説明

屋根下葺材

【課題】防水・防滑性に優れ、軽量で施工作業性に優れるとともに、ごみを出さない屋根下葺材の提供。
【解決手段】それぞれ不織布から構成される表面層、中間層、及び裏面層を、熱圧着により一体化した積層不織布からなる屋根下葺材であって、該表面層に2液型付加型液状シリコーンゴム及び無機充填剤が含有されていることを特徴とする前記屋根下葺材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の勾配屋根の防水施工用の屋根下葺材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の勾配屋根の防水施工に当たり、その野地板の上面に施される屋根下葺材として、アスファルト系フェルト、アスファルトルーフィング、合成高分子系シート等が用いられてきた。近年、図2に示すような、基材層1(クラフト紙や不織布)に、釘穴シール性を向上させるために、合成ゴムや合成樹脂で改質した改質アスファルト4を含浸又はコーティングした、所謂改質アスファルトルーフィングや、該改質アスファルトルーフィングの表面層に防滑や離型性を目的に鉱物質粉粒5を塗布したり、塗料を塗布、合成高分子フィルム等を貼着したものがある。また、図3に示すように、防水性を高めるために、該改質アスファルトルーフィングの裏面に、粘着層3及び離型紙等の剥離層6を形成したものが用いられている(以下の特許文献1参照)
【0003】
前記した図2示す屋根下葺材は、釘やタッカーにて屋根下地材に固定する必要が有るため固定に手間がかかる。また、釘やタッカーで固定すると、その固定部分に集中的に荷重がかかり屋根下葺材に破れや割れが生じることで、雨水が浸入し防水性が損なわれるおそれがある。さらに、これらの屋根下葺材を屋根下地材に施工する時に、先ず屋根下地材の上に屋根下葺材を敷設し、その後に作業者が屋根下葺材の上に乗りながら、釘やタッカー打ちを行うが、釘やタッカーで固定しない状態の屋根下葺材は、屋根下地材の上をその勾配に沿って滑り落ち易く、作業者に危険が及ぶおそれもある。
【0004】
一方、前記した図3に示す屋根下葺材は、粘着材層を有し釘やタッカー止めをする必要が無いため防水性能は向上するが、施工時に離型紙(剥離層)を剥がしながら作業をする必要があり、作業性が極めて悪い。また、剥離層がごみとなってしまうという問題もある。
【0005】
また、アスファルトルーフィングや改質アスファルトルーフィングである屋根下葺材では、防水性を高めるために、防水材であるアスファルト又は改質アスファルトが900〜1000g/m以上で使用されており、非常に重たいものとなり、そのため作業性(施工性)が悪くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6―166962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した従来技術の現況に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、軽量且つ施工性が改善された屋根下葺材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、中間に極細繊維を配置した積層不織布を用い、表面に2液型付加型液状シリコーンゴム及び無機充填剤をコーティングすることで、防水・防滑性を付与し、且つ、粘着剤を低減することができ、剥離層も不要となり、軽量且つ施工性に優れ、ごみも出ない屋根下葺材を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]それぞれ不織布から構成される表面層、中間層、及び裏面層を、熱圧着により一体化した積層不織布からなる屋根下葺材であって、該表面層に2液型付加型液状シリコーンゴムが含有されていることを特徴とする前記屋根下葺材。
【0010】
[2]前記積層不織布の表面層と裏面層が、それぞれ、平均繊維径7〜30μmの熱可塑性合成長繊維からなり、そして中間層が平均繊維径0.5〜5μmのメルトブロー極細繊維からなる、前記[1]に記載の屋根下葺材。
【0011】
[3]前記熱可塑性合成長繊維とメルトブロー極細繊維が、それぞれ、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維又はその共重合体繊維のいずれかである、前記[1]又は[2]に記載の屋根下葺材。
【0012】
[4]前記表面層に無機充填剤が含有されている、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の屋根下葺材。
【0013】
[5]前記積層不織布の全目付が70〜200g/mであり、そして前記中間層の目付が10g/m以上であり、かつ、該積層不織布の全目付の30重量%以下である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の屋根下葺材。
【0014】
[6]前記積層不織布が、熱圧着により一体化された後、カレンダー処理されたものである、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の屋根下葺材。
【0015】
[7]前記2液型付加型液状シリコーンゴムが、(A)アルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び(C)ヒドロシリル化触媒を含む付加硬化型シリコーン組成物であって、該(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル数対該(A)成分中のアルケニル基のモル数の比率が、0.5:1〜20:1であり、かつ、該(C)成分の量が、該組成物を硬化させるために十分な量である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の屋根下葺材。
【発明の効果】
【0016】
本発明の屋根下葺材は、メルトブロー極細繊維を中間層とする熱圧着により一体化された積層不織布の表面に、2液型付加型液状シリコーンゴム及び無機充填剤をコーティングすることで、防水・防滑性を付与し、且つ、粘着剤を低減することができ、剥離層も不要となり、軽量で施工作業性に優れ、ごみも出ない屋根下葺材である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の屋根下葺材の断面図である。
【図2】従来技術の(改質)アスファルトルーフィングの断面図である。
【図3】従来技術の粘着層及び剥離層を有する、(改質)アスファルトルーフィングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
従来技術の(改質)アスファルトルーフィングにおいては、通常、防水材としてのアスファルト及び改質アスファルト900〜1000g/m以上を基材(クラフト紙・不織布)に含浸させ又はコーティング加工により防水性が付与されている。屋根下地材に屋根下葺材を施工する際、釘やタッカー等で固定する作業性において、重量が重く、施工作業性が極めて悪い。また、その固定部分に集中的に荷重が掛かり、屋根下葺材に破れや割れが発生し、雨水が浸入し防水性が損なわれるおそれもある。そこで、防水性をより高めるために、改質アスファルト等の粘着層を設けることで、釘やタッカーを使用しないタイプもあるが、剥離層を粘着層から剥がしながら施工しなければならず、極めて施工作業性が悪くなる(図3参照)。そのため、軽量で施工作業性に優れ、且つ防水性が高い屋根下葺材が望まれている訳である。
【0019】
本発明の屋根下葺材においては、好ましくは、中間層を構成するメルトブロー極細繊維が上下(表裏)の熱可塑性合成長繊維不織布間に積層されており、さらにフラットカレンダーに代表される圧着柄を有しない平滑な熱プレスなどの処理により、中間層のメルトブロー極細繊維を損傷することなく熱接着が施されている。その結果、表面層を形成する熱可塑性合成長繊維不織布の、表面平滑性を制御することができ、その結果、シリコーンゴム等の防水材を均一に表面塗布することができる。また、本発明においては、好ましくは中間層として極細繊維を用いることにより、シリコーンゴムや改質アスファルトが中間層の極細繊維層のバリヤー性により、裏面に浸み出すことがなく、余分に付着することもない。
【0020】
本発明の屋根下葺材の表面層及び裏面層に使用される熱可塑性合成長繊維は、スパンボンド法によって得られる長繊維不織布が好ましく、溶融紡糸によって得られる熱可塑性合成繊維で構成されることが好ましい。屋根下葺材は、耐熱性、強度、寸法安定性が要求される為、融点が160℃以上の熱可塑性合成繊維が好ましい。熱可塑性合成繊維として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を始めとするポリエステル系繊維ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリフェニレンサルファイト繊維などが使用できる。なかでもフラットカレンダーによる表面の平滑化の制御が容易であることや寸法安定性、耐熱性、防水性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を始めとするポリエステル系繊維とその共重合体やその混合物がさらに好ましい。
【0021】
好ましくは、中間層に使用されるメルトブロー極細繊維も熱可塑性合成樹脂を使用し、該中間層は少なくとも1層以上の層から形成される。この場合も上記表面層の熱可塑性合成繊維と同様の原料が使用できるが、寸法安定性、防水性、耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を始めとするポリエステル系繊維とその共重合体やその混合物がさらに好ましい。
【0022】
本発明の屋根下葺材の表面層、裏面層、中間層のいずれの層にも、必要に応じて顔料、艶消し剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、鎖伸張剤など各種添加剤を併用しても構わない。
【0023】
本来、ポリエステル樹脂は長時間の水との接触で水を浸透させる作用を有するため、短時間での防水効果はあるが、長時間での防水効果は弱く、長時間の防水性を必要とする屋根下葺材には不適とされてきた。しかしながら、ポリエステル繊維からなる不織布においても、カレンダーロールにて、表層の不織布層のみを平滑に熱圧着すると、表面層での遮水効果が発揮され、水の浸透性を有効に抑制することができることが今般判明した。
【0024】
本発明の屋根下葺材においては、表面平滑化処理に加え、表面層に2液型付加型液状シリコーンゴム及び無機充填剤を塗布することで、防水性能及び防滑性をより高めることができる。かかる2液型シリコーンゴム及び無機充填剤の塗布方法としては、ナイフコート、コンマコート、ロールコート、グラビアコート等が挙げられる。
【0025】
カレンダーロールによる熱圧着は強すぎればメルトブロー層をフィルム化し、また弱すぎれば水浸透性を抑制できなく、層間剥離の問題も派生する。かかる問題を解消し、適切に圧着度合いを制御するためには、第1回目の熱圧着で3層の不織布を仮止めし、第2回目のカレンダーロールによる熱圧着で積層体の表層を平滑化する方法がより好ましく用いられる。第2回目の熱圧着は平滑金属ロールと、ペーパーロール、樹脂ロール、コットンロール、耐熱繊維ロールなどの組み合わせた一対のロール間での圧着が好ましい。加熱温度は、繊維の軟化温度以上の温度から融点以下の温度範囲である。しかしながら、繊維の熱劣化、物性を考慮した場合、上下ロールの温度差を10〜150℃とすることもできる。熱圧着の圧力は10〜1000kPa/cm、好ましくは50〜700kPa/cmである。
【0026】
芯鞘構造、サイドバイサイド等の2成分からなる複合繊維、例えば、芯が高融点で鞘が低融点の複合繊維、具体的には、芯がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどの高融点繊維であり、鞘が低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどの低融点繊維で構成された繊維を、表面層及び/又は裏面層に用いると低温度で表面を平滑にすることができるので、中間層のメルトブロー極細繊維を損傷し難い。
【0027】
本発明の屋根下葺材は、例えば、以下の方法で製造することができる。
融点180℃以上の熱可塑性合成樹脂を用いて少なくとも一層以上の熱可塑性合成長繊維をコンベア上に紡糸し、その上に融点180℃以上の熱可塑性合成樹脂を用いてメルトブロー法で繊維径が5μm以下の繊維層を直接吹き付け、その後、融点が180℃以上の熱可塑性合成樹脂を用いた熱可塑性合成長繊維を少なくとも1層以上積層し、熱圧着温度が熱可塑性合成樹脂の融点より−10℃〜−100℃であり、熱圧着の線圧が100〜1000N/cmであるフラットロールを用いて圧着を行うことにより一体化する。紡糸された中間層のメルトブロー極細繊維は結晶性が低いため、熱可塑性合成樹脂長繊維層上に直接打ち込むように捕集する製造方法によってバインダーとしての機能も発揮するため第一段目の熱圧着は特に熱をかけなくても剥離することはなく、そのためメルトブロー極細繊維層を損傷させ難い。
【0028】
このとき、メルトブロー極細繊維の繊維径は、0.5μm〜5μmであることが好ましく、目付け量は10g/m以上でかつ全体の目付量の30重量%以下であることが好ましい。繊維径が5μmより大きいと繊維間隙が大きくなりすぎ、釘穴水密シール性が低下し、一方、0.5μmより小さいと熱圧着により密になりすぎ透湿性が低下する。メルトブロー極細繊維の繊維径は、好ましくは、3μm以下である。
【0029】
前記したように、メルトブロー極細繊維量は、目付量10g/m以上で、かつ全体の目付量の30重量%以下であることが好ましい。メルトブロー極細繊維量が目付量10g/m未満では十分な釘穴水密シール性が発現されないことがあり、一方、メルトブロー極細繊維量が全体の目付け量に対し30重量%を超える場合には、主たる強度保持機能を有する熱可塑性合成長繊維の量が少なくなりすぎ、十分な強度が得られない懸念がある。好ましくは、メルトブロー極細繊維量は、20g/m以上であり、全体の目付量に対し25%重量以下である。
【0030】
熱可塑性合成長繊維の繊維径は、好ましくは、7〜30μmであり、表面側の目付量は25g/m以上である。繊維系が7μm以下の場合にはカレンダー処理を行った際にフィルム化し易く、一方、30μmより大きいとカレンダー処理を行っても平滑化が不十分となり防水機能が得られないことがある。熱可塑性合成長繊維の繊維径は、より好ましくは10〜20μmの範囲である。また表面層の目付量が25g/m未満であると満足できる防水性を得るためのカレンダー加工処理を行った際に中間層のメルトブロー極細繊維層がフィルム化し損傷することがある。表面層の目付量は、より好ましくは30g/m以上である。また、裏面に使用される熱可塑性合成長繊維の目付量は特にこだわらないが、中間層のメルトブロー層を保護するために、好ましくは10g/m以上である。
【0031】
本発明の積層不織布の全体の目付けは、70〜200g/mが好ましく、より好ましくは80〜150g/mである。目付けがこの範囲にあると、屋根下材としての強度、加工性、施工性、取扱い性において、好適である。
【0032】
本発明に使用する2液型付加型液状シリコーンゴムは、好ましくは、(A)アルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒を含み、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル数対(A)成分中のアルケニル基のモル数の比率は0.5:1〜20:1であり、(C)成分は硬化させるために十分な量である付加硬化型シリコーン組成物である。
【0033】
以下、付加硬化型シリコーン組成物について具体的に説明する。
本発明の(A)成分であるアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンは、ポリシロキサンを構成するシロキサン単位のケイ素原子に、置換又は非置換の一価炭化水素基が結合したポリシロキサンであって、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基がケイ素原子に結合しているものである。
【0034】
(A)成分のケイ素原子に結合した一価炭化水素基は、炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基である。非置換の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基などのアラルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、オクテニル基などのアルケニル基が挙げられる。
【0035】
置換炭化水素基の具体例としては、炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されたクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、クロロフェニル基、ジブロモフェニル基、テトラクロロフェニル基、ジフルオロフェニル基、β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基、β−シアノプロピル基などの置換炭化水素基などが挙げられる。
【0036】
(A)成分でケイ素原子に結合した炭化水素基で脂肪族不飽和結合を含まない炭化水素基として好ましいものは、メチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、アルケニル基として好ましいものは、ビニル基、アリル基であり、総じて、特に好ましいものはメチル基とビニル基である。
【0037】
(A)成分のアルケニル基は、(B)成分と付加反応して網目構造を形成する。アルケニル基は、分子中に平均約2 個以上存在していることが好ましい。かかるアルケニル基は、分子鎖の末端のケイ素原子に結合していてもよいし、分子鎖の途中のケイ素原子に結合していてもよい。
【0038】
(A)成分のポリオルガノシロキサンは、線状であっても、分岐を有するものであっても、環状であってもよい。本発明に係るポリオルガノシロキサンは、構成するシロキサン単位のケイ素原子に結合した一価炭化水素基をRで表して、(RSiO)の一官能性シロキサン単位(M単位)、(RSiO)の二官能性シロキサン単位(D単位)、(RSiO)の三官能性単位(T単位)、及び(SiO)の四官能性単位(Q単位)から形成される。本発明に係るポリオルガノシロキサンは、これらのシロキサン単位の各種の組合せが用いられ、D単位を主たる構成要素とする線状のものであっても、T単位又はQ単位を多く含む分岐状のものであってもよい。また、構成する各シロキサン単位はランダムに結合していても、ブロックで結合していてもよい。
【0039】
(A)成分のポリオルガノシロキサンは、構成するシロキサン単位の平均組成式として、一般式RSiO(4−a)/で表したときに、aが1.2〜2.5となるようなものであることが好ましく、より好ましくは、aは1.7〜2.2であり、線状となるD単位を多く含むものである。
【0040】
(A)成分のポリオルガノシロキサンは、25℃における動粘度が100〜20,000cpsであることが好ましい。本発明の組成物を基材である不織布の処理に用いた場合に、粘度が低いと硬化物の十分な強度が得られず、粘度が高いと均一な処理が難しくなる。より好ましい動粘度は、200〜10,000cpsである。
【0041】
(B)成分であるポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ケイ素原子に直接結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサンであって、(A)成分のアルケニル基とのヒドロシリル化の付加反応によって(A)成分を架橋、硬化する成分である。(B)成分であるポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に2個以上有することが好ましく、3個以上含有していることがより好ましい。
【0042】
(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ポリシロキサンを構成するシロキサン単位のケイ素原子に結合する有機基が、置換又は非置換の一価炭化水素基であることが好ましい。このような一価炭化水素基は、脂肪族不飽和結合を含まないものであって、(A)成分の置換又は非置換炭化水素基として例示したもののなかでアルケニル基を除くものである。これら一価炭化水素基の中では、メチル基が最も好ましい。
【0043】
(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、線状であっても分岐を有するものであってもよく、環状であってもよい。(A)成分で示したと同様に、(B)成分を構成するシロキサン単位の平均組成式として、一般式RSiO(4−b)/(ここで、Rは、水素原子又は一価炭化水素基)で表したときに、bが1.2〜2.5となるようなものであることが好ましく、より好ましくは、bは1.7〜2.2である。
【0044】
(B)成分は、25℃における動粘度が10〜1000cps であることが好ましく、より好ましくは50〜500cpsである。
【0045】
(B)成分は、(B)成分中のケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数対(A)成分中のアルケニル基のモル数の比率が、0.5:1〜20:1となるような量で用いられることが好ましい。
【0046】
(C)成分であるヒドロシリル化触媒は、(A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基と、(B)成分のケイ素−水素(Si−H)結合とのヒドロシリル化付加反応を促進する触媒である。(C)成分は通常使用されるものであり、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、及びイリジウムなどの金属又はその化合物である。金属は、場合により微粒子状の担体材料(例えば、活性炭、酸化アルミニウム、酸化ケイ素)に固定する。ヒドロシリル化触媒としては、白金及び白金化合物を使用することが好ましい。白金化合物としては、白金ハロゲン化物(例えば、PtCl、HPtCl・6HO、NaPtCl・4HO)、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ビス−(γ−ピコリン)−白金ジクロライド、トリメチレンジピリジン−白金ジクロライド、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン−白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライド)、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体、ビス(アルキニル)(シクロオクタジエン)白金錯体などが挙げられる。ヒドロシリル化触媒は、熱可塑性合成樹脂(例えば、ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂)などでマイクロカプセル化した形で使用することもできる。また、ヒドロシリル化触媒は包接化合物の形で、例えば、シクロデキストリン内で使用することも可能である。ヒドロシリル化触媒の添加量は触媒量であり、白金触媒を使用する場合、本発明のシリコーン組成物中の白金金属として0.1〜500ppm、特に1〜200ppm の範囲が好ましい。
【0047】
本発明の屋根下葺材は必要に応じて防滑剤を表面層に含有させた滑り止め等の加工を施すことができる。そのため、本発明の屋根下葺材の積層不織布の表面層には、前記した2液型付加型液状シリコーンゴムに加えて、無機充填剤を含有させることもできる。
無機充填剤は、例えば、補強用充填剤として使用されるシリカ充填剤であり、具体的には、ヒュームドシリカ、シリカフューム、沈殿シリカ、焼成シリカ、コロイダルシリカ、粉砕石英、珪藻土などがあり、特にそれらの微粉末のものが好ましい。
【0048】
更に、非補強性の充填剤として、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、カーボンブラック、タルク、カオリン、水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、充填剤の粒径としては30〜300μが好ましい。粒径が30μ未満になると、シリコーンゴムに覆われてしまい、表面に出てこず、防滑性に劣り、一方、粒径が300μ以上になると、シリコーンゴムとの分散が悪くなり、充填剤が沈殿することで、塗工液の粘度が高くなり、シリコーンゴムの付着量にバラツキが生じることで防滑性や防水性の低下につながる。充填剤のより好ましい粒径は50〜100μである。
【0049】
本発明の屋根下葺材の積層不織布の表面層及び/又は裏面層は、必要に応じて、顔料として、酸化チタン、アルミナケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、希土類酸化物、チタンイエロー、これらの混合物を含有してもよい。
【0050】
また、本発明の屋根下葺材の積層不織布の裏面層は、必要に応じて、粘着剤として、アクリル系粘着剤、改質アスファルト、ブチルゴム等を含有することができ、コスト・防水性から改質アスファルトが一般的に使用される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的内容には、下記の実施例に制限されるものではない。
1.目付(g/m
JIS−L1906に規定の方法に従い、経20cm×緯25cmの試験片を試料の幅1mあたり3箇所採取して質量を測定し、その平均値を単位面積あたりの質量に換算して求めた。積層不織布の各層ごとに、各層の目付けを上記方法で測定した。
【0052】
2.繊維径(μm)
繊維ウェブ、不織布などの試料の両端部10cmを除いて、布帛の幅20cm毎の区域からそれぞれ1cm角の試験片を切り取ってサンプルとした。各試験片についてマイクロスコープで繊維の直径を30点測定し、該測定値の平均値を算出して繊維径とした。
【0053】
3.基材の水密性
内径40mm、高さ20cmの塩化ビニル樹脂製パイプを測定試料の上に置き、パイプ底部と測定試料の間から水が漏れないように接着剤でシーリングを行った。その後、パイプ内に高さ150mmまで水を注入し、4時間後と24時間放置しパイプ内の水の残存量を観察した。1つのサンプルにつきn=10評価し、そのパイプ内に残存した水の高さを測定した。尚、測定試料としては、シリコーンゴムを塗工したものを用いた。
【0054】
4.粘着加工後の水密性
基材にシリコーンゴムをコーティング加工したものに、更に、裏面に粘着剤(改質アスファルト)を付与したものを用いた。
【0055】
5.施工性
施工性試験は、切妻、5寸勾配、面積40mで屋根下地材の厚み12mmの合板にて形成した平屋(1階建て)の屋根にて実施工を行い、その時に費やした施工時間(分)を測定した。尚、天候は晴れ、気温は18℃であった。
【0056】
[実施例1〜4]
汎用のポリエチレンテレフタレート樹脂をスパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメントの長繊維群を移動捕集面に向けて押し出し、紡糸速度を3500m/分で紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて十分な開繊をさせた熱可塑性合成長繊維ウェブ(表面層)を捕集ネット上で調整した。ポリマー吐出量を調整することにより、以下の表1に示す繊維径を得た。
次いで、ポリエチレンテレフタレートを紡糸温度300℃、加熱エア流量1000Nm/h/mの条件下でメルトブロー法により紡糸して、熱可塑性合成長繊維ウェブ上に吹きつけた(中間層)。この際、メルトブローノズルから長繊維ウェブまでの距離を100mmとし、メルトブローノズル直下の捕集面における吸引を0.2kPa、風速7m/sに設定した。同様に吐出量を調整することにより、以下の表1に示す繊維径を得た。
【0057】
さらにこれらの積層物上に表面層のポリエチレンテレフタレート長繊維ウェブと同様にして調整した熱可塑性合成長繊維を所定の繊維径及び目付け量にて直接積層し(裏面層)、熱可塑性合成長繊維/メルトブロー繊維/熱可塑性合成長繊維の3層からなる積層ウェブを作製し、以下の表1に示す処理条件でフラットロールにて接合を行い、積層不織布を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
尚、表1中、圧着温度に関して、上段は表面層側、下段は裏面層側のロール温度を示す。
【0060】
得られた積層不織布に、旭化成ワッカーシリコーンを用い、以下の表2(2液型付加型液状シリコーンゴム(配合例))に示す配合処方にて全体の粘度が1000cpsになるように調整し、表面をロールコーターにてコーティングを行った。シリコーンゴムの付着量は、50g/mになるように調整し、170〜180℃に設定したクリップテンターで120秒間乾燥した。
【0061】
【表2】

【0062】
また、裏面に、以下の表3(粘着剤(改質アスファルト)配合例)に示す配合処方にて、改質アスファルト300g/mを塗布し、最終製品(25m巻)とした後、水密性と施工性のテストを行った。
【0063】
【表3】

【0064】
[実施例5]
実施例1と同様の方法で3層からなる積層ウェブを作製し、表1に示す処理条件でフラットロールにて仮接合し、表面層側をカレンダーロールにて表1に示す温度条件で、ライン速度を30m/分で表面処理を行い、積層不織布を得た。得られた不織布に実施例1と同様のシリコーンゴム・コーティングを行った。
また、裏面に表3に示す配合処方にて、改質アスファルトを塗布し、最終製品としたのち、水密性と施工性のテストを行った。
【0065】
[実施例6]
実施例1と同様の方法で3層からなる積層ウェブを作製し、表1に示す処理条件でフラットロールにて仮接合し、裏面層側をカレンダーロールにて表1に示す温度条件で、ライン速度を30m/分で表面処理を行い、積層不織布を得た。得られた不織布に実施例1と同様のシリコーンゴム・コーティングを行った。
裏面に表3に示す配合処方にて、改質アスファルトを塗布し、最終製品としたのち、水密性と施工性のテストを行った。
【0066】
[実施例7]
実施例1と同様の方法で3層からなる積層ウェブを作製し、表1に示す処理条件でフラットロールにて仮接合し、表面層側と裏面層側の両方をカレンダーロールにて表1に示す条件で表面処理を行い、積層不織布に実施例1と同様のシリコーンゴム・コーティングを行った。
裏面に表3に示す配合処方にて、改質アスファルトを塗布し、最終製品としたのち、水密性と施工性のテストを行った。
【0067】
[比較例1と2]
汎用のポリエチレンテレフタレート樹脂をスパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメントの長繊維群を移動捕集面に向けて押し出し、紡糸速度を3500m/分で紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて十分な開繊をさせた熱可塑性合成長繊維ウェブ(表面層)を捕集ネット上で調製した。ポリマー吐出量を調整することにより表1に示す繊維径を得た。表1に挙げる処理条件でエンボスロールにて部分熱圧着接合し、不織布を得た。熱圧着に用いたエンボスロールは上部に配置され、織目柄状を有する面積率15%のエンボス模様を有するものを用い、下部には平滑ロールを配置した。得られた不織布は、極細繊維層(中間層)の無い、通常のスパンボンドであった。この不織布に実施例1と同様のシリコーンゴム・コーティングを行った。
【0068】
[比較例3]
図2に示す断面を有する、従来技術の(改質)アスファルトルーフィングを用いて、水密性,施工性等の試験を行った。
【0069】
[比較例4]
図3に示す断面を有する、従来技術の粘着層及び剥離層を有する(改質)アスファルトルーフィングを用いて、水密性,施工性等の試験を行った。
【0070】
表1に示す各試験結果から、実施例1〜4の中間層(極細繊維層)を有する積層不織布を用いることで、一次防水剤及び保護層(離型性)としてのシリコーンゴムが裏抜けすることなく、中間層で留まり、有効な防水性を発揮することが分かる。また、実施例5〜7で、それらをカレンダー処理することで、より完全な防水性を付与することが可能となった。
【0071】
また、粘着剤を含有させることで、更なる防水性を付与することが可能となった。
これに反し、中間層を有しない、スパンボンド不織布(比較例1と2)では、シリコーンゴムが裏抜けして、表面に有効に皮膜形成ができず、水密性に劣る結果となった。また、シリコーンゴムが裏抜けしたことで、裏面の粘着層を付与することができず製品化できなかった。すなわち、粘着剤である改質アスファルトが、シリコーンゴムの離型作用により、塗布はできるものの、不織布との界面で層間剥離を起こし密着性が確保できなかった。
【0072】
さらに、施工試験についても、シリコーンゴムによる防水性により、粘着層を低減することが可能となり、従来の屋根下葺材の約1/2の軽量化が図れ、且つ、剥離層である離型紙等の除去作業をしながらの作業を行う必要が無く、従来の粘着タイプ屋根下葺材の約1/2の施工時間が可能となった。また剥離層が無い為、施工後ごみが発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の屋根下葺材は、防水・防滑性に優れ、かつ軽量で施工作業性に優れ、ごみも出さない、屋根下葺材としての理想的な機能を有するため、木造家屋の屋根下葺材として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 中間層、又は基材層(原紙・不織布)+アスファルト
2 表面層(シリコーンゴム+無機充填剤)
3 裏面層(粘着層)
4 アスファルト,改質アスファルト
5 鉱物質粉粒
6 剥離層(離型紙等)
A 屋根下葺材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ不織布から構成される表面層、中間層、及び裏面層を、熱圧着により一体化した積層不織布からなる屋根下葺材であって、該表面層に2液型付加型液状シリコーンゴムが含有されていることを特徴とする前記屋根下葺材。
【請求項2】
前記積層不織布の表面層と裏面層が、それぞれ、平均繊維径7〜30μmの熱可塑性合成長繊維からなり、そして中間層が平均繊維径0.5〜5μmのメルトブロー極細繊維からなる、請求項1に記載の屋根下葺材。
【請求項3】
前記熱可塑性合成長繊維とメルトブロー極細繊維が、それぞれ、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維又はその共重合体繊維のいずれかである、請求項1又は2に記載の屋根下葺材。
【請求項4】
前記表面層に無機充填剤が含有されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の屋根下葺材。
【請求項5】
前記積層不織布の全目付が70〜200g/mであり、そして前記中間層の目付が10g/m以上であり、かつ、該積層不織布の全目付の30重量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の屋根下葺材。
【請求項6】
前記積層不織布が、熱圧着により一体化された後、カレンダー処理されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の屋根下葺材。
【請求項7】
前記2液型付加型液状シリコーンゴムが、(A)アルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び(C)ヒドロシリル化触媒を含む付加硬化型シリコーン組成物であって、該(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル数対該(A)成分中のアルケニル基のモル数の比率が、0.5:1〜20:1であり、かつ、該(C)成分の量が、該組成物を硬化させるために十分な量である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の屋根下葺材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−167451(P2012−167451A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27613(P2011−27613)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【出願人】(592132729)服部猛株式会社 (3)