説明

岩盤浴に用いるペアマット、岩盤浴の方法、および岩盤浴施設

【課題】寝心地がよく、また、汗をかいた場合であっても薬草マットが破れにくい、岩盤浴に用いるペアマット(薬草マットを含む)などを提供することを目的とする。
【解決手段】岩盤浴用床4の上に敷かれる、厚み方向に多数の貫通孔が形成された弾力性のある保護マット3と、この保護マット3の上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シート2と、からなる、岩盤浴用のペアマット(2,3)とした。このとき、保護マット3に形成された多数の貫通孔の直径が、各々15〜25mmであることが好ましい。また、上記課題は、内容積が15m3以下の浴室と、この浴室の内部に設置された岩盤浴用床4と、この岩盤浴用床4の上に敷かれる、多数の貫通孔が形成された保護マット3と、この保護マット3の上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シート2と、を備えた、岩盤浴施設11によっても解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤浴に用いるペアマット、岩盤浴の方法、および岩盤浴施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
岩盤浴は、秋田県の玉川温泉、台湾の北投温泉、およびオーストリアのバドガスタイン温泉などの地熱を利用した天然のものにルーツを発している。このような天然の岩盤浴の手法は、地熱で温められた鉱石より発生する遠赤外線と地熱の作用によって体が温められるととともに、地下水に溶け込んだ植物腐葉物質が火山蒸気と共に地上に噴き出て浮遊分子となり、この浮遊分子を岩盤入浴者が体内に吸収し健康目的の癒しを得るというものである。
【0003】
一方、人工の岩盤浴はブラックシリカ等、遠赤外線・マイナスイオン効果のある鉱石等で構成される床(以下「岩盤浴用床」ということがある。)を、電気、石油又はガス等の人工的な熱源で暖め、暖まった岩盤浴用床の上に横たわって汗をかくというものである。
【0004】
岩盤浴用床の材料としては、従来より、ブラックシリカ(北海道)の他、秋田県の北投石、熊本県の天照石、台湾の北投石、韓国の天寿石等の自然石が使用されることが多い。また、近年ではこのような自然石のみならず、人工的に製造された安価なセラミックスも使用されている。
【0005】
このような岩盤浴の効果として、遠赤外線放射エネルギーによる温熱効果、微弱放射線放射エネルギーによるホルモン分泌促進効果、汗腺と皮脂腺からの発汗効果、これら効果による癒し効果などが知られている。
【0006】
また、癒し効果を増すため、岩盤浴をする浴室内に、音楽を流し、香りを発生させ又は蒸気を発生させたり、薬草やハーブ等の植物を天井壁より吊すなどの工夫が行われている。
【0007】
ここで、本願出願人が出願した下記特許文献1には、「岩盤浴用石板の表面上に敷き使用する敷きマットにおいて、薬草の成分を発散する薬効体から構成したマットである事を特徴とした岩盤浴専用薬草マット」が記載され、これによって、「本考案の薬草マットを上記の岩盤床の上に敷き、薬草の成分も発散させる事で人の心身に対する薬草による癒し効果も得ることを可能とする」とある。また、「使い捨てを想定した薬草マットで有る為、一回限りの使用に依り薬草癒しパワーの効果は良く、清潔で、使用後の処分も環境に優しい処分が可能である」ともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3118345号(請求項1、考案の効果、段落0030)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1に記載された岩盤浴専用薬草マットは、薬草による癒し効果増強の効果を得ることができるものの、岩盤浴用床の上に直接敷くため、寝心地があまり良くなかった。また、薬草マットを岩盤浴用床の上に直接敷いた場合、汗で濡れた部分が岩盤浴用床に引っ付いてしまい、寝返りを打つなどすると、汗で濡れていない部分が岩盤浴用床の上を滑って、汗で濡れた部分との境界付近から薬草マットが破れてしまうことがあった。
【0010】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、寝心地がよく、また、汗をかいた場合であっても薬草マットが破れにくい、岩盤浴に用いるペアマット(薬草マットを含む)などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の岩盤浴用のペアマットは、岩盤浴用床の上に敷かれる、厚み方向に多数の貫通孔が形成された弾力性のある保護マットと、この保護マットの上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シートと、で構成される。
【0012】
この岩盤浴用のペアマットは、弾力性のある保護マットにより、岩盤浴入浴者の寝心地をよくすることができる。
また、保護マットの厚み方向に多数の貫通孔が形成されていることにより、和紙シートが貫通孔に沿って適度に窪んで和紙シートが保護マット上を滑りにくくなるため、入浴時に寝返りを打つなどした場合であっても、和紙シートが破れにくい。
さらに、保護マットの厚み方向に多数の貫通孔が形成されていることにより、熱せられた岩盤浴用床より発生する放射熱や遠赤外線が和紙シートに伝わりにくくなる現象を抑えることができ、和紙シートに含まれている薬草の破断片が活性化しやすくなる。
【0013】
このとき、保護マットに形成された多数の貫通孔の直径が、各々15〜25mmである、岩盤浴用のペアマットとすることができる。
【0014】
この岩盤浴用のペアマットは、入浴時に寝返りを打つなどした場合であっても、より一層、和紙シートが破れにくくなる。保護マットに形成された多数の貫通孔の直径が、各々15mm以上であることにより、和紙シートが貫通孔に沿って窪みやすくなるため和紙シートが保護マット上を更に滑りにくくなり、より一層、和紙シートが破れにくくなる。一方、前記多数の貫通孔の直径が、各々25mm以下であることにより、貫通孔の縁に沿って和紙シートが破れる現象を押さえることができるため、より一層、和紙シートが破れにくくなる。保護マットに形成された多数の貫通孔の直径は、各々概ね20mmであることが最も好ましい。
【0015】
また、上記課題は、岩盤浴用床の上に、上記ペアマットを敷き、このペアマットの上(和紙シートの上)にのって岩盤浴をする、岩盤浴の方法によっても解決される。
【0016】
また、上記課題は、内容積が15m3以下の浴室と、この浴室の内部に設置された岩盤浴用床と、この岩盤浴用床の上に敷かれる、多数の貫通孔が形成された保護マットと、この保護マットの上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シートと、を備えた、岩盤浴施設によっても解決される。
【0017】
この岩盤浴施設は、内容積が15m3以下の狭い空間の浴室で構成されているため、薬草の破断片を含んだ和紙シートから発散された薬草浮遊分子の濃度が高くなり、入浴者に対する癒し効果等が更に高まる。
【0018】
このとき、保護マットに形成された多数の貫通孔の直径が、各々15〜25mmである、岩盤浴施設とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、寝心地がよく、また、汗をかいた場合であっても薬草マットが破れにくい、岩盤浴に用いるペアマット(薬草マットを含む)などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】和紙シートを示す斜視図である。
【図2】保護マットを示す一部破断斜視図である。
【図3】ペアマットを示す斜視図である。
【図4】岩盤浴施設を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を用いて本発明の岩盤浴用のペアマット、岩盤浴の方法、および岩盤浴施設を例示説明する。まず最初に、図1〜図3を用いて、本発明のペアマットを例示説明する。なお、これらの図において、説明の都合上、保護マットに形成された貫通孔の直径(内径)を実際よりも大きく表示してある。また、図4では、説明の都合上、浴室の手前側の壁を取り払った状態を示してある。
【0022】
[ペアマット]
本発明のペアマット10は、保護マット3と和紙シート2で構成されており、詳しくは、岩盤浴用床の上に敷かれる、厚み方向に多数の貫通孔が形成された弾力性のある保護マット3と、この保護マット3の上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シート2と、で構成されている。
【0023】
以下、ペアマット10を構成する保護マット3と和紙シート2について、具体的に説明する。なお、以下の実施形態はあくまで本発明を例示説明するものであって、本発明は、以下の具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0024】
1. 和紙シート
本実施形態の和紙シート2は、薬草の破断片5を含んだ和紙製である。薬草の破断片は紙漉きの主材料(例えば、セルロース等)とは別のものである。和紙シート2の大きさは、入浴者が寝た状態で体が充分受け入れられる大きさであり、例えば、縦が概ね1.9m×横が概ね0.7mとすることができる。また、和紙シート2の厚みは特に制限されないが、概ね1〜5mmとすることが好ましい。本実施形態では、厚みが概ね1mmの和紙シート2とした。
【0025】
和紙シート2は、紙漉きの主材料のセルロースに、これとは異なる薬草の破断片5(海や陸の植物の葉や茎を細かく裁断したもの)を混ぜ合わせて得られた紙漉き溶液を準備し、これを漉いて得られた和紙を所定形状に切り出したものである。薬草の破断片5としては、多種多様な植物の葉や茎を用いることができる。例えば、海の植物としては、海藻のワカメ・ヒジキ、海草のエビアマモ・スガモ等を、陸の植物としては、アロエ・柿・アシタバ・ラベンダー・ヨモギ・レモングラス・カモミール・カミツレ・ラズベリー・ユウカリ・スイカズラ・ジャスミン・スギナ・ニンニク・ローズマリー・バジル・ビワ・レッドクローバー・ダイオウ等を用いることができる。これらの植物群から選ばれる20種類以上の植物を薬草の破断片5として用いた和紙シート2とすることが、様々な効能が得られて好ましい。
【0026】
和紙シート2の製造過程においては、薬草の破断片5の原料について水洗いで農薬や不純物を除去してある。また、紙漉き後の乾燥工程を100℃以上に熱した巻き取り式のドラムで行っている。これによって、細菌類は十分に殺菌され、清潔な和紙シートとなる。なお、和紙シート2は、比較的安価に製品化が出来るため、使い捨て使用ができ、天然の植物を用いているため、畑などの肥料として再利用することもできる。
【0027】
2.保護マット
保護マット3は、ポリエチレンフォームやウレタンフォームなどの弾力性のある材料からなるマットであり、後述するように、岩盤浴用床4と和紙シート2の間に挟まれるようにして使用される。保護マット3の厚みは、5mm〜3cmが適している。厚みが5mm以上であると、寝心地がとてもよくなる。一方、厚みが3cm以下であると、比較的安価な材料費で製造できる。保護マット3の厚みは、5mm〜1cmが最も好ましい。
【0028】
また、保護マット3には、厚み方向に多数の貫通孔6が形成されている。貫通孔6は保護マット3の表裏を貫通している。本実施形態では保護マット3のほぼ全面に亘って、開口部が円形の貫通孔6を形成してある。また、隣り合う貫通孔6同士の間隔(距離)は5mm〜2cmが好ましい。本実施形態では、隣り合う貫通孔6同士の間隔を概ね1cmとした。以上のような構成により、和紙シート2が貫通孔6に沿って適度に窪んで和紙シート2が保護マット3上を滑りにくくなり、入浴時に寝返りを打つなどした場合であっても、和紙シート2が破れにくかった。
【0029】
ここで、本実施形態では、各貫通孔6の直径(内径)は、概ね20mmとした。これによって、入浴時に寝返りを打つなどした場合であっても、より一層、和紙シート2が破れにくくなる。
【0030】
[岩盤浴の方法]
次に、図4を用いて、上記保護マット3と和紙シート2で構成されたペアマット10を用いた岩盤浴の方法について説明する。
【0031】
まず、岩盤浴用床4の上に前述したペアマット(2,3)を敷く。詳細には、岩盤浴用床4の上に前述した保護マット3を敷き、その上に前述した和紙シート2を敷いて、和紙シート2の上に入浴者1が寝るなどする。そして、岩盤浴用床4を加熱手段である熱源9で40〜50℃程度に加熱するのである。
【0032】
入浴者1は、熱源9の上に設けられた岩盤浴用床4の上に敷かれたペアマット10の上(即ち、和紙シート2の上)にのり、腹ばい、仰向け、座禅スタイル、又は、立ち姿で柔軟体操など行いながら時を過ごすと、岩盤浴用床4より発生する遠赤外線・放射熱や概ね40℃に保たれた浴室内7の温度に温められ、入浴者1の身体が新陳代謝して全身の細胞が揺り動かされ、一つ一つの細胞全てが活動し、一つ一つの細胞を花の蕾が開く様に口を開かせる。そして、浴室内7に充満した薬草浮遊分子8(薬草の破断片5から放出されている成分、例えば、芳香成分など)が、開いた細胞に吸収され入浴者1の体を癒すのである。
【0033】
その結果、例えば、怪我の治りが早くなる等の効果がある。また、前屈運動では地面より20センチも届かなかった指先が、4回の入浴で手の平が地面に着くようになった入浴者もいた。
【0034】
[岩盤浴施設]
最後に、本発明の岩盤浴施設11について、図4を用いて説明する。本発明の岩盤浴施設11は、浴室と、前述した保護マット3と、前述した和紙シート2と、を備えている。
【0035】
本実施形態の岩盤浴施設11(一人用)においては、内容積が15m3以下の小さな浴室を使用する。なお、複数人用の岩盤浴施設の場合、浴室の一人当りの内容積が15m3以下とすることが適当である。本実施形態では、浴室内を天然杉材で仕上げるとともに、化学物質を含んだ接着剤等を一切用いない様にした。また、浴室内を、縦3500mm×横2000mm×高さ1900mmのサイズとした。そして、この浴室内7に設置された岩盤浴用床4と、この岩盤浴用床4を40〜50℃程度に加熱する加熱手段としての熱源9と、この岩盤浴用床4の上に敷かれる、多数の貫通孔6が形成された保護マット3と、この保護マット3の上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シート2と、を備えた構成とした。
【0036】
この岩盤浴施設は、内容積が15m3以下の狭い空間の浴室で構成されているため、薬草の破断片を含んだ和紙シートから発散された薬草浮遊分子8の濃度が高くなり、入浴者に対する癒し効果等が更に高まるのである。アトピー性皮膚炎の患者、糖尿病の患者、激しい肩こりの患者等50人に、図4の岩盤浴施設に研究体験入浴テストを行った結果、入浴した全員について、高い治癒の働きを伴い良い結果が得られている。
【0037】
最も良い結果が得られたのは、45年間ありとあらゆる治療を行ったにも関わらず症状の改善がみられなかった、ほぼ全身がアトピー性皮膚炎55歳の男性銀行員である。この男性は、30回の入浴で90%のアトピー性皮膚炎部が消えたのである。
【0038】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【0039】
例えば、本発明の岩盤浴施設には、内容積が15m3以下の既存の部屋を浴室として用いたものや、内容積が15m3を越える既存の部屋を内容積が15m3以下になるように工事又は区画し浴室として用いたものも含まれる。また、内容積が15m3を越える既存の大部屋の内部に設置される岩盤浴施設も含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 入浴者
2 和紙シート
3 保護マット
4 岩盤浴用床
5 薬草の破断片
6 貫通孔
7 浴室内
8 薬草浮遊分子
9 熱源
10 ペアマット
11 岩盤浴施設

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤浴用床の上に敷かれる、厚み方向に多数の貫通孔が形成された弾力性のある保護マットと、
この保護マットの上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シートと、からなる、
岩盤浴用のペアマット。
【請求項2】
保護マットに形成された多数の貫通孔の直径が、各々15〜25mmである、
請求項1記載の岩盤浴用のペアマット。
【請求項3】
岩盤浴用床の上に、請求項1又は2記載のペアマットを敷き、このペアマットの上にのって岩盤浴をする、岩盤浴の方法。
【請求項4】
内容積が15m3以下の浴室と、
この浴室の内部に設置された岩盤浴用床と、
この岩盤浴用床の上に敷かれる、多数の貫通孔が形成された保護マットと、
この保護マットの上に敷かれる、薬草の破断片を含んだ和紙シートと、を備えた、
岩盤浴施設。
【請求項5】
保護マットに形成された多数の貫通孔の直径が、各々15〜25mmである、
請求項4記載の岩盤浴施設。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−110221(P2011−110221A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269399(P2009−269399)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(502359264)
【Fターム(参考)】