説明

工業プロセス水中におけるバイオフィルム生成の制御

【課題】表面に隣接したバイオフィルムの生成を阻害する方法であって、該方法がバイオフィルムの生成の可能性を有する微生物の集合体にバイオフィルム阻害物質を間欠的に適用することを含む方法を提供する。
【解決手段】微生物の集合体1と連通した、水等の液体3にバイオフィルム阻害物質を導入することにより、バイオフィルム阻害物質を微生物の集合体1に適用する。バイオフィルム阻害物質は、2種の溶液、すなわちリザーバー4内の、好ましくは次亜塩素酸溶液である酸化溶液と、リザーバー6内の、好ましくはアンモニウム塩溶液であるアミン源溶液とをその場で混合することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2001年8月6日出願の米国仮特許出願第09/310,623号の利益を主張するものである。
本発明は、工業用水及び給水ラインにおけるバイオフィルムの生成の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処理櫃、パイプ、処理水貯蔵タンク、添加物タンク、フィルター、給水パイプ、又は排水パイプ等の工業用水搬送管は、表面が水に接触している場合には、しばしば水搬送管の1以上の表面を覆う成長体を有する。この成長体は実のところバイオフィルム、すなわち細胞外高分子物質ならびに種々の有機及び無機化合物のマトリックス中に埋め込まれた微生物の集合体である。過去数年間、これらバイオフィルムの性質に、学術的及び工業的研究者の双方の焦点が当てられてきた。
【0003】
バイオフィルムは単一種の微生物含む場合もあるが、典型的には、バイオフィルムは種の異なる微生物のみならず、型の異なる微生物、例えば、藻類、原生動物、バクテリア等を含む。バイオフィルムの独特な特性のひとつとして、その中にいる微生物が協同的又は相乗的に活性するということが分かってきた。したがって、例えば、表面に付着するバクテリアにより産出されたある種の酵素の活性は、プランクトン様形態、すなわち浮遊する場合のこれらのバクテリアにより産出された同一の酵素の対応する活性よりもはるかに高いことが観察されている(非特許文献1中のDavid G.Davies)。プランクトン様バクテリア及び水に接触する固体表面に付着したバクテリアにおける酵素活性の比較研究により、付着バクテリアにおける酵素活性はプランクトン様バクテリアにおけるそれよりも大きいことが示されている(非特許文献1中のM.Hoffman及びAlan W.Decho)。微生物バイオフィルム中の伝達は、例えば細胞外酵素生合成、バイオフィルム生成、抗生物質生合成、バイオサーファクタント産出、エキソポリサッカライド合成等を含むバイオフィルムの活性の誘発及び規制の原因となっており、これらの全てが複雑な生化学活性に関与している(非特許文献1中のAlan W.Decho)。バイオフィルム中の微生物間での遺伝物質の交換も観察されている。所定の工業用水環境において、バイオフィルム中に生息する微生物は、バイオフィルム外に生息する微生物よりも殺生剤からよりよく保護されていることが実験的に分かっている。したがって、集合的にバイオフィルム内に埋め込まれた微生物は、同数のプランクトン様微生物が示す特性とは異なる特性を示す。
【0004】
協同的に活性することにより、微生物の集合体は、微生物共同体として活性する。これにより、無機及び有機材料から形成されるマトリックスを構築し、したがってバイオフィルムを形成し、かつ維持することが可能となる。微生物は、成長及び増殖する単細胞生物であるので、バイオフィルム中の微生物は、その周囲にマトリックスを連続的に補給し、マトリックスを拡張し、かつマトリックスを維持する必要がある。この過程は、自分たちのために住居単位の隣接した組を構築するために一緒に活性し、かつ既存の住居を維持するだけでなく、隣接した水平方向に建築することにより、又は既存の住居の上部に垂直方向に新しい住居を加えることにより、人口の増加に順応するために付加的な住居を加える人間の集団に結びつけることができる。
【0005】
現在、科学者が最もよく理解しているところによると、バイオフィルム中の微生物間の協同的行動は、微生物間の伝達により誘発される。例えば、ホモセリン・ラクトンは、バクテリア間の伝達において重要な役割を果たす。バイオフィルムの細胞外高分子マトリックスは、化学的伝達の効率的な培地を与え、かつバイオフィルム内に埋め込まれた個々の微生物間の一層効率的な伝達を促進するように思われる。
【0006】
バイオフィルム内の微生物は、プランクトン様微生物よりも酵素の産生において一層効率的であるので、化学反応を起こすためのバイオフィルムの生成に多くの関心が払われてきた。しかし、導管、水タンク等の、工業用水及び処理水搬送管に関しては、この酵素を産生する傾向、及びより重要なことは、管の表面上に重バイオマスを形成するというバイオフィルムの性質は、非常に有害である。バイオフィルムが成長するにつれて、水の経路に沿った特定の箇所でパイプ又は他の導管の有効直径が減少したり、又は導管の流路に沿って摩擦が増加したりして、導管内の水流の抵抗が増加し、その内部の水流が減少し、導管内の水を吐出又は吸引するポンプの消費電力を増加させ、かつ生産工程の効率を低下させる場合がある。
【0007】
また、バイオフィルムは種々の薬品及び処理添加剤の品質を劣化させる。例えば、製紙業では、バイオフィルムは、ウエットエンド法においてパルプスラリーに添加されるデンプン及び炭酸カルシウムスラリーのような薬品の劣化を招く(非特許文献2中のK. Jokinen)。また、微生物は、漂白及び脱インク系における過酸化水素の劣化の減でもある。(非特許文献3)。脱インク及び漂白ミル中にH22劣化酵素が存在すると、存在しない場合に設定漂白基準に適合するために必要な量よりも多量の過酸化水素を供給する必要があり、このため生産コストが増大する。
【0008】
また、バイオフィルムはパイプ及び櫃の深刻な腐食を招き、製紙機及び板紙抄紙機に深刻な問題を引き起こし、とりわけ仕上がった紙の品質の劣化、悪臭、及び深刻な走行性の問題を招く場合がある。
【0009】
従来技術には、工業におけるバイオフィルムを制御するための種々の方法が説明されている。ひとつの取り組みとしては、機械的手段、例えば掻き取り又は音波処理によりバイオフィルムを物理的に破壊するものがある。例えば、Costersonの特許文献1には、水中に沈んだ表面からバイオフィルムを除去する方法が記載されている。この方法は、表面を水の氷点以下に冷却して、バイオフィルム中に大きく、縁の鋭利な氷結晶を発生させることを含む。次いで、凍結したバイオフィルムを解凍し、例えば表面に液体を流すことによって表面から除去する。しかし、バイオフィルムが成長する場所は近づきにくく、及び/又はバイオフィルムに到達するのに操業を停止する必要があるので、この取り組みみは多くの場合に非実用的である。
【0010】
他の取り組みとしては、化学的手段、例えばバイオフィルム・マトリックスの分解を招く界面活性剤及び洗浄剤の使用によりバイオフィルムを物理的に破壊するものがある。例えばBurgerの特許文献2には、活性硫酸還元バクテリアを含む嫌気性バイオフィルムを有する感受性金属表面の、微生物的に影響された腐食を阻止する非生物致死性である方法であって、バイオフィルムをアントラキノン化合物の分散液と接触させることを含む方法が記載されている。Fabriの特許文献3には、工業的冷却水及び処理水中に存在するバイオフィルムの除去及び制御の双方を行う方法が記載されている。この方法は、アミノ基、ホルムアルデヒド、アルキレンポリアミン、ならびに無機酸及び有機酸のアンモニウム塩の反応生成物を含む組成物を与える。この組成物を用いて、存在するバイオフィルムを処理水機器から除去することができる。さらに、より低い維持投与量を用いて、この機器を実質的にバイオフィルムの無い状態に維持することができる。Yuらの特許文献4には、工業的処理水中のバイオフィルムを分散する方法であって、バイオフィルム分散有効量の直鎖アルキルベンゼンスルホナートを、スライム形成バクテリア及び他の微生物を含有する工業的処理水に添加することを含む方法が記載されている。Yuらの発明の他の実施態様は、その文献中に挙げられた殺生剤の群から選択された化合物を、同様にその文献中に挙げられたリストから選択したバイオフィルム分散剤と共に添加することを含む。Wiersmaの特許文献5には、バイオフィルムを除去し、その下にあるバクテリアを制御することのできる、バイオフィルムの表面張力を低下させる浄化方法が記載されている。Wiersmaの発明によれば、サポニン及び食品等級の乳酸ナトリウム等の弱酸からなる溶液をバイオフィルムに接触させる。サポニンは発泡剤として作用し、バイオフィルムをほぐすことのできる表面張力の低下を与える。
【0011】
従来技術において、外部から供給される酵素によりバイオフィルム・マトリックスを退化させる取り組みが知られている。Johansenの特許文献6には、少なくとも部分的にバイオフィルム層で覆われた表面を浄化し消毒する方法であって、バイオフィルムを、バイオフィルム層を表面から完全又は部分的に除去又は剥離する1種以上の加水分解酵素を含む浄化成分と接触させるステップと;バイオフィルムを、酸化還元酵素をバイオフィルム中に存在する生きたバクテリア細胞の致死有効量で含むバクテリア消毒成分と接触させるステップとを含む方法が記載されている。外部酵素を用いた攻撃により、バイオフィルムの活性が失われ、その性質が変化する。このような取り組みは、微生物がマトリックスを維持又は拡張する能力を防ぐものである。しかし、このような取り組みは、種々の欠点、例えば処理が非常に特殊な場合があったり、結果が場所により異なる場合があったり、又は処理が費用に対する効果がない場合があるという欠点を抱えている。
【0012】
従来技術に従ってバイオフィルムを制御する際に遭遇するさらなる問題は、バイオフィルム・マトリクスが分解するにつれて、通常、水中に生細胞が放出されることにある。このような生細胞が新たなバイオフィルムを作る。同様に、バイオフィルム・マトリックスの分解が水中への酵素の放出を招き、これが実施中の工業的処理に影響を及ぼす場合がある。
【0013】
これに関しては殺生剤が有用である。工業処理水中のプランクトン様バクテリアを処理するのに殺生剤を用いることは従来技術において公知である。例えば、本発明者自身の特許文献7及び8(その内容を参照によりここに援用する。)、又はハロゲン含有酸化剤、腐食制御剤、過酸化水素、及び過酸化水素安定剤の組合せを用いて規制された水の処理を行う方法を記載したBrownらの特許文献9を参照。さらに最近、バイオフィルムを制御する取り組みに殺生剤を用いるようになっている。この目的は、時として、バイオフィルム分解酵素の供給又はバイオフィルムの物理的除去等のバイオフィルム分解技術を、処理水中のプランクトン様微生物数を低く維持することのできる殺生剤の適用とを組み合わせることによって達成されている。例えば、Eyersらの特許文献10には、(a)バイオフィルムを分解するための所定の群からの少なくとも1種の酵素、及び(b)表面上のバイオフィルムの回避及び/又は除去のための殺生剤としての短鎖グリコールを使用することが記載されている。Favstritskyらの特許文献11には、再循環水系の効率を低下させる微生物の成長を制御する方法であって、このような系に生物致死有効量の水溶性過ハロゲン化物を導入することを含む方法が記載されている。まず、過ハロゲン化物を、系の膜形成面の微生物を死滅させるのに十分な量で導入する。その後、有機ハロゲン化アンモニウムの濃度を、このような微生物の再成長を実質的に低下させるのに十分なレベルに維持する。
【0014】
あるいは、殺生剤を用いて、バイオフィルム内に埋め込まれた微生物を制御する、すなわちバイオフィルム・マトリックス内の微生物事態を根絶することが行われている。具体的には、モノクロロアミン(MCAs)と遊離塩素(FC)とは、バイオフィルム・バクテリアを消毒するのに同様の有効性を示すと言われている(非特許文献4及び5)。この取組みの難点は、上記のとおり、バイオフィルム中の微生物を根絶するには、プランクトン様微生物を根絶するのに必要な濃度の数倍高い濃度の殺生剤を必要とすること、バイオフィルム微生物と殺生剤との間の接触時間を長くする必要があること、又は殺生剤の連続的適用が必要であることが実験的に分かっていることにある。これは処理コストを増大させ、作業者を、所望の又は許容のものよりも高い殺生剤によるリスクにさらし得る。また、これは環境に対しても大きなリスクをもたらす。
【0015】
上記の方法を組み合わせて用いてバイオフィルムを制御する取り組みも従来技術において公知である。それぞれの取り組みを分離して実施した際に浮上する問題点を解決することを試みて作られた、これらの組合せの取り組みも、上記の欠点のいくつかに悩まされる場合がある。例えば、Belferの特許文献12は、生物を死滅させるために抗感染剤、防腐剤、及び抗バイオフィルム剤を、洗剤、殺菌剤、及び殺生剤として作用するために浄水剤を、汚染表面からバイオフィルムを除去する際の収斂剤及び研磨剤として、かつ殺生剤及び防かび剤として洗浄剤を、抗酸化剤及び安定剤を、汚染表面からバイオフィルムを除去するための研削剤及びクレンザーとして作用するためのスクラブ剤を、消毒剤を酸性にするための少なくとも1種のpH調整剤を、ならびに重量で消毒組成物の35.0%から50.0%の範囲の希釈剤を含み、殺菌力及びバイオフィルム浄化特性のある液状の滅菌消毒組成物を記載している。Barbeauらの特許文献13には、バイオフィルムを除去する組成物が記載されている。この組成物は、洗剤、塩又は塩形成酸、及び殺生剤を少なくとも含む。
【0016】
過酸化水素を用いてセルロース繊維を漂白する際に、微生物が顕著に影響を受けることのない方法で、過酸化水素に対する酵素の分解活性を抑制又は阻止する方法及び組成物が、Paartらの特許文献14に記載されている。この組成物は、ヒドロキシルアミン、チオシアナート塩、ギ酸、アスコルビン酸、又は亜硝酸塩を含有する。これらの物質の1種以上を用いると、ペルオキシダーゼ及びカタラーゼ等の酵素が過酸化水素を分解するのを抑制又は阻止するが、微生物には影響しないことが示唆されている。
【0017】
バイオフィルム生成の防止に関するより最近の方法は、例えばホモセリン・ラクトンの拮抗剤を用いることにより、バイオフィルム中の細胞間の化学的伝達を阻害又は防止することにある。バベルの塔に関する聖書の話のように、このような取り組みは、バイオフィルム内に含まれる微生物間の伝達を直接分断し、したがってマトリックスを補給し、拡張し、かつ維持するために活性を協同する微生物の能力を妨げ、究極的にはマトリックスの分解をもたらす。例えば、Rycroftらの特許文献15には、バクテリアのコロニー形成を制御することにより、人間又は動物におけるバクテリア感染を処理又は予防するのに用いることのできる化合物を記載している。表面からバイオフィルムを除去するのに、この化合物を用いることができる。Daviesらの特許文献16には、バクテリアの細胞−細胞伝達の自然の過程を利用することにより、微生物バイオフィルムの形成、持続及び分散を制御する方法が記載されている。細胞外酵素による処理と同様に、ホモセリン・ラクトンの拮抗剤を用いた工業用水中のバイオフィルムの処理は、非常に特殊であったり、場所により異なる結果を招いたり、又は処理が費用に対する効果がない場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0198】
以下に述べる多数の実施例を参照しつつ、且つ添付の図面も参照しつつ、本発明をより具体的に説明する。
【0199】
「デューティサイクル」という用語は、(a)バイオフィルム阻害物質又は酵素産生阻害物質が、バイオフィルの生成の可能性を有する微生物の集合体に投与される時間の合計と、(b)このような物質が、バイオフィルムの生成の可能性又は酵素の生成の可能性を有する微生物の集合体に投与されない時間の合計との間の比を意味するものとする。本発明の好適な実施態様において、バイオフィルム阻害物質又は酵素産生阻害物質は、それが産生されるに従って、バイオフィルムの生成の可能性を有する微生物の集合体と連通した水中に連続的に注入される。この好適な実施態様に関して、「デューティサイクル」とは、(a)バイオフィルム阻害物質又は酵素産生阻害物質が、それが産生されるに従って、バイオフィルムの生成の可能性を有する微生物の集合体と連通した水中に連続的に注入される時間の合計と、(b)このような物質が、バイオフィルムの生成の可能性を有する微生物の集合体と連通した水中に連続的に注入されない時間の合計との間の比を意味するものとする。したがって、バイオフィルムの生成を阻害するために、バイオフィルム阻害物質を3日に1回3時間処理水に注入する場合には、デューティサイクルは1:23となる。
【0200】
本願明細書において、「少なくとも10%のNaOHに対応する過剰の塩基」とは、次式に従うCl2及びNaOHからのNaOClの形成に基づいて計算された、1モルのCl2当たり2モルよりも多いNaOHに相当する量を含有する溶液を意味する。
【0201】
2NaOH + Cl2 → NaCl + H2O + NaOCl
【0202】
したがって、この溶液は過剰のNaOHを含有し、遊離NaOH及びNaOClで表されるNaOHの量として計算されるNaOHの合計量が少なくとも10%である。
【0203】
本願明細書において、「ウエットエンド化学」という用語は、G.A. Smook、Cegep de Trois−Rivieres、1990年によるパルプ及び紙用語ハンドブック(Handbook of Pulp and Paper Terminology)中で定義された通りであると理解されたい。Smookは、ウエットエンド化学を「微粒と添加物の、及び繊維とのこれらの相互作用の物理及び表面化学」と定義している。
【0204】
本願明細書において、「表面に付着した微生物の集合体」という用語は、集合体の一部である個々の微生物全てが表面に直接付着している必要があることを意味するものではないことを理解されたい。例えば、数個分の細胞の厚みがある微生物の集合体は、表面に直接付着している細胞からなる第1層と、最下層の上に積み重なった細胞からなる数層とを有してもよい。同様に、バイオフィルム中の微生物は、バイオフィルムが付着している表面に接触している必要はないが、バイオフィルムのマトリックス内に埋め込まれている。本願明細書の目的において、このような微生物の集合体も表面に付着した微生物の集合体と考える。
【0205】
「バイオフィルムの生成」という表現は、微生物の集合体による最初からのバイオフィルムの創成と、微生物の集合体による既存のバイオフィルムの維持又は拡張の両方を含むと理解されたい。
【0206】
本願明細書において、「耐久性表面」とは、製造中に消費されることが無く、かつ処理水に接触している、パイプ、水櫃、又は他の容器の表面等の工業的処理装置の表面を指すものである。「消耗性表面」とは、製造サイクル中に消耗され、かつ例えば紙製品として装置から排出される、処理水中に存在する繊維又は懸濁粒子の表面等の表面を指すものとする。
【0207】
工業的処理の種類によっては、消耗性表面は、耐久性表面と比べて顕著に少ない割合で装置中に存在しており、この場合には、耐久性表面を処理するのに必要な頻度又はデューティサイクルによって、処理の頻度又はデューティサイクルを決めてもよい。
【0208】
逆に、プロセスによっては、
(a)例えば処理水のいくらかが処理流に戻されて再循環する場合には、消耗性表面は比較的長期間にわたって処理装置内に存在する場合があり、
(b)消耗性表面が、その上に微生物が供給することのできるウエットエンド化学で覆われている場合があり、
(c)処理水が比較的高濃度の消耗性表面(粒子及び/又は繊維)を含有している場合があり、
(d)消耗性表面を備える粒子又は繊維が沈殿する可能性がある。
このような場合には、消耗性表面を処理するのに必要な頻度又はデューティサイクルによって、頻度又はデューティサイクルが決まるであろう。
【0209】
特に状況(c)及び(d)に関して、製紙においては、製紙業において周知なように、プラスチック又は金網を、繊維、含量及び薬剤を含有する懸濁液のシートで覆うことにより、繊維を紙に形成していき、次いで一連の工程においてシートの含水量が約8%となるまで乾燥する。「保持率」は、Smookの第191ページにより、紙形成工程において保持される製紙原料の量として定義されており、通常当初に加えられた量の百分率として表される。したがって、網により保持される繊維の割合が大きければ大きいほど、製紙工程の「保持率」が高くなる。90%の保持率は優れていると考えられる。50%の保持率は劣ると考えられる。紙の一部とならなかった繊維は、さらなる使用のために再循環される。
【0210】
保持率の低い又は劣る製紙機では、保持率の優れた機械に比べて、機械の特定の場所の繊維濃度が高い場合がある。さらに、繊維は質量に対する表面積の比が大きく、かつ製紙に用いる繊維は多孔質であり、これがさらに質量に対する表面積の比を大きくするので、(本願明細書において、消耗性表面を構成する)繊維により与えられる表面積は、機械自体により与えられる総表面をはるかに越える場合がある。さらにまた、繊維を再循環するので、繊維の一部が製紙機内に存在する有効時間は数時間又は数日程度にもなる場合がある。
【0211】
したがって、特定の理論により束縛されることを望むわけではないが、本発明者は、バイオフィルムが紙を作る繊維の表面に形成される可能性があり、また、繊維が互いに接着する能力が許容可能な品質の紙の形成に不可欠であり、かつ繊維上にバイオフィルムが存在するとこのような接着を妨げるので、このようなバイオフィルムの存在が紙の製造に有害な影響を有すると考えている。また、繊維間の接着が弱いと、このような繊維が沈殿する可能性が増加する。さらに、製紙工程のウエットエンド化学にデンプン又は糖等のある種の薬品を使用することにより、これらの薬品が繊維上でのバイオフィルムの成長を促進し得るので、繊維上にバイオフィルムが形成という問題が悪化する場合がある。
【0212】
図1に示す装置は、図において2で概略的に示される箇所に位置する表面に付着した微生物の集合体1に、バイオフィルム阻害物質を供給する。この場所は、例えば水を搬送する導管又は製紙機の一部であり、表面は、前記して定義した耐久性表面又は消耗性表面とすることができる。微生物の集合体1と連通した、水等の液体3にバイオフィルム阻害物質を導入することにより、バイオフィルム阻害物質を微生物の集合体1に適用する。バイオフィルム阻害物質は、2種の溶液、すなわちリザーバー4内の、好ましくは次亜塩素酸溶液である酸化溶液と、リザーバー6内の、好ましくはアンモニウム塩溶液であるアミン源溶液とをその場で混合することにより形成される。
【0213】
図1に示すように、水、例えば水道水は、水源8から、水パイプ10を介し、互いに平行に連結された1対の分岐ライン12、14を通って、液体3を場所2に導く共通排出パイプ16に送るミキサーに供給される。2つの平行な分岐ライン12、14のそれぞれが、それぞれ分岐ライン12、14に連結された吸入ポート18a、20a、及び微生物の集合体と連通する液体に通じる共通排出ライン16につながるミキサー21に連結された排出ポート18b、20bを有するベンチュリ管18、20を含む。ベンチュリ管18、20のそれぞれが、排出ライン16を流れる水に添加されるべき溶液のそれぞれのリザーバー4、6に通じる第3のポート18c、20cを含む。
【0214】
したがって、2つのベンチュリ管18、20は、リザーバー4からの酸化剤溶液、及びリザーバー6からのアミン源溶液の双方を、バイオフィルム阻害物質の最適な形成のために予め決められた比で、水源8からの水に連続的かつ同時に注入する投薬ポンプを構成する。これら2つの薬品は、ミキサー21内で混合され、排出パイプ16に供給するミキサー21内で互いに反応するため、反応生成物、すなわちこれら2つの薬品の反応により生成されたバイオフィルム阻害物質が、その場で生成され、液体3内に導入される。
【0215】
2つのベンチュリ管18、20に対する2つの分岐ライン12、14は、水の流速を2つのベンチュリ管18、20を介して制御可能にする制御弁22、24を含む。2つのリザーバー4、6をそれぞれのベンチュリ管18、20とつなぐライン26、28も、30、32で示される、ベンチュリ管を通る水への薬品の投薬を制御するための弁を含む。また、後者の弁は、薬品の供給を、バイオフィルム阻害物質の導入の最後に終了することも可能にするので、分岐ライン12、14、ミキサー21、及び排出ライン16を通る水の連続した流れにより、これらの薬品の残留物、又はその分解生成物を洗い流し、各バイオフィルム阻害物質産生周期の終わりに形成され得る分解生成物が排出ライン16又はミキサー21内に蓄積するのを防止する。
【0216】
前者の弁の制御は、ブロック40により概略的に示される制御システムによって行われる。バイオフィルム阻害物質が分解するにつれて、バイオフィルム阻害物質のpHが減少する。したがって、排出ライン16も、バイオフィルム阻害物質のpHを検出し、これに応じて制御システム40を制御するpHセンサー47を含むことができるし、含むことが好ましい。
【0217】
制御システム40も、電磁弁48を介して水源8からの水の供給を制御する。さらに、制御システム40は、アラーム50又は他の信号デバイスを制御することができる。図示したシステムは、さらに排出ライン16を介して微生物の集合体と連通する水にバイオフィルム阻害物質を供給する時間と、バイオフィルム阻害物質のこうした供給の間隔の双方を固定するよう設定可能なタイマー52を含んでもよい。
【0218】
水源8から2つの分岐ライン12、14への給水ライン10は、さらなる制御弁を含んでもよい。説明のために、添付の図では以下の付加的制御デバイスを概略的に図示している。すなわち、水源8からの水流の手動制御を可能にする手動制御弁53、水源からの圧力を低減するための減圧器54、制御システム40への入力としても用いることのできる圧力センサー56、流速又は流量を表示するための流量計58、ライン10内の圧力を表示するための圧力計60、圧力逃し弁62、及び逆止弁64である。
【0219】
2つの溶液の粘度が異なるかもしれないが、好ましくは、2つの供給源4、6から同容量の溶液を同時に供給するように、2つのベンチュリ管18、20、及びそれらの制御器を作る。図示のシステムは、一定の所定水圧、及び2つの分岐ライン12、14を介して2つのベンチュリ管18、20を流れる水に対する2つの溶液の所定希釈度の一定比で運転される。これらのパラメーターのそれぞれを、上記のようにして制御することができるので、2つの供給源4、6からの溶液は同時に、かつ同時に、互いに対して、また水源8からベンチュリ管18、20を流れる水に対しても、所望の所定比で注入される。
【0220】
先に示したように、リザーバー4内の溶液は酸化剤溶液であり、リザーバー6内の溶液はアミン源溶液である。好ましくは、後者はアンモニウム塩の溶液、好ましくは臭化アンモニウムもしくは塩化アンモニウム又はこれらの混合物の溶液、最も好ましくは臭化アンモニウムの溶液である。酸化剤溶液は、好ましくは次亜塩素酸カルシウム又は次亜塩素酸ナトリウムの溶液であり、最も好ましくは次亜塩素酸ナトリウムの溶液である。好ましくは、バイオフィルム阻害物質は臭化物で活性化したクロラミンである。
【0221】
好ましくは、バイオフィルム阻害物質は、液体3に注入する直前で、少なくとも8.5、好ましくは少なくとも9.5のpHを有する。好ましくは、バイオフィルム阻害物質を一定の割合で注入し、バイオフィルム阻害物質を少なくとも8.5の安定なpHに維持する。
【0222】
図2は、本発明の好適な実施態様に従うバイオフィルム阻害物質を提供するよう構築され、かつ運転される他の装置を表す。図2に示す装置は図1の装置に似ており、類似の番号は、図2のシステムの、図1のシステムと同様であり、かつ同様に操作される要素を表す。2つのシステムの原理的な相違は、図2のシステムにおいては、ベンチュリ管18、20が脈動ポンプP1、P2に置換されている点である。また、分岐ライン12、14の水がミキサー21に流れ、次いで排出ライン16に流れるにつれて、ポンプP1及びP2から吐出された液体はミキサーM1、M2で分岐ライン12、14内の水と混合されるという点を除いて、図1を参照して上で説明したシステムのベンチュリ管18、20と同様の方法により、リザーバー4、6から供給ライン26、28を通る液体を同時に計量するように、2つの脈動ポンプP1、P2も制御システム40によって制御される。
【0223】
本発明は、その好適な実施態様の以下に示す例示的かつ非制限的な実施例を通じてよりよく理解されるであろう。
【実施例1】
【0224】
(模型システムにおけるバイオフィルムの形成)
酸化殺生剤又はバイオフィルム阻害物質の存在する状態又は不存在の状態におけるステンレス鋼試験片上へのバイオフィルム形成を実験室で評価した。試験システムは、(a)それぞれ20Lの富栄養培地(推奨使用濃度から3倍に希釈したもの)を収容する3本の閉鎖フラスコ、(b)自在に吊り下げたステンレス鋼試験片を収容する3個の閉鎖セル、及び(c)、それぞれプラスチックパイプを介してフラスコの1本とセルの1個に接続された、3個の同一の循環ポンプから構成された。システムを35℃の恒温室内に置いた。
【0225】
製紙機から分離されたスライム形成バクテリアの混合菌株を含む接種材料を各フラスコに添加した。5ppm(総Cl2として表す)のブロモクロロジメチルヒダントイン(HOBr及びHOClの供給源である酸化殺生剤)の混合物(以下「混合ハロゲン」という。)を、試験期間(4日間)中、第1フラスコに1日1回添加した。図1を参照して説明したようにして、かつ特許文献7にしたがって新たに調製した(総Cl2として表して2.5ppm)、プランクトン様微生物に添加すると殺生剤としても機能することのできるバイオフィルム阻害物質、すなわち臭化物で活性化したクロラミン(以下「Fuzzicide BAC」という。)を、試験期間中、第2フラスコに1日1回添加した。2つのフラスコに対する対照の役目を果たす第3フラスコを、酸化殺生剤又はバイオフィルム阻害物質で処理した。「Fuzzicide BAC」殺生剤を、1分当たりに少量(100μl未満)を高いパルス周波数で供給することのできる、2個のラボ用脈動供給ポンプからなる特定の供給システムにより産生した。次亜塩素酸ナトリウムの脱イオン(DI)水希釈溶液(総塩素として8000ppm以下)を一方のポンプで供給した。臭化アンモニウムの希釈溶液(12500ppm)を第2ポンプで供給した。pH計を用いて形成されたバイオフィルム阻害物質の安定性を制御及び確認しつつ、短いガラスパイプ中で2つの希釈溶液を同時に混合し、バイオフィルム阻害物質の注入前溶液を形成した。バイオフィルム阻害物質は、産生されるとすぐに試験システムに供給された。バイオフィルム阻害物質の注入前溶液は、総塩素として3500〜4000ppmを含有しており、pHは9.5以下であった。
【0226】
第2日及び第4日に、各閉鎖セルを開放し、各セルから2個の試験片を無菌的に取り出した。同時に、循環培地のサンプルも取った。サンプリングは、殺生剤の日々の緩徐投薬が供給された後に行った。
【0227】
培地の各サンプルを連続的に滅菌生理食塩水中で10倍に希釈し、溶解寒天中で平板培養した。各試験片をよく濯いで付着した粒子を除去し、無菌的にこすり、擦り取った物質を生理食塩水中に定量的に分散させ、撹拌し、連続的に10倍に希釈し、溶解寒天中で平板培養した。35℃で48時間培養した後、微生物の生存数を数えた。培地中の細胞の生存数は1ml当たりのコロニー形成単位(cfu)として表す。試験片表面の生存数はcfu/cm2として表す。これらの結果を表1に示す。
2日後、培地サンプル(すなわち、プランクトン様微生物)中の生菌数は、酸化殺生剤又はバイオフィルム阻害物質に曝露したいずれのサンプルでも同様であり、生菌数は対照サンプル中でほんの僅かに高かった。2日後に、顕著なバイオフィルムが対照試験片上に生成していることが分かり、これより小さいが顕著な微生物集団が混合ハロゲンで処理した試験片上に生成していたが、Fuzzicide BACで処理した試験片は清浄なままであった。4日後、対照培地サンプルは、2日後の生菌数と同様の、安定したプランクトン様微生物の生菌数を示し、混合ハロゲンで処理した培地サンプルは、プランクトン様微生物を幾分(生菌数で10分の1以下)制御していることを示しており、Fuzzicide BACで処理した培地サンプルは、プランクトン様微生物を完全に(検出限界以下)制御していることを示した。試験片上での生成に関して、4日後に、対照試験の試験片は、2日目に比べてバイオフィルム微生物の生菌数が多少増加し、混合ハロゲンで処理した試験片は、2日目に比べてバイオフィルムバクテリアの生菌数が3倍に増加した。Fazzicide BACで処理したシステムの試験片は清浄なままであった。
【0228】
【表1】

【実施例2】
【0229】
(排水汚れ制御)
処理した排水は、排水処理工場から7キロメーター離れた場所へ搬送された。何年もの間、パイプは詰まり、パイプを流れる流量は減少していた。過剰に高い濃度のCl2(最大で50ppmの供給、すなわち最大で50mg/l(Cl2として換算)のレベルでのNaOClの添加)を使用することは、パイプ中の水伝導性を改善するのに無効であることが分かった。パイプの機械的洗浄(ピギング)は、洗浄直後には水伝導性を顕著に改善することになるが、この改善は数日しか続かず、その後は、パイプのピギング前に観察された詰まりのレベルに到達する。
【0230】
本発明の使用はバイオフィルムの制御に有効である。本発明を用いた処理を開始する前に、パイプ中のハーゼン−ウイリアムス係数(HW)を測定したところ約90であった。(ハーゼン−ウイリアムス係数は、工業用パイプを流れる水流を表すのに用いられる。)これは式
【0231】
【数1】

【0232】
を用いて計算される。式中、Pはパイプ長1000フィート当たり1平方インチ当たりポンドで表させる摩擦圧力降下であり、Bは1時間当たりバレルで表される流量であり、sは液体の比重であり、C=摩擦係数(ハーゼン−ウイリアムス係数)、dはインチで表されたパイプの内径である。所定のパイプに対してP及びBを計測し、s及びdを一定になるようにし、Cを計算した。その結果をハーゼン−ウイリアムス係数として表す。数値が大きいほど、パイプを通る流れがよい。6日間連続で、1日1回3時間にわたり、バイオフィルム阻害物質、すなわち、特許文献7に従って産生された臭化物活性化クロラミン(「Fuzzicide BAC」)を総塩素で表して10ppm適用すると、HW値が約90から約104に増加した。「ピギング」と、特許文献7に従って産生された10ppm(総Cl2で表す)のFuzzicide BACを1日1回3時間供給することを組み合わせると、HW値が約104から約116に上昇した。このようにしてパイプを浄化すると、特許文献7に従って産生された10ppm(総塩素で表す)のFuzzicide BACを1週間に1回3時間供給することは、数ヶ月の期間にわたってHW係数を一定値に保つ、すなわち、排水中の微生物の生菌数が高いにも関わらずバイオフィルムの形成を阻害するのに有効であった。パイプを適当に処理しない場合には、HW係数の減少が認められた。これは、処理の頻度を数日間にわたって増やすことにより是正された。
【0233】
この実施例のバイオフィルム阻害物質は、次のようにして産生された。最大で300リットル/時の次亜塩素酸ナトリウム溶液(10〜15%w/v)を供給するのに用いられる第1脈動投薬ポンプ、最大で150リットル/時の臭化アンモニウム(38%溶液w/v)を供給するのに用いられる第2脈動投薬ポンプを含む供給システムを構築した。排水(最大で10m3/h)を用いて、両方の薬品を適当に希釈した。安定したバイオフィルム阻害物質の産生を確保するために、オンラインpH計により産生工程及び次亜塩素酸供給量を制御した。バイオフィルム阻害物質が産生されると、処理水パイプに注入した。バイオフィルム阻害物質貯蔵溶液の濃度は3000〜4000ppmであり、pHを9.5〜10に維持した。
【実施例3】
【0234】
処理した排水は、試験工場内の長さ10m且つ内径4インチのいくつかのパイプを通して送り出されていた。処理開始に先立つ数ヶ月間にわたり、パイプ表面上にはバイオフィルムが自然に成長していた。各パイプ内の圧力低下はオンラインでモニターされ、平均HW係数が計算された。試験の際、制御パイプは未処理のままとし、残りのパイプを(a)1週間に3回、3時間に渡り、特許文献7の発明に従い、その場で産生され、総塩素で表して10ppmのバイオフィルム阻害物質Fuzzicide BAC、又は(b)1週間に3回、3時間に渡り、特許文献7及び特許文献8に記載の従来技術の一部であり、特許文献8の比較例において説明されている通り予備成形された塩化アンモニウムから産生され、10ppm(総塩素で表す)で適用されるクロラミン、のいずれかで処理した。
【0235】
この実施例のバイオフィルム阻害物質は、この試験用に特定して構築した小型供給システムを用いて、次のようにして産生された。最大56リットル/時の水中に最大で4リットル/時の次亜塩素酸ナトリウム及び最大2リットル/時のFuzzicide BACを処理したパイプに供給した。注入前の溶液のバイオフィルム阻害物質の濃度は約3600ppm、且つpHは9.2〜9.6であった。このシステムで形成された殺生剤が非常に過剰であり、且つ供給量が低いことにより、この貯蔵溶液の大部分は廃棄され、少量のみが供給された。表2及び図3に示した結果が示すとおり、適当なバイオフィルム阻害物質の形成はバイオフィルム阻害物質の安定性と有効性のためには重要であり、不適当な調製はFuzzicide BACよりも極めて有効性が低い製品の形成をもたらした。供給システム内で塩化アンモニウムから得たバイオフィルム阻害物質は、Fuzzicide BAC供給システムより複製した供給システム内で産生した。
【0236】
表2及び図3は、制御パイプ(未処理)とFuzzicide BACで処理されたパイプとの、HWの差を示す。
【0237】
【表2】

【0238】
表2から分かるとおり、Fuzzicide BACのバイオフィルムに対する効果は処理実施日には必ずしも明白ではないが、(処理されたパイプ対未処理パイプ、における増加したHV値という形で)処理後数日間にわたって観察可能である。測定したHW係数の特徴は、バイオフィルム細胞の制御が、埋め込まれた細胞の殺生を通して維持されないということを示している。これは、バイオフィルム細胞の直接計数により確認された。
【0239】
表3はFuzzicide BACでのバイオフィルムの処理対クロラミンでの処理の長期的効果の比較結果を示す。試験のこの部分の初日に、パイプを3時間にわたり、(それぞれ総塩素で表した10ppmの濃度の)Fuzzicide BAC又はクロラミンで処理した。バイオフィルム阻害物質を供給したパイプと対照パイプとの間のHW値の差を、続く13日間にわたりオンラインでモニターした。バイオフィルム制御物質の供給を止めると、処理されたパイプのバイオフィルムの成長が回復し、これらパイプ中のHW係数の減少をもたらすことが期待され、一方で制御(未処理)パイプ中のHW係数が維持されると期待された。処理されたパイプと制御パイプのHW係数の差をモニターし、表3及び図4に結果を示す。
【0240】
【表3】

【実施例4】
【0241】
(本発明による激しく汚染された製紙機の処理)
特許文献10には、帯水システム中のスライムの防止及び/又はバイオフィルムの除去のための組成物及び方法が説明されている。この特許によれば、少なくとも一種のグリコール成分と、炭水化物、プロテアーゼ、リパーゼ、及びグリコールプロテアーゼからなる群より少なくとも一種の酵素成分とを水に加えることで目的を達成する。この特許は、開示されている発明をどのように実施するかを実証するための実地試験の結果及び、開示された方法の有効性を示している。バイオフィルムの除去をモニターするためにここで用いられたパラメーターの一つは紙の品質であり、これは製紙の間オンラインで測定された。特許文献10において示された結果は、仕上げ製品においてモニターされた黒斑、光斑、及び孔の統計上の分布が、従来の殺生処理で達成されたオンラインの紙質の結果と変わらなかったことを示す。
【0242】
本実施例において、本発明者による特許文献7において説明されている装置を用いてその場で産生した、本発明者のFuzzicide BACバイオフィルム阻害物質で激しく汚染された製紙機を処理した。バイオフィルム阻害物質は、半連続的に製紙機に加えられた。製紙機を、試験開始に先立って苛性剤で煮沸しなかった。逆に、激しい汚染を、試験開始にあたって機械表面上に存在したままとした。
【0243】
この試験用に特定して設計した供給システムを構築した。第1脈動ポンプが最大30リットル/時の次亜塩素酸ナトリウムを供給し、第2脈動ポンプが最大13リットル/時の臭化アンモニウムを供給した。スケール形成を避けるため、軟水を用いて化学薬品を希釈した。Fuzzicide BAC供給システムを用いて、製紙機に沿った3箇所の異なる供給ポイントで投与した。バイオフィルム阻害物質産生プロセスは、産生されたバイオフィルム阻害物質のpHのモニタリングと、必要に応じた材料の混合の調整によって制御されるバイオフィルム阻害物質の注入前溶液は、総塩素で表して3500〜4000ppmを含有し、製品のpHは9.6〜9.8であった。バイオフィルム阻害物質の注入前溶液は、この試験の間、且つこの製紙機の数ヶ月にわたる連続的使用の間にわたって、再生産可能且つ安定していた。
【0244】
仕上げ紙における暗斑、光斑、及び孔は、オンラインで記録され、表4及び図5(後者は20トンの重量である、平均的な紙のロールにおける孔と斑を示す)に示した。結果は、製造された紙の個々の種類毎(それらのいくつかは24時間以上の期間にわたって製造された)に平均化した。
【0245】
【表4】

【0246】
処理日からの経時的な孔と斑の安定した増加は、Fuzzicide BACでの処理の結果、頻度の増加で機械表面から脱落した、大きさ及び色の差なるバイオフィルムの粒子によるものである。
【0247】
試験の12日目に、製紙機を洗浄のため停止した。これにより、機械の表面を洗浄する間に、バイオフィルム成長の主な領域から脱落し、且つ機械の水中に分散したバイオフィルムの多数の小粒子によって表面が覆われた。
【0248】
製紙機の洗浄に引き続き、処理水にバイオフィルム阻害物質Fuzzicide BACを加え、製紙を再開した。図6は、この期間の製紙の間にわたる、暗斑、光斑、及び孔の記録を示す。図5と比較して、斑、孔の総量はこの期間にわたり比較的少量のままであり、これはバイオフィルム阻害物質の適用が製紙機の表面上のバイオフィルムの再形成を防いだことを示唆している。
【実施例5】
【0249】
(カタラーゼの不活性化)
脱イオン(DI)水100mlを含むフラスコ内で、カタラーゼ(Merck、食塩水中1ml当たり26ユニットの最終濃度に酵素を希釈した)及びバイオフィルム阻害物質(Fuzzicide BAC又はモノクロロアミン(MCA))を用いて、実験室試験を行った。新たに調製したバイオフィルム阻害物質を、既定の供給量で希釈カタラーゼを含む適当なフラスコに加えた。容器の内容物を、H22の追加(最終H22濃度が3.5g/lとなるまで)に先立って室温で60分間混合した。H22の追加の後、混合物を室温で30分間混合し、この時点で、H22残留物をDr.Lange Cuvette Test LCW 058に従い、LASA 20を用いて各フラスコ内で測定した。(測光作業分析ハンドブック(Handbook of Photometrical Operation Analysis)1997年10月、に記載の通り、Jander/Blasius,Lehrbach der Anylytischen und Praparative Anorganischen Chemieに基づく)結果は、総Cl2で表されており、表5にまとめた。Fuzzicide BAC及びMCAの残留物は、Hackポケット比色計で測定した。
【0250】
【表5】

【0251】
これらの結果は、(1)酵素がH22を分解することにおいて非常に活性であること、(2)クロラミン又はFuzzicide BACのいずれも過酸化水素を酸化せず、(3)Fuzzicide BACの(総Cl2で表して60ppm又はそれ以上の)大量投与のみにより完全にカタラーゼが不活性化されたことを示す。この量は、前述の実施例において示されているとおり、微生物の集合体のバイオフィルム生成の可能性を阻害し、且つ間接的にバイオフィルムの離散をもたらすのに用いられる投与レベルよりも大幅に高いレベルである。10ppm以下(総塩素で表す)の投与レベルでは、本発明者のバイオフィルム阻害物質はカタラーゼを、たとえあったとしても取るに足らない度合いにまで不活性化した。
【0252】
MCA及びFuzzicide BACを、上述の実地試験用のものと類似した過程を用いて実験室内で調製した。次亜塩素酸ナトリウムをDI(脱イオン)水中に総塩素で表して最終濃度6000ppmまで希釈した。臭化アンモニウム溶液(希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液の1.1モルと等モル、モル基準で10%過剰)を調製した。希釈した次亜塩素酸(50ml)を、適当なアンモニウム塩50mlに滴下して加え、一方でpHを連続的に測定した。産生された貯蔵溶液中のバイオフィルム阻害物質の濃度を即時に測定し、試験フラスコに、適当な供給レベルのバイオフィルム阻害物質を追加した。
【0253】
あらゆる実用的な目的のため、MCA及びFuzzicide BACは適正費用のバイオフィルム生成を阻害するのに最適化された供給量レベルで投与されると、過酸化物分解酵素を非活性化する効果を持たない。従って、過酸化物分解酵素カタラーゼに対するこれらバイオフィルム阻害物質の作用形態は、酵素の直接不活性化以外の機構に従って作用しなければならない。本実施例は、H22と即座に反応するHOCI及びHOBrとは異なり、MCA及びFuzzicide BACがH22を酸化しないことを示している。この特性は、MCA及びFuzzicide BACが、高い背景濃度のH22の存在下、又はH22を含む混合物中でバイオフィルム阻害物質として用いられることを可能にする。バイオフィルム内に埋め込まれた微生物を殺生することによりバイオフィルムの成長を阻害するために当業で用いられてきた酸化殺生剤とは異なり、MCA、及び、本発明の特に好適な実施態様において、Fuzzicide BACを、種々の目的で、プロセス培地、特に水性プロセス培地に加えることができる他の酵素の存在下又はそれらと組み合わせて用いることができる。
【実施例6】
【0254】
(脱インク工場での実地試験)
脱インクシステムは、古紙1トン当たり7〜10kgのH22を用いていた。グルタルアルデヒド等の従来の殺生剤を用いたH22の酵素分解を制御するためのこれまでの試みは、このシステムでの費用効率の高い結果をもたらさなかった。同一の工場の並列した脱インクシステムは同一供給源からの古紙に同様の脱インクプロセスを利用しており、グルタルアルデヒドを含む市販の化学的処方で首尾よく処理された:この脱インクプロセスにおける平均H22消費率が古紙1トン当たり約4kgのH22にまで低減した。Fuzzicide BAC技術での試験開始に先立って行われた測定は、脱インク工場の種々の部分で高い微生物負荷が存在することを示し、多量のスライムの蓄積を示唆した。大量のH22の初期投与にもかかわらず、システムの流路に沿った種々の点にて検出したH22の残留物は極めて僅かであった。
【0255】
次に特許文献7において説明される産生/供給システムでその場で産生されたFuzzicide BACを、850分間にわたってプロセス水に連続的に供給した。バイオフィルム阻害物質を、実施例4で説明した投与システムに類似した、特定して設計した投与システム内でその場で産生した。反応pHは9.8〜10.0に維持した。試験の期間及びそれより長期にわたって、2種の化学薬品の同時な調量、既定のモル比での連続的混合、及び安定したバイオフィルム阻害物質貯蔵溶液の再生可能な産生を確実にするために産生プロセスを制御した。Fuzzicide BACの初期供給率は、総Cl2で表して170g/トンであった。850分後、半連続的にバイオフィルム阻害物質を投与することによって、供給率を総Cl2で表して85g/トンに減少した。この試験の始動の際、種々のパラメーターを測定した:残留バイオフィルム阻害物質を(Standard Methods of Waste and Waste Waterから適用したDPD法に基づき、総Cl2で、Hackポケット比色計を用いて)測定した。LASA20に対するDr.Lange(1997年10月)による測光作業分析ハンドブック(Handbook of Photometrical Operation Analysis)に記載の、Jander/Blasius、Lehrbach der Anylytischen und Praparative Anorganischen Chemieの方法に基づき、LCW 085法を伴うLASA 20(高濃度の場合)、又は、Merckテストストリップ(0.5〜25ppm)のいずれか一方を用いて残留過酸化水素を測定した。必要に応じて、サンプルをDI(脱イオン)水で希釈した。
【0256】
プロセス中のH22分解酵素の活性を以下の手順に従い測定した:H22市販溶液をDI(脱イオン)水で希釈し、最終濃度を100g/水1リットル(10%)とした。1mlの希釈したH22溶液を、処理した脱インクプロセス水から得た9mlのサンプルに加え、最終供給率10g/リットルのH22を形成した。この混合サンプルを室温で15分間培養し、その時点で残留H22を測定した。DI(脱イオン)水中に希釈した過酸化水素が制御として作用する。酵素が効果的にH22を分解した場合にH22の残留濃度は低く、一方H22分解酵素の効果が弱くなった、又は処理水の酵素濃度が減少した場合にH22の残留濃度は高く、H22供給量に近かった。既定時間後の処理水に残留するH22の%としての結果を、表6に示す。表6中のアデノシン3リン酸(ATP)測定は以下のプロセスに基づく:ルシフェリン及びルシフェラーゼの存在下でのATPからアデノシン1リン酸(AMP)への変化の際、既定の量の光をATP分子毎に放射する。この放射された光を測光器で測定する。結果を相対的条件において出し、従い、結果は絶対的ではなく相対的である(RLU=相対光単位)。微生物総数が高ければ、高いATP測定が得られ、その逆もまた同様であるという意味から、値を微生物活性と相関させることができる。
【0257】
【表6】

【0258】
試験開始後のATPの急激な減少は、パルプ製造機中のプランクトン様の微生物(自由生細胞)の効果的な制御を示す。前述の本発明者の先行する米国特許を踏まえ期待されたとおり、ATPレベルは、測定されたFuzzicide BAC残留物が極めて高くないものの、連続的投与の間にわたって減少し続けた。0〜100分の間のカタラーゼ活性の明白な増加は、バイオフィルムの分解とその結果として生じた、微生物、カタラーゼ、及び他の過酸化物分解酵素を含む、バイオフィルムからプロセス水への物質の放出によるものである。
【0259】
850分後、パルプ製造機より得たサンプル中にH22の測定可能な残留物を検出した際、投与計画を変更した:連続供給を、半連続供給に変換し、総供給量は初期値の50%、パルプ1トン当たり85g(総Cl2で表す)に減らした。予測どおり、ATP値は増加し、これは、供給量とCl2の双方における減少と、総プランクトン様微生物の総数における増加を反映している。
【0260】
ATP及び生菌数における増加に反して、H22分解酵素活性は処理を進めるにつれて減少し、プロセス水中に測定された利用可能なH22の濃度における増加を伴った。850分の時点で殺生剤の供給量を低減したにもかかわらず、1500分後に、H22分解酵素活性が全滅するように思われ、且つATP濃度が850〜1500分の間に増加した。
【0261】
48時間にわたる殺生剤の半連続的投与の後、漂白設定値を維持するのに必要なH22の供給量を約4kg/トンに低減した。数日後、H22の供給量をさらに約2.2kg/トンに減らしても、既定の脱インク漂白目標値をこの低減された供給量でも維持できることが分かった。
【実施例7】
【0262】
(Fuzzicide BAC有効性及び生菌数)
印刷用紙及びタイプ用紙を製造するのに用いられる製紙機におけるFuzzicide BACを用いた実地試験の間、主にバクテリアである微生物の生菌数が、白濁水サイロ(ww)内、及び機械櫃(Mchest)内でモニターされた。プロセス水サンプルを抽出し、即座にチオ硫酸ナトリウムで不活性化して、バイオフィルム阻害物質のすべての残留物を分解した。次にサンプルを続けてトリプトン(DIFCO)食塩水希釈培地中で10倍に希釈した。希釈したサンプルを溶解R2A寒天(以下「総数」)中、及びグルコースの過剰を多く含む溶解平板数寒天(以下「スライム形成物」)中で平板培養した。室温で固化した寒天及び平板を35℃で48時間培養した。生菌数を数え、その結果を以下の表7及び図7に示した。2種の異なる処理期間を記した:バイオフィルム阻害物質を用いた処理が既存のバイオフィルムの分解をもたらす生物付着洗浄期間(実施例4も参照)、及び、この洗浄期間に続く、製紙機が正常に作動し、バイオフィルム阻害物質の適用を用いて製紙機の円滑な操作を維持する正常操作期間(図6と比較)である。
【0263】
表7及び図7は、初期洗浄期間にわたって、サイロから得たプロセス水サンプル中の生菌数は、Fuzzicide BACバイオフィルム阻害物質の残留物が高濃度又は低濃度で存在していたにもかかわらず、1ml当たり103〜104の生菌数を含んでいた。ほぼ全てのサイロサンプルは、高グルコース培地上に成長した、非常に多数のコロニーを含んだ。同様の現象がMchestから得られたサンプルにおいても観察され(結果は示さず)、これは、高グルコース含有量の存在下で成長する、総菌数及び細胞の双方のむしろ、より高い数を示した。
【0264】
【表7】

【0265】
表8に示すとおり、製紙機が一旦洗浄されると、総生菌数の大幅な減少が水サンプル中に見られた。
【0266】
【表8】

【0267】
統合すると、これらの結果は(a)製紙機が激しく汚染されている限りは、生菌のほとんどではないにせよ多数が、バイオフィルムに埋め込まれたものも含めて、高いグルコース含量を有する培地上に容易に生育し、これはグルコースを効率的且つ迅速に分解することのできる酵素の存在を示すが、一方(b)Fuzzicide BACで処理した清浄な機械においては、生菌はグルコースの豊富な培地上に生育することができず、これは、R2A培地上の生菌数の多少にかかわらず、グルコースを効率的且つ迅速に分解することのできる酵素を高濃度で含んではいないことを示している。これらの結果を、図3及び4と比較することができる。これらの図も、本発明に従うバイオフィルム阻害物質が生物付着した機械のバイオフィルムの分解をもたらし、清浄な機械にバイオフィルムが再形成されるのを防ぐことを示す。
【実施例8】
【0268】
(Fuzzicide BACの製紙効率に及ぼす影響)
製紙機において、Fuzzicide BACを機械の種々の部分に間欠的に供給した。機械中の残留Fuzzicide BACの急激な消失が観察され、残留Fuzzicide BACの主な消失は、パルプ製造機、具体的には乾燥損紙パルプ製造機において起こった。(乾燥損紙パルプ製造機は、製紙機で製造されたが顧客に出荷するには許容不可の品質である紙を受容する。この紙は、製紙機で再利用される。)パルプ製造機中で、残留殺生剤の消失はATPの急激な増加を伴うことが観察された。これらの観察が、紙をコートするのに用いられるデンプンが存在し、微生物の成長を促す良好な培地を提供するサイズ・プレスにおける部分最適な消毒に起因するということを初期的な研究は示唆している。
【0269】
パルプ製造機内で残留Fuzzicide BACの消失とATPの増加が観察されたと同時に、機械櫃及びヘッドボックス、浄水中にATPの急激な増加が見られた。
【0270】
パルプ製造機内のATPが高い反面、機械リサイクル水である白濁水中での結果は依然として許容パラメーターの範囲内であった。
【0271】
残留Fuzzicide BACの消失がウェットエンド化学における問題によるものであったか否かを調査するために、機械櫃に供給される陽イオン性デンプンの量を50%減少させ、11時間後、ヘッドボックス中の繊維及び粒子の凝集を補助するための凝集剤である塩化ポリアルミニウム(PAC)の投与量を20%増加させた。この段階において乾燥損紙を依然として使用した。炭酸カルシウム保持率及び沈降炭酸カルシウム(PCC)(灰分)保持率に及ぼす影響は同様であった。陽イオン性デンプン及びPACの供給率の変化は、保持率に顕著な影響を及ぼさなかった。
【0272】
機械櫃に供給する陽イオン性デンプンの量を減少させた5時間後、Fuzzicide BACの投与率を65%増加させた。白濁水中の浮遊物質及びPCCの濃度の急激な低下が、その2時間後に見られた。その後17時間、保持率の一定の向上が続いた。保持率の向上は、残留塩素の一定で、緩徐な増加と対応した。
【0273】
本発明は上記して具体的に示し且つ説明したものに限定されるものではないことは、当業者には理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の特徴のコンビネーション及びサブコンビネーションの双方、ならびに前記の説明を読んだ当業者が想到し、且つ従来技術にはないそれらの改良及び変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1】本発明の実施を可能にするために構築され作動する装置の一形態を例示するブロック線図である。
【図2】本発明の実施を可能にするために構築され作動する他の装置を例示する同様のブロック線図である。
【図3】本発明に従って処理されたパイプと未処理の対照パイプとの間のハーゼン−ウイリアムス係数の相違のグラフである。
【図4】バイオフィルム阻害物質、クロロアミンで処理したパイプと未処理の対照パイプとの間の相違を比較するグラフである。
【図5】製紙機を処理前に洗浄しなかった場合に、本発明に従って製紙機内に生成するバイオフィルムへバイオフィルム阻害物質を間欠的に適用した後の紙の孔及び染みの発生率を示すグラフである。
【図6】製紙機を洗浄し、続いて、本発明に従ってバイオフィルム阻害物質を間欠的に適用した後の紙の孔及び染みの発生率を示すグラフである。
【図7】本発明に従ってバイオフィルム阻害物質を間欠的に適用したことに対応する、製紙機内の種々の生菌の数を示すグラフである。
【図8】製紙機内の繊維の滞留にバイオフィルム阻害物質を添加した効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオフィルム生成の可能性を持ち、且つ、工業水環境の中で水と固体表面の間の境界面に位置する微生物集合体によるバイオフィルムの生成を阻害する方法において、前記バイオフィルム阻害物質をリアルタイムで間欠的に生成させ、該バイオフィルム阻害物質をその間欠的生成と共に、前記微生物集合体を根絶することなく該微生物集合体のバイオフィルム生成の可能性を阻害するのに十分な濃度と期間で前記微生物集合体に対して間欠的に適用することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記間欠的生成及び適用が前記微生物の集合体と連通する水に前記バイオフィルム阻害物質を間欠的に投与することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記間欠的生成及び適用が、前記微生物の集合体と連通する水に第1の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与することと、
所定の時間に渡って待機することと、
その後、前記微生物の集合体と連通する水に第2の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与することとを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記間欠的生成及び適用が前記微生物の集合体と連通する水に第1の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与して、前記微生物の集合体と連通する前記水に前記バイオフィルム阻害物質の第1の濃度を得、
前記微生物の集合体と連通する前記水中のバイオフィルム阻害物質の濃度が前記第1の濃度未満になるようにし、
その後、前記微生物の集合体と連通する水に第2の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1:2未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
約1:5と1:10の間のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1:10未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1:25未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1:50未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記間欠的生成及び適用が、それぞれの間欠的適用にあたって、前記バイオフィルム阻害物質を約5分と約4時間の間の時間に渡って間欠的に投与することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物の集合体が耐久性表面に付着していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物の集合体が消耗性表面に付着していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物の集合体が耐久性表面に付着しており、且つ前記バイオフィルム阻害物質の間欠投与がそれぞれ約3時間に渡ることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記微生物の集合体が消耗性表面に付着しており、且つ前記バイオフィルム阻害物質の間欠投与がそれぞれ約5分間に渡ることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
生成を阻害されたバイオフィルムが耐久性表面に隣接していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
生成を阻害されたバイオフィルムが消耗性表面に隣接していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記バイオフィルム阻害物質のリアルタイムな間欠的生成が、既定の希釈度の次亜塩素酸酸化剤を生成することと、既定の希釈度のアンモニウム塩を生成することと、これら2つの希釈物をミキサー内に同時に調量して、その中で既定の比率に従って連続的に混合し、ミキサー内のその場において十分な量の再現性、安定性、及び有効性を有するバイオフィルム阻害物質を生成することを含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記バイオフィルム阻害物質のリアルタイムな間欠的生成が、既定の希釈度の次亜塩素酸酸化剤を生成することと、既定の希釈度のアンモニウム塩を生成することと、これら2つの希釈物をミキサー内に同時に調量して、その中で既定の比率に従って連続的に混合し、ミキサー内のその場において十分な量の再現性、安定性、及び有効性を有するバイオフィルム阻害物質を生成することと、前記バイオフィルム阻害物質をリアルタイムで生成しながら、前記微生物の集合体にバイオフィルム阻害物質を供給することとを含むことを特徴とし、前記活性バイオフィルム阻害物質を、前記ミキサー内のその場にある状態で、前記ミキサーから、前記微生物の集合体と連通する水へ注入することを含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオフィルム阻害物質の間欠的生成が、一定量の次亜塩素酸塩を第1の導管を通過する水の第1の流れに連続的且つ同時に注入し、その中に既定希釈度の次亜塩素酸塩を生成することと、一定量のアンモニウム塩を第2の導管を通過する水の第2の流れに連続的且つ同時に注入し、その中に既定希釈度のアンモニウム塩を生成することと、既定の比率に従ってミキサー内に第1及び第2の流れを連続的且つ同時に注入し、ミキサー内のその場にバイオフィルム阻害物質を生成することを含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記バイオフィルム阻害物質の間欠的生成が、一定量の次亜塩素酸塩を第1の導管を通過する水の第1の流れに連続的且つ同時に注入し、その中に既定希釈度の次亜塩素酸塩を生成することと、一定量のアンモニウム塩を第2の導管を通過する水の第2の流れに連続的且つ同時に注入し、その中に既定希釈度のアンモニウム塩を生成することと、既定の比率に従ってミキサー内に第1及び第2の流れを連続的且つ同時に注入し、ミキサー内のその場にバイオフィルム阻害物質を生成することを含むことを特徴とし、前記バイオフィルム阻害物質をリアルタイムで生成しながら、前記微生物の集合体にバイオフィルム阻害物質を供給することとを含むことを特徴とし、前記活性バイオフィルム阻害物質を、前記ミキサー内のその場にある状態で、前記ミキサーから、前記微生物の集合体と連通する水へ注入することを含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記アンモニウム塩を、臭化アンモニウムと塩化アンモニウムとからなる群より選択することを特徴とする請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記バイオフィルム阻害物質が、臭化物で活性化された有効量クロラミンを含むことを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記バイオフィルム阻害物質のそれぞれの間欠的適用が、既定の希釈度の次亜塩素酸酸化剤を生成することと、既定の希釈度の臭化アンモニウムを生成することと、これら2つの希釈物をミキサー内に同時に調量して、その中で既定の比率に従って連続的に混合し、ミキサー内のその場において十分な量の再現性、安定性、及び有効性を有するバイオフィルム阻害物質を生成することと、前記バイオフィルム阻害物質を、前記ミキサー内のその場にある状態で、前記ミキサーから前記微生物の集合体と連通する水へ注入することを含む請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記既定希釈度の酸化剤を、前記既定希釈度の臭化アンモニウムと共に前記ミキサー内に同時に調量する直前に連続的に生成することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記既定希釈度の臭化アンモニウムを、前記既定希釈度の酸化剤と共に前記ミキサー内に同時に調量する直前に連続的に生成することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記バイオフィルム阻害物質が、前記ミキサー内のその場に生成されながら、前記微生物の集合体と連通する水へ導入される前に少なくとも8.5のpHを有することを特徴とする請求項23〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記バイオフィルム阻害物質が、前記ミキサー内のその場に生成されながら、前記微生物の集合体と連通する水へ導入される前に9.5を超えるpHを有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記微生物の集合体と連通する前記水が、前記バイオフィルム阻害物質を前記水に注入する前に、約5と約10.5の間のpHを有することを特徴とする請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記微生物の集合体と連通する前記水が、前記バイオフィルム阻害物質を前記水に注入する前に、約7と約9の間のpHを有することを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記バイオフィルム阻害物質が、前記導管内のその場に生成されながら、塩素として表して0.5〜300ppmの濃度で、前記微生物の集合体と連通する水へ注入されることを特徴とする請求項23〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記バイオフィルム阻害物質が、前記導管内のその場に生成されながら、塩素として表して3〜10ppmの濃度で、前記微生物の集合体と連通する水へ注入されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記臭化アンモニウムが、約0.1重量%〜約50重量%の濃度を有することを特徴とする請求項23〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記臭化アンモニウムが、約2.5重量%〜約38重量%の濃度を有することを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記既定希釈度の臭化アンモニウムが、0.1重量%〜6.0重量%の濃度を有し、且つ前記酸化剤溶液の希釈液と等モルであることを特徴とする請求項23〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記酸化剤を、次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸カルシウムとからなる群より選択することを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記酸化剤が次亜塩素酸塩溶液であり、且つ前記臭化アンモニウムが少なくとも10%のNaOHに相当する過剰の塩基を含むことを特徴とする請求項23〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記塩基を前記臭化アンモニウムに同時に加え、バイオフィルム阻害物質を安定させることを特徴とする請求項23〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記酸化剤がCl2換算0.1重量%と15重量%の間の濃度を有することを特徴とする請求項23〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記酸化剤がCl2換算5重量%と15重量%の間の濃度を有することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
水の追加後に前記酸化剤溶液がCl2換算0.1重量%〜2.0重量%の濃度を有することを特徴とする請求項23〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記バイオフィルム阻害物質の生成及び適用が、一定量の次亜塩素酸塩を第1の導管を通過する水の第1の流れに連続的且つ同時に注入し、その中に既定希釈度の次亜塩素酸塩を生成することと、一定量の臭化アンモニウムを第2の導管を通過する水の第2の流れに連続的且つ同時に注入し、その中に既定希釈度の臭化アンモニウムを生成することと、既定の比率に従ってミキサー内に第1及び第2の流れを連続的且つ同時に注入し、ミキサー内のその場にバイオフィルム阻害物質を生成することと、前記バイオフィルム阻害物質を、前記ミキサー内のその場で生成しながら、前記ミキサーから直接、前記微生物の集合体と連通する水へ注入することを含むことを特徴とする請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記酸化剤のリザーバに接続している第1の投与ポンプによって、前記水の第1の流れに次亜塩素酸塩を連続的に注入することを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記臭化アンモニウムのリザーバに接続しており、且つ前記第1の投与ポンプと同時に動作する第2の投与ポンプによって、前記水の第2の流れに臭化アンモニウムを連続的に注入することを特徴とする請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記バイオフィルム阻害物質は前記微生物の前記集合体により酵素の生成を抑制する請求項2〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記バイオフィルム阻害物質は前記酵素を不活性にさせない請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記酵素が過酸化水素破壊酵素であることを特徴とする請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記酵素がカタラーゼ、デヒドロゲナーゼ、又はペルオキシダーゼであることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記酵素がデンプン分解酵素であることを特徴とする請求項44又は45に記載の方法。
【請求項49】
前記酵素がアミラーゼであることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記微生物の集合体は水の表面と脱インキ又は漂白過程の水の間の境界面に存在し、前記脱インキ又は漂白過程の水の中の過酸化水素の持続性は前記バイオフィルム阻害物質の使用により増加する、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記微生物の前記集合体の過酸化水素分解酵素生成の可能性は前記バイオフィルム阻害物質の使用により抑制される、請求項46による方法。
【請求項52】
前記バイオフィルム阻害物質は過酸化水素を分解しない、請求項50による方法。
【請求項53】
バイオフィルム生成の可能性を持ち、且つ工業水の環境内の水と固体の表面の間の境界面に位置する微生物集合体によるバイオフィルムの生成を抑制するシステムにおいて、リアルタイムで生成されるバイオフィルム阻害物質を、前記微生物集合体を完全に根絶することなく前記微生物集合体のバイオフィルム生成の可能性を阻害するのに十分な濃度と期間で、前記微生物の集合体対して間欠的に適用する間欠的アプリケータより成ることを特徴とするシステム。
【請求項54】
該間欠アプリケータが、前記微生物の集合体と連通する水に前記バイオフィルム阻害物質を投与する投与装置を含むことを特徴とする請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
該投与装置が前記微生物の集合体と連通する水に第1の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与し、且つ、所定の時間の後、前記微生物の集合体と連通する水に第2の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与することを特徴とする請求項53に記載のシステム。
【請求項56】
該投与装置が前記微生物の集合体と連通する水に第1の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与し、これにより前記微生物の集合体と連通する前記水に前記バイオフィルム阻害物質の第1の濃度を得、
且つ、前記微生物の集合体と連通する前記水中のバイオフィルム阻害物の濃度が前記第1の濃度未満になるようにした後、前記微生物の集合体と連通する水に第2の独立な量のバイオフィルム阻害物質を投与することを特徴とする請求項53に記載のシステム。
【請求項57】
前記間欠アプリケータが1:2未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項53〜56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記間欠アプリケータが約1:5と1:10の間のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項53〜56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項59】
前記間欠アプリケータが1:10未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項53〜56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記間欠アプリケータが1:25未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項53〜56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
前記間欠アプリケータが1:50未満のデューティサイクルで、前記微生物の集合体に前記バイオフィルム阻害物質を定期的に適用することを特徴とする請求項53〜56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項62】
前記投与装置が、それぞれの間欠的適用にあたって、前記バイオフィルム阻害物質を約5分と約4時間の間の時間に渡って投与することを特徴とする請求項53〜56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項63】
前記微生物の集合体が耐久性表面に付着していることを特徴とする請求項53〜62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項64】
前記微生物の集合体が消耗性表面に付着していることを特徴とする請求項53〜62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項65】
前記微生物の集合体が耐久性表面に付着しており、且つ前記バイオフィルム阻害物質の間欠投与がそれぞれ約3時間に渡ることを特徴とする請求項62に記載のシステム。
【請求項66】
前記微生物の集合体が消耗性表面に付着しており、且つ前記バイオフィルム阻害物質の間欠投与がそれぞれ約5分間に渡ることを特徴とする請求項62に記載のシステム。
【請求項67】
生成を阻害されたバイオフィルムが耐久性表面に隣接していることを特徴とする請求項53〜62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項68】
生成を阻害されたバイオフィルムが消耗性表面に隣接していることを特徴とする請求項53〜62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項69】
前記バイオフィルム阻害物質の間欠的適用が、リアルタイムにバイオフィルム阻害物質を間欠的に生成することを含むことを特徴とする請求項53に記載のシステム。
【請求項70】
前記間欠アプリケータが、既定の希釈度の次亜塩素酸酸化剤を生成するための第1のプロデューサと、既定の希釈度のアンモニウム塩を生成するための第2のプロデューサと、これら2つの希釈物をミキサー内に同時に調量して、その中で既定の比率に従って連続的に混合し、ミキサー内のその場において十分な量の再現性、安定性、及び有効性を有するバイオフィルム阻害物質を生成するためのコントローラとをさらに含むことを特徴とする請求項69に記載のシステム。
【請求項71】
前記間欠アプリケータが、前記バイオフィルム阻害物質をリアルタイムで生成しながら、前記活性バイオフィルム阻害物質を、前記ミキサー内のその場にある状態で、前記ミキサーから、前記微生物の集合体と連通する水へ注入するためのインジェクタをさらに備えることを特徴とする請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記バイオフィルム阻害物質のそれぞれの間欠的生成において、該システムが一定量の次亜塩素酸塩を第1の導管を通過する水の第1の流れに連続的且つ同時に注入してその中に既定希釈度の次亜塩素酸塩を生成し、一定量のアンモニウム塩を第2の導管を通過する水の第2の流れに連続的且つ同時に注入してその中に既定希釈度のアンモニウム塩を生成し、既定の比率に従ってミキサー内に第1及び第2の流れを連続的且つ同時に注入してミキサー内のその場にバイオフィルム阻害物質を生成することを特徴とする請求項69に記載のシステム。
【請求項73】
前記バイオフィルム阻害物質のそれぞれの間欠的生成において、該システムが一定量の次亜塩素酸塩を第1の導管を通過する水の第1の流れに連続的且つ同時に注入してその中に既定希釈度の次亜塩素酸塩を生成し、一定量のアンモニウム塩を第2の導管を通過する水の第2の流れに連続的且つ同時に注入してその中に既定希釈度のアンモニウム塩を生成し、既定の比率に従ってミキサー内に第1及び第2の流れを連続的且つ同時に注入してミキサー内のその場にバイオフィルム阻害物質を生成し、且つそれぞれの間欠適用において、前記アプリケータが前記バイオフィルム阻害物質を、ミキサー内のその場に生成しながら、前記ミキサーから、前記微生物の集合体と連通する水へ連続的に注入することを特徴とする請求項69に記載のシステム。
【請求項74】
前記アンモニウム塩を、臭化アンモニウムと塩化アンモニウムとからなる群より選択することを特徴とする請求項70〜73のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項75】
前記バイオフィルム阻害物質が、臭化物で活性化された有効量クロラミンを含むことを特徴とする請求項53〜74のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項76】
前記バイオフィルム阻害物質が前記微生物の集合体による酵素の生成を抑制する請求項53〜75のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項77】
前記バイオフィルム阻害物質が前記微生物の集合体を完全に根絶しないことを特徴とする請求項53〜76のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項78】
前記酵素生成阻害物質が前記酵素を不活性化しないことを特徴とする請求項76に記載のシステム。
【請求項79】
前記酵素は過酸化水素分解酵素である請求項76又は78に記載のシステム。
【請求項80】
前記酵素はカタラーゼ、デヒドロゲナーゼ又はペルオキシターゼである請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
工業水環境内の水と固体表面の間の境界面に位置して、バイオフィルム生成の可能性を有する微生物集合体と該微生物集合体を完全に根絶することなく前記微生物集合体のバイオフィルム生成の可能性を破壊するのに効果的な濃度のバイオフィルム阻害物質とから成る、成長制御されたバイオマス。
【請求項82】
前記バイオフィルム阻害物質は、前記微生物の集合体による酵素の生成の抑制に効果的濃度で存在する請求項81に記載の成長制御されたバイオマス。
【請求項83】
前記微生物の集合体が耐久性表面に付着していることを特徴とする請求項81又は82に記載の成長制御されたバイオマス。
【請求項84】
前記微生物の集合体が消耗性表面に付着していることを特徴とする請求項81又は82に記載の成長制御されたバイオマス。
【請求項85】
前記酵素は過酸化水素分解酵素である請求項82に記載の成長制御されたバイオマス。
【請求項86】
前記酵素はカタラーゼ、デヒドロゲナーゼ又はペルオキシターゼである請求項85に記載の成長制御されたバイオマス。
【請求項87】
前記酵素はでんぷん分解酵素である請求項82に記載の成長制御されたバイオマス。
【請求項88】
前記酵素はアミラーゼである請求項87に記載の成長制御されたバイオマス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−160580(P2009−160580A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52091(P2009−52091)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【分割の表示】特願2003−518988(P2003−518988)の分割
【原出願日】平成14年8月5日(2002.8.5)
【出願人】(504035445)エー.ワイ.ラボラトリーズ リミテッド (1)