説明

巻き取り装置

【課題】 記録媒体をロール状に巻き取るために回転可能に支持された巻き芯と、前記巻き芯を回転操作するための回転駆動機構とを備えた巻き取り装置において、巻き取りを開始する前の記録媒体の巻き芯への固定操作などが容易で、且つ、記録媒体の先端が損傷する虞の少ない巻き取り装置を提供する。
【解決手段】 巻き芯Tは、筒状の巻き芯本体Taと、巻き芯本体Taに取り付けられた薄膜状の押さえ部材14とを有し、巻き芯本体Taの外周面と押さえ部材14との間に記録媒体Mの先端を挟着させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体をロール状に巻き取るために回転可能に支持された巻き芯と、前記巻き芯を回転操作するための回転駆動機構とを備えた巻き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の巻き取り装置としては、本発明に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された巻き取り装置では、シート状のつなぎ部材の基端部が巻き芯に固定されており、つなぎ部材は少なくとも画像形成装置から巻き取り装置までの間隔と同じ長さを備えている。そこで、画像形成装置から僅かに排出されているロール紙の先端をつなぎ部材の遊端側に粘着テープなどで固定すれば、画像形成装置の駆動開始と共に直ぐに巻き取りを開始できるので、画像形成装置から巻き取り装置までの間隔と同じ長さ分のロール紙の先端を無駄にする必要がない、或いは、ロール紙の先端が巻き取り装置に達するまで巻き取り開始を待つ必要がない。尚、巻き芯の外周の一部に形成された切欠きと、巻き芯に固定された板バネとからなる接合手段が設けられており、シート状のつなぎ部材の一端は、この切欠きの一方の縁部と、同縁部に押し付けられた板バネの先端との間に挟着固定されている。
【特許文献1】特開2001−080800号公報(段落番号0021、0022、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記された巻き取り装置では、巻き取りを開始する前に、カラープロッタ等の画像形成装置から排出された記録媒体の先端をつなぎ部材の遊端側に粘着テープで固定する操作が必要であり、また、巻き取りが完了後の記録媒体を、巻き芯から巻き戻して次の工程に引き渡す際には、記録媒体から粘着テープを剥がすという操作が必要であるため、オペレータは煩雑な作業を強いられていた。さらに、記録媒体から粘着テープを剥がす際に、記録媒体の表面がテープの粘着層によって傷められ易く、巻き芯が紙管の場合には巻き芯の外周面も同様にテープの粘着層によって傷められ易いという問題があった。また、特許文献1における記された、切欠きと板バネとからなる接合手段に記録媒体の先端を挟み込む場合も、記録媒体の先端が折り曲げられることで損傷を受けるという問題があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、上に例示した従来技術による巻き取り装置の持つ前述した欠点に鑑み、巻き取りを開始する前の記録媒体の巻き芯への固定操作などが容易で、且つ、記録媒体の先端が損傷する虞の少ない巻き取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成は、記録媒体をロール状に巻き取るために回転可能に支持された巻き芯と、前記巻き芯を回転操作するための回転駆動機構とを備えた巻き取り装置であって、
前記巻き芯は、筒状の巻き芯本体と、前記巻き芯本体に取り付けられた薄膜状の押さえ部材とを有し、前記巻き芯本体の外周面と前記押さえ部材との間に記録媒体の先端が挟着させるように構成されている点にある。
【0006】
したがって、本発明の第1の特徴構成による巻き取り装置では、膜状の押さえ部材を巻き芯本体の外周面から少し引き離し、記録媒体の先端を、押さえ部材と巻き芯本体の境界部に突き当たるまで差し込んで、押さえ部材から手を離せば、記録媒体の先端は巻き芯本体の外周面と押さえ部材との間に挟着されて、固定が完了するので、画像形成装置等の記録媒体処理手段から排出されて来た記録媒体を巻き取り装置の巻き芯に固定する操作が非常に簡単である。記録媒体の先端は巻き芯本体の外周面と押さえ部材との間に挟着されているだけなので、巻き取った記録媒体を巻き芯から巻き戻す際には、記録媒体に張力を掛けながら巻き芯を逆転させるだけで、記録媒体の先端は押さえ部材の下から自然に抜け出て、巻き芯から簡単に分離される。したがって、記録媒体から粘着テープを剥がすという操作が不要であり、しかも、テープの粘着層によって記録媒体の表面が損傷することもない。さらに、押さえ部材は恒久的に巻き芯本体に取り付けておけば良いので、巻き芯本体の表面がテープの粘着層によって損傷することもない。また、押さえ部材は薄く柔軟性のある膜状の部材であるので、巻き取りが開始されて巻き芯が回転して、後続する記録媒体の部位が押さえ部材を間に挟みこむように巻き取られても、記録媒体は、押さえ部材のために歪(いびつ)な形状を呈することもなく、巻き芯本体の断面形状と殆ど同じ形状で巻き取られ、巻き芯から巻き戻した完成品としての記録媒体にも、押さえ部材の端部に起因する凹凸が形成されない。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、前記押さえ部材は透明な樹脂シートからなる点にある。
【0008】
したがって、本発明の第2の特徴構成による巻き取り装置では、押さえ部材を巻き芯本体の外周面から引き離し、記録媒体の先端を押さえ部材の下方に差し込む際に、記録媒体の先端が押さえ部材と巻き芯本体の境界部に正しく突き当たっているか否かを透明な押さえ部材を通して視覚的に確認できるので、記録媒体の先端を巻き芯に固定する操作を実施し易い。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、前記押さえ部材を前記巻き芯本体の外周面上に接合する接合部が設けられており、前記押さえ部材と前記巻き芯本体の外周面との間に差し込まれた記録媒体の先端は、前記巻き芯の軸芯方向に沿って互いに離間し、且つ、前記巻き芯の軸芯と平行に並置された2つの接合部によって受け止められる点にある。
【0010】
したがって、本発明の第3の特徴構成による巻き取り装置では、画像形成装置等の記録媒体処理手段から排出されて来た記録媒体の先端が記録媒体の長手方向の軸芯に対して正確に垂直であるという前提条件が守られている限り、押さえ部材を巻き芯本体の外周面から引き離し、記録媒体の先端を押さえ部材の下方に押し込めば、記録媒体の先端が2つの接合部に突き当てられるので、自然に、記録媒体の先端が巻き芯の軸芯と平行で、且つ、記録媒体の長手方向の軸芯が巻き芯の軸芯と正確に垂直となった状態で固定が完了し、記録媒体の両側部が綺麗に揃った正しい巻き取りが行われる。
【0011】
本発明の第4の特徴構成は、前記押さえ部材を前記巻き芯本体の外周面上に接合する接合部が設けられており、前記押さえ部材と前記巻き芯本体の外周面との間に差し込まれた記録媒体の先端は、前記巻き芯の軸芯方向に関する中央部付近に並置された単一の接合部によって受け止められる点にある。
【0012】
したがって、本発明の第4の特徴構成による巻き取り装置では、記録媒体の先端の中央部を接合部に突き当てたままで、記録媒体を接合部を中心にして回転させ、記録媒体の巻き芯に対する角度姿勢を調整することが可能なので、画像形成装置等の記録媒体処理手段から排出されて来た記録媒体の先端が記録媒体の長手方向の軸芯に対して正確に垂直でない場合でも、記録媒体の長手方向の軸芯が巻き芯の軸芯と正確に垂直となった状態で固定することができる。
【0013】
本発明によるその他の特徴および利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一つの実施形態について添付された図面に基づいて以下に説明する。
(記録媒体処理装置の全体構成)
図1に示す記録媒体処理装置1は、シート状の記録媒体Mに昇華性の染料を含むインクで画像形成を施すプリンタPと、プリンタPから排出される記録媒体Mを加熱することによって染料を定着する加熱定着ユニットFとからなる。
【0015】
(記録媒体の構成)
記録媒体Mは、所定の剛性を備えたシート状の基材と、基材の上面に接着剤層等を介して密着貼付されたインク受容層とからなる。基材は、PET等の合成樹脂材料などで形成されたベースシートと、ベースシートの上面に一体的に設けられた耐候性の高い程度の保護層とからなる。保護層は例えばフッ素樹脂などで形成されている。尚、保護層はプリンタPでの画像形成で使用する水性のインクとの親和性が低いが、インク受容層は、この水性のインクとの親和性が十分に高い。
記録媒体Mは、後述するように、プリンタPで昇華性の染料を含む水性のインクによってインク受容層上に画像を印字し、印字後に加熱定着ユニットで加熱処理することで昇華性の染料を記録媒体Mの内部に昇華させて定着することを前提に設計されている。
【0016】
(昇華性染料の定着について)
プリンタPでは、昇華性の染料を含む水性のインクが、記録媒体Mのインク受容層の表面付近に常温で載置される。プリンタPから排出された記録媒体Mを加熱定着ユニットFで適切な加熱条件で加熱すると、受容層の表面付近に位置するインクから昇華性の染料が昇華して、受容層の内部に移動し、さらに、保護層を通過し、ベースシートと保護層の界面、乃至は、ベースシートの表面近くの内部まで到達して、ここに定着される。定着が完了すると、任意の時点で基材からインク受容層をシート状のまま容易に引き剥がすことができる。インク受容層を引き剥がした状態では、記録媒体Mの基材内に定着された染料は、表面からは耐候性の保護層によって、裏面からはベースシートによって保護され、同時に、少なくとも基材の上面側からは透明性の高い保護層を介して良く透視できる形になる。
【0017】
(プリンタの構成)
プリンタPは、ロール状に巻き取られた長尺の記録媒体Mを回転自在に支持する貯留部2を備えており、数組の搬送ローラ対からなる搬送機構3によって貯留部2から引き出されて、副走査方向に搬送される記録媒体Mに対して、前記副走査方向と直行する主走査方向に往復移動可能なインクジェット式のプリントヘッド4によって画像が形成される。また、プリントヘッド4には記録媒体Mを主走査方向に沿って切断するカッターCが設けられている。尚、プリンタPは最大1,240mm巾の記録媒体Mを処理可能に構成されている。
【0018】
(第1巻き取り装置の構成)
プリンタPの下方には、プリンタPから排出された印字済みの記録媒体Mを一旦、巻き芯T上にロール状に巻き取るための第1巻き取り装置R1が設けられている。図2に示すように、第1巻き取り装置R1は、巻き芯Tの両端を回転可能に支持するための一対の支持ブラケット6a,6bを有する。支持ブラケット6a,6bは、水平な案内ロッド5上に、巻き芯Tの軸芯方向に沿って摺動可能に支持されている。支持ブラケット6a,6bの内側には、巻き芯Tの内面に嵌着される円錐台状の支持コーン7a,7bが互いに対向する形で回転自在に支持されている。片方の支持コーン7bの背面からは駆動軸9が一体的に突出しており、駆動軸9の先端側は、トルクレリーサ10(回転駆動機構の一例)と連結ギヤ11とを介して、DC駆動モータ12(回転駆動機構の一例)の出力軸に連結されている。
【0019】
巻き芯Tは、紙筒で構成された円筒状の巻き芯本体Taと、巻き芯本体Taの外周面の一箇所に透明な接着テープ13(片面に粘着層を備えた樹脂製または布製の薄いテープ)等で貼り付けられた帯状の押さえ部材14とからなる。押さえ部材14は、適度なこしと柔軟性を持つ透明な薄膜状の樹脂シートで形成されており、幅は約200mmである。この樹脂シートの材質としては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルム(市販品の例としては東レ株式会社から販売されている「ルミラー」がある)等が特に好適であるが、適度なこしと柔軟性を持つ透明な薄膜状の樹脂シートであれば、これに限らない。
【0020】
巻き取りを行う際には、支持ブラケット6a,6bの間隔を広げて、両ブラケットの間に巻き芯Tを配置し、その後、支持ブラケット6a,6bの間隔を狭めることで、巻き芯本体Taを両側の支持コーン7a,7bに外嵌支持させ、支持ブラケット6a,6bをネジ手段などによって案内ロッド5に対して固定する。次に、押さえ部材14の遊端側と中間部とを巻き芯本体Taの外周面から引き離し、記録媒体Mの先端を押さえ部材14の裏側に差し込み、さらに、図4(a)に示すように、記録媒体Mの先端を、押さえ部材14の基端部に位置する押さえ部材14と巻き芯本体Taとの接合部に突き当てる。そして、図3及び図4(b)に示すように、押さえ部材14を記録媒体Mの上から巻き芯本体Taの上に軽く押さえ付けながら、巻き芯Tを回転させれば、記録媒体Mの先端が押さえ部材14と巻き芯本体Taとの間に挟着されて、記録媒体Mの巻き芯Tへの固定が完了する。尚、押さえ部材14の長さは約300mmで、巻き芯本体Taの外周面の円周長(約270mm)を超えるので、巻き芯Tの回転が更に進めば、押さえ部材14の遊端は巻き芯本体Taの外周面上で押さえ部材14の基端部と重ね合わされるため、記録媒体Mの先端は巻き芯Tに確実に固定される。
押さえ部材14と接着テープ13とは透明な材質からなるので、記録媒体Mの先端を押さえ部材14と巻き芯本体Taとの接合部に突き当てる時、記録媒体Mの先端が押さえ部材14と巻き芯本体Taの境界部に正しく突き当たっていることを視覚的に確認できる。
【0021】
尚、トルクレリーサ10の空転トルク値は、第1巻き取り装置R1による記録媒体Mの引っ張り力が、プリンタPに設けられた搬送機構3の搬送力の約10〜25%となるように設定されている。ここでは、搬送機構3の搬送力は27.44N(2.8kgf)なので、第1巻き取り装置R1による引っ張り力は、巻き取り開始時における記録媒体Mのロール径が87mmの時には5.64〜6.76N(0.575〜0.69kgf)で、巻き取り終了時における記録媒体Mのロール径が135mmの時には3.63〜4.3N(0.37〜0.44kgf)となるように設定されている。このためには、トルクレリーサ10の空転トルク値を0.245〜0.34N・m(2.5〜3kg・cm)の範囲に設定すれば良い。
【0022】
(加熱定着ユニットの構成)
図1に示すように、加熱定着ユニットFの内部には、外部から断熱層(不図示)によって熱的に遮断された加熱領域Qが設けられている。加熱定着ユニットFの内部には、後述する供給ユニットSから提供される記録媒体Mを、加熱領域Q内で搬送する搬送機構15が設けられている。搬送機構15は数組の耐熱性の搬送ローラ対16によって構成されている。搬送機構15によって搬送される記録媒体Mは、平坦な支持パネル18の平滑な上面を滑りつつ移動する。
加熱領域Q内には、加熱領域Q内の空気を所定の温度(ここでは約180℃)に加熱するための第1加熱機構が設けられている。第1加熱機構は、記録媒体Mの搬送面の上方で加熱領域Qの中央よりも上流寄りに配置された複数の棒状発熱体からなる発熱部20、及び、加熱領域Q内の温度分布を均一化するために加熱領域Qの中央よりも下流寄りに配置された攪拌用ファン21を有する。加熱領域Q内には、第1加熱機構とは別に、記録媒体Mを、主にその裏面側(ベースシート側)から、原則的に接触を介して昇華性インクを定着する第2加熱機構が設けられている。第2加熱機構は、支持パネル18を下方から加熱する面状ヒータ(不図示)によって構成されており、支持パネル18の上面は前記面状ヒータによって約180℃に保持される。
【0023】
加熱領域Qの下流側に設けられた記録媒体Mの排出部は、急勾配の傾斜姿勢で下向きに延びた傾斜案内プレート24と、記録媒体Mの表裏両面に圧着して搬送する第1排出ローラ対26と、この第1排出ローラ対26から送り出される記録媒体Mの向きを水平に近い方向に修正する偏向板25と、この偏向板52から押し出される記録媒体Mを略水平な方向に引き出す第2排出ローラ対27とを備えている。第2排出ローラ対27を構成する2つのローラのうち下方に位置する下ローラ27aの軸芯は固定されているが、上方に位置する上ローラ27bの軸芯は上下に移動可能に設けられており、上ローラ27bは自重で下ローラ27aの周面に押し付けられている。また、傾斜案内プレート24の表面は、裏面に配置された面状ヒータによって100℃以下の温度に加熱されている。
【0024】
(供給ユニットの構成) 加熱定着ユニットFの上流側には、印字済みの記録媒体Mを加熱定着ユニットFに供給するための供給ユニットSが配置されている。供給ユニットSは、プリンタPの第1巻き取り装置R1によって巻き取られた記録媒体Mのロールをセットするためのロール保持部30と、ロールから巻き戻された記録媒体Mの部位を上下から挟着する供給ローラ対35とを備えている。
【0025】
ロール保持部30は、第1巻き取り装置R1と同様に、巻き芯Tの軸芯方向に沿って摺動可能に支持された一対の支持ブラケット31を有する。支持ブラケット31の内側には、巻き芯Tの内面に嵌着される円錐台状の支持コーン32が互いに対向する形で回転自在に支持されている。片方の支持コーン32には、ロールの自由な回転を規制するフリクション機構33が設けられている。ロール保持部30の支持コーン32は駆動モータには連結されていない。フリクション機構33の空転トルク値は外部から手動で変更可能に設けられており、通常は、記録媒体Mに皺などの欠点が生じないように、記録媒体Mに加えられる引張り力が、加熱定着ユニットF内の搬送機構15の有する搬送力の20%以下となるように設定されている。ここでは、搬送機構15の搬送力は約22N(2.2kg)なので、巻き径が最大(直径:140mm)の巻き戻し開始時にはその6%に相当する1.4N、巻き径が最小(直径:75.6mm)の巻き戻し終了時にはその12%に相当する2.6Nの引っ張り力が加えられた時に支持コーン32が空転するように設定されている。このためには、フリクション機構33の空転トルク値を約0.1N・m(1kg・cm)に設定すれば良い。
【0026】
ロール保持部30に保持された巻き芯Tからの巻き戻しの終了時には、帯状の押さえ部材14も巻き芯本体Taから巻き戻されて、記録媒体Mと共に加熱定着ユニットF側に引き出される。しかし、押さえ部材14の長さは、ロール保持部30上の巻き芯本体Taから加熱定着ユニットFの入り口までの距離(370mm)を十分に下回る300mmとなっているので、押さえ部材14が加熱定着ユニットF内に引き込まれる懸念はない。
【0027】
(第2巻き取り装置の構成)
加熱定着ユニットFの下流側には、加熱定着ユニットFから排出される定着済みの記録媒体Mを巻き芯T′の外周上に巻き取るための第2巻き取り装置R2が配置されている。第2巻き取り装置R2は、第1巻き取り装置R1と同様に、巻き芯T′の両端を回転可能に支持するための一対の支持ブラケット38を有する。一対の支持ブラケット38は、巻き芯T′の軸芯方向に沿って摺動可能に支持されており、各支持ブラケット38の内側には、巻き芯T′の内面に嵌着される円錐台状の支持コーン39が互いに対向する形で回転自在に支持されている。片方の支持コーン39の背面からは駆動軸40が一体的に突出しており、駆動軸40の先端側は、トルクレリーサ50(回転駆動機構の一例)と連結ギヤ51とを介して、DC駆動モータ41(回転駆動機構の一例)の出力軸に連結されている。
尚、巻き芯T′は、巻き芯Tと全く同様に、紙筒で構成された円筒状の巻き芯本体Ta′と、その外周面の一箇所に透明な接着テープ13等で貼り付けられた透明な帯状の押さえ部材14とからなる。
【0028】
第2巻き取り装置R2によって巻き取りを行う際の手順や要領も、基本的に第1巻き取り装置R1について記載した通りである。トルクレリーサ50の空転トルク値も外部から手動で変更可能に設けられているが、通常は、記録媒体Mに皺などの欠点が生じないように、第2巻き取り装置R2による記録媒体Mの引っ張り力が、加熱定着ユニットF内の搬送機構15の有する搬送力の30%以下となるように設定されている。ここでは、搬送機構15の搬送力は約22N(2.2kg)なので、第2巻き取り装置R2による引っ張り力は、巻き径が最小(直径:75.6mm)の巻き取り開始時にはその30%に相当する6.6N、巻き径が最大(直径:140mm)の巻き取り終了時にはその16%に相当する3.6Nとなるように設定されている。このためには、トルクレリーサ50の空転トルク値を約0.25N・m(2.5kg・cm)に設定すれば良い。
【0029】
DC駆動モータ41には回転速度を任意に設定変更可能なモータが採用されており、DC駆動モータ41の回転数は、第2巻き取り装置R2による記録媒体Mの巻き取り速度が、巻き径が最小(直径:75.6mm)の巻き取り開始時でも、加熱定着ユニットF内の搬送機構15の有する搬送速度の50%増しとなるように設定されている。具体的には、ここでは、搬送機構15の搬送速度は200mm/minなので、第2巻き取り装置R2による巻き取り速度は、巻き径が最小(直径:75.6mm)の巻き取り開始時では300mm/minで、巻き径が最大(直径:140mm)の巻き取り終了時では556mm/minとなるように、DC駆動モータ41の回転速度が調整されている。
【0030】
第2巻き取り装置R2の支持ブラケット38の高さは、支持ブラケット38に取り付けた空の巻き芯T′の下面が、加熱定着ユニットFの排出部から10〜20cmの長さで排出された記録媒体Mの先端よりも少なくとも数センチメートルだけ上方に位置するように設定されているので、記録媒体Mの先端を、巻き芯T′の押さえ部材14と巻き芯本体Ta′との間に差し込む操作を容易に行うことができる。また、第2巻き取り装置R2の支持ブラケット38の高さは、支持ブラケット38に取り付けた空の巻き芯T′の下面が、加熱定着ユニットFの第2排出ローラ対27のニップ位置よりも高くならないように設定されているので、第2巻き取り装置R2による巻き取りが開始された時に、記録媒体Mに加えられる張力のために上ローラ27bが下ローラ27aとの近接位置から上に持ち上げられる虞がない。
【0031】
〔別実施形態〕
<1>押さえ部材14は、接着テープ13以外の接合手段、例えば、押さえ部材14を貫通し、巻き芯本体に食い込む針部を備えたステープル、或いは、押さえ部材14と巻き芯本体との間に介装された接着剤、等によって巻き芯本体Ta(Ta′)の外周面に接合しても良い。
【0032】
<2>記録媒体Mの先端を巻き芯本体の外周面に押さえ付ける押さえ部材は次のような形態としても良い。図5に示す押さえ部材44は、巻き芯本体Tの全長を僅かに下回るだけの幅を有する。そして、押さえ部材44の基端側の辺に2つの切欠き44a(接合部の一例)が互いに軸芯方向に離間するように形成されており、2つの切欠き44aと巻き芯本体Tの外周面とにわたって接着テープ43(接合部の一例)が貼られている。2つの切欠き44aどうしは、巻き芯の軸芯と平行に並置されている。
押さえ部材44の遊端側を巻き芯本体Tから引き離して、押さえ部材44の裏側に記録媒体Mの先端を差し込んで行くと、記録媒体Mの先端は、互いに軸芯方向に離間した2つの接合部(切欠き44aと巻き芯本体Tの境界に相当する)に突き当たり、そこで受け止められる。2つの接合部は、巻き芯の軸芯と平行に並置されているので、記録媒体Mの先端が記録媒体Mの側辺に対して正確に垂直をなしている場合には、記録媒体Mの先端は、自然に、押さえ部材44の基端側の辺が一本の直線で構成されている場合よりも正確に、巻き芯Tの軸芯と平行に位置決めされるので、記録媒体Mの側部が良く揃った綺麗なロール状に巻き取られる。
【0033】
<3>もしも記録媒体Mの先端が記録媒体Mの側辺に対して垂直でない場合には、押さえ部材は次のような形態とすれば良い。図6に示す押さえ部材54は、巻き芯本体Tの全長を僅かに下回るだけの幅を有する。そして、押さえ部材54の基端部の辺の中央部には単一の切欠き54a(接合部の一例)が形成されており、この切欠き54aと巻き芯本体Tの外周面とにわたって接着テープ53(接合部の一例)が貼られている。切欠き54aは、押さえ部材54の遊端側に向かって突出した湾曲状を呈している。
押さえ部材54の遊端側を巻き芯本体Tから引き離して、押さえ部材54の下方に記録媒体Mの先端を差し込んで行くと、記録媒体Mの先端は、単一の接合部(切欠き54aと巻き芯本体Tの境界に相当する)に突き当たり、そこで受け止められる。単一の接合部の軸芯方向の長さは比較的短く、しかも、記録媒体Mの基端側に向かって突出した湾曲状を呈しているので、記録媒体Mの先端が記録媒体Mの側辺に対して正確に垂直をなしていない場合でも、記録媒体Mの先端を巻き芯本体Tの外周面上に押さえた状態を維持したまま、記録媒体Mの先端部の角度姿勢を自由に調整でき、記録媒体Mの先端を巻き芯Tの軸芯と平行に位置決めすることができるため、記録媒体Mの側部が良く揃った綺麗なロール状に巻き取られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による巻き取り装置を備えた記録媒体処理装置の概略斜視図
【図2】図1の記録媒体処理装置に用いられた巻き取り装置の正面図
【図3】図1の巻き取り装置の巻き芯を示す斜視図
【図4】図3の巻き芯を示す破断側面図
【図5】本発明の別実施形態による巻き取り装置の巻き芯を示す斜視図
【図6】本発明のさらに別の実施形態による巻き取り装置の巻き芯を示す斜視図
【符号の説明】
【0035】
M 記録媒体
P プリンタ
F 加熱定着ユニット
T 巻き芯
Ta 巻き芯本体
7 支持コーン
9 駆動軸
10 トルクレリーサ(回転駆動機構)
12 DC駆動モータ(回転駆動機構)
13 接着テープ
14 押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体をロール状に巻き取るために回転可能に支持された巻き芯と、前記巻き芯を回転操作するための回転駆動機構とを備えた巻き取り装置であって、
前記巻き芯は、筒状の巻き芯本体と、前記巻き芯本体に取り付けられた薄膜状の押さえ部材とを有し、前記巻き芯本体の外周面と前記押さえ部材との間に記録媒体の先端を挟着させるように構成されている巻き取り装置。
【請求項2】
前記押さえ部材は透明な樹脂シートからなる請求項1に記載の巻き取り装置。
【請求項3】
前記押さえ部材を前記巻き芯本体の外周面上に接合する接合部が設けられており、前記押さえ部材と前記巻き芯本体の外周面との間に差し込まれた記録媒体の先端は、前記巻き芯の軸芯方向に沿って互いに離間し、且つ、前記巻き芯の軸芯と平行に並置された2つの接合部によって受け止められる請求項1または2に記載の巻き取り装置。
【請求項4】
前記押さえ部材を前記巻き芯本体の外周面上に接合する接合部が設けられており、前記押さえ部材と前記巻き芯本体の外周面との間に差し込まれた記録媒体の先端は、前記巻き芯の軸芯方向に関する中央部付近に並置された単一の接合部によって受け止められる請求項1または2に記載の巻き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−96455(P2006−96455A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281920(P2004−281920)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】