説明

布地

【課題】 より簡易な構造で安価な、高い装飾性を有する布地の提供。
【解決手段】 既存の布地1の経方向又は緯方向に沿って、あるいは、経方向及び緯方向に対し傾斜する方向に沿って、布地1中に複数の切れ目を入れて形成した複数の分割地部4を用いて、布地中1に織り組織又は組み組織あるいは編み組織を構成してなる布地1にしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地中にその組織とは異なる組織が構成されてなる布地に関する。
【背景技術】
【0002】
布地中にその組織とは異なる組織が構成されてなる布地に関する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1に記載の布地が知られている。
この布地は、経糸と緯糸とを織成させた織り組織中に、経糸をスプラング組みさせた組み組織を点在させている構造にしていることにより、極めて高い装飾性を有する織物地となっている。
【特許文献1】実用新案登録第3059456号公報(〔0016〕〜〔0021〕、図4〜図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の布地は、当該布地中に織り組織が織成されない部位を意識的に構成して布地を織成し、その織成されない部位の経糸(経糸群)で組み組織を組成したものである。
本願出願人は、高い装飾性を有する布地をより簡易な構造とするために鋭意研究を重ねた結果本願発明に至ったものである。
本発明は、前記従来背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、より簡易な構造で安価に、高い装飾性を有する布地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記した目的を達成するために、本発明が採用した第1発明は、既存の布地の経方向又は緯方向に沿って、あるいは、経方向及び緯方向に対し傾斜する方向に沿って、布地中に複数の切れ目を入れて形成した複数の分割地部を用いて、布地中に織り組織又は組み組織あるいは編み組織を構成してなる布地にしたことである。
本発明で云う布地は、経糸(経糸群)と緯糸(緯糸群)を織成した織物地、一方向に隣り合う経糸(経糸群)同士又は緯糸(緯糸群)同士を交錯させて組成した組物地、経糸(経糸群)及び/又は緯糸(緯糸群)をニット状に編成した編物地等の全ての布地を含む。
【0005】
前記各組織を解けないように保持するには、例えば、各組織を縫い付けしたり、布地用接着剤で接着したりすることにより組織の保持が可能であるが、より簡易な構成で各組織を解けないように保持するとともに、更に、布地の意匠性の向上という観点から、第2発明では、前記各組織を構成するのに織成及び組成並びに編成される分割地部同士の少なくとも重合部分に他の布地を介在させ、当該他の布地の繊維と、分割地部の繊維とを絡み合わせることにより、他の布地と分割地部を結合して各組織を保持してなる布地とした。
前記分割地部の繊維と絡み合わせるための他の布地としては、第3発明のように、不織布が好適である。
本発明で云う不織布とは、主に服飾や布製品に用いられる木綿や絹、更にはウール等の天然繊維からなるものや人工繊維からなるものである。
【0006】
尚、前記布地に形成される前記各組織は、布地の経緯方向に一定の間隔を開けて規則的に点在したものや、不規則的に点在したものいずれのものでもよく、規則的に点在する場合にはちどり状、経緯方向に直列状、更には、各組織がある形状を呈するように並んでいるもの等、多様な形態のものが挙げられる。また、大小様々な組み組織を形成してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上の構成にしたことにより、下記の優れた効果が期待できる。
第1発明によれば、既存の布地に切れ目を入れて形成した分割地部を用いて、布地中に織り組織又は組み組織あるいは編み組織を構成してなる布地であるので、例示した特許文献1の布地のように、意識的に組み組織を組成する部位を構成した布地を用意する必要が無く、既存の、且つあらゆる組織の布地を用いて多様な組織が構成された布地である。
したがって、より簡易な構造で安価に、高い装飾性を有する布地を提供することができる。
また、第2発明によれば、より簡易な構成で各組織を解けないように保持するとともに、織り物及び組み物並びに編み物とは異なる組織の不織布によって、多様な模様形態を有する布地を構成することができる。
また、第3発明によれば、分割地部の繊維と良好に絡み合わせることができ、各組織を保持する確実性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を、図面に基づいて説明する。
本形態では、布地1が経糸と緯糸とを織成してなる織物地であり、当該織り組織2中に組み組織3を組成してなる布地1を例示する。
尚、本発明の布地は、例示する織物地に限定するものではなく、組物地及び編物地も含む。
また、後述において経方向とは図面上、上下方向であり、緯方向とは図面上、左右方向であり、バイアス方向とは図面上、斜め方向である。
【0009】
前記組み組織3は、布地1に、その経方向に沿って複数の切れ目を入れて、布地1中に略短冊状に形成された複数の分割地部4同士でもって組成している。
分割地部4は、経方向上側を除く三方に切れ目を入れることで、布地1と一体の略短冊状に形成されている(図2(a)参照)。
また、組み組織3を保持する不織布5を、組み組織3の全面に、且つ重合する分割地部3の間に介在させている。
また、前記不織布5の繊維と、分割地部4の繊維とが絡み合っていて、この絡み合いによって不織布5と分割地部4とを結合させて組み組織3を保持している。
【0010】
前記不織布5の繊維と分割地部4の繊維とを絡み合わせる手段として、例えば、不織布5を組み組織3に介在させた状態の布地1を洗いにかけたり、水に漬けたりして布地1を縮絨させることによって、前記繊維同士を絡み合わせることができる(図示せず)。
尚、前記布地1の洗いについては、機械洗いでも手洗いでも良い。
【0011】
ちなみに、本形態における組み組織3の組成方法を説明すると、後述する図2(a)乃至図2(c)の順で組成される。
尚、図2(a)乃至図2(c)では、組み組織3の組成方法を模式的に示す。
先ず、図2(a)に示すように、既存の布地1に、その経方向に沿って複数の切れ目を入れて、布地1中に略短冊状の複数の分割地部4を形成する。
次に、図2(b)に示すように、隣り合う分割地部4同士をバイアス方向に交錯させて組み目31を形成しながら組み組織3を組成する。
図中6は、組成時における組み状態を保持する保持棒である
そして、図2(c)に示すように、組み組織3全域に亘って組み目31において重合する分割地部3の間に不織布5を挿通させる。
最後に、布地1を洗いにかけたり水に漬けたりして縮絨し、分割地部4の繊維と不織布5の繊維とを絡み合わせて組み組織3を保持することによって布地1が完成する。
【0012】
このように構成した布地1によれば、織り組織2中に組み組織3が形成されるとともに、その組み組織3中に分割地部4の繊維と不織布5繊維との絡み合いによる絡み組織(図示せず)が形成される。
すなわち、一枚の布地1に、織り組織2と組み組織3、更には絡み組織からなる3種類の形状組み合わせの模様形態が現出する。
また、組み組織3が分割地部4と不織布5との絡み合いによって保持されるとともに、組み組織3の伸縮を抑制する。
したがって、組み組織3における過度な伸縮が抑制され、しかも、装飾性をも向上した布地1となる。
【0013】
尚、本形態の組み組織は、すべて同じ大きさ、且つ、同形態を呈するように組成したものであるが、本発明では、例示した組み組織に限定するものではない。
また、布地に構成される組織は、例示した組み組織の他にも、織り組織や編み組織でも良い。
また、一つの組み組織の中で、組み目の大きさを大小変えることで、組み組織の中で立体感が視覚される布地としても良い。
また、分割地部の幅を大小変えることによって、更に多様な模様形態を構成した布地にしても良い。
また、組み組織と連続して、あるいは、離間させて他の組織を構成した布地にしても良い。
また、本形態では、他の布地として不織布を用いた布地を例示しているが、本発明では、不織布とは異なる布地を用いて、当該布地の繊維と分割地部の繊維とを絡み合わせて各組織を保持した布地にしても良い。
また、分割地部と他の布地を絡み合わせる他の手段として、分割地部における各組織に他の布地を介在した状態で、各組織部分を叩いてある程度分割地部と他の布地の繊維をほぐして、当該繊維同士を絡み合わせる手段が挙げられる。
【0014】
尚、より簡易な構造で安価に、高い装飾性を有する布地を提供するための他の手段として、前記各組織を構成するのに織成及び組成並びに編成される分割地部同士の少なくとも重合部分に他の布地を介在させ、当該他の布地と分割地部を接着又は縫着により、他の布地と分割地部を結合して各組織を保持してなる布地が挙げられる。
このような布地においても、前記で例示した布地と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明に係る布地の平面図、(b)は要部拡大図。
【図2】(a)は組み組織の組成方法の一例を示す第1工程図、(b)は同、第2工程図、(c)は同、第3工程図。
【符号の説明】
【0016】
1:布地
2:織り組織
3:組み組織
4:分割地部
5:不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の布地の経方向又は緯方向に沿って、あるいは、経方向及び緯方向に対し傾斜する方向に沿って、布地中に複数の切れ目を入れて形成した複数の分割地部を用いて、布地中に織り組織又は組み組織あるいは編み組織を構成してなる布地。
【請求項2】
前記各組織を構成するのに織成及び組成並びに編成される分割地部同士の少なくとも重合部分に他の布地を介在させ、当該布地の繊維と、分割地部の繊維とを絡み合わせることにより、他の布地と分割地部を結合して各組織を保持してなる請求項1に記載の布地。
【請求項3】
前記他の布地が不織布である請求項2に記載の布地。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−328607(P2006−328607A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156699(P2005−156699)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000126090)株式会社ひなや (4)
【Fターム(参考)】