説明

岩盤植栽方法

【課題】 植栽ポットを大径化したり長尺化することなく保水性と保肥性を確保でき、植栽作業が容易であり、植栽ポットの製造コストが上昇することがない岩盤植栽方法の提供。
【解決手段】 隣接し互いに連結された3本のポット挿入穴40A、40B、40Cを岩盤30の植栽面32にさく孔し、ポット挿入穴40A、40B、40Cによって植栽穴38を形成する。苗木60を入れた筒状の植栽ポット54を苗木ポット52とし、肥料64を入れた植栽ポット54を肥料ポット54とし、苗木ポット52をポット挿入穴40Bに挿入し、肥料ポット54をポット挿入穴40A、40C挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤に苗木又は種子を植え込み植栽する岩盤植栽方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路工事等で生じる法面に植物を植栽して、法面を緑化し、法面の崩壊を防止することが行われている。一般に用いられる植栽方法として吹付け工法がある。吹付け工法では、植栽面に土や肥料等の植栽基盤材とともに植物の種子を吹付け、植栽面で植物を発芽させ育成する。植栽面が盛土をした法面や地盤を開削した法面である場合、植栽面の土壌が柔らかく、保水性や保肥性も良いので、種子の発芽、育成に適した環境となっている。しかし、植栽面が法面であるので、吹き付けた植栽基盤材及び種子が降雨等によって流失するおそれがあり、植物を確実に育成できるとは限らない。また、吹付け工法は種子を植栽面に散布するので、苗木を植栽できない。
【0003】
そこで、植栽面である法面に植物を種子から確実に育成可能とし、また、苗木の植栽をも可能とする植栽方法が提唱されている(特許文献1参照)。図11にこの植栽方法を示す。苗木60を植栽面である法面36に植栽する場合、法面36にポット挿入穴39を形成し、古紙と肥料とフライアッシュとを含有する筒状の植栽ポット50に苗木60を土62とともに入れ、ポット挿入穴39に植栽ポット50を埋め込む。苗木60は植栽ポット50によって法面36で安定して保持される。
【特許文献1】特開2003−0826694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
岩盤を開削した法面を植栽面として苗木を植栽する場合、岩盤である植栽面は保水性や保肥性が非常に悪く、種子の発芽、育成や苗木の育成にとって劣悪な環境となっている。
岩盤の植栽面にポット挿入穴を形成し、苗木と土を入れた植栽ポットをポット挿入穴に挿入する場合、苗木が岩盤に根付くためには、苗木が植栽ポット内である程度成長し、根を岩盤に抗って根を進入させるに足りる成長力を蓄える必要がある。しかし、植栽ポットを一般の土壌に挿入する場合と異なり、岩盤から植栽ポットに水分や肥料が補給されることはないので、植栽ポットに入れられた苗木は水分と肥料が不足する。
【0005】
また、ポット挿入穴の容積が小さいと、苗木が植栽ポット内で成長する過程において、根が岩盤へ侵入可能となる程の充分な強さを得るまで成長するための成長空間が確保できないので、苗木の根がポット挿入穴内でループ状に絡まりあって根巻きを発生し、苗木の成長が妨げられ、苗木が岩盤に根付きにくくなる。
ポット挿入穴を大径化するか長尺化し、植栽ポットをも大径化するか長尺化すれば、ポット挿入穴と植栽ポットの容積が大きくなり、苗木が吸収する水分と肥料の量が多くなるとともに、根の成長空間が充分確保できるので、根巻きの発生を防止できる。
【0006】
しかし、ポット挿入穴と植栽ポットを大径化するか長尺化する場合、以下の問題を生じる。
ポット挿入穴を岩盤の植栽面にさく孔する際、さく孔装置を用いるが、大径のポット挿入穴をさく孔するためには大掛かりなさく孔装置が必要であり、植栽ポットのハンドリング性も悪くなる。特に、法面のような足場の悪い場所では、大径のポット挿入穴のさく孔作業と大径の植栽ポットの埋め込み作業が困難になる。また、植栽ポットを製造する際、スラリー状の原料を型入れし、圧縮成型し、乾燥する製造設備が必要であるが、大径の植栽ポットを製造するためには大規模な製造設備が必要となり、植栽ポットの製造コストが上昇する。
【0007】
ポット挿入穴と植栽ポットを長尺化する場合も、これらを大径化する場合と同様の問題が生じ、長尺のポット挿入穴のさく孔作業と長尺の植栽ポットの埋め込み作業が困難になり、長尺の植栽ポットの製造コストが上昇する。これらの問題に加えて、長尺の植栽ポットは細長いので、強度不足を生じて破損しやすい。また、法面での開口面積が小さいので、雨水が植栽ポット内に入りにくく、苗木に充分な水分を供給できないという問題を生じる。
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、植栽ポットを大径化したり長尺化することなく保水性と保肥性を確保でき、植栽作業が容易で、植栽ポットの製造コストの上昇を伴わない岩盤植栽方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る岩盤植栽方法は、隣接するポット挿入穴同士が互いに連結されてなる植栽穴を岩盤にさく孔し、苗木又は種子と肥料とを入れた植栽ポットを植栽穴に挿入する。
請求項1の発明によると、苗木又は種子と肥料とが入った植栽ポットを岩盤にさく孔した植栽穴に挿入するので、苗木又は種子と肥料とが植栽ポットによって岩盤に安定して保持される。
【0009】
隣接して互いに連結されたポット挿入穴を岩盤に順次さく孔することによって、植栽穴が岩盤に形成される。複数のポット挿入穴が植栽穴を形成するので、植栽穴の容積を大きくするにはポット挿入穴の数を増やせばよく、個々のポット挿入穴の径を大径化したり長尺化する必要がなく、大掛かりなさく孔装置を用いる必要もない。互いに連結するポット挿入穴の数や配置を調整することにより、植栽穴の容積を調整でき、植栽穴に挿入される植栽ポットと大気の接触面積をも調整できるので、植栽する植物の種類に応じて植栽穴の形状を選定でき、様々な植物を岩盤に植栽可能となる。
【0010】
ポット挿入穴の数を増やして植栽穴の容積を大きくすると、植栽穴に挿入される植栽ポットの容積も大きくなる。したがって、植栽ポットに苗木や種子の成長に必要な量の肥料を入れることができ、苗木や種子に充分な肥料を供給できる。また、隣接するポット挿入穴同士を連結して植栽穴としているので、ポット挿入穴の数を増やすことによって、法面での開口面積が大きくなり、雨水が植栽ポットに入りやすく、苗木や種子に充分な水分を供給できる。
苗木は大きな容積の植栽ポット内で根の成長空間を充分確保し、水分と肥料を充分吸収する。苗木が植栽ポット内で成長し、根が岩盤へ侵入可能となる程の充分な強さを得てから、根が岩盤内に進入してしっかりと根付く。
【0011】
請求項2の発明に係る岩盤植栽方法は、請求項1記載の岩盤植栽方法であって、植栽穴を形成するポット挿入穴の1つに苗木を入れた植栽ポットを挿入するとともに、残りのポット挿入穴に肥料を入れた植栽ポットを挿入する。
請求項2の発明によると、植栽穴を形成するポット挿入穴の1つに苗木を入れた植栽ポットを挿入し、残りのポット挿入穴に肥料を入れた植栽ポットを挿入するので、植栽ポットは各ポット挿入穴にそれぞれ挿入可能な大きさであればよい。したがって、ポット挿入穴の数が増えて植栽穴の容積が大きくなっても、植栽ポット単体の容積を大きくする必要はなく、植栽ポットを大型化した製造装置によって製造する必要もない。
【0012】
植栽穴を形成するポット挿入穴の数や配置の調整を行って植栽穴の容積や形状が変わっても、各ポット挿入穴には同じ容積と形状を有する植栽ポットを挿入可能であり、様々な容積や形状を有する植栽ポットを製造して準備する必要はない。したがって、容積の大きな植栽穴を形成する場合であっても、植栽ポット単体の容積を大きくする必要がなく、植栽ポットの製造コストが上昇することはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る上記岩盤植栽方法によれば、植栽ポットを大径化したり長尺化することなく保水性と保肥性を確保でき、植栽作業が容易であり、植栽ポットの製造コストが上昇することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を図1〜図7を参照しつつ説明する。
図1に示すさく孔装置1は、さく岩機10、ガイドシェル12、マウンチング14を有する。クローラドリル車両等の建設機械のアーム先端にマウンチング14を介してガイドシェル12が装着され、ガイドシェル12にさく岩機10が搭載されている。
さく岩機10のロッド16がガイドシェル12の先端側のセントラライザ18を貫通し、ロッド16の先端にビット20が装着されている。また、ガイドシェル12の先端に円柱状のガイド22が装着されている。ガイド22の直径はビット20の直径よりもやや小さく、ビット20がさく孔したポット挿入穴40にガイド22を挿入可能となっている。ガイド22の外周面のうちロッド16に対向する部分が、軸方向に上下に連続する切り欠き面24となっている(図1及び図2を参照)。切り欠き面24とロッド16の中心との距離Lはビット20の半径Rよりもやや大きく、ロッド16の中心とガイド22の中心との間の距離Lは2Rよりも小さい。
【0015】
まず、図3及び図4を参照しつつ、岩盤30の植栽面32に植栽穴38をさく孔する手順について説明する。植栽面32の植栽予定位置までさく孔装置1を動かし、1本目のポット挿入穴40Aのさく孔予定位置直上にビット20を移動させる(図3(i)を参照)。さく岩機10をガイドシェル12上で前進させつつ、ビット20によってポット挿入穴40Aをさく孔する(図3(ii)を参照)。さく孔されるポット挿入穴40Aの直径はほぼ2Rとなる。ポット挿入穴40Aをさく孔したら、さく岩機10をガイドシェル12上で後退させ、ポット挿入穴40Aからビット20を引き出す(図3(iii)を参照)。
【0016】
ポット挿入穴40Aからビット20を引き出したら、ガイド22がポット挿入穴40Aの直上にくるまでさく孔装置1を動かし、ガイドシェル12をスライドさせてガイド22をポット挿入穴40Aに挿入する(図4(i)を参照)。そして、さく岩機10をガイドシェル12上で前進させつつ、ビット20によってポット挿入穴40Aに隣接する2本目のポット挿入穴40Bをさく孔する(図4(ii)を参照)。さく孔されるポット挿入穴40Bの直径はポット挿入穴40Aの直径と同じほぼ2Rであり、ポット挿入穴40Aの中心とポット挿入穴40Bの中心との距離は2Rよりも小さな距離Lとなる。ポット挿入穴40Aの内周面の一部は軸方向に連続してポット挿入穴40Bに開口し、ポット挿入穴40Aとポット挿入穴40Bがこの開口部分を介して連結されている。ポット挿入穴40Bをさく孔したら、さく岩機10をガイドシェル12上で後退させ、ポット挿入穴40Bからビット20を引き出す(図4(iii)を参照)。ポット挿入穴40Bからビット20を引き出したら、ガイドシェル12をスライドさせてポット挿入穴40Aからガイド22を引き出す(図4(iv)を参照)。
【0017】
ポット挿入穴40Aからガイド22を引き出したら、ポット挿入穴40Bをさく孔したのと同様の手順を繰り返し、ガイド22をポット挿入穴40Bに挿入し、ポット挿入穴40Bに隣接する3本目のポット挿入穴40Cをポット挿入穴40Aと反対側にさく孔する(図5を参照)。ポット挿入穴40Aとポット挿入穴40Bが連結されているのと同様に、さく孔されたポット挿入穴40Cはポット挿入穴40Bと開口部分を介して連結されている。ポット挿入穴40A、40B、40Cが互いに連結されて一列に並び、植栽穴38を形成している。
【0018】
次に、図6を参照しつつ植栽穴38に挿入する植栽ポット50について説明する。
植栽ポット50は、古紙と肥料とフライアッシュとを含む筒状体であり、スラリー状の原料を型入れし、圧縮成型し、乾燥したものである。植栽ポット50の直径は2Rよりもやや小さく、植栽穴38の各ポット挿入穴40A、40B、40Cに植栽ポット50を1本ずつ並べて挿入可能な大きさである。植栽ポット50の筒内に苗木60の根部分を土62及び肥料64とともに入れ、苗木ポット52とする。また、別の植栽ポット50の筒内に肥料64を入れ、肥料ポット54とする。
【0019】
図7に示すように、苗木ポット52を植栽穴38中央のポット挿入穴40Bに挿入し、肥料ポット54を植栽穴38両側のポット挿入穴40A、40Cにそれぞれ挿入し、苗木の植栽を終える。
植栽された苗木60は、苗木ポット52によって岩盤30の植栽穴38に安定して保持され、苗木ポット52の両隣には肥料が肥料ポット54に保持されている。したがって、降雨等があっても、植栽穴38から苗木60、土62、肥料64が流されてしまうことはない。
植栽穴38はポット挿入穴40A、40B、40Cが互いに連結されているので、雨水はポット挿入穴40A、40B、40Cからそれぞれ植栽穴38に入り、苗木60は充分な水分を得ることができる。
【0020】
植栽穴38内に植栽された苗木60は、各ポット挿入穴40A、40B、40Cに入った雨水から水分を供給されるとともに肥料ポット54から肥料を供給されて成長し、根を伸ばす。苗木60の根はポット挿入穴40Bからポット挿入穴40A、40Cに進入して伸びるので、ポット挿入穴40B内で根巻きを生じることはなく、苗木60は、根を岩盤30内に進入させるに足りる充分な成長力を蓄えるまで植栽穴38内で成長する。充分な成長力を蓄えた苗木60は根を岩盤30内に進入させ、岩盤30にしっかりと根付く。
【0021】
なお、図8の変形例1に示すように、植栽面32の傾斜に関係なく植栽穴38を形成可能であることは勿論である。
また、本実施の形態では、一列に並ぶ3本のポット挿入穴40A、40B、40Cをさく孔して植栽穴38を形成したが、植栽穴38を形成するポット挿入穴の数が3本に限定されないことは勿論である。例えば、図9の変形例2に示すように、ポット挿入穴40Aの周りに3本のポット挿入穴40B、40C、40Dをさく孔し、植栽穴38をY字状に形成することが可能である。苗木ポット52を中央のポット挿入穴40Aに挿入し、肥料ポット54を残りのポット挿入穴40B、40C、40Dにそれぞれ挿入する。
【0022】
図10の変形例3に示すように、ポット挿入穴40Aの周りに4本のポット挿入穴40B、40C、40D、40Eをさく孔し、植栽穴38をX字状に形成することも可能である。苗木ポット52を中央のポット挿入穴40Aに挿入し、肥料ポット54を残りのポット挿入穴40B、40C、40D、40Eにそれぞれ挿入する。
さらに、本実施の形態では、植栽穴38に挿入する植栽ポット50が苗木ポット52と肥料ポット54であるが、代わりに、植栽穴38に挿入する植栽ポット50を筒内に植物の種子と肥料64と土62とを入れたものとし、植栽穴38で種子を発芽させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】植栽穴をさく孔するさく孔装置の構成図である。
【図2】ビットとガイドの位置関係図である。
【図3】1本目のポット挿入穴をさく孔するための手順説明図である。
【図4】2本目のポット挿入穴をさく孔するための手順説明図である。
【図5】植栽穴の外観図である。
【図6】植栽ポット、苗木ポット及び肥料ポットの外観図である。
【図7】苗木を植栽した植栽穴の説明図である。
【図8】変形例1に係る植栽穴の外観図である。
【図9】変形例2に係る植栽穴の説明図である。
【図10】変形例3に係る植栽穴の説明図である。
【図11】従来の植栽方法の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 さく孔装置
10 さく岩機
12 ガイドシェル
14 マウンチング
16 ロッド
18 セントラライザ
20 ビット
22 ガイド
24 切り欠き面
30 岩盤
32 植栽面
34 水平面
36 法面
38 植栽穴
40、40A、40B、40C、40D、40E ポット挿入穴
50 植栽ポット
52 苗木ポット
54 肥料ポット
60 苗木
62 土
64 肥料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するポット挿入穴同士が互いに連結されてなる植栽穴を岩盤にさく孔し、苗木又は種子と肥料とを入れた植栽ポットを植栽穴に挿入することを特徴とする岩盤植栽方法。
【請求項2】
植栽穴を形成するポット挿入穴の1つに苗木を入れた植栽ポットを挿入するとともに、残りのポット挿入穴に肥料を入れた植栽ポットを挿入することを特徴とする請求項1記載の岩盤植栽方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−121917(P2006−121917A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311113(P2004−311113)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】