説明

巻芯

【課題】シート状物を巻き回した際の段差跡の発生を防止しつつ、耐久性に優れた巻芯を提供する。
【解決手段】シート状物を巻き取るのに用いられる円筒状の巻芯10であって、巻芯は、巻芯本体1と、該巻芯本体の外周面に設けられる弾性層2と、該弾性層の外周面に設けられる表面保護層3とからなり、弾性層のASKER−C硬度が50度以下であり、表面保護層のASKER−C硬度が50度より高く、巻芯全体のASKER−C硬度が50度以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート状物を巻き取るのに用いられる円筒状の巻芯に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム等のシート状物の巻取に用いる巻芯としては、紙管、金属管、FRP管などが使用されている。この巻芯にシート状物を巻き付けるには、シート状物先端を巻芯表面に、例えば両面粘着テープを用いて接着して固定する方法、あるいは、シート状物の先端領域を巻芯外周に複数回手で巻き付けて固定する方法等が採られている。
【0003】
ところが、これらの方法でシート状物を巻芯に巻き付けると、シート状物の巻き始めの領域には、シート状物や両面粘着テープの厚み分の段差に起因するしわ、折り目などの段差跡が発生する。即ち、最内層の1層目を巻き回し、2層目にかかると、シート状物の長手方向終端に2層目が乗り上げることとなり、2層目の乗り上げた部分のシート状物の平坦性が損なわれることとなる。この平坦性の低下は、巻き回しを重ねることにより更に外層に波及することとなる。
【0004】
特に、巻芯に巻き回されるシート状物が、ディスプレイ用反射防止フィルム、防眩フィルム、電磁波カットフィルム等のわずかな欠陥も許されない用途のものである場合に、しわや、巻き始めの段差跡を生じている領域は、不良品として除去せざるを得ず、製品歩留りの低下の原因となっている。
【0005】
このような状況下、特許文献1には、段差を解消すべく外周部に発泡スチレンの緩衝材を巻き付けた構成とした巻芯や、巻芯の長さ方向に、シート状物と同程度の段差を設けた巻芯が開示されている。特許文献1に開示がされている巻芯によれば、発泡スチレンの緩衝材によって巻き回した際の段差の発生を緩和することができ、また、巻芯にあらかじめシート状物と同程度の厚さの段差を設けておくことで、巻き回した際の段差の発生をさらに防止できるとされている。
【0006】
また、特許文献2には、巻芯本体の外周面に、独立気泡を有し主成分がポリエチレン、ポリプロピレン等の発泡樹脂を含む弾性層を接着剥離自由に接着せしめた巻芯が開示されている。特許文献2に開示がされている巻芯によれば、弾性層の交換が容易であるとともに、シート状物に端面段差跡をほとんど発生させることなく、工程歩留まりを向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−318930号公報
【特許文献2】特開2005−162478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、2に開示がされている緩衝材や、弾性層は、段差跡の発生防止を主眼として設けられたものであり、緩衝材や弾性層は硬度の低い材料が用いられる。しかしながら、硬度の低い材料、すなわち段差跡の防止を主眼とする材料は段差跡の発生防止の抑制効果は大きいものの、非常に摩耗しやすく、ちぎれや、永久歪が生ずる場合もあり、巻芯を繰り返し使用する場合には適していないといえる。また、特許文献1に開示がされている巻芯部の長さ方向にあらかじめシート状物と同程度の厚さの段差を設けた巻芯では、段差にシート状物の先端部を正確に位置合わせする必要があり、工程上簡便であるとはいえない。また、段差とシート状物の先端部の位置合わせが正確に行われていない場合には、かえって段差の発生を助長するといった欠点もある。
【0009】
なお、緩衝材や弾性層の材料を耐摩耗性に優れた材料とすることで、摩耗を防止し耐久性を向上させることは可能であるものの、摩耗を防止するためには、緩衝材や弾性層を構成する材料の硬度を高くする必要があり、硬度を高くした分、段差跡の発生防止効果は低減することとなる。つまり、段差跡の発生防止と、摩耗の防止とはトレードオフの関係があり、両方の問題を同時に解決することができていないのが現状である。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、シート状物を巻き回した際の段差跡の発生を防止しつつ、耐久性に優れた巻芯を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の方法は、シート状物を巻き取るのに用いられる円筒状の巻芯であって、前記巻芯は、巻芯本体と、該巻芯本体の外周面に設けられる弾性層と、該弾性層の外周面に設けられる表面保護層とからなり、前記弾性層のASKER−C硬度が50度以下であり、前記表面保護層のASKER−C硬度が50度より高く、前記巻芯全体のASKER−C硬度が50度以下であることを特徴とする。
【0012】
また、前記表面保護層は、前記弾性層の外周面に剥離可能に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シート状物を巻き回した際の段差跡の発生を防止しつつ、耐久性に優れた巻芯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の巻芯の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(巻芯)
図1に示すように本発明の巻芯10は、シート状物を巻き取るのに用いられる円筒状の巻芯10であって、巻芯本体1と、該巻芯本体1の外周面に設けられる弾性層2と、該弾性層2の外周面に設けられる表面保護層3とからなる。なお、図1は、本発明の巻芯10の一実施形態を示す概略断面図である。ここで、本発明では、弾性層2のASKER−C硬度が50度以下であり、表面保護層3のASKER−C硬度が50度よりも高く、巻芯1全体のASKER−C硬度が50度以下であることを特徴とする。本発明の巻芯10は、(i)巻芯本体の外周面に設けられる弾性層2のASKER−C硬度が50度以下であること、(ii)弾性層の外周面に設けられる表面保護層3のASKER−C硬度が50度より高いこと、(iii)巻芯全体のASKER−C硬度が50度以下であることの条件を満たすものであればよく、この条件を満たせば他の要件についていかなる限定もされることはなく、上記条件ASKER−C硬度の条件満たすものであれば弾性層2や表面保護層3の材料についても適宜選択可能である。
【0016】
上記構成を有する本発明の巻芯10によれば、硬度が異なる2つの層のうち外周側に位置しASKER−C硬度が50度より高い表面保護層3によって表面摩耗や永久歪の防止効果が発揮され、硬度が異なる2つの層のうち内周側に位置しASKER−C硬度が50度以下の弾性層とこの表面保護層とを有する巻芯全体のASKER−C硬度を50度以下とすることで段差跡の発生防止効果が発揮される。
【0017】
なお、本願明細書において「ASKER−C硬度」とは、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠した硬度である。また、「巻芯全体のASKER−C硬度」とは、本発明の巻芯10の表面、すなわち弾性層2、表面保護層が設けられてなる巻芯10において表面保護層3上からデュロメータを用いて測定したときの硬度である。デュロメータとしては、例えば、高分子計器株式会社製のASKER−C型デュロメータ(登録商標)が使用可能である。以下、本発明の巻芯10の各構成について説明する。
【0018】
なお、本発明において「弾性層のASKER−C硬度」とは、巻芯本体1の外周面に弾性層2のみが設けられていると仮定した場合の硬度である。弾性層2のASKER−C硬度は、巻芯本体1の外周面に弾性層2を設け、この弾性層2上からアスカーC型デュロメータ(登録商標)を用いて測定することで算出できる。同様に、「表面保護層のASKER−C硬度」とは、巻芯本体1の外周面に表面保護層3のみが設けられていると仮定した場合の硬度である。表面保護層3のASKER−C硬度は、巻芯本体1の外周面に直接表面保護層3を設け、この表面保護層3上からアスカーC型デュロメータ(登録商標)を用いて測定することで算出できる。
【0019】
(巻芯本体)
円筒状の巻芯本体1は、シート状物を巻き取り且つ保持するのに必要な強度、剛性を備えたものであればよい。したがって、その材質等は任意であり、例えば、FRP管、ABS等の樹脂管、金属管、紙管などを挙げることができる。
【0020】
(弾性層)
上記巻芯本体1の外周面には、ASKER−C硬度が50以下の弾性層2が設けられている。弾性層2は、巻芯本体1の外周面のうち、少なくともシート状物を巻き取るシート状物巻取領域に設けられていればよいが、巻芯本体1と弾性層2との境界部分における段差の影響を考慮すると、弾性層2は、巻芯本体1の外周全面に設けられていることが好ましい。
【0021】
弾性層2は、上述したように(i)ASKER−C硬度が50以下との条件を満たす、あらゆる材料を使用可能である。このような材料として、例えば、(i)の条件を満たす天然或いは合成の軟質ゴム、例えば、ニトリルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム等を挙げることができる。また、軟質ゴムにかえて、例えば(i)の条件を満たす発泡スチレン等の発泡樹脂や、スポンジ等も使用可能である。
【0022】
また、弾性層2は、(i)ASKER−C硬度が50以下との条件を満たせばよいが、最終的には巻芯全体のASKER−C硬度を50以下に設定する必要がある。したがって、弾性層2の材料を選択するにあたっては、後述する表面保護層3のASKER−C硬度とのバランスを考慮して、巻芯全体のASKER−C硬度を50度以下に設定することができる範囲内で選択する必要がある。
【0023】
弾性層2は、弾性層2となる矩形状のシートを、従来公知の粘着剤や粘着層を介して巻芯本体1の外周面を覆うように貼りつけることによって形成することができる。また、この矩形上状のシートを巻芯本体1に螺旋状に巻きつけて形成することもできる。これ以外に、例えば、上記に例示される弾性層2の材料を適当な溶媒に分散或いは溶解してなる塗工液を、従来公知の塗工方法で塗工・乾燥する方法や、ディップコート法やスプレーコート法で塗工・乾燥する方法によっても形成することができる。
【0024】
弾性層2の厚みについても特に限定はないが、弾性層2の厚みが薄すぎる場合、具体的には2mm未満である場合には、巻芯全体のASKER−C硬度を50度以下に調整することが困難となる。また、段差跡の発生防止効果が低下する傾向となる。したがって、この点を考慮すると弾性層2の厚みは、ASKER−C硬度が50度以下であって、その厚みが2mm以上であることが好ましい。
【0025】
(表面保護層)
弾性層2の外周面には、ASKER−C硬度が50より高い表面保護層3が設けられている。表面保護層3は、弾性層2の外周面のうち、少なくともシート状物を巻き取るシート状物巻取領域に設けられていればよいが、弾性層2と表面保護層3との境界部分、及び巻芯本体1と表面保護層3との境界部分における段差の影響を考慮すると、表面保護層3は、弾性層2の外周全面に設けられていることが好ましく、弾性層2、及び表面保護層3の双方が、巻芯本体1の外周全面に設けられていることが好ましい。
【0026】
本発明では、ASKER−C硬度が50より高い表面保護層3を弾性層2の外周面に設けることで、本発明の巻芯10に耐久性を付与している。
【0027】
表面保護層3は、ASKER−C硬度が50より高いとの条件を満たせば、他の要件についていかなる限定もされることはなく、従来公知の材料を適宜選択して用いることができる。
【0028】
ASKER−C硬度が50より高い材料としては、例えば、スチレンブタジエンゴム等の各種ゴム材料やウレタン等の樹脂材料を挙げることができるが、この材料に限定されるものではない。
【0029】
表面保護層3は、表面保護層3となる矩形状のシートを、従来公知の粘着剤や粘着層を介して弾性層2の外周面を覆うように貼りつけることによって形成することができる。また、この矩形上状のシートを弾性層2に螺旋状に巻きつけて形成することもできる。これ以外に、例えば、ASKER−C硬度が50より高い材料を適当な溶媒に分散或いは溶解してなる塗工液を、従来公知の塗工方法で塗工・乾燥する方法や、ディップコート法やスプレーコート法で塗工・乾燥する方法によっても形成することができる。
【0030】
表面保護層3の厚みについても特に限定はないが、弾性層2を保護する機能を発揮しつつ、巻芯1全体のASKER−C硬度を50度以下となるような範囲で設定する必要がある。なお、表面保護層3の厚みが100μm未満である場合には、該表面保護層3のASKER−C硬度を50度より高い場合であっても、耐久性の向上効果が低下する傾向となる。したがって、この点を考慮すると、表面保護層3の厚みは100μm以上であることが好ましい。
【0031】
表面保護層3は、弾性層2から剥離可能に設けられていることが好ましい。この構成とすることで、表面保護層3のみを容易に交換することができ、本発明の巻芯10を繰り返し使用することが可能となる。
【0032】
表面保護層3を、弾性層2から剥離可能に設ける方法について特に限定はなく、(A)
弾性層からの離型性に優れた材料を用いて表面保護層3を形成する方法、(B)弾性層2と表面保護層3との間に、離型性を向上させるための剥離層を設ける方法を挙げることができる。なお、剥離層は表面保護層3とともに剥離されるものであってもよく、弾性層上に残存するものであってもよい。
【0033】
上記(A)離型性に優れた材料は、弾性層2の材料に応じて異なるが、例えば、弾性層2の材料がニトリルゴムである場合には、表面保護層3の材料としてスチレンブタジエンゴムを用いることで、表面保護層3を弾性層2から剥離可能な構成とすることができる。
【0034】
上記(B)の剥離層としては、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル共重合体の熱可塑性樹脂や、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。剥離層は、上記に例示される1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。
【0035】
剥離層は、上記の樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、バーコートなどの公知のコーティング方法で、弾性層2の外周面に塗布・乾燥することで形成することができる。剥離層の厚さとしては、通常は0.1μm〜5μm程度、好ましくは0.5μm〜2μm程度である。
【0036】
(巻芯全体のASKER−C硬度)
また、本発明の巻芯10は、巻芯全体のASKER−C硬度が50度以下に規定されている。本発明では、弾性層2と表面保護層3の巻芯全体のASKER−C硬度を上記所定の範囲内に設定するとともに、巻芯全体のASKER−C硬度を50度以下に規定することで、巻芯1に耐久性を付与しつつ、段差跡の発生を防止することができる。
【0037】
上述したように、巻芯全体のASKER−C硬度を50度以下に設定する方法としては、弾性層2や表面保護層3のASKER−C硬度、及び弾性層2や表面保護層3の厚みを適宜設定することで調整可能である。
【0038】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
内径6インチのFRP製の円筒体の外周全面に、弾性層として厚み3mm、ASKER−C硬度21.5度のニトリルゴムを巻き付けた。次いで、ニトリルゴムが巻きつけられた円筒体を、ASKER−C硬度70度のスチレンブタジエンゴムを溶剤に溶解してなる溶液に浸漬させ、引き上げた後に乾燥を行い、スチレンブタジエンゴムからなる表面保護層を形成し、実施例1の巻芯を得た。表面保護層の厚みをマイクロメータを用いて測定したところ0.284mmであった。また、高分子計器株式会社製のASKER−C型デュロメータ(登録商標)を用いて巻芯全体のASKER−C硬度を測定したところ、22度であった。以下、同様の方法で表面保護層の厚み、及び巻芯全体のASKER−C硬度の測定を行った。
【0039】
(実施例2)
実施例1の巻芯を、再度ASKER−C硬度70度のスチレンブタジエンゴムを溶剤に溶解してなる溶液に浸漬させ、引き上げた後に乾燥を行い、スチレンブタジエンゴムからなる表面保護層の厚みを厚くした実施例2の巻芯を得た。表面保護層の厚みは、0.624mmであった。また、巻芯全体のASKER−C硬度は23.5度であった。
【0040】
(実施例3)
ASKER−C硬度21.5度のニトリルゴムにかえて、ASKER−C硬度31.4度のニトリルゴムを巻き付けた以外はすべて実施例1と同様にして、実施例3の巻芯を得た。表面保護層の厚みは、0.306mmであった。また、巻芯全体のASKER−C硬度は32.2度であった。
【0041】
(実施例4)
ASKER−C硬度21.5度のニトリルゴムにかえて、ASKER−C硬度31.4度のニトリルゴムを巻き付けた以外はすべて実施例2と同様にして、実施例4の巻芯を得た。表面保護層の厚みは、0.604mmであった。また、巻芯全体のASKER−C硬度は34.6度であった。
【0042】
(実施例5)
ASKER−C硬度21.5度のニトリルゴムにかえて、ASKER−C硬度42.6度のニトリルゴムを巻き付けた以外はすべて実施例1と同様にして、実施例5の巻芯を得た。表面保護層の厚みは、0.353mmであった。また、巻芯全体のASKER−C硬度は42.8度であった。
【0043】
(実施例6)
ASKER−C硬度21.5度のニトリルゴムにかえて、ASKER−C硬度42.6度のニトリルゴムを巻き付けた以外はすべて実施例2と同様にして、実施例6の巻芯を得た。表面保護層の厚みは、0.533mmであった。また、巻芯全体のASKER−C硬度は43.2度であった。
【0044】
(比較例1)
内径6インチのFRP製の円筒体の外周全面に、弾性層として厚み3mm、ASKER−C硬度21.5度のニトリルゴムを巻き付け、比較例1の巻芯を得た。
【0045】
(比較例2)
内径6インチのFRP製の円筒体を、ASKER−C硬度70度のスチレンブタジエンゴムを溶剤に溶解してなる溶液に浸漬させ、引き上げた後に乾燥を行い、円筒体の外周面にASKER−C硬度70度のスチレンブタジエンゴムからなる層を形成し、比較例2の巻芯を得た。表面保護層の厚みを、マイクロメータを用いて測定したところ3mmであった。
【0046】
(比較例3)
内径6インチのFRP製の円筒体を比較例3の巻芯とした。
【0047】
(比較例4)
内径6インチのFRP製の円筒体の外周全面に、弾性層として厚み3mm、ASKER−C硬度42.5度のニトリルゴムを巻き付けた。次いで、ニトリルゴムが巻きつけられた円筒体を、ASKER−C硬度70度のスチレンブタジエンゴムを溶剤に溶解してなる溶液に浸漬させ、引き上げた後に乾燥を行い、円筒体の外周面にASKER−C硬度70度のスチレンブタジエンゴムからなる表面保護層を厚み2mmで形成し、比較例4の巻芯を得た。また、巻芯全体のASKER−C硬度は61.4度であった。
【0048】
(段差跡の評価)
実施例1〜6、比較例1〜4の巻芯を、フィルム用の巻取り装置に装着し、巻芯外周に巻取り方向長さ3000mのPET基材を巻き回し、フィルムの最内層の1層目と2層目の境界部分における段差跡の評価を以下の評価基準に基づいて目視により行った。評価結果を表1に示す。
<評価基準>
◎;1層目と2層目の境界部分に段差跡の発生がない。
○;1層目と2層目の境界部分に僅かに段差跡の発生があるが、使用上問題ない。
×;1層目と2層目の境界部分に段差跡の発生がある。
【0049】
(耐荷重性の評価)
耐荷重性の評価として、実施例1〜6、比較例1〜4の巻芯に2MPaの圧力をかけたときのひずみ痕の発生を以下の評価基準に基づいて目視により行った。評価結果を表1に併せて示す。
<評価基準>
◎;ひずみ痕の発生がない。
○;ひずみ痕の発生が若干あるが、ひずみ痕が小さく使用上問題のないレベルである。
×;ひずみ痕が大きく使用上問題がある。
【0050】
【表1】

【符号の説明】
【0051】
10 巻芯
1 巻芯本体
2 弾性層
3 表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物を巻き取るのに用いられる円筒状の巻芯であって、
前記巻芯は、巻芯本体と、該巻芯本体の外周面に設けられる弾性層と、該弾性層の外周面に設けられる表面保護層とからなり、
前記弾性層のASKER−C硬度が50度以下であり、
前記表面保護層のASKER−C硬度が50度より高く、
前記巻芯全体のASKER−C硬度が50度以下であることを特徴とする巻芯。
【請求項2】
前記表面保護層は、前記弾性層の外周面に剥離可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の巻芯。

【図1】
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