説明

岩石からの溶出元素採取装置

【課題】酸性溶液と岩石とを実環境の状況に則して反応させることができる岩石からの溶出元素採取装置を提供する。
【解決手段】供試体20が収納される収納容器10にヒータ50を備え、ヒータ50により供試体20を実環境に応じた温度に設定し、実環境に応じた温度に設定された供試体20にCO2飽和溶解溶液を浸漬させ、これにより供試体20からの元素が溶存するCO2飽和溶解溶液をシリンジ70で採取する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種類の鉱物からなる岩石、あるいは粉末化させた岩石を溶液に浸漬させて生じる反応を検証する岩石からの溶出元素採取装置に関し、特に、二酸化炭素飽和溶解溶液と二酸化炭素を含まない溶液を浸漬させた岩石、あるいは粉末化した岩石の反応させることで二酸化炭素飽和溶解溶液が存在するために溶出する元素を検証し、二酸化炭素地中貯留における実環境への環境影響の評価に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を緩和するために様々な取り組みがなされており、例えば省エネルギー化や、二酸化炭素(以下;CO2)の排出を抑制することなどが行われている。このような取り組みの一つとして、工場や発電所等から排出されるCO2を地中に貯留してCO2の排出量を削減する技術がCO2削減の即効性ある方法と考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
CO2地中貯留の実施の際には、CO2は地下の帯水層に圧入され、帯水層に含まれる地下水は貯留されたCO2の影響により酸性のCO2飽和溶解溶液へと変化することになる。貯留されたCO2はCO2の圧入停止後においても、長期間に亘り地下に貯留され、地下水中に溶解する。CO2が地中貯留された地層、および周辺の地層に含まれる地下水は自然状態より酸性になり、周辺の岩石では化学反応が生じ、人間が利用する地下水に影響を及ぼし、人間の普段の生活へ影響が及ぶこととなる虞があるため、CO2との反応によってのみ溶出しやすくなる元素を特定すること、元素溶出メカニズムを解明することが急務の課題となっている。
【0004】
このような検討は実際に試験的にCO2を地下に圧入し、圧入を停止してから一定期間経過後に地下水を採取し、採取した地下水の組成を分析することで、地中貯留におけるCO2の影響を評価することができる。しかしながら試験的とは云え地下数百メートルにCO2を貯留し、貯留後から長期間地下水、岩石を採取しCO2の影響のみを明らかにするには多大な費用と地下水、岩石を実環境のままで採取する技術が必要となり多くの問題が発生する。
【0005】
更に、CO2地中貯留を行う場所やCO2を貯留する深度によって、地下の温度・圧力が様々であり、同種の岩石にCO2飽和溶解溶液を反応させても、温度環境の異なる場所の岩石の状態を再現することができない。このため、CO2地中貯留の際に温度や圧力の条件が異なる種々の実環境に応じて、地下の岩石からどのような有害元素が溶出するかを正確に把握できないのが現状であった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−237167号公報(請求項7等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、化学反応により岩石を構成する元素が溶出した溶液を採取できる岩石からの溶出元素採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の岩石からの溶出元素採取装置は、岩石を浸漬させる溶液が貯留される収納容器と、前記収納容器に貯留された溶液を前記収納容器外部から遮断する遮断手段と、前記岩石を浸漬させた反応溶液を前記収納容器から採取する採取手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、岩石から溶液への元素の溶出が収納容器内で再現され、溶存する元素を分析するために反応溶液が大気との接触なしに採取できる。なお、本明細書、特許請求の範囲に記載の岩石とは、固形状の岩石及び岩石を粉砕した粉末を総称したものであり、反応溶液とは岩石の元素が溶液に溶出したものである。
【0010】
請求項2に係る本発明の岩石からの溶出元素採取装置は、請求項1に記載の岩石からの溶出元素採取装置において、前記収納容器に収納された岩石及び前記溶液の温度を設定する温度制御手段を備え、前記温度制御手段は前記収納容器に収納された岩石を浸潰させる溶液の温度を環境に応じ、任意に設定することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、収納容器に収納された岩石、および溶液はこの温度制御手段により、実環境に応じた温度にプログラムにより自動で変化、維持される。これにより、収納容器に収納された岩石は、実環境の温度と同等の条件の下で溶液に浸漬されて反応を起こすため、採取した反応溶液は実環境において岩石から溶出する元素が含まれるものとなる。
【0012】
請求項3に係る本発明の岩石からの溶出元素採取装置は、請求項1又は請求項2に記載の岩石からの溶出元素採取装置において、前記岩石は、二酸化炭素を地中に貯留した場合に人間の生活環境に与える影響を調査するために二酸化炭素が地中に貯留される予定の地層、およびその周辺の地層から採取されたものであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、CO2を地中貯留する地層からCO2地中貯留の影響により地下水中に溶出する元素を調査できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の岩石からの溶出元素採取装置は、岩石を構成する元素が実環境の状況に則して溶液に溶出され、この溶液との反応で形成された反応溶液を大気との接触なしに採取、保存できる岩石からの溶出元素採取装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。図1には本発明の一実施形態例に係る岩石からの溶出元素採取装置の全体構成、図2にはCO2が地下に貯留された状態の概略断面を示してある。なお、図示の実施形態例は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0016】
図1に基づいて採取装置の全体構成を説明する。
【0017】
図1に示すように、収納容器10は内部に任意の形状の岩石、あるいは岩石を粉砕した粉(以下;供試体20)が収納されるように形成された円筒形状の容器である。供試体20は収納容器10に収納できる形状に任意に整形され、収納容器10に収納されている。収納容器10には、遮断手段としてのOリング13及び蓋11が取付けられている。Oリング13は、収納容器10の開口に取付けられ、蓋11は、収納容器10の開口を塞いだ状態で係止されている。収納容器10及び収納容器10に係止された蓋11の外周にはリング状の固定部材12が嵌合されている。なお、収納容器10及び蓋11は、耐熱・耐酸腐食の合金、例えばニッケルを主成分とするハステロイ(登録商標)で形成されている。また、Oリング13は、温度200℃まで耐えることのできるバイトンゴム(登録商標)から形成されている。
【0018】
収納容器10の底部には、攪拌子15が配置されており、攪拌子15はマグネティックスターラ(図示せず)の磁力により回動し、収納容器10に貯留された溶液乃至CO2飽和溶解溶液41(反応溶液)を攪拌する。
【0019】
メッシュ台16は、供試体20を支持するものである。具体的には、メッシュ台16は平板部材である台座部と、台座部に取付けられた複数の脚部とから構成されている。
【0020】
メッシュ台16の台座部の上面には、供試体20が載置され、台座部の下方には、攪拌子15の回動を阻害しない程度の空間が形成されている。また、台座部には、厚さ方向に貫通する貫通孔が複数個設けられており、攪拌子15により攪拌される溶液乃至CO2飽和溶解溶液41の通り道となっている。この貫通孔は、溶液乃至CO2飽和溶解溶液41の攪拌を円滑にするために設けられている。
【0021】
蓋11には配管31が挿通され、収納容器10には配管31を介してCO2ガスタンク30が接続されており、配管31にはバルブ32が介装されている。CO2ガスタンク30にはCO2ガス40が充填されておりCO2ガス40は配管31を通って収納容器10の内部に圧入される。また配管31にはバルブ32が介装されている。
【0022】
収納容器10内にはあらかじめ用意された実環境に即した溶液が貯留されており、バルブ32が開放されると、収納容器10内にCO2ガスが圧入され、当該溶液にCO2ガスが溶解してCO2飽和溶解溶液41が作成される。所定のCO2ガスが圧入された後にはバルブ32は閉止される。これにより収納容器10内部には、バルブ32を開放しない限りCO2飽和溶解溶液41の出入りができない閉鎖環境が構築される。なお、CO2ガスの溶解量はCO2ガスタンク30に取り付けられたピストンの直径とピストンの変位量をひずみゲージ式変換器によって計算する。
【0023】
収納容器10内の圧力は、CO2ガスタンク30で加圧するCO2ガス40の圧力を用いて実環境に応じた圧力に制御される。また、収納容器10には、圧力ゲージ14が取付けられており、圧力ゲージ14は、そのCO2ガス40の圧力値を測定して表示し、記録する。
【0024】
さらに、蓋11には配管71が挿通され、収納容器10には配管71を介して採取手段としてのシリンジ70が接続されている。配管71には、シリンジ70と蓋11との間に採取バルブ72が介装されている。収納容器10に蓋11が固定された状態で、採取バルブ72が開放されると、収納容器10内のCO2ガス40がシリンジ70で所定量採取されるようになっている。また、採取バルブ72が閉止された状態では、収納容器10内の供試体20及びCO2ガス40は収納容器10外部から遮断された状態に維持されている。
【0025】
そして、収納容器10には、内部に収容された供試体20の温度を実環境に応じた温度に設定する温度制御手段としての温度制御装置51が備えられている。温度の制御は収納容器10の外周のヒータ50により行われ、ヒータ50は温度制御装置51からの制御信号に基づいて任意の温度に設定され、収納容器10の供試体20の温度は所定温度に設定される。温度制御装置51が設定する供試体20の所定温度は、実環境に応じた温度と実環境前後の任意の温度が用いられる。実環境に応じた温度としては、例えば、供試体20を採掘した場所における採掘前の供試体20の温度の実測値であり、温度の影響を明らかにするために、実測値より高い温度と低い温度を用いる。
【0026】
上記構成の岩石からの溶出元素採取装置では、CO2飽和溶解溶液41に溶出した供試体20の元素を分析するために、収納容器10内で供試体20を浸漬したCO2飽和溶解溶液41が採取される。CO2飽和溶解溶液41の採取の際、排水バルブ34を閉止し、採取バルブ72を開放することで、供試体20を浸漬したCO2飽和溶解溶液41がシリンジ70により採取される。収納容器10から蓋11を取外してCO2ガス40を採取する場合では、CO2飽和溶解溶液41に不純物等が混入する虞があるが、上記採取装置では、このような混入はない。したがって、収納容器10内の供試体20から溶出した元素のみが溶存するCO2飽和溶解溶液41(反応溶液)を採取することができる。
【0027】
このように、収納容器10外部から遮断された状態で供試体20はCO2飽和溶解溶液41に浸漬されるので、供試体20とCO2飽和溶解溶液41との化学反応以外の要因によって、CO2飽和溶解溶液41の状態、例えばpHや圧力に影響が及ばない。CO2地中貯留を想定した場合、CO2地中貯留を実施し終えた後であってCO2地中貯留を想定した場所における供試体20がCO2飽和溶解溶液41に浸漬され続ける状況を収納容器10の中で再現し、そのCO2飽和溶解溶液41を採取することができる。
【0028】
また、温度制御装置51の制御によりヒータ50が所望の温度に調整され、収納容器10に収納された供試体20の温度が実環境に応じた温度に維持される。例えば、CO2地中貯留を想定した場合、想定される場所の所望の深度の温度環境に応じた温度に供試体20の温度が維持される。これにより、CO2地中貯留を想定した場所における温度環境で、供試体20の元素がCO2飽和溶解溶液41に溶出する反応状況を収納容器10の中で再現し、このCO2飽和溶解溶液41を採取することができる。
【0029】
図2に基づいてCO2地中貯留の状況を説明する。
【0030】
図2に示すように、地表から不透水層102を貫通して帯水層100に達する縦穴101(ボーリング孔)が掘削され、地上には、CO2を縦穴101に圧送する圧送装置103が設置されている。帯水層100は地下水が存在する地層であり、圧送装置103によりCO2飽和溶解溶液が帯水層100に圧送されて貯留され、不透水層102により地上への流出が阻止されている。
【0031】
例えば、工場や発電所から排出されるCO2が圧送装置103により縦穴101から帯水層100に圧送されると、CO2が地下水に溶けて酸性溶液であるCO2溶液が生成される。そして、CO2の圧送を停止後、CO2飽和溶解溶液は帯水層100に徐々に浸透して、例えば、帯水層100の縦穴101周辺の広範に亘る岩石104に影響を及ぼす。具体的には、ナトリウム(Na)やカルシウム(Ca)などの岩石を構成する典型元素と、カドミニウム(Cd)、ホウ素(B)、鉛(Pb)、砒素(As)、セレン(Se)、フッ素(F)などの遷移金属で希ガスを除く元素が岩石104からCO2溶解溶液(反応溶液)に溶出する。
【0032】
CO2を地下に貯留する場所によっては、岩石104の温度は様々であり、また、帯水層100の深度によっては、岩石104に掛かる圧力も様々である。上述した岩石からの溶出元素採取装置は、このように実環境によって異なる温度・圧力を再現して供試体20(図1参照)にCO2飽和溶解溶液を浸漬するので、岩石104を構成する元素がCO2飽和溶解溶液に溶出する化学反応が、収納容器10の供試体20により実環境に則して精度よく再現され、元素が溶存するCO2飽和溶解溶液が採取される。
【0033】
本実施形態例に係る岩石からの溶出元素採取装置により、供試体20に一定期間CO2飽和溶解溶液を浸漬した後、収納容器10から採取したCO2飽和溶解溶液は、様々な分析方法でCO2飽和溶解溶液に溶出している元素を測定できる。例えば、所定の温度・圧力条件でCO2飽和溶解溶液を浸漬した後のCO2飽和溶解溶液中に溶存するイオンを一定期間に亘り分析することで、元素の溶出し易さとその程度を判断することができる。
【0034】
さらに、このような検討は実際に貯留した帯水層100にボーリング掘削することにより地下水を採取し、採取した地下水の分析を行うことで前述した元素が溶出したことを確認することもできる。ただし、このようなボーリング掘削は地中貯留したCO2を放出させる原因ともなるため、意にそぐわない。本発明の岩石からの溶出元素採取装置を用いることで、CO2地中貯留を行う前にどのような元素がCO2の影響で溶出する可能性があるかを知ることができ、岩盤中に元素を留める方法の検討や、特に注意してモニタリングする元素の特定が可能となり、大幅な経費削減につながる。
【0035】
以上に説明した実施形態例では、CO2を地下に貯留する実環境を想定して、CO2飽和溶解溶液に供試体20を浸漬させたが、CO2地中貯留の環境を想定することのみに限定されず、地下水汚染などの原因を探る方法の一つとして実際の溶液を実際に問題とされる岩石に浸漬させて汚染の根源を探ることにも役立つ。
【0036】
上記構成の岩石からの溶出元素採取装置は溶液としてCO2溶解溶液を想定した例を挙げて説明したが、CO2を溶解させる溶液は実際の地層に含まれる地下水と同じ水質の地下水とすることができる。すなわち岩石からの溶出元素採取装置は海底下など塩水溶液に満たされた地層にCO2を貯留する実環境に応じた環境を再現することも可能である。さらに、溶液として酸性雨を想定し、酸性雨により岩石から元素が溶出する化学的風化環境など実天然現象を対象とすることも可能である。この場合においても、実環境に合わせて、反応容器10に収納された供試体20の温度や供試体20に掛かる圧力を設定するため、地表で激しく変わる温度やCO2濃度の影響を考慮して、岩石から溶出する元素を採取することができ、これにより天然現象を実環境に則して精度よく再現することができることとなる。
【0037】
これは温度制御装置51が温度を常に一定に保たせることなく、任意にプログラム制御で増減させる機構を有しており、供試体20がCO2飽和溶解溶液に浸漬されている期間に応じて変動させることが可能となっていることによる。例えば、温度を下げて国内の冬季の温度を再現し、温度を上げて国内の夏季の温度を再現することで、昼に太陽光により熱せられ、夜に温度低下する繰り返しの温度変化を模擬することで地表における通年の地下環境を再現することができる。多様な地域において、より一層現実の地下環境に則した供試体20からの元素の溶出を再現し、この元素を溶存するCO2飽和溶解溶液を採取できることが特徴となっている。
【0038】
更に、CO2ガスタンク30は、収納容器10にCO2飽和溶解溶液の温度が、地下環境に存在するCO2飽和溶解溶液の温度に事前に設定されるように単独で加熱してもよい。この場合においても、現実の地下環境に則した供試体20からの元素の溶出が再現され、この元素が溶存したCO2飽和溶解溶液を採取することができる。
【0039】
<他の実施形態例>
上述の実施形態例では、CO2溶液に岩石を浸漬させるべく一つの収納容器10を用いたが、本発明はこのような形態に限定されない。図3は、他の実施形態例に係る岩石からの溶出元素採取装置の全体構成図である。なお、上述の実施形態例と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
図3に示すように、2つの収納容器10・10Aには、それぞれ供試体20が収納されている。一方の収納容器10には実施形態1と同様にCO2ガスタンク30が接続され、他方の収納容器10Aには蒸留水タンク30Aが接続されている。蒸留水タンク30Aには蒸留水が貯留されており、収納容器10A内に蒸留水41Aを供給できるようになっている。
【0041】
かかる構成の溶出元素採取装置では、収納容器10・10Aは共に温度制御装置51により同一の温度に制御されるようになっており、また、所定の圧力が掛かるようになっている。したがって、収納容器10に収納された供試体20は、CO2飽和溶解溶液41に浸漬され、収納容器10Aに収納された供試体20Aは蒸留水41Aに浸漬される。すなわち、CO2を含む溶液による変化と、CO2を含まない溶液とを比較することができ、CO2溶液が岩石に与える影響を評価することができる。
【0042】
このように、本発明の岩石の溶出元素採取装置は、複数の収納容器を具備し、そのうち一方の収納容器では二酸化炭素を含む溶液で供試体を浸漬し、他方の収納容器では二酸化炭素を含まない溶液で供試体を浸漬することで、供試体への二酸化炭素の影響をより詳しく調査することができる。とくに、CO2飽和溶解溶液の影響により岩石104から溶出する有害元素を見積もるために、岩石からの溶出元素採取装置に係わる実験では、比較のためにCO2を含まない溶液を準備し、同一条件、同一実験で供試体20を当該溶液に浸漬させることを行う。このような比較、実験と分析をすることで、CO2の貯留が地下水中に溶出する元素に影響を与えているかどうかを直接比較することで明らかにすることができる。
【0043】
なお、各収納容器10・10Aに異なる温度を設定してもよい。例えば収納容器10を相対的に低温に、収納容器10Aを相対的に高温に設定することができる。これにより、地中の多様な温度環境をより柔軟に模擬することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、酸性溶液を岩石に浸漬させた際の反応を検証する採取装置の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態例に係る岩石からの溶出元素採取装置の全体構成図である。
【図2】CO2が地下に貯留された状態の概略断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態例に係る岩石からの溶出元素採取装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0046】
10 収納容器
11 蓋
12 固定部材
13 リング
14 圧力ゲージ
15 攪拌子
16 メッシュ台
20 供試体
30 二酸化炭素(CO2)ガスタンク
31 配管
32 バルブ
40 二酸化炭素(CO2)ガス
41 二酸化炭素(CO2)飽和溶解溶液
50 ヒータ
51 温度制御装置
100 帯水層
101 縦穴
102 不透水層
103 圧送装置
104 岩石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩石を浸漬させる溶液が貯留される収納容器と、
前記収納容器に貯留された溶液を前記収納容器外部から遮断する遮断手段と、
前記岩石を浸漬させた反応溶液を前記収納容器から採取する採取手段とを備えることを特徴とする岩石からの溶出元素採取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の岩石からの溶出元素採取装置において、
前記収納容器に収納された岩石を浸潰させる溶液の温度を設定する温度制御手段を備え、
前記温度制御手段は前記収納容器に収納された岩石を浸潰させる溶液の温度を環境に応じ、任意に設定することを特徴とする岩石からの溶出元素採取装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の岩石からの溶出元素採取装置において、
前記岩石は、二酸化炭素を地中に貯留した場合に人間の生活環境に与える影響を調査するために二酸化炭素が地中に貯留される予定の地層、およびその周辺の地層から採取されたものであることを特徴とする岩石からの溶出元素採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58442(P2009−58442A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227053(P2007−227053)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】