説明

巻込防止装置

【課題】車側下部に備えられたマフラの位置が高すぎたり、車輪から離れすぎたりしていても、多大なコストアップを招くことなく巻込防止装置を構成し得るようにする。
【解決手段】車側下部にマフラ4を備えた車両に適用するための巻込防止装置に関し、前記マフラ4の車幅方向外側に装着されたマフラカバー5と、前記マフラ4に対し着脱自在に取り付けられて前記マフラカバー5に隣接することで巻込防止範囲を拡大する補助サイドガード8Aとにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックやトレーラ等の運搬車両に装備される巻込防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6及び図7に示す如く、トラックやトレーラ等のように車側下部がボディパネルで覆われていない運搬車両では、左折時や右折時に内輪差により歩行者や二輪車及びその搭乗者が巻き込まれないようにするため、板状、すのこ状、網状、或いは棒状のサイドガード1を前後の車輪2,3の間に設けて巻込防止装置としている。
【0003】
ただし、運搬車両の中には、箱型のマフラ4を車側下部に配置したものがあり、この種のマフラ4が配置されている場所については、該マフラ4を避けつつ架装側やシャシフレーム側からサポートアームを延ばしてサイドガードを支持するような構造を採ることが難しいため、歩行者等をマフラ4の熱から保護する目的で該マフラ4の車幅方向外側に装着されているマフラカバー5をサイドガードとして代用するようにしている。
【0004】
また、この種のマフラカバーに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−92519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マフラカバー5をサイドガードとして代用させる場合、車型によっては、マフラ4の位置が高すぎてマフラカバー5の地上高がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうことがあり、また、ここに図示されている例の如き前側の車輪2の後方にマフラ4が配置されたレイアウトの場合には、車輪2とマフラ4とが離れすぎてマフラカバー5と車輪2との間の距離がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうこともあったため、そのような車型の場合は、特別にマフラカバー5を大きく作り直すといった対処が必要となり、型から作り直さなければならないマフラカバー5の変更には多大なコストがかかり、車型の異なる車両間で同じマフラ4に対しマフラカバー5を共用できなくなることでのコストアップも大きかった。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、車側下部に備えられたマフラの位置が高すぎたり、車輪から離れすぎたりしていても、多大なコストアップを招くことなく巻込防止装置を構成し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車側下部にマフラを備えた車両に適用するための巻込防止装置であって、前記マフラの車幅方向外側に装着されたマフラカバーと、前記マフラに対し着脱自在に取り付けられて前記マフラカバーに隣接することで巻込防止範囲を拡大する補助サイドガードとにより構成したことを特徴とするものである。
【0009】
而して、このようにすれば、必要に応じてマフラに対し補助サイドガードを取り付けるだけで、該補助サイドガードをマフラカバーに隣接させて巻込防止範囲を拡大させることが可能となるため、マフラの位置が高すぎたり、車輪から離れすぎたりしていても、マフラカバーを大きく作り直して巻込防止範囲を拡大するような措置を採らなくて済む。
【0010】
即ち、簡易な部品で実現できる補助サイドガードの着脱で対処した方が、型費が高くつくマフラカバーの変更で対処するよりもコスト的に安く済み、しかも、マフラカバーを共用できる車型が増えることでも大幅なコストの削減が図られることになる。
【0011】
更に、本発明をより具体的に実施する際には、例えば、マフラカバーの下方で車両前後方向に延在する補助サイドガードを用いることが可能であり、このようにすれば、マフラの位置が高すぎてマフラカバーの地上高がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうような場合であっても、補助サイドガードにより巻込防止範囲を下方へ拡大して法規的な規定値を満たすことが可能となる。
【0012】
また、マフラカバーの車輪側に臨む側方で上下方向に延在する補助サイドガードを用いることが可能であり、このようにすれば、車輪とマフラとが離れすぎてマフラカバーと車輪との間の距離がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうような場合であっても、補助サイドガードにより巻込防止範囲を車輪側に臨む側方へ拡大して法規的な規定値を満たすことが可能となる。
【0013】
更に、マフラカバーの下方で車両前後方向に延在し且つ前記マフラカバーの車輪側に臨む側方では上下方向に延在するL字型の補助サイドガードを用いることも可能であり、このようにすれば、マフラカバーの地上高と車輪への距離の両方がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまう場合に、補助サイドガードにより巻込防止範囲を下方及び車輪側に臨む側方へ拡大して法規的な規定値を満たすことが可能となる。
【0014】
また、マフラカバーの下方で車両前後方向に延在し且つ車輪側に臨む端部を車幅方向内側へ曲折して所要長さ延ばした補助サイドガードを用いることも可能であり、このようにすれば、前述と同様に、補助サイドガードにより巻込防止範囲を下方へ拡大して法規的な規定値を満たすことが可能となる上に、車輪側に臨む端部を車幅方向内側へ曲折して所要長さ延ばしたことにより、車輪側の泥よけゴムとマフラとの接触を阻むことが可能となり、前記泥よけゴムのマフラの熱による損傷を防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明の巻込防止装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、車側下部に備えられたマフラの位置が高すぎたり、車輪から離れすぎたりしていても、マフラカバーを大きく作り直して巻込防止範囲を拡大するような措置を採らずに、簡易な部品で実現できる補助サイドガードの取り付けにより巻込防止範囲を拡大して法規的な規定値を満たすようにすることができるので、その実施に要するコストを著しく安価に抑えることができ、しかも、マフラカバーを共用できる車型が増えることでも大幅なコストの削減を図ることができる。
【0017】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、マフラの位置が高すぎてマフラカバーの地上高がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうような場合であっても、補助サイドガードにより巻込防止範囲を下方へ拡大して法規的な規定値を満たすことができる。
【0018】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、車輪とマフラとが離れすぎてマフラカバーと車輪との間の距離がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうような場合であっても、補助サイドガードにより巻込防止範囲を車輪側に臨む側方へ拡大して法規的な規定値を満たすことができる。
【0019】
(IV)本発明の請求項4に記載の発明によれば、マフラカバーの地上高と車輪への距離の両方がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまう場合に、補助サイドガードにより巻込防止範囲を下方及び車輪側に臨む側方へ拡大して法規的な規定値を満たすことができる。
【0020】
(V)本発明の請求項5に記載の発明によれば、前記(II)の効果に加えて、車輪側に臨む端部を車幅方向内側へ曲折して所要長さ延ばしたことにより、車輪側の泥よけゴムとマフラとの接触を阻むことができ、前記泥よけゴムのマフラの熱による損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一形態例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II矢視の断面図である。
【図3】本発明の第二形態例を示す斜視図である。
【図4】本発明の第三形態例を示す斜視図である。
【図5】本発明の第四形態例を示す斜視図である。
【図6】従来の巻込防止装置の一例を示す概略図である。
【図7】図6の要部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1及び図2は本発明の巻込防止装置の第一形態例を示すもので、図6及び図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0024】
ここに図示している例では、前述した図7の従来例の場合と同様に、車側下部における前側の車輪2の後方にマフラ4が備えられており、該マフラ4の車幅方向外側には、マフラカバー5がブラケット6(図2参照)を介して取り付けられている。
【0025】
ここで、特に図2に詳細を示している通り、前記ブラケット6は、ハット型の断面を上部に有してマフラ4の車幅方向外側面に対し僅かな間隔を隔ててマフラカバー5を支持するようになっており、しかも、その下部を下方に向かうに従い車幅方向内側に曲折させて最下端部に水平面を成す取付座7を形成している。
【0026】
そして、この取付座7には、マフラカバー5の下方で車両前後方向に延在する補助サイドガード8Aがサポート部材9を介しボルト10及びナット11で締結されるようになっており、この補助サイドガード8Aが前記マフラカバー5の下部に隣接することで巻込防止範囲が下方へ拡大されるようにしてある。
【0027】
而して、このようにすれば、必要に応じてマフラ4の取付座7に補助サイドガード8Aを取り付けるだけで、該補助サイドガード8Aをマフラカバー5の下部に隣接させて巻込防止範囲を下方へ拡大させることが可能となるため、マフラ4の位置が高すぎてマフラカバー5の地上高がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうような場合であっても、補助サイドガード8Aにより巻込防止範囲を下方へ拡大して法規的な規定値を満たすことが可能となり、マフラカバー5を大きく作り直して巻込防止範囲を拡大するような措置を採らなくて済む。
【0028】
即ち、簡易な部品で実現できる補助サイドガード8Aの着脱で対処した方が、型費が高くつくマフラカバー5の変更で対処するよりもコスト的に安く済み、しかも、マフラカバー5を共用できる車型が増えることでも大幅なコストの削減が図られることになる。
【0029】
従って、上記形態例によれば、マフラ4の位置が高すぎてマフラカバー5の地上高がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうような場合であっても、マフラカバー5を大きく作り直して巻込防止範囲を拡大するような措置を採らずに、簡易な部品で実現できる補助サイドガード8Aの取り付けにより巻込防止範囲を拡大して法規的な規定値を満たすようにすることができるので、その実施に要するコストを著しく安価に抑えることができ、しかも、マフラカバー5を共用できる車型が増えることでも大幅なコストの削減を図ることができる。
【0030】
また、図3は本発明の第二形態例を示すもので、先の図1でマフラカバー5の下方で車両前後方向に延在するようになっていた補助サイドガード8Aを、マフラカバー5の車輪2側に臨む側方で上下方向に延在する補助サイドガード8Bに替えたものであり、ここでは特に図示していないが、この場合の取付座7が車輪2側に位置を変えて配置されるようになっていることは勿論である。
【0031】
而して、このようにすれば、車輪2とマフラ4とが離れすぎてマフラカバー5と車輪2との間の距離がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまうような場合であっても、補助サイドガード8Bにより巻込防止範囲を車輪2側に臨む側方へ拡大して法規的な規定値を満たすことができる。
【0032】
更に、図4は本発明の第三形態例を示すもので、マフラカバー5の下方で車両前後方向に延在し且つ前記マフラカバー5の車輪2側に臨む側方では上下方向に延在し得るようL字型に屈曲した補助サイドガード8Cを用いた例であり、このようにすれば、マフラカバー5の地上高と車輪2への距離の両方がサイドガードの代用として認められ得る法規的な規定値を超えてしまう場合に、補助サイドガード8Cにより巻込防止範囲を下方及び車輪2側に臨む側方へ拡大して法規的な規定値を満たすことができる。
【0033】
また、図5は本発明の第四形態例を示すもので、マフラカバー5の下方で車両前後方向に延在し且つ車輪2側に臨む端部を車幅方向内側へ曲折して所要長さ延ばした補助サイドガード8Dを用いた例であり、このようにすれば、前述の第一形態例の場合と同様に、補助サイドガード8Dにより巻込防止範囲を下方へ拡大して法規的な規定値を満たすことができる上に、車輪2側に臨む端部を車幅方向内側へ曲折して所要長さ延ばしたことにより、車輪2側の泥よけゴム12(図1参照)とマフラ4との接触を阻むことができ、前記泥よけゴム12のマフラ4の熱による損傷を防ぐことができる。
【0034】
尚、本発明の巻込防止装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、補助サイドガードの形状には、図示以外の形状を採用しても良いこと、また、図2においては、マフラに対しマフラカバーを取り付けるためのブラケットに取付座を形成した例を示しているが、マフラの下面等に取付座を直接設けるようにしても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
2 車輪
4 マフラ
5 マフラカバー
8A 補助サイドガード
8B 補助サイドガード
8C 補助サイドガード
8D 補助サイドガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車側下部にマフラを備えた車両に適用するための巻込防止装置であって、前記マフラの車幅方向外側に装着されたマフラカバーと、前記マフラに対し着脱自在に取り付けられて前記マフラカバーに隣接することで巻込防止範囲を拡大する補助サイドガードとにより構成したことを特徴とする巻込防止装置。
【請求項2】
マフラカバーの下方で車両前後方向に延在する補助サイドガードを用いたことを特徴とする請求項1に記載の巻込防止装置。
【請求項3】
マフラカバーの車輪側に臨む側方で上下方向に延在する補助サイドガードを用いたことを特徴とする請求項1に記載の巻込防止装置。
【請求項4】
マフラカバーの下方で車両前後方向に延在し且つ前記マフラカバーの車輪側に臨む側方では上下方向に延在するL字型の補助サイドガードを用いたことを特徴とする請求項1に記載の巻込防止装置。
【請求項5】
マフラカバーの下方で車両前後方向に延在し且つ車輪側に臨む端部を車幅方向内側へ曲折して所要長さ延ばした補助サイドガードを用いたことを特徴とする請求項1に記載の巻込防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−126297(P2011−126297A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283577(P2009−283577)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)