説明

差動出力増幅器装置

【課題】 それぞれフィードバック抵抗R2、R4を有する2つの演算増幅器OA1、OA2を備える差動出力増幅器装置DOAを提供すること。
【解決手段】 1対の出力抵抗R1、R3が、演算増幅器OA1、OA2の出力端子OUT1、OUT2を装置DOAのそれぞれの出力端子ZOUT1、ZOUT2に結合し、1対の入力端子R7、R8は、装置DOAの入力端子IN1、IN2をそれぞれの演算増幅器OA1、OA2のマイナス極性型入力端子INN1、INN2に結合する。演算増幅器OA1、OA2のプラス極性型入力端子INP1、INP2は接地される。さらに2つ抵抗R5、R6が、装置DOAの出力端子ZOUT1、ZOUT2を、クロス結合された演算増幅器OA1、OA2のマイナス極性型入力端子INN1、INN2にクロス結合する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、請求項1の非特徴部分において定義しているような差動出力増幅器装置に関する。
【0002】
【従来の技術】そのような差動出力増幅器装置はすでに、たとえば、出願人Alcatel、「Differential Output Amplifier Arrangement and Method for Tuning the Output Impedance of a Differential Output Amplifier(差動出力増幅器の出力インピーダンスを調整するための差動出力増幅器装置およびその方法)」という名称のEP0901221から知られている。そこで開示された差動出力増幅器装置は、アクティブに逆方向に終端されている。このことは、1対の抵抗(EP0901221の図面のR3とR30)が、演算増幅器の出力と装置の出力間に挿入され、1対の抵抗(EP0901221の図面のR4とR40)によって、装置の出力端子を、クロス結合された演算増幅器のマイナスの入力端子とクロス結合することを意味する。このアクティブな逆方向終端のために、所与のレベルで信号を生成するために差動信号増幅器装置が消費する電力は、たとえば2分の1に激減する。信号ソースは演算増幅器のプラス入力端子と結合し、一方、演算増幅器のマイナス入力には、抵抗が相互接続されている。入力におけるこの構成では、最低限の構成部品だけを用いる増幅器装置の場合に、バイアス制御および利得制御を実現することが不可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、知られている装置に類似しているが、バイアス制御および利得制御が最低限の構成部品で実現される差動出力増幅器装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によると、この目的は、請求項1で定義される差動出力増幅器装置によって達成される。
【0005】実際のところ、バイアス制御および利得制御を行う7番目と8番目の抵抗があるため、信号ソースは、直接、本発明による増幅器装置の入力端子と結合することができる。この信号ソースは、直接、従来技術の増幅器装置の入力端子と結合できないはずである。なぜならば、そこでのバイアスには、信号ソースと増幅器装置の入力端子間に挿入される2つの抵抗が必要とされるためである。これらのバイアス抵抗は、そもそも本発明による増幅器装置の一部を形成しており、従来技術の解決策のように2つの演算増幅器のマイナス入力端子を相互接続する抵抗は、もはや必要ではない。
【0006】請求項で使用される「備える」という用語は、それ以後にリストされた手段に限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、「手段AおよびBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成部品AおよびBのみから構成されるデバイスに限定されるべきではない。これは、本発明に関して、デバイスに関連する構成部品がAおよびBのみであることを意味している。
【0007】同様に、請求項で使用される「結合された」という用語も、直接接続のみに限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、「デバイスBに結合されたデバイスA」という表現の範囲は、デバイスAの出力が直接デバイスBの入力に接続されるデバイスまたはシステムに限定されるべきではない。これは、Aの出力とBの入力間にパスが存在し、そのパスには他のデバイスまたは手段が含まれる可能性があることを意味している。
【0008】本発明による差動出力増幅器装置の他の特徴は、請求項2で定義している。
【0009】フィードバック抵抗がほぼ同じ抵抗値を有する場合、2つの演算増幅器のより良い負荷バランスが得られる。
【0010】本発明による差動出力増幅器装置の他の利点となる特徴は、請求項3および4で定義している。
【0011】このやり方では、2つ1組で、ほぼ等しいアクティブな逆方向終端の抵抗があることによって、演算増幅器のより良い負荷バランスが得られるだけではなく、特定の特性が得られるような逆方向終端抵抗値の選択を可能にする設計基準および式が大幅に簡略化される。このことは、すでに引用したEP0901221で説明されている。
【0012】本発明による差動出力増幅器装置の他の利点となる特徴は、請求項5で定義している。
【0013】ここでは、バイアス抵抗は、ほぼ等しい抵抗値を有することが好ましい。
【0014】さらに、本発明による差動出力増幅器装置の利点となる特徴は、請求項6で定義している。
【0015】このやり方では、本発明による増幅器装置は、システム理論の観点において安定性のあるシステムとなる。それは、この装置が振動しないことを意味している。
【0016】本発明による差動出力増幅器装置の一実施形態を示す添付図面とともに行う、一実施形態の以下の説明を参照することによって、本発明の上述および他の目的と特徴がより明らかになり、本発明自体は最良に理解されよう。
【0017】
【発明の実施の形態】図面に示している差動出力増幅器装置DOAは、IN1およびIN2によって示している2つの装置入力端子、ならびにZOUT1およびZOUT2によって示している2つの装置出力端子を有する。装置入力端子INT1およびINT2には、差動入力信号ソースの端子が結合されている。装置出力端子ZOUT1およびZOUT2は、伝送回線T1およびT2に結合されている。
【0018】さらに、差動出力増幅器装置DOAは、それぞれ非反転入力端子INP1およびINP2、それぞれ反転入力端子INN1およびINN2を有し、さらにそれぞれ出力端子OUT1およびOUT2を有する2つの演算増幅器OA1およびOA2を含んでいる。第1の演算増幅器OA1の出力端子OUT1は、第1の抵抗R1を介して第1の装置出力端子ZOUT1と結合し、フィードバックは、第2の抵抗R2を介してこの第1の演算増幅器OA1の反転入力端子INN1と結合している。同様に、第2の演算増幅器OA2の出力端子OUT2は、第3の抵抗R3を介して第2の装置出力端子ZOUT2と結合し、フィードバックは、第4の抵抗R4を介してこの第2の演算増幅器OA2の反転入力端子INN2と結合している。
【0019】差動出力増幅器装置DOA1は、さらに2つの抵抗を含み、それは、第1の装置出力端子ZOUT1を第2の演算増幅器OA2の反転入力端子INN2とクロス結合する第5の抵抗R5、および第2の装置出力端子ZOUT2を第1の演算増幅器OA1の反転入力端子INN1とクロス結合する第6の抵抗R6である。これらの抵抗R5とR6は、第1の抵抗R1と第3の抵抗R3とともに、装置DOAの出力インピーダンスを望ましい値に調整すること可能にするアクティブな逆方向終端を構成している。典型的に、装置DOAの出力インピーダンスは、図面のRLによって示している負荷インピーダンスと整合していることが望ましく、図面では、RLが端子RL1およびRL2を介して伝送回線T1およびT2と結合している。伝送回線T1およびT2の特性インピーダンスは、整合の目的のために、RLの2分の1に等しいものとする。すでに引用したEP0901221で説明されているように、このアクティブな逆方向終端の第1の抵抗R1および第3の抵抗R3による電圧降下により、装置DOAは、演算増幅器OA1およびOA2に対する低下した供給電圧を持ち、および/または演算増幅器OA1およびOA2両方に対する増大したダイナミックレンジを持つ、所与の電力を有する出力信号を供給することが出来る。
【0020】さらに、差動出力増幅器装置DOAは、第1の演算増幅器OA1の第1の装置入力端子IN1と反転入力端子INN1間を結合する第7の抵抗R7、および第2の演算増幅器OA2の第2の装置入力端子IN2と反転入力端子INN2間を結合する第8の抵抗R8を含んでいる。装置DOAの第1の装置入力端子IN1と第2の装置入力端子IN2間には、差動入力信号Vsが加えられる。
【0021】差動出力増幅器装置DOAの出力インピーダンスを求める式は、抵抗R1とR3、R2とR4、R5とR6、R7とR8が2つ1組として、ほぼ同じ抵抗値を有するとすると、以下の通りである。
【数1】


【0022】この式から、抵抗値R1とR5の合計は、抵抗値R2より大きい必要があることを理解することができるが、それは、装置DOAに対する安定性の解析から得られる必要条件でもある。
【0023】差動出力増幅器装置DOAの利得は、再び抵抗R1とR3、R2とR4、R5とR6、R7とR8が2つ1組として、ほぼ同じ抵抗値を有するとすると、以下の通りである。
【数2】


【0024】式(1)および(2)に基づいて、抵抗値R1、R2、R5、およびR7を、望ましい利得と装置出力インピーダンスを実現するように選択することができる。さらに、差動出力増幅器装置DOAの利得Aを調整可能な抵抗R7およびR8は、入力におけるDCバイアスを実現する。そのようなバイアスは、EP0901221によって知られている装置では実現しておらず、演算増幅器の入力端子を接地または基準レベルと結合するさらに2つの抵抗によって、入力にバイアスが供給される必要がある。したがって、バイアス制御および利得制御は、結局、構成部品がより少なくてすむので、本発明による装置において、より効率的に実現する。
【0025】式(1)および(2)は、演算増幅器OA1およびOA2が「理想的な」演算増幅器、すなわち、入力インピーダンスが無限大で、オープンループ利得も無限大、さらに出力インピーダンスがゼロである増幅器としている。現実には、「理想的な」演算増幅器が存在しないことを考慮に入れ、抵抗の値を選択するときには、いくつかの対策を講じる必要がある。
【0026】差動出力増幅器装置DOAの一実施形態は、たとえば、ADSL(Asynchronous Digital Subscriber Line)の回線ドライバにおいて使用することができる。そのような回線ドライバの特性インピーダンスは、ハイブリッドによって、演算増幅器OA1およびOA2の出力において観測される12.5オームの値に変更する。負荷抵抗RLは、整合の目的のために、等価抵抗値である25オームを有する。望ましい利得Aは、この特許出願の範囲を超える、周りのシステムを考慮して設定する。そのような一実施形態では、演算増幅器および抵抗値は、以下のように選択することができる。
【0027】演算増幅器の場合、AD816などの電流増幅器を選択することができる。それは、ADSLで使用する場合に重要な特性である、電流ドライブ能力に優れ、高周波の歪みが低いからであり、このことは、当業者によって認識されよう。
【0028】フィードバック抵抗R2およびR4は、増幅器に対して望ましい利得帯域幅の積が得られるように選択する。これらの値は、演算増幅器の製造業者のデータシートによって提供される。
【0029】R1およびR3は、一方で、最大の電力を負荷に供給可能にするために、可能な限り小さくすべきである。演算増幅器OA1およびOA2は、理想的なものではなく、フィードバック抵抗R2およびR4の挿入による閉ループを構成しているので、これらの増幅器のゼロではない出力インピーダンスが、抵抗R1およびR3の値に加わる。この影響を最小限に抑えるために、抵抗R1およびR3に対する抵抗値は、増幅器の出力インピーダンス値より、少なくとも1桁大きくなるように選択する。
【0030】次いで、式(1)および(2)から、R5とR7の値を計算する。
【0031】本発明の原理を特定の装置に関連して上述してきたが、この説明は、単に例示的に行っており、本発明の範囲を限定するものではいことをはっきりと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による差動出力増幅器装置の一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
Vs 差動入力信号
IN1 第1の装置入力端子
IN2 第2の装置入力端子
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8 抵抗
INP1、INP2 非反転増幅器入力端子
INN1、INN2 反転増幅器入力端子
OA1 第1の演算増幅器
OA2 第2の演算増幅器
OUT1、OUT2 増幅器出力端子
DOA 差動出力増幅器装置
ZOUT1 第1の装置出力端子
ZOUT2 第2の装置出力端子
T1、T2 伝送回線
RL1、RL2 端子
RL 負荷抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】 差動出力増幅器装置であって、入力信号ソース(Vs)の第1の端子および第2の端子とそれぞれ結合するための第1の装置入力端子(IN1)および第2の装置入力端子(IN2)と、差動出力電圧、すなわち差動出力を供給するための第1の装置出力端子(ZOUT1)および第2の装置出力端子(ZOUT2)と、第1の極性型(+)の第1の増幅器入力端子(INP1)および前記第1の極性型(+)とは反対の第2の極性型(−)の第2の増幅器入力端子(INN1)、ならびに第1の抵抗(R1)を介して前記第1の装置出力端子(ZOUT1)に結合され、第2の抵抗(R2)を介して第1の演算増幅器(OA1)の前記第2の増幅器入力端子(INN1)に結合された増幅器出力端子(OUT1)を有する第1の演算増幅器(OA1)と、前記第1の極性型(+)の第1の増幅器入力端子(INP2)および前記第2の極性型(−)の第2の増幅器入力端子(INN2)、ならびに第3の抵抗(R3)を介して前記第2の装置出力端子(ZOUT2)に結合され、第4の抵抗(R4)を介して前記第2の演算増幅器(OA2)の前記第2の増幅器入力端子(INN2)に結合された増幅器出力端子(OUT2)を有する第2の演算増幅器(OA2)と、前記第1の装置出力端子(ZOUT1)を前記第2の演算増幅器(OA2)の前記第2の増幅器入力端子(INN2)に結合する第5の抵抗(R5)、および前記第2の装置出力端子(ZOUT2)を前記第1の演算増幅器(OA1)の前記第2の増幅器入力端子(INN1)に結合する第6の抵抗(R6)とを備えており、前記第1の演算増幅器(OA1)の前記第1の増幅器入力端子(INP1)が接地に結合され、前記第2の演算増幅器の前記第1の増幅器入力端子(INP2)も前記接地に結合されており、前記差動出力増幅器装置(DOA)はさらに、前記第1の装置入力端子(IN1)を前記第1の演算増幅器(OA1)の前記第2の増幅器入力端子(INN1)に結合する第7の抵抗(R7)、および前記第2の装置入力端子(IN2)を前記第2の演算増幅器(OA2)の前記第2の増幅器入力端子(INN2)に結合する第8の抵抗(R8)を備えることを特徴とする差動出力増幅器装置(DOA)。
【請求項2】 前記第2の抵抗(R2)と前記第4の抵抗(R4)が、ほぼ同じ抵抗値を有することを特徴とする請求項1に記載の差動出力増幅器装置(DOA)。
【請求項3】 前記第1の抵抗(R1)および前記第3の抵抗(R3)が、ほぼ同じ抵抗値を有することを特徴とする請求項1に記載の差動出力増幅器装置(DOA)。
【請求項4】 前記第5の抵抗(R5)および前記第6の抵抗(R6)が、ほぼ同じ抵抗値を有することを特徴とする請求項1に記載の差動出力増幅器装置(DOA)。
【請求項5】 前記第7の抵抗(R7)および前記第8の抵抗(R8)が、ほぼ同じ抵抗値を有することを特徴とする請求項1に記載の差動出力増幅器装置(DOA)。
【請求項6】 前記第2の抵抗(R2)の抵抗値は、前記第1の抵抗(R1)と前記第5の抵抗(R5)の抵抗値の合計よりも小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の差動出力増幅器装置(DOA)。

【図1】
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【公開番号】特開2002−223134(P2002−223134A)
【公開日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】有
【出願番号】特願2001−388784(P2001−388784)
【出願日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【出願人】(391030332)アルカテル (1,149)
【Fターム(参考)】