説明

履物反転装置

【課題】本考案はトイレなどの室内に入る際、脱ぎ置いた履物の向きを自動的に180度反転させ、退室時に不要な動作をする事無く、そのまま履けるようにする履物反転装置を提供する。
【解決手段】履物が脱ぎ置かれる回転盤の中央部に、蓄勢用の弾性体を内蔵した回転軸を設置し、この回転軸に連結体を巻き付け連結体の片方を入室するドアに固定する。こうすることで入退室時のドアの動きが連結体を介して回転軸に作用し、回転盤が回転して履物の向きを反転させる。
また回転盤と回転軸はラチェット構造になっており、入室時に人が回転盤上に居る状態でドアを開けても回転盤は反転せず入室後ドアを閉める時のみ、回転軸に蓄勢された弾性体の復元力で反転する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人が部屋に入室する際に脱ぎ置かれた履物・スリッパ等の向きを自動的に半回転させ履き易いようにしてくれる履物反転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
履物の向きを換える装置の提案はこれまでも数多くあるが大別すると下記のように分類される。
(1) 電動モーター・センサーを使用したもの(特許文献1〜10参照)。
この提案は安定した駆動源を得られるが電気を使用する点で不経済である。
(2) 踏み圧を水平回転に転換したもの(特許文献11〜20参照)。
踏み圧を得るために装置が沈む必要があり装置自体に厚みが生じてしまう、と同時に台が沈むという違和感がある。
(3) 磁石の極性の反発力を利用したもの(特許文献21〜23参照)。
比較的構造が簡素化できる利点があるが履物側にも磁石を装着せねばならず履物が限定されてしまう。
(4) 利用者が自ら操作して使用するもの(特許文献24・25参照)。
これらの提案は、本発明の連結体を介して回転軸を回転させる点では類似性もあるが、これらは手動式、足踏み式であって利用者がその目的のために自ら操作するものであるのに対し、本発明はドアを開けるという自然動作を駆動源としており、完全自動である点で相違する。
その他として課題は別であるがドアの開閉を利用したものがある(特許文献26参照)。
この提案はドアの開閉を利用している点は共通であるが、その課題はドア開口部に置かれた履物がドア開閉の障害にならぬよう履物台を設置し、これとドアとを連結させ開扉時にドアと離れた位置に移動させることであり、本発明の履物反転装置とは基本的に用途が異なる。
【特許文献1】特開2004−24866号公報
【特許文献2】特開2002−28063号公報
【特許文献3】特開2002−10899号公報
【特許文献4】特開平11−178696号公報
【特許文献5】特開平9−98878号公報
【特許文献6】特開平9−98877号公報
【特許文献7】特開平6−70681号公報
【特許文献8】特開平5−269038号公報
【特許文献9】登録実用新案第3089852号
【特許文献10】実開平7−34780号公報
【特許文献11】特開2004−283471号公報
【特許文献12】特開2000−175798号公報
【特許文献13】特開2000−79023号公報
【特許文献14】特開平10−43030号公報
【特許文献15】特開平9−327365号公報
【特許文献16】特開平8−187156号公報
【特許文献17】特開平8−117083号公報
【特許文献18】実開平7−19239号公報
【特許文献19】登録実用新案第3027847号
【特許文献20】実開平6−26648号公報
【特許文献21】特開平5−176833号公報
【特許文献22】実開平6−19649号公報
【特許文献23】登録実用新案第3002295号
【特許文献24】特開2000−232931号公報
【特許文献25】特開平7−108020号公報
【特許文献26】特開2001−329763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
人が履物を脱いで部屋に入り、退室時に再度履物を履こうとする場合、体を半回転させるか自分の手で履物の向きを換えなければならず大変面倒である。本発明の解決すべき課題はこれら不要な動作をせずに履けるよう履物の向きを自動的に換える装置の提案である。
【0004】
またこの技術分野での提案は前述したように数多く出されているが、それぞれ利点もある反面課題も多い。これら従来技術の中でも最大の課題は構造が複雑であるがために装置自体が薄型に出来ないことである。殆どの装置が数センチの厚みがある踏み台型になっており、これではバリアフリー化の妨げになるばかりか利用者に昇り降りの負担がかかってしまう。また踏み圧を利用する装置では乗った時に台が沈むような不安定感を伴う。そしてまた電動モーター・センサー等を利用する装置は不経済である。
【0005】
以上の課題を解決すべく、本発明は構造を簡素化し1センチ以下の薄型で、沈み込みが無く、電気を必要としない装置を目指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための技術的手段としては請求項1で提案した、土台となる基板と、該基板中央部に回動自在に設けられた回転盤と、該回転盤を回動させる弾性体を内蔵した回転軸と、該回転軸とドアとを直結する連結体とを備え、ドアの開閉運動が連結体を介して前記回転軸に伝達されることにより前記回転盤を反転させる履物反転装置と、請求項2で提案した、上記回転軸と上記回転盤の両者間で作用するラチェット機構により、上記ドア開閉において閉扉時のみ上記回転軸が反転する請求項1の履物反転装置とで実現可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の最大の特徴は、従来技術の殆どがその駆動源を装置内部に置いているのに対し本発明はその駆動源を装置外部(ドアの動きに連動)に置いていることにある。そのため本装置の構造は土台となる基板1の厚みの中に全て収納可能であり、マット並みの極めて薄い装置が可能となる。
【0008】
本装置を構成している部品は基本的に基板1、回転軸2、弾性体3、連結体4、回転盤5の5点であり従来提案されている同種の装置に比べて圧倒的に部品点数か少ない。しかも各部品の形状も複雑なものは無く製造が容易であり、商品化するに当たっては生産コストを低く抑えることが可能である。
【0009】
このように本発明により、バリアフリーにも対応可能な薄型で、電気を使わない省エネ装置であり、構造の簡素化による低価格の履物反転装置が提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の利用価値が最大に活かされる状況としてはトイレの入退室時における人とスリッパの関係にあると考える。以下、本発明の実施形態をトイレの入退室時における実施例として図面に基づき説明する。
【実施例】
【0011】
図1は本装置がドアと連結されており、ドアの開閉運動を駆動源として作用することを表現するためドアの開扉時と閉扉時の状態を示している。図2は本装置の土台となる基板1である。図3は弾性体3を内蔵した回転軸2であり、2a、2bはラチェット機構用の凹である。図4は回転軸2と弾性体3の立体斜視図であり4は回転軸2とドアとを結ぶ連結体である。実際には回転軸2の外周上に連結体用の溝を作りここに巻きつけて使用する。図5は実際に履物を載せ反転する回転盤5であり、5a、5bはラチェット機構用の凸である。図6(A)は回転盤5のラチェット部の拡大断面図であり図6(B)(C)は回転軸2と回転盤5の各ラチェット機構用凹凸の歯合、非歯合状態を示している。基本的にはこれらの5点から構成され、全体を組み合わせた分解斜視図が図7である。
【0012】
図8〜図13はドアの開閉状態に対応したと回転軸2と回転盤5のラチェット機構用凹凸の位置関係及び歯合状態をイメージ図化したものである。説明の都合上回転盤5を透明化して回転軸2とラチェット用凹凸が見えるようにしてある。また図8〜図13の各図面中央下のイラスト図はドアの開閉状態と利用者の位置関係を示したものである。本装置の使用開始に当たっては、図8にあるように予め回転軸2と回転盤5のラチェット用凹凸は歯合するよう設定しておき、この状態を初期状態として一連の動作を説明する。
【0013】
図8では利用者がスリッパを履いたまま装置上に立っている状態の回転軸2と回転盤5及びラチェット用凹凸の位置関係を示している。ここでは回転軸2と回転盤5の関係は初期状態のままである。
【0014】
図9は利用者がドアを開けた状態を示す。この時、ドアに結ばれている連結体4は矢印方向に引っ張られ、これに伴い回転軸2が右方向に回転する。この時ラチェット機構により回転軸2の回転運動は回転盤5には伝わらず、図6(C)に示す状態となり回転軸2だけが回転し利用者を乗せた回転盤5は廻らない。図9の図面上では回転軸2の凹2aと凹2bが互いに入れ替わったようになり回転盤5の凸5a・5bは不動である。
一方、回転軸2内に設けられた弾性体3は回転軸2が回転するこの時点でネジが巻かれるように蓄勢される。
【0015】
ここで前提として人がドアを開けて入室するのに必要な最小開扉角度を約45度、最大角度を90度と想定し、図9にあるように、利用者がドアを少なくとも45度開いた時点で回転軸2と回転盤5の各凹凸が歯合するように設定しておく(ドアと連結体の固定位置を調節することで可能)。こうすることで利用者が入室するためにドアを開け入室した時点で、回転軸2と回転盤5の各凹凸は常に歯合することになる。図6(B)は回転軸2と回転盤5の各凹凸が歯合している状態を示す。
【0016】
図10で利用者はスリッパの爪先をトイレ側に向けた状態で脱ぎ入室する。図11は入室後ドアを閉めた状態を示す。この時、図9で蓄勢された弾性体の復元力により回転軸2は逆の左方向に回転する。そしてこの時点でラチェットの凹凸は互いに歯合しているので、今度は回転軸2と回転盤5は共に回転し初期状態の位置にまで戻る。図面上では歯合した凹2aと凸5bの組み合わせと、凹2bと凸5aの組み合わせとが共に反転する。即ち、スリッパは180度回転し爪先を廊下側に向いた状態となる。
【0017】
ここでは開扉角度を約45度で入室する場合を想定したが仮に90度近くまで開扉した場合を考察すると、図9において開扉角45度地点で回転軸2の凹2aと回転盤5の凸5bは一度歯合するが45度以上に開いたとしてもラチェット機構により回転軸凹2aは回転盤凸5bを通り過ぎて回転するだけなので回転盤5に動きは伝わらない。また、そこからドアを閉じる時は、一端通り過ぎた回転軸凹2aは弾性体3により巻き戻され回転盤凸5bで再度歯合し、今度は共に回転して初期状態まで戻る(図11)。即ち入室時の開扉角度に係わらず履物を反転させることが可能である。
【0018】
図12はトイレ使用後、利用者が退室するためドアを開けた状態だが、この時の回転軸2と回転盤5の動きは入室時にドアを開けた時の動き図9と同様になりスリッパを乗せた回転盤5は回転しない。図面では回転軸の凹2a・2bが反転するのみであり回転盤5の凸5a・5bは不動である。即ちスリッパの爪先は廊下側を向いた状態を保持することとなる。
【0019】
最後に図13で利用者はスリッパを履き、本装置から降りてドアを閉めれば一連の動作が完了し初期状態に戻る。次からはこの動作の繰り返しとなる。
【0020】
この時装置から降りてドアを閉めるのは、閉扉時は回転盤5も廻るので降装置後に閉めるのが望ましい。ただし、装置上で閉扉しても人の重みで回転盤5は回転せず、降装置後に初期状態となるので特に問題は無い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の使用状態を示す全体図
【図2】実施例の基板の正面図と平面断面図
【図3】実施例の回転軸の正面図と左右側面断面図、及び弾性体
【図4】図3の分解立体斜視図と連結体
【図5】実施例の回転盤の正面図と平面図
【図6】図3と図5のラチェット部の拡大断面図
【図7】図2〜図5の分解斜視図
【図8】実施例の本装置の初期状態図
【図9】実施例の開扉時の回転軸と回転盤の回転状況図
【図10】実施例の利用者入室時の回転軸と回転盤の回転状況図
【図11】実施例の閉扉時の回転軸と回転盤の回転状況図
【図12】実施例の再開扉時の回転軸と回転盤の回転状況図
【図13】実施例の利用者退室時の回転軸と回転盤の回転状況図
【符号の説明】
【0022】
1 基板
1a 回転盤用凹
1b 回転軸用凹
1c 弾性体を固定する凸
1d 連結体用溝
2 回転軸
2a 回転軸のラチェット凹1
2b 回転軸のラチェット凹2
3 弾性体
4 連結体
5 回転盤
5a 回転盤のラチェット凸1
5b 回転盤のラチェット凸2
5R スリッパ右
5L スリッパ左
6 利用者
7 ドア
8 敷居

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台となる基板と、該基板中央部に回動自在に設けられた回転盤と、該回転盤を回動させる弾性体を内蔵した回転軸と、該回転軸とドアとを直結する連結体とを備え、ドアの開閉運動が連結体を介して前記回転軸に伝達されることにより前記回転盤を反転させることを特徴とする履物反転装置。
【請求項2】
上記回転軸と上記回転盤は、それぞれ両者間で作用するラチェット機構を備え、上記ドア開閉において閉扉時のみ上記回転軸が反転することを特徴とする請求項1の履物反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−296902(P2006−296902A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125847(P2005−125847)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(305010300)
【Fターム(参考)】