説明

履物用吊下具

【課題】 収納効率を高めることができながらも、位置合わせなどの煩わしい作業を不要にでき、しかも傷付けることのない履物用吊下具を提供する点にある。
【解決手段】 上方に突出する状態で備えさせた吊り下げ部4にて吊り下げた状態で、左右一組の履物1,1をそれぞれの踵が下方に向いた状態で該履物の底面を載置支持する縦向きの載置部5と、該載置部5の下端からほぼ水平方向に延出されて前記履物の踵を接当支持する支持部6とからなる側面視ほぼL字状の本体7と、該本体7に載置された履物1,1の爪先側部分を上方から載置面側へ押し付けて前記載置部5に該履物1,1を保持させるための保持部材8とを備えさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴やサンダルあるいは下駄などの履物を吊り下げて保管したり、店頭などに展示する場合に使用するための履物用吊下具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記履物用吊下具としては、例えばフックの下端に備えさせた一対の挟持部材にて、左右一対の靴をそれらの靴底が水平方向で並んだ(揃えた)状態の各靴の内面同士を挟み込んで保持させ、それら挟み込んだ靴を覆うカバーを備えさせて、ロープや鴨居などにフックを係止することにより靴を屋内の上部空間に保管するように構成した靴用ハンガーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−224156号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の靴用ハンガーでは、フックから下方へ垂下させた左右一対の挟持部材にて左右一対の靴を揃えた状態で挟み込んで保持させる構成であるため、水平方向に大きなスペースを必要とし、収納効率が低いものであった。
又、左右一対の靴のそれぞれの靴底面が上下方向において面一状になるように位置合わせを行ってから、一対の挟持部材にて挟持させて固定する構成であるため、挟持固定する作業が面倒であった。
又、挟持部材による挟持力のみで左右一対の靴を保持する構成であるため、挟持力をある程度大きくしなければならず、靴によっては傷付けてしまうことがあった。
【0004】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、収納効率を高めることができながらも、位置合わせなどの煩わしい作業を不要にでき、しかも傷付けることのない履物用吊下具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題解決のために、上方に突出する状態で備えさせた吊り下げ部にて吊り下げた状態で、左右一組の履物をそれぞれの踵が下方に向いた状態で該履物の底面を載置支持する縦向きの載置部と、該載置部の下端からほぼ水平方向に延出されて前記履物の踵を接当支持する支持部とからなる側面視ほぼL字状の本体と、該本体に載置された履物の爪先側部分を上方から載置面側へ押し付けて前記載置部に該履物を保持させるための保持部材とを備えさせて、履物用吊下具を構成した。
載置部と支持部とで履物を支持させることによって、これら載置部と支持部とからなる本体に載置された履物の爪先側部分を保持部材にて上方から載置面側へ押し付けるだけで、本体に履物を保持させることができる。又、縦向きの載置部に履物をそれぞれの踵が下方に向いた上下姿勢で保持する構成とすることによって、靴底面が水平方向となる状態で保持するものに比べて水平方向でのスペースを小さくすることができる。
【0006】
前記保持部材を、前記載置部の上下方向中間部の左右方向両端を該載置部に載置された履物の上方を通って連結する連結部と、該連結部の左右方向ほぼ中央部から上端側へ延出された延出部と、該延出部を任意の位置まで引っ張って前記載置部に固定することにより該連結部にて履物を締め付け固定するための固定手段とから構成してもよい。
【0007】
前記固定手段を、前記延出部の延出端を履物の載置面となる前面から後面に貫通可能な貫通孔と、該貫通孔に挿入された該延出部の延出端側に形成した複数の被係止部に選択的に係止して該延出部の延出端側を係止固定するための係止部とから構成してもよい。
【0008】
前記延出部が、弾性体からなり、該延出部を引っ張って前記載置部に固定することにより前記固定手段を構成してもよい。
【0009】
前記支持部を、前記載置部に対して上下移動自在に構成し、該支持部を該載置部の任意の位置で固定及び固定解除自在な固定手段を備えさせて実施してもよい。
【発明の効果】
【0010】
載置部と支持部とで履物を支持させることによって、これら載置部と支持部とからなる本体に載置された履物の爪先側部分を保持部材にて上方から載置面側へ押し付けるだけで、本体に履物を保持させることができ、一対の挟持部材による挟持力にて吊り下げ支持する場合に比べて、履物に加わる固定力を小さくすることができ、固定力により履物を傷付けることを回避することができるだけでなく、履物を本体に載置して保持部材にて押し付けるだけで迅速に履物を本体に保持させることができる。又、縦向きの載置部に履物をそれぞれの踵が下方に向いた上下姿勢で保持する構成とすることによって、靴底面が水平方向となる状態で保持するものに比べて水平方向でのスペースを小さくすることができ、収納効率を高めることができる。
【0011】
延出部を任意の位置まで引っ張って載置部に固定することにより連結部にて履物を締め付け固定する構成にすることによって、延出部の引っ張り位置を変更するだけで、履物の大きさに応じて履物を本体に確実に保持させることができる。
【0012】
固定手段を、延出部の延出端を履物の載置面となる前面から後面に貫通可能な貫通孔と、貫通孔に挿入された延出部の延出端側に形成した複数の被係止部に選択的に係止して延出部の延出端側を係止固定するための係止部とから構成することによって、紐で括って固定する場合に比べて固定及び固定解除操作を容易迅速に行うことができ、操作性において有利になる。
【0013】
延出部が、弾性体からなり、延出部を引っ張って載置部に固定することにより固定手段を構成することによって、延出部の弾性復元力を利用して連結部を引っ張り付勢することができるから、固定及び固定解除操作が全く不要になり、履物を本体に載置するだけで固定することができる。
【0014】
支持部を、載置部に対して上下移動自在に構成し、支持部を載置部の任意の位置で固定及び固定解除自在な固定手段を備えさせることによって、大きくサイズの異なる履物であっても、載置部に対して支持部をそのサイズに合わせて移動させてから固定手段にて固定することで、あらゆる大きさの履物にも対応して保持することができる商品価値の高い履物用吊下具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図3に、左右一組のサンダル1,1を保持して例えば図示していないハンガースタンドなどのパイプ2に吊り下げることができる履物用吊下具3を示している。この履物用吊下具3は、上端に上方に突出する状態で吊り下げ部を構成するフック4を備えさせ、かつ、正面視(図1から見た場合)において上端がほぼ山形になったほぼ舟形状の板部材からなると共にサンダル1,1をそれぞれの踵が下方を向いた状態でサンダルの底面を載置支持する縦向きの載置部5と、載置部5の下端から水平方向に延出されてサンダル1,1の踵を接当支持する支持部6とからなる側面視ほぼL字状の本体7と、本体7に載置されたサンダル1,1の爪先側部分を上方から載置面側へ押し付けて前記載置部に該履物を保持させるための保持部材8とを備えている。前記フック4、載置部5、支持部6を、一つの部材から構成しているが、2つの部材又は3つの部材から構成してもよい。尚、前記フック4、載置部5、支持部6を構成する材料としては、合成樹脂又は紙などの軽量なものが好ましいが、金属などの材料であってもよい。図1では、載置部5の載置面がパイプ2の長手方向とほぼ直交するように(交差する方向であってもよい)フック4を備えさせることによって、パイプ2の長手方向に多数の履物用吊下具3を効率よく吊り下げることができる利点があるが、載置部5の載置面がパイプ2の長手方向とほぼ平行となるようにフック4を備えさせて実施することもできる。図1及び図3に示すKは、載置部5の下端部と支持部6の後端部との間に渡って形成された左右一対の開口であり、履物用吊下具3の軽量化を図るだけでなく、デザイン性を高めるために形成したものであるが、無くてもよい。
【0016】
前記保持部材8は、薄板状の合成樹脂製(紙製又は金属製であってもよい)のものからなり、前記載置部5の上下方向中間部の左右方向両端(図では円弧状に張り出している部分)を該載置部5に載置されたサンダル1,1の上方を通って連結するアーチ型の連結部9と、連結部9の左右方向ほぼ中央部から上端側へ延出された延出部10と、延出部10を任意の位置まで引っ張って前記載置部5に固定することにより連結部9にてサンダル1,1を締め付け固定するための固定手段11とから構成している。前記円弧状部分5A,5Aのそれぞれに、貫通孔5Kを形成し、その貫通孔5Kに挿入可能で、かつ、挿入後において容易に抜け止ることのない差込部9Sを、前記連結部9の両端のそれぞれに形成しているが、他の方法で連結部9の両端を載置部5に固定してもよい。
前記連結部9の左右方向両端の縦板部のそれぞれの下端側に所定角度(図ではほぼ90度)折り曲げられた第1補強板部9Aを備えさせ、又、該連結部9の上端を構成する水平板部の左右方向ほぼ中央部に所定角度(図ではほぼ100度)に折り曲げられた第2補強板部9Bを備えさせてあり、連結部9の補強は勿論のこと、サンダル1,1を載置していない時でも、図2に示すように連結部9が載置部5の載置面に容易に倒れ込まないように突っ張り部材として機能することができるようにしている。
【0017】
前記固定手段11を、前記延出部10の延出端を載置部5の上端側左右中央箇所にサンダル1,1の載置面となる前面から後面に貫通可能に形成された貫通孔5Bと、貫通孔5Bに挿入された延出部10に形成した複数の被係止部としての係止孔10Aに選択的に係止して延出部10を係止固定するために前記貫通孔5Kに下方から上方に向かう姿勢に形成されたほぼT字状の係止部12とから構成している。従って、サンダル1,1の大きさなどに応じて係止部12を係止する貫通孔5Kを変更することによって、サンダル1,1を確実に載置部5に保持させることができるようにしている。
前記係止部12は、貫通孔5Bの周りに貼り付けられた環状の樹脂製又は紙製あるいは金属製などからなる補強板13の上面に貼り付けられた一回り小さな寸法の環状の樹脂製又は紙製あるいは金属製などからなる板部材14の開口部のうちの下端に、上端に向かう姿勢で一体化されているが、他の構成であってもよい。
【0018】
図5に示すように、前記延出部10を、弾性体である帯板状のゴムから構成し、そのゴム10を引っ張って前記載置部5の貫通孔5Bを通して裏面に固定することにより前記固定手段11を構成することもできる。この場合には、ゴム10の引っ張り力を利用してサンダル1,1を載置部5に固定する構成であるため、固定を解除する場合には、ゴム10の引っ張り力に抗して連結部9を上方に持ち上げるだけで済み、又、サンダル1,1を載置部5に固定する場合には、ゴム10の引っ張り力に抗して連結部9を上方に持ち上げた状態でサンダル1,1を載置部5にセットし、連結部9から手を離すことにより、ゴム10の引っ張り力にて連結部9をサンダル1,1に押し付けて固定が完了するようになっている。
【0019】
図6及び図7に示すように、前記支持部6を、前記載置部5に対して上下移動自在に構成し、支持部6を載置部5の任意の位置で固定及び固定解除自在な固定手段15を備えさせて実施してもよい。つまり、サンダル1,1の踵を接当支持する左右一対の正面視においてほぼUの字状の受け部6A,6Aと、それら受け部6A,6Aの後端から上方へ立ち上げられて載置部5の下側部分を構成する縦板部6Bと、前記縦板部6Bの左右方向ほぼ中央の上端から上方に延出された所定の左右幅を有する延出板部6Cとから、前記支持部6を構成している。又、前記固定手段15は、前記延出板部6Cに上下方向に沿って形成された長孔6Nと載置部5に上下方向に沿って形成された長孔5Nとに貫通するボルト15Bと、このボルト15Bの先端に螺合されるナット15Nとから構成され、載置部5に対する支持部6の上下位置を決めてからボルト15Bとナット15Nにてその位置を固定することができるようになっている。そして、前記載置部5の下側でかつ左右方向ほぼ中央箇所に前記延出板部6Cが入り込むための凹部5Sを形成し、その凹部5Sを形成する左右両端に、前記延出板部6Cの左右両端に上下方向に所定間隔を置いて形成された多数の被係止部(ほぼU字状の凹部)6Eに係止可能な係止部(先端が円弧状の突起)5Eを上下方向に所定間隔を置いて形成している。従って、被係止部6Eと係止部5Eとの係止作用により、前記ボルト15Bとナット15Nとの螺合が緩んだ場合でも載置部5に対する支持部6の上下位置が不測に変更されることがないようにしている。尚、前記載置部5に対して前記支持部6の上下位置を変更する場合には、ナット15Nを緩めてから、支持部6を前方に移動させることにより、被係止部6Eと係止部5Eとの係止を解除した後、支持部6を上下方向に移動させて上下位置調節を行ってから、支持部6を載置部5側へ移動させることにより、被係止部6Eを係止部5Eに係止させ、ナット15Nを締め付けて上下位置調節が完了するのである。前記載置部5及び支持部6の上下位置の両方に長孔5N,6Nを備えさせることにより、載置部5に対する支持部6の上下位置調節範囲を大きくすることができるが、いずれか一方にのみ長孔を備えさせて実施することもできる。図6に示す16は軽量化を図るだけでなく、デザイン性を高めるために形成したUの字状の切欠きであるが、無くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】履物用吊下具の正面図である。
【図2】履物用吊下具の側面図である。
【図3】履物用吊下具の斜視図である。
【図4】3種類の固定位置を示した履物用吊下具の側面図である。
【図5】別の履物用吊下具の斜視図である。
【図6】別の履物用吊下具の分解斜視図である。
【図7】図6で示した履物用吊下具を組み付けた斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 サンダル(履物)
2 パイプ
3 履物用吊下具
4 フック
5E 係止部
5A 円弧状部分
5S 凹部
5K 貫通孔
5B 貫通孔
5 載置部
5N 長孔
6N 長孔
6C 延出板部
6 支持部
6B 縦板部
6E 被係止部
6A 受け部
6N 長孔
7 本体
8 保持部材
9S 差込部
9A,9B 補強板部
9 連結部
10 ゴム(延出部)
10A 係止孔
11 固定手段
12 係止部
13 補強板
14 板部材
15N ナット
15B ボルト
15 固定手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に突出する状態で備えさせた吊り下げ部にて吊り下げた状態で、左右一組の履物をそれぞれの踵が下方に向いた状態で該履物の底面を載置支持する縦向きの載置部と、該載置部の下端からほぼ水平方向に延出されて前記履物の踵を接当支持する支持部とからなる側面視ほぼL字状の本体と、該本体に載置された履物の爪先側部分を上方から載置面側へ押し付けて前記載置部に該履物を保持させるための保持部材とを備えさせたことを特徴とする履物用吊下具。
【請求項2】
前記保持部材を、前記載置部の上下方向中間部の左右方向両端を該載置部に載置された履物の上方を通って連結する連結部と、該連結部の左右方向ほぼ中央部から上端側へ延出された延出部と、該延出部を任意の位置まで引っ張って前記載置部に固定することにより該連結部にて履物を締め付け固定するための固定手段とから構成してなる請求項1記載の履物用吊下具。
【請求項3】
前記固定手段が、前記延出部の延出端を履物の載置面となる前面から後面に貫通可能な貫通孔と、該貫通孔に挿入された該延出部の延出端側に形成した複数の被係止部に選択的に係止して該延出部の延出端側を係止固定するための係止部とから構成してなる請求項2記載の履物用吊下具。
【請求項4】
前記延出部が、弾性体からなり、該延出部を引っ張って前記載置部に固定することにより前記固定手段を構成してなる請求項2に記載の履物用吊下具。
【請求項5】
前記支持部を、前記載置部に対して上下移動自在に構成し、該支持部を該載置部の任意の位置で固定及び固定解除自在な固定手段を備えてなる請求項1〜4のいずれかに記載の履物用吊下具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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