説明

巻取コア、及びフィルムロールの製造方法

【課題】樹脂フィルムをロール状に巻き取り、長期間放置しても馬の背変形の発生を抑制できる巻取コア、及びこの巻取コアを用いたフィルムロールの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂フィルム12をロール状に巻き取るための巻取コア11であって、下記式(1)を満たすことを特徴とする巻取コア11を用いる。
E > 0.06×Aa/I (1)
(E:巻取コアの弾性率[MPa]、A:巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量[kg]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムをロール状に巻き取るための巻取コア、及び前記巻取コアに樹脂フィルムをロール状に巻き取ったフィルムロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やプラズマディスプレイ装置等の画像表示装置において光学フィルムとして用いられる樹脂フィルムは、一般的に、巻取コアにロール状に巻き取られたフィルムロールとして、保存及び輸送等に供されている。また、樹脂フィルムを使用する際には、フィルムロールから樹脂フィルムを順次繰り出して使用している。
【0003】
一方、携帯型のパーソナルコンピュータやテレビジョン受信装置等の液晶表示装置等は、薄型軽量化、大画面化、及び高画質化等が求められている。このため、液晶表示装置に備えられる樹脂フィルム、例えば、偏光板用保護フィルム等は、視認性の向上だけではなく、大画面化に対応するため、広幅化の要求も高まっている。さらに、樹脂フィルムを巻回したフィルムロールは、樹脂フィルムを使用する際に、フィルムロールの交換頻度を減らして、作業効率を向上させるために、巻取コアに巻き取られた樹脂フィルムの長さ(巻長)が長い長尺化も求められている。
【0004】
樹脂フィルムをロール状に巻き取るための巻取コアとしては、例えば、下記特許文献1に記載されている。下記特許文献1には、表面に凹凸面が形成されたコア芯材と、前記凹凸面上に被覆した熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる表面層とを備えた巻取コアが記載されている。なお、ここでのコア芯材としては、ガラス繊維、プラスチック繊維、紙、及び布等を主構成材料とした各種芯材、前記各種芯材と発泡樹脂との複合体、及び金属からなるものが挙げられている。
【特許文献1】特開平6−254938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、上記のような構成にすることによって、フィルム及びシート等の長尺材料を高速で巻き取るための充分な剛性を有する巻取コアが得られることが開示されている。しかしながら、このような巻取コアに樹脂フィルムをロール状に巻き取り、巻取コアを軸支して保管すると、フィルムロールの上面側であって、フィルムロールの軸方向(樹脂フィルムの幅方向)中央部が、経時的に下方に凹んで、馬の背のようにフィルムロールの上面側がU字状に変形する、いわゆる馬の背変形が発生することがあった。特に、上記のような広幅化及び長尺化した樹脂フィルムを巻取コアに巻き取った場合、馬の背変形の発生が顕著であった。このような馬の背変形が発生すると、樹脂フィルムの幅方向中央部において樹脂フィルム同士が貼着されることが多い。樹脂フィルム同士が貼着されると、フィルムロールから樹脂フィルムを繰り出す際、樹脂フィルムの貼着されていた部分の表面が粗化されてしまう。例えば、このような樹脂フィルムを偏光板に貼り付けて使用すると、その粗化された部分が原因で画像むら等が発生することになる。
【0006】
本発明の目的は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、樹脂フィルムをロール状に巻き取り、長期間放置しても馬の背変形の発生を抑制できる巻取コアを提供することである。また、このような巻取コアを用いたフィルムロールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記のような馬の背変形が発生するのは、巻き取った樹脂フィルムや巻取コアの荷重により、巻取コアがたわむことによるのではないかと推察し、巻取コアのたわみにくくするためには、巻取コアの弾性率を高める必要があると考えた。
【0008】
しかしながら、巻取コアの弾性率を所定の値に規定しても、樹脂フィルムの幅や巻長等によっては、馬の背変形の発生を充分に抑制できない場合があった。特に広幅化及び長尺化した樹脂フィルムの場合には、馬の背変形が発生する傾向があった。また、樹脂フィルムの幅や巻長等にかかわらず、巻取コアの弾性率を一律に高くしようとすると、巻取コアの製造コストも必要以上にかかってしまうため、実用的ではなかった。
【0009】
そこで、本発明者は、樹脂フィルムの幅や巻長等に基づく荷重の違いにより、巻取コアのたわみが異なることに着目し、さらに、馬の背変形の発生を充分に抑制できる条件を鋭意検討した結果、樹脂フィルムの幅や巻長等に基づいた巻取コアの弾性率を規定した、以下のような本発明に想到するに到った。
【0010】
本発明の一態様に係る巻取コアは、樹脂フィルムをロール状に巻き取るための巻取コアであって、下記式(1)を満たすことを特徴とするものである。
【0011】
E > 0.06×Aa/I (1)
(E:巻取コアの弾性率[MPa]、A:巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量[kg]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])
上記の構成によれば、巻取コアの弾性率が、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長等に応じて、たわみを抑制できる弾性率である。このため、樹脂フィルムをロール状に巻き取り、長期間放置しても馬の背変形の発生を抑制できる。
【0012】
また、前記巻取コアにおいて、繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂層を備えてなることが好ましい。そうすることによって、巻取コアの弾性率を上記範囲内に容易に調整することができる。よって、樹脂フィルムをロール状に巻き取り、長期間放置しても馬の背変形の発生を抑制できる巻取コアを容易に得られる。
【0013】
また、前記繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、及びセラミック繊維からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが、巻取コアの弾性率を高めることができる点から好ましい。また、前記繊維としては、カーボン繊維を含むことが、より高弾性率の巻取コアが得られる点からより好ましい。
【0014】
また、前記樹脂としては、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが、繊維強化樹脂層を備えてなる巻取コアを容易に製造できる点から好ましい。
【0015】
また、前記樹脂としては、硬化性樹脂であることが熱に対して安定した巻取コアが得られる点から好ましい。すなわち、巻取コアに巻き取った樹脂フィルムを保存する際に、何らかの原因で昇温等があっても、巻取コアが変形しにくいので、馬の背変形の発生を抑制できる。
【0016】
また、前記巻取コアとして、円筒形状であることが好ましい。巻取コアの弾性率が上記範囲内であるならば、内部が空洞である円筒形状のほうが、軽量化できるので、好ましい。また、樹脂フィルムを巻き取る際に巻取コアを回転させるための装置を装着しやすい点からも好ましい。
【0017】
また、前記樹脂フィルムの幅が、1400〜2500mmであることが好ましい。このような広幅化された樹脂フィルムの場合、一般的に、巻取コアに巻き取られると、馬の背変形が発生しやすいが、上記の巻取コアを用いることによって、馬の背変形の発生を抑制できる。
【0018】
また、前記樹脂フィルムの厚さが、20〜80μmであることが好ましい。このような偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとして好適な厚さの樹脂フィルムを用いても、上記の巻取コアを用いることによって、馬の背変形の発生を抑制できる。
【0019】
また、前記樹脂フィルムの長さが、2600〜5200mであることが好ましい。このような長尺化された樹脂フィルムの場合、一般的に、巻取コアに巻き取られると、馬の背変形が発生しやすいが、上記の巻取コアを用いることによって、馬の背変形の発生を抑制できる。
【0020】
本発明の他の一態様に係るフィルムロールの製造方法は、樹脂フィルムを巻取コアにロール状に巻き取る巻取工程を備え、前記巻取コアが、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0021】
E > 0.06×Aa/I (1)
(E:巻取コアの弾性率[MPa]、A:巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量[kg]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])
上記の構成によれば、樹脂フィルムを巻取コアにロール状に巻き取る巻取工程において使用する巻取コアが、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長に応じて、たわみを抑制できる弾性率を有するものである。このため、長期間放置しても馬の背変形の発生を抑制できるフィルムロールが得られる。したがって、得られたフィルムロールは、馬の背変形による樹脂フィルム同士の貼着が抑制された樹脂フィルムを繰り出して光学フィルムとして使用することができる。
【0022】
また、前記樹脂フィルムとして、透明性樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液を、走行する支持体上に流延ダイから流延して流延膜を形成する流延工程と、前記流延膜を前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離した流延膜を乾燥させる乾燥工程とを備える製造方法によって得られる樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0023】
このような樹脂フィルムを用いることによって、膜厚が均一であって、馬の背変形による樹脂フィルム同士の貼着が抑制された樹脂フィルムを繰り出して供給できるフィルムロールが得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、樹脂フィルムをロール状に巻き取り、長期間放置しても馬の背変形の発生を抑制できる巻取コアを提供することができる。また、このような巻取コアにロール状に樹脂フィルムを巻き取ったフィルムロールの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の光学フィルムの製造方法に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0026】
本実施形態に係る巻取コアは、樹脂フィルムをロール状に巻き取るための巻取コアであって、下記式(1)を満たすことを特徴とするものである。
【0027】
E > 0.06×Aa/I (1)
(E:巻取コアの弾性率[MPa]、A:巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量[kg]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])
本発明者は、まず、上述したように、巻取コアに樹脂フィルムを巻き取ったフィルムロールに馬の背変形が発生するのは、巻き取った樹脂フィルムや巻取コアの荷重により、巻取コアがたわむことによるのではないかと推察した。
【0028】
そこで、以下、巻取コアのたわみνについて説明する。
【0029】
巻取コアのたわみνは、巻取コアが巻取コアの両端が支持されて保持されるので、一般的に、下記式(2)で表される。
【0030】
ν = 5ωa/384EI (2)
(ν:巻取コアのたわみ[mm]、ω:巻取コアの単位長さあたりの荷重[N/mm]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、E:巻取コアの弾性率[MPa]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])
上記式(2)中、巻取コアの単位長さあたりの荷重ωは、巻取コアにかかる荷重が分布荷重であるので、一般的に、下記式(3)で表される。
【0031】
ω = P/a (3)
(ω:巻取コアの単位長さあたりの荷重[N/mm]、P:巻取コアの荷重[N]、a:樹脂フィルムの幅[mm])
従って、巻取コアのたわみνは、下記式(4)で表される。
【0032】
ν = 5Pa/384EI (4)
(ν:巻取コアのたわみ[mm]、P:巻取コアの荷重[N]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、E:巻取コアの弾性率[MPa]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])
次に、本発明者は、樹脂フィルムの幅や巻長等に基づく荷重の違いにより、巻取コアのたわみが異なることに着目した。
【0033】
そこで、まず、ここでの巻取コアの荷重Pは、樹脂フィルムを巻き取った状態では、巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量Aに相関される値であるので、荷重Pを合計質量Aに置き換えた。そして、馬の背変形の発生を充分に抑制できる条件を鋭意検討した結果、上記式(1)の関係を見出した。
【0034】
従って、上記式(1)の関係を満たすことによって、巻取コアの弾性率が、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長等に応じて、たわみを抑制できる弾性率である。このため、樹脂フィルムをロール状に巻き取り、長期間放置しても馬の背変形の発生を抑制できる。
【0035】
また、本実施形態において、巻取コアの弾性率は、上述したように、巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量A、樹脂フィルムの幅a、及び巻取コアの断面2次モーメントIによって規定されるので、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長等に主に依存する。このため、巻取コアの弾性率を、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長等に基づいて、馬の背変形の発生を充分に抑制できるように設定できる。よって、巻取コアの製造コストを必要以上にかけることなく、馬の背変形の発生を充分に抑制できるので、好ましい。なお、巻取コアの断面2次モーメントは、一般的に、下記式(5)で表される値である。断面2次モーメントは、下記式(5)からわかるように、巻取コアの形状に依存する値である。
【0036】
I = (d−d)×π/64 (5)
(d:巻取コアの内径[mm]、d:巻取コアの外径[mm])
次に、前記巻取コアを用いて、樹脂フィルムをロール状に巻き取る巻取工程について説明する。巻取工程は、例えば、図1に示すような巻取コア11を備えた巻取装置10によって行われる。なお、図1は、樹脂フィルム12を巻取コア11にロール状に巻き取る巻取装置10を示す概略図である。
【0037】
前記巻取装置10は、巻取コア11、不図示の回転装置、案内ローラ13、タッチローラ14等を備えている。前記巻取コア11は、樹脂フィルム12をその表面上に巻き取り、フィルムロールの軸材となるものである。前記回転装置は、巻取コア11を回転させるための装置である。前記案内ローラ13は、走行してきた樹脂フィルム12に接する位置に配置され、樹脂フィルム12の走行によって従動回転する部材である。前記案内ローラ13によって、樹脂フィルム12の走行位置のぶれを低減させ、樹脂フィルム12を巻取コア11へ円滑に供給できる。また、前記タッチローラ14は、巻取コア11の表面を押圧し、巻取コア11の回転によって、従動回転する部材である。前記タッチローラ14によって、巻取コア11に巻き取られた樹脂フィルム12が巻取コア11から離間することを抑制できる。
【0038】
巻取コア11に対する樹脂フィルム12の巻き取りは、図1に示すように、巻取コア11の表面まで走行してきた樹脂フィルム12を、回転装置によって巻取コア11を回転させることによって、巻取コア11の表面上に順次巻き取っていくことによって行う。
【0039】
前記巻取コア11は、上記範囲内の弾性率を有するものであればよく、特に材質等に限定されない。例えば、樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。その中でも、樹脂と繊維とを含む繊維強化樹脂(FRP)層を備えてなるものが好ましい。繊維強化樹脂層は、繊維によって強化された樹脂層であるので、含有する繊維の強度や含有率等によって、弾性率を容易に調整することができる。よって、巻取コアの弾性率を上記範囲内に容易に調整することができる。このような繊維強化樹脂層を備えてなる巻取コア11としては、例えば、図2(a)に示すように1層の繊維強化樹脂層21のみからなるものであってもよいし、図2(b)に示すように異なる繊維強化樹脂層22,23を2層積層したものであってもよいし、異なる繊維強化樹脂層を3層以上積層したものであってもよい。また、繊維強化樹脂層と、繊維を含まない樹脂層を積層したものであってもよい。なお、図2は、前記巻取コア11の例示を示す概略斜視図であり、前記巻取コア11の一部を切断して断面を示している。
【0040】
また、前記巻取コア11の形状としては、図1及び図2に示すように、円筒形状であることが好ましい。前記巻取コア11の弾性率が上記範囲内であるならば、内部が空洞である円筒形状のほうが、軽量化できるので、好ましい。また、前記巻取コア11に前記回転装置を装着しやすい点からも好ましい。前記巻取コア11の形状が円筒形状である場合、前記巻取コア11の厚みは、巻取コア11の弾性率によっても異なるが、例えば、5〜15mmであることが好ましい。
【0041】
次に、上記のような繊維強化樹脂層を備えてなる巻取コア11の製造方法について説明する。前記巻取コア11を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、フィラメントワインディング法やシートワインディング法等によって製造できる。フィラメントワインディング法とは、液状の樹脂を含浸したフィラメント状の繊維を所定の型に巻き付け、樹脂を乾燥又は硬化させた後、脱型して、円筒形状の繊維強化樹脂層を形成させる方法である。また、シートワインディング法とは、液状の樹脂を含浸させたシート状の繊維(プリプレグ)を所定の型に巻き付け、樹脂を乾燥又は硬化させた後、脱型して、円筒形状の繊維強化樹脂層を形成させる方法である。より具体的には、以下のような方法である。
【0042】
図3は、フィラメントワインディング法による巻取コア11を製造する方法を説明するための概略図である。まず、型となるマンドレル31を、フィラメントワインダ32に取り付け、樹脂槽33に、繊維強化樹脂層の原料である樹脂を投入しておく。ここでの樹脂は、樹脂溶液又は硬化前の液状の樹脂である。繊維強化樹脂層の原料である繊維は、マンドレル31をフィラメントワインダ32によって回転させることによって、前記繊維を巻きつけたローラ34から順次供給される。そして、前記繊維は、ガイド35によって、巻き付ける位置を決め、マンドレル31に巻き付ける。その際、前記繊維は、マンドレル31に巻き付けられる前に、樹脂層33の中を通過して、前記樹脂を含浸させる。そうすることによって、樹脂を含浸した繊維がマンドレルの表面上に巻き付けられる。その後、樹脂を乾燥又は硬化させることによって、マンドレル上に繊維強化樹脂層を形成させる。そして、繊維強化樹脂層からマンドレルを引き抜くことによって、目的の成形体を得る。
【0043】
図4は、シートワインディング法による巻取コア11を製造する方法を説明するための概略図である。まず、型であるマンドレル41を、支持ローラ44,45上に載置する。支持ローラ44,45を回転駆動させることによって、マンドレル41を回転させる。その際、タッチローラ43は、マンドレル41の表面を押圧し、マンドレル41の回転によって、従動回転する。そして、型であるマンドレル41を回転させることによって、図4に示すように、プリプレグ42をタッチローラ43でマンドレル41に押し付けながら、マンドレル41上に巻き付ける。その後、樹脂を乾燥又は硬化させることによって、マンドレル上に繊維強化樹脂層を形成させる。そして、繊維強化樹脂層からマンドレルを引き抜くことによって、目的の成形体を得る。
【0044】
前記繊維としては、例えば、糸、ロービング、織物、不織布、編物、組物、クロス等のいずれの形態の繊維材料であっても用いることができる。また、その素材としては、繊維強化樹脂に一般的に含有される繊維であれば、特に限定なく使用できる。例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、及びセラミック繊維等が挙げられる。これらの中でも、高弾性率のものが得られる点から、ガラス繊維及びカーボン繊維が好ましく、カーボン繊維がより好ましい。
【0045】
また、前記樹脂としては、繊維強化樹脂に一般的に含有される樹脂であれば、特に限定なく使用できる。例えば、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等の硬化性樹脂が、熱に対して安定した巻取コアが得られる点から好ましい。
【0046】
また、繊維強化層を2層以上積層する場合、例えば、図2(b)に示すような異なる繊維強化樹脂層22,23を2層積層する場合、使用する繊維及び樹脂は、各層毎に異なるものを用いてもよいし、同じものを用いてもよい。また、樹脂を含浸した繊維を2種以上巻き付けてから同時に乾燥又は硬化させることによって、2層以上の繊維強化層を形成させてもよいし、樹脂を含浸した繊維を巻き付けて乾燥又は硬化させた後に、別途樹脂を含浸した繊維を巻き付けて乾燥又は硬化させることによって、2層以上の繊維強化層を形成させてもよい。
【0047】
巻取コアの弾性率の調整方法は、特に限定されないが、巻取コアの材質を代えることによって、調整が可能である。また、繊維強化層を備えた巻取コアの場合、使用する繊維として、カーボン繊維やアラミド繊維等の高強度繊維を用いたり、巻き付け量を多くしたり、繊維含有率を高めたりすることによって、弾性率を高めることができる。また、樹脂によっても、弾性率を調整することができる。さらに、繊維強化樹脂層の表面に繊維を含まない樹脂層を積層したものの場合、表層の樹脂層の樹脂によっても、弾性率を調整することができる。したがって、繊維強化樹脂層や表層の樹脂層の組成を適宜調整することによって、巻取コアの弾性率を上記弾性率範囲に調整することが可能である。
【0048】
次に、樹脂フィルムをロール状に巻き取ったフィルムロールについて説明する。図5は、フィルムロールを示す概略図である。図5(a)は、フィルムロール50を示す概略斜視図であり、図5(b)は、フィルムロール50の保存状態について説明するための概略斜視図であり、図5(c)は、フィルムロール50の保存状態について説明するための上面図である。
【0049】
フィルムロール50は、図5(b)及び図5(c)に示すように、巻取コア11の両端部を軸支可能な保持部51を備えた架台52に載置されて保存されることが好ましい。このような架台52上に、樹脂フィルム12を接地しないようにすることによって、フィルムロール50の変形を抑制できる。
【0050】
前記樹脂フィルムとしては、特に限定されない。例えば、溶液流延製膜法等によって得られた樹脂フィルムを用いることができる。このような樹脂フィルムであれば、膜厚が均一であって、光学フィルムとして好適に使用できる。
【0051】
溶液流延製膜法とは、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)を、走行する支持体上に流延して流延膜(ウェブ)を形成する流延工程と、前記流延膜を前記支持体から剥離する剥離工程と、剥離した流延膜を乾燥させる乾燥工程とを備える製膜法である。例えば、図6に示すような溶液流延製膜法による樹脂フィルムの製造装置によって行われる。なお、樹脂フィルムの製造装置としては、図6に示すものに限定されず、他の構成のものであってもよい。図6は、無端ベルト支持体61を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置60の基本的な構成を示す概略図である。樹脂フィルムの製造装置60は、無端ベルト支持体61、流延ダイ62、剥離ローラ63、乾燥装置64、及び巻取装置10等を備えている。前記流延ダイ62は、透明性樹脂を溶解した樹脂溶液(ドープ)65を前記無端ベルト支持体61の表面上に流延する。前記無端ベルト支持体61は、一対の駆動ローラ及び従動ローラによって駆動可能に支持され、流延ダイ62から流延された樹脂溶液65からなる流延膜を形成し、搬送しながら乾燥させる。そして、前記剥離ローラ63は、乾燥された流延膜を前記無端ベルト支持体61から剥離する。剥離された流延膜は、前記乾燥装置64によってさらに乾燥され、乾燥された流延膜を樹脂フィルムとして前記巻取装置10に巻き取る。このようにして得られた樹脂フィルムとしては、例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム等のセルロースエステルフィルム等が挙げられる。
【0052】
前記樹脂フィルムは、上記溶液流延製膜法によって形成された樹脂フィルムに限定されず、溶融流延製膜法によって形成された樹脂フィルムであってもよいし、溶液流延製膜法や溶融流延製膜法によって形成された樹脂フィルム上に、他の層を積層した樹脂フィルムであってもよい。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
溶液流延製膜法によって製造されたセルローストリアセテートフィルムを、巻取コアに巻き取って、フィルムロールを製造した。そして、巻取コアを軸支してフィルムロールを保管した。その際に使用した巻取コアと馬の背変形等の不具合発生との関係を検討した。
【0055】
(ドープの調製)
まず、セルローストリアセテートフィルムを製造する際に使用するドープを調製した。
【0056】
メチレンクロライド475質量部及びエタノール25質量部を入れた溶解タンクに、セルローストリアセテート樹脂(アセチル基置換度:2.88、数平均分子量:150000)100質量部を添加し、さらに、トリフェニルホスフェート10質量部及びエチルフタリルエチルグリコール2質量部を添加し、加熱して完全に溶解させた。得られた樹脂溶液に、チヌビン326を1質量部及びAEROSIL−200Vを0.1質量部添加して攪拌させた後、放置して冷却させた。そして、冷却した樹脂溶液を、濾紙を使用して濾過した。濾過後の樹脂溶液を一晩放置することにより、樹脂溶液中の気泡を脱泡させた。このようにして得られた樹脂溶液を、ドープとして使用して、以下のように、セルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0057】
(セルローストリアセテートフィルムの製造)
つぎに、上記ドープを流延ダイから、鏡面処理された表面を有する駆動回転ステンレス鋼製エンドレスベルトからなるベルト支持体上に流延して、ドープ膜(ウェブ)を形成させた。そして、ウェブがベルト支持体をほぼ一周したところで、剥離ロールにより剥離した。そして、剥離ロールにより剥離されたウェブを乾燥装置に通過させることによって、ウェブの溶媒が除去されて、セルローストリアセテートフィルムが得られた。なお、実施例1〜4及び比較例1においては、厚みが48μmのセルローストリアセテートフィルムを製造し、実施例5〜8及び比較例2においては、厚みが80μmのセルローストリアセテートフィルムを製造した。
【0058】
(フィルムロールの製造)
得られたセルローストリアセテートフィルムを、表1に示す弾性率及び形状を有する巻取コアに、表1に示す条件で巻き取った。そうすることによって、フィルムロールが得られた。なお、セルローストリアセテートフィルムの搬送速度が60m/分での巻取り時の初期張力は、厚みが48μmのセルローストリアセテートフィルムの場合、210N/mとし、厚みが80μmのセルローストリアセテートフィルムの場合、350N/mとした。また、フィルムの巻長3900mで一定とし、フィルムの幅1960mmで一定とした。その他、巻取コアの弾性率(MPa)、巻取コアの内径(mm)、巻取コアの外径(mm)は、下記の表1に示すように変化させた。なお、巻取コアの弾性率は、表1に示すように、巻取コアの繊維組成を変化させることによって、変化させた。
【0059】
【表1】

【0060】
上記のようにして得られたフィルムロール(実施例1〜8及び比較例1,2)を、以下のようにして、馬の背高さ及び貼り付き評価を行い、その結果を、表2に示す。
【0061】
(馬の背高さ)
得られたフィルムロールを、ポリエチレン製のシートで2重に包み、図5に示すように、巻取コアを軸支して、40℃、80%RHの条件下で14日間保管した。
【0062】
その後、フィルムロールの上面側であって、フィルムロールの軸方向(セルローストリアセテートフィルムの幅方向)に金尺をあて、その金尺とフィルムロールの軸方向中央部との距離を測定した。その距離を馬の背高さ(mm)とした。得られた結果を下記表2に示す。
【0063】
(貼り付き評価)
得られたフィルムロールを、ポリエチレン製のシートで2重に包み、図5に示すように、巻取コアを軸支して、40℃、80%RHの条件下で1ヶ月間保管した。その後、巻替え機によりセルローストリアセテートフィルムを巻外から3000m繰り出し、その時点で巻き表面に発生している貼り付き(黒斑点に見える)個数を目視によりカウントした。得られた結果を下記表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2からわかるように、巻取コアの弾性率Eが、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長及び巻取コアの形状によって決定される値(0.06×Aa/I)より大きい場合[E/(0.06×Aa/I)が1を超える場合]、馬の背高さが12mm未満となり、たわみが小さく、貼り付き個数が10個未満と良好であった。これに対して、巻取コアの弾性率Eが、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長及び巻取コアの形状によって決定される値(0.06×Aa/I)より小さい場合[E/(0.06×Aa/I)が1以下である場合]、馬の背高さが12mmを超え、たわみが大きく、貼り付き個数が10個以上と好ましくなかった。
【0066】
一般的に貼り付き個数が10個以上になると、偏光板等の保護フィルムに用いた場合、画像むらが多くなり、偏光板等の保護フィルムとしての使用が不適になる。よって、巻取コアの弾性率を、巻き取る樹脂フィルムの幅や巻長及び巻取コアの形状によって決定される値で規定することによって、必要以上に高くすることなく、貼り付き個数が10個未満を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】樹脂フィルム12を巻取コア11にロール状に巻き取る巻取装置10を示す概略図である。
【図2】前記巻取コア11の例示を示す概略斜視図である。
【図3】フィラメントワインディング法による巻取コア11を製造する方法を説明するための概略図である。
【図4】シートワインディング法による巻取コア11を製造する方法を説明するための概略図である。
【図5】フィルムロールを示す概略図である。
【図6】無端ベルト支持体61を使用した溶液流延法による樹脂フィルムの製造装置60の基本的な構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
10 巻取装置
11 巻取コア
12 樹脂フィルム
13 案内ローラ
14 タッチローラ
21,22 繊維強化樹脂層
31 マンドレル
32 フィラメントワインダ
33 樹脂槽
34 ローラ
35 ガイド
41 マンドレル
42 プリプレグ
43 タッチローラ
44 支持ローラ
50 フィルムロール
51 保持部
52 架台
60 製造装置
61 無端ベルト支持体
62 流延ダイ
63 剥離ローラ
64 乾燥装置
65 樹脂溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムをロール状に巻き取るための巻取コアであって、下記式(1)を満たすことを特徴とする巻取コア。
E > 0.06×Aa/I (1)
(E:巻取コアの弾性率[MPa]、A:巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量[kg]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])
【請求項2】
繊維と樹脂とを含む繊維強化樹脂層を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の巻取コア。
【請求項3】
前記繊維が、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、及びセラミック繊維からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2に記載の巻取コア。
【請求項4】
前記繊維が、カーボン繊維を含むことを特徴とする請求項2に記載の巻取コア。
【請求項5】
前記樹脂が、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の巻取コア。
【請求項6】
前記樹脂が、硬化性樹脂であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の巻取コア。
【請求項7】
円筒形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の巻取コア。
【請求項8】
前記樹脂フィルムの幅が、1400〜2500mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の巻取コア。
【請求項9】
前記樹脂フィルムの厚さが、20〜80μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の巻取コア。
【請求項10】
前記樹脂フィルムの長さが、2600〜5200mであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の巻取コア。
【請求項11】
樹脂フィルムを巻取コアにロール状に巻き取る巻取工程を備え、
前記巻取コアが、下記式(1)を満たすことを特徴とするフィルムロールの製造方法。
E > 0.06×Aa/I (1)
(E:巻取コアの弾性率[MPa]、A:巻取コアと樹脂フィルムとの合計質量[kg]、a:樹脂フィルムの幅[mm]、I:巻取コアの断面2次モーメント[mm])
【請求項12】
前記樹脂フィルムとして、
透明性樹脂を溶媒に溶解させた樹脂溶液を、走行する支持体上に流延ダイから流延して流延膜を形成する流延工程と、
前記流延膜を前記支持体から剥離する剥離工程と、
剥離した流延膜を乾燥させる乾燥工程とを備える製造方法によって得られる樹脂フィルムを用いることを特徴とする請求項11に記載のフィルムロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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