説明

工業的に培養可能な藻体の培養システム

【課題】
品質の良い藻体の産量を大幅に増加させ、藻体を工業的に大量培養することを可能とする藻体の培養システムを提供する。
【解決手段】
工業的に培養可能な藻体の培養システムは、パイプ型光合成手段の光透過配管と、液貯留手段と、動力送液手段と、ジェット式酸素排出手段と、連通管手段と、を備える。前記液貯留手段は、光透過配管の出口部に連通されて、排気口が設けられるとともに二酸化炭素ガス供給管が接続される。前記動力送液手段は液貯留手段の端末に接続され、かつ送液管を有する。前記ジェット式酸素排出手段は、中空筒体に形成され、注液口と、上排気口と、中空管とを有し、注液口は送液管の出口端と連通し、中空管は上排気口の下部に延設される。前記連通管手段は、入口端がジェット酸素排出手段と連通するとともに出口端が光透過配管と接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的に培養可能な藻体の培養システム及びそれを利用した藻体の培養方法に関し、特に、パイプ型培養システムにより藻体の培養液を循環させることで、藻体に光合成を繰り返させる工業的な培養を可能とする藻体の培養システム、及びそれを利用した藻体の培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピルリナ(Spirulina)やヘマトコッカス(Haematococcus Pluvialis Flotow)、ボトリオコッカス(Botryococcus braunii)などのような藻類は、蛋白質、ミネラル、ビタミン、酵素、酸化防止剤、アスタキサンチンなど人体に有益な栄養素が豊富に含まれており、近年栄養食品として注目されている。
【0003】
また、藻類からバイオディーゼル燃料を抽出することが既に可能となっており、代替燃料として利用することも期待されている。
【0004】
藻体は光合成反応系により培養液中で光合成を行い、藻細胞が必要としている滋養分を生成し、藍藻の成長と大量繁殖を促進する。
【0005】
また、光合成で発生した酸素は培養液中に溶解するので、培養液中の溶存酸素濃度を上昇させることができる。
【0006】
下記特許文献1には、藻類微生物の光合成反応システムと光合成反応方法が開示されている。特許文献1に示される藻類微生物の光合成反応システムでは、藻類は透明なパイプ経路である光合成反応ユニットによって光合成を行い成長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−319039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたシステムと方法では、生成される藻体の量が少量である為、工業的な大量生産には適さない。そこで藻体を効率よく生成させることができる方法が求められていた。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、藻体を工業的に大量培養することを可能とする藻体の培養システムを提供することにある。
また、本発明のもう一つの目的は、品質の良い藻体を高い産量で培養することを可能とする藻体の培養システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明にかかる工業的に培養可能な藻体の培養システムは、パイプ型光合成手段の光透過配管と、液貯留手段と、動力送液手段と、ジェット式酸素排出手段と、連通管手段とを備え、前記液貯留手段は、光透過配管よりも容積が大きく光透過配管の出口部に連通される。また、前記液貯留手段には排気口が設けられるとともに二酸化炭素ガス供給管が接続される。前記動力送液手段は送液管を有し液貯留手段の端末に接続される。前記ジェット式酸素排出手段は、中空筒体に形成され、注液口と、上排気口と、中空管とを有する。注液口は送液管の出口端と連通し、中空管は上排気口の下部に延設される。前記連通管手段は、入口端がジェット酸素排出手段と連通し、出口端が光透過配管と接続される。
【0011】
好ましくは、光透過配管の上流に複数の連結型密閉容器を備えた細胞分裂手段を更に設ける。
【0012】
好ましくは、前記各連結型密閉容器毎に、複数の小型試験管と、一つの中型ビーカーと、一つのエアリフト式光合成器とを備える。前記中型ビーカーは小型試験管の下流に連結され、前記エアリフト式光合成器は前記中型ビーカーの下流に連結され、前記エアリフト式光合成器は、光源手段からの照射を受ける。
【0013】
好ましくは、前記ジェット式酸素排出手
段は、酸素排出筒体と集液部とが構成され、前記酸素排出筒体の側壁には、集液部まで延伸された給気管が設けられる。
【0014】
好ましくは、前記酸素排出筒体には、排気管が更に設けられ、前記排気管と中空管の上端は第1通気半密閉素子により通気可能に塞がれることで、酸素排出筒体に外部環境からの不純物の進入を防ぐ。また、前記給気管の開口は前記酸素排出筒体側に設けられた第2通気半密閉素子により通気可能に塞がれることで、酸素排出筒体に外部環境からの不純物の進入を防ぐ。
【0015】
好ましくは、前記液貯留手段は配管であり、配管の管径は光透過配管の管径より大径で、底部には採集弁が設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、光透過配管の出口端の後方に液貯留手段が配置され、液貯留手段には光合成により発生した酸素を排出するための排気口が設けられ、更に、光合成で利用されるCOを供給するための二酸化炭素ガス供給管が接続されている。システム内に循環した藻体と培養液は、くり返し光透過配管に入って光合成を行い、液貯留手段内で増殖、成長し続け産量を大幅に増加させることができる。
【0017】
藻体を光透過配管に投入する前に、前処理として藻体を細胞分裂手段に入れ、藻体細胞分裂の速度を促進させることで、充分量の藻体細胞数が得られ、予め生物体量が増加された藻体を得ることができる。
【0018】
生物体量が増加された藻体と培養液は、光透過配管に入れられ、光合成を行い繰り返すことで藻体は生長して増殖し、採集できる藻体になる。
【0019】
このように、藻体の細胞分裂と生長増殖の2段階により、藻体の産量を向上させることができる。
【0020】
連結型密閉容器は、小型試験管と、中型ビーカーと、エアリフト式光合成器というサイズがそれぞれ異なった容器を備える。藻体は連結型密閉容器中を流動して光合成を行うことにより、段階的に細胞分裂し、細胞分裂の速度を高めることに寄与する。
【0021】
更に、気体吹込み装置から二酸化炭素をエアリフト式光合成器に吹き込むことで、培養液に流動が生し、その中の藻体を培養液中に均一に分散させることができ、藻体の成長や細胞分裂を容易にさせ、生物体量を増加させる。
【0022】
また、ジェット式酸素排出手段により給気と排気を行う場合、第1通気半密閉素子と第2通気半密閉素子によりジェット式酸素排出手段を外部からの不純物により汚染されることを防止する。これにより藻体が汚染されることなく生長増殖することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムを利用して藻体を培養する工程のフローチャートである。
【図2A】本発明の第1実施形態に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムを示す模式図であり、液貯留手段2は配管である場合を示す。
【図2B】本発明の第1実施形態に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムの変形例を示す模式図であって、液貯留手段2’は開放式の大容量タンクである場合を示す。
【図3】本発明に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムの細胞分裂手段を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムを示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムを示す模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。しかしながら本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。
【0025】
(第1実施形態)
図1、図2A、図2B及び図3に示すように、本発明に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムは、パイプ型光合成手段の光透過配管1と、液貯留手段2と、動力送液手段3と、ジェット式酸素排出手段4と、連通管手段5と、を有する。
【0026】
また、本発明に係る藻体の培養システムにおいて、細胞分裂手段6を更に有することが好ましい。
【0027】
前処理として藻体とその培養液を細胞分裂手段6に投入することで、あらかじめ生物体量(バイオマス)が増加した藻体を生成させることができる。当該生物体量が増加された藻体とその培養液を光透過配管1へ入れ、光合成をさせることで、培養液に光合成後の藻体と酸素が発生する。
【0028】
続いて、光合成後の培養液とその中に含まれる藻体を液貯留手段2へ移送し、さらに動力送液手段3により培養液とその中に含まれる藻体をジェット式酸素排出手段4に移送する。
【0029】
ジェット式酸素排出手段4において、培養液中の酸素が排出されると同時に二酸化炭素が培養液に供給され、光合成で消費された二酸化炭素を補充する。
【0030】
培養液とその中に含まれる藻体は連通管手段5に移送され、そこでしばらくの間生理的調節を行う。
【0031】
その後、光合成後の藻体は、再度光透過配管1へ移送され、前記一連の手順を繰り返す。
【0032】
このようにくり返し一連の手順を行なうことで、藻体は生長して増殖し、採集できる藻体となる。
【0033】
最後に、藻体は再び液貯留手段2に流れ込んで貯留され、そこで生長して大量に増殖し続け、採集可能となる。
【0034】
光透過配管1の周囲に補光照射手段11と噴水手段12を配置してもよい。また、光透過配管1の上流側に注入口101を設けると、藻体や培養液を容易に光透過配管1に注入することができるので好ましい。光透過配管1は上流側から下流側に向かって延長方向に螺旋状に配置され、注入口101から注入された藻体や培養液は、螺旋を描くように光透過配管1を流れる。
【0035】
補光照射手段11は蛍光灯具であってもよく、LEDランプであってもよい。補光照射手段11から出射された光を光透過配管1に照射することで、光合成に必要な十分な光強度が得られる。補光照射手段11が設けられる位置は特に限定されず、光透過配管1が受ける光の強さを藻体の光合成に必要な光強度にするように補光照射手段11を光透過配管1の付近に適宜設ければよい。なお、光合成に必要な光強度は、藻体の種類により異なるので、補光照射手段11の光線出射角度や光強度は必要に応じて変更する。
【0036】
噴水手段12は、手動操作式のものであってもよく、誘導型のものであってもよい。噴水手段12から噴き出す水を光透過配管1に当てることで、光透過配管1内の培養液の温度を低下させ、補光照射手段11による熱から守ることができる。
【0037】
本実施形態において、噴水手段12は光透過配管1の上方に配置されているが、噴水手段12が設けられる位置は特に限定されず、光透過配管1の温度を藻体の光合成に必要な温度にするように光透過配管1の付近に適宜設ければよい。
【0038】
なお、光合成に必要な温度は、藻体の種類により異なるので、必要に応じて、噴水手段12により培養液の温度を調整する。
【0039】
液貯留手段2は、光透過配管1よりも容積が大きく光透過配管1の出口部に連通される。液貯留手段2には、排気口21が設けられるとともに、二酸化炭素ガス供給管22が接続される。
【0040】
光合成により発生した酸素は、排気口21から外部へ放出されると共に、光合成に必要なCOが二酸化炭素ガス供給管22から培養液中に補充される。これにより、藻体は液貯留手段2内に増殖、生長し続けることができる。
【0041】
液貯留手段2は図2Aに示すように配管にしてもよく、また、図2Bに示すように、液貯留手段2’を開放式の大容量タンクにしてもよい。
【0042】
開放式タンクの場合、不純物が外部から培養液中に入ることを防ぐため、タンクの上に液貯留槽の開口を覆うための蓋部などが設けられる。蓋部以外の部分については液貯留手段2と同様に排気口21’と二酸化炭素ガス供給管22’が設けられる。
【0043】
液貯留手段2は密閉性と藻体の不純物汚染防止など衛生上の観点から、配管の方がより好ましい。その場合管体をU字状にし地上に設ける。その際、配管の管径は光透過配管1の管径より大径にする必要がある。また、配管である液貯留手段2の底部に藻体を採集するための採集弁23を設けてもよい。
【0044】
培養液は光透過配管1中での流速が早いので、受けた光量が増し、藻体の成長速度も迅速である。一方、液貯留手段2に流れ込むと、流速が緩やかになるために、藻体が凝集して凝集物を形成する。凝集された藻体は、液貯留手段2において細胞分裂を行って大量に増殖する。
【0045】
図2A、図2Bに示すように、液貯留手段2の端末には送液管31と加圧送液ポンプ32とを有する動力送液手段3が接続される。送液管31は、入口端が液貯留手段2に接続され、出口端が下記ジェット式酸素排出手段4に接続される。送液管31中の培養液は、加圧送液ポンプ32により加圧されて、ジェット式酸素排出手段4に移送される。
【0046】
ジェット式酸素排出手段4は、互いに取り付けられた酸素排出筒体41と集液部42とから構成される。中空筒体を成し、注液口411、上排気口412、及び中空管413を備える。注液口411は、送液管31の出口端と連通される。上排気口412は酸素排出筒体41の上部に開口し、上排気口412の下部には中空管413が延設される。また、酸素排出筒体41には、排気管43を更に設けてもよい。当該排気管43には下端に向けて徐々に内径を拡げたテーパー状の拡大部431が形成される。また、酸素排出筒体41の側壁には、集液部42まで延伸された給気管44を設けてもよい。
【0047】
上述の構成により動力送液手段3により移送された培養液は、注液口411から集液部42に流入する際、ジェット状に噴出し中空管413に衝突する。これにより培養液を回旋して酸素ガスを上排気口412から排出させる。
【0048】
また、培養液が落下する際、拡大部431に衝突し、培養液を飛散させ、酸素ガスの排出を更に促進する。その後、培養液は集液部42の底部に集まって沈む。なお、集液部42の底部の培養液へ、藻体の光合成に必要な二酸化炭素を給気管44から供給すると、培養液における藻体に再び光合成を行う能力を高めることができる。このように、ジェット式酸素排出手段4の構成により、上排気口412から培養液の酸素が排出され、給気管44から二酸化炭素が補充される。
【0049】
ジェット式酸素排出手段4には、第1通気半密閉素子45と第2通気半密閉素子46を更に設けることが好ましい。排気管43と中空管413の上端の開口を第1通気半密閉素子45で通気可能に塞ぐことで、ジェット式酸素排出手段4内に外部からの不純物の進入を遮断することができる。
【0050】
同様に酸素排出筒体41の側壁に設けられた前記給気管44の開口を前記酸素排出筒体41側に設けられた第2通気半密閉素子46で通気可能に塞ぐことで、ジェット式酸素排出手段4内に外部からの不純物の進入を遮断することができる。
【0051】
また、第1通気半密閉素子45と第2通気半密閉素子46には、フィルターやエアバルブを用いると、酸素や二酸化炭素などのガスが通過可能となると共にジェット式酸素排出手段4を外部環境の不純物から守ることができる。
【0052】
連通管手段5は入口端がジェット酸素排出手段4と連通し、出口端が光透過配管1と接続される。培養液はジェット式酸素排出手段4から連通管手段5に流入し、更に光透過配管1内に流入することで、培養液における藻体は再度光合成を行い、増殖することができる。
【0053】
図3に示すように、光透過配管1の上流には細胞分裂手段6が設けられる。前処理として藻体を細胞分裂手段6に入れ、藻体細胞分裂の速度を促進させることで、充分量の藻体細胞数が得られ、生物体量が増加された藻体を得ることができる。
【0054】
細胞分裂手段6は、複数の連結型密閉容器60を有する。また、各連結型密閉容器60毎には、複数の小型試験管61と、一つの中型ビーカー62と、一つのエアリフト式光合成器63とが備えられる。小型試験管61の下流には中型ビーカー62が連結され、中型ビーカー62の下流にはエアリフト式光合成器63が連結される。このように、連続して密閉的な連結型密閉容器60を構成する。
【0055】
各小型試験管61毎に藻体と培養液を入れ、藻体を細胞分裂させる。藻体が細胞分裂して所定量の細胞数となった後、各小型試験管61の藻体と培養液を中型ビーカー62に入れ、再び藻体を細胞分裂させる。最後に、中型ビーカー62の藻体と培養液をエアリフト式光合成器63に入れる。藻体はここで光源手段64からの照射を受け光合成を行う。このように、藻体は各連結型密閉容器60中に細胞分裂の速度が促進され、充分量の藻体細胞数を得ることができる。
【0056】
各エアリフト式光合成器63には各々一つの光源手段64が装備される。光源手段64は、第1光源641と、第2光源642と、電源643と電気制御装置644を備える。第1光源641と第2光源642は電気制御装置644を介して電源643に電気的に接続され、点灯に必要な電気の供給を受ける。
【0057】
また、電気制御装置644により第1光源641と第2光源642の輝度を調整することで、エアリフト式光合成器63内の藻体や培養液の温度を制御することができる。
【0058】
第1光源641はエアリフト式光合成器63の外部に設けられ、第2光源642はエアリフト式光合成器63の内部に設けられる。これにより、藻体に光線が充分に照射し、藻体は光合成により、生物体量を増加することができる。
【0059】
なお、連結型密閉容器60には、気体吹込み装置65を更に備えてもよい。気体吹込み装置65は、第1配管651と、第2配管652と、第3配管653とを有し、第1配管651は各小型試験管61に連接され、第2配管652は各中型ビーカー62に連接され、第3配管653は各エアリフト式光合成器63に連接される。
【0060】
気体吹込み装置65で発生させた二酸化炭素を第1配管651、第2配管652と第3配管653を介してそれぞれ小型試験管61、中型ビーカー62とエアリフト式光合成器63に吹き込むことで、培養液に流動が生じ、培養液中の藻体を均一に分散させる。これにより藻体の成長や細胞分裂を容易にさせ、生物体量が増加された藻体を得ることができる。
【0061】
光合成により発生した酸素は放気管631から外部へ放出される。一方、生物体量が増加した藻体と培養液は、合流配管66中を流れて、注入口101から光透過配管1に流入し、光合成を行い続ける。
【0062】
上記のように、接続されて密閉的な連結型密閉容器60の環境は、藻体の細胞分裂に寄与し、培養液中に生物体量を増加させた藻体が得られ、藻体の産量を向上させることができる。
【0063】
(第2実施形態)
また、本発明に係る実施形態の変形例として、ジェット式酸素排出手段と連通管手段を設計することができる。
【0064】
図4は、本発明の第2実施形態に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムを示す模式図である。第2実施形態に係る培養システムにおけるジェット式酸素排出手段4には本体の長さを比較的長めにした集液部42aを使用し、ジェット式酸素排出手段4と連通管手段5aとを並列に並べて構成する点で前記第1実施形態と相違する。
【0065】
本実施形態における連通管手段5aは連通入水口51aと、拡大式連通管52aと、連通出水管53aとを備える。拡大式連通管52aの、底部は連通入水口51aに連結され、上部は連通出水管53aに連結される。連通入水口51aは集液部42と連通される。連通出水管53aは光透過配管1の最上部の入口に連結される。
【0066】
これにより、集液部42に溜まった培養液の液面高度が拡大式連通管52aの液面高度より高くなると、圧力により培養液が連通出水管53aから光透過配管1へ流動し、光透過配管1に入る藻体は再度光合成を行い生長、増殖する。
【0067】
本実施形態では長さを長めにした集液部42aと大径の拡大式連通管52aを用いることにより、培養液の流速を緩徐させ、培養液が連通管手段5aから光透過配管1に流入する時間を長くさせることにより、藻体が生理的調節を行う充分な時間があり、これにより動力送液手段3やジェット式酸素排出手段4による生理的障害を解消することができ、品質の良い藻体を得ることができる。
【0068】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムを示す模式図である。
【0069】
連通管手段5bの数量は必要に応じて変更することができる。例えば、二つまたはそれ以上の連通管手段5bを互いに流通させるように連結することで、互いに流通させた連続式の連通管手段5bを構成してもよい。つまり、複数本並べて配置された拡大式連通管52bにより、連続式の拡大式連通管52bが構成され、且つ連続式の拡大式連通管52bはジェット式酸素排出手段4と光透過配管1と連通される。
【0070】
2個で一組の連続式の拡大式連通管52bの下部には、連続式の拡大式連通管52b同士を連結させる開閉弁部材71が更に設けられている。
【0071】
各拡大式連通管52bごとには気体経路72が接続されている。更に、2個で一組の連続式の拡大式連通管52bの上部に接続された配管は、酸素の排出と不純物の侵入防止のために、先端を下方に湾曲させ、下方に向いて開口した酸素排出口54bが形成されている。
【0072】
気体経路72を設ける位置は、藻体の流動方向に応じて設けることが好ましく、例えば、藻体が下部から流入する場合、拡大式連通管52bの下部に設け、上部から流入する場合には拡大式連通管52bの上部に設ければよい。
【0073】
このような連続式の拡大式連通管52bにより、ジェット式酸素排出手段4から導入された藻体は連続的に生理的調節を行うことができる。
【0074】
また、このように互いに流通させた連続式の連通管手段5bに、気体経路72から二酸化炭素ガスを吹き込むことで、培養液に流動が生じ、培養液中の藻体を均一に分散させる。これにより藻体の生長や細胞分裂を促進し、生物体量を増加させることができる。
【0075】
システム全体を循環して成長を完了した藻体は、開閉弁部材71により排出され採集することができる。
【0076】
本実施形態に係る連続式の連通管手段5bを前記実施形態のものと比較すると、システムの稼動を止めることなく一日1回または二日に1回くらいのペースで採集することができる効果が期待され、次の洗浄を行うまでに大量且つ継続的に採集することができる。
【0077】
(第4実施形態)
工業的に藻体を大量生産する目的を達成するために、光透過配管1の管径を大きくし、長さを長くすることにより産量を増加させるのは一般的であるが、配管中の酸素含有量が増加され、藻体の成長を抑える結果を招くことがある。このような課題を解決するために、図6に示す本発明の第4実施形態では、光透過配管1の中間部に排気するための通気弁部材73が設けられている。通気弁部材73は、光透過配管1に連通される連通水管731と、連通水管731に連通されるとともに上端の高さを光透過配管1より高くした排気管732と、連通水管731を開閉するための開閉弁733と、排出弁734とを有する。開閉弁733が開かれると、培養液は排気管732に流入するが、排気管732は上端の高さが光透過配管1より高いので、培養液は排気管732から溢流することがない。一方、酸素は排気管732から外部に排出することができる。また、酸素の外部への放出を容易にするための手段を設けてもよい。更に、排出弁734が開いている際、老廃した藻体や壊死した藻体を排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る工業的に培養可能な藻体の培養システムによると、その構造設計により大幅に藻体の収量を向上させ、工業的な大量生産に適する藻体の培養システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 光透過配管
101 注入口
11 補光照射手段
12 噴水手段
2 液貯留手段
21 排気口
22 二酸化炭素ガス供給管
23 採集弁
2’ 液貯留手段
21’ 排気口
22’ 二酸化炭素ガス供給管
3 動力送液手段
31 送液管
32 加圧送液ポンプ
4 ジェット式酸素排出手段
41 酸素排出筒体
411 注液口
412 上排気口
413 中空管
42,42a 集液部
43 排気管
431 拡大部
44 給気管
45 第1通気半密閉素子
46 第2通気半密閉素子
5 連通管手段
5a 連通管手段
51a 連通入水口
52a 拡大式連通管
53a 連通出水管
5b 連通管手段
52b 拡大式連通管
54b 酸素排出口
6 細胞分裂手段
60 連結型密閉容器
61 小型試験管
62 中型ビーカー
63 エアリフト式光合成器
631 放気管
64 光源手段
641 第1光源
642 第2光源
643 電源
644 電気制御装置
65 気体吹込み装置
651 第1配管
652 第2配管
653 第3配管
66 合流配管
71 開閉弁部材
72 気体経路
73 通気弁部材
731 連通水管
732 排気管
733 開閉弁
734 排出弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業的に培養可能な藻体の培養システムであって、
パイプ型光合成手段の光透過配管と、
前記光透過配管の出口部に連通される液貯留手段であって、前記光透過配管よりも容積が大きく、排気口が設けられるとともに二酸化炭素ガス供給管が接続される液貯留手段と、
送液管を有し、前記液貯留手段の端末に接続される動力送液手段と、中空筒体に形成されるジェット式酸素排出手段であって、注液口と、上排気口と、中空管とを有し、前記注液口は前記送液管の出口端と連通し、前記中空管は前記上排気口の下部に延設されるジェット式酸素排出手段と、
入口端が前記ジェット酸素排出手段と連通するとともに出口端が前記光透過配管と接続される連通管手段と、
を備えることを特徴とする工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項2】
更に、前記光透過配管の上流に細胞分裂手段が設けられ、前記細胞分裂手段は、複数の連結型密閉容器を備えることを特徴とする、請求項1に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項3】
前記各連結型密閉容器は、複数の小型試験管と、一つの中型ビーカーと、一つのエアリフト式光合成器とを備え、前記中型ビーカーは前記小型試験管の下流に連結され、前記エアリフト式光合成器は前記中型ビーカーの下流に連結され、前記エアリフト式光合成器は、光源手段からの照射を受けることを特徴とする、請求項2に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項4】
前記光源手段は、第1光源と、第2光源と、電源とを備え、前記第1光源と前記第2光源とは電源に電気的に接続され、前記第1光源は前記エアリフト式光合成器の外部に設けられ、前記第2光源は前記エアリフト式光合成器の内部に設けられることを特徴とする、請求項3に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項5】
更に、前記連結型密閉容器には気体吹込み装置65が接続され、前記気体吹込み装置は、第1配管と、第2配管と、第3配管とを有し、前記第1配管は各小型試験管に連接され、前記第2配管は各中型ビーカーに連接され、前記第3配管は各エアリフト式光合成器に連接されることを特徴とする、請求項3に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項6】
前記光透過配管の略中間部には、排気するための通気弁部材が設けられ、前記通気弁部材は、前記光透過配管と連通される連通水管と、前記連通水管と連通されるとともに上端の高さを前記光透過配管より高くした排気管と、前記連通水管を開閉するための開閉弁と、排出弁とを有することを特徴とする、請求項1に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項7】
更に、連通管手段に、互いに流通させるように配置された複数本の連続式の拡大式連通管が設けられ、各拡大式連通管ごとには気体経路が接続されて、2個で一組とする拡大式連通管の下部には、一組になった二つの拡大式連通管を連結する開閉弁部材が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項8】
前記液貯留手段は配管であって、管径は光透過配管の管径より大径で、底部には採集弁が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項9】
前記ジェット式酸素排出手段は、互いに取り付けられた酸素排出筒体と集液部とから構成され、前記酸素排出筒体の側壁には、集液部まで延伸された給気管が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。
【請求項10】
更に、前記酸素排出筒体には、排気管が設けられ、前記排気管と中空管の上端には第1通気半密閉素子で通気可能に塞がれることで、酸素排出筒体を外部環境から密閉状態にし、また、前記給気管の開口は前記酸素排出筒体の側に設けられた第2通気半密閉素子で通気可能に塞がれ、酸素排出筒体を外部環境から密閉状態にすることを特徴とする、請求項9に記載の工業的に培養可能な藻体の培養システム。



【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−80839(P2012−80839A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230665(P2010−230665)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(505137269)
【Fターム(参考)】