説明

屋根上構造物取付金具

【課題】未熟な施工者でも締付具の過度の締付けを防止して屋根の山部の損傷を回避して屋根の山部に取り付けることができる屋根上構造物取付金具を提供する。
【解決手段】一対の板状の半体3,4で金具本体2を構成する。一対の半体3,4をその下部と上部との間で交差させる。この交差点を枢支部5として一対の半体3,4の上部同士及び下部同士をそれぞれ近接・離間させるようにする。半体3,4の下部同士で屋根20の山部21を両側から挟持する挟持部6を形成する。一方の半体3の上部から他方の半体4の上部に向けてストッパ片7を突設する。半体3,4の上部同士の間に締付具8を架け渡すように装着する。締付具8によってストッパ片7の突出先端面を他方の半体4の上部に当接自在にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上に屋根上構造物を設置させるための屋根上構造物取付金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、室外機や太陽光パネルや緑化屋根プランターを載置する架台や、屋根上の積雪の滑落を防止する雪止具などの屋根上構造物を屋根上に設置させるための屋根上構造物取付金具としては、たとえば特許文献1や特許文献2が知られている。これら屋根上構造物取付金具は金具本体に締付具を装着して構成されており、締付具の締め付けによって金具本体に設けた挟持部が屋根の山部を両側から挟持するようになっている。
【0003】
ところで、上記のような屋根上構造物取付金具を屋根に取り付ける際に、締付具を締め付け過ぎると、挟持部が屋根の山部を強く挟持し過ぎて屋根の山部が凹んだり傷がついたりする恐れがあり、特に、折板屋根のような金属外被で屋根表面が構成される屋根にあっては、強く挟持した挟持部が屋根の山部の金属外皮を破ってしまって雨漏りの原因になる恐れもある。締付具の締付け施工の良否は施工者の熟練度に負うところが大きく、未熟な施工者でも不具合無く屋根への取り付けを行わせ得る屋根上構造物取付金具の開発が望まれているのが現状である。
【0004】
また、上記屋根上構造物取付金具にあっては、その金具本体は別体の多数の構成部品から構成されていて、取付施工時に金具本体に装着する締付具によって初めて一体化がされるものであり、締付具の未装着時には、金具本体の構成部品を紛失してしまう恐れもあり、また、締付具は金具本体の上下の略中央部分に装着されていて、金具本体は上部を不動点として下部に設けた挟持部で屋根の山部を挟持させる構造が採用されており、つまり梃子の原理を考えた際に締付具の締付力が挟持部の挟持力以上に必要な構造であって、屋根上構造物取付金具の屋根への必要な取付強度を得るのに締付具を大きな締付力で締め付ける必要があって締付具の締付け施工の施工性が悪く、更に言うと、締付具の締付け施工が屋根上の不安定な足場で行われることも相俟って締付具の不十分な締め付けが生じやすく、屋根上構造物取付金具の屋根への取付強度不足を招く恐れもある。
【特許文献1】特開平8−239974号公報
【特許文献2】特開平11−124969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて為したものであって、まず、未熟な施工者でも締付具の過度の締付けを防止して屋根の山部の損傷を回避して屋根の山部に取り付けることができる屋根上構造物取付金具を提供し、また他の目的として金具本体の構成部材の紛失防止や、締付具の締付け施工の施工性向上を図った屋根上構造物取付金具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る屋根上構造物取付金具は、一対の板状の半体3,4で金具本体2を構成し、一対の半体3,4をその下部と上部との間で交差させ、この交差点を枢支部5として一対の半体3,4の上部同士及び下部同士をそれぞれ近接・離間させるようにし、半体3,4の下部同士で屋根20の山部21を両側から挟持する挟持部6を形成し、一方の半体3の上部から他方の半体4の上部に向けてストッパ片7を突設すると共に、半体3,4の上部同士の間に締付具8を架け渡すように装着し、この締付具8によってストッパ片7の突出先端面を他方の半体4の上部に当接自在にしたことを特徴とする。
【0007】
これによると、施工者が締付具8を締め付けていって一対の半体3,4の上部同士が過度に近接しようとする際には、一方の半体3の上部から他方の半体4の上部に向けて突設されたストッパ片7の突出先端面を他方の半体4の上部に当接させて、ストッパ片7を一対の半体3,4の上部同士の間でつっかえさせてそれ以上の締付具8の締め付けができないようにし、締付具8の過度の締め付けを防止させ、挟持部6による過度の挟持力での屋根20の山部21の挟持を回避させることができる。したがって、未熟な施工者であっても、締付具8の過度の締付けが確実に回避され、屋根20の山部21の損傷を回避して屋根上構造物取付金具1を屋根20に取付けることが可能になる。
【0008】
また、請求項2に係る屋根上構造物取付金具は、請求項1において、締付具8と枢支部5との間の寸法L1を、挟持部6と枢支部5との間の寸法L2よりも、長く形成したことを特徴とする。
【0009】
これによると、締付具8の締付力は枢支部5を介して挟持部6の屋根20の山部21への挟持力として作用するのであるが、締付具8が力点、枢支部5が支点、挟持部6が作用点となる梃子の原理によって、締付具8の小さな締付力で挟持部6の大きな挟持力を得るようにできる。したがって、締付具8の締付け施工は足場の悪い屋根20上で行われるのであるが、屋根上構造物取付金具1の屋根20への必要な取付強度は締付具8を小さな締付力で締め付けることで確保できるものであり、締付具8の締付け施工に良好な施工性が確保されると共に、締付具8の不十分な締め付けも生じにくくて屋根上構造物取付金具1の屋根20への取付強度不足を招く恐れも回避できる。更に言うと、このように締付具8の締め付けが小さい締付力で済むと、通常の力で行う締付具8の締付け作業時の状態と、ストッパ片7の突出先端面が他方の半体4の上部に当接したときの締付具8の締め付けがいわゆるきつくなって締付け不可になる状態とのギャップが大きく、つまり施工者は締付具8の過度の締め付けになるポイントを認識し易く、ストッパ片7の突出先端面が他方の半体4の上部に当接したことに気付かずに更に締付具8を締め付け続けてしまう恐れも回避できる。
【0010】
また、請求項3に係る屋根上構造物取付金具は、請求項1または2において、枢支部5を、一対の半体3,4に各々設けた軸孔9に軸棒10を差し込んで一対の半体3,4同士を一体に連結させる蝶番構造で構成したことを特徴とする。
【0011】
これによると、枢支部5で一対の半体3,4同士を一体に連結させて金具本体2を一部材として構成できるものであり、金具本体2の構成部品の紛失を有効に防止できるのであり、また、施工現場では金具本体2自体を組み付けることなく、既に組み上がって一部材としての金具本体2に対して締付具8を装着して締め付け作業を行うだけでよく、屋根上構造物取付金具1の屋根20への取付施工性が向上する利点も有する。
【0012】
また、請求項4に係る屋根上構造物取付金具は、請求項1乃至3のいずれか一項において、半体3(4)の上部に屋根上構造物11を一体に形成したことを特徴とする。
【0013】
これによると、屋根上構造物取付金具1を屋根20に取り付けることで、屋根上構造物11を屋根20上に配置できるのであり、屋根上構造物11の配設施工を簡略化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、未熟な施工者であっても、締付具の過度の締付けを確実に回避し、屋根の山部の損傷を回避して屋根上構造物取付金具を屋根に取付け得るといった利点を有し、また、梃子の原理を利用して屋根上構造物取付金具の屋根への取付施工に必要な締付具の締付力を小さくできて取付施工の施工性が向上するといった利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0016】
図1乃至図4に本発明の実施の形態の例を示す。屋根上構造物取付金具1は金具本体2に締付具8を装着して構成される。金具本体2は、上部に屋根上構造物11を保持する構造物保持部12を備えており、下部に屋根20の山部21を両側から挟持する挟持部6を備えている。締付具8はボルト8aとナット8bとで構成されており、この締付具8を締め付けることで挟持部6が屋根20の山部21を挟みつけて、金具本体2が屋根20上に取り付けられるようになっている(図1)。屋根20の山部21は一般に軒棟方向に伸びるように形成されており、金具本体2の挟持部6はこの山部21を屋根20のケラバ方向(左右方向)から挟持する。
【0017】
金具本体2は一対の板状の半体3,4で構成されている。一対の半体3,4はその下部と上部との間で交差されると共に、この交差点を枢支部5として一対の半体3,4の上部同士及び下部同士をそれぞれ近接・離間させるようになっている(図4)。なお、半体3,4はそれぞれ一枚の金属板を屈曲させることで形成されている。
【0018】
詳しくは、本例の半体3,4は、上下に傾斜する傾斜板部13を有し、傾斜板部13の下端から略鉛直に垂下する垂下板部14を有すると共に、垂下板部14の下端部には一対の半体3,4の対向方向に折曲げられた挟持部6を構成する折曲部15が形成されており、また傾斜板部13の上端から略鉛直に立ち上がる立上板部16を有すると共に、立上板部16にはその上部に締付具8が挿通される貫通孔17が穿設されている。ここで、一方の半体3の傾斜板部13は左方ほど上方に位置すると共に、他方の半体4の傾斜板部13は右方ほど上方に位置しており、つまり各傾斜板部13の傾斜方向は一対の半体3,4で逆転した関係になっている。また、図3のように、一方の半体3の傾斜板部13の左右方向の中央部には水下側から切り込まれた切込み18が形成されており、他方の半体4の傾斜板部13には水上側から切り込まれた切込み18が形成されている。一対の半体3,4を軒棟方向に近接させて上記切込み18同士を合致させてそれぞれ他側の傾斜板部13に差込むことで、一対の半体3,4は互いに引っ掛かって枢支部5が形成される。なお、切込み18の幅は傾斜板部13の板厚よりも大きく形成されているから、一対の半体3,4は上下に回動できるようになっている。金具本体2を構成する一対の半体3,4は傾斜板部13同士が枢支部5で交差した状態になり、半体3,4の上部を構成する垂下板部14同士、半体3,4の下部を構成する立上板部16同士がそれぞれ対向する状態になる。詳しくは、一方の半体3の立上板部16や他方の半体4の垂下板部14は金具本体2の左側に位置し、一方の半体3の垂下板部14や他方の半体4の立上板部16は金具本体2の右側に位置するといった、半体3(4)の上部と下部とが枢支部5を境に金具本体2の左右方向に逆転した位置関係となっている。なお、締付具8の締め付け作業を簡単にするために他方の半体4の貫通孔17に重ねるように締付具8のナット8bを溶着しておいてもよい。また、一方の半体3の立上板部16の上端からは他方の半体4の立上板部16に向けて突出するストッパ片7が延設されている。このストッパ片7の突出先端面は、一対の半体3,4の上部同士が過度に近接しようとする際に、他方の半体4の上部の対向面(立上板部16の上端部分の対向面)に当接するようにされている。ここで、本例のストッパ片7は金具本体2の上面を構成するものであって、このストッパ片7には屋根上構造物11を取付けるための取付孔19が穿設されていて構造物保持部12を構成している。屋根上構造物11としては、叙述したように室外機や太陽光パネルや緑化屋根プランターを載置する架台や、屋根20上の積雪の滑落を防止する雪止具11a(図2)などが挙げられる。雪止具11aを構造物保持部12に取り付けたときには屋根上構造物取付金具1はいわゆる雪止め金具になり、架台を構造物保持部12に取り付けたときには屋根上構造物取付金具1はいわゆる架台の屋根20への取付金具になる。
【0019】
上記のように金具本体2を構成する一対の半体3,4は枢支部5を中心に回動可能になっており、各半体3,4の貫通孔17に挿通された締付具8を締め付けていくことで、一対の半体3,4の上部同士が近接されると共に、下部同士が近接されるようになる(図4)。つまり、従来技術にある屋根上構造物取付金具1と同様に、締付具8の締め付けに応じた挟持力で挟持部6による屋根20の山部21の挟持が行われるようになっている。従来技術の屋根上構造物取付金具1にあっては締付具8の過度の締付けにより挟持部6による屋根20の山部21の挟持が過度の挟持力で行われて屋根20の山部21を損傷させる恐れがあったが、本例の屋根上構造物取付金具1では上記の恐れを解消している。すなわち、本例の屋根上構造物取付金具1では、一方の半体3の上部から他方の半体4の上部に向けてストッパ片7が突設され、ストッパ片7の突出先端面が一対の半体3,4の上部同士が過度に近接しようとする際に他方の半体4の上部に当接するようにされているために、施工者が締付具8を締め付けていって一対の半体3,4の上部同士が過度に近接しようとした際にストッパ片7の突出先端面が他方の半体4の上部に当接し、つまりストッパ片7が一対の半体3,4の上部同士の間でつっかえてそれ以上の締付具8の締め付けができないようになり、その結果、締付具8の過度の締め付けが防止され、挟持部6による過度の挟持力での屋根20の山部21の挟持を回避することができたものである。したがって、未熟な施工者であっても、締付具8の過度の締付けが確実に回避され、屋根20の山部21の損傷を回避して屋根上構造物取付金具1を屋根20に取付けることが可能になっているのである。
【0020】
詳しくは図1のように屋根上構造物取付金具1は屋根20上に取り付けられるが、図1の屋根20は、表面と裏面とをそれぞれ金属外被22a,22bで構成すると共にこれら金属外被22a,22bの間に断熱性有する芯材23を充填させたサンドイッチ構造の屋根パネル20aで構成されている。この屋根パネル20aは図5のように一側端部に上方に突出した山部21が形成されていて他側端部に表面の金属外被22aを側方に延出して成る被覆片24が突設されている。被覆片24の突出先端部と突出基端部には凸状にされた係止部25がそれぞれ設けられており、山部21の突出基部の両側部に形成された凹部26に上記係止部25をそれぞれ係止させることで、被覆片24が隣接する屋根パネル20aの山部21に被覆して取り付き、隣接する屋根パネル20a同士を連結させるようになっている。なお図1の屋根上構造物取付金具1が取付けられた山部21は、一側端部の山部21に被覆片24を被着した外観と略同じ外観になるようにパネルの中央部分に形成した化粧山部21aである。すなわち化粧山部21aもその突出基部の両側部に凹部26が形成されており、屋根上構造物取付金具1はその挟持部6でこの凹部26同士を挟持することで取り付けられている。本例では挟持部6を構成する折曲部15が上方に折り返されるようなL字形状に施されており、凹部26に折曲部15を挿入した際には折曲部15は凹部26の側方に面する底面26aのみならず凹部26の下方に面する上面26bに弾接し、上下方向へのずれも有効に防止しつつ抜け止めを図って取り付けられている。なお、化粧山部21aの凹部26は施工者が屋根パネル20aを掴み持って運ぶ際の指引っ掛け部分としても機能するものである。
【0021】
上記表裏の金属外被22間に芯材23を充填させたサンドイッチ構造の屋根パネル20aで構成した屋根20や、特に図示はしないが波状に屈曲させた金属板を葺設して構成した折板屋根などの、金属外被22で屋根表面が構成される屋根20にあっては、背景技術の欄でも述べたが、屋根上構造物取付金具1の挟持部6が山部21を過剰に強く挟持したときには、挟持部6が屋根20の山部21の金属外皮を破ってしまって雨漏りの原因になる恐れもあるが、叙述のように挟持部6による過度の挟持力での屋根20の山部21の挟持を回避することができた本例の屋根上構造物取付金具1では屋根20の山部21の金属外皮を破ってしまうこともなく、つまり、本例の屋根上構造物取付金具1にあっては特に金属外被22で屋根表面が構成される屋根20に対して取り付ける場合に有効である。
【0022】
また、本例の屋根上構造物取付金具1では、屋根20上という悪い足場で行う締付具8の締付け施工の施工性向上を図る工夫も施されている。すなわち、図1のように、締付具8と枢支部5との間の寸法L1を、挟持部6と枢支部5との間の寸法L2よりも長く形成している(L1>L2)。締付具8の締付力は枢支部5を介して挟持部6の屋根20の山部21への挟持力として作用するのであり、つまり梃子の原理を考えたとき、締付具8は力点、枢支部5は支点、挟持部6は作用点を構成するのであり、上記のように力点である締付具8と支点である枢支部5との間の寸法L1を、作用点である挟持部6と支点である枢支部5との間の寸法L2よりも長く形成しているので、締付具8の小さな締付力で挟持部6の大きな挟持力が得られるようにされているのである。したがって、締付具8の締付け施工は足場の悪い屋根20上で行われるのであるが、屋根上構造物取付金具1の屋根20への必要な取付強度は締付具8を小さな締付力で締め付けることで確保できるものであり、締付具8の締付け施工も良好な施工性が確保されると共に、締付具8の不十分な締め付けも生じにくくて屋根上構造物取付金具1の屋根20への取付強度不足を招く恐れも回避できるのである。更に言うと、締付具8の締め付けが小さい締付力で済むと、通常の力で行う締付具8の締付け作業時の状態と、ストッパ片7の突出先端面が他方の半体4の上部に当接したときの締付具8の締め付けがいわゆるきつくなって締付け不可になる状態とのギャップが大きく、つまり施工者は締付具8の過度の締め付けになるポイントを認識し易く、ストッパ片7の突出先端面が他方の半体4の上部に当接したことに気付かずに更に締付具8を締め付け続けてしまう恐れも回避できるのである。
【0023】
以下、本発明の実施の形態の他例を列挙する。先例と同様部位には同符号を付して説明を省き、異なる部位につき説明していく。
【0024】
図6及び図7には本発明の実施の形態の他例を示す。本例の屋根上構造物取付金具1にあっては、枢支部5に、一対の半体3,4に各々設けた軸孔9に軸棒10を差し込んで一対の半体3,4同士を一体に連結させる蝶番構造が採用されている。各々軸孔9は板状の半体3,4の傾斜板部13の一部を筒状に折り曲げることで形成してある。詳しくは、図中9aは半体3の傾斜板部13aの上下中央部に形成された軸孔形成部であり、9bは半体4の傾斜板部13bの上下中央部に形成された軸孔形成部である。半体3の傾斜板部13aの下部13a1は上部13a2に軸孔形成部9aを介して一体に形成されており、半体4の傾斜板部13bの下部13b1は上部13b2に軸孔形成部9bを介して一体に形成されている。本例のように枢支部5に一対の半体3,4同士を一体に連結させる蝶番構造を採用したものは、つまり金具本体2を一部材として構成できるものであり、したがって、施工現場では金具本体2自体を組み付けることなく、既に組み上がって一部材としての金具本体2に対して締付具8を装着して締め付け作業を行うだけでよく、屋根上構造物取付金具1の屋根20への取付施工性が向上するのであり、また、施工現場で金具本体2自体を組み付けるものと比較して金具本体2の構成部品の紛失を有効に防止できる利点も有しているのである。
【0025】
図8及び図9には本発明の実施の形態の更に他例を示す。本例の屋根上構造物取付金具1にあっては、各半体3,4の立上板部16の前後方向(屋根20の軒棟方向)の両端から一対の半体3,4の対向方向に重合片28をそれぞれ突設し、各半体3,4の前部の重合片28同士、後部の重合片28同士をそれぞれ前後に重ねるようにして各重合片28の下部に穿設した軸孔9を同軸上に配置し、この同軸上にある各軸孔9に軸棒10を挿通させて一対の半体3,4を一体に連結した蝶番構造の枢支部5を形成している。前後に重なる一対の重合片28のうちの一方の重合片28は、一方の半体3から突設したストッパ片7が他方の半体4の上部の対向面(立上板部16の対向面)に当接するのと同じタイミングで、その突出先端面が対向する立上板部16の対向面に当接するようになっており、つまり、重合片28は締付具8の過度の締付けを防止するストッパ片7と同様に機能するようになっている。なお、図中29は先の傾斜板部13の代わりに設けた水平板部であり、屋根面からの屋根上構造物取付金具1の突出高さを抑制している。
【0026】
また、本例の屋根上構造物取付金具1にあっては、各半体3,4の立上板部16の前後方向の一端から、一対の半体3,4の対向方向と反対側に雪止片27をそれぞれ突設させている。この雪止片27は、屋根上構造物取付金具1を屋根20に取り付けたときに、屋根20の軒棟方向に垂直に面して屋根20上の積雪を滑落させないように保持するものであり、つまり構造物保持部12に取付けた雪止具11aと同様の機能を果たす。すなわち、雪止片27は雪止具11aのような屋根上構造物11を構成するのであり、しかして、本例の屋根上構造物取付金具1は屋根上構造物11が一体に形成されたものである。このように屋根上構造物11が一体に形成された屋根上構造物取付金具1は、屋根上構造物取付金具1を屋根20に取り付けることで、屋根上構造物11を屋根20上に配置できるから、屋根上構造物11の配設施工を簡略化できる。なお、本例の屋根上構造物取付金具1は一体に形成された屋根上構造物11が雪止めであるのでいわゆる雪止め金具となるものであるが、ストッパ片7には先例同様に屋根上構造物11を取付けるための取付孔19が穿設されて構造物保持部12を構成しており、この構造物保持部12に屋根上構造物11を別途取り付けることも可能にされている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の例の屋根上構造物取付金具を屋根に取り付けた状態を示す断面図である。
【図2】同上の屋根上構造物取付金具への屋根上構造物の取り付けを説明する説明図である。
【図3】同上の屋根上構造物取付金具の金具本体の分解斜視図である。
【図4】(a)(b)は同上の屋根上構造物取付金具の動作を説明する断面図である。
【図5】同上の屋根に用いた屋根パネルを説明する断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の他例の屋根上構造物取付金具を屋根に取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】(a)(b)は同上の屋根上構造物取付金具の動作を説明する斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態の更に他例の屋根上構造物取付金具を屋根に取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】(a)(b)は同上の屋根上構造物取付金具の動作を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 屋根上構造物取付金具
2 金具本体
3 一方の半体
4 他方の半体
5 枢支部
6 挟持部
7 ストッパ片
8 締付具
9 軸孔
10 軸棒
11 屋根上構造物
20 屋根
21 山部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の板状の半体で金具本体を構成し、一対の半体をその下部と上部との間で交差させ、この交差点を枢支部として一対の半体の上部同士及び下部同士をそれぞれ近接・離間させるようにし、半体の下部同士で屋根の山部を両側から挟持する挟持部を形成し、一方の半体の上部から他方の半体の上部に向けてストッパ片を突設すると共に、半体の上部同士の間に締付具を架け渡すように装着し、この締付具によってストッパ片の突出先端面を他方の半体の上部に当接自在にしたことを特徴とする屋根上構造物取付金具。
【請求項2】
締付具と枢支部との間の寸法を、挟持部と枢支部との間の寸法よりも、長く形成したことを特徴とする請求項1記載の屋根上構造物取付金具。
【請求項3】
枢支部を、一対の半体に各々設けた軸孔に軸棒を差し込んで一対の半体同士を一体に連結させる蝶番構造で構成したことを特徴とする請求項1または2記載の屋根上構造物取付金具。
【請求項4】
半体の上部に屋根上構造物を一体に形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の屋根上構造物取付金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−303243(P2007−303243A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135479(P2006−135479)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)