説明

差込フィルタホルダ

【課題】高い防塵防滴機能を得るとともに、フィルタユニットをスムーズに回転させることができ、構造が簡素で、製造及び組付けが簡単な差込フィルタホルダを提供すること。
【解決手段】レンズ鏡筒に挿脱可能なホルダ本体10を有し、このホルダ本体10の外部から回転操作可能な操作リング20への回転操作力をホルダ本体10の内部に配置されたフィルタユニット80に伝達してこのフィルタユニット80を回転させる差込フィルタホルダ1において、ホルダ本体10に、ホルダ本体10の外部と内部を区画する凹部13を形成し、ホルダ本体10の外部の凹部13内に操作リング20を配置し、ホルダ本体10の内部に、操作リング20と同軸に、フィルタユニット80を連動回転させる連結ギヤ30を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差込フィルタホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、差込フィルタホルダとして、レンズ鏡筒に挿脱可能なホルダ本体を有し、このホルダ本体の外部から回転操作可能な操作リングへの回転操作力をホルダ本体の内部に配置されたフィルタユニットに伝達してフィルタユニット(例えばCPLフィルタ)を回転させる構成のものがある。
【0003】
このような差込フィルタホルダにおいて、ホルダ本体の外部から内部への粉塵や水の侵入を防ぐ防塵防滴構造として、ホルダ本体にその外部と内部を区画する凹部を形成し、ホルダ本体の外部の凹部内に操作リングを配置し、ホルダ本体の内部に、操作リングの回転をフィルタユニットに伝達する連結ギヤを配置したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−249888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来技術にあっては、操作リングと連結ギヤにそれぞれ設けられたギヤ部がホルダ本体の外部の凹部内で噛合している(ギヤ部の噛合面がホルダ本体の外部に露出している)ため、これらギヤ部の噛合面を通じて、ホルダ本体の外部から内部に粉塵や水が侵入することがあり、十分な防塵防滴機能が得られていない。
【0006】
また、操作リングと連結ギヤのギヤ部の噛合面に粉塵が入ると、回転に不具合が生じ、フィルタユニットのスムーズな回転が妨げられる虞がある。
【0007】
さらに、操作リングと連結ギヤにそれぞれギヤ部を設けてこれらを噛合させなければならず、操作リングと連結ギヤにそれぞれ軸部材を設けてホルダ本体に挿通支持しなければならないため、構造が複雑で、製造及び組付けが難しい。
【0008】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、高い防塵防滴機能を得るとともに、フィルタユニットをスムーズに回転させることができ、構造が簡素で、製造及び組付けが簡単な差込フィルタホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、操作リングと連結ギヤをホルダ本体の外部と内部に同軸上に配置して一体回転可能とすれば、操作リングと連結ギヤにそれぞれギヤ部を設けてこれらをホルダ本体の外部の凹部内で噛合させる必要がないため、ギヤ部の噛合面を通じて粉塵や水がホルダ内部に侵入することなく高い防塵防滴機能が得られ、ギヤ部の噛合面に粉塵が入らずフィルタユニットをスムーズに回転させることができ、また、構造を簡素化し、製造及び組付けを簡単化することができるとの着眼に基づいてなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明の差込フィルタホルダは、レンズ鏡筒に挿脱可能なホルダ本体を有し、該ホルダ本体の外部から回転操作可能な操作リングへの回転操作力をホルダ本体の内部に配置されたフィルタユニットに伝達して該フィルタユニットを回転させる差込フィルタホルダにおいて、前記ホルダ本体に、該ホルダ本体の外部と内部を区画する凹部を形成し、前記ホルダ本体の外部の前記凹部内に前記操作リングを配置し、前記ホルダ本体の内部に、前記操作リングと同軸に、前記フィルタユニットを連動回転させる連結ギヤを配置したことを特徴としている。
【0011】
前記凹部は、互いに平行な一対の隔壁を有し、前記操作リング及び連結ギヤの少なくとも一方は、非円形軸穴部を有し、前記一対の隔壁に、前記操作リングの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部、及び/又は前記連結ギヤの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部を有する軸部材を挿通支持することができる。より具体的には、操作リング及び連結ギヤのうち、軸部材に組み付けるときに軸部材が最初に入り込む一方に非円形軸穴部を設けて軸部材の非円形段部と嵌合させればよい。
【0012】
前記操作リング及び連結ギヤのそれぞれ(双方)に非円形軸穴部を設け、前記軸部材は、前記操作リングの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部と、前記連結ギヤの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部を有することが好ましい。
【0013】
前記操作リングの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部を、前記連結ギヤの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部より大径又は小径とすれば(異なる径とすれば)、軸部材に操作リング及び連結ギヤが組み付け易くなる。
【0014】
もちろん、前記操作リングの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部を、前記連結ギヤの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部と略同一径とすることもできる。
【0015】
前記一対の隔壁への前記軸部材の挿通部にOリングを設ければ、より高い防塵防滴効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い防塵防滴機能を得るとともに、フィルタユニットをスムーズに回転させることができ、構造が簡素で、製造及び組付けが簡単な差込フィルタホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る差込フィルタホルダの分解斜視図である。
【図2】同断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係る差込フィルタホルダ1を示している。差込フィルタホルダ1は、図2に鎖線で示す一眼レフカメラ用レンズ鏡筒Lの切欠部Sに挿脱可能なホルダ本体10を有する。ホルダ本体10は、レンズ鏡筒Lの外周面に沿う部分円筒形状の外装板11と、レンズ鏡筒L内に挿入される挿入板部12を有し、挿入板部12には、レンズ鏡筒Lへの挿入状態で光束を通す開口(光束透過開口)12Aが形成されている。符号Oは、レンズ鏡筒Lの撮影光軸(光束透過開口12Aの中心)を示している。外装板11とレンズ鏡筒L(切欠部S)との間の液密は、図示しない液密手段によって保持される。
【0019】
ホルダ本体10には、その外装板11に開口して、ホルダ本体10の外部(ホルダ外部)とホルダ本体10の内部(ホルダ内部)を区画する凹部13が形成されている。凹部13は、光軸Oに直交する互いに平行な一対の隔壁14A、14Bを有しており、この一対の隔壁14A、14Bに、光軸Oと平行な一対の貫通穴15A、15Bが同軸上に形成されている。
【0020】
ホルダ外部の凹部13内には、操作リング20が配置されており、凹部13で区画されたホルダ内部には、操作リング20と同軸の駆動ギヤ(連結ギヤ)30が配置されている。この操作リング20と駆動ギヤ30はそれぞれ、大径小判型軸穴部(大径非円形軸穴部)21と小径小判型軸穴部(小径非円形軸穴部)31を有しており、一対の貫通穴15A、15Bに挿通された軸部材40によって同軸に支持されている。
【0021】
すなわち、軸部材40は、操作リング20の大径小判型軸穴部21と嵌合する大径小判型段部(大径非円形段部)41と、駆動ギヤ30の小径小判型軸穴部(小径非円形軸穴部)31と嵌合する小径小判型段部(小径非円形段部)42を有している。軸部材40はまた、その一端部に、隔壁14Aのホルダ内部に位置する外方フランジ部40Fを有し、他端部の軸部にビス穴43を有している。
【0022】
一対の隔壁14A、14Bには、一対の貫通穴15A、15Bの内側端部に同軸に環状段部16A、16Bが形成されており、この環状段部16A、16BにOリング(環状パッキン)17A、17Bが設けられている。
【0023】
軸部材40は、一対の貫通穴15A、15B(Oリング17A、17B)に挿通され、その大径小判型段部41と小径小判型段部42をそれぞれ、操作リング20の大径小判型軸穴部21と駆動ギヤ30の小径小判型軸穴部31に嵌合させた状態で、ビス穴43にビス44が締め付けられる。その結果、隔壁14A、14Bの内側に位置する大径フランジ部40Fとビス44により、操作リング20と駆動ギヤ30の軸方向(スラスト方向)位置と回転方向(ラジアル方向)位置が規定される。同時に、Oリング17A、17Bにより、一対の貫通穴15A、15Bと軸部材40の隙間が封止され、凹部13で区画されたホルダ外部とホルダ内部が液密に遮断される。従って、ホルダ外部から操作リング20を回転操作すると、操作リング20、駆動ギヤ30及び軸部材40が一体回転する。
【0024】
一方、挿入板部12には、ホルダ(凹部13)内部に位置するアイドルギヤ50、フィルタギヤ(従属ギヤ)60、フィルタ取付環70及びフィルタユニット80が支持されている。
【0025】
アイドルギヤ50は、そのギヤ部51が駆動ギヤ30のギヤ部32とフィルタギヤ60のギヤ部61に同時に噛み合うもので、その内周面52が挿入板部12の円形軸部18に回転可能に嵌められ、円形軸部18のビス穴18Aにワッシャ53を介在させてビス54を締め付けることにより、軸方向位置と回転方向位置が規定されている。
【0026】
フィルタギヤ60、フィルタ取付環70及びフィルタユニット80は、挿入板部12の光束透過開口12Aに同軸に支持されている。フィルタギヤ60の内周面62には、フィルタ取付環70の嵌合筒部71の外周面71Aが相対回転不能にねじ込み固定されており、嵌合筒部71の内周面71Bには、フィルタユニット80が相対回転不能にねじ込み固定されている。これにより、フィルタギヤ60が回転すると、フィルタギヤ60、フィルタ取付環70及びフィルタユニット80が一体回転する。フィルタ取付環70は、その光軸直交面72がホルダ本体10の光束透過開口12Aの周囲に形成された環状フランジ部12Bに当接しており、一体回転するフィルタギヤ60、フィルタ取付環70及びフィルタユニット80の軸方向位置が規定(スラスト規制)されている。フィルタユニット80は、被写体からの不要な反射光をカットするCPLフィルタ(円偏光フィルタ)81を保持している。フィルタユニット80はフィルタ取付環70に対して着脱可能であり、撮影状況に応じて所望のフィルタユニット80を交換して使用することができる。
【0027】
以上の構成の差込フィルタホルダ1を使用して撮影を行う場合、まず撮影状況に応じた所望のフィルタユニット80をフィルタ取付環70にねじ込み固定して、差込フィルタホルダ1をレンズ鏡筒Lの切欠部Sに挿入する。この挿入状態で、挿入板部12の光束透過開口12Aの中心がレンズ鏡筒Lの撮影光軸Oに一致する。次いで、撮影者がカメラのファインダを覗きながらホルダ外部から操作リング20を回転操作すると、その回転操作力が軸部材40から駆動ギヤ30、アイドルギヤ50、フィルタギヤ60と順次伝達され、フィルタ取付環70及びフィルタユニット80がフィルタギヤ60と一体回転する。このようにしてフィルタユニット80を回転させCPLフィルタ81の効果を調整したら、撮影者は操作リング20の回転操作を止めて撮影を行う。
【0028】
本実施形態では、ホルダ本体10に、ホルダ本体10の外部と内部を区画する凹部13を形成し、ホルダ本体10の外部の凹部13内に操作リング20を配置し、ホルダ本体10の内部に、操作リング20と同軸に、フィルタユニット80を連動回転させる駆動ギヤ(連結ギヤ)30を配置している。したがって、上述した従来技術のように、操作リングと連結ギヤにそれぞれギヤ部を設けてこれらをホルダ本体の外部の凹部内で噛合させる必要がないため、ギヤ部の噛合面を通じて粉塵や水がホルダ内部に侵入することなく高い防塵防滴機能が得られる。また、Oリング17A、17Bにより軸部材40と一対の貫通穴15A、15Bの隙間が封止され、凹部13で区画されたホルダ本体10の外部と内部が液密に遮断されるので、その防塵防滴機能は極めて高い。
【0029】
また、上述した従来技術のように、操作リングと連結ギヤのギヤ部の噛合面に粉塵が入って回転に不具合が生じフィルタユニットのスムーズな回転が妨げられることはなく、操作リング20に与えられた回転操作力がフィルタユニット80に伝達されフィルタユニット80をスムーズに回転させることができる。
【0030】
さらに、操作リング20の大径小判型軸穴部21に軸部材40の大径小判型段部41を嵌合させ、駆動ギヤ30の小径小判型軸穴部31に軸部材40の小径小判型段部42を嵌合させて、凹部13の互いに平行な一対の隔壁14A、14Bに軸部材40を挿通支持するだけなので、構造が簡素で、製造及び組付けが簡単である。
【0031】
図示していないが、凹部13の底部にホルダ本体10の外部まで連通する穴を形成すれば、ホルダ本体10の内部に侵入できず凹部13に溜まる水を速やかにホルダ本体10の外部に抜くことができて好適である。
【0032】
大径小判型軸穴部21、小径小判型軸穴部31、大径小判型段部41及び小径小判型段部42は小判型形状に限定されず、その他の非円形形状であっても、操作リング20、駆動ギヤ30及び軸部材40を操作リング20の回転操作に伴って一体回転させることができる。
【0033】
小判型軸穴部21(小判型段部41)及び小判型軸穴部31(小判型段部42)の径の大小関係には自由度があり、小判型軸穴部21(小判型段部41)を小判型軸穴部31(小判型段部42)より小径としてもよいし、両者を略同一径としてもよい。
【0034】
また、アイドルギヤ50を省略して駆動ギヤ30を直接フィルタギヤ60に噛み合わせる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 差込フィルタホルダ
10 ホルダ本体
11 外装板
12 挿入板部
12A 光束透過開口
12B 環状フランジ部
13 凹部
14A、14B 一対の隔壁
15A、15B 一対の貫通穴
16A、16B 環状段部
17A、17B Oリング(環状パッキン)
18 円形軸部
18A ビス穴
20 操作リング
21 大径小判型軸穴部(大径非円形軸穴部)
30 駆動ギヤ(連結ギヤ)
31 小径小判型軸穴部(小径非円形軸穴部)
32 ギヤ部
40 軸部材
40F 外方フランジ
41 大径小判型段部(大径非円形段部)
42 小径小判型段部(小径非円形段部)
43 ビス穴
44 ビス
50 アイドルギヤ
51 ギヤ部
52 内周面
53 ワッシャ
54 ビス
60 フィルタギヤ(従属ギヤ)
61 ギヤ部
62 内周面
70 フィルタ取付環
71 嵌合筒部
71A 外周面
71B 内周面
72 光軸直交面
80 フィルタユニット
81 CPLフィルタ(円偏光フィルタ)
L レンズ鏡筒
S 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒に挿脱可能なホルダ本体を有し、該ホルダ本体の外部から回転操作可能な操作リングへの回転操作力をホルダ本体の内部に配置されたフィルタユニットに伝達して該フィルタユニットを回転させる差込フィルタホルダにおいて、
前記ホルダ本体に、該ホルダ本体の外部と内部を区画する凹部を形成し、
前記ホルダ本体の外部の前記凹部内に前記操作リングを配置し、
前記ホルダ本体の内部に、前記操作リングと同軸に、前記フィルタユニットを連動回転させる連結ギヤを配置したことを特徴とする差込フィルタホルダ。
【請求項2】
請求項1記載の差込フィルタホルダにおいて、
前記凹部は、互いに平行な一対の隔壁を有し、
前記操作リング及び連結ギヤの少なくとも一方は、非円形軸穴部を有し、
前記一対の隔壁に、前記操作リングの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部、及び/又は前記連結ギヤの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部を有する軸部材を挿通支持した差込フィルタホルダ。
【請求項3】
請求項2記載の差込フィルタホルダにおいて、
前記操作リング及び連結ギヤはそれぞれ、非円形軸穴部を有し、
前記軸部材は、前記操作リングの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部と、前記連結ギヤの非円形軸穴部に嵌合する非円形段部を有する差込フィルタホルダ。
【請求項4】
請求項3記載の差込フィルタホルダにおいて、
前記操作リングの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部は、前記連結ギヤの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部より大径又は小径である差込フィルタホルダ。
【請求項5】
請求項3記載の差込フィルタホルダにおいて、
前記操作リングの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部は、前記連結ギヤの非円形軸穴部及び軸部材の対応する非円形段部と略同一径である差込フィルタホルダ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の差込フィルタホルダにおいて、
前記一対の隔壁への前記軸部材の挿通部にOリングが設けられている差込フィルタホルダ。

【図1】
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【図2】
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