説明

屋根用下地材とこれに使用される透湿性野地板

【課題】腐食や結露が生じにくい屋根用下地材と、これに使用される透湿性野地板を提供する。
【解決手段】曲げ強度が15N/mm以上であり、透湿抵抗が5m・h・mmHg/g以下である透湿性野地板10と、該透湿性野地板10上に配置される透湿防水シート20とを備えた屋根用下地材30を使用する。透湿防水シート20は、かさ密度が0.01g/cm以上の不織布層と、該不織布層上に積層される多孔性ポリオレフィンフィルム層と、前記不織布層と前記多孔性ポリオレフィンフィルム層とを接着する樹脂製の接着部とを備え、前記接着部は、分散して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の屋根に使用される屋根用下地材とこの屋根用下地材に使用される透湿性野地板に関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋などの木造建築物の屋根は、棟木から軒桁にかけて斜めに取り付けられた複数本の垂木と、垂木の上に張られた野地板と、野地板の上に敷かれた防水シートと、防水シート上に設けられた瓦などの屋根仕上材とを有して構成されている(例えば特許文献1参照。)。
ここで一般的に、野地板には構造用合板が使用され、防水シートには、フェルト状の布帛にアスファルトを含浸させたアスファルトルーフィングが使用されることが多い。アスファルトルーフィングは、防水性が高いうえ、寸法安定性、物理的強度に優れ、釘を打設した時の釘穴シール性も良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−269277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アスファルトルーフィングは透湿性が低いために、施工後において、屋根の下方からの湿気が屋根から外気側に排出されにくかった。そのため、アスファルトルーフィングの下に配置された野地板は水分を含みやすく、腐食しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本出願人は、野地板の腐食を防止することを目的として、透湿性の優れた防水シートについて検討を行ってきた。ところが、透湿性の優れた防水シートを使用した場合、野地板の腐食は防止できても、野地板の表面に結露が生じてしまうことがあった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、腐食や結露が生じにくい屋根用下地材と、これに使用される透湿性野地板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の透湿性野地板は、曲げ強度が15N/mm以上であり、透湿抵抗が5m・h・mmHg/g以下であることを特徴とする。
本発明の屋根用下地材は、前記透湿性野地板と、該透湿性野地板上に配置される透湿防水シートとを備えた屋根用下地材であって、
前記透湿防水シートは、かさ密度が0.01g/cm以上の不織布層と、該不織布層上に積層される多孔性ポリオレフィンフィルム層と、前記不織布層と前記多孔性ポリオレフィンフィルム層とを接着する樹脂製の接着部とを備え、
前記接着部は、分散して形成されていることを特徴とする。
前記接着部は、溶融押出により形成された複数の線状の熱可塑性樹脂からなることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、腐食や結露が生じにくい屋根用下地材と、これに使用される透湿性野地板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である屋根用下地材を用いて構成された屋根の一部を概略的に示す縦断面図である。
【図2】図1の屋根が具備する屋根用下地材に使用されている透湿防水シートの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態を例示して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の屋根用下地材を用いて構成された木造建築物の屋根の一部を概略的に示す縦断面図である。
この屋根は、棟木40から軒桁にかけて斜めに取り付けられた図示略の複数本の垂木の上に、透湿性野地板10と、この透湿性野地板10の上に張られた透湿防水シート20とからなる屋根用下地材30が施工され、この屋根用下地材30の透湿防水シート20上に、図示略の通気層を挟んで、瓦からなる屋根仕上材50が葺かれて構成されている。図中、符号60は断熱材、符号70は石膏ボードなどの天井材である。
【0011】
屋根用下地材30に使用される透湿性野地板10は、その曲げ強度が15N/mm以上とされている。曲げ強度がこの範囲であれば、従来の構造用合板からなる野地板と同様に、瓦などの屋根仕上材50を確実に支持することができる。より好ましい曲げ強度は、19.5〜22N/mmである。
また、透湿性野地板10の透湿抵抗は、5m・h・mmHg/g以下である。透湿抵抗がこの範囲であれば、屋根の下方からの湿気を外気側に逃しやすいために、腐食や結露を防ぐことができる。また、防水性、強度の観点からは、透湿抵抗は2.5m・h・mmHg/g以上であることが好ましい。このように好ましい透湿抵抗は、2.5〜5m・h・mmHg/gである。
【0012】
なお、ここで曲げ強度は、JIS A5905に準拠して測定され、透湿抵抗は、JIS A1324におけるカップ法に準拠して測定される値である。
【0013】
このような曲げ強度と透湿抵抗を備える透湿性野地板としては、インシュレーションボード(軟質繊維板)、MDF(中密度繊維板:Medium−Density Fiberboard)などの繊維板が好適に使用できる。
【0014】
図2は、図1の屋根が具備する屋根用下地材30を構成する透湿防水シート20の縦断面図である。
この透湿防水シート20は、不織布層21と、この不織布層21上に、樹脂製の接着部23を介して積層された多孔性ポリオレフィンフィルム層22とを備えている。また、この例の透湿防水シート20は、多孔性ポリオレフィンフィルム層22の上に、多孔性遮熱層24が積層され、この多孔性遮熱層24の上に、保護層25が積層されている。
【0015】
不織布層21は、図2では図示略の透湿性野地板と接触する層であり、その上に設けられる多孔性ポリオレフィンフィルム層22を支持するとともに、多孔性ポリオレフィンフィルム層22を施工時の傷付きなどから保護する等の作用を奏するものである。
【0016】
不織布層21は、そのかさ密度が0.01g/cm以上である。かさ密度がこのような範囲であると、屋根用下地材30の施工時に透湿防水シート20に釘を打設した際に、打設された釘を十分に圧迫でき、釘穴での止水性(釘穴シール性)が優れる。また、かさ密度がこのような範囲であると、樹脂製の接着部23の少なくとも一部が不織布層21に含浸しやすく、そのために、さらに高い釘穴シール性が得られやすい。一方、かさ密度がこの範囲未満であると、屋根用下地材30の施工時に透湿防水シート20に釘を打設した際に、打設された釘を十分に圧迫することができず、釘穴での止水性(釘穴シール性)が不充分となる。
不織布層21の好ましいかさ密度の上限は、0.05g/cmである。不織布層21のかさ密度の上限がこの値であると、軽量であり好適である。よって、不織布層21の好ましいかさ密度は、0.01〜0.05g/cmであり、さらに好ましいかさ密度は、0.02〜0.03g/cmである。
【0017】
不織布層21の厚さは、0.5〜3mmであることが好ましい。厚さが0.5mm以上であると、打設された釘を充分に圧迫することができるために釘穴シール性がより高まる。また、3mm以下であると、透湿防水シート20のコスト低減と軽量化の観点から好ましい。
【0018】
不織布層21を構成する不織布の種類としては、特に制限はなく、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらのなかでは、スパンボンド不織布またはメルトブロー不織布を用いると、釘穴シール性がより高まるために好ましく、さらには、疎水性であるポリプロピレンからなるスパンボンド不織布がより好ましい。
【0019】
不織布層21は、図示例のように、一層のみから構成されていてもよいが、複数層から構成されていてもよい。好適な具体例としては、不織布層を上層と下層との2層など、複数層から構成し、これら各層を異なるデニール数の繊維からなる不織布で構成する形態が例示できる。
例えば、透湿性野地板10と接する側の下層をデニール数の大きな繊維からなる不織布で構成し、この下層よりもデニール数の小さな繊維からなる不織布で上層を構成する。より具体的には、下層を2.2〜2.8デニール(例えば2.5デニール)のポリプロピレン繊維からなる不織布で構成し、上層を1.5〜2.1デニール(例えば1.8デニール)のポリプロピレン繊維からなる不織布で構成する形態が挙げられる。
このように不織布層を複数層から構成し、各層には、異なるデニール数の繊維からなる不織布を用いることによって、不織布層全体としての釘穴シール性がより高まり、良好な止水性を発揮することができる。
【0020】
すなわち、透湿防水シート20を透湿性野地板10上に施工する場合には、細い針を備えたタッカーなどの固定具が使用される場合がある。一方、屋根仕上材50として瓦が葺かれる場合には、瓦のずり落ち防止用の瓦桟を固定するために、釘のような太い針を備えた固定具が使用される場合がある。この固定具の太い針は、透湿防水シート20を貫通することとなる。
このような場合において、例えば不織布層を上層と下層との2層から構成し、上層と下層とで異なるデニール数の繊維からなる不織布を用いると、タッカーなどの細い針が不織布層を貫通した際に、デニール数の小さな繊維は細い針の周囲に絡みつき、この針の周囲をシールする効果を発揮する。一方、釘などの太い針が貫通した際には、デニール数の小さな繊維は太い針に切断されてしまうが、デニール数の大きな繊維は切断されずに太い針の周囲に絡みつき、この針の周囲をシールする効果を発揮する。
そのため、このように異なるデニール数の繊維からなる複数層の不織布で不織布層を構成することによって、使用される固定具の針の太さなどよらず、その周囲をより確実に止水することができる。
【0021】
また、この際、上述の例のように、下層を2.2〜2.8デニールのプロピレン繊維からなる不織布で構成し、上層を1.5〜2.1デニールのプロピレン繊維からなる不織布で構成するなどして、下層側をデニール数の大きな繊維からなる不織布で構成すると、釘などの太い針を備えた固定具の周囲の止水性をさらに高めることができる。
すなわち、上述したように、不織布を釘などの太い針が貫通した際には、デニール数の小さな繊維は太い針に切断されてしまうが、その下にデニール数の大きな繊維からなる不織布が存在していると、切断された小さな繊維はデニール数の大きな繊維とともに、貫通した太い釘の周囲に絡みつく作用を奏する。そのため、この釘の周囲の釘穴シール性がより高まる。
【0022】
さらに、この場合、上層を構成する不織布の上側の表面には、表面ヒート加工が施されていることが好ましい。これにより、タッカーなどの細い針を備えた固定具の周囲を止水する際の効果がより高まる。
また、不織布層を複数層から構成する場合、各層をなす不織布層の目付けには特に制限はないが、例えば1.5〜2.1デニールとされるデニール数の小さなポリプロピレン繊維からなる不織布は50g/m程度、2.2〜2.8デニールとされるデニール数の大きなポリプロピレン繊維からなる不織布は、100g/m程度の目付けであることが好適である。
また、不織布層を複数層から構成する場合、各層の間は、熱圧着ラミネート、接着ラミネートにより接着されることが好ましい。
【0023】
なお、図2に示す本実施形態の透湿防水シート20においては、不織布層21は、かさ密度が0.022g/mで、厚さが0.7mmのポリプロピレン製スパンボンド不織布により形成されている。
【0024】
不織布層21の上に、接着部23により接着される多孔性ポリオレフィンフィルム層22は、防水性および透湿性を有し、透湿防水シート20としての防水性および透湿性を発現させる上で主要な役割を果たすものである。
多孔性ポリオレフィンフィルム層22の透湿度は、1000g/m・24hr以上であることが好適である。このような透湿度であると、透湿防水シート20として充分な透湿性を確保できる。
【0025】
なお、ここで透湿度は、JIS L1099の4.1のA法(繊維製品の透湿度試験方法)に準拠して測定される値である。
【0026】
多孔性ポリオレフィンフィルム層22としては、多孔性ポリエチレンフィルム層、多孔性ポリプロピレンフィルム層が好ましく、なかでも、より高い透湿性を発現することから、多孔性ポリエチレンフィルム層がより好ましい。
多孔性ポリオレフィンフィルム層22を構成する多孔性ポリオレフィンフィルムは、例えば、ポリオレフィンフィルムの製造時に、炭酸カルシウムなどの無機粒子をポリオレフィンに含有させておくことで製造される。このように無機粒子を含有させておくと、その存在位置で微小な亀裂が生じ、その結果、ポリオレフィンフィルムに微小孔が形成される。このような微小孔によれば、防水性を維持しつつ、透湿性を発現することができる。無機微粒子の粒径は5μm以下であることが好ましい。
【0027】
多孔性ポリオレフィンフィルム層22の厚さは、20〜100μmであることが好ましい。厚さが20μm以上であると、屋根用下地材30の施工時に、透湿防水シート20に釘を打設した際に生じる釘と多孔性ポリオレフィンフィルム層22との間の隙間(釘穴)を埋めようとする弾力性が充分に得られ、釘穴シール性がより高まる。また、厚さが100μm以下であると、透湿防水シート20の軽量化の観点から好ましい。
【0028】
なお、図2に示す本実施形態の透湿防水シート20においては、多孔性ポリオレフィンフィルム層22は、透湿度が7000g/m・24hrで、厚さが30μmの多孔性ポリエチレンフィルムにより形成されている。
【0029】
不織布層21と多孔性ポリオレフィンフィルム層22との間には、これらの層を接着するための接着部23が形成されている。
ここで接着部23は、不織布層21と多孔性ポリオレフィンフィルム層22との間において、面方向に分散して配置されている。
そのため、このような接着部23によれば、不織布層21と多孔性ポリオレフィンフィルム層22とを充分に接着しながら、優れた透湿性を維持することができる。また、屋根用下地材30の施工時において透湿防水シート20に釘を打設した際には、樹脂製の接着部23が打設された釘を充分に圧迫する効果を奏し、充分な釘穴シール性が発現される。
【0030】
具体的には、例えば、接着部23が多数の点状の樹脂からなり、これらが略均一に高分散して配置されている形態が挙げられる。また、接着部23が多数の線状の樹脂からなり、これらが互いに略平行に分散して配置されている形態が挙げられる。さらに、接着部23が多数の線状の樹脂からなり、これらが互いに交差して網目状に配置されている形態も挙げられる。
【0031】
また、間隔Sをおいて互いに略平行に配置された幅Wの多数の線状の樹脂同士が部分的に溶着し、溶着部を形成することで、結果的に網目状とされた接着部23も例示できる。
このような溶着部は、例えば溶融押出などにより、線状の樹脂同士が接しないように互いに略平行に不織布層21上に配置された場合でも、線状の樹脂が不織布層21に含浸する度合いにより互いに部分的に溶着し、その結果、形成されるものである。ここで間隔Sとは、隣り合う線状の樹脂間の隙間に相当する。
【0032】
分散して形成された接着部23の合計面積(平面視における面積の和)は、不織布層21と多孔性ポリオレフィンフィルム層22との接触面積の70〜80%となることが好ましい。接着部23の合計面積がこのような範囲となるように形成され、かつ、接着部23が点状や線状に分散して配置されていると、接着部23としての充分な接着性を示すとともに、透湿防水シート20としての高い透湿性を維持し、屋根用下地材30の施工時において透湿防水シート20に釘を打設した際には、優れた釘穴シール性を発現することができる。
【0033】
そして、接着部23が多数の線状の樹脂から形成される場合には、各線状の樹脂の幅Wが0.5〜3mmの範囲とされ、かつ、隣り合う線状の樹脂同士の間隔Sが0.1〜1mmとされると、接着性、透湿性、釘穴シール性のバランスが優れる点で好ましい。より好ましい間隔Sは0.2〜0.7mmである。
【0034】
また、不織布層21と多孔性ポリオレフィンフィルム層22との接触面積あたりの接着部23の質量(塗布量)は、30〜150g/mであることが好ましい。すなわち、不織布層21と多孔性ポリオレフィンフィルム層22との接触面積1mあたり、接着部23を構成するための樹脂が合計で30〜150g/mの範囲で付与されることが好ましい。
塗布量がこの範囲内であると、接着部23を構成する樹脂が不織布層21に含浸しやすくなり、そのためにさらに高い釘穴シール性が得られやすくなる。また、その際、透湿防水シート20として充分な透湿性を発現することもできる。より好ましい塗布量は、30〜130g/mである。
【0035】
接着部23の形成方法には特に制限はなく、例えば、多数の点状の樹脂からなる接着部23を形成する場合には、溶融状態の熱可塑性樹脂を不織布層21上に点状に配置する方法が挙げられる。また、多数の線状の樹脂からなる接着部23を形成する場合には、熱可塑性樹脂を押出機により糸状に溶融押出し、これを不織布層21の上に互いに略平行になるように配置する方法が挙げられる。このように溶融押出すると、均一な線状の樹脂を形成でき、その結果、充分な接着強度を確保できる点で好ましい。
こうして接着部23を形成した後、この上に多孔性ポリオレフィンフィルム層を重ね合わせ、ついで、これらをロール間で挟圧する方法などにより、不織布層21と多孔性ポリオレフィンフィルム層22とを積層し一体化することができる。
【0036】
接着部23を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂等が好ましく例示できる。
【0037】
なお、図2に示す本実施形態においては、互いに略平行に配置された多数の線状の樹脂(ポリエチレン)同士が部分的に溶着して溶着部を形成し、網目状とされた接着部23を備えている。よって、より優れた釘穴シール性が得られ、確実に止水できるようにされている。また、この例で、各線状の樹脂の幅Wは1.5mmであり、隣り合う線状の樹脂同士の間隔Sは0.5mmである。また、接着部23の塗布量は、70g/mである。また、線状の樹脂は、不織布層21に少なくとも一部が含浸している。
【0038】
多孔性ポリオレフィンフィルム層22の上に積層される多孔性遮熱層24は、透湿性を維持しつつ、優れた遮熱効果を発現するものであり、例えば、樹脂フィルムに金属蒸着膜が蒸着された多孔性フィルムなどからなる層が挙げられる。より具体的には、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムに、アルミニウムなどの金属が蒸着され、多数の微小孔が物理的に穿設された多孔性フィルムが挙げられる。
多孔性遮熱層24の上に積層される保護層25は、多孔性遮熱層24の傷付きなどを防止して、長期間にわたって充分な遮熱性を確保するためのものであり、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0039】
なお、図2に示す本実施形態の透湿防水シート20においては、多孔性遮熱層24は、厚さ20μmのポリプレロピレンフィルムに、アルミニウム蒸着膜が蒸着され、さらに多数の微小孔が穿設されたものであり、保護層25は、厚さ12μmの耐候剤含有ポリエチレンフィルムにより形成されている。
【0040】
多孔性遮熱層24と保護層25とを積層し一体化する方法や、多孔性遮熱層24と多孔性ポリオレフィンフィルム層22とを積層し一体化する方法には、特に制限はないが、接着による方法が好ましい。
接着による方法の具体例としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、熱ラミネート法などが挙げられ、接着剤の種類には特に制限はない。これらの方法で多孔性遮熱層24と保護層25とを積層し一体化する場合や、多孔性遮熱層24と多孔性ポリオレフィンフィルム層22とを積層し一体化する場合には、透湿防水シート20としての通気性を維持できるように、接着剤の使用量、塗布法などを調整することが好ましい。
【0041】
なお、図2に示す本実施形態の透湿防水シート20においては、多孔性ポリオレフィンフィルム層22と、多孔性遮熱層24と、保護層25との各層間は、ドライラミネート法により接着一体化されている。
【0042】
このような屋根用下地材30の施工方法としては、透湿性野地板10と透湿防水シート20とを順次施工していく方法が好ましい。すなわち、従来の構造用合板およびアスファルトルーフィングを使用した場合と同様に、棟木から軒桁にかけて斜めに取り付けられた複数本の垂木の上に透湿性野地板10を釘などの打設により張り、その上に、透湿防水シート20を釘などの打設により設ける方法が好適である。
【0043】
以上説明したように、このような屋根用下地材30は、特定の透湿性野地板10と、特定の透湿防水シート20とを備えたものであるため、防水性を維持しながら、優れた透湿性を有することができ、腐食や結露を生じにくい。
さらに、このような屋根用下地材30を用いて屋根を施工することにより、従来、室内側に設けられていた防湿層の施工を省略することも可能となる。
【0044】
すなわち、改正されたいわゆる省エネ法によれば、外気側透湿抵抗Roと室内側透湿抵抗Rrとの透湿抵抗比MR(=Rr/Ro)が特定の数値以上であれば、防湿層の施工を省略できるとされている。本実施形態の屋根用下地材30を採用すると、透湿抵抗比MRを特定の数値以上とすることも可能であり、防湿層の施工を省略することができる。
【0045】
例えば、図1のような屋根を施工した場合、外気側透湿抵抗Roは、屋根仕上材50の透湿抵抗と、図示略の通気層の透湿抵抗と、屋根用下地材30の透湿抵抗との和となる。室内側透湿抵抗Rrは、天井材70の透湿抵抗と断熱材60の透湿抵抗との和となる。
ここで一般的な屋根仕上材50と、厚さ18mmの通気層とによれば、これらの透湿抵抗の和は17(×10sPa/kg)程度と計算される。また、図1の屋根を構成している屋根用下地材30の透湿抵抗は、図2の透湿防水シート20の透湿抵抗:約3.8(×10sPa/kg)と、透湿性野地板10の透湿抵抗:約28(×10sPa/kg)との和であり、31.8(×10sPa/kg)程度と計算される。
よって、外気側透湿抵抗Roは、17+31.8=48.8より、48.8(×10sPa/kg)と計算される。
【0046】
一方、室内側透湿抵抗Rrは、一般的な天井材(石膏ボード)70の透湿抵抗:約2(×10sPa/kg)と、一般的な断熱材(例えば、押出発泡ポリスチレン3種からなり、厚さ35mmの断熱材)60の透湿抵抗:約347(×10sPa/kg)との和であり、2+347=349より、349(×10sPa/kg)程度と計算される。
【0047】
したがって、外気側透湿抵抗Roと室内側透湿抵抗Rrとの透湿抵抗比MR(=Rr/Ro)は、349/48.8=7.15程度と計算される。・・・(1)
【0048】
これに対して、本実施形態の屋根用下地材30の代わりに、一般的なアスファルトルーフィングと合板製の野地板(12mm)とを使用した場合には、アスファルトルーフィングと合板製の野地板の透湿抵抗は、各々、約574(×10sPa/kg)、約108(×10sPa/kg)であることから、外気側透湿抵抗Roは、17+574+108=699より、699(×10sPa/kg)程度と計算される。
一方、室内側透湿抵抗Rrは、先に算出したように349(×10sPa/kg)程度である。
したがって、外気側透湿抵抗Roと室内側透湿抵抗Rrとの透湿抵抗比MR(=Rr/Ro)は、349/699=0.50程度と計算される。・・・(2)
【0049】
改正された省エネ法によれば、透湿抵抗比MR(=Rr/Ro)が6以上であれば、最も基準の厳しい北海道においても、防湿層の施工を省略できるとされている。一方、透湿抵抗比MR(=Rr/Ro)が3以上であれば、最も基準が緩やかな宮崎県や鹿児島県においては、防湿層の施工を省略できるとされている。
よって、上記(1)のように、本実施形態の屋根用下地材30を採用した場合には、透湿抵抗比MR(=Rr/Ro)を7.15程度とすることができるため、基準の厳しい北海道においても、防湿層の施工を省略することができる。これに対して、本実施形態の屋根用下地材30に代えて、アスファルトルーフィングと合板製の野地板(12mm)とを使用した場合には、上記(2)のように、透湿抵抗比MR(=Rr/Ro)が0.50と非常に小さいため、最も基準が緩やかな宮崎県や鹿児島県においても、防湿層の施工を省略することができない。
【0050】
このように本実施形態の屋根用下地材30によれば、腐食や結露を生じにくいことに加えて、省エネ法による基準の厳しい地域においても、防湿層の施工を省略することができる。よって、この屋根用下地材30によれば、工期の短縮、コストの低減などの点でも非常に有効である。
【符号の説明】
【0051】
10:透湿性野地板
20:透湿防水シート
30:屋根用下地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ強度が15N/mm以上であり、透湿抵抗が5m・h・mmHg/g以下であることを特徴とする透湿性野地板。
【請求項2】
請求項1の透湿性野地板と、該透湿性野地板上に配置される透湿防水シートとを備えた屋根用下地材であって、
前記透湿防水シートは、かさ密度が0.01g/cm以上の不織布層と、該不織布層上に積層される多孔性ポリオレフィンフィルム層と、前記不織布層と前記多孔性ポリオレフィンフィルム層とを接着する樹脂製の接着部とを備え、
前記接着部は、分散して形成されていることを特徴とする屋根用下地材。
【請求項3】
前記接着部は、溶融押出により形成された複数の線状の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の屋根用下地材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−275842(P2010−275842A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132348(P2009−132348)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)