巻回体、その製造方法、及び積層部含有長尺シート
【課題】長尺シートを巻取芯材から巻き戻して使用する際に、段差跡の発生を低減ないし防止可能な巻回体、その製造方法、及び積層部含有長尺シートを提供する。
【解決手段】巻回体は、長尺シート1が巻取芯材2に巻付けられてなり、長尺シートの巻付け開始端部3が、その全幅に亘って、長尺シートの厚さの2/3以下の厚さの端部を有し、反発パラメータ3g〜2000gの材料からなる挿入カバー11によって覆われている。製造方法は、長尺シートを巻取芯材に巻付ける際に、長尺シートの巻付け開始端部を、その全幅に亘って前記挿入カバーによって直接的に又は長尺シートの巻回層を隔てて覆った後に、挿入カバーの上から更に長尺シートの巻付けを行う。積層部含有長尺シートは、長尺シートの巻付け開始端部から長さ方向に内側の表面に、長尺シートに対して剥離可能に担持された前記挿入カバーとの積層部を含む。
【解決手段】巻回体は、長尺シート1が巻取芯材2に巻付けられてなり、長尺シートの巻付け開始端部3が、その全幅に亘って、長尺シートの厚さの2/3以下の厚さの端部を有し、反発パラメータ3g〜2000gの材料からなる挿入カバー11によって覆われている。製造方法は、長尺シートを巻取芯材に巻付ける際に、長尺シートの巻付け開始端部を、その全幅に亘って前記挿入カバーによって直接的に又は長尺シートの巻回層を隔てて覆った後に、挿入カバーの上から更に長尺シートの巻付けを行う。積層部含有長尺シートは、長尺シートの巻付け開始端部から長さ方向に内側の表面に、長尺シートに対して剥離可能に担持された前記挿入カバーとの積層部を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回体、その製造方法、及び積層部含有長尺シートに関する。本発明によれば、巻取芯材から巻き戻した長尺シートの段差跡を低減ないし解消することができる。
【背景技術】
【0002】
長尺シート状の原反(紙、プラスチックフィルム、又は金属箔等)や、粘着テープもしくは床材、あるいは家庭において使用するラップフィルム又はアルミフォイル等は、一般に、紙管等の円筒状ないし円柱状巻取芯材の周面に巻回した状態で保存ないし輸送され、使用前に巻取芯材から巻き戻し、平坦な状態にしてから実際に使用されている。
このような従来の巻回体では、図10に示すように、長尺シート41の巻付け開始端部42を、その全幅に亘って粘着テープで紙管等の巻取芯材43の周面に固定するのが一般的方法である。しかしながら、この方法では、巻付け開始端部42と巻取芯材43の表面との間に段差が発生するので、巻付け開始端部42と2週目の長尺シート41の裏側表面との間に空隙部44が発生する。長尺シート41を巻取芯材43に巻き付ける際には、長尺シート41を巻取芯材43側へ押しつける力を連続的に付加するので、空隙部44に相当する領域に窪み45が形成される。窪み45の深さは、巻取芯材に近い周回層から離れるのに従って減少していくが、巻回体40は、前記窪み45を含有したままで保存されることになるので、長尺シート41の使用前に巻取芯材43から巻き戻すと、図11に示すように、長尺シート41には、周期的な段差跡46が形成される。このような段差跡46を有する部分は、用途によっては不良部分になるので、歩留まりが悪化する。
【0003】
前記の段差跡を防止ないし軽減する手段は、種々提案されている。例えば、長尺シートの巻付け開始端部の一部のみを粘着テープで巻取芯材表面に貼着すると共に、巻付け開始端部を、巻取り方向に沿う一方の辺から他方の辺に向かって斜めに形成する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、巻付け開始端部の固着が不充分になる場合があるだけでなく、長尺シート端部の加工処理が必要になるので、煩雑である。
また、幅方向に沿って切欠部を設けた巻取芯材や幅方向に沿って弾性体を含む凹部を設けた巻取芯材(特許文献2)、幅方向に沿って粘着性軟質樹脂を埋設した凹部を設けた巻芯(特許文献3)、及び長尺シートの厚み分の段差部を幅方向に沿って設けたフィルム巻回体(特許文献4)が知られている。しかしながら、これらの巻取芯材は、いずれも巻取芯材に加工処理を実施する必要があり、操作が煩雑であるだけでなく、製造コストの上昇を招く。
更に、長尺シート状床材の裏面側に発泡性緩衝材を設け、長尺シート状床材を巻取芯材に巻き付けた際に形成される空隙部をその緩衝材で埋める手段も知られている(特許文献5及び6)。しかしながら、この手段では、発泡性緩衝材を設ける位置について、厳密な調整が必要になり、操作が極めて煩雑である。しかも、巻付けに使用する巻取芯材が限定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−16222号公報
【特許文献2】実開平6−80764号公報
【特許文献3】特開2005−75521号公報
【特許文献4】実用新案登録第3118688号公報
【特許文献5】特開平6−341214号公報
【特許文献6】特開2004−217349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、長尺シート端部の加工や巻取芯材への加工が不要であり、厳密な位置調整の必要がなく、任意の巻取芯材に適用可能で、しかも使用操作が簡便で、製造コストも低廉な手段によって、前記段差跡の発生を低減ないし防止する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、本発明により、
長尺シートが巻取芯材に巻付けられてなる巻回体であって、
前記長尺シートの巻付け開始端部が、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって覆われており、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体によって解決することができる。
【0007】
また、本発明は、
長尺シートを巻取芯材に巻付ける際に、前記長尺シートの巻付け開始端部を、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって直接的に又は前記長尺シートの巻回層を隔てて覆った後に、その挿入カバーの上から更に前記長尺シートの巻付けを行い、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体の製造方法にも関する。
【0008】
更に、本発明は、
巻取芯材に巻付ける長尺シートであって、その長尺シートの巻付け開始端部から長さ方向に内側の表面に、前記長尺シートよりも薄い端部を有すると共に前記長尺シートに対して剥離可能に担持された挿入カバーとの積層部を含み、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、積層部含有長尺シートにも関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、長尺シートを巻取芯材に巻き付ける際に、巻付け開始端部と巻取芯材表面との間の段差を挿入カバーによって解消することができるので、長尺シートを巻取芯材から巻き戻して使用する際に、段差跡の発生を低減ないし防止することができる。しかも、操作は、挿入カバーを単に段差の上から被せるだけであり、長尺シート端部の加工や巻取芯材への加工が不要であり、厳密な位置調整の必要がなく、任意の巻取芯材に適用可能で、製造コストも低廉である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】挿入カバーによって段差跡が解消される本発明の原理を模式的に示す断面図である。
【図2】別の態様の挿入カバーによって段差跡が解消される本発明の原理を模式的に示す断面図である。
【図3】長尺シートの表面に挿入カバーを担持する本発明による積層部含有長尺シートの模式的断面図である。
【図4】長尺シートの表面に別の態様の挿入カバーを担持する本発明による積層部含有長尺シートの模式的断面図である。
【図5】長尺シートの表面に更に別の態様の挿入カバーを担持する本発明による積層部含有長尺シートの模式的断面図である。
【図6】反発パラメータの測定方法を示す模式的斜視図である。
【図7】反発パラメータ測定の際のストロークを説明する模式的側面図である。
【図8】反発パラメータの測定に用いる押圧プローブの先端平坦接触部の構造を示す模式的側面図である。
【図9】反発パラメータ測定の際に用いるストロークの意味の説明図である。
【図10】従来技術による巻回体の模式的断面図である。
【図11】図10の巻回体を巻き戻した長尺シートを示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、本発明の原理を図1及び図2に沿って説明する。
図1は、長尺シート1が巻取芯材2に巻付けられている本発明の巻回体において、長尺シート1の巻付け開始端部3及び空隙部4が挿入カバー11によって覆われる状態を示す模式的部分拡大断面図である。図1に示すように、長尺シート1の第1周巻付層1aの巻付け開始端部3と巻取芯材2の表面との段差によって生成する空隙部4は、本発明で用いる挿入カバー11によって覆われるので、長尺シート1の第2周巻付層1b及びその後の巻付層には、前記空隙部4に起因する段差跡は発生しないか、あるいは大幅に軽減する。なお、本発明で用いる挿入カバー11の巻付上流側端部11Aと、巻取芯材2の表面との間に新たに空隙部5Aが発生し、同様に、挿入カバー11の巻付下流側端部11Bと、長尺シート1の第1周巻付層1aの表面との間にも新たに空隙部5Bが発生する。しかしながら、挿入カバー11の厚さ(h)は、長尺シート1の厚さ(H)よりも薄く、従って、挿入カバー11の各端部、すなわち、巻付上流側端部11A及び巻付下流側端部11Bの厚さ(h)は、それぞれ長尺シート1の厚さ(H)よりも薄いので、空隙部5A及び空隙部5Bの影響による段差跡は、規模が縮小する。すなわち、段差跡を形成する長尺シート層の巻付け周回数が減少する。また、挿入カバー11の各端部の厚さ(h)を薄くすることによって、その影響を更に縮小させることができる。
【0012】
挿入カバーの両端部の厚さのみを、中央部と比較して薄くすることもできる。この態様を図2に示す。図2に示す挿入カバー12では、各端部、すなわち、巻付上流側端部12A及び巻付下流側端部12Bの厚さ(h1)が、中央部の厚さ(h2)よりも薄い。従って、巻付上流側端部12Aと巻取芯材2の表面との間に形成される空隙部、及び巻付下流側端部12Bと長尺シート1の第1周巻付層1aの表面との間に形成される空隙部の規模を大幅に縮小させることができる。その一方で、比較的に厚い中央部により、その上に多数回にわたり巻回される長尺シート1によって付加される締付力に対抗することもできる。
【0013】
本発明による巻回体を形成する際には、例えば、図1に示すように、巻取芯材2の表面に、長尺シート1の巻付け開始端部3を、例えば、粘着テープなどで貼着し、続いて、巻付け開始端部3の全幅(幅方向全体)に亘って、挿入カバー11を直接に(すなわち、巻付け開始端部3と直接に接触させた状態で)覆い、その状態で、巻付け開始端部3の巻付けを実施する。こうして、段差跡を解消した巻回体を形成することができる。なお、巻取芯材2の表面に、長尺シート1の巻付け開始端部3を、例えば、粘着テープなどで貼着し、続いて、長尺シート1で1周ないし数周の巻付けを行った後から、挿入カバー11で被覆することもできる。挿入カバーで覆う場合に、厳密な位置決めは不要であり、挿入カバーの中央部を段差発生部位に大まかに当てはめればよい。
【0014】
本発明で用いる挿入カバーは、長尺シートとは別途に用意して、巻回体を形成する際に長尺シートに沿わせて使用することができるが、あるいは、長尺シートの表面に予め貼着させておくこともできる。長尺シート表面に予め貼着させておく代表的態様を、図3〜図5(模式的部分断面図)に示す。図3は、図1に示す態様の挿入カバー11を、長尺シート1の巻付け開始端部3から長さ方向(図3の矢印S)に内側の表面に貼着させた積層部6を含有する長尺シート1を示す。この積層部含有長尺シート1を、挿入カバー担持面1A側で巻取芯材に巻き付けると、図1に示すように、長尺シート1の第2周巻付層1bの巻回操作に伴って、挿入カバー11が巻付け開始端部3の上方に配置されるので、段差跡を軽減ないし解消することができる。挿入カバー11を貼着する際の位置調節に厳密性は要求されないので、貼着操作は非常に簡単である。なお、長尺シート1を巻き戻して使用する際には、挿入カバー11を使用しないので、挿入カバー11を長尺シート1に貼着する際には、剥離可能に貼着する。
【0015】
図4は、図2に示す態様の挿入カバー12を、長尺シート1の巻付け開始端部3から長さ方向(図4の矢印S)に内側の表面に貼着させた積層部6を含有する長尺シート1を示す。図5は、長尺状挿入カバー13を、長尺シート1の巻付け開始端部3から長さ方向(図5の矢印S)に内側の表面に貼着させた積層部6を含有する長尺シート1を示す。なお、図5に示す態様の前記長尺状挿入カバー13においては、その巻付上流側端部13Aの厚さが他の部分の厚さよりも薄くしてあるが、長尺状挿入カバーの厚さを全体的に均一にしてもよい。長尺状挿入カバー13の巻付下流側端部の位置は特に限定されず、長尺シート1の巻付け開始端部3と反対側の端部と一致させてもよい。なお、図4及び図5に示す長尺シート1も、挿入カバー担持面1A側で巻取芯材に巻き付ける。
【0016】
本発明は、貯蔵や輸送の便宜のために、円柱状又は円筒状の巻取芯材(例えば、紙管)に巻き付けて保存又は輸送し、使用する際には巻取芯材から巻き戻して平坦な状態で用いる任意の長尺シートに有効に適用することができる。特に、巻取芯材に巻き付けられた際の前記段差の影響により、巻き戻した場合に段差跡が形成される長尺シートに対し、その段差跡の低減ないし解消に有効である。このような長尺シートとしては、例えば、粘着テープ、床材シート、又はディスプレイ部材形成フィルムなどを挙げることができる。
【0017】
本発明で用いる挿入カバーの厚さは、前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下、好ましくは1/2以下である。前記比(B/A)を2/3以下とすることにより、有効に段差跡を低減ないし解消することができる。前記比(B/A)の下限は特に限定されないが、例えば、1/20である。本発明で用いる挿入カバーは、図1に示すように、その厚さが全体的に一様であるか、あるいは図2に示すように、中央部を厚くし、両端部(あるいは一方の端部)を薄くすることもできる。中央部を厚くする場合も、その中央部の最大厚さを、長尺シートの厚さより薄くすることが好ましい。
【0018】
本発明で用いる挿入カバーの長さ方向の長さは、図1〜図5に示すように特に限定されない。下限としては、図1及び図2に示すように、前記長尺シートの巻付け開始端部を被い、前記段差を解消することのできる長さである限り限定されず、例えば、使用する巻取芯材外周面の円周(S)に対する長さ(L)の比(L/S)として、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/5以上である。上限も限定されず、例えば、図5に示す長尺状挿入カバーのように、長尺シートの巻付け終了端部(巻き戻し開始端部)に一致させることもできる。また、図1及び図2に示すように、長尺シート1の第1周巻付層1aと第2周巻付層1bとの間にのみ介在させる場合には、使用する巻取芯材外周面の円周(S)に対する長さ(L)の比(L/S)として、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下とすることができる。また、幅方向の長さは、長尺シートの幅と同じにするか、あるいは長尺シートの幅よりも広くすることもできる。
【0019】
本発明で用いる挿入カバーの材料も特に限定されないが、巻取芯材の外径に応じて適切な反発パラメータを示す材料を用いるのが好ましい。前記反発パラメータは、好ましくは3g〜2000g、より好ましくは5g〜150gである。前記反発パラメータを有する材料は、材料の種類と厚さとを適宜選択することにより、適切に用意することができる。本明細書において反発パラメータは、以下の方法で測定した値である。
最初に、測定対象の材料から、測定対象厚さを有するサンプル(30mm×100mm)を準備する。続いて、図6(模式的斜視図)に示すように、前記サンプル21を、1対の載置台22,22の上に載せる。各載置台22,22は、それぞれ、厚さが2mm、高さが10mm、そして奥行き(図6のw)が20mmである。これらの載置台22,22相互の間隔(図6のd)は、25mmとする。この1対の載置台22,22の上に、前記サンプル21の中央部が載置台22,22の間隙の中央部に位置するように載置する。次に、前記サンプル21の中央部に、押圧プローブ23の先端部24を押し当ててから、巻取芯材の外径に応じて予め定めてあるストローク(押し込み長さ)まで、押圧プローブ23を矢印Pの方向に20mm/分の速度で押し下げて図7に示す状態とし、その所定ストローク(図7のD)だけ押し下げた変形の際に測定される反発力を「反発パラメータ」とする。なお、前記押圧プローブ23の先端部24は、図8に示すように、幅(図8のf)が1mmの平坦接触部を有している。
【0020】
巻取芯材の外径に応じて予め定めてあるストローク(D)は、
D=r−(r2−12.5×12.5)1/2
(ここで、rは、巻取芯材外径の半径である)
によって、巻取芯材外径の半径に応じて計算することができる。なお、巻取芯材外径の半径(r)と所定ストローク(D)との関係を図9に示す。図9において、dは、図6に示す載置台22,22相互の間隔(25mm)である。図9において、直角三角形の3辺(rとaとd/2)には三平方の定理から、
r2=a2+(d/2)2
の関係が成立し、
a=〔r2−(d/2)2〕1/2
となる。一方、
「D=r−a」であり、「d=25mm」であるから、前記計算式:
D=r−(r2−12.5×12.5)1/2
が得られる。
【0021】
挿入カバーとしては、可撓性の樹脂シート、金属シート、又は紙類材料シートなどから適宜選択することができる。巻取芯材も特に限定されず、例えば、粘着シート用の巻取芯材としては、内径が3インチの紙管や、内径が6インチ〜10インチの紙管などが通常使用されており、これらの紙管に対して本発明を有利に利用することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
《長尺シート製造例》
(1)長尺シートAの製造
両面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=100μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を層厚が50μmになるように塗布し、乾燥させた。続いて、発泡体(厚み=1100μm)を前記アクリル系粘着剤層に貼り合わせて、積層体1を製造した。
一方、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=150μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を50μmになるように塗布して、乾燥させ、アクリル系粘着剤層を前記積層体1の発泡体層表面と貼り合わせて長尺シートA(合計厚さ=1450μm)を製造した。
【0024】
(2)長尺シートBの製造
両面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=75μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を層厚が50μmになるように塗布し、乾燥させた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み=125μm)を前記アクリル系粘着剤層に貼り合わせて、積層体2を製造した。
一方、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=150μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を50μmになるように塗布して、乾燥させ、アクリル系粘着剤層を前記積層体2の厚さ125μmのPETフィルム層表面と貼り合わせて長尺シートB(合計厚さ=450μm)を製造した。
【0025】
(3)長尺シートCの製造
両面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=25μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を層厚が50μmになるように塗布し、乾燥させた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み=50μm)を前記アクリル系粘着剤層に貼り合わせて、積層体3を製造した。
一方、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=75μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を50μmになるように塗布して、乾燥させ、アクリル系粘着剤層を前記積層体3の厚さ50μmのPETフィルム層表面と貼り合わせて長尺シートC(合計厚さ=250μm)を製造した。
【0026】
《実施例1〜5及び比較例1〜2》
図1に示すタイプの厚さが均一の挿入カバーを用いて巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
具体的には、前記長尺シートAの巻付け開始端部を紙管(直径100mm;幅500mm)の表面に貼着し、前記巻付け開始端部と紙管表面とによって形成される空隙部を覆うように、表1に示す挿入カバーで覆った後、前記長尺シートAを50周巻付け、40℃の環境下で30日間保管した。なお、実施例4で用いた挿入カバーは、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=125μm)の一方の表面上に厚さ50μmのアクリル系粘着剤層が積層されてなる積層体であった。
続いて、外周部分から順にテープを巻き戻し、紙管から何周目に段差が消えるかを目視にて以下の4段階で評価した。結果を表1に示す。
×・・・30周以上
△・・・20以上30周未満
○・・・10以上20周未満
◎・・・10周未満
【0027】
《実施例6》
紙管として、直径100mm及び幅500mmの紙管に代えて、直径200mm及び幅500mmの紙管を用いること以外は、前記実施例1〜5と同様の操作を繰り返して巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
【0028】
《実施例7》
長尺シートとして、前記長尺シートAを用いる代わりに、前記長尺シートBを用いること以外は、前記実施例1〜5と同様の操作を繰り返して巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
【0029】
《実施例8及び比較例3》
長尺シートとして、前記長尺シートAを用いる代わりに、前記前記長尺シートCを用いること以外は、前記実施例1〜5と同様の操作を繰り返して巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
【0030】
【表1】
【0031】
《参考例》
種々の材料からなり、種々の厚さを有するプレートに関して、本発明における反発パラメータを測定すると共に、前記実施例1〜5に記載の方法によって段差跡の解消効果を確認した。評価は、以下の2段階で実施した。結果を表2に示す。
○・・・紙管から30周目に段差が消える
×・・・紙管から30周目に段差が消えない
【0032】
【表2】
【0033】
表2において、「剥離紙」は両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=125μm)であり、「剥離紙+粘着剤層」は両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=125μm)の一方の表面上に厚さ50μmのアクリル系粘着剤層が積層されてなる積層体である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
長尺シート状の原反(紙、プラスチックフィルム、又は金属箔等)や、粘着テープもしくは床材、あるいは家庭において使用するラップフィルム又はアルミフォイル等を巻取芯材に巻回する際に、本発明の挿入カバーを用いることによって、段差跡の発生を低減ないし防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・長尺シート;1a・・・第1周巻付層;1b・・・第2周巻付層;
2・・・巻取芯材;3・・・巻付け開始端部;4・・・空隙部;
5A・・・空隙部;5B・・空隙部;6・・・積層部;
11,12・・・挿入カバー;11A,12A,13A・・・巻付上流側端部;
11B,12B・・・巻付下流側端部;13・・・長尺状挿入カバー;
21・・・サンプル;22・・・載置台;23・・・押圧プローブ;
24・・・先端部;40・・・巻回体;41・・・長尺シート;
42・・・巻付け開始端部;43・・・巻取芯材;44・・・空隙部;
45・・・窪み;46・・・段差跡。
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回体、その製造方法、及び積層部含有長尺シートに関する。本発明によれば、巻取芯材から巻き戻した長尺シートの段差跡を低減ないし解消することができる。
【背景技術】
【0002】
長尺シート状の原反(紙、プラスチックフィルム、又は金属箔等)や、粘着テープもしくは床材、あるいは家庭において使用するラップフィルム又はアルミフォイル等は、一般に、紙管等の円筒状ないし円柱状巻取芯材の周面に巻回した状態で保存ないし輸送され、使用前に巻取芯材から巻き戻し、平坦な状態にしてから実際に使用されている。
このような従来の巻回体では、図10に示すように、長尺シート41の巻付け開始端部42を、その全幅に亘って粘着テープで紙管等の巻取芯材43の周面に固定するのが一般的方法である。しかしながら、この方法では、巻付け開始端部42と巻取芯材43の表面との間に段差が発生するので、巻付け開始端部42と2週目の長尺シート41の裏側表面との間に空隙部44が発生する。長尺シート41を巻取芯材43に巻き付ける際には、長尺シート41を巻取芯材43側へ押しつける力を連続的に付加するので、空隙部44に相当する領域に窪み45が形成される。窪み45の深さは、巻取芯材に近い周回層から離れるのに従って減少していくが、巻回体40は、前記窪み45を含有したままで保存されることになるので、長尺シート41の使用前に巻取芯材43から巻き戻すと、図11に示すように、長尺シート41には、周期的な段差跡46が形成される。このような段差跡46を有する部分は、用途によっては不良部分になるので、歩留まりが悪化する。
【0003】
前記の段差跡を防止ないし軽減する手段は、種々提案されている。例えば、長尺シートの巻付け開始端部の一部のみを粘着テープで巻取芯材表面に貼着すると共に、巻付け開始端部を、巻取り方向に沿う一方の辺から他方の辺に向かって斜めに形成する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、巻付け開始端部の固着が不充分になる場合があるだけでなく、長尺シート端部の加工処理が必要になるので、煩雑である。
また、幅方向に沿って切欠部を設けた巻取芯材や幅方向に沿って弾性体を含む凹部を設けた巻取芯材(特許文献2)、幅方向に沿って粘着性軟質樹脂を埋設した凹部を設けた巻芯(特許文献3)、及び長尺シートの厚み分の段差部を幅方向に沿って設けたフィルム巻回体(特許文献4)が知られている。しかしながら、これらの巻取芯材は、いずれも巻取芯材に加工処理を実施する必要があり、操作が煩雑であるだけでなく、製造コストの上昇を招く。
更に、長尺シート状床材の裏面側に発泡性緩衝材を設け、長尺シート状床材を巻取芯材に巻き付けた際に形成される空隙部をその緩衝材で埋める手段も知られている(特許文献5及び6)。しかしながら、この手段では、発泡性緩衝材を設ける位置について、厳密な調整が必要になり、操作が極めて煩雑である。しかも、巻付けに使用する巻取芯材が限定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−16222号公報
【特許文献2】実開平6−80764号公報
【特許文献3】特開2005−75521号公報
【特許文献4】実用新案登録第3118688号公報
【特許文献5】特開平6−341214号公報
【特許文献6】特開2004−217349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、長尺シート端部の加工や巻取芯材への加工が不要であり、厳密な位置調整の必要がなく、任意の巻取芯材に適用可能で、しかも使用操作が簡便で、製造コストも低廉な手段によって、前記段差跡の発生を低減ないし防止する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、本発明により、
長尺シートが巻取芯材に巻付けられてなる巻回体であって、
前記長尺シートの巻付け開始端部が、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって覆われており、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体によって解決することができる。
【0007】
また、本発明は、
長尺シートを巻取芯材に巻付ける際に、前記長尺シートの巻付け開始端部を、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって直接的に又は前記長尺シートの巻回層を隔てて覆った後に、その挿入カバーの上から更に前記長尺シートの巻付けを行い、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体の製造方法にも関する。
【0008】
更に、本発明は、
巻取芯材に巻付ける長尺シートであって、その長尺シートの巻付け開始端部から長さ方向に内側の表面に、前記長尺シートよりも薄い端部を有すると共に前記長尺シートに対して剥離可能に担持された挿入カバーとの積層部を含み、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、積層部含有長尺シートにも関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、長尺シートを巻取芯材に巻き付ける際に、巻付け開始端部と巻取芯材表面との間の段差を挿入カバーによって解消することができるので、長尺シートを巻取芯材から巻き戻して使用する際に、段差跡の発生を低減ないし防止することができる。しかも、操作は、挿入カバーを単に段差の上から被せるだけであり、長尺シート端部の加工や巻取芯材への加工が不要であり、厳密な位置調整の必要がなく、任意の巻取芯材に適用可能で、製造コストも低廉である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】挿入カバーによって段差跡が解消される本発明の原理を模式的に示す断面図である。
【図2】別の態様の挿入カバーによって段差跡が解消される本発明の原理を模式的に示す断面図である。
【図3】長尺シートの表面に挿入カバーを担持する本発明による積層部含有長尺シートの模式的断面図である。
【図4】長尺シートの表面に別の態様の挿入カバーを担持する本発明による積層部含有長尺シートの模式的断面図である。
【図5】長尺シートの表面に更に別の態様の挿入カバーを担持する本発明による積層部含有長尺シートの模式的断面図である。
【図6】反発パラメータの測定方法を示す模式的斜視図である。
【図7】反発パラメータ測定の際のストロークを説明する模式的側面図である。
【図8】反発パラメータの測定に用いる押圧プローブの先端平坦接触部の構造を示す模式的側面図である。
【図9】反発パラメータ測定の際に用いるストロークの意味の説明図である。
【図10】従来技術による巻回体の模式的断面図である。
【図11】図10の巻回体を巻き戻した長尺シートを示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に、本発明の原理を図1及び図2に沿って説明する。
図1は、長尺シート1が巻取芯材2に巻付けられている本発明の巻回体において、長尺シート1の巻付け開始端部3及び空隙部4が挿入カバー11によって覆われる状態を示す模式的部分拡大断面図である。図1に示すように、長尺シート1の第1周巻付層1aの巻付け開始端部3と巻取芯材2の表面との段差によって生成する空隙部4は、本発明で用いる挿入カバー11によって覆われるので、長尺シート1の第2周巻付層1b及びその後の巻付層には、前記空隙部4に起因する段差跡は発生しないか、あるいは大幅に軽減する。なお、本発明で用いる挿入カバー11の巻付上流側端部11Aと、巻取芯材2の表面との間に新たに空隙部5Aが発生し、同様に、挿入カバー11の巻付下流側端部11Bと、長尺シート1の第1周巻付層1aの表面との間にも新たに空隙部5Bが発生する。しかしながら、挿入カバー11の厚さ(h)は、長尺シート1の厚さ(H)よりも薄く、従って、挿入カバー11の各端部、すなわち、巻付上流側端部11A及び巻付下流側端部11Bの厚さ(h)は、それぞれ長尺シート1の厚さ(H)よりも薄いので、空隙部5A及び空隙部5Bの影響による段差跡は、規模が縮小する。すなわち、段差跡を形成する長尺シート層の巻付け周回数が減少する。また、挿入カバー11の各端部の厚さ(h)を薄くすることによって、その影響を更に縮小させることができる。
【0012】
挿入カバーの両端部の厚さのみを、中央部と比較して薄くすることもできる。この態様を図2に示す。図2に示す挿入カバー12では、各端部、すなわち、巻付上流側端部12A及び巻付下流側端部12Bの厚さ(h1)が、中央部の厚さ(h2)よりも薄い。従って、巻付上流側端部12Aと巻取芯材2の表面との間に形成される空隙部、及び巻付下流側端部12Bと長尺シート1の第1周巻付層1aの表面との間に形成される空隙部の規模を大幅に縮小させることができる。その一方で、比較的に厚い中央部により、その上に多数回にわたり巻回される長尺シート1によって付加される締付力に対抗することもできる。
【0013】
本発明による巻回体を形成する際には、例えば、図1に示すように、巻取芯材2の表面に、長尺シート1の巻付け開始端部3を、例えば、粘着テープなどで貼着し、続いて、巻付け開始端部3の全幅(幅方向全体)に亘って、挿入カバー11を直接に(すなわち、巻付け開始端部3と直接に接触させた状態で)覆い、その状態で、巻付け開始端部3の巻付けを実施する。こうして、段差跡を解消した巻回体を形成することができる。なお、巻取芯材2の表面に、長尺シート1の巻付け開始端部3を、例えば、粘着テープなどで貼着し、続いて、長尺シート1で1周ないし数周の巻付けを行った後から、挿入カバー11で被覆することもできる。挿入カバーで覆う場合に、厳密な位置決めは不要であり、挿入カバーの中央部を段差発生部位に大まかに当てはめればよい。
【0014】
本発明で用いる挿入カバーは、長尺シートとは別途に用意して、巻回体を形成する際に長尺シートに沿わせて使用することができるが、あるいは、長尺シートの表面に予め貼着させておくこともできる。長尺シート表面に予め貼着させておく代表的態様を、図3〜図5(模式的部分断面図)に示す。図3は、図1に示す態様の挿入カバー11を、長尺シート1の巻付け開始端部3から長さ方向(図3の矢印S)に内側の表面に貼着させた積層部6を含有する長尺シート1を示す。この積層部含有長尺シート1を、挿入カバー担持面1A側で巻取芯材に巻き付けると、図1に示すように、長尺シート1の第2周巻付層1bの巻回操作に伴って、挿入カバー11が巻付け開始端部3の上方に配置されるので、段差跡を軽減ないし解消することができる。挿入カバー11を貼着する際の位置調節に厳密性は要求されないので、貼着操作は非常に簡単である。なお、長尺シート1を巻き戻して使用する際には、挿入カバー11を使用しないので、挿入カバー11を長尺シート1に貼着する際には、剥離可能に貼着する。
【0015】
図4は、図2に示す態様の挿入カバー12を、長尺シート1の巻付け開始端部3から長さ方向(図4の矢印S)に内側の表面に貼着させた積層部6を含有する長尺シート1を示す。図5は、長尺状挿入カバー13を、長尺シート1の巻付け開始端部3から長さ方向(図5の矢印S)に内側の表面に貼着させた積層部6を含有する長尺シート1を示す。なお、図5に示す態様の前記長尺状挿入カバー13においては、その巻付上流側端部13Aの厚さが他の部分の厚さよりも薄くしてあるが、長尺状挿入カバーの厚さを全体的に均一にしてもよい。長尺状挿入カバー13の巻付下流側端部の位置は特に限定されず、長尺シート1の巻付け開始端部3と反対側の端部と一致させてもよい。なお、図4及び図5に示す長尺シート1も、挿入カバー担持面1A側で巻取芯材に巻き付ける。
【0016】
本発明は、貯蔵や輸送の便宜のために、円柱状又は円筒状の巻取芯材(例えば、紙管)に巻き付けて保存又は輸送し、使用する際には巻取芯材から巻き戻して平坦な状態で用いる任意の長尺シートに有効に適用することができる。特に、巻取芯材に巻き付けられた際の前記段差の影響により、巻き戻した場合に段差跡が形成される長尺シートに対し、その段差跡の低減ないし解消に有効である。このような長尺シートとしては、例えば、粘着テープ、床材シート、又はディスプレイ部材形成フィルムなどを挙げることができる。
【0017】
本発明で用いる挿入カバーの厚さは、前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下、好ましくは1/2以下である。前記比(B/A)を2/3以下とすることにより、有効に段差跡を低減ないし解消することができる。前記比(B/A)の下限は特に限定されないが、例えば、1/20である。本発明で用いる挿入カバーは、図1に示すように、その厚さが全体的に一様であるか、あるいは図2に示すように、中央部を厚くし、両端部(あるいは一方の端部)を薄くすることもできる。中央部を厚くする場合も、その中央部の最大厚さを、長尺シートの厚さより薄くすることが好ましい。
【0018】
本発明で用いる挿入カバーの長さ方向の長さは、図1〜図5に示すように特に限定されない。下限としては、図1及び図2に示すように、前記長尺シートの巻付け開始端部を被い、前記段差を解消することのできる長さである限り限定されず、例えば、使用する巻取芯材外周面の円周(S)に対する長さ(L)の比(L/S)として、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/5以上である。上限も限定されず、例えば、図5に示す長尺状挿入カバーのように、長尺シートの巻付け終了端部(巻き戻し開始端部)に一致させることもできる。また、図1及び図2に示すように、長尺シート1の第1周巻付層1aと第2周巻付層1bとの間にのみ介在させる場合には、使用する巻取芯材外周面の円周(S)に対する長さ(L)の比(L/S)として、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下とすることができる。また、幅方向の長さは、長尺シートの幅と同じにするか、あるいは長尺シートの幅よりも広くすることもできる。
【0019】
本発明で用いる挿入カバーの材料も特に限定されないが、巻取芯材の外径に応じて適切な反発パラメータを示す材料を用いるのが好ましい。前記反発パラメータは、好ましくは3g〜2000g、より好ましくは5g〜150gである。前記反発パラメータを有する材料は、材料の種類と厚さとを適宜選択することにより、適切に用意することができる。本明細書において反発パラメータは、以下の方法で測定した値である。
最初に、測定対象の材料から、測定対象厚さを有するサンプル(30mm×100mm)を準備する。続いて、図6(模式的斜視図)に示すように、前記サンプル21を、1対の載置台22,22の上に載せる。各載置台22,22は、それぞれ、厚さが2mm、高さが10mm、そして奥行き(図6のw)が20mmである。これらの載置台22,22相互の間隔(図6のd)は、25mmとする。この1対の載置台22,22の上に、前記サンプル21の中央部が載置台22,22の間隙の中央部に位置するように載置する。次に、前記サンプル21の中央部に、押圧プローブ23の先端部24を押し当ててから、巻取芯材の外径に応じて予め定めてあるストローク(押し込み長さ)まで、押圧プローブ23を矢印Pの方向に20mm/分の速度で押し下げて図7に示す状態とし、その所定ストローク(図7のD)だけ押し下げた変形の際に測定される反発力を「反発パラメータ」とする。なお、前記押圧プローブ23の先端部24は、図8に示すように、幅(図8のf)が1mmの平坦接触部を有している。
【0020】
巻取芯材の外径に応じて予め定めてあるストローク(D)は、
D=r−(r2−12.5×12.5)1/2
(ここで、rは、巻取芯材外径の半径である)
によって、巻取芯材外径の半径に応じて計算することができる。なお、巻取芯材外径の半径(r)と所定ストローク(D)との関係を図9に示す。図9において、dは、図6に示す載置台22,22相互の間隔(25mm)である。図9において、直角三角形の3辺(rとaとd/2)には三平方の定理から、
r2=a2+(d/2)2
の関係が成立し、
a=〔r2−(d/2)2〕1/2
となる。一方、
「D=r−a」であり、「d=25mm」であるから、前記計算式:
D=r−(r2−12.5×12.5)1/2
が得られる。
【0021】
挿入カバーとしては、可撓性の樹脂シート、金属シート、又は紙類材料シートなどから適宜選択することができる。巻取芯材も特に限定されず、例えば、粘着シート用の巻取芯材としては、内径が3インチの紙管や、内径が6インチ〜10インチの紙管などが通常使用されており、これらの紙管に対して本発明を有利に利用することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
《長尺シート製造例》
(1)長尺シートAの製造
両面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=100μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を層厚が50μmになるように塗布し、乾燥させた。続いて、発泡体(厚み=1100μm)を前記アクリル系粘着剤層に貼り合わせて、積層体1を製造した。
一方、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=150μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を50μmになるように塗布して、乾燥させ、アクリル系粘着剤層を前記積層体1の発泡体層表面と貼り合わせて長尺シートA(合計厚さ=1450μm)を製造した。
【0024】
(2)長尺シートBの製造
両面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=75μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を層厚が50μmになるように塗布し、乾燥させた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み=125μm)を前記アクリル系粘着剤層に貼り合わせて、積層体2を製造した。
一方、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=150μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を50μmになるように塗布して、乾燥させ、アクリル系粘着剤層を前記積層体2の厚さ125μmのPETフィルム層表面と貼り合わせて長尺シートB(合計厚さ=450μm)を製造した。
【0025】
(3)長尺シートCの製造
両面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=25μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を層厚が50μmになるように塗布し、乾燥させた。続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み=50μm)を前記アクリル系粘着剤層に貼り合わせて、積層体3を製造した。
一方、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=75μm)の一方の表面上に、アクリル系粘着剤〔東洋インキ製造(株)製;BPS5626〕を50μmになるように塗布して、乾燥させ、アクリル系粘着剤層を前記積層体3の厚さ50μmのPETフィルム層表面と貼り合わせて長尺シートC(合計厚さ=250μm)を製造した。
【0026】
《実施例1〜5及び比較例1〜2》
図1に示すタイプの厚さが均一の挿入カバーを用いて巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
具体的には、前記長尺シートAの巻付け開始端部を紙管(直径100mm;幅500mm)の表面に貼着し、前記巻付け開始端部と紙管表面とによって形成される空隙部を覆うように、表1に示す挿入カバーで覆った後、前記長尺シートAを50周巻付け、40℃の環境下で30日間保管した。なお、実施例4で用いた挿入カバーは、両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=125μm)の一方の表面上に厚さ50μmのアクリル系粘着剤層が積層されてなる積層体であった。
続いて、外周部分から順にテープを巻き戻し、紙管から何周目に段差が消えるかを目視にて以下の4段階で評価した。結果を表1に示す。
×・・・30周以上
△・・・20以上30周未満
○・・・10以上20周未満
◎・・・10周未満
【0027】
《実施例6》
紙管として、直径100mm及び幅500mmの紙管に代えて、直径200mm及び幅500mmの紙管を用いること以外は、前記実施例1〜5と同様の操作を繰り返して巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
【0028】
《実施例7》
長尺シートとして、前記長尺シートAを用いる代わりに、前記長尺シートBを用いること以外は、前記実施例1〜5と同様の操作を繰り返して巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
【0029】
《実施例8及び比較例3》
長尺シートとして、前記長尺シートAを用いる代わりに、前記前記長尺シートCを用いること以外は、前記実施例1〜5と同様の操作を繰り返して巻回体を作成し、段差跡の解消効果を確認した。
【0030】
【表1】
【0031】
《参考例》
種々の材料からなり、種々の厚さを有するプレートに関して、本発明における反発パラメータを測定すると共に、前記実施例1〜5に記載の方法によって段差跡の解消効果を確認した。評価は、以下の2段階で実施した。結果を表2に示す。
○・・・紙管から30周目に段差が消える
×・・・紙管から30周目に段差が消えない
【0032】
【表2】
【0033】
表2において、「剥離紙」は両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=125μm)であり、「剥離紙+粘着剤層」は両面に剥離処理を施した剥離紙(厚さ=125μm)の一方の表面上に厚さ50μmのアクリル系粘着剤層が積層されてなる積層体である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
長尺シート状の原反(紙、プラスチックフィルム、又は金属箔等)や、粘着テープもしくは床材、あるいは家庭において使用するラップフィルム又はアルミフォイル等を巻取芯材に巻回する際に、本発明の挿入カバーを用いることによって、段差跡の発生を低減ないし防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・長尺シート;1a・・・第1周巻付層;1b・・・第2周巻付層;
2・・・巻取芯材;3・・・巻付け開始端部;4・・・空隙部;
5A・・・空隙部;5B・・空隙部;6・・・積層部;
11,12・・・挿入カバー;11A,12A,13A・・・巻付上流側端部;
11B,12B・・・巻付下流側端部;13・・・長尺状挿入カバー;
21・・・サンプル;22・・・載置台;23・・・押圧プローブ;
24・・・先端部;40・・・巻回体;41・・・長尺シート;
42・・・巻付け開始端部;43・・・巻取芯材;44・・・空隙部;
45・・・窪み;46・・・段差跡。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シートが巻取芯材に巻付けられてなる巻回体であって、
前記長尺シートの巻付け開始端部が、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって覆われており、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体。
【請求項2】
長尺シートを巻取芯材に巻付ける際に、前記長尺シートの巻付け開始端部を、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって直接的に又は前記長尺シートの巻回層を隔てて覆った後に、その挿入カバーの上から更に前記長尺シートの巻付けを行い、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体の製造方法。
【請求項3】
巻取芯材に巻付ける長尺シートであって、その長尺シートの巻付け開始端部から長さ方向に内側の表面に、前記長尺シートよりも薄い端部を有すると共に前記長尺シートに対して剥離可能に担持された挿入カバーとの積層部を含み、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、積層部含有長尺シート。
【請求項1】
長尺シートが巻取芯材に巻付けられてなる巻回体であって、
前記長尺シートの巻付け開始端部が、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって覆われており、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体。
【請求項2】
長尺シートを巻取芯材に巻付ける際に、前記長尺シートの巻付け開始端部を、その全幅に亘って、前記長尺シートよりも薄い端部を有する挿入カバーによって直接的に又は前記長尺シートの巻回層を隔てて覆った後に、その挿入カバーの上から更に前記長尺シートの巻付けを行い、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、巻回体の製造方法。
【請求項3】
巻取芯材に巻付ける長尺シートであって、その長尺シートの巻付け開始端部から長さ方向に内側の表面に、前記長尺シートよりも薄い端部を有すると共に前記長尺シートに対して剥離可能に担持された挿入カバーとの積層部を含み、
前記長尺シートの厚さ(A)と前記挿入カバーの端部の厚さ(B)との比(B/A)が2/3以下であり、そして
前記挿入カバーが、反発パラメータが3g〜2000gの材料からなる
ことを特徴とする、積層部含有長尺シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−40049(P2013−40049A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232457(P2012−232457)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2007−103448(P2007−103448)の分割
【原出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2007−103448(P2007−103448)の分割
【原出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】
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