説明

工作機械

【課題】工作機械の前面にオペレータのための作業スペースを確保できる上、工作機械の低コスト化やコンパクト化、パレット交換時間の短縮化を実現可能な工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械に備えられたNC制御手段により、アーム35を工作機械本体方向から所定角度旋回移動させた位置であるアーム退避旋回位置(ここでは、反時計回りに75度)まで旋回させ、該位置にてロックする。すると、アーム35と工作機械本体2との間に作業スペースRが確保される。したがって、作業者は、確保された作業スペースRを利用してメンテナンス作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを載置したパレットを交換するためのパレット交換装置を備えた工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、立形マシニングセンタ等の工作機械には、段取り位置に設置され、加工前のワークを載置するパレットと、交換位置に設置され、加工済のワークを載置したパレットとを交換するためのパレット交換装置が備えられている。該パレット交換装置としては、パレットを支持するアームを、段取り位置と交換位置との間で旋回させるもの等がある。
【0003】
このような工作機械において、ワークを載置したパレットを固定するテーブルや工具が取り付けられる主軸頭等が設置されている側を前面とすると、オペレータは、工具を点検したり、初品加工に際して加工物を測定したりする際、前面側から工作機械にアクセスすることになる。一方、上述したようなパレット交換装置にあっては、パレット交換装置の設置位置も工作機械の前面側となる。したがって、オペレータが上述したような作業を行う際、パレット交換装置が邪魔となり、必要な作業スペースを確保しにくいという問題が生じていた。そこで、オペレータが作業するために必要な作業スペースを確保すべく、特許文献1に開示されているような工作機械が考案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−137137号公報
【0005】
特許文献1の工作機械は、パレット交換装置に、旋回式のアームと、旋回式のアームとの間でパレットの受け渡しが可能な伸縮式のアームとを備えている。そして、該パレット交換装置を、工作機械本体(交換位置)から所定間隔(伸縮式アームの伸縮範囲内)離して設置することにより、工作機械本体とパレット交換装置との間に作業スペースを確保したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の工作機械は、工作機械本体とパレット交換装置との間に作業スペースを設けていることに加えて、パレット交換装置に旋回式のアームと伸縮式のアームとを備えることから、工作機械が大型化してしまう。また、パレット交換に際し、旋回式のアームと伸縮式のアームとの間で、パレットの受け渡しといった動作が必要となるため、パレット交換時間(すなわち、加工時間)が遅く、生産効率が悪いといった問題を抱えている。さらに、パレット交換装置の構造が複雑であることから、工作機械の生産にかかるコストが高くなるといった問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであって、工作機械の前面にオペレータのための作業スペースを確保できる上、工作機械の低コスト化やコンパクト化、パレット交換時間の短縮化を実現可能な工作機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ワークに対しての加工を行う工作機械本体と、該工作機械本体に隣接して設けられ、パレットを載置可能なフォークを備えたアームを旋回自在に有し、ワークを載置したパレットを前記工作機械本体外の段取り位置と前記工作機械本体内の交換位置との間で交換するためのパレット交換装置とを備えた工作機械であって、前記アームの旋回動作を制御する旋回制御手段を有しており、前記旋回制御手段により、前記アームを工作機械本体方向から所定角度旋回移動させることにより、前記パレット交換装置と前記工作機械本体との間に、作業者のための作業スペースを確保可能としたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、アームに、一対のフォークを、それぞれ相反する方向に向けた状態で、且つ前記フォークの方向と直交する方向にそれぞれ所定距離だけずらした前記アームの旋回軸回りで対称となる位置に設けたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の発明において、アームを、段取り位置と交換位置との間でスライド自在に設け、フォークを工作機械本体方向に向けた前記アームをスライド移動させることで前記交換位置にあるパレットの着脱を行うことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、フォークを伸縮自在に設け、工作機械本体方向に向けた前記フォークを伸縮させて交換位置にあるパレットの着脱を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者がメンテナンス等の作業を行いたい場合、旋回制御手段によりアームを工作機械本体方向から所定角度旋回移動させれば、作業スペースを確保することができる。すなわち、工作機械本体とパレット交換装置との間に、最初から作業スペースを設ける必要がなく、工作機械のコンパクト化を図ることができる。
また、請求項2の発明によれば、アームにおいて、一対のフォークを、それぞれ相反する方向に向けた状態で、且つフォークの方向と直交する方向にそれぞれ所定距離だけずらしたアームの旋回軸回りで対称となる位置に設けている。したがって、アームを所定の旋回位置に旋回移動させた際、より広い作業スペースを確保することができる。
さらに、請求項3の発明によれば、旋回自在なアームを、段取り位置と交換位置との間でスライド自在に設けている。したがって、旋回用の機構とスライド用の機構との間でパレット受け渡し動作が必要となる従来の工作機械と比較すると、パレット交換時間の短縮を図ることができ、加工物の生産効率を向上することができる。加えて、従来の工作機械と比較して、パレット交換装置の構造が極めて簡素化されているため、工作機械の製造コストを低減することができる。
さらにまた、請求項4の発明によれば、フォークを伸縮可能に構成することで、旋回用の機構とスライド用の機構との間でパレット受け渡し動作が必要となる従来の工作機械と比較すると、パレット交換時間の短縮を図ることができ、加工物の生産効率を向上することができる。またさらに、従来の工作機械と比較して、パレット交換装置の構造が極めて簡素化されているため、工作機械の製造コストを低減することができる。加えて、アームの周囲に複数の段取り位置を設けることができ、一層の生産効率の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態となる工作機械について図面を基に説明する。尚、本実施形態では、工作機械本体をその一例である5軸制御立形マシニングセンタとして説明する。
【0011】
図1は、工作機械1を上方から見た説明図であり、図2は、工作機械1を側方から見た説明図である。尚、図1における左側を工作機械1の前面側とし、図1の左右方向を工作機械1の前後方向(Y軸方向)、図1において該前後方向と直交する方向を工作機械1の左右方向(X軸方向)、図2の垂直方向を工作機械1の上下方向(Z軸方向)として説明する。
【0012】
工作機械1は、5軸制御立形マシニングセンタである工作機械本体2とパレット交換装置3とを備えてなるものであり、パレット交換装置3は、工作機械本体2の前面側に設置されている。尚、Pは、加工前のワークを載置したパレットが配置される段取り位置であり、Qは、加工済のワークを載置したパレットが交換する際に配置される交換位置である。
【0013】
ここで、まず図3を基に、工作機械本体2を説明する。図3は、工作機械本体2の斜視説明図である。
工作機械本体2は、上述の如く5軸制御立形マシニングセンタであって、基盤となるベッド11の前面側上面には、Y軸案内面12、12が形成されている。該Y軸案内面12、12には、トラニオン構造のAC軸ユニット13がY軸方向(すなわち、工作機械1の前後方向)へ移動可能に設置されている。AC軸ユニット13は、前面が幅広なU字状に形成されたトラニオン14を備えてなるものであって、トラニオン14の左右にA軸駆動機構15、15を内蔵している。そして、トラニオン14を、A軸駆動機構15、15によって、X軸方向(すなわち、工作機械1の左右方向)に平行なA軸を中心に回転傾斜可能としている。一方、トラニオン14は、加工対象となるワークを載せたパレットを設置するためのテーブル16を備えている。該テーブル16は、トラニオン14に内蔵されたC軸駆動機構(図示せず)によって、Z軸(すなわち、垂直軸)を中心として360度旋回可能に構成されたものであって、図5に示す如く、上面にはパレットを位置決め及び固定するためのテーパコーン24、24・・が突設されている。
【0014】
また、ベッド11には、Y軸案内面12、12を跨ぐように門形構造のクロスレール17が固定されている。クロスレール17の前面には、X軸案内面18が形成されており、該X軸案内面18に、ラムサドル19がX軸方向へ移動可能に設置されている。さらに、ラムサドル19の前面には、Z軸案内面20が形成されており、該Z軸案内面20には、下端に主軸22を備えた主軸頭21がZ軸方向(すなわち、工作機械1の上下方向)へ移動可能に設置されている。
尚、各案内面上において、ラムサドル19、AC軸ユニット13、及び主軸頭21は、各案内面と平行に設置されたボールネジと、該ボールネジに連結されたサーボモータ(図示せず)とにより移動可能となっている。また、工作機械1には、NC制御手段(図示せず)が設けられており、該NC制御手段によって、AC軸ユニット13やサーボモータ等の駆動を制御する(つまり、NC制御手段は、加工制御手段としての機能を有する)。
【0015】
このように構成される工作機械本体2では、テーブル16上に固定されたワーク(パレット上に載置されている)をA及びC軸周りで回転させるとともにY軸方向へと移動させて位置決めし、工具を取り付けた主軸22をX軸及びZ軸方向へと移動させることで、多方向からの加工を可能とする。そして、オペレータは、該加工を工作機械1の前面側から監視するとともに、工具の点検や初品加工後のワークの測定といった作業(以下、まとめてメンテナンス作業と称す)も工作機械1の前面側からアクセスして行う。
尚、パレットは、テーパコーン24、24・・によってテーブル16上において精密に位置決めされるとともに、図示しないクランプ装置によってテーブル16と強固に固着される。また、工作機械1(特に、工作機械本体2)は、加工時に発生する切粉や切削水等の飛散を防止するために安全カバー等で覆われている。さらに、工作機械本体2とパレット交換装置3との間はドア23で仕切られており、ドア23の後方側に工作機械本体2のAC軸ユニット13、テーブル16等が位置している。
【0016】
次に、工作機械本体2の前方に設置されるパレット交換装置3について説明する。
パレット交換装置3は、段取り位置Pに配置され、加工前のワークを載置した前パレット(図4に示す)50aと、交換位置Q(工作機械本体2のテーブル16上)に配置され、加工済のワークを載置した後パレット(図4に示す)50bとを交換するための装置であって、その基盤となるフレーム部材31は、工作機械本体2のベッド11に図示しないボルト等により連結されている。該フレーム部材31の上面には、Y軸方向に沿ってガイド32、32が設けられている。また、ガイド32、32上には、スライド台33がガイド32、32に沿ってY軸方向へ移動可能に設置されている。スライド台33の下部には、スライド用油圧シリンダ34、34のロッドの一端が固定されており、スライド台33は、スライド用油圧シリンダ34、34の伸縮に連動して、ガイド32、32上をY軸方向に移動する。
【0017】
スライド台33の上面には、パレットを支持するフォーク36、36を備えたアーム35がZ軸周りに旋回可能に設置されており、その旋回軸はスライド台33から工作機械本体2側に突出するように設けられている。アーム35は、その旋回軸に昇降用油圧シリンダ37を内蔵しており、該昇降用油圧シリンダ37の伸縮に連動してZ軸方向に沿って上下動可能となっている。また、該アーム35は、スライド台33内の図示しないサーボモータにより図示しない歯車、減速機等を介して旋回駆動されるようになっている。一方、各フォーク36は、一対の支持爪を所定間隔(略パレットの左右幅)離して並設したものであり、パレットの左右に設けられる受け部の下側に支持爪を差し込むことで、パレットを支持するものである。また、フォーク36、36は、それぞれ相反する方向へ向けられているとともに、フォーク36、36の方向と直交する方向にそれぞれ所定距離だけずらしたアーム35の旋回軸回りで対称となる位置に設けられている。
【0018】
このように構成されるパレット交換装置3におけるアーム35の旋回動作やスライド台33のスライド動作も、工作機械1に設けられたNC制御手段によって制御される。すなわち、NC制御手段は、上述の如く、加工制御手段としての機能に加えて、アーム35の旋回動作に係る旋回制御手段や、スライド台33のスライド動作に係るスライド制御手段、アーム35の昇降動作に係る昇降制御手段等の機能を統合して有するものである。
【0019】
ここで、図4〜図6を基に、パレット交換装置3によるパレット交換動作を説明する。図4〜図6は、前パレット50aと後パレット50bとを交換する態様を示した説明図である。
NC制御手段によりパレット交換を指令すると、まず、工作機械本体2では、加工位置にあるテーブル16(後パレット50bが固定されている)を交換位置Qへと移動させる(図4(a))。具体的には、AC軸ユニット13においてA軸周り及びC軸周りを制御してテーブル16をホームポジション(初期位置であって、テーブル16が水平となる状態)に戻すとともに、AC軸ユニット13をY軸案内面12上をスライド移動させて交換位置Qへと移動させる。また、工具を取り付けられた主軸22等は、X及びZ軸案内面上を主軸頭21とともにスライド移動させて、パレット交換の邪魔とならない上方位置へと退避させる。さらに、ドア23を開く。
【0020】
一方、パレット交換装置3では、段取り位置Pに配置されている前パレット50aを一方のフォーク36に支持させるとともに、他方のフォーク36(前パレット50aを支持していない方)を工作機械本体2側へと向けた状態とする(図4(a))。そして、ドア23が開くと、スライド用油圧シリンダ34を動作させて、上記状態のままスライド台33をガイド32、32に沿って工作機械本体2側(工作機械1後面側)へとスライド移動させ、他方のフォーク36を、ホームポジションにあるテーブル16上に固定された後パレット50bの下側へと差し込む(図4(b))。ここで、工作機械本体2にて、クランプ装置をアンクランプとし、テーブル16と後パレット50bとの固定を解除する。テーブル16と後パレット50bとの固定が解除されると、パレット交換装置3の昇降用油圧シリンダ37を動作させてアーム35を上昇させ、フォーク36に後パレット50bを支持させる。
【0021】
その後、スライド用油圧シリンダ34を動作させて、スライド台33を工作機械1前面側へとスライド移動させ(図5(c))、アーム35が旋回可能な位置となると、アーム35を180度旋回させて、前パレット50aを工作機械本体2側へと向けた状態とする(図5(d))。そして、再び、スライド用油圧シリンダ34を動作させて、スライド台33を工作機械本体2側へとスライド移動させ、前パレット50aをテーブル16上方に位置させる(図5(e))。
【0022】
さらに、昇降用油圧シリンダ37を動作させてアーム35を下降させ、テーパコーン24、24・・によって前パレット50aを位置決めするとともに、クランプ装置にてテーブル16と前パレット50aとを固定する(図6(f))。そして、スライド用油圧シリンダ34を動作させて、後パレット50bが段取り位置Pに位置するまでスライド台33を工作機械1の前面側へとスライド移動させる(図6(g))。尚、パレット交換後にはドア23を閉じて、前パレット50a上に載置されたワークに対しての加工を行う。また、段取り位置Pに配置された後パレット50b上に、新たに加工前のワークが載置されて次の交換指令が出されるまで待機する。
このようにして、前パレット50aと後パレット50bとの交換は行われる。
【0023】
以上のような工作機械1に対して、たとえば工具や加工状況の点検などのメンテナンス作業が必要になった際の動作について図7を基に説明する。図7は、工作機械1において作業スペースを確保した状態を示した説明図である。
工作機械1に対して上述したようなメンテナンス作業が必要になると、NC制御手段により、アーム35を工作機械本体2方向から所定角度旋回移動させた位置であるアーム退避旋回位置(ここでは、反時計回りに75度)まで旋回させ、該位置にてロックする。すると、図7に示す如く、アーム35と工作機械本体2(ドア23)との間に作業スペースRが確保される。したがって、作業者は、確保された作業スペースRを利用してメンテナンス作業を行うことができる。
【0024】
このように構成された工作機械1によれば、作業者がメンテナンス等の作業を行いたい場合、NC制御手段によりアーム35をアーム退避旋回位置まで旋回させれば、作業スペースRを確保することができる。すなわち、工作機械本体2とパレット交換装置3との間に、最初から作業スペースRを設ける必要がなく、工作機械1のコンパクト化を図ることができる。
【0025】
また、パレット交換装置3では、旋回自在なアーム35をスライド台33に設置することにより、スライド台33とともにスライド自在としている。したがって、旋回用の機構とスライド用の機構との間でパレット受け渡し動作が必要となる従来の工作機械と比較すると、パレット交換時間の短縮を図ることができ、加工物の生産効率を向上することができる。加えて、従来の工作機械と比較して、パレット交換装置3の構造が極めて簡素化されているため、工作機械1の製造コストを低減することができる。
加えて、アーム35の旋回軸がスライド台33から工作機械本体2側へと突出するように設けられているため、アーム35を工作機械本体2内により大きく進入させることができるとともに、アーム35を退避させた際にも作業者の足元により広いスペースを確保することができる
【0026】
さらに、アーム35において、フォーク36、36を、それぞれ相反する方向へ向けるとともに、フォーク36、36の方向と直交する方向にそれぞれ所定距離だけずらしたアーム35の旋回軸回りで対称となる位置に設けている。したがって、アーム35をアーム待避旋回位置に旋回させた際、より広い作業スペースRを確保することができる。
【0027】
なお、本発明の工作機械の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、工作機械本体、パレット交換装置、スライド台、アーム、フォーク等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0028】
たとえば、パレット交換装置において、旋回自在なアームをスライド台とともにスライド自在とする代わりに、フォークを伸縮自在とした構成とすることも考えられる。該構成について、図8を基に説明する。図8は、伸縮自在なフォークを備えたパレット交換装置60を示した説明図である。尚、50はパレットであり、51はパレットの段取りを行うための段取りステーション(段取り位置)である。
【0029】
パレット交換装置61は、旋回自在な旋回テーブル62を備えたものであって、該旋回テーブル62上には、筒状に形成された一対の固定アーム63、63が固着されている。また、各固定アーム63は、固定アーム63内をスライド自在なフォーク64、64、及び各フォーク64をスライドさせるための伸縮用油圧シリンダ65、65を備えてなる。各フォーク64は、固定アーム63よりも上方へと突出しており、固定アーム63上であってもフォーク64、64上にパレット50を載置可能となっている。
尚、フォーク64と伸縮用シリンダ65とは連結されており、伸縮用シリンダ65の伸縮に連動して、フォーク64が固定アーム63内をスライド移動する。また、フォーク64、64の伸縮動作や、旋回テーブル62の旋回動作は、上記実施の形態同様、工作機械本体2側に設置されたNC制御手段により制御される。
【0030】
このようなパレット交換装置61によるパレットの交換動作を説明する。まず、所定の旋回位置において、段取り側のフォーク64、64を伸長し、所定の段取りステーション51上に設置されているパレット50をフォーク64、64にて支持する。そして、一度フォーク64、64を収縮させた後、工作機械本体2側(図8(b)においては、右側)へと旋回させる。その後、フォーク64、64を伸長して、工作機械本体2の加工位置にパレット50を載置すればよい。尚、工作機械本体2に設置されているパレットを段取りステーション52側へと移動させる態様についての説明は、段取りステーション52側から工作機械本体2側へと移動させる上記態様と同様であるため省略する。
一方、作業者によるメンテナンス作業等が必要になると、NC制御手段により、旋回テーブル62を退避旋回位置(ここでは、反時計回りに90度)まで旋回させ、該位置にてロックする。すると、旋回テーブル62(すなわち、パレット交換装置61)と工作機械本体2との間に作業スペースが確保される。したがって、作業者は、確保された作業スペースを利用してメンテナンス作業を行うことができる。
【0031】
以上のようなパレット交換装置61を備えた工作機械においても、パレット交換装置61における旋回動作により、作業者に必要な作業スペースを確保することができ、工作機械のコンパクト化を図ることができる。また、フォーク64、64を伸縮自在に備えているため、旋回用の機構とスライド用の機構との間でパレット受け渡し動作が必要となる従来の工作機械と比較すると、パレット交換時間の短縮を図ることができ、加工物の生産効率を向上することができる。加えて、従来の工作機械と比較して、パレット交換装置61の構造が極めて簡素化されているため、工作機械の製造コストを低コスト化することができる。
【0032】
さらに、フォーク64、64を伸縮自在に構成することにより、図8(b)に示す如く、旋回テーブル62の周囲に複数の段取りステーション52、52・・を設置することができる。したがって、一層の生産効率の向上を実現することができる。
【0033】
一方、上記実施の形態や変更例における工作機械本体は、実施の形態に記載の5軸制御立形マシニングセンタに何ら限定されることはなく、パレットを利用するものであれば何でも適用可能である。
また、上記実施の形態におけるパレット交換装置のアームやフォークの形状も、実施の形態に記載の形状に限定されることはなく、上記変更例に記載したような直線状のものであってもよい。
【0034】
さらに、NC制御手段を、加工制御手段としての機能に加えて、アームの旋回動作に係る旋回制御手段や、スライド台のスライド動作に係るスライド制御手段等の機能を統合したものとしているが、旋回制御手段やスライド制御手段等のパレット交換装置に係る制御手段を、加工制御手段等の工作機械本体に係る制御手段とは別に、パレット交換装置側に別途設けるように構成することも当然可能である。
【0035】
またさらに、上記実施の形態や変更例において、スライド台やフォークのスライド動作を油圧シリンダにより行うように構成しているが、ボールネジ等を利用してスライド動作させるようにしても何ら問題はない。
加えて、スライド式のアームを伸縮可能に構成する(すなわち、実施の形態に記載の構成と変更例に記載の構成とを併せて備える)ことも当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】工作機械を上方から見た説明図である。
【図2】工作機械を側方から見た説明図である。
【図3】工作機械本体の斜視説明図である。
【図4】前パレットと後パレットとを交換する態様を示した説明図である。
【図5】前パレットと後パレットとを交換する態様を示した説明図である。
【図6】前パレットと後パレットとを交換する態様を示した説明図である。
【図7】作業スペースを確保した状態を示した状態を示した説明図である。
【図8】伸縮自在なフォークを備えたパレット交換装置を示した説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1・・工作機械、2・・工作機械本体、3、61・・パレット交換装置、31・・フレーム部材、32・・ガイド、33・・スライド台、34・・スライド用油圧シリンダ、35・・アーム、36、64・・フォーク、37・・昇降用油圧シリンダ、50・・パレット、50a・・前パレット、50b・・後パレット、51・・段取りステーション、62・・旋回テーブル、63・・固定アーム、65・・伸縮用油圧シリンダ、P・・段取り位置、Q・・交換位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対しての加工を行う工作機械本体と、
該工作機械本体に隣接して設けられ、パレットを載置可能なフォークを備えたアームを旋回自在に有し、ワークを載置したパレットを前記工作機械本体外の段取り位置と前記工作機械本体内の交換位置との間で交換するためのパレット交換装置とを備えた工作機械であって、
前記アームの旋回動作を制御する旋回制御手段を有しており、
前記旋回制御手段により、前記アームを工作機械本体方向から所定角度旋回移動させることにより、前記パレット交換装置と前記工作機械本体との間に、作業者のための作業スペースを確保可能としたことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
アームに、一対のフォークを、それぞれ相反する方向に向けた状態で、且つ前記フォークの方向と直交する方向にそれぞれ所定距離だけずらした前記アームの旋回軸回りで対称となる位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
アームを、段取り位置と交換位置との間でスライド自在に設け、フォークを工作機械本体方向に向けた前記アームをスライド移動させることで前記交換位置にあるパレットの着脱を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
フォークを伸縮自在に設け、工作機械本体方向に向けた前記フォークを伸縮させて交換位置にあるパレットの着脱を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−305692(P2006−305692A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132876(P2005−132876)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】