説明

展開型使い捨ておむつ

【課題】本発明は、製造工程が簡単で、おむつの装着に手間が掛からず、装着時の胴回りの弛みを除去でき、装着感が良好な使い捨ておむつ。
【解決手段】面ファスナー手段によって着脱自在に形成した展開型使い捨ておむつであって、腹側部上部側縁又は背側部上部側縁の当接部のいずれか一方の側縁に、裏面に裏張り熱可塑性樹脂フイルムを有する雄型面ファスナーを融着固定する。かつ、雄型面ファスナーの融着固定が、熱可塑性樹脂不織布シート面に裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを融着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつの交換作業の便利のために着脱自在に分解して展開できる安価な展開型使い捨ておむつに関するものであって、おむつの交換作業が簡単で装着感が良好な使い捨ておむつに関するものである。使い捨ておむつは、毎日数回交換して廃棄される製品であり、製造コスト及び流通コストが安価であることが必須の製品である。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨ておむつとしては、パンツ型おむつ及び展開型おむつがあるが、パンツ型おむつは、装着時にずれない利点があるが、装着作業において、パンツ形状のおむつを着脱する交換作業が容易でない欠点がある。そこで、装着時は、パンツ形状となり、交換時には、展開型おむつに、展開できる使い捨ておむつが便利であり広く用いられている。
従来の交換時に展開できる展開型おむつは、下縁で互いに連結している腹側部及び背側部からなる薄手の繊維シートの内側に、厚手の吸収シート本体が取り付けられているものであって、吸収シート本体側を内側にして腹側部を背側部に半折して重ねたときに互いに当接する腹側部及び背側部の左右上部側縁を一対の雄雌面ファスナーで接合して胴周り部として、左右の下部側縁部は開放したままのパンツ型形状に形成するものである。そして、パンツ型形状の腹側部及び背側部の左右上部側縁の固定は一対の雄雌面ファスナーによって着脱自在に形成されているので、パンツ型形状の左右上部側縁の雄雌面ファスナーの固定を分離すると、元の下縁で互いに連結している腹側部及び背側部とからなる1枚の繊維シートの上に、吸収シート本体が取り付けられた形状に展開できる。
このようなパンツ形状となる展開型おむつは、装着作業時の利便性から、身体の幅より広い幅を必要とするため、展開時の幅をそのまま胴周りの寸法にすると、装着時には、胴周りは著しく弛み、到底、装着できない胴周りになる。そのため、パンツ形状となる展開型おむつでは、胴回り及び繊維シートの横幅方向に約50%収縮するゴム糸を配置した収縮機構が設けられている。しかしながら、収縮機構があると、展開時に収縮するので、装着作業がやりにくいという不便が発生する。
従来型の雄雌面ファスナーの固定式の使い捨ておむつを、装着者自身が装着する場合は、左右の開放している両端部がよく見えないので、両端部の両面に設けられている約2〜3センチの幅の雄雌一対の面ファスナーを、ちょうどつきあわせて接合する作業に手間が掛かる。
また、雄雌面ファスナーの取り付け位置によって、定寸法のおむつの胴回りの長さが決まっているので胴回りの長さが大きいと装着時に胴回りに弛みが生じて、おむつが装着者の胴からずれ落ちるおそれが生じる。この装着時の胴回りに弛みを防止するために、一般のパンツと同様に、ゴム糸を縫いこんで胴回りの長さを縮めているが、装着者のサイズが合わないと、ズレ落ち防止には不十分となることが多い。また、胴回りのゴム糸の伸縮度を高めると、面ファスナーを外して展開したときに、ゴム糸の収縮のために、十分に展開形状にならないので、交換作業が困難となる。
さらに、面ファスナーの取り付け部に補助的な弛み除去手段等が用いられている場合もあるが、構造が複雑になるために、安価であるべき使い捨ておむつの製造原価が高くなる欠点がある。
また、従来の使い捨ておむつでは、装着時に、胴部左右の一対の雄雌面ファスナーによる接合部分は、硬質の面ファスナーシートが2層の積層となっている。さらに、従来の使い捨ておむつの面ファスナーは、凹凸の皺がある繊維シートの面に硬質のシートを接着して、その上に面ファスナーの裏面の全面を接着剤によって接着していることが多い。その結果、装着時のおむつの面ファスナー積層部分は、柔軟な繊維シートの内部に屈曲柔軟性がない棒状の硬質異物となって存在する。この棒状硬質異物は、装着者が装着時、特に寝返りを打つときなどに腰の側面に当たって不快感を与える欠点がある。
特許文献1の使い捨ておむつは、パンツ型おむつを一対の雄雌面ファスナーの着脱自在機構によって展開可能な展開型おむつにできる発明であって、胴回りの寸法のサイズ調節手段に特徴がある使い捨ておむつである。複雑な機構によって、製造経費が高くなる欠点があり、一対の雄雌面ファスナーに起因する不快な装着感の欠点がある。
また、使用後の使い捨ておむつは、汚れ物が漏れないように全体を小さくまとめて結束して廃棄する。従来の使い捨ておむつでは、おむつの外側表面に結束テープを固定して取り付けておき、廃棄時には、取り付けられている結束テープで小さく丸めた使い捨ておむつを結束して廃棄している。この結束テープは、表面に粘着剤が塗布されていて、これを3〜4重に折り畳んで使い捨ておむつの表面に固定されている。おむつの廃棄に際しては、結束テープを引き出して、結束テープの露出した粘着剤層で丸めた廃棄おむつの表面を結束して、廃棄している。
特許文献2及び特許文献3は、雄型面ファスナーが基体に融着固定される構成の先行技術文献として、提示したものである。これらの文献には、雄雌一対の面ファスナーのいずれか一方の面ファスナーの裏面に熱可塑性樹脂フイルムを有する面ファスナーが開示されている。特許文献2及び特許文献3には、雄型面ファスナーにのみに限定して熱可塑性樹脂フイルムを設ける点、及び雄型面ファスナーが接合する雌型面ファスナーが無く不織布面であることの記載がなく、さらに、雄型面ファスナーの樹脂フイルムの面積の一部のみを基体と融着する構成は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−148961号公報
【特許文献2】特許第3736966号公報
【特許文献3】特許第3136142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、面ファスナーによる着脱自在の展開型の使い捨ておむつである。そして、製造工程が簡単で、おむつの装着に手間が掛からない、かつ装着時の胴回りの弛みを簡単に除去できるという機能性を有する使い捨ておむつである。その上、特に、おむつ装着時に、着脱自在の面ファスナーの固定部分の積層の硬さに起因する異物不快感を軽減する使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく面ファスナーによる固定手段について鋭意研究を重ねた結果、従来用いられていた接合端部の着脱自在の雄雌面ファスナーを、雄型面ファスナーのみとして、かつ、おむつの繊維素材シートとして雄型面ファスナーのフック型植毛が絡み易い不織布シートを選択した。さらに、不織布シートを、疎水性の熱可塑性樹脂不織布シートとして、その上、雄型面ファスナーとして、裏面に熱可塑性樹脂フイルムの裏張りを施したものを用いて、雄型面ファスナーを熱可塑性樹脂不織布シートに融着固定させることによって、上記課題を一挙に解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、雄型面ファスナーのみとすることによって、固定部の面ファスナーの厚さを半減して、装着時の異物感を軽減し、雄型面ファスナーが接合する相手方端部の不織布シートの位置を変更できるので、装着作業が簡単となり、かつ装着時の胴回りの弛みを簡単に除去できる。さらに、使用済み使い捨ておむつの端部に存在する雄型面ファスナーによって、使い捨ておむつ表面の任意の位置で固定できるので、廃棄用の結束テープは不要となる。
すなわち、本発明は、
(1)下縁で連結されている腹側部及び背側部とからなる熱可塑性樹脂不織布シートの内側に、吸収性物質を内包している吸収シート本体が内張りされてなり、該熱可塑性樹脂不織布シートを吸収シート本体側を内側にして半折してパンツ形状に形成した場合に、互いに当接する腹側部上部側縁及び背側部上部側縁を雄型面ファスナー手段によって着脱自在に形成した展開型使い捨ておむつであって、当接する腹側部上部側縁又は背側部上部側縁のいずれか一方の側縁に雄型面ファスナーが融着固定されてなることを特徴とする展開型使い捨ておむつ、
(2)熱可塑性樹脂不織布シート面への雄型面ファスナーの融着固定が、裏面に裏張り熱可塑性樹脂フイルムを有する雄型面ファスナーを、熱可塑性樹脂不織布シート面に融着固定してなることを特徴とする(1)記載の展開型使い捨ておむつ、
(3)雄型面ファスナーの融着固定がヒートシールによる熱融着によって雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを融着していることを特徴とする(2)記載の展開型使い捨ておむつ、
(4)該雄型面ファスナーの融着固定が超音波による熱融着によって雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを融着していることを特徴とする(2)記載の展開型使い捨ておむつ、
(5)裏面に裏張り熱可塑性樹脂フイルムを有する雄型面ファスナーの厚さが、裏張りフイルムを除いて、1mm以下である(2)〜(4)のいずれか記載の展開型使い捨ておむつ、
(6)背側部の上縁にゴムによる伸縮機構がなく、腹側部の上縁に伸縮機構を有する(2)〜(5)のいずれか記載の展開型使い捨ておむつ、及び、
(7)背側部及び腹側部の上縁にゴムによる伸縮機構がなく、腹側部の上縁の幅が背側部の上縁の幅の半分以下である(2)〜(5)のいずれか記載の展開型使い捨ておむつ、
を提供するものである。
さらに、好ましい態様としては、
(8)雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみの融着が、雄型面ファスナーの略中央線上である(3)又は(4)記載の展開型使い捨ておむつ、及び、
(9)雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみの超音波融着が、雄型面ファスナーの側縁部にジグザグ状に上である(4)記載の展開型使い捨ておむつ、
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の効果を、下記に列記する。
1.雌型面ファスナーを削除して、雄型面ファスナーのみにすることによって、従来技術の雄雌一対の場合より、面ファスナーの固定積層を薄くして使い捨ておむつ装着時の不快感を軽減する。雄型面ファスナーと不織布面との圧着接合力は、雄雌一対の面ファスナー同士の接合力にも匹敵する。該接合力は、雄型面ファスナーの植毛の高さが大きいほど、不織布に絡み易くなって大きくなり、不織布面がコーティング等で滑らかな程、小さくなる。
2.雄型面ファスナーのみにすることによって、装着時の胴回りの固定作業を簡単にするとともに、胴回りの弛みを簡単に除去でき、装着時又は就寝時のおむつのズレ落ちを防止する。
従来の使い捨ておむつには、弛みを取るために、通常のパンツと同様に、胴回りにゴム糸による伸縮機構を配置しているが、寸法が合わないために伸縮度が不十分で装着時のおむつのズレ落ちを防止できない場合が多い。また、展開型使い捨ておむつの場合は、胴回りの伸縮度をゴムによって、充分に大きくすると、装着時には良くても、展開したときに、おむつが充分に広がらないために、着脱作業が不自由になる。本発明の雄型面ファスナーのみによる弛みを取る方式は、相手方側縁の固定位置を自由に選択して装着者の胴回りに合わせて選択できるので、装着者のサイズに合わせて多数のサイズ、例えばLL、L、M、S、SS等の多種のサイズを用意したり、弛み防止のための特別の手段、例えば、補助ベルト等を設ける必要が無くなり、使い捨ておむつの製造経費の低減効果に繋がる。
また、通常、胴回りに配置されているゴム糸による収縮構造を削除して、図2における熱可塑性樹脂不織布シートの腹側部aの側縁を、図9及び10のような吸収シート本体Sの幅まで短縮して、パンツ形状にしたときに、腹側部aの中央近くの不織布の面に背側部上部側縁c及びdを固定することができる。このようにすれば、胴回りのゴム伸縮機構を設ける相当の製造経費が節約でき、使い捨ておむつの交換作業において、腹側部aの吸収シート本体Sの幅からはみ出している上部側縁部の余分な幅がなくなるので、腹側部aを装着者の股間から半折して腹部の上に折り返す作業が容易になる。
この胴回りのゴム伸縮構造の削除は、熱可塑性樹脂不織布シート全体に設けた横幅方向のゴム糸の縫い込みの削除に繋がる。なぜなら、横幅方向のゴム糸の縫い込みは、熱可塑性樹脂不織布シート全体に横幅方向に縦皺を形成するものであるが、この皺は、胴回りの弛みをゴム伸縮機構で除去したときに、胴回り以外の熱可塑性樹脂不織布シート全体が不規則にたるむ弛みを吸収するための縦皺である。雄型面ファスナーのみにする構成は、使い捨ておむつから、ゴムの伸縮機構による弛み防止構造を用いない使い捨ておむつを提供することを可能にした。また、観点を変えれば、ゴム糸による伸縮機構と雄型面ファスナーのみの固定手段の組合せによって、ワンサイズの使い捨ておむつで誰にでも適合できるサイズフリーの使い捨ておむつを提供することもできる。
3.雄型面ファスナーのみにして、該面ファスナーと使用済みの丸めたおむつの表面の不織布シートと雄型面ファスナーの固定のみで結束することによって、使用済みのおむつの結束に用いていた結束テープが不要となる。このことは、安価であるべき使い捨ておむつの製造経費のみならず、流通経費の大巾な削減にもなる。
4.雄型面ファスナーと不織布シートの組合せとすることによって、雄型面ファスナーと不織布シートとの絡みを強くして、装着時の面ファスナーと不織布製シートの固定を強くする。おむつの繊維シートが織物であると、織物の撚糸面が硬く、雄型面ファスナーとの絡みが弱い。
5.疎水性の熱可塑性樹脂繊維の不織布にすることによって、吸収体からの湿気を、疎水性繊維の不織布層によって遮断する。天然繊維の不織布にすると、水分を含有する吸収体に接触している不織布シートが水分を吸収しておむつの外部表面に湿気が伝達する。
6.雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムを熱可塑性樹脂不織布シートに熱圧着又は超音波等によって融着固定することによって、面ファスナーの取り付け作業を接着剤塗布による固定より簡便にする。従来技術の使い捨ておむつの面ファスナーの繊維シート面への粘着剤層による固定は、使い捨ておむつの繊維シート面に不規則な凹凸(皺)があるので、困難となる。不織布の不規則な凹凸に対する融着固定は、接着固定より簡単に実施できる。
7.雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを融着固定することによって、雄型面ファスナーの屈曲柔軟性が低下するのを防止する。特に、雄型面ファスナーを熱可塑性樹脂不織布シートに、雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを、ヒートシール又は超音波による熱融着によって、融着固定することによって、雄型面ファスナーの裏面を熱可塑性樹脂不織布シート面から浮かして固定できるので、雄型面ファスナーの屈曲柔軟性がそのまま維持され、装着時の不快感をさらに軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一態様の展開型使い捨ておむつのパンツ形状状態の斜視図である。
【図2】本発明の一態様の展開型使い捨ておむつの展開した内側の正面図である。
【図3】本発明の雄型面ファスナーの側面図である。
【図4】本発明の雄型面ファスナーの融着固定の態様を示す見取り図である。
【図5】本発明の雄型面ファスナーの融着固定の他の態様を示す見取り図である。
【図6】本発明の雄型面ファスナーの融着固定の他の態様を示す見取り図である。
【図7】本発明の雄型面ファスナーの融着固定の他の態様を示す見取り図である。
【図8】本発明の雄型面ファスナーの融着固定の他の態様を示す見取り図である。
【図9】本発明のゴム伸縮機構を用いない態様の展開型使い捨ておむつの展開した内側の正面図である。
【図10】本発明のゴム伸縮機構を用いない態様の展開型使い捨ておむつの展開した内側の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の使い捨ておむつに用いる熱可塑性樹脂不織布シートは、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布シートである。不織布シートとは、織物シートのように、縦糸及び横糸を形成してこれを織って形成するものではなく、短繊維を絡ませて、バインダー若しくは熱で接着してシートを形成するものである。短繊維としては、天然繊維、合成繊維、無機繊維等種々のものを使用することができるが、本発明の不織布繊維としては、熱溶融しない天然繊維及び無機繊維は使用することができず、熱溶融する熱可塑性樹脂繊維を用いた不織布を使用することができる。また、吸収シート本体に吸収した水は、外部に流出することはないが、吸収シート本体に吸湿性の不織布が接触していると、使い捨ておむつの外面が湿気を帯びるおそれがある。よって、本発明の不織布の材質として、疎水性の熱可塑性樹脂繊維を用いた不織布が望ましい。この観点から、本発明不織布の繊維として、熱可塑性樹脂であり疎水性であるポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維が特に望ましい。
本発明の不織布シートは、従来の使い捨ておむつに用いられている厚さ60〜500μmの不織布シートを特に制限無く用いることができる。そして、不織布の横幅方向に、ゴム糸を配置して、縦皺形状を形成して伸縮性を持たせた不織布シートを用いることができる。
【0009】
以下、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の使い捨ておむつの装着時の形状の斜視図であり、この形状の側縁部を分離した展開状態の正面図が図2である。一般に展開型使い捨ておむつは、胴回りの寸法の弛みを取るために、胴回りに糸ゴムを縫い込んで約半分程度に収縮する機構を持たせている。そして、同様に胴回り以外の繊維シート構造にも、2〜4cm間隔で横幅方向に細糸ゴムによって、縦皺を形成して、弛みを吸収している。図2では、これらのゴムによる胴回り及び胴回り以外の繊維シートの収縮構造は図示していない。そして、図2の展開図は、伸縮構造の糸ゴムを延伸して伸びきった状態での展開図であり、胴回り及び繊維シートの皺を伸ばした状態である。図2の展開図において、延伸している延伸力を除去すると、上縁及び繊維シートの横幅は半分程度収縮する。そして、約3分の1程度収縮した状態で、胴回りの弛みをとった図1のパンツ状態となって装着される。図1では、繊維シートの横幅は半分程度収縮して形成される多数の縦皺は削除している。
【0010】
図2の使い捨ておむつは、下縁Xで連結されている腹側部a及び背側部bとからなる熱可塑性樹脂不織布シートRの内側に、吸収性物質を内包している吸収シート本体Sが内張りされている。この熱可塑性樹脂不織布シートRを吸収シート本体S側を内側にして、半折したときに、腹側部a及び背側部bにある互いに当接する左右上部側縁c、d、e、fの対向する当接部の面の何れか一方のみに、雄型面ファスナーFが取り付けられている。
図2では、背側部bの上部の左右側縁部に2個の雄型面ファスナーを取り付けているが、腹側部a上部の左右側縁に2個取り付けることも、背側部b及び腹側部aのそれぞれに1個の雄型面ファスナーを取り付けることもできる。
また、雄型面ファスナーの取り付けは、熱可塑性樹脂不織布シートRの左右側縁の外側面に取り付けることもできる。
さらに、図8のように、雄型面ファスナーFの左側縁を、熱可塑性樹脂不織布シートRの外側側縁に沿って融着して、雄型面ファスナーFの大部分は該側縁からはみ出るように取り付けるのも、好ましい態様である。
図2の展開形状の吸収シート本体Sの上半部S1の上に装着者の腰を乗せて、腹側部aを、下縁Xで折り曲げて、装着者の股間を経由して、吸収シート本体Sの下半部S2を有する腹側部aを装着者の腹部の上に被せて、その腹側部aの腹側部上部側縁e及び腹側部上部側縁fの上に、背側部bの背側部上部側縁c及び背側部上部側縁dを重ねてこれらを腹側部aの側縁部に当接させる。背側部bの背側部上部側縁c及び背側部上部側縁dのそれぞれに固定されている雄型面ファスナーFが腹側部aの熱可塑性樹脂不織布シート面に圧着されて雄型面ファスナーの面が不織布の繊維に絡みついて固定される。このとき、図1にように、雄型面ファスナーFが、腹側部aの左右側縁部の熱可塑性樹脂不織布シートが脱着自在に固定されて、パンツ型形状を形成する。
【0011】
本発明の使い捨ておむつを装着するとき、図1に示すように、雄型面ファスナーFを有する背側部bの背側部上部側縁c、dは、腹側部aの腹側部上部側縁e、fと2重になって固定される。装着に際して、雄型面ファスナーは、不織布シート面のどこにでも絡み付くので、雄型面ファスナーFを有する背側部bの背側部上部側縁c及び背側部上部側縁dを、腹側部aの腹側部上部側縁e、fの前に、長く重ねて2重積層部分を長くすれば、胴回りの弛みを簡単に除去することができる。胴回りの弛みの除去は、使い捨ておむつにとって二つの主たる課題を解決する。
その第1は、装着時の吸収シート本体Sと身体との密着性を達成する。吸収シート本体Sと身体が密着していないと、汚物が皮膚を伝わって、外に漏出する。第2は、装着時の歩行又は寝返りによって、使い捨ておむつのズレ落ちを防止する。
本願発明は、弛み防止のために、面ファスナー部分に弾力シートを採用したりする特別な手段を講じる必要がない。
また、従来の一対の雄雌面ファスナーによる脱着自在手段でないので、一対の面ファスナー同士を正確に合わせる必要がないので、固定作業は簡単に実行できる。さらに、固定部分の面ファスナーが1層であるので、従来の2重の面ファスナーシートの硬さに起因する異物感が半減される。
本発明の第1の特徴は、腹側部aの腹側部上部側縁e、f及び背側部bの背側部上部側縁c、dの当接する一対の側縁部の何れか一方側のみに取り付ける雄型面ファスナーFである。
【0012】
図3は、本発明の雄型面ファスナーFの積層構造を示す側面図である。
雄型面ファスナーFは、硬質のシートに雄型植毛が無数に設けられた雄型植毛を有する面ファスナー層Gの裏面に、裏張り熱可塑性樹脂フイルムHが接着剤又は融着よって貼り付けられている(特許文献2及び特許文献3参照)。
硬質の雄型植毛が硬質シート面に無数に設けられた雄型植毛を有する面ファスナー層Gは、樹脂シートにフック型又は釣り鐘型等の通常面ファスナーの雄型面に用いられる植毛形状を使用することができる。本発明においては、フック形状のように不織布の繊維面に絡み付き易い形状が特に好ましい。
雄型植毛を有する面ファスナー層Gに用いる樹脂シートは、面ファスナーの植毛の方向を維持できる程度の硬質のプラスチックシートが望ましい。また、不織布シートに融着固定する場合に、裏張りの熱可塑性樹脂フイルムHとともに、雄型植毛を有する雄型植毛を有する面ファスナー層Gも同時に融着固定できる点で、雄型植毛を有する面ファスナー層Gも熱可塑性樹脂シートであることが好ましい。
【0013】
雄型植毛を有する面ファスナー層Gに貼り付ける熱可塑性樹脂フイルムは、雄型植毛を有する面ファスナー層Gの裏面に融着又は接着剤でしっかり固定されている。雄型植毛を有する面ファスナー層Gに貼り付ける熱可塑性樹脂フイルムは、熱によって熱可塑性樹脂不織布シートの繊維とともに溶解して、熱可塑性樹脂不織布シートに強固に融着固定することができる。雄型植毛を有する面ファスナー層Gに用いるシートは、硬質のシートであるので、通常は、融点が高く、加熱によって、直接に、熱可塑性樹脂不織布シートの繊維とともに溶融固定加工するのが困難である。
本発明の雄型植毛を有する面ファスナー層Gの裏面に融着又は接着剤でしっかり固定されている熱可塑性樹脂フイルムは、雄型植毛を有する面ファスナー層Gと熱可塑性樹脂不織布シートとの融着による固定を仲介している。
雄型面ファスナーの幅及び長さは不織布シートに対する充分な固定力が得られる面積が有れば良く、特に制限はないが、側縁部を体裁よく連結する点で、図2に示すように、側縁部の高さにほぼ一致する長さが望ましいが、側縁部の高さの上半分であっても、装着時の体裁はそれほど悪くならない。また、雄型面ファスナーの幅は、1〜5cm、好ましくは、2〜3cm程度が適切であるが、幅が狭すぎると雄型面ファスナーの面積が少なくなり、固定力が低下し、広すぎると装着時の違和感が増加する。
本発明の雄型面ファスナーRの裏面側の熱可塑性樹脂不織布シート面への定常固定は、粘着剤又は熱融着によって、雄型面ファスナーの裏面を熱可塑性樹脂不織布シート面に固定することができる。
熱可塑性樹脂不織布シート面と雄型面ファスナーの裏面の熱可塑性樹脂フイルムとの固定を、熱シール又は超音波融着によって熱融着で行う方が施工が簡単であるので望ましい。この場合、熱融着は、熱可塑性樹脂フイルムの一部のみに施工するのがさらに望ましい。熱融着を熱可塑性樹脂フイルムの一部のみに施工しても、強力に融着固定しているので使い捨ておむつの短時間の装着時間中に融着固定が破損することはない。
本発明は、雄型面ファスナーの裏面の固定において、熱可塑性樹脂フイルムの一部のみに融着施工することによって、雄型面ファスナーの裏面の面積の殆どが、熱可塑性樹脂不織布シート面から遊離しているので、雄型面ファスナーは、屈曲柔軟性は裏面の固定によっても殆ど低下することなく、装着違和感を減少することができる。
【0014】
図4〜7は、熱可塑性樹脂不織布シート面と雄型面ファスナーの裏面の熱可塑性樹脂フイルムとの固定を、熱シール又は超音波融着によって熱融着で行う態様の熱融着の位置の一例を示す図である。
面ファスナーに起因する装着違和感は、面ファスナーが、柔軟な不織布シートの中に、屈曲柔軟性がない棒状物として存在することによる。本発明では、面ファスナー層は1層になっているので、パンツ形状時にできる固定部分の固さは半減しているが、さらに、屈曲柔軟性を向上させるのが好ましい。面ファスナーの屈曲柔軟性は、面ファスナーが固定されている裏面の面積に依存する。裏面が不織布の面から遊離している面積が多い程、柔軟性が向上する。実際、雄型面ファスナーの裏面の一部のみが融着固定されていて、70%以上の面積が不織布のシート面から遊離していると、雄型面ファスナーの屈曲柔軟性は、固定前とほぼ同一である。図4〜7の場合は、少なくとも、90%以上が遊離している。
図4は、雄型面ファスナーFの取り付け部を、熱可塑性樹脂不織布シートR側から見た部分見取り図である。図4では、薄手の熱可塑性樹脂不織布シートRを透して見える雄型面ファスナーFの輪郭を点線で図示している。
図4は、熱可塑性樹脂不織布シートと熱可塑性樹脂フイルムとの積層を薄手の熱可塑性樹脂不織布シートの側からヒートシーラーを当てることによって、不織布を雄型面ファスナーFの中央線の位置に真っ直ぐに融着したヒートシール部Tを施工して、熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを熱可塑性樹脂不織布シート面に融着固定した態様である。このような熱可塑性樹脂フイルムの中央線上のみの融着によって、充分な強度で融着固定していて、かつ、雄型面ファスナーの中央線上以外の両側側縁が完全に遊離しているので、雄型面ファスナーの縦方向及び幅方向の屈曲柔軟性は融着固定前の雄型面ファスナーと比較して殆ど低下しない。ヒートシーラーによって融着したヒートシール部Tは、図4のように、中央線上に施工する以外に、無秩序に施工することができるが、中央線上に施工するのが、融着部と遊離部分とのバランスの点及び施工の容易性から望ましい。
従来技術の使い捨ておむつの接着剤による面ファスナーの裏面の固定では、面ファスナーの裏面全面を繊維シート面に接着するので、面ファスナーの裏面が本発明の図4の態様の一部のみに融着固定する雄型面ファスナーの屈曲柔軟性が得られない。
【0015】
図5は、図4のヒートシール線を、断続的に実施して、図4よりも融着固定の面積を減少していて、雄型面ファスナーの縦方向の屈曲柔軟性をさらに向上させた態様である。
図6は、スポット状の超音波融着の態様を示す見取り図である。図6は、雄型面ファスナーFの中央線上を超音波によって熱可塑性樹脂不織布シート面に点状に融着した態様である。図6の超音波融着による融着は、雄型面ファスナーの面を4点で固定していて、雄型面ファスナーFの裏面の大部分は、熱可塑性樹脂不織布シート面から遊離しているので、融着固定前の雄型面ファスナーと殆ど同等の屈曲柔軟性を維持している。
図7は、雄型面ファスナーFの面の側縁をジクザク状に融着した態様である。左右側縁をジクザク状に融着することによって、図6のように中央線上に融着するよりも、同数の融着点であっても、各融着点の間の間隔が長くなるので、雄型面ファスナーの屈曲柔軟性がさらに増加する。
図8は、雄型面ファスナーFの側縁を、熱可塑性樹脂不織布シートRの側縁に合わせて2〜4mm幅の連続的超音波融着部Pを施工して、雄型面ファスナーFの大部分を、熱可塑性樹脂不織布シートRの側縁からはみ出さして、固定した態様である。この場合は、側縁から外れないように、連続的超音波融着部Pで強く固定されているが、それでも、融着面積は、雄型面ファスナーRの面積の30%以下であり、70%以上は、側縁からはみ出して、雄型面ファスナーは遊離している。
また、本発明の雄型面ファスナーの厚さは、熱可塑性樹脂フイルムの厚さを除いて、1mm以下、好ましくは、0.3〜0.7mmにすることで、雄型面ファスナーの屈曲柔軟性を良好にすることができる。厚さが薄い程柔軟性が増加するが、薄すぎると雄型面ファスナーの植毛の自立性が低下して、不織布面に対する接着力が低下する。
【0016】
本発明の好ましい態様として、図2の展開型使い捨ておむつの背側部の上縁のゴムによる伸縮機構を削除して、腹側部の上縁のみにゴムによる伸縮機構を有するものにすることができる。この場合、図9に示すように、腹側部の上縁の幅を背側部の上縁の幅の65%以下、特に好ましくは、50%以下にすることができる。腹側部の上縁の幅を背側部の上縁の幅より狭くすることによって、無駄なシートを節約するとともに、上縁の重なりに起因する装着感の低下を防止することができる。
背側部の上縁にゴムによる伸縮機構があると、図2の展開状態にしたときに、背側部の上縁の幅が約半分に収縮して、おむつの装着時に装着者の腰を背側部に乗せる作業を困難にする。背側部の上縁にゴムによる伸縮機構がないことによって、図9のように、延伸しなくとも広がっているので、簡単に腰を乗せて、腹側部を股間から上に当てがって、その上縁同士を、面ファスナーで適度の胴周りになるように固定することができる。腹側部を当てがう作業においては腹側部の横幅は狭い方が作業が容易である。
図9の使い捨ておむつは、背側部の上縁のゴムによる伸縮機構を削除できるので、安価であることが必須の使い捨ておむつの製造費が軽減できる。
【0017】
図10は、図9の腹側部の上縁のゴムによる伸縮機構も削除した態様である。
図10では、腹側部の上縁にはゴムによる伸縮機構がないので、延伸力を負荷しなくとも、腹側部の上縁は、腹側部の上縁の幅のまま維持されている。
本発明の雄面ファスナーによる固定は、胴周りの長さを自由に選択できる利点があるが雄面ファスナーの厚さによって、不織布との固定力が異なる。厚さが大きい通常の雄型面ファスナーと不織布との接着力は、雄雌一対の面ファスナーの固定力と同程度の固定力を有する。しかし、厚さが薄いと、薄く成るので、固定部分の装着感は向上するが、雄面ファスナーと不織布との絡まりが少なくなり、固定力が弱くなる。
そのため、薄い雄面ファスナーで、胴周り一杯に締めつけて装着すると、装着中の胴周りの長さの変動によって外れるおそれが生じる。しかし、不織布シートには、適度の伸び代があって装着時の胴回りの長さの変動を吸収するので、胴周り一杯に固定をしても、雄面ファスナーがはずれない。特に、不織布シートとして、伸縮性不織布を胴回りの全長若しくは部分的に用いれば伸び代を適宜選択できるので、ゴムによる伸縮機構を削除しても常に伸縮性不織布の締め付け力で胴回りに固定できるので便利である。
図10の使い捨ておむつは、背側部及び腹側部の上縁のゴムによる伸縮機構を削除できるので、安価であることが必須の使い捨ておむつの製造費が軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、幼児用又は成人介護用の使い捨ておむつとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
a 腹側部
b 背側部
c 背側部上部側縁
d 背側部上部側縁
e 腹側部上部側縁
f 腹側部上部側縁
F 雄型面ファスナー
S 吸収シート本体
吸収シート本体Sの上半部
吸収シート本体Sの下半部
R 熱可塑性樹脂不織布シート
G 雄型植毛を有する面ファスナー層
H 裏張り熱可塑性樹脂フイルム
T ヒートシール部
P 超音波融着部
X 下縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下縁で連結されている腹側部及び背側部とからなる熱可塑性樹脂不織布シートの内側に、吸収性物質を内包している吸収シート本体が内張りされてなり、該熱可塑性樹脂不織布シートを吸収シート本体側を内側にして半折してパンツ形状に形成した場合に、互いに当接する腹側部上部側縁及び背側部上部側縁を雄型面ファスナー手段によって着脱自在に形成した展開型使い捨ておむつであって、当接する腹側部上部側縁又は背側部上部側縁のいずれか一方の側縁に雄型面ファスナーが融着固定されてなることを特徴とする展開型使い捨ておむつ。
【請求項2】
熱可塑性樹脂不織布シート面への雄型面ファスナーの融着固定が、裏面に裏張り熱可塑性樹脂フイルムを有する雄型面ファスナーを、熱可塑性樹脂不織布シート面に融着固定してなることを特徴とする請求項1記載の展開型使い捨ておむつ。
【請求項3】
雄型面ファスナーの融着固定がヒートシールによる熱融着によって雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを融着していることを特徴とする請求項2記載の展開型使い捨ておむつ。
【請求項4】
該雄型面ファスナーの融着固定が超音波による熱融着によって雄型面ファスナーの裏張り熱可塑性樹脂フイルムの一部のみを融着していることを特徴とする請求項2記載の展開型使い捨ておむつ。
【請求項5】
裏面に裏張り熱可塑性樹脂フイルムを有する雄型面ファスナーの厚さが、裏張りフイルムを除いて、1mm以下である請求項2〜4のいずれか記載の展開型使い捨ておむつ。
【請求項6】
背側部の上縁にゴムによる伸縮機構がなく、腹側部の上縁に伸縮機構を有する請求項2〜5のいずれか記載の展開型使い捨ておむつ。
【請求項7】
背側部及び腹側部の上縁にゴムによる伸縮機構がなく、腹側部の上縁の幅が背側部の上縁の幅の半分以下である請求項2〜5のいずれか記載の展開型使い捨ておむつ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−147884(P2012−147884A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7748(P2011−7748)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【特許番号】特許第4921595号(P4921595)
【特許公報発行日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(500320039)
【出願人】(508053603)
【Fターム(参考)】