説明

展張ネット捕集体

【課題】取り替え作業を簡素に行うことができ、且つ捕集用ネットを正しく展張することができる展張ネット捕集体を提供する。
【解決手段】展張ネット捕集体1は、網目を有するネット基材に粘着剤が塗布されてなる捕集用ネット2と、捕集用ネット2を正しく展張した状態で保持する展張具3とを備えている。展張具3は、ネット基材の網目の配列方向に沿って延び捕集用ネット2を収容する収容凹部50をもつ枠体5と、枠体5の延び方向と平行に延び収容凹部50に進入して枠体5の内面との間で捕集用ネット2を挟持する収容部材6とからなる。枠体5の内面と収容部材6の外面とは、捕集用ネット2の粘着剤の粘着力とネット基材の凹凸網目構造による滑り止め効果とによって密着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展張ネット捕集体に関し、特に浮遊ダストを捕集する展張ネット捕集体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家具等の塗装工場、食品製造工場、精密機械製造工場、電気部品製造工場等の工場では、製造環境を衛生に保つため、ダスト、粉塵、塗料ミスト等を捕集する捕集用ネットが展張されている。特開2002−233800号公報、特許第3959485号公報、特許第3131820号公報、特開2007−6722号公報に開示されているように、特許出願人は、捕集用ネットとして、ネット基材に粘着剤を塗布したものを開発した。
【0003】
これらの捕集用ネットを設置場所に展張するにあたっては、例えば、図8に示すように、室内天井近くの相対向する壁部からワイヤー91を展張し、捕集用ネット90の網目とワイヤー91とに不連続ではあるが細かいピッチでフック92を係止することによりワイヤー91に捕集用ネット90を取り付けたり、細紐などで捕集用ネット90の網目とワイヤー91を相互に縫い合わせることで、ワイヤー91に捕集用ネット90を均等に取り付けたりする。
【0004】
一方、網戸の枠体への取り付け方法を、捕集用ネットに適用することも考えられる。具体的には、図9に示すように、棒状に延びる枠体95内に捕集用ネット90を収容した後に、細長いゴム94を枠体95に押し込んで捕集用ネット90を枠体96と押さえゴム94とで挟持する。枠体95の両側立壁の開口端部にリップ部95aを取り付けて押さえゴム94を保持する。捕集用ネット90を取り付けた枠体95を、室内の天井近傍の壁に固定すると、捕集用ネット2は枠体96の延び方向に展張される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−233800号公報
【特許文献2】特許第3959485号公報
【特許文献3】特許第3131820号公報
【特許文献4】特開2007−6722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、捕集用ネットは、室内に展張しておくと、次第にダストで汚れてくる。このため、定期的に新品に取り替える必要がある。
【0007】
しかしながら、第1の方法では、捕集用ネットを取り替えるにあたっては、捕集用ネット90から直接取り付けられた多数のフック92を一つ一つ取り外す必要があり、手間がかかった。また、捕集用ネット90が正しく展張されないため、捕集用ネット90に縦シワが入り、網目が十分に開口されずに、ネット全体もウェーブ状になる場合があった。このように正しく展張されていない捕集用ネットでは、ダストの捕集効率が低かった。
【0008】
第2の方法では、押さえゴム94は、枠体95に取り付けられたリップ部95aで保持されているため、枠体95内に押さえゴム94を進入させたり取り外したりする作業が煩わしかった。また、網戸ではネットの四方を枠体で保持しているので、ネットははずれにくく、また、押さえゴムに加わる荷重はそれほど大きくない。これに対して、網戸で用いられている枠体95を捕集用ネット90の展張に適用した場合には、捕集用ネット90の上部を保持する枠体95には、捕集用ネット90の重量が集中するため、枠体95と押さえゴム94とでは、大型で重量の重い捕集用ネット90がはずれやすく、確実に吊り下げることができなかった。そもそも、本来、捕集用ネット90は、大型であり、工場空間を大きく間仕切りしつつ利用するものである。このため、捕集用ネット90の四方を長尺な押さえゴム94と枠体95とで挟持して展張すること自体に無理があり、捕集用ネット90の取り替えに非常な手間がかかり、実用上不可能に近いものであったし、また、捕集用ネット90の網目を正しく開放せしめて展張することも不可能であった。
【0009】
そこで、発明者は、ネット基材に粘着剤を塗布してなる捕集ネットの特性を生かして、簡易に取り替えをすることができる展張ネット捕集体を鋭意探求した。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、捕集用ネットの取り替え作業を簡素に行うことができ、且つ捕集用ネットを正しく展張することができる展張ネット捕集体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の展張ネット捕集体は、網目を有するネット基材に粘着剤が塗布されてなる捕集用ネットと、前記捕集用ネットを正しく展張した状態で保持する展張具とを備えた展張ネット捕集体であって、前記展張具は、前記ネット基材の前記網目の配列方向に沿って延び前記捕集用ネットを収容する収容凹部をもつ枠体と、前記枠体の延び方向と平行に延び前記収容凹部に進入して前記枠体との間で前記捕集用ネットを挟持する収容部材とからなり、前記枠体の前記収容凹部は、内底面と前記内底面の両端部から垂直方向に延びる一対の内側面とにより囲まれており、前記収容部材は、前記枠体の一対の前記内側面に対向する一対の外側面を有するとともに、前記枠体の一対の前記内側面と前記収容部材の一対の前記外側面とは、前記捕集用ネットの前記粘着剤の粘着力と前記ネット基材の凹凸網目構造による滑り止め効果とによって密着していることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、枠体と収容部材とで捕集用ネットを挟持している。枠体に形成された収容凹部には、捕集用ネットと収容部材とが収容されて、枠体と収容部材との間で捕集用ネットが挟持されている。捕集用ネットは、ネット基材に粘着剤が塗布されたものである。このため、枠体の内側面と収容部材の外側面とが、捕集用ネットの粘着剤の粘着力と、ネット基材の凹凸網目構造による滑り止め効果とにより密着する。したがって、捕集用ネットが、枠体と収容部材とで保持されることで、正しく網目を開放した状態で展張される。
【0013】
また、枠体の収容凹部は、内底面と内底面から垂直方向に延びる一対の内側面とにより囲まれており、収容部材は、枠体の一対の内側面に沿った一対の外側面を有する。このため、収容凹部への捕集用ネットや収容部材の進退が容易となり、捕集用ネットの取り替え作業性がよい。また、収容部材の枠体への接触面積が増え、強固に捕集用ネットを固定することができる。
【0014】
また、捕集用ネットを新品に取り替えるには、収容部材の一端部を把持し、これを収容凹部から取り外す。すると、収容部材全体が収容凹部から取り外される。収容部材が外れた後には、捕集用ネットを収容凹部から容易に取り外すことができる。そして、新品の捕集用ネットを枠体の収容凹部に収容し、更に収容部材で捕集用ネットを枠体に押し付ける。これにより、新品の捕集用ネットは、粘着剤の粘着力とネット基材の凹凸網目構造による滑り止め効果とによって、枠体と収容部材との間に固定される。
【0015】
本発明では、枠体と収容部材と捕集用ネットとを、凹凸嵌合などの一体化のための構造上の工夫をすることなく、粘着剤の粘着力とネット基材の凹凸網目構造とによって一体化している。ゆえに、枠体と収容部材との形状を簡素化でき、また、捕集用ネットを正しく展張することができ、捕集用ネットの取り替え作業性にも優れる。
【0016】
(2)前記枠体は、前記内底面と一対の前記内側面とで囲まれて一方側が開口するコ字状の前記収容凹部をもち、前記収容部材は、外底面と前記外底面の両端部から垂直方向に延びる一対の前記外側面とで囲まれて一方側が開口するコ字形状の空間部をもち、前記枠体の前記内底面は、前記収容部材の前記空間部の開口側に配設されていることが好ましい。
【0017】
この場合には、捕集用ネット及び収容部材の収容凹部への進退が容易となる。また、枠体の底部にフック、係止具などの取付具をはめ込むときにも、収容部材と干渉することなく、取付具の一部を枠体の収容凹部内へ突出させることができ、取付具を枠体に確実に固定することができる。
【0018】
(3)前記捕集用ネットは、前記枠体の前記一対の内側面と、前記収容部材の一対の前記外側面との互いに対面する部分の全体で挟持されていることが好ましい。この場合には、枠体の一対の内側面と収容部材の一対の外側面との互いに対面する部分の全体に捕集用ネットが配設される。このため、枠体の一対の内側面と収容部材の一対の外側面との互いに対面する部分の全体を、粘着剤の粘着力とネット基材の凹凸網目構造とによって、強固に密着させることができる。
【0019】
(4)前記展張具は、前記捕集用ネットの相対する一対の端縁部をそれぞれ保持することが好ましい。この場合には、捕集用ネットの相対する一対の端縁部が展張具で保持されるため、捕集用ネット全体を見栄えよく展張することができる。
【0020】
(5)前記ネット基材は、熱可塑性樹脂製モノフィラメントが弧を描きながら相互に隣り合う弧をくぐり抜け、前記弧によって形成される緩い空間部を有する網脚をもち、この複数の網脚間を、熱可塑性モノフィラメントで平行状に連結して網目を形成し、前記網目の中を熱可塑性モノフィラメントで斜め状、平行状又はX字状に区切っていることが好ましい。
【0021】
この場合には、粘着剤の皮膜は面積が広くなり、粘着剤の皮膜面積を効率的かつ広く形成することができる。このため、微小のダスト等の付着が向上し、通過せんとするダスト等の捕捉量は大になる。さらに粘着剤の皮膜はランダムに発生するためにダスト等の大小に関係することなく全体としてこのダスト等の捕集量も多くなる。
【0022】
また、熱可塑性合成樹脂製モノフィラメントを用いることによって、モノフィラメントの表面が平滑で、かつ剛性を発揮させることができる。また、捕集用ネットは、その上側及び下側の端縁部に取り付けられる展張具で正しく展張させることにより、所望の網目形状に正しく展開することができる。これらのことにより、捕集用ネットの空気の通過性が良好になり、空気の通過を阻害することなく、ダストの捕集量を多くすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の展張ネット捕集体によれば、ネット基材に粘着剤を塗布してなる捕集用ネットを、枠体に形成した収容凹部に収容し、枠体と収容部材とで挟持することで、粘着剤の粘着力とネット基材の凹凸網目構造とにより、捕集用ネットを上下にわたり枠体と収容部材と一体的に固定している。このため、捕集用ネットは、所望の形状に網目を開くことができ、捕集用ネットの新規交換を簡単に行うことができる。また、捕集用ネット全体を正しく展張せしめ、ダストの捕集効率を向上させることができるとともに、ダストの付着した使用後の捕集ネットを新品に簡便に取り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る展張ネット捕集体の斜視図である。
【図2】本実施形態に係る展張ネット捕集体の要部拡大断面図である。
【図3】本実施形態に係る捕集用ネットの平面説明図である。
【図4】本実施形態のネット基材の寸法関係を説明するためのネット基材の平面説明図である。
【図5】本実施形態に係る他の捕集用ネットの平面説明図である。
【図6】本実施形態に係る、展張ネット基材の製造方法を示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る、収容部材の枠体からの取り外し方法を示す説明図である。
【図8】従来例に係る展張ネット捕集体の平面図である。
【図9】他の従来例にかかる展張ネット捕集体の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る展張ネット捕集体1は、工場の設置場所に、直列に複数が配列されている。各展張ネット捕集体1は、捕集用ネット2と、捕集用ネット2の上側及び下側の端縁部に設けられた展張具3とを備えている。捕集用ネット2は、展張具3により正しく展張されている。ここで、「正しく展張」とは、捕集用ネット2の網目にゆがみがなく、網目を展開させた状態で、皺が生じることなく、また波状の凹凸が生じることなく平面状に捕集用ネット2を展張させることをいう。
【0026】
図2に示すように、捕集用ネット2は、網目20を有するネット基材21と、ネット基材21に塗布された粘着剤28とを有する。
【0027】
ネット基材21は、所望の幅を有し長尺で、かつフレキシブルに形成されている。本実施形態では、ネット基材21の幅、高さは、2m、3mである。ネット基材21は、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ナイロン等の熱可塑性樹脂のモノフィラメント、マルチフィラメント又はその集合体(撚糸等)によって編網してある。合成樹脂の中でも熱可塑性樹脂は再利用(リサイクル)が比較的容易であるが、その中でも、塩化ビニルや塩化ビニリデンのネットを用いると、ナイロンやポリオレフィン等に比してダスト等が付着しても、再利用に支障を来さず、かつ再利用がきわめて容易であり最も利用価値が高く、一方、ポリオレフィン又はナイロン等のネットを用いると取り扱い性及び強度の点で良好となる。
【0028】
ネット基材21の網目構造としては、例えば平織り、ラッセル織り、魚網等に見られる蛙又織り、無結節織り又は撚網等いずれでもよく、また角部が直角の四角形である角目、又は、角部が直角ではない四角形である菱目のいずれでもよい。好ましくは、ネット基材21の網目は、角目がよい。
【0029】
粘着剤28は、ネット基材21に塗布してある。この粘着剤28としては、アクリル系、天然ゴム系、SBR、ブロックSIS、シリコンゴム系等を用いると、粘着力が高く、かつ粘着力の持続期間が長いので好ましい。粘着剤28の性能としては下記の範囲がよい。
粘着力(g) 200〜700(JIS Z0237に準拠)
P.タック(g) 200〜700(JIS Z0237参考欄に準拠)
剥離力(g) 5〜 20(JIS Z0237に準拠)
ボールタック 5〜 20(JIS Z0237に準拠)
ネット基材21における網目のサイズについて述べる。図3に示すように、例えば、1個の網目20は通常4本の網脚25によって形成されるが、そのうち相対向する一対の網脚25の長さを各Lとし、この網脚25の見掛け分径(直径)をDとし、他の相対向する一対の網脚25の長さをL’とし、この網脚25の見掛け分径をD’とすると、LとL’によって囲まれた空隙Kが網目20となる。ここで、(1)0.1mm≦D<2.5mm、(2)2.0mm≦L<8.0mmであって、(3)2<L/D<35の範囲が好ましい。この場合には、捕集用ネット2の通気性がよく、ネット基材21の網脚25によりダスト等を含む空気が効果的に濾過されることになるため、浮遊するダスト等の捕捉量を大幅に高めることができる。
【0030】
粘着剤28は、ネット基材21の網脚25に付着している。ネット基材21の網目20の周縁には粘着剤28が付着し、網目20の中央部分は開口させている。網目20に開口した中央部分を空気が通り抜ける。この際に空気中に浮遊するダストが、網目20周辺に付着している網脚25に引っかかり、粘着剤28で捕集される。
【0031】
粘着剤28のネット基材21への付着量は、ネット基材1m当たり、50〜180gであることが好ましく、更には、100〜150gであることが望ましい。この場合には、ネット基材21に粘着剤28が十分量付着して、枠体5と収容部材6とを強固に密着させることができる。
【0032】
また、図4に示すように、相対向する一対の網脚25には、網目20を平行状、斜め状又はX字状に横断する架橋部26で連結されていてもよい。この場合には、ダストの捕集効率が更に向上する。また、ネット基材21の単位面積に対する粘着剤28の付着量が増え、捕集用ネット2が枠体5と収容部材6とに更に強固に密着することができる。
【0033】
ネット基材21は、熱可塑性樹脂製モノフィラメントが弧を描きながら相互に隣り合う弧をくぐり抜け、弧によって形成される緩い空間部を有する網脚25をもつ。この複数の網脚25間を、熱可塑性モノフィラメントで平行状に連結して網目を形成し、網目の中を熱可塑性モノフィラメントで斜め状、平行状又はX字状の比較的細い架橋部になっていてもよい。この場合には、粘着剤の皮膜は面積が広くなり、微小のダスト等の付着が向上し、通過せんとするダスト等の捕捉量は大になる。さらに粘着剤の皮膜はランダムに発生するためにダスト等の大小に関係することなく全体としてこのダスト等の捕捉量も多くなる。また熱可塑性合成樹脂製モノフィラメントを用いることによって、モノフィラメントの表面が平滑で、かつ剛性を発揮させることができ、このことにより空気の通過性が良好になり、所望外の部分で空気の通過を阻害することがない。フィラメントは剛性を有することによって網脚部分のループ形状を形成することができるとともに、保持することが容易であり、粘着剤の皮膜面積を効率的かつ広く形成することができる。
【0034】
図5に示すように、展張具3は、枠体5と、収容部材6とを備えている。枠体5は、アルミニウム材からなり、直線状に延び、コ字状の断面形状を呈し内部に収容凹部50を有する。図1に示すように、枠体5は、ネット基材21の網目20の配列方向Lに沿って配置されている。即ち、枠体5は、網目20を構成している網脚25の延び方向に沿って配置されている。ここで、「網目20の配列方向に沿って」とは、網目20の配列方向Lと平行な方向のみならず、若干傾斜している場合も含まれる。例えば、網目20の配列方向に対して±20°以内、好ましくは±10°以内の誤差は許容される。「網脚25の延び方向に沿って」も、同様に、網脚25の延び方向に対して若干の傾斜は許容される。
【0035】
図5に示すように、枠体5は、コ字断面形状を呈しており、内底面5bと、内底面5bの両端部から立設された一対の内側面5aとからなる。枠体5の外形の幅、高さ、長さは、例えば、15mm、15mm、2mであり、枠体5の厚みは2.0mmである。
【0036】
収容部材6は、アルミニウム材からなり、枠体5の収容凹部50に収容可能な大きさのコ字断面形状を呈している。収容部材6は、外底面6bと、外底面6bの両端部から立設された一対の外側面6aとからなる。収容部材6の外形の幅、高さ、長さは、10mm、10mm、2mであり、枠体5とほぼ相似形をなしている。収容部材6の外底面6bの両端部から立設する一対の外側面6aの全体は、コ字状の枠体5の一対の内側面5aの全体に対面している。収容部材6の一対の外側面6aと、枠体5の一対の内側面5aとの間には、捕集用ネット2の厚み分にほぼ等しい間隔があいている。本実施形態では、収容部材6の左右両側の外側面6aと枠体5の左右両側の内側面5aとの間には、それぞれ0.5mmの厚みAの隙間があいている。この隙間に、捕集用ネット2が配置されている。
【0037】
収容部材6は、枠体5の延び方向と平行に延び収容凹部50に進入して枠体5との間で捕集用ネット2を挟持している。枠体5の一対の内側面5aと収容部材6の一対の外側面6aとは、捕集用ネット2の粘着剤28の粘着力と、ネット基材21の凹凸網目構造による滑り止め効果とによって密着している。ネット基材21には、網目20と網目20を囲む編脚25とにより、凹凸形状が形成されている。捕集用ネット2は、この凹凸形状により、枠体5と収容部材6との間に滑ることなく確実に挟持されており、枠体5と収容部材6とから離れる方向に手で引っ張っても、枠体5と収容部材6とからずり出されない程度に強固に保持されている。
【0038】
捕集用ネット2は、上側の展張具3と下側の展張具3に対して、ネット基材21に付着している粘着剤28の粘着力とネット基材21の凹凸網目構造による滑り止め効果とによって保持されている。なお、安全のために、捕集用ネット2の上側の端縁部は、展張具3に対して、インシュロックや紐で縛り付けてもよい。
【0039】
図1、図5に示すように、捕集用ネット2の上側の端縁部に設ける展張具3は、枠体5の上部の2箇所に、無端状に形成されたフック部材58が固定されている。各フック部材58は、半円弧状に湾曲する係止具59に連結されている。係止具59の両端部は、枠体5に穿設された取付孔5mに貫挿されて、枠体5の内底面5bから収容凹部50に数mm程度突出させた状態で取付孔5m周縁にボルト締結により固定されている。枠体5の内底面5bは、収容部材6の内部に形成された空間部66の開口側に配設されている。このため、枠体5の内底面5bから若干突出した係止具59は収容部材6と干渉することはなく、枠体5に確実に固定することができる。
【0040】
室内の壁部には直径3mm程度のワイヤー7が固定されている。ワイヤー7にフック部材58が外挿されることで、展張ネット捕集体1がワイヤー7に取り付けられている。ワイヤー7には、複数の展張ネット捕集体1が直列に取り付けられている。なお、ワイヤー7に代えて、パイプを用いても良い。
【0041】
次に、展張ネット基材の製造方法について説明する。まず、図6に示すように、捕集用ネット2の上側の端縁部を枠体5の収容凹部50の開口側にあてがう。枠体5の延び方向は、捕集用ネット2のネット基材21の網目の配列方向Lと平行に揃える。このとき、捕集用ネット2は、枠体5から、若干の幅分(例えば20mm程度)はみ出すように配置するとよい。
【0042】
次に、ネット基材21をあてがった収容凹部50に、収容部材6を進入させ、枠体5の内底面に向かって収容部材6を押し付ける。これにより、収容部材6と枠体5との間に捕集用ネット2が挟持されて、枠体5の一対の内側面5aと収容部材6の一対の外側面6aとが、捕集用ネット2の粘着剤28の粘着力とネット基材21の凹凸網目構造による滑り止め効果とによって密着固定される。なお、捕集用ネット2の枠体5からのはみ出し分をはさみやナイフで切り落とすと、見栄えがよくなる。
【0043】
捕集用ネット2は、所定期間使用すると、ダストが付着して汚れてくる。そこで、所定期間経過後には、新品に取り替えることがよい。捕集用ネット2を新品に取り替える方法について説明する。まず、図7に示すように、収容部材6の端部60を把持し、枠体5から取り外す。収容部材6は剛体であるため、収容部材6の端部60を枠体5から取り外すことにより、収容部材6の全体が枠体5から外れる。収容部材6が外れた後に、枠体5から捕集用ネット2を取り外す。捕集用ネット2には、粘着剤が付着しているため、捕集用ネット2を枠体5から外すときに、捕集用ネット2を枠体5から引っ張り出すようにして若干負荷をかけることで、容易に外すことができる。その後、上記の取り付け方法に従って、新品の捕集用ネット2に展張具3を取り付ける。
【0044】
捕集用ネット2の展張具3への保持力を評価した。その評価に当たっては、ネット基材21の網脚25の見掛け分径Dを0.1mm以上2.5mm未満、網脚25の長さLを2.0mm以上8.0mm未満とし、L/Dを2を超えて大きく35未満とした。粘着剤28のネット基材21への付着量を、ネット基材1m当たり50〜180gとした。展張具3の枠体5の外形の幅、高さ、長さは、15mm、15mm、2mとし、枠体5の厚みは2.0mmとした。収容部材6の外形の幅、高さ、長さは、10mm、10mm、2mであり、枠体5とほぼ相似形を呈するようにした。捕集用ネット2をあてがった枠体5に、収容部材6を手で押さえつけることにより、捕集用ネット2を枠体5と収容部材6とで挟持した。その後に、捕集用ネット2を展張具3から手で引き出そうとしたが、捕集用ネット2は、全く引き出せなかった。また、この捕集用ネット2を展張具3に保持させてなる展張ネット捕集体1を室内に展張したところ、浮遊ダストを十分に捕集することができた。
【0045】
一方、粘着剤28のネット基材21への付着量を、ネット基材1m当たり50g未満に変更した場合には、捕集用ネット2を展張具3から引っ張り出そうとしたところ、捕集用ネット2は若干引き出された。そうして、捕集用ネット2全体は落下しないまでも、全体形状が歪んでしまい、網目の展張が不十分となって、ダストの捕集性能も低下した。
【0046】
本実施形態においては、棒状の枠体5と収容部材6とを用いて捕集用ネット2を挟持している。枠体5に形成された収容凹部50には、捕集用ネット2と収容部材6とが収容されて、枠体5と収容部材6との間で捕集用ネット2が挟持されている。捕集用ネット2は、ネット基材21に粘着剤28が塗布されたものである。このため、枠体5の内側面5aと収容部材6の外側面6aとが捕集用ネット2の粘着剤28により密着する。
【0047】
更に、ネット基材21は、網目構造による凹凸形状を呈している。このため、捕集用ネット2が、枠体5と収容部材6との間から抜け出ることが防止される。それゆえ、捕集用ネット2が、枠体5と収容部材6とで正しく展張された状態で保持される。
【0048】
また、枠体5と収容部材6と捕集用ネット2とを、凹凸嵌合などの一体化のための構造上の工夫をすることなく、捕集用ネット2に付着している粘着剤28の粘着力とネット基材21の網目凹凸形状による滑り止め効果とによって一体化している。ゆえに、枠体5と収容部材6との形状を簡素化でき、また捕集用ネット2の取り替え作業性も優れる。
【0049】
また、展張具3は、捕集用ネット2の上側と下側の両端縁部に設置されている。このため、捕集用ネット2の全面が、ほぼ平面状に広げられ、網目が正しく開き、捕集用ネット2全体が正しく展張される他、展張ネット捕集体1間の隙間が少なく、展張ネット捕集体1を境にして、展張ネット捕集体1の表裏をダストがすり抜けることを防止することができる。
【0050】
上記実施形態においては、展張具3は、捕集用ネット2の上側及び下側の両端縁部に設置しているが、上側の端縁部のみに設置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、衛生が要求される場所であればどのような場所にも設置される。例えば、自動車、家具等の塗装工場、食品製造工場、精密機械製造工場、電気部品製造工場等の工場において、有効に用いられる。
【符号の説明】
【0052】
1:展張ネット捕集体、2:捕集用ネット、3:展張具、5:枠体、5a:内側面、5b:内底面、6:収容部材、6a:外側面、6b:内底面、7:ワイヤー、20:網目、21:ネット基材、25:網脚、26:架橋部、28:粘着剤、50:収容凹部、58:フック部材、60:端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目を有するネット基材に粘着剤が塗布されてなる捕集用ネットと、前記捕集用ネットを正しく展張した状態で保持する展張具とを備えた展張ネット捕集体であって、
前記展張具は、前記ネット基材の前記網目の配列方向に沿って延び前記捕集用ネットを収容する収容凹部をもつ枠体と、前記枠体の延び方向と平行に延び前記収容凹部に進入して前記枠体との間で前記捕集用ネットを挟持する収容部材とからなり、
前記枠体の前記収容凹部は、内底面と前記内底面の両端部から垂直方向に延びる一対の内側面とにより囲まれており、前記収容部材は、前記枠体の一対の前記内側面に対向する一対の外側面を有するとともに、
前記枠体の一対の前記内側面と前記収容部材の一対の前記外側面とは、前記捕集用ネットの前記粘着剤の粘着力と前記ネット基材の凹凸網目構造による滑り止め効果とによって密着していることを特徴とする展張ネット捕集体。
【請求項2】
前記枠体は、前記内底面と一対の前記内側面とで囲まれて一方側が開口するコ字状の前記収容凹部をもち、
前記収容部材は、外底面と前記外底面の両端部から垂直方向に延びる一対の前記外側面とで囲まれて一方側が開口するコ字形状の空間部をもち、
前記枠体の前記内底面は、前記収容部材の前記空間部の開口側に配設されている請求項1記載の展張ネット捕集体。
【請求項3】
前記捕集用ネットは、前記枠体の前記一対の内側面と、前記収容部材の一対の前記外側面との互いに対面する部分の全体で挟持されている請求項1又は2に記載の展張ネット捕集体。
【請求項4】
前記展張具は、前記捕集用ネットの相対する一対の端縁部をそれぞれ保持する請求項1〜3のいずれか1項に記載の展張ネット捕集体。
【請求項5】
前記ネット基材は、熱可塑性樹脂製モノフィラメントが弧を描きながら相互に隣り合う弧をくぐり抜け、前記弧によって形成される緩い空間部を有する網脚をもち、この複数の網脚間を、熱可塑性モノフィラメントで平行状に連結して網目を形成し、該網目の中を熱可塑性モノフィラメントで斜め状、平行状又はX字状に区切っている請求項1〜4のいずれか1項に記載の展張ネット捕集体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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