説明

層状構造体

【課題】 従来の層状構造体の層間距離は4nm未満であり、層剥離を行う際には高剪断力をかける必要があり、作業性に問題があった。本発明は、高剪断をかけないでも容易に微分散可能な、層間距離の拡がった層状化合物を提供することである。
【解決と手段】 界面活性剤の自己組織化と金属アルコキシドによるゾルゲル反応を利用することによって得られる界面活性剤層(A)と板状組成物層(B)からなる層状構造体であって、X線回折パターンにおいて、少なくとも2つ以上のピークを有し、かつ、これらのピークのd値が特許請求の範囲記載の式(1)の関係を満足し、回折角度(2θ)が最も小さいピークのd1値が4nm以上、100nm以下の値を示す層状構造体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状構造体に関する。、更に詳しくは、界面活性剤の自己組織化と、金属アルコキシドや金属クロライドのゾルゲル反応を利用した層間距離の拡がった層状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機高分子材料の機械的特性を改良するために、無機フィラーの添加や混合が広くなされている。無機フィラーとしては、シリカ等の金属酸化物やタルク、雲母等の層状構造体が挙げられる。しかし、層状構造体を添加、混合する場合、分散性が悪いと成形表面の平滑性が低下したり、靭性が低下してしまう可能性がある。
このことから、フィラーのアスペクト比の向上、または微分散化、即ち、層状構造体の薄層化は重要であると考えられてきた。フィラーを微分散化する方法としては、例えば、ナイロン、ビニル系高分子、エポキシなどの熱硬化性高分子、又はゴムに層状化合物を分散させる方法がある(特許文献1,特許文献2,非特許文献1)。
これらは、層状化合物を有機オニウムイオンで有機化し粘度層間でモノマー重合を開始させる方法、クレイを成長種に組み込む方法、或いはクレイを重合物と混練してポリマーを層間に入れる方法であり、粘度鉱物の層間に有機オニウムイオンを挿入させることで層間距離を広げ有機化クレイに剪断力を与えることで層剥離させ、分散する方法である(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭62−74957号公報
【特許文献2】特開平1−198645号公報
【非特許文献1】E.P.Giannelis、Chem.Mater.5,1694−1696 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、層状粘土構造体の層を剥離させることは容易ではなく、例えば天然雲母は代表的な層間化合物であるが、層間の結合力が強く簡単には層間に入らないので、層剥離を行う際には高剪断力をかける必要がある等作業性に問題があった。
すなわち本発明の目的は、層間距離が拡がった、高剪断をかけないでも容易に微分散可能な層状構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、このような問題を解決するために鋭意検討を行った結果、界面活性剤の自己組織化と金属アルコキシドによるゾルゲル反応を利用することで層間距離が拡がった層状化合物を得ることができることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、界面活性剤層(A)と板状組成物層(B)からなる層状構造体であって、X線回折パターンにおいて、少なくとも2つ以上のピークを有し、かつ、これらのピークのd値が式(1)の関係を満足し、d1値が4nm以上、100nm以下の値を示す層状構造体を提供することである。
dn=(1/n)d1 (1)
[式中、dnはピーク番号nにおける格子面間隔(nm)、d1はnが1における格子面間隔(nm)を示す;ただし、nはピーク番号を示し、ピークのうち最も回折角度(2θ)が小さいピークのピーク番号をn=1とし、大きくなるに従って順番に番号付けをする]
【発明の効果】
【0005】
本発明の層状構造体は層間距離が拡がっているため、樹脂中に混ぜ、剪断力をかけることで層の剥離が進行し、容易に均一分散を可能にするという効果を奏する。従ってナノコンポジットの作成を容易にするものである。また、金属アルコキシドを変更することで様々な層状構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いられる界面活性剤(A)としては、水中でラメラ構造のミセルを形成するものであれば特に限定されず、アニオン界面活性剤(A1)、カチオン界面活性剤(A2)、ノニオン界面活性剤(A3)及び両性界面活性剤(A4)が使用できる。ただし、層間が拡がるためには分子鎖の長い界面活性剤が好ましく、特にアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加型のノニオン界面活性剤がより好ましい。
【0007】
アニオン界面活性剤(A1)としては、カルボン酸及びその塩(A1a)、硫酸エステル及びその塩(A1b)、カルボキシメチル化物及びその塩(A1c)、スルホン酸及びその塩(A1d)並びにリン酸エステル及びその塩(A1e)等が使用できる。
【0008】
カルボン酸及びその塩(A1a)としては、炭素数8〜22の飽和若しくは不飽和の脂肪酸、天然由来の高級脂肪酸、炭素数8〜22の芳香族カルボン酸及びこれらの塩等が使用できる。
飽和脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸等が挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸及びリシノール酸等が挙げられる。
【0009】
天然由来の高級脂肪酸としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、米ぬか油、落花生油、鯨油又は牛脂等をケン化して得られる脂肪酸が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、例えば、4−メチルサリチル酸等が挙げられる。
【0010】
また、これらの塩としては、上記のカルボン酸からなるアニオンと以下のカチオンとを組合せてなる塩が使用できる。
その塩を形成するカチオンとしては、アルカリ金属イオン及びアンモニウムイオン等が使用できる。
【0011】
アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン等が挙げられる。
アンモニウムイオンとしては、例えば、NH4+、アルカノールアミンからなるアンモニウムイオン、第1級アミンからなるアンモニウムイオン、第2級アミンからなるアンモニウムイオン、第3級アミンからなるアンモニウムイオン及び第4級アンモニウムイオンが使用できる。
カルボン酸及びその塩(A1a)として、これらのカルボン酸及びその塩の1種又は2種以上の混合物が使用できる。
【0012】
硫酸エステル及びその塩(A1b)としては、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン及びこれらの塩等が使用できる。これらの塩としては、硫酸エステルからなるアニオンと(A1a)で例示したカチオンとを組合せてなる塩が使用できる。
【0013】
高級アルコール硫酸エステルとしては、脂肪族アルコール(炭素数8〜22)の硫酸モノエステル等が使用でき、例えば、オクチルアルコール硫酸モノエステル、デシルアルコール硫酸モノエステル、ラウリルアルコール硫酸モノエステル、ステアリルアルコール硫酸モノエステルが挙げられる。
【0014】
高級アルキルエーテル硫酸エステルとしては、アルコール(炭素数8〜22)アルキレンオキサイド(炭素数2〜4、付加モル数2〜20)付加物の硫酸モノエステル等が使用できる。
アルキレンオキシド(以下AOと略す)としては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド等が使用でき、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、プロピレンオキサイド(以下POと略す)、ブチレンオキサイド及びテトラハイドロフラン等が挙げられる。
これらのうち、EO及びPOが好ましく、さらに好ましくはEO、並びにEOとPOとを併用(ランダム及び/又はブロック)することである。
【0015】
高級アルキルエーテル硫酸エステルとしては、例えば、ラウリルアルコールEO2モル付加物硫酸モノエステル、オクチルアルコールEO3モル付加物硫酸モノエステル、及びオレイルアルコールEO10モル付加物等が挙げられる。
【0016】
硫酸化油としては、炭素数8〜22のカルボン酸残基を有する天然油脂の硫酸化油等が使用でき、例えば、ヒマシ油、落花生油、オリーブ油、ナタネ油、牛脂又は羊脂等の天然油脂の硫酸化油が挙げられる。
【0017】
硫酸化脂肪酸エステルとしては、不飽和脂肪酸エステル(炭素数8〜30)の硫酸化物等が使用でき、例えば、オレイン酸ブチルの硫酸化物、リシノレイン酸ブチルの硫酸化物及びリノール酸ブチルの硫酸化物等が挙げられる。
【0018】
硫酸化オレフィンとしては、オレフィン(炭素数8〜22)の硫酸化物等が使用でき、例えば、オクテン、ドデセン又はオクタデセン等の硫酸化物(例えば、ティーポール、シェル社製)が挙げられる。
【0019】
カルボキシメチル化物及びその塩(A1c)としては、脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物、脂肪族アルコールAO付加物のカルボキシメチル化物及びこれらの塩等が使用できる。
これらの塩としては、カルボキシメチル化物からなるアニオンと(A1a)で例示したカチオンとを組合せてなる塩が使用できる。
【0020】
脂肪族アルコールのカルボキシメチル化物としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜22)のカルボキシメチル化物等が使用でき、例えば、オクチルアルコールカルボキシメチル化物、デシルアルコールカルボキシメチル化物、ラウリルアルコールカルボキシメチル化物等が挙げられる。
【0021】
脂肪族アルコールAO付加物のカルボキシメチル化物としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜22)のAO(付加モル数2〜20)付加物のカルボキシメチル化物等が使用でき、例えば、オクチルアルコールEO3モル付加物のカルボキシメチル化物、ラウリルアルコールEO4モル付加物のカルボキシメチル化物等が挙げられる。
【0022】
スルホン酸及びその塩(A1d)としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、スルホ脂肪酸ジエステル、α−オレフィンスルホン酸、イゲポンT型スルホン酸及びこれらの塩等が使用できる。
これらの塩としては、スルホン酸からなるアニオンと(A1a)で例示したカチオンとを組合せてなる塩が使用できる。
【0023】
アルキルベンゼンスルホン酸としては、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸等が使用でき、例えば、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸及びオクタデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0024】
アルキルナフタレンスルホン酸としては、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルナフタレンスルホン酸等が使用でき、オクチルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸及びオクタデシルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0025】
スルホ脂肪酸ジエステルとしては、炭素数8〜22のアルキル基を有するスルホ脂肪酸ジアルキルエステル等が使用でき、例えば、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステル及びスルホコハク酸ジオクタデシルエステル等が挙げられる。
【0026】
α−オレフィンスルホン酸としては、炭素数8〜22のα−オレフィンに無水硫酸を反応させて得られるスルホン酸等が使用でき、例えば、M.P.189(DuPont社製)及びWorolate(Bayer社製)等が挙げられる。
【0027】
イゲポンT型スルホン酸としては、炭素数8〜22の脂肪酸とN−メチルタウリンとを反応させて得られるスルホン酸であり、例えば、Ceramide(Carlstadt Chem.Co.製)、Igepon T(I.G.社製)及びAlipon CT(I.G.社製)等が挙げられる。
【0028】
リン酸エステル及びその塩(A1e)としては、高級アルコールリン酸エステル、高級アルコールAO付加物リン酸エステル及びこれらの塩等が使用できる。
これらの塩としては、リン酸エステルからなるアニオンと(A1a)で例示したカチオンとを組合せてなる塩が使用できる。
【0029】
高級アルコールリン酸エステルとしては、アルコール(炭素数8〜22)のリン酸モノ又はジエステル等が使用でき、例えば、ラウリルアルコールリン酸モノエステル、ラウリルアルコールリン酸ジエステル、オレイルアルコールリン酸モノエステル及びオレイルアルコールリン酸ジエステル等が挙げられる。
【0030】
高級アルコールAO付加物リン酸エステルとしては、アルコール(炭素数8〜22)AO(付加モル数2〜20)付加物のリン酸モノ−又はジ−エステル等が使用でき、例えば、ラウリルアルコールEO10モル付加物リン酸モノエステル、ラウリルアルコールEO10モル付加物リン酸ジエステル及びオレイルアルコールEO5モル付加物リン酸モノエステル等が挙げられる。
【0031】
カチオン界面活性剤(A2)としては、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A2a)及びアミン塩型カチオン界面活性剤(A2b)等が使用できる。
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A2a)としては、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ベンジル基とアルキル基とを有するアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン又はポリオキシアルキレン基とアルキル基とを有するアンモニウムカチオンからなる第4級アンモニウム塩等が使用できる。これらの第4級アンモニウム塩を構成するアニオンとしては、水酸イオン、ハロゲンイオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン及び沃素イオン)、硝酸イオン、亜硝酸イオン、メトサルフェートイオン及び炭素数1〜8のカルボキシルアニオン(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘサキサン酸、乳酸、りんご酸又はグルコン酸等から誘導されるアニオン)等が使用できる。
【0032】
テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、アルキル基(炭素数8〜22)を有するアンモニウムカチオン等が使用でき、これらからなるアンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェート及びラウリルアミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0033】
ベンジル基とアルキル基とを有するアンモニウムカチオンとしては、ベンジル基と炭素数8〜22のアルキル基とを有するアンモニウムカチオン等が使用でき、これらからなるアンモニウム塩としては、例えば、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)及びオクチルジメチルベンジルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0034】
ピリジニウムカチオンとしては、アルキル基(炭素数8〜22)を有するピリジニウムカチオン等が使用でき、これらからなるアンモニウム塩としては、例えば、セチルピリジニウムクロライド、オレイルピリジニウムクロライド及びラウリルピリジニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0035】
ポリオキシアルキレン基とアルキル基とを有するアンモニウムカチオンとしては、ポリオキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数2〜4)(分子量:120〜1200)と炭素数1〜22のアルキル基とを有するアンモニウムカチオン等が使用でき、これらからなるアンモニウム塩としては、例えば、ポリオキシエチレン(分子量:120〜1,200)トリメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレン(分子量:120〜1,200)ラウリルジメチルアンモニウムクロライド及びポリオキシエチレン(分子量:120〜1,200)ラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0036】
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A2a)は、第3級アミンと4級化剤(メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、ジアゾメタン等のアルキル化剤;EO、PO等の炭素数2〜4のAO;ジメチル炭酸等のジアルキル炭酸)との反応で得ることができる。
【0037】
アミン塩型カチオン界面活性剤(A2b)としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩及び第3級アミン塩等が使用できる。これらのアミン塩を構成するアニオンとしては、水酸イオン、ハロゲンイオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、硝酸イオン、亜硝酸イオン、メトサルフェートイオン及び炭素数1〜8のカルボキシルアニオン(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘサキサン酸、乳酸、りんご酸又はグルコン酸等から誘導されるアニオン)等が使用できる。
【0038】
第1級アミン塩としては、アルキル基(炭素数8〜22)を有する第1級高級アミン塩等が使用でき、例えば、ラウリルアミンクロライド、ステアリルアミンブロマイド、セチルアミンメトサルフェート、硬化牛脂アミンクロライド及びロジンアミンアセテート等が挙げられる。
【0039】
第2級アミン塩としては、アルキル基(炭素数8〜22)を有する第2級高級アミン塩等が使用でき、例えば、ラウリルメチルアミンクロライド、ステアリルエチルアミンブロマイド、ジラウリルアミンメトサルフェート、ラウリルプロピルアミンアセテート、ジオクチルアミンクロライド及びオクタデシルエチルアミンハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0040】
第3級アミン塩としては、アルキル基(炭素数8〜22)を有する第3級アミン塩等が使用でき、例えば、ラウリルジエチルアミンクロライド、ラウリルエチルメチルアミンブロマイド及びオクタデシルジエチルアミンメトサルフェート等が挙げられる。
【0041】
ノニオン界面活性剤(A3)としては、AO付加型非イオン界面活性剤(A3a)及び多価アルコ−ル型非イオン界面活性剤(A3b)等が使用できる。(A3a)としては、高級アルコールAO付加物、カルボン酸AO付加物、(A3b)としては、多価アルコールAO付加物、多価アルコールカルボン酸エステルAO付加物、多価アルコールアルキルエーテルAO付加物、等が使用できる。
【0042】
高級アルコールAO付加物としては、飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコール(炭素数8〜22、第一級又は第二級アルコールを含む)のAO付加物等が使用できる。例えば、オクチルアルコールEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ラウリルアルコールEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ステアリルアルコールEO付加物(付加モル数10〜50モル)、オレイルアルコールEO付加物(付加モル数10〜50モル)、及びラウリルアルコールEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ブロック付加物等が挙げられる。AOの付加個数は、活性水素1個あたり、3以上が好ましく、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上であり、また100以下が好ましく、さらに好ましくは70以下、特に好ましくは50以下である。AOのうち、EOの量は、AOの全重量に基づいて、50〜100重量%であることが好ましい。
【0043】
カルボン酸AO付加物としては、飽和若しくは不飽和のカルボン酸(炭素数8〜22)のAO付加物等が使用できる。例えば、ステアリン酸EO付加物(付加モル数10〜50モル)、ラウリン酸EO付加物(付加モル数10〜50モル)、オレイン酸EO付加物(付加モル数10〜50モル)、ポリエチレングリコール(重合度10〜50)のラウリン酸ジエステル、ポリエチレングリコール(重合度10〜50)のオレイン酸ジエステル及びポリエチレングリコール(重合度10〜50)のステアリン酸ジエステル等が挙げられる。
【0044】
多価アルコールAO付加物としては、多価アルコール(2〜8価、炭素数2〜22)のAO付加物(付加モル数10〜50)等が使用できる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロールプロパン、ネオペンチルアルコール、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビト−ル、ショ糖及びブドウ糖等が使用できる。
また、AOの好ましい範囲は、上記と同様である。AOの付加個数は、活性水素1個あたり、20以上が好ましく、さらに好ましくは25以上、特に好ましくは30以上であり、また320以下が好ましく、さらに好ましくは300以下、特に好ましくは280以下である。AOのうち、EOの量は、AOの全重量に基づいて、10〜70重量%であることが好ましい。
【0045】
多価アルコールAO付加物としては、例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコールのAOブロック付加物等が用いられる。
プロピレングリコールEOブロック付加物としては、EOx−POy−EOxで表される化合物(xは通常5〜110の整数、好ましくは10〜100の整数、yは通常5〜100の整数、好ましくは10〜90の整数である。)等が用いられ、例えば、EO5−PO70−EO5、EO106−PO70−EO106、EO100−PO39−EO100、EO20−PO70−EO20、EO17−PO85−EO17、EO20−PO30−EO20、EO26−PO39−EO26、EO20−PO30−EO20及びEO80−PO30−EO80等が挙げられる。
【0046】
エチレングリコールPOブロック付加物としては、POx−EOy−POxで表される化合物(xは通常5〜110の整数、好ましくは10〜100の整数、yは通常5〜100の整数、好ましくは10〜90の整数である。)等が用いられ、例えば、PO19−EO33−PO19、PO30−EO50−PO30及びPO25−EO80−PO25等が挙げられる。
【0047】
多価アルコールカルボン酸エステルAO付加物としては、例えば、ソルビタンモノラウリン酸エステルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ソルビタントリオレイン酸エステルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、グリセリンモノオレイン酸エステルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、トリメチロールプロパンモノステアレートEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ランダム付加物、ソルビタンモノステアレートEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ソルビタンジステアレートEO付加物(付加モル数10〜50モル)及びソルビタンジラウレートEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ランダム付加物等が挙げられる
【0048】
多価アルコールアルキルエーテルAO付加物としては、例えば、ペンタエリスリトールモノブチルエーテルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ペンタエリスリトールモノラウリルエーテルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ソルビタンモノメチルエーテルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、ソルビタンモノステアリルエーテルEO付加物(付加モル数10〜50モル)、メチルグリコシドEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ランダム付加物、ラウリルグリコシドEO付加物(付加モル数10〜50モル)及びステアリルグリコシドEO(付加モル数10〜50モル)PO(付加モル数10〜50モル)ランダム付加物等が挙げられる。
【0049】
両性界面活性剤(A4)としては、アミノ酸型両性界面活性剤(A4a)、ベタイン型両性界面活性剤(A4b)及びイミダゾリン型両性界面活性剤(A4c)等が使用できる。
アミノ酸型両性界面活性剤(A4a)としては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を持っている両性界面活性剤で、アルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤(ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸カリウム等)及びアルキルアミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウム、ステアリルアミノ酢酸アンモニウム等)等が挙げられる。
【0050】
ベタイン型両性界面活性剤(A4b)としては、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分とを持っている両性界面活性剤であり、アルキルジメチルベタイン(ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、アミドベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等)及びアルキルジヒドロキシアルキルベタイン(ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等)等が挙げられる。
【0051】
イミダゾリン型両性界面活性剤(A4c)としては、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン及び2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0052】
これらの(A)のうち、(A3)が好ましく、さらに好ましくは
多価アルコ−ル型非イオン界面活性剤(A3b)、特に好ましくはエチレングリコール又はプロピレングリコールのAOブロック付加物である。
(A)は市販されている商品をそのまま使用でき、また公知の方法で製造したものを使用してもよい。また、2種以上の混合物を使用してもよい。
【0053】
(A)の使用量(重量部)は、溶媒100重量部に対して、5以上が好ましく、さらに好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、最も好ましくは30以上であり、また900以下が好ましく、さらに好ましくは500以下、特に好ましくは200以下、最も好ましくは100以下である。この範囲で有ればラメラ構造が形成され、板状組成物層を形成する上で必要となるアルコキシドによるゾルゲル反応の進行を妨げない適度な粘度になる。
【0054】
層状構造体層を形成するシリケート(B1)もしくは無機酸化物(B2)は前駆体を加水分解し、縮合化することで得られ、それらの前駆体としては、無機アルコキシド(C1)、及び無機ハロゲン化物(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種等が使用できる。
(C1),(C2)としては、一般式(2)で表される化合物等が使用できる。

M(OR)n (2)

一般式(2)中、Mは、n価の無機原子を表し、nは1〜7の整数であり、好ましくは2〜5の整数であり、(C1)の入手しやすさや取扱性等の観点から、3〜5の整数がより好ましく、特に好ましくは3〜4の整数、最も好ましくは4である。n個のROは同一でも異なっていてもよい。Mとしては無機アルコキシド及び無機ハロゲン化物として安定に存在できる金属原子であれば制限なく用いられ、具体的には、II族(亜鉛)、III族(インジウム、アルミニウム)、IV族(スズ、ケイ素、ジルコニウム、チタン)、V族(バナジウム、アンチモン)、VI族(タングステン)、VII族(マンガン)、VIII族(鉄)等の無機原子及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、(C1)及び(C2)の入手しやすさ等の観点から、IV族原子、特にケイ素、チタンが好ましく、より好ましいのはケイ素である。
【0055】
また、一般式(2)中、Rは、アルキル基を表し、炭素数1〜30のアルキル基等が用いられる。炭素数1〜30のアルキルとしては、具体的には、メチル、エチル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、デシル、ヘキサデシル、エイコシル及びトリコシル等が挙げられる。これらのうち、(C1)及び(C2)の入手しやすさや取扱性等の観点から、プロピル、n−ブチル及びt−ブチルが好ましく、より好ましいものはメチル、特に好ましいものはエチルである。
【0056】
一般式(2)で表される化合物には、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタン及びトリアルコキシアルミニウム等が含まれる。テトラアルコキシシランとしては、例えば、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(以下TES)、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン及びテトライソプロポキシシラン等が挙げられる。テトラアルコキシチタンとしては、例えば、ジメトキシジエトキシチタン、テトラエトキシチタン及びテトライソプロポキシチタン等が挙げられる。トリアルコキシアルミニウムとしては、例えば、トリエトキシアルミニウム及びトリイソプロポキアルミニウム等が挙げられる。これらのうち、入手しやすさ等の観点から、テトラアルコキシシラン及びトリアルコキシアルミニウムが好ましく、より好ましくはテトラアルコキシシラン、特に好ましいのはテトラメトキシシラン、TES、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシランである。
【0057】
無機ハロゲン化物(C2)としては、一般式(3)で表される化合物等が使用できる。

M(X)n (3)

一般式(3)中、M及びnは一般式(2)におけるものと同じである。n個のXは同一でも異なっていてもよい。
一般式(3)で表される化合物としては、シランテトラハライド、チタンテトラハライド及びアルミニウムトリハライド等が含まれる。シランテトラハライドとしては、シランテトラクロリド、シランテトラブロミド、シランテトラフルオリド及びシランテトラヨージド等が挙げられる。チタンテトラハライドとしては、チタンテトラクロリド、チタンテトラブロミド、チタンテトラフルオリド及びチタンテトラヨージド等が挙げられる。アルミニウムトリハライドとしては、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムトリブロミド、アルミニウムトリフルオリド及びアルミニウムトリヨージド等が挙げられる。これらのうち、入手しやすさ等の観点から、シランテトラハライド及びアルミニウムトリハライドが好ましく、より好ましくはシランテトラハライド、特に好ましくはシランテトラクロリド及びシランテトラブロミドである。
【0058】
有機/無機複合層(B3)の前駆体としては、有機/金属複合アルコキシド(C3)及び有機/無機複合ハロゲン化物(C4)であり、それぞれ(C1)のアルコキシ基及び(C2)のハロゲン原子の一部が有機基で置換(又は有機基を介して結合)されたものであり、一般式(4)及び(5)でそれぞれ表される化合物等が使用できる。
【0059】
【化1】

【化2】

[一般式(4)及び(5)中、M及びnは一般式(2)及び(3)におけるものと同じである。mは(n−2)を超えない0又は正の整数、jは1又は2であり、R1はj個のMと化学結合を形成する炭素数1〜20の有機基であり、R2は水素原子、水酸基又は炭素数1〜8の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜8の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。]
Mはこれらのうち、(C3)及び(C4)の入手しやすさ等の観点から、好ましいものはチタン、より好ましいものはケイ素である。
【0060】
一般式(4)及び(5)中、R1は、炭素数1〜20のj価の有機基であり、1価炭化水素基例えば、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜12のアリル基、及び炭素数7〜12のアルアルキル基;並びに2価炭化水素基、例えば炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリレン基及び炭素数7〜20のアルアルキレン基等が含まれる。
【0061】
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基及びn−オクチル基等が挙げられる。炭素数2〜8のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−オクテニル基、2−オクテニル基及び7−オクテニル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリル基としては、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基及びジメチルナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアルアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、メチルベンジル基及びナフチルメチル基等が挙げられる。炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,2−ヘキシレン基、1,3−ヘキシレン基、1,4−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基及び1,2−オクチレン基等が挙げられる。炭素数2〜20のアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、1−エチルビニレン基、1,2−ジメチルビニレン基、1−ブチルビニレン基及び1−ヘキシルビニレン基等が挙げられる。
【0062】
炭素数2〜20のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、1−エチルエチニレン基、1,2−ジメチルエチニレン基、1−ブチルエチニレン基、1−ヘキシルエチニレン基及び1−オクチルエチニレン基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p-フェニレン基及び2,7−ナフチレン基等が挙げられる。炭素数7〜20のアルアルキレン基としては、例えば、一般式(6)式で表される有機基等が挙げられる。

−(CH2q−Ph−(CH2r− (6)

一般式(6)中、−Ph−はo−、m−又はp−フェニレン基、q及びrはq+rが1〜14となる0又は1〜14の整数である。
【0063】
これらのうち、(C3)及び(C4)としての入手しやすさ等の観点から、アルキレン基及びアリレン基が好ましく、より好ましくはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,2−ヘキシレン基、1,3−ヘキシレン基、1,4−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基、1,2−オクチレン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p-フェニレン基及び2,7−ナフチレン基、特に好ましくはメチレン基、エチレン基及びp-フェニレン基である。
【0064】
一般式(4)及び(5)中、R2は水素原子、水酸基又は炭素数1〜8の炭化水素基であり、R3は炭素数1〜8の炭化水素基である。炭素数1〜8の炭化水素基としては、前述のR1の1価炭化水素基のうち炭素数1〜8のものが挙げられる。これらのうち、(C3)及び(C4)の入手しやすさ等の観点から、、R2はメチル、エチル及びフェニルが好ましく、より好ましいのはメチル及びフェニルである。R3はメチル、エチル、プロピル、n−ブチル及びt−ブチルが好ましく、より好ましいのはメチル、特に好ましいのはエチルである。
【0065】
(n−m−1)は板状組成物層の形成しやすさ等の観点から、2〜6の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜5の整数、特に好ましくは2〜3の整数である。nは、0〜7の整数であり、板状組成物層の形成しやすさ等の観点から、0〜5の整数が好ましく、さらに好ましくは0〜2の整数、特に好ましくは0又は1である。jは、1〜2の整数であり、板状組成物層の形成しやすさ等の観点から、1が好ましい。
【0066】
(C3)には、j=1である有機/無機複合アルコキシド(C3−1)、j=2である有機/無機複合アルコキシド(C3−2)及びこれらの混合物等が含まれる。
【0067】
(C3−1)としては、次の、メトキシシラン、エトキシシラン(例えばトリエトキシメチルシラン等)、ブトキシシラン、オクトキシシラン、フェノキシシラン、メトキシチタン、エトキシチタン、ブトキシチタン、オクトキシチタン及びフェノキシチタン等が含まれる。
【0068】
メトキシシラン、ブトキシシラン、オクトキシシラン、フェノキシシランとしては、エトキシシランに相当する(エトキシ基がそれぞれメトキシ、ブトキシ、オクトキシ及びフェノキシ基に置換した)ものが挙げられる。
【0069】
メトキシチタン、エトキシチタン、ブトキシチタン、オクトキシチタン、フェノキシチタンとしては、メトキシシラン、エトキシシラン、ブトキシシラン、オクトキシシラン、フェノキシシランに相当する(シランがそれぞれチタンに置換した)ものが挙げられる。
【0070】
j=2である有機/金属複合アルコキシド(C3−2)には、メトキシシラン、エトキシシラン、ブトキシシラン、オクトキシシラン、フェノキシシラン、メトキシチタン、エトキシチタン、ブトキシチタン、オクトキシチタン及びフェノキシチタン等が含まれる。メトキシシランとしては、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン及びモノメトキシシランが含まれる。
【0071】
メトキシシラン、ブトキシシラン、オクトキシシラン、フェノキシシランとしては、エトキシシランに相当する(エトキシ基がそれぞれメトキシ、ブトキシ、オクトキシ及びフェノキシ基に置換した)ものが挙げられる。
【0072】
メトキシチタン、エトキシチタン、ブトキシチタン、オクトキシチタン、フェノキシチタンとしては、メトキシシラン、エトキシシラン、ブトキシシラン、オクトキシシラン、フェノキシシランに相当する(シランがそれぞれチタンに置換した)ものが挙げられる。
【0073】
有機/無機複合ハロゲン化物(C4)には、j=1である有機/無機複合ハロゲン化物(C4−1)、j=2である有機/無機複合ハロゲン化物(A4−2)及びこれらの混合物等が含まれる。
【0074】
j=1である(C4−1)としては、次の、トリハロシラン(例えばトリクロロメチルシラン等)、ジハロシラン(例えばジクロロジメチルシラン等)、トリハロチタン及びジハロチタン等が含まれる。
並びにクロルがブロムに置き換わったブロモシラン等が挙げられる。
【0075】
トリハロチタン、ジハロチタンとしては、上記トリハロシラン、ジハロシランに相当する(シランがそれぞれチタンに置換した)ものが挙げられる。
【0076】
j=2である有機/無機複合ハロゲン化物(C4−2)には、次の、トリハロシラン(例えば、ビス(トリクロロシリル)メチレン等)、ジハロシラン(例えば、ビス(ジクロロメチルシリル)メチレン等)、モノハロシラン例えばビス(クロロジメチルシリル)メチレン等)、トリハロチタン、ジハロチタン及びモノハロチタン等が含まれる。
並びに上記に相当するクロルがブロムに置換したブロモチタン等が挙げられる。
【0077】
トリハロチタン、ジハロチタン、モノハロチタンとしては、上記トリハロシラン、ジハロシランに相当する(シランがそれぞれチタンに置換した)ものが挙げられる。
これらの(C)のうち、(C1)および(C2)が好ましく、さらに好ましくは(C1)、特に好ましくは金属原子としてケイ素、チタンからなる(C1)であり、例えばテトラエチルアルコキシシランである。(C)の使用量(重量部)は、界面活性剤(A)に対して、0.1~10重量%程度、更に好ましくは0.3〜5重量%、特に好ましくは、0.6〜3重量%である。この範囲で有れば、板状組成物層を形成し、アルコキシドによるゾルゲル反応が界面活性剤のラメラ層上で起こり易くなるため好ましい。
【0078】
板状組成物(B4)としては、金属原子を含まないものであればよい。親水性モノマーとしては、カルボン酸、カルボン酸塩等が使用される。また疎水性モノマーを使用してもよく、親水性モノマーと疎水性モノマーを併用して使用することによっても層状構造体を作成することは可能である。
【0079】
本発明におけるX線回折(以下、XRDと略記する)パターンは、例えば、小角散乱測定法により得られる(JISK0131−1996、X線回折分析通則)。これら測定で得られる回折パターンは、縦軸を散乱強度、横軸を回折角度(2θ)として、各回折角度での測定物質の散乱強度をプロットしたものである。
【0080】
X線回折パターンにおいて少なくとも二つのピークを有し、かつこれらのピークの回折角度(2θ)が(1)式で表され、例えばd1が20nm、d2が10nmであるということは、格子面間隔(d)が20nmの間隔で規則的に配列した構造であることを示すものである。
格子面間隔(d)(nm)は、4以上であり、分散性の観点から、好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、特に好ましくは7以上であり、また100以下であり、好ましくは70以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは20以下である。
【0081】
本発明は界面活性剤の自己組織化により形成される層状ミセルを利用して、層状構造体を得るものである。層状ミセルの形成はX線回折を用いることで確認することができる。
界面活性剤の自己組織化とは、界面活性剤(A)の親水性基の大きさと疎水性基の大きさとのバランスによってミセルの形状が制御されることである。詳細な内容については、文献(超分子科学、東京科学同人、1998)に記載されている。例えば、水系では、一般的に疎水基が占める体積が疎水基の長さに対して大きくなるにつれて、球状ミセルから棒状ミセルへ、棒状ミセルから層状ミセルへと変化する。
【0082】
適当な温度と濃度条件を設定することで溶媒中で界面活性剤が層状に規則的に配列したラメラ構造をとり分散する。HCl等を加え、酸性条件下にした上で、TEOS等のアルコキシシランをラメラ構造をとった界面活性剤を含む水溶液に加えると、アルコキシシリル基が重縮合することにより界面活性剤(A)と板状形成物層(B)からなる層状構造体を得ることができる。これは、層状ミセルの表面には親水性基が存在しているため、アルコキシドの末端シラノール基が層状ミセル表面とゾルゲル縮合反応し、その結果、板状組成物層が形成され、界面活性剤層と板状組成物層からなる層状構造体が生成する。
【0083】
HClはゾルゲル反応の触媒として添加し、反応性の観点から、0.1~50重量%程度、更に好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは、1〜10重量%である。
【0084】
層状化合物を得るための因子としては、反応温度、反応時間、界面活性剤濃度、界面活性剤と無機アルコキシドとの重量比、HCl濃度などがあげられる。
【0085】
反応温度は、温度が低い方が生成物の規則性が高くなる傾向にあり、一方、反応温度が高い方が重合度が高く構造の安定性が高くなる傾向にある。このことから、反応温度は20〜80℃の範囲が好ましい。さらに好ましい温度範囲は30℃〜70℃である。特に好ましい温度範囲は40〜60℃である。
【0086】
また、反応時間は結晶作成上、重要な条件であり、時間が短すぎる場合は結晶が非晶質になり、良質な結晶は得られない。好ましい反応時間は1時間以上、さらに好ましくは3時間以上、特に好ましくは6時間以上である。
【0087】
上記脱アルコール縮合反応は溶剤中でも、無溶剤でも行うことができる。溶剤としては、(A)および(B)を溶解し、かつこれらに対し非活性である有機溶剤であれば特に制限はない。このような有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンなどの非プロトン性極性溶媒が例示できる。
【0088】
[実施例]
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお以下において、部は重量部を、%は重量%を示す。
<実施例1>
【0089】
ノニオン界面活性剤PE6200(三洋化成工業社製)0.52部、イオン交換水10部、37wt%HCl2.4部を試験管に入れ55℃に加熱し、均一になるまで攪拌した。次にTEOS0.40部を添加し、55℃で6時間攪拌することで白色の沈殿物を得ることができた。沈殿物を濾紙で濾過し、風乾した後XRDで測定した。回折パターンに層状構造体を示す2本のピークの存在を確認することができた。d1,d2は式(1)を満足し、得られた層間距離は7.6nmであった。結果を表1に示す。
<実施例2>
【0090】
ノニオン界面活性剤PE6200(三洋化成工業社製)0.5部、イオン交換水10部、37wt%HCl2.34部を試験管に入れ55℃に加熱し、均一になるまで攪拌した。次にTEOS0.42部を添加し、55℃で6時間攪拌することで白色の沈殿物を得ることができた。沈殿物を濾紙で濾過し、風乾した後XRDで測定した。回折パターンに層状構造体を示す2本のピークの存在を確認することができた。d1,d2は式(1)を満足し、得られた層間距離は7.6nmであった。結果を表1に示す。
<実施例3>
【0091】
カチオン界面活性剤テトラステアリルアンモニウムクロリド(東京化成社製)4.07部、イオン交換水10部、1mol/LNaOH0.17部を試験管に入れ25℃で均一になるまで攪拌した。次にTEOS2.15部を添加し、20時間攪拌すること で白色の沈殿物を得ることができた。沈殿物を濾紙で濾過し、風乾した後XRDで測定した。回折パターンに層状構造体を示す2本のピークの存在を確認することができた。d1,d2は式(1)を満足し、得られた層間距離は4.6nmであった。結果を表1に示す。
<比較例1>
【0092】
モンモリロナイト(クニピアF)3wt%水溶液100部と界面活性剤(トリメチルセチルアンモニウムクロリド)10wt%水溶液30部とをそれぞれ80℃に加熱した後、混合攪拌を行う。2時間の攪拌後、沈殿物を濾別し、80℃の水で2回洗浄した。その後、水を蒸発させることでモンモリロナイト層間にトリメチルセチルアンモニウムイオンが挿入された灰色の有機化クレイを得た。XRDの回折パターンから層間距離を求めた結果、d1,d2は式(1)を満足するが、得られた層間距離は2.0nmであった。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0094】
このようにして作製された層状構造体は高分子中に均一かつ微細に分散させることができるため,クレイの分散量が微量であっても他のフィラー等の補強材では為し得ない大きな補強効果を層状構造体が発揮し,高い機械的な強度を発揮することができる。特に,強度,弾性率などの機械的性質,耐熱性,熱変形温度,低温脆化温度などの熱的性質,ガス遮閉性などに優れた高分子組成物を得ることができる。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤層(A)と板状組成物層(B)からなる層状構造体であって、そのX線回折測定のパターンにおいて下記関係式(1)を満たす二つ以上のピークが存在し、かつそのうち最も回折角度(2θ)が小さいピークの格子面間隔d1が4nm以上、100nm以下であることを特徴とする層状構造体。
dn=(1/n)d1 (1)
[式中、dnはピーク番号nにおける格子面間隔(nm)、d1はnが1における格子面間隔(nm)を示す;ただし、nは回折パターンのピーク番号を示し、ピークのうち最も回折角度(2θ)が小さいピークのピーク番号をn=1とし、回折角度(2θ)が大きくなるに従い順番に番号を付ける。]
【請求項2】
前記(B)が、シリケートもしくはシリカ層(B1)、金属酸化物層(B2)、有機/無機複合層(B3)、及び有機層(B4)からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1記載の層状構造体。
【請求項3】
前記(B3)が金属原子、酸素原子、少なくとも1以上の炭素原子を含む有機基が結合してなる有機/無機複合層であることを特徴とする請求項2記載の層状構造体。
【請求項4】
前記(B4)が金属原子を含有しない有機層であることを特徴とする請求項2記載の層状構造体。





【公開番号】特開2006−16244(P2006−16244A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195242(P2004−195242)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】