説明

屋内クレーンの施工方法及び装置

【課題】省スペースでかつ短期間で施工可能な屋内クレーンの施工方法を提供する。
【解決手段】建屋10内の天井走行レール18に対し、天井走行クレーンのガーダW等を上架又は下架させるのに先立って、建屋10の天井鉄骨12における中央部に4個のワイヤークランプジャッキ15a〜15dを集約的に仮設し、該4個のワイヤークランプジャッキ15a〜15dにより前記ガーダW等を上架又は下架させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋内のレードルクレーンや天井走行クレーン等の屋内クレーンの施工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の屋内クレーンを、建屋の新設又は既設を問わず、上架又は下架する際には、後述するレッカー工法とウインチ工法(建屋梁工法)とジャッキアップ(ダウン)工法の何れかが採用されることは良く知られている。
【0003】
レッカー工法は、例えば図5に示すように、建屋100の外から(内からの場合もある)大型重機であるレッカー(クローラ)101を使用して天井走行クレーン等におけるガーダ102等を建屋100内のレール103上に上架する工法である。
【0004】
ウインチ工法(建屋梁工法)は、例えば図6に示すように、建屋100の梁104に吊設された吊具105aや吊り具105bをそれぞれワイヤー106a,106bを介して床上に設置したウインチ107a,107bによりガーダ等を巻き上げる工法である。
【0005】
ジャッキアップ(ダウン)工法は、例えば図7に示すように、ジャッキ108a,108bでガーダ(主桁)102を押し上げた後、支持架構109上のターンテーブル110にガーダ(主桁)102を仮受けするなどして、ガーダ(主桁)102を建屋内のレール103上に上架する工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−255477号公報
【特許文献2】特開平9−240988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、屋内クレーンの施工にあたっては、
(1)建屋内のスペースに限りがあると共に、特に既設の建屋にあっては設備が既に配置されているため、レッカー(クローラ)101、ウインチ107a,107b、ジャッキ108a,108b等を設置するスペースが無い。
(2)建屋の新設又は既設を問わず、建屋外は建屋が隣接しているなど、レッカー(クローラ)101を設置するスペースが無い。
(3)建屋の新設又は既設を問わず、建屋内にウインチ107a,107bのワイヤー106a,106bを配索するルートが限られると共に、配索のための転向滑車が必要であり、その建屋における取付け部(梁等)の補強が必要となる。
等で、上述した何れの工法も施工が非常に困難であり、事前段取り工期が長くなるという問題点があった。
【0008】
尚、屋外クレーンの施工方法においては、特許文献1で、クレーン組立場に立設した4本の支柱にそれぞれジャッキアップ装置を設置してこのジャッキアップ装置により吊りビームを介してクレーンの上部構造体を昇降させるクレーン上部構造体上架装置が開示され、また特許文献2では、クレーン組立場に立設した門型ポストにブーム・ガーダブロック用揚重機を搭載してこのブーム・ガーダブロック用揚重機によりブーム・ガーダブロックを昇降させる橋型クレーンの組み立て工法が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された工法にあっては、4本の支柱や門型ポストを立設する必要があると共に複数個のジャッキアップ装置やブーム・ガーダブロック用揚重機を分散して設置することから、大掛かりな施工となり、屋内クレーンの施工には採用が困難である。
【0010】
そこで、本発明は、省スペースでかつ短期間で施工可能な屋内クレーンの施工方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
斯かる目的を達成するための本発明に係る屋内クレーンの施工方法は、
建屋内の設置位置に対し、屋内クレーンを上架又は下架させるのに先立って、建屋の梁部材に昇降装置を仮設し、該昇降装置により前記屋内クレーンを上架又は下架させることを特徴とする。
【0012】
斯かる目的を達成するための本発明に係る屋内クレーンの施工装置は、
建屋内の設置位置に対し、屋内クレーンを上架又は下架させる施工装置であって、建屋の梁部材に、前記屋内クレーンを上架又は下架させる昇降装置を仮設したことを特徴とする。
【0013】
前記昇降装置は、前記梁部材に設置された架台上に複数個のワイヤークランプジャッキが集約的に据え付けられてなることを特徴とする。
【0014】
前記複数個のワイヤークランプジャッキの一部は、前記架台上を水平方向に移動可能になっていることを特徴とする。
【0015】
前記昇降装置は、旋回吊具を介して前記屋内クレーンを上架又は下架させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る屋内クレーンの施工方法及び装置によれば、建屋の梁部材における中央部に昇降装置を仮設するという簡単かつ安価な手段により、建屋内の設置位置に対し屋内クレーンを上架又は下架させることができるので、省スペースでかつ短期間で施工可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す屋内クレーンの施工装置の側面図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく要部拡大図である。
【図5】レッカー工法の説明図である。
【図6】ウインチ工法(建屋梁工法)の説明図である。
【図7】ジャッキアップ(ダウン)工法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る屋内クレーンの施工方法及び装置を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
図1は本発明の一実施例を示す屋内クレーンの施工装置の側面図、図2は同じく正面図、図3は同じく平面図、図4は同じく要部拡大図である。
【0020】
図1乃至図3に示すように、建屋10は前後及び左右の柱11間に天井鉄骨(梁部材)12が架設されその上方に屋根13を支持してなる。また、二重に立設された左右の内側の柱11の上端には天井走行レール18が前後方向に敷設され、この天井走行レール18上を屋内クレーンとしてのガーダWが上架されて走行可能になっている。
【0021】
前記天井鉄骨12の左右方向中央部には、上段架台17aと下段架台17bとからなる架台17を介して後述する昇降装置14が仮設され、この昇降装置14により旋回吊具19を介して前述したガーダWが上架あるいは下架されるようになっている。
【0022】
前記昇降装置14は、図4に示すように、前記方形状の上段架台17a上に複数個(図示例では4個)のワイヤークランプジャッキ15a〜15dが、上段架台17aの4隅に位置して集約的に据え付けられ、それらから垂下された4本のワイヤー16a〜16dの下端がそれぞれ前記旋回吊具19のワイヤー掛け部19bに連繋されてなる。
【0023】
前記ワイヤークランプジャッキ15a〜15dは、クランプ−アンクランプ機構が上下に対になって設けられ、これらが交互に作動して油圧ジャッキにより4本のワイヤー16a〜16dを、所謂尺取り虫の如く、引き上げたり引き下ろしたりする公知のものである。
【0024】
前記旋回吊具19は、ガーダWの一端部にロープを掛けて作業者が地上(床上)から所要の方向へ引っ張ることで、その本体部19aに内蔵された旋回機構を介してワイヤー掛け部19bとの間で旋回可能になっている。
【0025】
また、本実施例では、4個のワイヤークランプジャッキ15a〜15dのうち、クレーン走行方向の後方の2個のワイヤークランプジャッキ15c,15dが対となって、下段架台17b上を前後方向に伸縮可能な上段架台17aと共に、下段架台17bの長孔17cを介して前後方向に水平移動可能になっている。
【0026】
即ち、前方の2個のワイヤークランプジャッキ15a,15bと後方の2個のワイヤークランプジャッキ15c,15dとの前後方向の2点で、旋回させる必要のない(旋回吊具19を使用しない)屋内クレーンのトロリ等横行装置を上架あるいは下架し得るようになっている。
【0027】
このように構成されるため、建屋10の新設又は既設を問わず、天井走行クレーンの施工にあたっては、先ず、建屋10の天井鉄骨12に架台17を介して昇降装置14を仮設する。
【0028】
そして、例えば天井走行レール18上に屋内クレーンとしてのガーダWを上架する際には、昇降装置14のワイヤークランプジャッキ15a〜15dから垂下した4本のワイヤー16a〜16dの下端に旋回吊具19を連結する(図4参照)と共に、この旋回吊具19を地上(床上)にあるガーダW(図1及び図2の二点鎖線参照)と連結する。
【0029】
この状態から、ワイヤークランプジャッキ15a〜15dによりガーダWを天井走行レール18の上方まで吊り上げたら(図1の二点鎖線参照)、前述した方法でガーダWを90度水平旋回させる(図1及び図2の実線参照)。
【0030】
この後、ワイヤークランプジャッキ15a〜15dによりガーダWを吊り下げて左右一対の天井走行レール18上に上架すれば良い。尚、天井走行レール18上からガーダWを下架する際は、上述した上架動作の逆動作を行えば良いことは自明である。
【0031】
このようにして本実施例によれば、建屋10の天井鉄骨12における中央部に昇降装置14を集約的に仮設するようにしたので、
(1)地上(床上)に装置を配置しないため、地上設備への影響が少ない。
(2)ワイヤー16a〜16dを配索するルートが簡素化され建屋10の補強範囲が従来と比較し、限定できる。
(3)昇降装置14の設置期間が短くて済み、工期の短縮化が図れる。
(4)昇降装置14は省スペースで設置可能なため、建屋10内の屋根13を開口なし又は最小限の開口で施工できるため、建屋10内の雨養生が最小限にできる。
等の種々の作用・効果が得られ、施工費も安くて済む。
【0032】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることはいうまでもない。例えば、ワイヤークランプジャッキの個数変更も良いし、昇降装置としてワイヤークランプジャッキに限らず、チェーン及びホイール等を使用したものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る屋内クレーンの施工方法及び装置は、レードルクレーンや天井走行クレーン等の屋内クレーンに用いると好適である。
【符号の説明】
【0034】
10 建屋
11 柱
12 天井鉄骨(梁部材)
13 屋根
14 昇降装置
15a〜15d ワイヤークランプジャッキ
16a〜16d ワイヤー
17 架台
18 天井走行レール
19 旋回吊具
W ガーダ(屋内クレーン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内の設置位置に対し、屋内クレーンを上架又は下架させるのに先立って、建屋の梁部材に昇降装置を仮設し、該昇降装置により前記屋内クレーンを上架又は下架させることを特徴とする屋内クレーンの施工方法。
【請求項2】
前記昇降装置は、旋回吊具により前記屋内クレーンを旋回可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の屋内クレーンの施工方法。
【請求項3】
建屋内の設置位置に対し、屋内クレーンを上架又は下架させる施工装置であって、建屋の梁部材に、前記屋内クレーンを上架又は下架させる昇降装置を仮設したことを特徴とする屋内クレーンの施工装置。
【請求項4】
前記昇降装置は、前記梁部材に設置された架台上に複数個のワイヤークランプジャッキが集約的に据え付けられてなることを特徴とする請求項3に記載の屋内クレーンの施工装置。
【請求項5】
前記複数個のワイヤークランプジャッキの一部は、前記架台上を水平方向に移動可能になっていることを特徴とする請求項4に記載の屋内クレーンの施工装置。
【請求項6】
前記昇降装置は、旋回吊具により前記屋内クレーンを旋回可能になっていることを特徴とする請求項3,4又は5に記載の屋内クレーンの施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−121667(P2011−121667A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279026(P2009−279026)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)