説明

屋根付き処理施設およびその建設方法

【課題】 建設する際の工期の短縮を図るとともに、降雨の際の雨水などを避けながら掘削作業等を行うことができ、さらには、埋立地の漏水を防止することができる屋根付き処理施設およびその建設方法を提供する。
【解決手段】 屋根付き埋立処分地施設1においては、埋設領域2に複数の杭柱構造5が立設されている。杭柱構造5は、場所打ち杭11を備えており、場所打ち杭11の上方にプレキャスト杭12が立設されている。屋根付き埋立処分地施設1を建設する際には、まず場所打ち杭11を造成し、その後、埋設領域2の掘削を進めながら、プレキャスト杭12を立設する。さらに、プレキャスト杭12の立設が済んだら、被覆屋根3を建設し、埋設領域2の掘削を進める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根付き処理施設およびその建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の処理施設として、従来、降雨などの環境に廃棄物がさらされないようにするために、屋根が設けられた屋根付き処理施設が知られている。この種の屋根付き処理施設として、従来、埋立地の上方に延在する被覆手段によって埋立地を覆う被覆型廃棄物最終処理施設がある(たとえば、特許文献1参照)。この被覆型廃棄物最終処理施設は、廃棄物を埋めるための埋立地が掘削されているとともに、その埋立地を覆う屋根が建設されているというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−261721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の屋根付き処理施設として、大型の処理施設に対する要請がある。しかし、上記特許文献1に開示された被覆型廃棄物最終処理施設では、屋根の側部をコンクリート柱等で支えるのみであるため、大型の処理施設における屋根を支えるには十分でなかった。この点、たとえば、埋立地に屋根を支えるための柱を立設することが考えられる。ところが、埋立地に柱を立設するとしても、埋立地を掘削した後に柱を立設するのでは、工期が長期間に及んでしまうという問題があった。また、屋根付き処理施設は、屋外に建設されることから、降雨などの際には、雨水を受けたまま埋立領域の掘削を行わなければならないという問題があった。
【0005】
さらに、埋立地内に柱を立設した場合、埋立地の底部における遮水層を柱が貫通することとなる。遮水層を柱が貫通する場合、柱が貫通する位置が漏水を起こしやすくなる弱点となる可能性があるという問題があった。また、屋根付き処理施設は、屋外に建設されることから、降雨などの際には、埋立領域の掘削および遮水シート等の設置作業に支障をきたし、工程の遅延や品質の悪化などの問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、建設する際の工期の短縮を図るとともに、降雨の際の雨水などを避けながら掘削作業等を行うことができ、さらには、埋立地の漏水を防止することができる屋根付き処理施設およびその建設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る屋根付き処理施設は、地盤を掘削することによって廃棄物を埋め立てる埋立領域が形成され、埋立領域を覆う屋根が設けられている屋根付き処理施設であって、埋立領域に複数の場所打ち杭が所定間隔をおいて造成され、場所打ち杭の鉛直上方にプレキャスト杭が立設されており、プレキャスト杭を柱として、屋根が支持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る屋根付き処理施設においては、屋根を支持する柱を立設するにあたり、埋立領域に所定間隔をおいて造成された複数の場所打ち杭の鉛直上方にプレキャスト杭を立設し、このプレキャスト杭を柱として用いている。このため、埋立領域に場所打ち杭を造成した後、埋立領域の掘削と同時にプレキャスト杭の立設および屋根の建設を進めることができる。したがって、屋根付き処理施設を建設する際の工期の短縮を図ることができる。また、屋根が建設された後には、掘削中の埋立領域が屋根で覆われることとなる。このため、降雨の際、建設された屋根によって雨水などを避けながら、掘削作業を行うことができる。
【0009】
ここで、プレキャスト杭が、コンクリート製であるようにすることができる。
【0010】
廃棄物内の塩分による鉄骨の腐食を考慮し、プレキャスト杭が、コンクリート製であるようにすることにより、その分長期間の利用に適した物となる。
【0011】
また、場所打ち杭における地盤からの露出部が、遮水シートで覆われているようにすることができる。したがって、埋立地の漏水を好適に防止することができる。
【0012】
このように、場所打ち杭における地盤からの露出部が、遮水シートで覆われていることにより、埋立領域に埋め立てられる廃棄物等から発生する水分の土壌への流出を抑制することができる。
【0013】
さらに、場所打ち杭における地盤からの露出部における地盤との境界部は、既成遮水部材で覆われており、既成遮水部材は、筒状部および筒状部から側方に突出するつば部を備えるハット形状を、筒状部の高さ方向に沿って切断されて複数に分割された分割既成遮水部材を組み合わせて構成されているようにすることができる。
【0014】
このように、場所打ち杭における地盤からの露出部における地盤との境界部を覆う既成遮水部材が、筒状部の高さ方向に沿って切断されて複数に分割された分割既成遮水部材を組み合わせて構成されていることにより、土壌に対する水分の流出をさらに好適に抑制することができる。
【0015】
また、場所打ち杭における地盤からの露出部が、柱の一部として用いられているようにすることもできる。
【0016】
このように、場所打ち杭が地盤から露出している場合には、露出部を柱の一部として利用することができる。
【0017】
また、上記課題を解決した本発明に係る屋根付き処理施設の建設方法は、地盤を掘削して廃棄物を埋め立てる埋立領域を形成し、埋立領域を屋根で覆う屋根付き処理施設の建設方法であって、埋立領域となる地盤に、所定の間隔をおいて場所打ち杭を造成し、場所打ち杭を形成した鉛直上方にプレキャスト杭を立設し、プレキャスト杭を柱として、埋立領域を覆う屋根を構築するとともに、場所打ち杭の周囲を掘削して埋立領域を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る屋根付き処理施設の建設方法では、場所打ち杭を造成した後に、場所打ち杭の上方にプレキャスト杭を立設することにより、屋根付き処理施設を建設する際の工期の短縮を図ることができる。また、屋根が建設された後には、掘削中の埋立領域が屋根で覆われることとなる。このため、建設された屋根によって雨水などを避けながら、掘削作業を行うことができる。
【0019】
また、埋立領域となる地盤を所定深さまで掘削する一次掘削を行った後、場所打ち杭を造成し、場所打ち杭の造成が済んだ後、埋立領域となる地盤の所定深さより深い位置を掘削する二次掘削を行うようにすることができる。
【0020】
さらに、一次掘削を行い、場所打ち杭にプレキャスト杭を立設した後、屋根を構築し、屋根の構築が完了した領域から、二次掘削を行うようにすることができる。
【0021】
このように、屋根を構築し、屋根を構築した後に、二次掘削を行うことにより、降雨の際、建設された屋根によって雨水などを避けながら、掘削作業を行うことができる。
【0022】
また、二次掘削を行う際に、場所打ち杭における露出部を遮水シートで覆うようにすることができる。
【0023】
このように、二次掘削を行う際に、場所打ち杭における露出部を遮水シートで覆うことにより、場所打ち杭の周囲を掘削する際の進行に合わせて、遮水シートを場所打ち杭に巻き付けることができる。
【0024】
さらに、二次掘削を行っている際、場所打ち杭が露出する長さが所定長さとなるごとに、露出した場所打ち杭を、遮水シートで覆うようにすることができる。
【0025】
このように、二次掘削を行っている際、場所打ち杭が露出する長さが所定長さとなるごとに、露出した場所打ち杭を、遮水シートで覆うことにより、遮水シートを場所打ち杭に巻き付ける際に、足場などを別途設けなくて済ませることができる。
【0026】
そして、二次掘削が完了した後、場所打ち杭における地盤からの露出部と地盤との境界部を、地盤とともに既成遮水部材で覆うようにすることができる。
【0027】
このように、二次掘削が完了した後、場所打ち杭における地盤からの露出部と地盤との境界部を、既成遮水部材で覆うことにより、既成遮水部材の被覆作業をスムーズに行いながら、埋立領域の地盤との間の遮水性を高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る屋根付き処理施設およびその建設方法によれば、建設する際の工期の短縮を図るとともに、降雨の際の雨水などを避けながら掘削作業等を行うことができる。さらには、埋立地の漏水を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る屋根付き処理施設の側断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る屋根付き処理施設の平断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る屋根付き処理施設の内部の斜視図である。
【図4】柱杭構造の側断面図である。
【図5】(a)は、上方遮水構造の側断面図、(b)は、成型遮水シートの斜視図である。
【図6】(a)は、下方遮水構造の側断面図、(b)は、成型遮水シートの斜視図である。
【図7】屋根付き処理施設の施工工程を示す工程図である。
【図8】図7に続く工程を示す工程図である。
【図9】図8に続く工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る屋根付き処理施設の側断面図、図2は、その平断面図、図3は、その内部の斜視図である。図1〜図3に示すように、本実施形態に係る屋根付き埋立処分地施設1は、廃棄物が埋め立てられる埋立領域2が形成されており、埋立領域2は、被覆屋根3によって覆われている。被覆屋根3は並設された複数のトラス梁を備え、トラス梁の表面に屋根部材が設けられて形成されており、建物躯体基礎4によって支持されるとともに、埋立領域2に所定間隔をおいて立設された複数の杭柱構造5によって支持されている。
【0032】
また、埋立領域2における底面2Aには、排水溝6が形成されている。排水溝6は、図2に示すように、屋根付き埋立処分地施設1における底面2Aにおいて縦横に形成されている。屋根付き埋立処分地施設1の周囲には、搬入車両が走行するための道路が構築されているとともに、片勾配が付され、その低い側に側溝(トラフ)が設けられている。
【0033】
さらに、埋立領域2における底面2Aおよび法面2Bには、遮水シート7が敷設されている。この遮水シート7によって、埋立領域2の下方における地盤に対する浸水が防止されている。排水溝6は、遮水シート7の上に形成されている。さらに、埋立領域2における底面2Aには、排水溝6に直交する方向に沿って築堤8が構築されている。
【0034】
また、図2に示すように、埋立領域2には、搬入車両が方向を転換する車両回転広場2Cが形成されている。さらに、埋立領域2には、車両回転広場2Cと埋立領域2の外部とを繋ぎ、トラックなどの車両が走行可能とされた埋立地内道路2Dが形成されている。
【0035】
杭柱構造5は、図4にも示すように、場所打ち杭11およびプレキャスト杭12を備えている。場所打ち杭11は、いわゆるオールケーシング工法(ベノト工法)によって造成されている。また、プレキャスト杭12は、PCコンクリート製である。プレキャスト杭12の径は、場所打ち杭11の径よりも細径とされている。プレキャスト杭12としては、PCコンクリート製杭のほか、鋼管杭などを用いることもできる。
【0036】
また、このプレキャスト杭12は、場所打ち杭11の鉛直上方に立設されており、被覆屋根3を支持する柱としての機能をも有している。プレキャスト杭12の頭部には、図示しないカラムが取り付けられている。カラムは、複数の鉄骨接合部を備えており、これらの鉄骨接合部は、種々の異なる方向を向いて配置されている。カラムにおける鉄骨接合部に被覆屋根3のトラス梁を接合することにより、被覆屋根3を容易にプレキャスト杭12に接合することができる。
【0037】
また、場所打ち杭11には、造成時に、図4に示すアンカー部材13および鉄筋部材14が場所打ち杭11の上端面から突出する形で埋設されている。一方、プレキャスト杭12における下端部には、フランジ12Aが形成されている。
【0038】
フランジ12Aには、アンカー部材13が挿通可能な挿通孔が形成されている。さらに、場所打ち杭11の上端面の中央位置には、高さ調整突起15が設けられている。プレキャスト杭12は、フランジ12Aに形成された挿通孔にアンカー部材13が挿入された後、高さ調整突起15上に載置されて鉛直に立設されるように調整されている。さらに、アンカー部材13にナット16が締め付けられ、アンカー部材13に対してフランジ12Aが固定されている。こうして、場所打ち杭11上にプレキャスト杭12が立設されている。また、プレキャスト杭12の下端部には、根巻きコンクリート17が打設されている。
【0039】
また、プレキャスト杭12と根巻きコンクリート17との接合部には、上方遮水構造20が形成されており、場所打ち杭11と埋立領域2の底面2Aの境界部には、下方遮水構造30が形成されている。さらに、上方遮水構造20と下方遮水構造30との間には、遮水シート構造40が掛け渡されている。
【0040】
上方遮水構造20は、図5(a)に示すように、第1成型遮水シート21および第2成型遮水シート22を備えている。第1成型遮水シート21は成型品であり、筒状部および筒状部から側方に突出するつば部を備えるハット形状をなしている。なお、ここでは、一次掘削が終了した時点における掘削面である一次掘削面S1を示している。また、成型時には、このハット形状がその筒状部の高さ方向に沿って切断されて複数に4分割されており、図5(b)に示すように、4つの第1成型遮水分割シート21A〜21Dとされている。これらの第1成型遮水分割シート21A〜21Dは、互いの同一の形状をなしており、これらを周方向に並べて組み合わせることにより、ハット形状が形成される。なお、第1成型遮水シート21A〜21Dの分割数は、作業員が持てる大きさとするなど、作業効率の観点から適宜決定することができ、円型のまま分割されない場合もある。
【0041】
また、第2成型遮水シート22は、第1成型遮水シート21と同様に成型品であり、備えるハット形状をなしている。また、成型時には、このハット形状が4分割されており、図5(b)に示すように、4つの第2成型遮水分割シート22A〜22Dとされている。これらの第2成型遮水分割シート22A〜22Dは、互いの同一の形状をなしており、これらを周方向に並べて組み合わせることにより、ハット形状が形成される。
【0042】
第1成型遮水シート21は、その筒状部の内側面がコーキング23および両面ブチルテープ24によってプレキャスト杭12の外側面に固定および遮水されている。また、第1成型遮水シート21におけるつば部の上面と、第2成型遮水シート22におけるつば部の下面が、互いに押出溶着26によって固定されている。
【0043】
一方、下方遮水構造30は、二重シート構造をなしており、図6(a)に示すように、3枚の保護マット31A〜31C、2枚のシート32A,32B、および2つの成型遮水シートとして、第1成型遮水シート33および第2成型遮水シート34を備えて形成されている。第1成型遮水シート33および第2成型遮水シート34は、本発明の既成遮水部材を構成する。
【0044】
このうち、第1成型遮水シート33および第2成型遮水シート34は、同一の形状をなし、いずれも成型品であり、筒状部および前記筒状部から側方に突出するつば部を備えるハット形状をなしている。また、成型時には、このハット形状が、その筒状部の高さ方向に沿って切断されて4分割されており、図6(b)に示すように、4つの第1成型遮水分割シート33A〜33D(34A〜34D)とされている。第1成型遮水分割シート33A〜33D(34A〜34D)は、本発明の分割既成遮水部材を構成する。
【0045】
また、下方遮水構造30では、埋立領域2の底面に底面保護マット31Aがじか置きされ、その上方に下層シート32Aが敷設されている。また、下層シート32Aの上方に中間保護マット31Bが敷設され、その上方に上層シート32Bが敷設されている。そして、その上方に表面保護マット31Cが敷設されている。表面保護マット31Cは、場所打ち杭11の延在方向に沿って上方まで延在している。
【0046】
さらに、下層シート32Aと中間保護マット31Bとの間に、第1成型遮水シート33のつば部が配設され、上層シート32Bと表面保護マット31Cとの間に第2成型遮水シート34のつば部が配設されている。また、下方遮水構造30では、場所打ち杭11の延在方向に沿って、内側シート35Aおよび外側シート35Bが配設されている。
【0047】
下層シート32Aと中間保護マット31Bとの間では、第1成型遮水シート33におけるつば部が自動溶着36Aによって溶着されている。また、上層シート32Bと表面保護マット31Cとの間では、第2成型遮水シート34のつば部が自動溶着36Bによって溶着されている。
【0048】
さらに、内側シート35Aと第2成型遮水シート34における筒状部との間では、第1成型遮水シート33における筒状部が押出溶着37Aによって溶着されている。また、第2成型遮水シート34における筒状部が、外側シート35Bの表面と押出溶着37Bによって溶着されている。これらの成型遮水シート33,34を含む下方遮水構造30によって、場所打ち杭11と地盤との境界部を覆っている。
【0049】
また、底面保護マット31Aおよび表面保護マット31Cの厚さは、それぞれ10mmとされ、中間保護マット31Bの厚さは20mmとされている。また、下層シート32Aおよび上層シートの厚さは、それぞれ1.5mmとされている。さらに、成型遮水シート34,35の厚さは、2.0mmとされている。
【0050】
遮水シート構造40は、遮水シート41を備えている。遮水シート41は、場所打ち杭11の上端部から下端部にわたって延在して設けられている。遮水シート41の上端部は、上方遮水構造20における第2成型遮水シート22の筒状部に押出溶着42によって溶着されている。また、遮水シート41の下端部は、下方遮水構造30における内側シート35Aに自動溶着43によって溶着されているとともに、外側シート35Bに押出溶着44によって溶着されている。こうして、場所打ち杭11の露出部が遮水シート41によって覆われている。
【0051】
さらに、下方遮水構造30における底面保護マット31Aは、上方遮水構造20まで延在しており、その上端部が接着剤によって場所打ち杭11の上端部に固定されている。そして、下方遮水構造30における表面保護マット31Cも上方遮水構造20まで延在しており、上方遮水構造20における第2成型遮水シート22の筒状部にトーチによって溶着されている。
【0052】
次に、本実施形態に係る屋根付き埋立処分地施設1の施工手順について説明する。図7は、屋根付き処理施設を施工する工程を示す工程図、図8は、図7に続く工程を示す工程図である。図1に示す屋根付き埋立処分地施設1は、図7(a)に示すように、地盤Nに形成される。図7(a)では、屋根付き処理施設における埋立領域2の底面2Aとなる深さの位置を破線で示している。
【0053】
この状態から、図7(b)に示すように、一次掘削を行い、埋立領域2を形成する範囲のおよそ半分の深さまで掘削を行う。なお、埋立領域が浅い場合には、一次掘削は行われない。埋立領域が深い場合には、地上から場所打ち杭を造成することがコストおよび工程上不利となるので、コストおよび工程が最適となるように一次掘削の深さが設定される。
【0054】
一次掘削を行ったら、図7(c)に示すように、一次掘削面S1上にクレーンCを載置し、場所打ち杭11を造成する。このとき、場所打ち杭11の根入れ深さが埋立領域2よりも深い位置となるように場所打ち杭11が造成される。また、この場所打ち杭を一次掘削面S1上で順次造成していく。
【0055】
場所打ち杭11の造成が済んだら、杭頭処理作業ができる程度に少し掘り下げてから、図8(a)に示すように、造成した場所打ち杭11に対して、プレキャスト杭12を立設する。プレキャスト杭12を立設する際には、図4に示すように、プレキャスト杭12におけるフランジ12Aをアンカー部材13に固定し、場所打ち杭11の上面に根巻きコンクリート17を打設する。
【0056】
プレキャスト杭12を立設したら、図8(b)に示すように、建物躯体基礎4を形成するとともに、プレキャスト杭12を柱として、被覆屋根3を構築する。この段階で被覆屋根3を構築することにより、以後の埋立領域2における作業を被覆屋根3の下で行うことができる。したがって、降雨等があった場合でも、雨水をしのぎながら作業を行うことができる。なお、降雨等には、降雨のほか降雪なども含まれる。
【0057】
続いて、場所打ち杭11とプレキャスト杭12との接続部分に上方遮水構造20を形成する。上方遮水構造20を形成する際には、図5に示す根巻きコンクリート17が固化した後、根巻きコンクリート17の上端に、第1成型遮水シート21を取り付け、続いて、第2成型遮水シート22を取り付ける。
【0058】
ここで、第1成型遮水シート21は、予め成型された4つの第1成型遮水分割シート21A〜21Dを組み合わせることによってハット形状を容易に形成することができる。このハット形状を組み立てることにより、第1成型遮水シート21がプレキャスト杭12の周囲に容易に取り付けることができる。同様に、第2成型遮水シート22も、予め成型された4つの第2成型遮水分割シート22A〜22Dを組み合わせることによってハット形状を容易に形成することができるので、プレキャスト杭12の周囲に容易に取り付けることができる。そして、第1成型遮水シート21をコーキング23や両面テープ24によってプレキャスト杭12に固定し、第2成型遮水シート22を第1成型遮水シート21に押出溶着する。
【0059】
それから、遮水シート構造40を形成していく。遮水シート構造40を形成する際には、遮水シート41における上端部に上方遮水構造20における第2成型遮水シート22を溶着させ、以後、順次場所打ち杭11の周囲に遮水シート41を巻き付けて遮水シート構造40を設けていく。
【0060】
その後、図8(c)に示すように、逆巻きで地盤を掘り下げて二次掘削を行い、埋立領域2を掘り進めていく。このとき、二次掘削の進行に合わせて遮水シート41を下方にまで伸ばして設けている。二次掘削が完了した後に場所打ち杭11の周囲に遮水シート41を取り付けようとすると、掘削面上に足場などを組み立てて遮水シート41を取り付ける必要が生じる。この点、二次掘削の進行に合わせて遮水シート41を設けることにより、遮水シート41を設ける際に、足場などを別途組み立てる必要がなくなる。
【0061】
こうして二次掘削と遮水シート構造40の形成とを進め、図9(a)に示すように、二次掘削が完了し、埋立領域2を所定の深さ位置まで掘り進める。この段階では、遮水シート41が場所打ち杭11の側面をほぼ覆う位置まで巻き付けられる。このとき、埋立領域2における法面2Bに対して随時遮水処理を施す。
【0062】
法面2Bに対する遮水処理としては、法面2Bに対して直接吹き付け処理によるモルタル吹付を行い、その上層の底面保護マットを敷設する。さらにその上層に遮水シートを敷設し、その上層に表面保護マットを敷設する。このように、法面2Bに対する遮水処理を行う。
【0063】
それから、図9(b)に示すように、場所打ち杭11における下部に下方遮水構造30を形成する。下方遮水構造30を形成する際には、埋立領域2の底面2Aに防水処理構造Bを並行して構築する。このとき、防水処理構造Bとして、場所打ち杭11の下部および埋立領域2の底面2Aに底面保護マット31Aを敷設する。
【0064】
次に、底面保護マット31Aの上層に下層シート32Aを敷設する。続いて、下層シート32A上に第1成型遮水シート33を設ける。第1成型遮水シート33は、予め成型された4つの第1成型遮水分割シート33A〜33Dを組み合わせることによってハット形状を容易に形成することができるので、場所打ち杭11の周囲に容易に取り付けることができる。
【0065】
さらに、底面保護マット31Aの上層に、第1成型遮水シート33のつば部を挟んで、中間保護マット31Bを敷設する。それから、中間保護マット31Bの上層に上層シート32Bを敷設し、上層シート32B上に第2成型遮水シート34を設ける。第2成型遮水シート34は、予め成型された4つの第2成型遮水分割シート34A〜34Dを組み合わせることによってハット形状を容易に形成することができるので、場所打ち杭11の周囲に容易に取り付けることができる。
【0066】
そして、中間保護マット31Bの上層に、第2成型遮水シート34のつば部を挟んで、表面保護マット31Cを敷設する。こうして、埋立領域2の底面2Aには、下側から順に底面保護マット31A、下層シート32A、中間保護マット31B、上層シート32B、および表面保護マット31Cが積層される。その表面におよそ500mm程度の覆土を行う。こうして、下方遮水構造30および埋立領域2の底面2Aが形成され、屋根付き埋立処分地施設1が建設される。
【0067】
このように、本実施形態に係る屋根付き埋立処分地施設1は、被覆屋根3を支持する柱を立設するにあたり、埋立領域2に所定間隔をおいて造成された複数の場所打ち杭11の鉛直上方にプレキャスト杭12を立設し、このプレキャスト杭12を柱として用いている。このため、二次掘削および遮水シートの設置等の作用が天候に左右されずに施工できるので、工程が短縮される。また、被覆屋根3が建設された後には、掘削中の埋立領域2が被覆屋根3で覆われることとなる。このため、降雨の際、建設された被覆屋根3によって雨水などを避けながら、掘削および遮水シート等の設置作業を行うことができるので、品質が確保・向上される。なお、遮水シート等の設置作業には、集排水管設置等の作業も含まれる。
【0068】
また、廃棄物内の塩分による鉄骨の腐食を考慮し、プレキャスト杭12としてコンクリート製杭を用いることにより、埋立領域2における腐食等を少なくすることができ、その分長期間の利用に適した物となる。さらに、場所打ち杭11における地盤からの露出部が、遮水シート41ので、埋立領域2に埋め立てられる廃棄物等から発生する水分の土壌への流出を防ぐことができる。また、場所打ち杭11における地盤からの露出部における地盤との境界部は、成型遮水シート33,34を含む下方遮水構造30によって覆われている。このため、土壌に対する水分の流出をさらに好適に防ぐことができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、一次掘削を行った後に場所打ち杭11を造成し、その後二次掘削を行っている。これに対して、一次掘削を行うことなく、場所打ち杭を造成し、その後、埋立領域2の掘削を行う態様とすることもできる。
【0070】
また、上記実施形態において、遮水シート41は、一枚のシートで形成されていてもよく、複数枚のシートをつなぎ合わせて形成されていてもよい。複数のシートをつなぎ合わせる場合には、二次掘削の進行に伴い、ある程度の深さまで到達した後に次のシートを既設のシートに接合することにより、足場などを設けることなく接合作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1…屋根付き埋立処理地施設
2…埋立領域
2A…底面
2B…法面
2C…車両回転広場
2D…埋立地内道路
3…被覆屋根
4…建物躯体基礎
5…杭柱構造
6…排水溝
7…遮水シート
8…築堤
11…場所打ち杭
12…プレキャスト杭
12A…フランジ
13…アンカー部材
14…鉄筋部材
15…高さ調整突起
16…ナット
17…根巻きコンクリート
20…上方遮水構造
21…第1成型遮水シート
21A〜21D…第1成型遮水分割シート
22…第2成型遮水シート
22A〜22D…第2成型遮水分割シート
23…コーキング
24…両面ブチルテープ
25…接着剤
26…押出溶着
30…下方遮水構造
31A…底面保護マット
31B…中間保護マット
31C…表面保護マット
32A…下層シート
32B…上層シート
33…第1成型遮水シート
33A〜33D…第1成型遮水分割シート
34…第2成型遮水シート
34A〜34D…第2成型遮水分割シート
35A…内側シート
35B…外側シート
36A,36B…自動溶着
37A,37B…押出溶着
40…遮水シート構造
41…遮水シート
42…押出溶着
43…自動溶着
44…押出溶着
C…クレーン
N…地盤
S1…一次掘削面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削することによって廃棄物を埋め立てる埋立領域が形成され、前記埋立領域を覆う屋根が設けられている屋根付き処理施設であって、
前記埋立領域に複数の場所打ち杭が所定間隔をおいて造成され、
前記場所打ち杭の鉛直上方にプレキャスト杭が立設されており、
前記プレキャスト杭を柱として、前記屋根が支持されていることを特徴とする屋根付き処理施設。
【請求項2】
前記プレキャスト杭が、コンクリート製である請求項1に記載の屋根付き処理施設。
【請求項3】
前記場所打ち杭における地盤からの露出部が、遮水シートで覆われている請求項1または請求項2に記載の屋根付き処理施設。
【請求項4】
前記場所打ち杭における地盤からの露出部における地盤との境界部は、既成遮水部材で覆われており、
前記既成遮水部材は、筒状部および前記筒状部から側方に突出するつば部を備えるハット形状を、前記筒状部の高さ方向に沿って切断されて複数に分割された分割既成遮水部材を組み合わせて構成されている請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の屋根付き処理施設。
【請求項5】
前記場所打ち杭における地盤からの露出部が、前記柱の一部として用いられている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の屋根付き処理施設。
【請求項6】
地盤を掘削して廃棄物を埋め立てる埋立領域を形成し、前記埋立領域を屋根で覆う屋根付き処理施設の建設方法であって、
前記埋立領域となる地盤に、所定の間隔をおいて場所打ち杭を造成し、
前記場所打ち杭を形成した鉛直上方にプレキャスト杭を立設し、
前記プレキャスト杭を柱として、前記埋立領域を覆う屋根を構築するとともに、
前記場所打ち杭の周囲を掘削して前記埋立領域を形成することを特徴とする屋根付き処理施設の建設方法。
【請求項7】
前記埋立領域となる地盤を所定深さまで掘削する一次掘削を行った後、前記場所打ち杭を造成し、
前記場所打ち杭の造成が済んだ後、前記埋立領域となる地盤の前記所定深さより深い位置を掘削する二次掘削を行う請求項6に記載の屋根付き処理施設の建設方法。
【請求項8】
前記一次掘削を行い、前記場所打ち杭にプレキャスト杭を立設した後、前記屋根を構築し、
前記屋根を構築した後に、前記二次掘削を行う請求項7に記載の屋根付き処理施設の建設方法。
【請求項9】
前記二次掘削を行う際に、前記場所打ち杭における露出部を遮水シートで覆う請求項6〜請求項7のうちのいずれか1項に記載の屋根付き処理施設の建設方法。
【請求項10】
前記二次掘削を行っている際、前記場所打ち杭が露出する長さが所定長さとなるごとに、露出した前記場所打ち杭を、前記遮水シートで覆う請求項9に記載の屋根付き処理施設の建設方法。
【請求項11】
前記二次掘削が完了した後、前記場所打ち杭における地盤からの露出部と地盤との境界部を、地盤とともに既成遮水部材で覆う請求項6〜請求項10のうちのいずれか1項に記載の屋根付き処理施設の建設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81919(P2013−81919A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224845(P2011−224845)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】