以下の(化1)に示される特開2002−202302号公報記載のシアニン系色素を用いることができる。
【0041】
【0042】
このうち、特に、次の(化2)に示されるシアニン系色素を好適に用いることができる。
【0043】
【0044】
この場合において、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための尿検体に加えられる染色試薬(第1の染色試薬)が膜染色する色素を含有し、一方、細菌を測定するための尿検体に加えられる染色試薬(第2の染色試薬)が核酸を染色する色素を含有しているのが好ましい。尿中有形成分には、赤血球のような核を有しないものが含まれているため、第1の染色試薬が膜染色する色素を含有することにより、このような核を有しないものも含めて尿中有形成分を検出することができる。また、第2の染色試薬が核染色する色素を含有することにより、細菌の核が効果的に染色され、サイズの小さい細菌であっても当該細菌を精度よく測定することが可能となる。
【0045】
また、前記第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬は、吸収波長のピークが前記半導体レーザの発光波長の近傍に存在するのが好ましい。第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬の吸収波長のピークを、半導体レーザの発光波長の近傍に存在するように選定することにより、染色された尿中有形成分及び細菌を半導体レーザにより測定することが可能になる。図4は、このような第1の染色試薬の一例(NK−529(商品名。林原生物化学研究所製)を含有する染色試薬))の吸収波長と吸光度との関係を示しており、赤色半導体レーザの発光波長(635nm)の近傍の640nmに吸収波長のピークが存在している。また、図5は、第2の染色試薬の一例(前記(化2)で示される、特開2002−202302号公報記載のシアニン系色素を含有する染色試薬))の吸収波長と吸光度との関係を示しており、赤色半導体レーザの発光波長(635nm)の近傍の636nmに吸収波長のピークが存在している。なお、図5は、試薬の温度が15℃の場合と35℃の場合について吸光度の変化が示されているが、常温前後の温度であれば、試薬の吸光度に大きな変化がないことが分かる。
【0046】
細菌測定用試薬、染料が膜を通過して染色が早く進むこと、粘液糸や赤血球破片などの夾雑物を収縮させるように、カチオン系界面活性剤が含まれる。
この場合、界面活性剤により細菌の細胞膜にダメージを与えることができるため、第2の染色試薬が含有する色素により効率よく細菌の核酸を染色することができる。その結果、前記細菌の測定を短時間の染色処理で、さらに精度よく行うことができる。なお、第2のアリコートに界面活性剤を混合する場合、尿中有形成分の測定が完了した後に細菌の測定が行われるように構成するのが好ましい。第2の試料には界面活性剤が含まれることから、細菌を測定した後に尿中有形成分の測定を行うと、試料のキャリーオーバーにより第1の試料に界面活性剤が混入し、赤血球を含む尿中有形成分の膜にダメージを与え当該尿中有形成分の測定に影響を与えることがあるが、かかる構成とすることにより、第1の試料に界面活性剤が混入するのを防止することができ、精度よく尿中有形成分の測定を行うことができる。
【0047】
本発明では、1つの尿検体から、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料と、細菌を測定するための第2の試料とをそれぞれ調製し、前記第1の試料により少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定し、且つ前記第2の試料により細菌を測定する構成としている。これにより、1つの分析装置で少なくとも赤血球を含む尿中有形成分と細菌とをそれぞれ高精度に測定することが可能となる。また、光学検出部を第1の試料と第2の試料とで共用しているので、装置構成を簡略化することができ、製品コストを低減させるとともに、装置を小型化することができる。
【0048】
図7は本実施の形態に係る尿中有形成分分析装置の定量機構及び試料調製部の概略斜視図であり、図8はその説明図である。本実施の形態では、所定量の尿検体を試料調製部(第1試料調製部)2uと試料調製部(第2試料調製部)2bとに分配する定量機構として、常用されているサンプリングバルブ30が採用されている。このサンプリングバルブ30は、2枚の円盤状の固定素子と、両固定素子に挟まれた可動素子とからなっており、前記可動素子はモータ31により回動操作される。
【0049】
前記サンプリングバルブ30は、互いに重ね合わされた2枚のアルミナセラミック製の円盤30a、30bを備えている。円盤30a、30bの内部には試料を流通するための流路が形成されており、一方の円盤30bがその中心軸を回転中心として回転することにより前記流路が分断され、これによって試料を定量するようになっている。かかるサンプリングバルブ30は、内部に試料用の流路32を有する流体カセット33を介して前記試料調製部2bと一体的に構成されている。すなわち、サンプリングバルブ30、流体カセット33及び試料調製部2bは、熱的に一体となるように、互いに密着した状態で配設されており、サンプリングバルブ30の温度が、試料調製部2bの温度と略等しくなるように構成されている。これに対し、試料調製部2uは、筐体に固定された取付プレート34に所定のクリアランスSを設けてボルト35で固定されており、このため試料調製部2uは、前記サンプリングバルブ30や試料調製部2bとは、熱的に略隔離された状態となっている。
【0050】
前記試料調製部2u及び試料調製部2bは、それぞれ温度調節部を構成するヒータ36u、36bによって加熱されるが、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する試料調製部2uの温度を第1の温度に調節するとともに、細菌を測定するための第2の試料を調製する試料調製部2bの温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節している。具体的には、試料調製部2uは35±2℃程度になるように、試料調製部2bは、これよりも高い42±2℃程度になるように調節される。試料の温度を高くするほど、当該試料に含まれる赤血球や細菌等の所定部位(膜や核)を速く染色することができ、測定時間を短縮することができるが、一方、赤血球は、高温によりダメージを受け易く、温度を高くしすぎると正確な測定を行うことができなくなる。そこで、他の尿中有形成分に比べて耐熱性の高い細菌を測定するための第2の試料の温度を尿中有形成分を測定するための第1の試料の温度よりも高くなるように調節することにより、換言すれば、試料調製部2uと試料調製部2bとをそれぞれ測定に適した温度に調節することにより、赤血球を含む尿中有形成分及び細菌をともに高精度に測定することができる。なお、試料調製部2uと試料調製部2bの温度は、例えばサーミスタにより測定することができる。そして、この測定結果に基づいて前記ヒータ36u、36bをオンオフ制御することにより、試料調製部2u及び試料調製部2bを前記所定範囲の温度に調節することができる。
【0051】
また、サンプリングバルブ30と試料調製部2bとを熱的に一体となるように構成することにより、サンプリングバルブ30にて温度調節された試料が試料調製部2bに供給される際に冷えるのを防止することができることから、温度調節のロスを低減させることができる。この場合、試料調製部2bよりも低温に保たれる試料調製部2uに供給される試料については、サンプリングバルブ30から供給される際に、前記クリアランスSを試料の流路が通るようにすることで自然に低下させることができる。
【0052】
[分析手順]
つぎに、図9〜10に示されるフローチャートに従って、本発明の尿中有形成分分析装置を用いた尿の分析手順について説明する。
【0053】
まず、ホストコンピュータで管理されている検体番号や、当該検体番号と関連付けられた患者の氏名、年齢、性別、診療科等の患者情報や、測定項目等の検体情報を予め当該ホストコンピュータから取得しておく(ステップS1)。ついで、測定実行の指示がパソコン13のキーボードやマウスからなる入力手段によりなされる(ステップS2)。この指示を受けて、試料入りの試験管Tが立てられたサンプルラック3がラックテーブル4により所定の吸引位置の移送される(ステップS3)。この吸引位置において、前記試験管Tが回転させられ、当該試験管Tの外周面に貼付されたIDラベルのバーコードが読み取られる(ステップS4)。これにより、試料の検体番号を知ることができ、この検体番号をステップS1において取得した検体情報と照合させることにより、当該試料の測定項目を特定することができる。
【0054】
ついで、吸引管17が下降して試験管T内の試料中に当該吸引管17の先端部が挿入され、この状態で前記試料を軽く吸引及び吐出することを繰り返すことにより、試料が攪拌される(ステップS5)。攪拌後、所定量(800μL)の試料が吸引され、サンプリングバルブ30によって、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分(SED)を測定するための試料を調製する試料調製部2uと、尿中に含まれる細菌(BAC)を測定するための試料を調製する試料調製部2bとにそれぞれ150μL及び62.5μLずつ分注される(ステップS7及びステップS11)。
【0055】
試料調製部2uには、前記試料とともに所定量の染色液(染色試薬)及び希釈液が定量されて分注される(ステップS8及びステップS9)。一方、試料調製部2bにも同様にして、前記試料とともに所定量の染色液(染色試薬)及び希釈液が定量されて分注される(ステップS12及びステップS13)。試料調製部2u及び試料調製部2bは、それぞれヒータ36u、36bによって所定温度になるように加温されており、この状態でプロペラ状の攪拌具(図示せず)により試料の攪拌が行われる(ステップS10及びステップS14)。なお、ステップS9において試料調整部2uに分注される希釈液には界面活性剤が含まれており、これにより細菌膜にダメージが与えられ、細菌の核を効率よく染色することが可能となる。
【0056】
ついで、光学検出部5のシースフローセル51にシース液が送液され(ステップS15)、その後、まず尿中有形成分(SED)測定用の試料が光学検出部5に導かれ、前記シースフローセル51においてシース液に包まれた細い流れ(シースフロー)が形成される(ステップS16)。そして、このようにして形成されたシースフローに半導体レーザ53からのレーザビームが照射される(ステップS17)。尿中有形成分の測定を先に行うのは、細菌測定用試料には界面活性剤が含まれることから、細菌を測定した後に尿中有形成分の測定を行うと、試料のキャリーオーバーにより尿中有形成分測定用の試料に界面活性剤が混入し、赤血球を含む尿中有形成分の膜にダメージを与え当該尿中有形成分の測定に影響を与えることがあるからである。
【0057】
前記レーザビームの照射により生じる尿中有形成分の前方散乱光、蛍光及び側方散乱光は、それぞれフォトダイオード55、フォトマルチプライヤ59及びフォトマルチプライヤ58により受光されて電気信号に変換され、前方散乱光信号(FSC)、蛍光信号(FL)及び側方散乱光信号(SSC)として出力される(ステップS18〜20)。これらの出力は、プリアンプにより増幅される(ステップS21〜23)。
【0058】
一方、尿中有形成分(SED)測定用の試料による測定が終了すると、引き続いてステップS14で調製された試料を用いて尿中の細菌が測定される。この場合、尿中有形成分の測定で用いた光学検出部5により、前記ステップS15〜23と同様にして前方散乱光信号(FSC)及び蛍光信号(FL)が出力され、且つ増幅される。
【0059】
増幅された前記前方散乱光信号(FSC)、蛍光信号(FL)及び側方散乱光信号(SSC)は、前記信号処理回路10(図6参照)においてディジタル信号に変換されるとともに所定の波形処理が施され(ステップS24〜27)、LANアダプタ12を介してパソコン13に送られる。なお、ステップS25における「FLH」は、蛍光信号(FL)を高いゲインで増幅した高感度なものであり、ステップS26「FLL」は同じく蛍光信号(FL)を低いゲインで増幅した低感度なものである。
【0060】
そして、パソコン13において尿中有形成分(SED)の生データが作成される(ステップS28)とともに、このデータに基づいてスキャッタグラムが作成される(ステップS29)。ついで、アルゴリズム解析により作成したスキャッタグラムのクラスタリングが行われ(ステップS30)、各クラスタ毎に粒子の計数が行われる(ステップS31)。
【0061】
また、細菌についても同様にして、増幅された前記前方散乱光信号(FSC)及び蛍光信号(FL)は、前記信号処理回路10においてディジタル信号に変換されるとともに所定の波形処理が施される(ステップS32〜34)。なお、ステップS32における「FSCH」は、前方散乱光信号(FSC)を高いゲインで増幅した高感度なものであり、ステップS33「FSCL」は同じく前方散乱光信号(FSC)を低いゲインで増幅した低感度なものである。
【0062】
そして、LANアダプタ12を介してパソコン13に送られる。そして、パソコン13において細菌(BAC)の生データが作成される(ステップS35)とともに、このデータに基づいてスキャッタグラムが作成される(ステップS36)。ついで、アルゴリズム解析により作成したスキャッタグラムのクラスタリングが行われ(ステップS37)、各クラスタ毎に粒子の計数が行われる(ステップS38)。
以上のようにして得られる測定結果は、パソコン13の表示手段であるディスプレイ上に表示される(ステップS39)。
【0063】
尿中有形成分(SED)の測定結果は、前方散乱光、側方散乱光及び蛍光の各信号からスキャッタグラムが生成される。
図11aは、横軸を蛍光強度(低感度)(FLL)とし、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムである。蛍光信号強度の大きな領域に核を有する大きな細胞である上皮細胞(EC)と白血球(WBC)が現れる。大半の上皮細胞は白血球より細胞が大きく、白血球より蛍光強度の大きな領域に出現するが、小型上皮細胞には白血球と出現領域がオーバラップするものもある。この両者を識別するために側方散乱光信号が用いられる。図11bは、横軸を蛍光強度(SSC)、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムである。上皮細胞は白血球より側方散乱光強度が大きい領域に出現するため、このスキャッタグラムより上皮細胞の識別が行われる。
【0064】
図11cは、横軸を蛍光強度(高感度)(FLH)とし、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムであり、蛍光強度が低い領域を表したものである。赤血球(RBC)は核を有していないので蛍光強度の低い領域に分布する。結晶によっては赤血球の出現領域に現れることもあるので、結晶の出現を確認するため側方散乱光信号が用いられる。図11bは、横軸を蛍光強度(SSC)とし、縦軸を前方散乱光強度(FSC)としたときのスキャッタグラムである。結晶は側方散乱光強度の分布中心が一定せず、大きい領域にも出現するため、このスキャッタグラムより赤血球との識別が行われる。
【0065】
図11dは、横軸を蛍光幅(FLLW)とし、縦軸を蛍光幅2(FLLW2)としたときのスキャッタグラムである。FLLWは、細胞膜が染色された有形成分を捉える蛍光信号の幅を表しており、FLLW2は、核などのより強い蛍光信号の幅を表している。図に示すように、円柱(CAST)のFLLWは大きく、内容物がある円柱(P.CAST)はFLLW2が大きい。また、内容物のない円柱(CAST)はFLLW2が低い領域に出現する。
【0066】
もう一方の細菌測定結果においては、前方散乱光信号と蛍光信号とからスキャッタグラムが生成される。
図11eは、横軸を蛍光強度(高感度)(B−FLH)とし、縦軸を前方散乱光強度(高感度)(B−FSC)としたときのスキャッタグラムである。尿中有形成分測定では、図11cのスキャッタグラムのように、細菌の出現領域は粘液糸(MUCUS)、YLC(酵母様真菌)、SPERM(精子)の出現領域とオーバラップする。しかし、細菌測定では、細菌測定試薬によって、粘液糸や赤血球破片などの夾雑物を収縮させるため、細菌だけが独立して出現する領域が現れるとともに、尿中有形成分測定の場合に比べて約10倍感度を上げて測定しているため、小型細菌も高精度に検出でき、正確な細菌測定結果が提供される。
【0067】
本発明では、前述したように、細菌だけを独立して測定していることから、細菌の存在に起因する、自動分類装置における信頼性の低下を抑制することができる。また、顕微鏡による再検を指示する「Review」の判定をする場合でも、信頼性が低い理由を付した「Review」の判定をすることができる。
【0068】
図11bに細菌(BACT)の標準的な出現領域を示しているが、出現領域は細菌の種類によって異なる。
図13は、球菌が大量に出現して連鎖している検体の測定例である。このスキャッタグラムでは、細菌(BACT)が出現している領域が、横軸(蛍光強度)に対して約45度の角度で分布している。つまり、細菌(BACT)が前方散乱光強度(FSC)の高い領域にも出現している。このような検体では、尿中有形成分(SED)測定において、広範な範囲で細菌が出現し、赤血球出現領域のうちの前方散乱光強度(FSC)の低い領域にまで細菌が現れてしまう。このような検体では赤血球測定の信頼性が低い。
一方、図12は、桿菌が含まれている検体の測定例である。このスキャッタグラムでは、細菌(BACT)が出現している領域が、横軸(蛍光強度)に対して低角度(約5〜10度)の角度で分布している。つまり、細菌(BACT)が前方散乱光強度(FSC)の低い領域に出現している。このような検体では、桿菌が大量に含まれていても、細菌出現領域は赤血球出現領域より前方散乱光強度(FSC)が低い領域であり、赤血球測定は細菌の影響を受けることがない。
同様に尿中有形成分(SED)測定での白血球(WBC)出現領域への細菌の影響も、細菌測定(BAC)での細菌分布から確認することができる。
【0069】
このように細菌測定(BAC)から、細菌の分布を得ることで、尿中有形成分(SED)の測定における細菌出現領域を推定することにより、他の有形成分の測定信頼性が確認される。したがって、細菌測定(BAC)の分布に応じて、顕微鏡による再検指示「Review」の判定をすることができ、擬陽性の判定を減らし、適切な再検指示をすることができる。また、信頼性の高い分画ができないことに起因する再検の判定を減らすこともできる。
【0070】
また、尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することができる。具体的には、測定時間を長く設定したり、測定試料の量を多く設定したりすることにより、5×103個/mlという低濃度の細菌を測定することができる。尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することができるように構成することにより、尿検査で求められている感度で細菌測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の尿中有形成分分析装置の一実施の形態及びこれに付属したパソコンの斜視説明図である。
【図2】尿中有形成分分析装置の試料調製部及び光学検出部の概略機能構成を示す図である。
【図3】光学検出部の構成を示す図である。
【図4】第1の染色試薬の一例の吸収波長と吸光度との関係を示す図である。
【図5】第2の染色試薬の一例の吸収波長と吸光度との関係を示す図である。
【図6】図1に示される尿中有形成分分析装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】尿中有形成分分析装置の定量機構及び試料調製部の概略斜視図である。
【図8】尿中有形成分分析装置の定量機構及び試料調製部の説明図である。
【図9】本発明の尿中有形成分分析装置を用いた尿の分析手順を示すフローチャート(前半部)である。
【図10】本発明の尿中有形成分分析装置を用いた尿の分析手順を示すフローチャート(後半部)である。
【図11】従来の自動分類装置において得られたスキャッタグラムの一例を示す図である。
【図12】図11と同じ検体について、本発明の尿中有形成分分析装置において得られた細菌系のスキャッタグラムを示す図である。
【図13】図11と同じ検体について、本発明の尿中有形成分分析装置において得られた沈査系のスキャッタグラムを示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 検体分配部
2 試料調製部
3 サンプルラック
4 ラックテーブル
5 光学検出部
13 パソコン
15 アーム
16 支持台
17 吸引管
18 染色液
19 希釈液
30 サンプリングバルブ
31 モータ
32 流路
33 流体カセット
34 取付プレート
36 ヒータ
U 尿中有形成分分析装置
T 試験管
S クリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿検体に第1の染色試薬及び第2の染色試薬を混合して試料を調製する試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定する第1測定手段と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、尿中の細菌を測定する第2測定手段と
を備えることを特徴とする尿中有形成分分析装置。
【請求項2】
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部をさらに備え、
前記試料調製部は、前記第1のアリコートに前記第1の染色試薬を混合して第1の試料を調製する第1試料調製部と、前記第2のアリコートに前記第2の染色試薬を混合して第2の試料を調製する第2試料調製部とを備え、
前記第1測定手段は、前記第1試料調製部で調製された第1の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するように構成されており、
前記第2測定手段は、前記第2試料調製部で調製された第2の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記尿中の細菌を測定するように構成されている請求項1に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項3】
前記第2測定手段による測定結果に基づいて、前記第1測定手段による測定結果における細菌の影響を判定するように構成されている請求項1又は2に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項4】
前記散乱光受光部が、前記試料から発せられる前方散乱光及び側方散乱光を受光可能であり、前記第1測定手段が、両散乱光に基づく尿中有形成分の測定ができるように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項5】
前記第1の染色試薬が、膜染色する色素を含有しており、前記第2の染色試薬が、核染色する色素を含有している請求項1〜4のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項6】
前記第2試料調製部が、前記第2のアリコートに界面活性剤を混合して前記第2の試料を調製するように構成されている請求項2に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項7】
前記第1測定手段が測定動作を完了した後に、前記第2測定手段が測定動作を実行するように構成されている請求項6に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項8】
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部をさらに備えている請求項2に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項9】
前記検体分配部が、尿検体を定量する定量機構からなっており、
前記温度調節部が、前記第1試料調製部の温度調節を行う第1温度調節部と、前記第2試料調製部の温度調節を行う第2温度調節部とで構成されており、且つ
前記定量機構、第2試料調製部及び第2温度調節部が、熱的に一体となるように構成されている請求項8に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項10】
前記光源が半導体レーザである請求項1〜9のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項11】
前記第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬は、吸収波長のピークが前記半導体レーザの発光波長の近傍に存在する請求項10に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項12】
前記第2測定手段は、尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することが可能である請求項1〜11のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項13】
尿中に含まれる細菌と、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分とを測定する尿中有形成分分析装置であって、
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部と、
前記第1のアリコートに第1の染色試薬を混合して、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する第1試料調製部と、
前記第2のアリコートに第2の染色試薬を混合して、細菌を測定するための第2の試料を調製する第2試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部と
を備えることを特徴とする尿中有形成分分析装置。
【請求項1】
尿検体に第1の染色試薬及び第2の染色試薬を混合して試料を調製する試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定する第1測定手段と、
前記試料調製部で調製された試料が前記光学検出部に供給されたときに当該光学検出部により検出された散乱光及び蛍光に基づいて、尿中の細菌を測定する第2測定手段と
を備えることを特徴とする尿中有形成分分析装置。
【請求項2】
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部をさらに備え、
前記試料調製部は、前記第1のアリコートに前記第1の染色試薬を混合して第1の試料を調製する第1試料調製部と、前記第2のアリコートに前記第2の染色試薬を混合して第2の試料を調製する第2試料調製部とを備え、
前記第1測定手段は、前記第1試料調製部で調製された第1の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するように構成されており、
前記第2測定手段は、前記第2試料調製部で調製された第2の試料が前記光学検出部に供給されたときに検出された散乱光及び蛍光に基づいて、前記尿中の細菌を測定するように構成されている請求項1に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項3】
前記第2測定手段による測定結果に基づいて、前記第1測定手段による測定結果における細菌の影響を判定するように構成されている請求項1又は2に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項4】
前記散乱光受光部が、前記試料から発せられる前方散乱光及び側方散乱光を受光可能であり、前記第1測定手段が、両散乱光に基づく尿中有形成分の測定ができるように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項5】
前記第1の染色試薬が、膜染色する色素を含有しており、前記第2の染色試薬が、核染色する色素を含有している請求項1〜4のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項6】
前記第2試料調製部が、前記第2のアリコートに界面活性剤を混合して前記第2の試料を調製するように構成されている請求項2に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項7】
前記第1測定手段が測定動作を完了した後に、前記第2測定手段が測定動作を実行するように構成されている請求項6に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項8】
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部をさらに備えている請求項2に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項9】
前記検体分配部が、尿検体を定量する定量機構からなっており、
前記温度調節部が、前記第1試料調製部の温度調節を行う第1温度調節部と、前記第2試料調製部の温度調節を行う第2温度調節部とで構成されており、且つ
前記定量機構、第2試料調製部及び第2温度調節部が、熱的に一体となるように構成されている請求項8に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項10】
前記光源が半導体レーザである請求項1〜9のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項11】
前記第1の染色試薬及び前記第2の染色試薬は、吸収波長のピークが前記半導体レーザの発光波長の近傍に存在する請求項10に記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項12】
前記第2測定手段は、尿中の細菌濃度が5×103個/ml以上のときに、当該尿中の細菌を測定することが可能である請求項1〜11のいずれかに記載の尿中有形成分分析装置。
【請求項13】
尿中に含まれる細菌と、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分とを測定する尿中有形成分分析装置であって、
尿検体を第1のアリコートと第2のアリコートとに分配する検体分配部と、
前記第1のアリコートに第1の染色試薬を混合して、少なくとも赤血球を含む尿中有形成分を測定するための第1の試料を調製する第1試料調製部と、
前記第2のアリコートに第2の染色試薬を混合して、細菌を測定するための第2の試料を調製する第2試料調製部と、
供給された試料へ光を照射する光源と、当該試料から発せられる散乱光を受光する散乱光受光部と、前記試料から発せられる蛍光を受光する蛍光受光部とを備える光学検出部と、
前記第1試料調製部の温度を第1の温度に調節するとともに、前記第2試料調製部の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に調節する温度調節部と
を備えることを特徴とする尿中有形成分分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−309728(P2007−309728A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137511(P2006−137511)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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