説明

巻上牽引機におけるブレーキ装置

【課題】巻上牽引機において、現行サイズの爪車を用い、かつ従来より大径のブレーキ板が搭載可能な、制動トルクの大きいブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ロードシーブを駆動する駆動軸4と、駆動軸4に固装された受圧部材7と、受圧部材7のボス部7bに外嵌され、一対のブレーキ板32a、32bに狭装される爪車30を有するブレーキ手段9と、操作手段からの駆動力をブレーキ手段9、受圧部材7を介して駆動軸4に伝達する駆動部材8を備えた巻上牽引機におけるブレーキ装置であって、前記爪車30は、爪車30の側面に、爪車30の歯部先端30aと爪車30の中心を結ぶ長さより大きい長さを半径とするブレーキ制動板31を固設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻上牽引機において操作手段からの駆動力を駆動軸に伝達する手段として適用されるブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロードシーブを駆動する駆動軸と、駆動軸に回転不能に軸装された受圧部材と、受圧部材に外嵌され、一対のブレーキ板に挟装される爪車を有するブレーキ手段と、操作手段からの駆動力をブレーキ手段、受圧部材を介して駆動軸に伝達する駆動部材を備えた巻上牽引機は公知である。(引用文献1参照)
以下、図1〜3を参照して、引用文献1に記載された巻上牽引機について説明する。
【0003】
図1は巻上牽引機の正面図、図2(a)は爪車部分の断面図、図2(b)はブレーキ手段を示す縦断正面図である。
【0004】
図において、1a、1bはロードシーブ及び減速ギヤ軸用軸受を備えたフレーム、2はフレーム1a、1b間に回動自在に軸支されたロードシーブ、3はロードシーブ2に一体成型されたロードギヤ、4はロードシーブ2の挿通孔に回転自在に挿嵌された駆動軸、5は駆動軸4の一端に設けられたピニオンギヤ、6aはピニオンギヤ5と噛合する減速ギヤ、6bは減速ギヤ6aと同軸に軸着された減速ギヤで、減速ギヤ6aと減速ギヤ6bとで一対の減速ギヤ6を形成し、減速ギヤ6bはロードギヤ3に噛合している。駆動軸4には雄ネジ部4aが形成されており、ロードシーブ2側から受圧部材が駆動軸4に回転不能に軸装され、雄ネジ部4aに雌ねじを有する駆動部材8が螺合している。駆動部材8には駆動方向を切換える切換用歯車8aが設けられている。受圧部材7は大径のディスク部7aと小径のボス部7bとを同心に有しており、ボス部7bには、一対のブレーキ板10a、10bと、ブレーキ板10a、10bに挟装された逆転防止用爪車11が外嵌されている。爪車11とその両側に配設されたブレーキ板10a、10bは、駆動部材8により、受圧部材7を押圧可能に構成されている。爪車11はその外周に円周方向の一方へ傾斜する係止歯11aを備えており、係止歯11aはフレーム1bに枢支されたラチェット爪12と係合することにより、爪車11の逆転が防止され、駆動軸4に対して一方向、すなわち巻上方向にのみ回転可能になっている。ブレーキ板10a、10b、爪車11、ラチェット爪12でブレーキ手段9を構成する。なお、13はラチェット爪12を爪車11の係止歯11aに係合するように付勢するバネである。14は爪車11を軸承する軸受け、15はフレーム1bに取着されたバネ取付軸、16はフレーム連結ボルト、17は操作レバー、18は駆動部材8の切換歯車8aに着脱自在に係合し、駆動部材8の巻上げ、巻下げ方向の切換えを行う切換爪18、19は操作レバー17に取着され、切換爪18の切換操作を行う切換操作用ハンドル、20は駆動軸1に回転不能に嵌合されたカム、21は遊転ニギリ、22は上フック、23は下フック、24はチェーン、25はケーシングである。
【0005】
図1〜3に示す従来装置の動作について説明する。
【0006】
操作レバー17を回動すると、切換爪18が切換歯車8aを介して駆動軸4の雄ねじ部4aに螺合する雌ねじ部を有する駆動部材8が回動し、ブレーキ板10a、10bとブレーキ板10a、10b間に介装された爪車11を有するブレーキ装置9を受圧部材7側に押動し、または、反対にブレーキを開放させ駆動軸4を巻上げ方向または巻下げ方向に回転し、ピニオンギヤ5、減速ギヤ6a、6bを介してロードギヤ3を回転し、ロードシーブ2にてチェーン24の巻上げ巻下げ動作が行われる。この巻上げ動作時に、駆動部材8が回動すると、ブレーキ板10b、爪車11、ブレーキ板10aの順に受圧部材7側に押動され、受圧部材7を介して駆動軸4に伝達されるが、ブレーキ装置9のブレーキ板10a、10bと爪車11の圧接面、すなわち爪車11のブレーキ制動面は、図2(b)に示すように、爪車11の歯底径より小さい範囲に限定され、ブレーキ板10a、10bの径もブレーキ制動面に合わせて大きさが限定されるため、ブレーキ板の制動トルクが小さく制限されるという課題を有していた。
【特許文献1】特開2001-270688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した通り、従来の巻上牽引機のブレーキ装置においては、爪車11のブレーキ制動面は、爪車の歯底径より小さい範囲に限定されるため、ブレーキ板の径も限定され、大きい制動トルクで受圧部材を押圧することができず、巻上牽引機の制動トルクが限定されるという課題を有していた。
【0008】
また、制動トルクを大きくするためには、歯底径の大きい大径の爪車を用いなければならず、この場合は巻上牽引機が大型化するという課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、現行サイズの爪車を用い、かつ従来より大径のブレーキ板が搭載可能な制動トルクの大きいブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するもので、ロードシーブを駆動する駆動軸と、駆動軸に回転不能に軸装された受圧部材と、受圧部材のボス部に外嵌され、一対のブレーキ板と前記ブレーキ板に挟装される爪車と、爪車の回転方向を一方向にのみ規制する爪を有するブレーキ手段と、操作手段からの駆動力をブレーキ手段、受圧部材を介して駆動軸に伝達する駆動部材を備えた巻上牽引機におけるブレーキ装置であって、前記爪車は、爪車の側面に、爪車の歯部先端と爪車の中心を結ぶ長さより大きい長さを半径とするブレーキ制動板を固設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の爪車は、その側面に爪車の歯部先端と爪車の中心を結ぶ長さより大きい長さを半径とするブレーキ制動板が固設されているので、爪車の側面のブレーキ板との接触面をブレーキ制動板の径である爪車の歯部先端より大きく設定することができるため、ブレーキ板の径もブレーキ制動板の径に合わせて大きく設定することができ、従来装置に比して大きな制動トルクを有するブレーキ装置を提供することができる。また、ブレーキ制動板の外周が爪車の歯部先端より外側に張り出し、爪が爪車の歯と係合する係合動作を両側からガイドする構成となっているため、爪は爪車から外れないようにガイドされ、安全なブレーキ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態について、図3〜図8を用いて説明する。
【0013】
なお、以下の説明において、ブレーキ手段9の爪車30、ブレーキ板32a、32b以外の構成については、図1に記載された構成と同一であり、説明を省略する。
【0014】
図3、4において、30は爪車、30aは爪車の歯部先端である。31a、31bは爪車30の歯部先端30aと爪車30の中心を結ぶ長さより大きい長さを半径とする円盤状ブレーキ制動板で、爪車30の両側面に固設される。32a、32bは円盤状ブレーキ制動板31と略同一の外径を有し、円盤状ブレーキ制動板31を挟装するブレーキ板である。爪車30と円盤状ブレーキ制動板31a、31bはダイキャスト等で全体を一体構造として形成されている。
【0015】
図5は他の実施例で、半幅の爪部を有する爪車30A、30Bと円盤状ブレーキ制動板31a、31bをそれぞれダイキャスト等で一体構造として形成し、各爪車30A、30Bの側面を接合し、一体構造の爪車としたものである。
【0016】
また、図6及び図7は爪車30の1側に円盤状ブレーキ制動板31aまたは31bをそれぞれ一体構造として形成し、爪車30の他側に円盤状ブレーキ制動板31bまたは31aを接合し、一体構造の爪車としたものである。図8は爪車30の両側面に円盤状ブレーキ制動板31a、31bをそれぞれ接合し、一体構造の爪車としたものである。
【0017】
前記した通り、本発明の実施の形態によると、爪車30の制動面である円盤状ブレーキ制動板31a、31bの径を従来の爪車11の制動面より大幅に大きく設定できるため、図3(b)に示すように、ブレーキ板32a、32bの径を従来のブレーキ板10a、10bに比して大径とすることができ、制動トルクの大きいブレーキ装置を提供することができる。
【0018】
また、円盤状ブレーキ制動板31a、31bの外周は爪車30の歯部30a先端から外側に張り出し、爪12が爪車30から外れないように両側からガイドするため、爪12が爪車30の歯部30aからの外れ動作の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の巻上牽引機の正面図。
【図2】(a)は爪車部分の断面図、(b)はブレーキ部分の縦断正面図。
【図3】(a)は本発明のブレーキ制動板の断面図、(b)はブレーキ部分の縦断正面図。
【図4】図3の爪車部分の外観斜視図。
【図5】他の形態の爪車部分の外観斜視図。
【図6】他の形態の爪車部分の外観斜視図。
【図7】他の形態の爪車部分の外観斜視図。
【図8】他の形態の爪車部分の外観斜視図。
【符号の説明】
【0020】
1a、1b フレーム
2 ロードシーブ
3 ロードギヤ
4 駆動軸
5 ピニオンギヤ
6a、6b 減速ギヤ
7 受圧部材
8 駆動部材
9 ブレーキ手段
10 ブレーキ
11 爪車
12 ラチェット爪
30 爪車
30a 歯部
31a、31b 円盤状ブレーキ制動板
32a、32b ブレーキ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードシーブを駆動する駆動軸と、駆動軸に回転不能に軸装された受圧部材と、受圧部材のボス部に外嵌され、一対のブレーキ板と前記ブレーキ板に挟装された爪車と、爪車の回転方向を一方向にのみ規制する爪を有するブレーキ手段と、操作手段からの駆動力をブレーキ手段、受圧部材を介して駆動軸に伝達する駆動部材を備えた巻上牽引機におけるブレーキ装置であって、前記爪車は、爪車の側面に、爪車の歯部先端と爪車の中心を結ぶ長さより大きい長さを半径とするブレーキ制動板を固設したことを特徴とする巻上牽引機におけるブレーキ装置。
【請求項2】
爪車は、半幅に分割され、それぞれにブレーキ制動板を固設した2個の爪車を接合し、一体化したことを特徴とする請求項1記載の巻上牽引機におけるブレーキ装置。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−222393(P2008−222393A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65258(P2007−65258)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000129367)株式会社キトー (101)