説明

布帛の精練収縮処理装置

【目的】精練処理すべき布帛を重畳することなく移送させて、皺、処理むらの発生を抑制し、さらに移送時における布帛の希望収縮を妨げることがないような布帛ガイドロール群の構成を開発した布帛の精練収縮処理装置を提供する。
【構成】各精錬液槽の内部には、ガイドロール(18−1,2,3)を、外部上方には、スリップロール(21−1,2,3),(22−1,2,3)を配置する。上記ロール21−1,22−1,18−1とからなるガイドロール群の周速度は布帛速度よりも速く、ロール21−2,22−2,18−2とからなるガイドロール群の周速度は、上記ガイドロール群21−1,22−1,18−1の周速度よりも遅くさらにロール21−3,22−3,218−3とからなるガイドロール群の周速度は、上記ガイドロール群21−2,22−2,18−2の周速度よりも遅くかつ布帛走行速度よりも速く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、外力を与えることで伸縮する長繊維及び短繊維の編物、織物等の長尺布帛を、精練処理させながら均一に収縮させる布帛の連続精練収縮処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】工業的に生産加工する長尺の布帛(フィラメント、綿織物、綿編物等)を、連続的に精練処理する従来例としては、その精練処理すべき綿布帛を例えばJボックス、Lボックス等と称せられる連続精練処理装置を使用して精練処理しているのが一般的である。
【0003】ところが、そのようなJボックス、Lボックス等の精練処理装置にあっては、それらボックス内に連続的に送り込む長尺布帛を、振りたたみ手段によってボックス内で蛇行状に積重ねて液中処理するものであるから、ノーテンション移送が可能であって、ある程度の生地収縮は期待できるが、その反面に、積重ね時において、積圧による押え皺や処理むらが生じ、さらには次工程で染色した時、不均一な染色や最終製品に皺が発生する等のことから、品質良好にして均一に精練処理することが困難であるという不具合が生じがちである。
【0004】そこで、この不具合を解消するために、例えば図1に示すように、複数の精練液槽1と、タイミングパイラー2より引き出される長尺布帛3を、前記の各精練液槽1内に順次浸積通過せしめるためのガイドロール4a,4b,4c,4dを、各精練液槽1毎に配設せしめて、連続的に走行される長尺布帛を各精練液槽1内で繰返し液処理することで目的とする精練を行なう装置が公知である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この公知の精練処理装置にあっては、布帛3を積重ねる工程がないために、先に述べたように、押え皺の発生や、処理むらの発生は解消できるが、布帛がガイドロールにより移送されることによって、移送中の布帛には、たて方向のテンションが生じがちであって、布帛の収縮に妨げが生じがちである。
【0006】すなわち、図1に示す装置において、各精練液槽1上に対設されているガイドロール4aと、4bは、布帛3をS字状にガイドする駆動ガイドロールであるために、それらガイドロール4a,4bと、そのガイドロール4aの前部に配置されているガイドロール4dとの間において、布帛を精練液槽1内に引込めようとする引張り力(テンション)が作用し、この引張り力により布帛の収縮が困難であるという問題点があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる従来の問題点に着目してなされたもので、精練処理すべき布帛を重畳することなく移送させて、皺、処理むらの発生を抑制し、さらには移送時における布帛の希望収縮を妨げることがないような布帛ガイドロール群の構成を開発した布帛の精練収縮処理装置を提供することにある。
【0008】
【実施例】以下に本発明を図2及び図3に示す実施例に基いて詳細に説明する。
【0009】図2において11は精練収縮処理すべき長尺布帛、12はタイミングパイラー、13はタイミングパイラー上の布帛11を精練収縮処理装置へ案内するための案内ロールであって、この案内ロール13の表面には布帛とスリップを生じないようにするためのノンスリップ加工がなされている。14は案内ロール13に次いで配設されている皺延ばしロール、15はその皺延ばしロールに次いで設けられている送り込みロールであって、この送り込みロール15にも、布帛11とスリップを生じることがなく布帛11を適確に精練収縮処理装置16へ送り込むことができるノンスリップ構造となっている。
【0010】精練収縮処理装置16は、複数槽(本実施例では3槽)の精練液槽17−1,17−2,17−3を有し、これらの精練液槽内には、夫々の液中ガイドロール18−1,18−2,18−3が配置されている。なお最終段の精練液槽17−3内に配置されているガイドロール18−3は穿孔ロールを使用している。19,19−1,19−2,19−3は、前記送り込みロール15に次いで設けられているガイドロール20の上方と、各液槽17−1,17−2,17−3の布帛導出部上方に夫々配置されている夫々の拡布引上げロールであって、これらの拡布引上げロールの構成は、該ロールの中央部を境にして左右逆方向に刻設されるスクリュー溝が形成されている所謂スクリューロールである。
【0011】21−1,21−2,21−3は各拡布引上げロールに次いで該ロールよりも高位置に配置されているガイドロール22−1,22−2,22−3は、各ガイドロール21−1,21−2,21−3に次いで設けられているガイドロールである。
【0012】23は精練収縮処理装置16から導出された布帛11の皺延ばしをするための皺延ばしロール、23−1はその皺延ばしロール23を駆動するための駆動モータ、24は絞りロールを示す。25−1は、前記ガイドロール21−1,22−1及び液中ガイドロール18−1の三本ロールを等速回転せしめるためのインバータモータ、25−2は、同様にガイドロール21−2,22−2及び18−2の三本ロールを等速回転せしめるためのインバータモータ、25−3はガイドロール21−3,22−3及び18−3の三本ロールを等速回転せしめるためのインバータモータであり、また26は前記の各拡布引上げロール19,19−1,19−2,19−3を等速で駆動するためのインバータモータである。27及び28は各ロールを連動せしめるための駆動ベルトを示す。
【0013】以上が本実施例の構成であるが、次にその作用について述べると、先ず各精練液槽18−1,18−2,18−3内に所定の精練処理液を充填し、さらに絞りロール24及び送り込みロール15を駆動して処理すべき布帛11を走行させる。この布帛走行速度は、精練収縮装置16内部における布帛11の収縮量を見込んで絞りロール24の周速度よりも送り込みロール15の周速度を速く設定すると共に、絞りロール24の回転数を基にして、送り込みロール15の回転を周知の回転自動調整手段を介して自動調整しながら所望速度で布帛11を走行させる。
【0014】これと同様にガイドロール群21−1,22−1,18−1を駆動する駆動モータ25−1と、ガイドロール群21−2,22−2,18−2を駆動する駆動モータ25−2と、ガイドロール群21−3,22−3,18−3を駆動する駆動モータ25−3を夫々駆動するが、その駆動モータ25−1の駆動速度は、ガイドロール群21−1,22−1,18−1の周速度が、布帛速度の約20%増しとなるように、また駆動モータ25−2の駆動速度は、ガイドロール群21−2,22−2,18−2の周速度が布帛速度の約15%増しとなるように、また駆動モータ25−3の駆動速度は、ガイドロール群21−3,22−3,18−3の周速度が布帛速度の約10%増しとなるような回転速度に設定して駆動し、またインバータモータ26の回転速度は、各拡布引上げロール19,19−1,19−2,19−3の周速度が布帛速度の約3倍〜5倍の速度となるように設定して各ロールを駆動する。なお皺延ばしロール23は布帛11の移送方向と逆方向に回転させる。
【0015】このように各ロールの回転速度を設定しながら布帛11を走行させるが、布帛11に接触される各拡布引上げロール19,19−1,19−2,19−3の周速度は、布帛速度の3〜5倍速度であるために、布帛11には緩やかな引上げ力が作用し、送り込みロール15により送り込まれる布帛及び各精練液槽17−1,17−2,17−3内の布帛にテンションを掛けることなく引上げることができる。そしてかかる拡布引上げロール19,19−1,19−2,19−3により引上げられた布帛は、ガイドロール群21−1,22−1,18−1と、ガイドロール群21−2,22−2,18−2とガイドロール群21−3,22−3,18−3との高速度回転作用により、それら各ロールと布帛との間でスリップを生じながら布帛の案内移送がなされるので、布帛11にはテナションが作用されることなく移送される。
【0016】またガイドロール群21−1,22−1,18−1の周速度は、ガイドロール群21−2,22−2,18−2の周速度よりも速く、さらにそのガイドロール群21−2,22−2,18−2の周速度は、ガイドロール群21−3,22−3,18−3の周速度よりも速く設定されていることから、精練収縮装置16内に供給された布帛は、その精練収縮装置16内滞在時間に追従して漸次収縮する布帛の収縮率に対応させてガイドロール群とのスリップ量が漸次少なくなり、これによって、精練収縮装置内で処理される布帛の収縮が妨げられることなく、しかもその布帛に所望の収縮を生起せしめながら、有効な精練収縮処理がなされるものである。
【0017】
【発明の効果】このように本発明は、布帛送り込みロール15と、該布帛送り込みロール15の周速度よりも遅い周速度である布帛引き出しロール24との間に、複数個の精練液槽17−1,17−2,17−3を配置し、これら各精練液槽の内部にはガイドロール18−1,18−2,18−3を内装し、各精練液槽の外部上方には、夫々のスリップロール21−1,22−1,21−2,22−2,21−3,22−3と、布帛速度よりも3〜5倍の高速度で布帛と接触回転する拡布引上げロール19−1,19−2,19−3とを配置するものであって、上記ロール21−1,22−1,18−1とからなるガイドロール群の周速度は布帛速度よりも速く、ロール21−2,22−2,18−2とからなるガイドロール群の周速度は、上記ガイドロール群21−1,22−1,18−1の周速度よりも遅くさらにロール21−3,22−3,18−3とからなるガイドロール群の周速度は、上記ガイドロール群21−2,22−2,18−2の周速度よりも遅くかつ布帛走行速度よりも速く設定されている精練収縮装置であるから、これによれば、該装置内を移送される布帛には、テンションが作用されることなく精練液槽内への布帛導入導出が円滑になされ、これにより、精練収縮装置内で処理される布帛の収縮が妨げられることなく、しかもその布帛に所望の収縮を生起せしめながら、有効な精練収縮処理がなされるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例の精練装置を示した構造説明図。
【図2】本発明実施例の精練収縮装置を示した構造説明図。
【図3】本発明実施例の図2における要部拡大構造説明図。
【符号の説明】
11…布帛 12…タイミングパイラー
13…案内ロール 14…皺延ばしロール
15…送り込みロール 16…精練収縮装置
17−1,17−2,17−3…精練液槽
18−1,18−2,18−3…液中ガイドロール
19,19−1,19−2,19−3…拡布引上げロール
20…ガイドロール
21−1,21−2,21−3…ガイドロール
22−1,22−2,22−3…ガイドロール
23…皺延ばしロール 23−1…モータ
24…絞りロール
25−1,25−2,25−3…インバータモータ
26…インバータモータ 27,28…駆動ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 布帛送り込みロール(15)と、該布帛送り込みロール(15)の周速度よりも遅い周速度である布帛引き出しロール(24)との間に、複数個の精練液槽(17−1),(17−2),(17−3)を配置し、これら各精練液槽の内部にはガイドロール(18−1),(18−2),(18−3)を内装し、各精練液槽の外部上方には、夫々のスリップロール(21−1),(22−1),(21−2),(22−2),(21−3),(22−3)と、布帛速度よりも3〜5倍の高速度で布帛と接触回転する拡布引上げロール(19−1),(19−2),(19−3)とを配置するものであって、上記ロール(21−1),(22−1),(18−1)とからなるガイドロール群の周速度は布帛速度よりも速く、ロール(21−2),(22−2),(18−2)とからなるガイドロール群の周速度は、上記ガイドロール群(21−1),(22−1),(18−1)の周速度よりも遅くさらにロール(21−3),(22−3),(18−3)とからなるガイドロール群の周速度は、上記ガイドロール群(21−2),(22−2),(18−2)の周速度よりも遅くかつ布帛走行速度よりも速く設定されていることを特徴とする布帛の精練収縮処理装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate