説明

展示ケース

【課題】電気機器及び調湿手段を展示台に収納することができ、かつ電気機器の発熱の影響を調湿手段が受けることなく、展示空間を適度な湿度に保つことができる展示ケースを提供すること。
【解決手段】床面に設置された展示台2を有し、展示台2の上方に形成された展示空間4の周囲が透明な側面パネル3により囲まれ、かつ側面パネル3で囲まれた展示空間4の上方が天井パネル6により覆われ、展示台2と側面パネル3と天井パネル6とでケース本体が構成される展示ケース1において、展示台2は、展示空間4と通気されて展示空間4の湿度を調節する調湿剤46を収納する第1収納部47と、展示ケース1の外部空間と通気されて電気機器15を収納する第2収納部48と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、博物館や美術館等に設置される展示ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の展示ケースは、密閉された展示空間を適度な湿度に保つための調湿剤を配置する収納空間を基台部に設けている。このような展示ケースにあっては、展示空間の床部材に設けられたメンテナンス用パネルを下方側に開放することで、調湿剤の出し入れができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−205969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の展示ケースにあっては、メンテナンス用パネルを下方側に開放するようになっているため、基台部の上下寸法が大きな展示ケースにしか適用できない。また、ランプケースや基台部の上下寸法を小として、ランプケースや基台部の圧迫感を無くすとともに、展示空間を大きく確保したいという使用者の要望がある。しかしながら、ランプケース(天井パネル)の上下寸法を小とするために、ランプケース内の蛍光灯の電源アダプタやその他の電気機器などを、基台部(展示台)内に収納しようとすると、電気機器の発熱により展示空間が熱くなり展示品を傷め、調湿剤(調湿手段)が発する湿気により電気機器が故障する虞があるばかりか、電気機器の発熱により調湿剤の蒸発が促進されてしまい、展示空間を適度な湿度に保つことができなくなるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、電気機器及び調湿手段を展示台に収納することができ、かつ電気機器の発熱の影響を調湿手段が受けることなく、展示空間を適度な湿度に保つことができるとともに、展示空間が電気機器の発熱の影響を受けないため展示品を傷めないようにできる展示ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の展示ケースは、
床面に設置された展示台を有し、該展示台の上方に形成された展示空間の周囲が透明な側面パネルにより囲まれ、かつ該側面パネルで囲まれた展示空間の上方が天井パネルにより覆われ、前記展示台と前記側面パネルと前記天井パネルとでケース本体が構成される展示ケースにおいて、
前記展示台は、前記展示空間と通気されて該展示空間の湿度を調節する調湿手段を収納する第1収納部と、前記ケース本体外の外部空間と通気されて電気機器を収納する第2収納部と、を有することを特徴としている。
この特徴によれば、電気機器及び調湿手段を展示台に収納することができ、この電気機器の発熱を第2収納部から外部空間に排熱することができ、電気機器の発熱の影響を第1収納部に配置される調湿手段が受けることなくなり、かつ第1収納部が展示空間と通気されることにより調湿手段により展示空間を適度な湿度に保つことができるとともに、展示空間が電気機器の発熱の影響を受けないため展示品を傷めないようにできる。また、電気機器を展示台に収納することで、天井パネルの上下寸法を小とすることができ、かつ電気機器の発熱の影響を調湿手段が受けないため、電気機器及び調湿手段を近接して展示台内に収納することが可能になり、展示台の上下寸法を小とすることができ、天井パネルや展示台の圧迫感を無くすとともに、展示空間を大きく確保することができる。
【0007】
本発明の展示ケースは、
前記第1及び第2収納部は、互いに水平方向に並設されることを特徴としている。
この特徴によれば、展示台の上下寸法を小さくして展示空間を大きく確保することができ、かつ電気機器等の重量のある部材を展示台に収納した際に、展示ケースの重心位置が低くなり、展示ケースを安定的に設置できるようになる。
【0008】
本発明の展示ケースは、
前記展示台は、前記第1及び第2収納部が形成される基台と、該基台の上部に設けられて前記展示空間の床となる床部材と、を有し、該床部材は、前記基台から離間可能となっており、かつ前記基台には、前記第2収納部の上面を開閉可能に閉塞する蓋部材が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、第1及び第2収納部の両方に対して、展示空間側からアクセスすることが可能になり、展示台の上下寸法を小さくしても、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0009】
本発明の展示ケースは、
前記展示台は、平面視で略矩形状をなす矩形枠部により形成される基台を有し、該基台には、該矩形枠部内の空間を水平方向に仕切る仕切部材が設けられ、該仕切られた空間のうち、少なくとも1つの空間を前記第1収納部として形成するとともに、他の空間を前記第2収納部として形成し、前記第1収納部の下面側が板状部材で閉塞されることを特徴としている。
この特徴によれば、仕切部材により矩形枠部内の空間を仕切って第1及び第2収納部を形成して、矩形枠部の上下寸法内に第1及び第2収納部を納めることが可能となり、展示台の上下寸法を小さく形成することができ、かつ第1収納部の下面側を閉塞する板状部材によって、調湿手段により調湿された空気が第1収納部の下方側に逃げないようになる。
【0010】
本発明の展示ケースは、
前記ケース本体の側面に開閉可能な扉パネルが設けられ、該扉パネルが前記展示台に設けられる移動支持手段により移動可能に支持されており、該移動支持手段は、前記扉パネルを水平方向にスライド移動させるスライド部材を有しており、該スライド部材が前記仕切部材内に設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、扉パネルを移動可能に支持する移動支持手段のスライド部材を、展示台の仕切部材を利用して設けることができ、展示台の上下寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における展示ケースを示す斜視図である。
【図2】扉パネルを開放した状態の展示ケースを示す斜視図である。
【図3】展示ケースを示す平面図である。
【図4】展示ケースの上部を示す縦断側面図である。
【図5】発光パネルユニットを示す縦断側面図である。
【図6】展示ケースの下部を示す縦断側面図である。
【図7】展示ケースの下部を示す部分拡大縦断側面図であり、図7(a)は扉パネルが閉鎖した状態を示し、図7(b)は扉パネルを引き出した状態を示す。
【図8】展示台を示す横断平面図である。
【図9】図8における展示台を示すA−A縦断背面図である。
【図10】床部材及び蓋部材を開放した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る展示ケースを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係る展示ケースにつき、図1から図10を参照して説明する。以下、図3から図7の紙面左側を展示ケースの背面側(後方側)とし、図8の紙面下側を展示ケースの背面側(後方側)として説明する。図1の符号1は、本発明の適用された展示ケースである。この展示ケース1は、主に美術館や博物館等に設置され、展示ケース1内に配置された展示品(図示略)を、鑑賞者が展示ケース1の周囲から鑑賞できるようになっている。
【0014】
図1に示すように、展示ケース1は、床面に設置されて平面視で略四角形状をなす展示台2を有し、展示台2の四方の各側面の外周を取り囲むように、床面から立設されたガラス等の材質で形成された透明なガラスパネルで構成される側面パネル3が配置されている。この側面パネル3によって展示台2の上方に展示空間4が形成されている。そして、展示品(図示略)を展示台2の上面に配置して収容するようになっている。なお、これら複数枚の側面パネル3のうち背面側に配置されるパネルは、開閉可能な扉パネル5となっている(図2参照)。
【0015】
側面パネル3で囲まれた展示空間4の上方は、ガラスパネルで構成された透明な天井パネル6により覆われている。なお、本実施例では、展示台2と側面パネル3と天井パネル6とによりケース本体が構成されている。そして、ケース本体の背面側の開口が扉パネル5により開閉されるようになっている。
【0016】
図3に示すように、天井パネル6の上面側の中央部には、略パネル状をなす照明手段としての発光パネルユニット7が配置されている。なお、天井パネル6は、平面視で略四角形状をなすとともに、発光パネルユニット7も平面視で略四角形状をなしている。
【0017】
天井パネル6の上面における発光パネルユニット7の周辺部には、複数の板状の枠部材8が略枠状に配置された枠部が構成されている。この枠部材8は、天井パネル6の四辺における正面側及び左右側の縁部に設けられている。天井パネル6の背面側の縁部には、後述するように、扉パネル5の上端縁に取り付けられたカバー部材9が配置される。カバー部材9及び枠部材8で囲まれた部位は、展示空間4に向かって光を照射するための略パネル形状をなす発光パネルユニット7が配置される配置部10となっている。
【0018】
更に、配置部10に配置された発光パネルユニット7が枠部材8によって囲まれて保護されるようになり、室内の天井に設置される部材等が展示ケース1の上部に接触しても、枠部材8に接触させることで、発光パネルユニット7に対する接触が防止される。また、発光パネルユニット7が枠部材8によって隠蔽されて、体裁のよい展示ケース1を提供することができる。
【0019】
図4に示すように、天井パネル6は、側面パネル3で囲まれた展示空間4の上方を覆う透明なガラスパネル11を有している。なお、前述した枠部材8もガラス製(同材質)の板状部材となっている。また、枠部材8が展示空間4の上方を覆うガラスパネル11と同じガラス製であるため、展示空間4の上方を覆うガラスパネル11と枠部材との熱膨張率を同一にすることができ、発光パネルユニット7の放熱や気温変化による天井パネル6の歪みを防止できる。
【0020】
また、発光パネルユニット7は、その下面側がガラスパネル11の上面に接着されている。ガラスパネル11の背面側には、扉パネル5を開閉させる際に用いる開閉レール12及び案内レール13が形成された略板状をなすレール部材14が取り付けられている。
【0021】
なお、枠部材8は着色されて非透光性を有する色ガラスとなっている。そして、発光パネルユニット7と枠部材8の間には、目隠し用の膜部材16が取り付けられている。このように天井パネル6は、このレール部材14と枠部材8と膜部材16により発光パネルユニット7の配置部10以外の部位が非透光性を有するようになっている。また、側面パネル3及び扉パネル5における展示台2を囲む部位には、塗装膜53が設けられ、この塗装膜53により展示台2の側部が隠蔽されている(図6参照)。
【0022】
なお、展示ケース1は、一般的な鑑賞者の身長よりも大きく形成されており、鑑賞者が天井パネルを下方から見上げた際に、前述した配線17等はレール部材14や枠部材8などにより鑑賞者から見えないようになっている。また、展示ケース1の上方にある室内の天井の照明装置等から光が照射された際に、展示ケース1の上方から展示ケース1内に入り込む光が遮られることとなる。そのため、発光パネルユニット7から発せられる光のみで展示品(図示略)を照らすことができ、展示ケース1による照明効果を高められる。
【0023】
図5に示すように、発光パネルユニット7は、アクリル樹脂等の材質で形成された導光板18を有している。この導光板18は、その上面の全面に渡って微細な凹凸が形成されている。この微細な凹凸は、シルク印刷加工やV溝カット加工や成形加工やレーザー加工等の所定の加工方法により形成されている。
【0024】
また、導光板18の上面には、光を反射させる反射シート19が設けられている。導光板18の下面には、光を拡散させる拡散シート20が設けられている。平面視で略四角形状をなす導光板18の前後の縁辺側には、複数のLED21を有する照明基板22が設けられている。この照明基板22は、導光板18の端面に沿って延設されており、複数のLED21は、照明基板22の長手方向に沿って並設されており、このLED21は導光板18の端面側に向いている。
【0025】
図3及び図5に示すように、導光板18の四辺には、断面視で略コ字形状をなすフレーム部材23に装着されている。前述した照明基板22はフレーム部材23に装着されている。発光パネルユニット7において、フレーム部材23で囲まれた上面側は、矩形板材24により閉塞されている。
【0026】
図5に示すように、発光パネルユニット7は、複数のLED21が導光板18の端面側にのみ配置されており、従来の一般的な照明装置のように、照射面全体にLEDを設けずに済む。また、この発光パネルユニット7の上下幅を小さくして薄型に形成し、かつ軽量化することができるとともに、LED21の使用個数を減らして製造コストを低減させることができる。また、薄型の発光パネルユニット7を用いることにより、圧迫感が少ない展示ケース1とすることができる。
【0027】
照明基板22のLED21を点灯させると、LED21より発せられた光は、導光板18の端面に向かって入射される。この入射された光は、導光板18内部で広がり、導光板18の上面に達した光は、導光板18の上面に形成された微細な凹凸で拡散されつつ、反射シート19により反射され、導光板18の下面側に向かうようになっている。
【0028】
導光板18の下面に達した光は、拡散シート20により拡散され、導光板18の下面側全体から均一に照射されるようになっている。そして、LED21から発せられる光は直接展示品(図示略)に照射されるのではなく導光板18を介して照射されるため、紫外線や赤外線を低減させた光を展示品に照射させることができ、長時間照射しても、紫外線によって展示品が色褪せたり、赤外線による熱で展示品を傷めたりせずに済むようになる。
【0029】
発光パネルユニット7は、天井パネル6よりも小さく形成されており、発光パネルユニット7から照射される光は、発光パネルユニット7から外側斜め下方向に向かって広がるようになっており、この発光パネルユニット7の大きさは、照射される光が展示台2の上面にまんべんなく照射される程度の大きさに形成されている。
【0030】
そのため、展示台2よりも外方側に光が照射されないように、発光パネルユニット7による照射領域を展示台2の上面に限定することにより発光パネルユニット7の消費電力を低減できる。また、展示ケース1の外周に居る鑑賞者の目に光が直接入り込まないようにすることができる。
【0031】
また、発光パネルユニット7は、天井パネル6の上方に配置されているため、別途、発光パネルユニット7を支持するための部材を用いることなく、天井パネル6を利用して導光板ユニットを支持することができる。また、LED21から発生する熱によって暖められた空気が展示空間4内に入り込まないようになり、展示空間4内の温度上昇を防止することができる。そして、発光パネルユニット7が上方に露呈されているため、発光パネルユニット7の放熱性を向上させることができる。
【0032】
なお、従来の一般的な照明装置のように、照射面全体にLEDを配置して照射されるようにすると、LEDは点発光するようになっているため、その点発光が目立ってしまい、照射面全体にLEDの光のムラができてしまうようになっている。しかしながら本実施例の発光パネルユニット7では、LED21から照射された光が、一旦、導光板18に入射した後、拡散シート20を介して発光パネルユニット7の下面側から照射されるようになっており、その照射面全体がムラなく一様に発光するようになっている。
【0033】
図3に示すように、LED21が配置される照明基板22から配線17が発光パネルユニット7の外部に延び、この配線17は、発光パネルユニット7の角部から天井パネル6の角部に向かって延びている。そして、この配線17は、側面パネル3同士の間の角部に沿って下方側に延設されており(図3の部分拡大図参照)、展示台2内部に配置されたACアダプタや制御回路である電気機器15に接続されている(図8参照)。なお、この電気機器15は、室内に設けられたコンセント等から電力を供給されるようになっている。
【0034】
なお、本実施例のような発光パネルユニット7が天井パネル6に設置されている展示ケース1は、行灯型四面展示ケース1と称されている。また、本実施例の展示ケース1の天井パネル6をガラスパネル11のみで構成すると、行灯型五面展示ケースとすることができる。即ち本実施例の行灯型四面展示ケース1は、その製造工程の途中の段階まで行灯型五面展示ケースの製造工程と同一になっている。
【0035】
このように本実施例の行灯型四面展示ケース1は、行灯型五面展示ケースの製造工程を利用して、その行灯型五面展示ケースの天井パネル6に発光パネルユニット7を配置して行灯型四面展示ケース1を製造することができるようになり、行灯型五面展示ケースと行灯型四面展示ケース1とを同じ製造工程で製造することができ、展示ケース1の生産効率を向上させることができる。更に、発光パネルユニット7は、薄型に形成できるため、行灯型四面展示ケース1では、その天井パネル6の圧迫感がなくなり、行灯型五面展示ケースと行灯型四面展示ケース1との外観をほぼ同じように形成することができる。
【0036】
図8に示すように、展示台2は、平面視で略矩形状をなす矩形枠部41により形成される基台42と、この基台42の上部に設けられて展示空間4の床となる床部材26と、を有している。そして、この矩形枠部41は、背面側に配置される鉄骨フレームで構成される背面フレーム部材43と、基台42の正面側及び左右側面側の枠を構成する固定板27と、からなる。この固定板27に側面パネル3の下部が接着剤等により取り付けられる。
【0037】
また、基台42には、矩形枠部41内の空間を水平方向に仕切る2本の仕切部材44が設けられている。この仕切部材44は、背面フレーム部材43と同様に、鉄骨フレームにより構成されており、仕切部材44は、背面フレーム部材43から正面側の固定板27まで延設されている。
【0038】
図6に示すように、展示台2の床部材26の上面に展示品(図示略)を載置されるようになっている。さらに、展示台2には、アジャスター25やキャスター45が取り付けられており、展示ケース1は、アジャスター25やキャスター45によって室内の任意の場所に移動して設置することができる。
【0039】
また、図8に示すように、矩形枠部41の背面フレーム部材43及びこの背面フレーム部材43から延びる仕切部材44には、扉パネル5を開閉移動可能に支持する扉開閉装置28(移動支持手段)が設けられている。この扉開閉装置28は、矩形枠部41の背面フレーム部材43に取り付けられたブッシュ部材29(スライド部材)と、このブッシュ部材29により前後方向にスライド移動されるシャフト部材30(スライド部材)と、を有している。本実施例では、左右方向に等間隔に並ぶ4つのブッシュ部材29及びシャフト部材30が設けられている。なお、中央の2つのブッシュ部材29及びシャフト部材30は、仕切部材44内に挿設されている。
【0040】
そして、シャフト部材30の端部に取り付けられたレール基部31には、左右方向にスライド移動されるスライドレール装置32が設けられている。更に、スライドレール装置32には、左右方向にスライド移動される移動板33が設けられ、この移動板33に扉パネル5の下部が接着剤等により取り付けられる。
【0041】
図2に示すように、扉パネル5を開放する際には、作業者が扉パネル5の上端縁のカバー部材9を掴んで、扉パネル5を数センチほど背面側に引き出す。そして、扉パネル5を側方にスライド移動させて開放するようになっている。また、図1に示すように、扉パネル5を閉鎖する際には、開放された扉パネル5をケース本体の背面までスライド移動させ、扉パネル5を正面側に押し込むことで閉鎖されるようになっている。
【0042】
図4に示すように、天井パネル6の上面のレール部材14には、扉パネル5の閉鎖状態を維持するためのボールキャッチ34が設けられている。このボールキャッチ34は、天井パネル6の上面の左右2箇所に設けられている。そして、扉パネル5のカバー部材9の下面には、ボールキャッチ34に係合する被係合部35が設けられている。なお、天井パネル6の背面側の縁部には、展示空間4の密閉性を高めるためのパッキン部材36が設けられているとともに、側面パネル3の背面側の縁部にも、同様のパッキン部材37が設けられている。
【0043】
また、天井パネル6の上面におけるカバー部材9の配置位置に対応する部位には、前述した開閉レール12及び案内レール13が形成されたレール部材14が取り付けられている。そして、カバー部材9の下面には、レール部材14の開閉レール12及び案内レール13に案内される被案内部38が設けられている。この被案内部38が開閉レール12に案内されることで、扉パネル5の左右方向の移動が案内される。そして、被案内部38が案内レール13に案内されることで、扉パネル5の前後方向の移動が案内される。
【0044】
更に、図7(a)に示すように、矩形枠部41の背面側にも、扉パネル5の閉鎖状態を維持するためのボールキャッチ39が設けられている。そして、扉パネル5を支持するレール基部31には、ボールキャッチ39に係合する被係合部40が設けられている。扉パネル5を閉鎖した際には、扉パネル5側に設けられた被係合部35,40が、天井パネル6及び展示台2に設けられたボールキャッチ34,39に係合されることで、扉パネル5の閉鎖状態を維持するようになっている。そして、作業者が扉パネル5を背面側に引き出すと、扉パネル5の被係合部35,40がボールキャッチ34,39から外れるようになっている(図7(b)参照)。
【0045】
前述したように、基台42が有する矩形枠部41の内部空間は、2本の仕切部材44により仕切られて、3つの空間(収納空間)が形成されている。図8に示すように、これら3つの空間うち、中央の空間は、展示空間4の湿度を調節する調湿剤46(調湿手段)を収納する第1収納部47となっているとともに、左右の2つの空間は、発光パネルユニット7を制御するACアダプタや制御回路である電気機器15などを収納する第2収納部48となっている。そして、これら第1及び第2収納部47,48は、互いに水平方向に並設されている。
【0046】
図9に示すように、第1収納部47の下面側は、板状部材49で閉塞されるとともに、第1収納部47の上面側は、展示空間4側に開放されている。なお、前述したように、基台42の上部には、床部材26が設けられている。この床部材26の下面には、スペーサ部材50が取り付けられており、このスペーサ部材50によって、床部材26と基台42の上面との間に、所定幅の間隙部51(第1通気手段)が形成される。この間隙部51を介して、第1収納部47の空気が通気され、第1収納部47において調湿剤46により調湿された空気が、展示空間4に通気されるようになっている。
【0047】
また、第2収納部の上面側には、この上面を開閉可能に閉塞する蓋部材53が設けられている。そして、第2収納部48の下面側には、電気機器15を載置する載置板54が設けられるとともに、この第2収納部48の一部は、下方側に開口されて下方開口部55(第2通気手段)が形成される。この下方開口部55を介して、第2収納部48の空気が通気され、第2収納部48に配置される電気機器15の排熱が、展示ケース1の外部空間に放出されるようになっている。
【0048】
図10に示すように、調湿剤46及び電気機器15のメンテナンス作業を行う際には、先ず扉パネル5を開放し、展示空間4の床部材26を揺動させて開放させるようになっている。このように床部材26は、基台42から離間可能となっている。なお、基台42には、開放された床部材26を保持する保持棒56が備えられている。このように、床部材26を開放すると、調湿剤46の交換作業などを行うことができる。さらに、第2収納部48の上面を閉塞する蓋部材53を開放すると、電気機器15にアクセスすることができる。
【0049】
以上説明したように、本実施例の展示ケース1においては、展示台2は、展示空間4と通気されて展示空間4の湿度を調節する調湿剤46を収納する第1収納部47と、展示ケース1の外部空間と通気されて電気機器15を収納する第2収納部48と、を有することで、電気機器15及び調湿剤46を展示台2に収納することができ、この電気機器15の発熱を第2収納部48から外部空間に排熱することができ、電気機器15の発熱の影響を第1収納部47に配置される調湿剤46が受けることなくなり、かつ第1収納部47が展示空間4と通気されることにより調湿剤46により展示空間4を適度な湿度に保つことができるとともに、展示空間4が電気機器15の発熱の影響を受けないため展示品を傷めないようにできる。また、電気機器15を展示台2に収納することで、天井パネル6の上下寸法を小とすることができ、かつ電気機器15の発熱の影響を調湿剤46が受けないため、電気機器15及び調湿剤46を近接して展示台2内に収納することが可能になり、展示台2の上下寸法を小とすることができ、天井パネル6や展示台2の圧迫感を無くすとともに、展示空間4を大きく確保することができる。
【0050】
また、第1及び第2収納部47,48は、互いに水平方向に並設されることで、展示台2の上下寸法を小さくして展示空間4を大きく確保することができ、かつ電気機器15等の重量のある部材を展示台2に収納した際に、展示ケース1の重心位置が低くなり、展示ケース1を安定的に設置できるようになる。
【0051】
また、展示台2は、第1及び第2収納部47,48が形成される基台42と、基台42の上部に設けられて展示空間4の床となる床部材26と、を有し、床部材26は、基台42から離間可能となっており、かつ基台42には、第2収納部48の上面を開閉可能に閉塞する蓋部材53が設けられることで、第1及び第2収納部47,48の両方に対して、展示空間4側からアクセスすることが可能になり、展示台2の上下寸法を小さくしても、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0052】
また、展示台2は、平面視で略矩形状をなす矩形枠部41により形成される基台42を有し、基台42には、矩形枠部41内の空間を水平方向に仕切る仕切部材44が設けられ、仕切られた空間のうち、少なくとも1つの空間を第1収納部47として形成するとともに、他の空間を第2収納部48として形成し、第1収納部47の下面側が板状部材49で閉塞されることで、仕切部材44により矩形枠部41内の空間を仕切って第1及び第2収納部47,48を形成して、矩形枠部41の上下寸法内に第1及び第2収納部47,48を納めることが可能となり、展示台2の上下寸法を小さく形成することができ、かつ第1収納部47の下面側を閉塞する板状部材49によって、調湿剤46より調湿された空気が第1収納部47の下方側に逃げないようになる。
【0053】
また、展示ケース1の側面に開閉可能な扉パネル5が設けられ、扉パネル5が展示台2に設けられる扉開閉装置28により移動可能に支持されており、扉開閉装置28は、扉パネル5を水平方向にスライド移動させるブッシュ部材29及びシャフト部材30を有しており、ブッシュ部材29及びシャフト部材30が仕切部材44内に設けられることで、扉パネル5を移動可能に支持する扉開閉装置28のブッシュ部材29及びシャフト部材30を、展示台2の仕切部材44を利用して設けることができ、展示台2の上下寸法を小さくすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、発光パネルユニット7の照明手段としてLED21が用いられているが、本発明はこれに限ることなく、照明手段として冷陰極発光体(Cold Cathode Fluorescent Lamp:略称CCFL)を用いるようにしてもよい。
【0056】
また、前記実施例では、導光板18の前後の二辺側にLED21を有する2つの照明基板22が設けられていたが、1つの照明基板22を設けるようにして導光板18の内部に向かってLED21の光を照射させるようにしてもよいし、導光板18の四辺全てに照明基板22を設けるようにして、導光板18の内部に向かってLED21の光を照射させるようにしてもよい。
【0057】
また、前記実施例では、扉パネル5を開放させる際に、扉パネル5を背面側に引き出した後に側方にスライド移動させる構成となっているが、扉パネル5の開放形態は、これに限ることなく、扉パネル5を背面側のみに大きく引き出して開放させるようにしてもよいし、扉パネル5を揺動移動により開放させるようにしてもよい。
【0058】
また、前記実施例では、電気機器15として発光パネルユニット7を制御するACアダプタや制御回路を例示しているが、電気機器15はこれに限らず、扉パネル5を施錠する電気錠の制御回路等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 展示ケース
2 展示台
3 側面パネル
4 展示空間
5 扉パネル
6 天井パネル
15 電気機器
26 床部材
28 扉開閉装置(移動支持手段)
29 ブッシュ部材(スライド部材)
30 シャフト部材(スライド部材)
41 矩形枠部
42 基台
44 仕切部材
46 調湿剤(調湿手段)
47 第1収納部
48 第2収納部
49 板状部材
52 蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置された展示台を有し、該展示台の上方に形成された展示空間の周囲が透明な側面パネルにより囲まれ、かつ該側面パネルで囲まれた展示空間の上方が天井パネルにより覆われ、前記展示台と前記側面パネルと前記天井パネルとでケース本体が構成される展示ケースにおいて、
前記展示台は、前記展示空間と通気されて該展示空間の湿度を調節する調湿手段を収納する第1収納部と、前記ケース本体外の外部空間と通気されて電気機器を収納する第2収納部と、を有することを特徴とする展示ケース。
【請求項2】
前記第1及び第2収納部は、互いに水平方向に並設されることを特徴とする請求項1に記載の展示ケース。
【請求項3】
前記展示台は、前記第1及び第2収納部が形成される基台と、該基台の上部に設けられて前記展示空間の床となる床部材と、を有し、該床部材は、前記基台から離間可能となっており、かつ前記基台には、前記第2収納部の上面を開閉可能に閉塞する蓋部材が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の展示ケース。
【請求項4】
前記展示台は、平面視で略矩形状をなす矩形枠部により形成される基台を有し、該基台には、該矩形枠部内の空間を水平方向に仕切る仕切部材が設けられ、該仕切られた空間のうち、少なくとも1つの空間を前記第1収納部として形成するとともに、他の空間を前記第2収納部として形成し、前記第1収納部の下面側が板状部材で閉塞されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の展示ケース。
【請求項5】
前記ケース本体の側面に開閉可能な扉パネルが設けられ、該扉パネルが前記展示台に設けられる移動支持手段により移動可能に支持されており、該移動支持手段は、前記扉パネルを水平方向にスライド移動させるスライド部材を有しており、該スライド部材が前記仕切部材内に設けられることを特徴とする請求項4に記載の展示ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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