説明

布接着装置

【課題】接着強度が部分的に低下することを抑制した布接着装置を提供すること。
【解決手段】吐出口を有するノズルと、布をノズルに対して第1方向に移送する移送手段と、ノズルに対して第1方向にあり、且つ、吐出口から吐出した接着剤が布に付着した部位である付着部を押圧する押圧手段とを備えた布接着装置において、布接着装置は、吐出口から布に向けて接着剤を吐出する処理を開始する(S33)。布接着装置は、吐出口から布に向けて接着剤を吐出する処理を停止する(S36)。布接着装置は、S36で接着剤を吐出する処理を停止したときに、移送手段に指示を出力することによって、押圧手段が付着部の終端部を押圧する位置まで布を第1方向に移送する(S37,S38)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融性の接着剤で布と布とを接着する布接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布接着装置は、布を縫糸で縫製する代わりに、接着剤で布と布とを接着する装置である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の接着装置は、液状の接着剤をノズルから直接布に吐出する。接着剤は布に付着する。次に、接着装置は、接着剤が付着した布を移送する。接着装置の押圧部は、接着剤が付着した布の上側にもう1枚の布を合わせた後、外面から加圧しつつ、加熱する。布と布とは接着剤によって接着する。布接着装置は、布と布とを接着剤で接着することで、縫糸による縫製時に布表面に生じる縫糸の凹凸を無くすことが可能である。布接着装置による加工後の布の表面は平滑である。それ故、布接着装置は、肌ざわりのよい衣服等を作製することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−512129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布接着装置では、ノズルと押圧部とが所定距離だけ離れている。布接着装置は、布と布とを接着する処理を停止する指示を取得すると、ノズルと押圧部との間の部分の布に接着剤が付着した状態で布の移送を停止する。接着剤が付着した部分である付着部を加圧せずに放置すると、接着剤が固まる。一般に、加圧していない付着部の接着強度は、加圧した付着部の接着強度に比べ小さい。さらに、固まった接着剤を再融解した後に加圧した場合、接着剤及び布の材質によっては、接着強度が十分ではないことがある。このように、従来の布接着装置を用いて布と布とを接着した場合、接着強度が部分的に低下する場合があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、接着強度が部分的に低下することを抑制した布接着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1態様の布接着装置は、吐出口を有するノズルと、布を前記ノズルに対して第1方向に移送する移送手段と、前記吐出口から前記布に向けて接着剤の吐出する処理を開始及び停止する吐出制御手段と、前記ノズルに対して前記第1方向にあり、且つ、前記吐出口から吐出した前記接着剤が前記布に付着した部位である付着部を押圧する押圧手段とを備えた布接着装置であって、前記吐出制御手段が前記接着剤を吐出する処理を停止したときに、前記移送手段に指示を出力することによって、前記押圧手段が前記付着部の終端部を押圧する位置まで前記布を前記第1方向に移送する第1移送制御手段を備えている。第1態様の布接着装置は、付着部を押圧しないで放置することを確実に回避することができる。布接着装置は、接着強度が部分的に低下することを抑制することができる。
【0007】
第1態様の布接着装置において、前記移送手段は、前記布を前記ノズルに対して前記第1方向及び当該第1方向とは逆の第2方向に移送する機能を有し、前記布接着装置は、前記押圧手段が前記終端部を押圧した後、前記移送手段に指示を出力することによって、前記吐出口から吐出する接着剤が前記終端部を含む所定範囲の少なくとも一部に付着する所定位置まで、前記布を前記第2方向に移送する第2移送制御手段を備えてもよい。この場合の布接着装置は、所定位置から、接着剤を布に吐出する処理を再開することができる。布接着装置は、接着剤が付着していない部分の量を抑制することによって、接着強度が部分的に低下することを抑制することができる。
【0008】
第1態様の布接着装置において、前記所定位置は、前記吐出口から吐出する接着剤が前記終端部に付着する位置から前記ノズルの大きさに基づき定めた距離だけ前記第1方向に離れた位置であってもよい。この場合の布接着装置は、前回の処理で接着剤が付着した部分と、ノズルの大きさとを考慮した位置から、布に接着剤を吐出する処理を再開することができる。ノズルの大きさを考慮するのは、ノズルが接着した布と布とを剥がすことを回避するためである。布接着装置は、接着剤が付着していない部分の量を抑制することによって、接着強度が部分的に低下することを抑制することができる。
【0009】
第1態様の布接着装置において、前記第1移送制御手段が前記移送手段に出力する移送条件と、前記第2移送制御手段が前記移送手段に出力する移送条件とを組み合わせた条件である組合せ条件を複数記憶する記憶手段と、前記記憶手段が記憶する前記複数の組合せ条件の中から、1の組合せ条件を特定組合せ条件として特定する特定手段とを備え、前記第1移送制御手段及び前記第2移送制御手段は、前記特定手段が特定した前記特定組合せ条件に基づき、前記移送手段に指示を出力してもよい。この場合の布接着装置は、作業者の移送条件を設定する際の手間を軽減することができる。布接着装置は、布の材質と、布の厚みと、接着剤の材質と、接着剤の吐出量との少なくともいずれかを含む条件に基づき、組合せ条件を特定することが好ましい。この場合、布接着装置は、接着強度が部分的に低下することをより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】布接着装置1全体を前方斜め上から見た斜視図である。
【図2】接着機2を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図3】接着機2の正面図である。
【図4】支持部16が使用位置に移動した接着機2の左側面図である。
【図5】支持部16が保守位置に移動した接着機2の左側面図である。
【図6】接着機2の内部構造を前方左斜め上から見た斜視図である。
【図7】図2のI−I線における矢視方向部分断面図である。
【図8】図2のII−II線における矢視方向部分断面図である。
【図9】接着作業時におけるノズル17近傍の様子を示した部分拡大斜視図である。
【図10】接着作業時における接着機2の左側面図である。
【図11】布接着装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】ROM202が記憶する設定テーブルの説明図である。
【図13】作業者が布に接着剤を供給する処理を停止する指示を入力した時点での、ノズル17と押圧部225と付着部431との位置関係の説明図である。
【図14】第1移送条件と、第2移送条件とに従い布を移送した後のノズル17と押圧部225と付着部431との位置関係の説明図である。
【図15】温度制御処理のフローチャートである。
【図16】設定処理のフローチャートである。
【図17】供給制御処理のフローチャートである。
【図18】供給制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第一の実施形態の布接着装置1について、図面を参照して説明する。
図1から図4を参照し、布接着装置1の構成について説明する。以下、図3に示す接着機2のうち紙面上側、下側、右側、左側、手前側、奥行き側を、それぞれ接着機2の上側、下側、右側、左側、前側、後側と定義して説明する。
【0012】
図1を参照し、布接着装置1全体の構成について説明する。図1に示すように、布接着装置1は、接着機2と、使用台220とを備えている。使用台220は接着機2を固定する。接着機2は、対向配置した2層の布の間に接着剤を付着し、布を押圧し移送する。2層の布は、接着機2の前述した動作を経て接着する。接着機2の構成詳細については後述する。
【0013】
使用台220は、天板211と、左右の脚部212,213と、左右の支持部214,215と、足掛け216と、ペダル208と、制御ボックス3とを備える。接着機2は、天板211の上に固定してある。天板211は、平面視で左右方向を長手方向とする矩形板状である。天板211の左右方向の長さは、接着機2の左右方向の長さの約3倍である。天板211の前後方向の長さは、接着機2の前後方向の長さの約2倍である。
【0014】
天板211は、接着機2の固定部分の右側に操作パネル210を備える。操作パネル210は、液晶表示部207と、複数のキー209とを備える。液晶表示部207は、各種情報を表示する。キー209は、各種入力をするものである。作業者は、液晶表示部207を見ながらキー209を操作することで、布接着装置1の各種動作を設定する。
【0015】
板状の左脚部212は、天板211の左端から、天板211の平面に対して鉛直方向に下方に延びている。板状の右脚部213は、天板211の右端から、天板211の平面に対して鉛直方向に下方に延びている。左支持部214は、左脚部212の下端に接続している。右支持部215は、右脚部213の下端に接続している。左支持部214と右支持部215とは、それぞれ、前後方向を長手方向とする略角柱状の部材である。
【0016】
細長い板状の足掛け216は、左支持部214の前後方向中央部分と、右支持部215の前後方向中央部分との間を繋いでいる。ペダル208は、足掛け216の左右方向略中央に設けてある。作業者は、布の移送速度を調整するためにペダル208を使用する。制御ボックス3は、天板211の下側に固定してある。制御ボックス3は、CPU201(図11参照)等を実装した制御基板を格納する。制御ボックス3は、接着機2と、操作パネル210と、ペダル208と電気的に接続する。
【0017】
図2から図4を参照し、接着機2の構成について説明する。図2と図3とに示すように、接着機2は、台座部11と、脚柱部12と、アーム部13とを備えている。台座部11は、左右方向を長手方向とする略直方体状である。台座部11は、天板211(図1参照)に固定してある。脚柱部12は、台座部11の右端から鉛直方向上方に延びている。アーム部13は、脚柱部12の上端に接続し、脚柱部12の左側面よりも左方に突出している。アーム部13の左右方向の長さは、台座部11の左右方向の長さの約3分の1である。
【0018】
台座部11は、下移送ローラ25(図6参照)、第三モータ93(図6参照)等を内部に備える。下移送ローラ25は、後述する上移送ローラ22と共に布を押圧して移送する。第三モータ93は、下移送ローラ25を駆動する。台座部11は、脚柱部12を支持する土台として機能する。脚柱部12は、アーム部13を支持する。
【0019】
図2に示すように、アーム部13の左端部は、前方から順に、ポンプケース14と、貯蔵室18と、梁部19とを支持している。アーム部13は、第一モータ91(図6参照)、第二モータ92(図6参照)等を内部に備える。第一モータ91は、ギアポンプ124(図6参照)を駆動する。第二モータ92は、上移送ローラ22を駆動する。
【0020】
ポンプケース14について説明する。図2と図3とに示すように、ポンプケース14は、第一ポンプケース31と第二ポンプケース32とを備える。第一ポンプケース31は、略立方体状の部材である。第一ポンプケース31は、アーム部13の左側面に固定してある。第一ポンプケース31は、ギアポンプ124(図6参照)等を内部に備える。ギアポンプ124は、適量の接着剤を高精度でノズル17に供給する。第二ポンプケース32は、略直方体状の部材である。第二ポンプケース32は、第一ポンプケース31の左下端面から下方に延びている。図3に示すように、第一ポンプケース31の上下方向の長さは、アーム部13の上下方向の長さと略同一である。第二ポンプケース32の左右方向の位置は、台座部11の左右方向中央の位置と略同一である。
【0021】
第二ポンプケース32は、左側に軸部45(図3参照)を備えている。軸部45は、支持部16の上端部42の右側と接続し、支持部16を軸部45の周りに揺動可能に支持する。ポンプケース14は、後述する供給路81(図7参照)と供給路82(図7参照)とを備えている。供給路81は、接着剤を貯蔵室18からギアポンプ124へ導く。供給路82は、接着剤をギアポンプ124から支持部16へ導く。
【0022】
図2と図3とに示すように、支持部16の形状は、上下方向を長手方向とする略直方体状である。支持部16の下端部44と台座部11との間には、僅かな隙間が存在する。支持部16は、供給路83(図8参照)を内部に備える。供給路83は、接着剤をポンプケース14からノズル17へ導く。支持部16の下端部44には、ノズル17がある。ノズル17は、支持部16から布に沿うように左側に延びている。支持部16は、上端部42に駆動伝達部41を備えている。駆動伝達部41は、エアシリンダ24の可動部75の先端部を支持する。
エアシリンダ24は、エア注入口71とエア注入口74とを備えている。エア注入口71とエア注入口74とには、それぞれ、図示しない吸排気用ホースが接続している。布接着装置1は、エア注入口71とエア注入口74とへの圧縮空気の吸気/排気を制御する。エアシリンダ24の本体部73内にあるピストンの位置は、吸気/排気の制御によって移動する。可動部75は、ピストンに接続している。それ故、ピストンが移動すると、可動部75の先端部は前後に移動する。エアシリンダ24は、位置センサ222(図11参照)を本体部73内に備えている。位置センサ222は、ピストンの位置を検出する。位置センサ222は磁性体センサを用いる。磁性体センサは、ピストンの所定位置に取り付けた磁性体を検出する。
【0023】
支持部16は、エアシリンダ24の可動部75が前後に移動することで、軸部45を中心軸として前後方向に揺動する。ノズル17は、支持部16の揺動に伴って、布の接着作業を行う場合の位置(図4参照)と、保守を行う場合の位置(図5参照)とに移動する。
【0024】
ノズル17は円筒形状である。ノズル17は、その下側に接着剤を吐き出す吐出口86(図8参照)を備えている。作業者が布の接着作業を行う場合、吐出口86は台座部11と対向する。作業者は、接着作業を行う場合、対向配置した2層の布の間にノズル17を挿入する。ギアポンプ124は、支持部16内部の供給路83を介して、接着剤をノズル17に供給する。ノズル17は、吐出口86から布に接着剤を吐出する。接着剤は、ノズル17の下方に位置する布の表面に付着する。
【0025】
図2と図3とに示すように、貯蔵室18は、上下方向を長手方向とする略直方体状である。貯蔵室18は、アーム部13の左側、且つポンプケース14の後方部分から上方に延びている。貯蔵室18は、本体部46と、蓋部47と、蓋軸部48とを備える。本体部46の形状は、上部が開口した有底筒状である。蓋部47は、本体部46の上部開口を覆う。本体部46の上端には、蓋軸部48がある。蓋軸部48は、蓋部47を開閉可能に支持する。貯蔵室18は、熱溶融性の接着剤(図示省略)を本体部46の内部に貯蔵する。貯蔵室18は、貯蔵した接着剤を、必要に応じてギアポンプ124とノズル17とに供給する。熱溶融性の接着剤は、所定の温度に加熱すると液化し、該所定の温度より低い温度では、固化するものである。
【0026】
図2に示すように、梁部19は、本体部51と、ばね支持部53と、柱部52とを備えている。本体部51は、アーム部13の左側後端部から左方へ水平方向に延びる部材である。本体部51の左右方向の長さは、台座部11の左右方向の長さの約3分の1である。ばね支持部53は板状であり、本体部51の左端部から前方へ水平方向に延びる。ばね支持部53の前後方向の長さは、台座部11の前後方向の長さの約2分の1である。図2と図4とに示すように、柱部52は、水平面に対して約45度の角度で、本体部51から前方斜め下の方向に延びている。柱部52の下端部は、台座部11から離れている。
【0027】
図2に示すように、ばね支持部53は、前方先端部に穴を有する。ばね支持部53は、軸部61を上下動可能に支持する。軸部61は、ばね21に挿通してある。軸部61の上端部分は、ばね支持部53の穴に挿通してある。柱部52の下端部分の左側には、左右に延びる軸部62がある。軸部62は、ローラ保持部20の後端部56を支持している。ローラ保持部20は、軸部62を揺動中心として、前端部58を上下方向に揺動する。本体部51のばね支持部53よりも右側には、エアシリンダ24がある。エアシリンダ24は、支持部16の位置を切り替えるものである。
【0028】
ローラ保持部20について説明する。ローラ保持部20の前端部58は、円柱状の上移送ローラ22を回転可能に支持している。上移送ローラ22は、支持部16から延びたノズル17の後方近傍にある。ノズル17は、例えば、上移送ローラ22の回転中心から、上移送ローラ22の直径の2倍の距離以内にあることが好ましい。ローラ保持部20の中央からやや前方の上面には、軸支持部59がある。軸支持部59は、ばね21に挿通している軸部61の下端を支持している。ばね21は、ばね支持部53と軸部61の下端との間に介在する。ばね21は、軸部61を下方へ付勢することで、軸部61が接続するローラ保持部20を下方へ付勢する。
【0029】
図2に示すように、台座部11は、上移送ローラ22の下方部分に穴部23を設けてある。下移送ローラ25(図6参照)の一部は、穴部23から上方に僅かに突出している。下移送ローラ25は、上移送ローラ22と共に回転する。下移送ローラ25と上移送ローラ22とは、該両ローラ25,22が挟持した布を前方から後方、又は後方から前方に移送する。図4と図5とを参照し、ノズル17が移動した場合について説明する。
【0030】
図4に示すように、可動部75が前方に移動した場合、支持部16は直立する。ノズル17は、上移送ローラ22の前方近傍に移動する。吐出口86(図8参照)は下方を向く。ノズル17から吐出した接着剤は、ノズル17の下方を通過する布に付着する。上移送ローラ22と下移送ローラ25(図6参照)とは、接着剤が布に付着した直後に、上下方向から布を押圧する。上移送ローラ22と下移送ローラ25(図6参照)とは回転し、布を前方から後方に移送する。以下、図4に示す支持部16の位置を「使用位置」と言う。
【0031】
図5に示すように、可動部75が後方に移動した場合、支持部16は前方斜め下方向に傾斜する。ノズル17は、上移送ローラ22と台座部11とから離れた位置に移動する。吐出口86(図8参照)は、前方斜め下方向を向く。以下、図5に示す支持部16の配置位置を「保守位置」と言う。
【0032】
図6を参照し、接着機2の内部構造について説明する。接着機2は、第一モータ91と、第二モータ92と、第三モータ93とを含む部材を内部に備える。
【0033】
第一モータ91は、回転軸121を介して回転駆動力をギアポンプ124に伝達することで、ギアポンプ124を駆動する。ギアポンプ124は、駆動ギア122と、従動ギア123とを備えている。駆動ギア122は、回転軸121の左端部に固定してある。駆動ギア122は、回転軸121と共に回転する。従動ギア123は、駆動ギア122と噛合する。第一モータ91は、アーム部13内部に、且つポンプケース14がアーム部13と接続する部分の右方に位置する。回転軸121は、ポンプケース14内にあり、第一モータ91の回転軸から左方に延びる。駆動ギア122と従動ギア123とは、適量の接着剤をノズル17に供給する。
【0034】
第二モータ92は、回転軸126と、ベルト129と、回転軸127と、ベルト130と、回転軸128とを介して、回転駆動力を上移送ローラ22に伝達することで、上移送ローラ22を駆動する。第二モータ92は、アーム部13内部にあり、且つ梁部19がアーム部13と接続している部分の右方に位置する。回転軸126は、第二モータ92の回転軸から左方に延び、本体部51内を貫通している。回転軸126の左端部は、柱部52内に位置する。回転軸126の左端部は、プーリ171を支持している。回転軸127の右端部は、柱部52の下端部内に延び、回転軸127の左端部はローラ保持部20の後端部56内に延びている。回転軸127の右端部と左端部は、それぞれプーリ172,173を支持している。回転軸128は、上移送ローラ22の回転軸である。回転軸128の左端部は、ローラ保持部20の前端部58の内部まで延び、プーリ174を支持している。回転軸128の右端部は、前端部58から突出し、上移送ローラ22を支持している。ベルト129は、柱部52内で、回転軸126の左端部のプーリ171と回転軸127の右端部のプーリ172との間に掛け渡してある。ベルト130は、ローラ保持部20内で、回転軸127の左端部のプーリ173と回転軸128の左端部のプーリ174との間に掛け渡してある。上移送ローラ22は、第二モータ92が回転することで回転する。
【0035】
第三モータ93は、回転軸141とベルト142とを介して、回転駆動力を下移送ローラ25に伝達することで、下移送ローラ25を駆動する。下移送ローラ25は、円柱形状であり、回転軸141に固定してある。下移送ローラ25は、上移送ローラ22の下方、且つ台座部11内に位置する。台座部11は、内部に支持台座4を有する。支持台座4は、回転軸141を回転可能に支持している。ベルト142は、台座部11内で、第三モータ93の回転軸のプーリ175と回転軸141の右端部のプーリ176との間に掛け渡してある。下移送ローラ25は、第三モータ93が回転することで回転する。
【0036】
第一エンコーダ94は、第一モータ91の右端に接続している。第一エンコーダ94は、第一モータ91の回転量を検出する。第二エンコーダ95は、第二モータ92の右端に接続している。第二エンコーダ95は、第二モータ92の回転量を検出する。第三エンコーダ96は、第三モータ93の右端に接続している。第三エンコーダ96は、第三モータ93の回転量を検出する。
【0037】
貯蔵室18の本体部46は、周壁182(図7参照)に、貯蔵室第一ヒータ101と貯蔵室第二ヒータ102と貯蔵室温度センサ111とを備える。貯蔵室第一ヒータ101と貯蔵室第二ヒータ102とは、本体部46を加熱することで、本体部46が貯蔵している接着剤を加熱する。貯蔵室温度センサ111は、本体部46の温度を検出することで、本体部46が貯蔵している接着剤の温度を計測する。接着機2は、貯蔵室第一ヒータ101と貯蔵室第二ヒータ102と貯蔵室温度センサ111とを用いて、熱溶融性の接着剤を貯蔵室18で所定の温度に加熱し、接着剤を液化する。
【0038】
ポンプケース14の第一ポンプケース31は、その内部に、ポンプケースヒータ103とポンプ温度センサ112とを有する。ポンプケースヒータ103は、第一ポンプケース31を加熱することで、第一ポンプケース31内を流れる接着剤を加熱する。ポンプ温度センサ112は、第一ポンプケース31の温度を計測する。
【0039】
支持部16は、その内部に支持部ヒータ104と支持部温度センサ113とを有する。支持部ヒータ104は、支持部16を加熱することで、支持部16内を流れる接着剤を加熱する。支持部温度センサ113は、支持部16の温度を計測する。
【0040】
図7と図8とを参照し、接着機2における接着剤の供給路について説明する。
【0041】
図7に示すように、貯蔵室18の本体部46は、周壁182と底壁181とを有する。本体部46は、周壁182と底壁181が囲む空間に、接着剤を貯蔵する。供給路81は、ポンプケース14側の周壁182下端においてポンプケース14側へ延びる貫通穴である。供給路81は、本体部46が貯蔵する接着剤をギアポンプ124に導くための通路である。
【0042】
供給路81は、貯蔵室18から、ポンプケース14の第一ポンプケース31内の中央に至る。供給路81は、第一ポンプケース31の中央部分で右方に直角に曲折して、駆動ギア122と従動ギア123とが噛み合う部分の上端に至る。
【0043】
図8に示すように、供給路82は、ギアポンプ124を通過した接着剤を、支持部16の供給路83に導くための通路である。供給路82は、駆動ギア122と従動ギア123(図7参照)とが噛み合う部分の下端から左方に延びる。該左方に延びた供給路82は、下方に曲折し、その下端において左方に曲折し、軸部45を通って支持部16内の供給路83に至る。
【0044】
供給路83は、供給路82を流れる接着剤をノズル17に導くための通路である。供給路83は、支持部16の内部で上端部42から下端部44まで延び、ノズル17内の供給路84に至る。
【0045】
供給路84は、供給路83を流れる接着剤を、吐出口86に導くための通路である。吐出口86は、ノズル17の左端部の下方部分に設けてある。供給路84は、ノズル17の内部で右端から左端まで延び、吐出口86に接続している。接着剤は、吐出口86から外部に吐出する。
【0046】
図7と図8とを参照して、貯蔵室18からポンプケース14と支持部16とを経由してノズル17の吐出口86に至る接着剤の流れについて説明する。貯蔵室第一ヒータ101(図6参照)と貯蔵室第二ヒータ102(図6参照)とは、貯蔵室18内の接着剤を加熱する。接着剤は液体状態となる。
【0047】
第一モータ91は駆動ギア122を駆動し、駆動ギア122と従動ギア123とが回転する。ギアポンプ124は、液体状態の接着剤を、供給路81から供給路82に向けて送り出す。ポンプケースヒータ103(図6参照)は、供給路81と、供給路82とを流れる接着剤を加熱する。接着剤は、液体状態を維持する。
【0048】
接着剤は、供給路82から供給路83に向かって流れ、供給路84に至り、吐出口86から外部に吐出する。支持部ヒータ104(図6参照)は、供給路83を流れる接着剤を加熱する。接着剤は、液体状態で、吐出口86から外部に吐出する。
【0049】
図9と図10とを参照し、上布151と下布152とを接着する接着作業時における接着機2の動作について説明する。図9と図10とに示すように、接着作業を行う場合には、接着機2は、エアシリンダ24の可動部7を前方に移動して、支持部16を使用位置(図4参照)に移動する。作業者は、上布151と下布152とを重ねて配置する。作業者は、下布152の接着部分にノズル17を配置する。上移送ローラ22と下移送ローラ25とは、ノズル17の後方で、上布151と下布152とを挟持する。上移送ローラ22と下移送ローラ25とが布を挟持する部位を押圧部225(図10参照)と言う。
【0050】
前述の状態で、作業者がペダル208(図1参照)を踏み込むと、ギアポンプ124(図7参照)は駆動する。その結果、接着剤は、供給路81から83を経由して、ノズル17から吐出し、下布152に付着する。図10に示すように、上移送ローラ22と下移送ローラ25とは、上布151と下布152とを前方から後方に移送する方向401(以下、「第1方向401」と言う。)に回転する。ばね21は、上移送ローラ22を下方へ付勢する。それ故、上移送ローラ22と下移送ローラ25とは、上布151と下布152とを押しつけて接着する。
【0051】
図11を参照し、布接着装置1の電気的構成について説明する。布接着装置1は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、記憶装置29とを備えている。CPU201は、受信処理と制御処理とを実行する。受信処理は、キー209とペダル208とを含む入力機器からの入力情報を受信する処理である。受信処理は、各種センサが検出した検出情報を受信する処理でもある。制御処理は、モータ及びヒータ等を制御する処理である。ROM202は、CPU201が実行するプログラム及び各種初期設定パラメータ等を記憶する。ROM202は、例えば、図12の設定テーブルを記憶する。図12の設定テーブルについては後述する。RAM203は、タイマと、カウンタと、フラグと含むデータを一時的に記憶する。記憶装置29は、作業者が入力する各種設定情報を記憶する。CPU201は、ROM202と、RAM203と、記憶装置29とにそれぞれ電気的に接続している。CPU201は、ROM202と、RAM203と、記憶装置29との記憶領域にアクセスできる。
【0052】
ペダル208は、CPU201と電気的に接続している。作業者は、布の移送速度を調節する場合にペダル208を使用する。CPU201は、ペダル208の踏み込み量を認識することができる。CPU201は、認識したペダル208の踏み込み量に基づいて、上移送ローラ22と下移送ローラ25との回転速度と、駆動ギア122と従動ギア123との回転速度を決定する。
【0053】
キー209は、CPU201と電気的に接続している。作業者は、各種動作設定情報を行う場合にキー209を使用する。CPU201は、作業者によるキー209の押下状態を認識する。CPU201は、認識したキー209の押下状態に基づいて、各種動作設定の情報を記憶装置29に記憶する。例えば、CPU201は、認識したキー209の押下状態に基づいて、図12の設定テーブルに記憶した複数の組合せ条件から選択した組合せ条件を記憶装置29に記憶する。
【0054】
位置センサ222は、CPU201と電気的に接続している。CPU201は、位置センサ222が検出したピストンの位置の情報を認識する。
【0055】
温度センサ111から113は、それぞれ、CPU201と電気的に接続している。CPU201は、温度センサが検出した温度の情報を認識する。CPU201は、温度センサ111から113が検出した温度の情報に基づいて、貯蔵室18と、ポンプケース14と、支持部16との内部を流れる接着剤の温度を認識する。
【0056】
エンコーダ94から96は、それぞれ、CPU201と電気的に接続している。CPU201は、エンコーダ94から96が検出した回転量の情報に基づいて、モータ91から93の実際の回転速度を認識する。
【0057】
表示駆動ドライバ205は、CPU201と電気的に接続している。表示駆動ドライバ205は、液晶表示部207と電気的に接続している。CPU201は、表示駆動ドライバ205を介して所望の像を液晶表示部207に表示する。
【0058】
エア駆動ドライバ204は、CPU201と電気的に接続している。エア駆動ドライバ204は、エアシリンダ24と電気的に接続している。CPU201は、エア駆動ドライバ204を介して、エアシリンダ24のエア注入口71とエア注入口74とに送り込む空気の圧力を制御する。支持部16は、エアシリンダ24の動作に基づいて、使用位置と保守位置とに移動する。
【0059】
モータ駆動ドライバ206は、CPU201と電気的に接続している。モータ91から93は、それぞれ、モータ駆動ドライバ206と電気的に接続している。CPU201は、モータ駆動ドライバ206を介してモータ91から93を制御する。
【0060】
ヒータ101から104は、それぞれ、CPU201と電気的に接続している。CPU201は、それぞれのヒータ101から104のON/OFFを制御する。
【0061】
図12を参照して、ROM202が記憶する設定テーブルについて説明する。図12のように、設定テーブルは1からN番までの複数の組合せ条件を記憶する。組合せ条件は、作業者がペダル208を操作して、布に接着剤を供給する処理を停止することを指示した後の、布接着装置1の駆動条件である。具体的には、組合せ条件は、第1移送条件と、第2移送条件とを組み合わせた条件である。第1移送条件は、布接着装置1が布を第1方向401に移送するための条件である。第2移送条件は、布接着装置1が布を後方から前方に向かう方向402(以下、「第2方向402」と言う。)に移送するための条件である。第1移送条件と、第2移送条件とはそれぞれ、移送量(mm)と、移送速度(m/min)とを含む。
【0062】
図13と、図14とを参照して、組合せ条件について説明する。図13のように、作業者が布に接着剤を供給する処理を停止する指示を入力した時点では、上布151と、下布152との表面の内、ノズル17と押圧部225との間(矢印411で示す区間)の部分431(以下、「付着部431」とも言う。)には接着剤が付着している。第1移送条件は、布接着装置1が付着部431の終端部432までを押圧するための移送条件である。付着部431の終端部432は、付着部431のうちノズル17に最も近い部分である。第1移送量は、第1方向401への移送量である。第1移送量は、付着部431の終端部と、押圧部225との間の距離とを含む条件に基づき設定してある。第1移送量は、押圧部225が付着部431を押圧することによって付着部431の接着剤が広がる量を予め見込んだ値でもよい。第1移送速度は、第1方向401への移送速度である。第1移送速度は、接着剤の種類と、布の種類とを含む条件に基づき設定してある。
【0063】
第2移送条件は、図14のように布接着装置1が付着部431の終端部432をノズル17の近傍に配置するための移送条件である。図14において、付着部431の終端部432は、吐出口86から吐出する接着剤が終端部432に付着する位置414から、ノズル17の大きさに基づき定めた距離(矢印415で示す距離)だけ第1方向に離れた所定位置にある。布接着装置1は、終端部432をノズル17の近傍に配置することによって、布接着装置1が接着剤の供給を再開した場合に、接着剤が付着していない部位の量を低減する。第2移送量は、第2方向402への移送量である。第2移送量は、付着部431の終端部432と押圧部225との間の距離(矢印411で示す距離)と、ノズル17の大きさとを含む条件に基づき設定してある。第2移送量は、矢印412で示す距離である。第2移送量は、矢印411で示す第1移動量よりも短い。図13の付着部431は、図14では矢印413で示す区間の布である。第2移送速度は、第2方向402への移送速度である。第2移送速度は、接着剤の種類と、布の種類とを含む条件に基づき設定してある。
【0064】
組合せ条件の各値を例示する。ノズル17は円筒形状である。ノズル17の半径は2mmである。ノズル17の中心位置の真下に吐出口86がある。吐出口86と押圧部225との間の距離(矢印411で示す距離)は、18mmである。第1移送量は、20mmである。第1移送速度は、1.0m/minである。第2移送量は、18mmである。第2移送速度は,0.5m/minである。但し、いずれの値も上記の値に限定するものではなく、適宜変更可能である。
【0065】
図15から図17を参照して、布接着装置1の各種処理について説明する。CPU201は、所定周期(例えば2秒)で温度制御処理を実行する。CPU201は、作業者がキー209を操作して指示した場合に、設定処理を実行する。CPU201は、布の接着作業が可能な状態で、作業者がペダル208を踏み込んだ場合に、供給制御処理を実行する。
【0066】
図15を参照し、温度制御処理について説明する。温度制御処理は、温度センサ111から113が検出した温度の情報に基づいて、ヒータ101から104のON/OFFを制御する処理である。布接着装置1は、接着剤を加熱して液体状態とし、接着剤の温度を所定温度以上に維持する。
【0067】
図15のように、CPU201は、温度センサ111から113のうちいずれかが検出する温度の情報を取得する(S11)。取得した温度が所定の値以上(例えば100℃以上)の場合には(S13:YES)、接着剤は液体状態である。CPU201は、温度を取得した温度センサを備える部位のヒータをOFFにする(S15)。CPU201は、S19の処理に移行する。取得した温度が所定の値未満(例えば100℃未満)である場合(S13:NO)、接着剤は冷却し固体状態になる可能性がある。CPU201は、温度を取得した温度センサを備える部位のヒータをONにする(S17)。CPU201は、S19の処理に移行する。
【0068】
CPU201は、S19の処理において、温度センサ111から113のすべてに対して前述の処理を実行したか否かを判断する(S19)。CPU201は、前述の処理を実行していない温度センサが残存する場合には(S19:NO)、S11の処理に戻る。CPU201は、未処理の温度センサについて前述の処理を繰り返し実行する。CPU201は、すべての温度センサについて前述の処理を実行した場合(S19:YES)、温度制御処理を終了する。
【0069】
図16を参照し、設定処理について説明する。設定処理では、CPU201は、図12の設定テーブルに記憶した複数の組合せ条件の中から、キー209の押下状態に応じた組合せ条件を特定組合せ条件に設定する。
【0070】
図16のように、CPU201は、表示駆動ドライバ205に指示を出力して、特定組合せ条件の候補を液晶表示部207に表示する(S21)。一巡目の処理では、CPU201は、特定組合せ条件の候補に、記憶装置29が記憶する番号に対応する組合せ条件を設定する。二巡目以降の処理では、CPU201は、特定組合せ条件の候補に、設定テーブルの番号Mの組合せ条件を設定する。CPU201は後述のS24でMを設定する。作業者は、キー209を操作して、液晶表示部207が表示する組合せ条件を特定組合せ条件に設定するか否かの指示を入力する。
【0071】
作業者が、液晶表示部207が表示する組合せ条件を特定組合せ条件に設定しない指示を入力した場合(S22:NO)、CPU201は、Mを更新する(S24)。一巡目の処理では、CPU201は、Mに1を設定してMを更新する。二巡目以降の処理では、CPU201は、Mに1を加えた値をMに設定してMを更新する。CPU201は、処理をS21に戻す。作業者が、液晶表示部207が表示する組合せ条件を特定組合せ条件に設定する指示を入力した場合(S22:YES)、CPU201は、液晶表示部207が表示する組合せ条件を特定組合せ条件に設定する(S23)。S23では、CPU201は、特定組合せ条件に対応する番号を記憶装置29に記憶する(S23)。S23の次に、設定処理は終了する。
【0072】
図17を参照し、供給制御処理について説明する。CPU201は、ペダル208が供給制御処理を開始する指示を入力したか否かを判断する(S31)。作業者がペダル208を操作すると、ペダル208は供給制御処理を開始する指示をCPU201に向けて出力する。ペダル208が指示を入力していない場合(S31:NO)、CPU201は、処理をS31に戻す。ペダル208が指示を入力した場合(S31:YES)、CPU201は、記憶装置29が記憶する番号に対応する組合せ条件を特定組合せ条件として特定する(S32)。記憶装置29が記憶する番号は、前述の設定処理でCPU201が設定した番号である。
【0073】
CPU201は、モータ駆動ドライバ206に、接着剤の供給を開始する指示を出力する(S33)。接着剤の供給量は、接着剤の種類と、布の種類と、布の移送速度とに応じて設定してある。接着剤の供給量は、上記以外に、吐出口86の大きさと、接着剤が布に付着したときの厚みといった条件を加味した値でもよい。モータ駆動ドライバ206は、CPU201からの指示に応じて、第一モータ91を駆動する。第一モータ91の駆動によって、適量の接着剤がノズル17から吐出する。
【0074】
CPU201は、モータ駆動ドライバ206に、布の移送を開始する指示を出力する(S34)。モータ駆動ドライバ206は、CPU201からの指示に応じて、第二モータ92と、第三モータ93とを駆動する。第二モータ92は、回転駆動力を上移送ローラ22に伝達することで、上移送ローラ22を駆動する。第三モータ93は、回転駆動力を下移送ローラ25に伝達することで、下移送ローラ25を駆動する。上移送ローラ22と、下移送ローラ25とは、回転駆動することによって、上布151と、下布152とを第1方向401に移送する。
【0075】
CPU201は、ペダル208が供給制御処理を停止する指示を入力したか否かを判断する(S35)。ペダル208は、作業者がペダル208の操作を停止すると、供給制御処理を停止する指示をCPU201に向けて出力する。ペダル208が指示を入力していない場合(S35:NO)、CPU201は処理をS35に戻す。ペダル208が指示を入力した場合(S35:YES)、CPU201は、モータ駆動ドライバ206に、接着剤の供給を停止する指示を出力する(S36)。モータ駆動ドライバ206は、CPU201からの指示に応じて、第一モータ91の駆動を停止する。第一モータ91が停止すると、接着剤の供給が停止する。
【0076】
CPU201は、S32で特定した特定組合せ条件に基づき、第1方向401への移送速度に第1移送速度を設定する(S37)。S37では、CPU201は、設定した第1移送速度で第1方向401へ上布151と、下布152とを移送するように、モータ駆動ドライバ206に指示を出力する。モータ駆動ドライバ206は、CPU201からの指示に応じて、第二モータ92と、第三モータ93との回転速度を調整する。上布151と、下布152との移送速度は、S32で特定した特定組合せ条件の第1移送速度となる。CPU201は、S37の処理を実行してからの経過時間T1のカウントを開始する。
【0077】
CPU201は、S37の処理を実行してから、布接着装置1が上布151と、下布152とを第1方向401に第1移送量移送したか否かを判断する(S38)。CPU201は、例えば、(S37で設定した第1移送速度)×T1=(S32の特定組合せ条件の第1移送量)を満たす場合に、上布151と、下布152とが第1移送量移送したと判断する。布接着装置1が上布151と、下布152とを第1移送量移送していない場合(S38:NO)、CPU201は処理をS38に戻す。布接着装置1が上布151と、下布152とを第1移送量移送した場合(S38:YES)、CPU201は上布151と、下布152とを第2方向402に移送する処理を開始する(S39)。S39では、CPU201は、S32で特定した特定組合せ条件に基づき、第2方向402への移送速度に第2移送速度を設定する。CPU201は、設定した第2移送速度で第2方向402に上布151と、下布152とを移送するように、モータ駆動ドライバ206に指示を出力する。上布151と、下布152との第2方向402への移送速度は、S32で特定した特定組合せ条件の第2移送速度となる。CPU201は、S39の処理を実行してからの経過時間T2のカウントを開始する。
【0078】
CPU201は、S39の処理を実行してから、布接着装置1が上布151と、下布152とを第2方向402に第2移送量移送したか否かを判断する(S40)。CPU201は、例えば、(S39で設定した第2移送速度)×T2=(S32の特定組合せ条件の第2移送量)を満たす場合に、上布151と、下布152とが第2移送量移送したと判断する。布接着装置1が上布151と、下布152とを第2移送量移送していない場合(S40:NO)、CPU201は処理をS40に戻す。布接着装置1が上布151と、下布152とを第2移送量移送した場合(S40:YES)、CPU201は上布151と、下布152とを第2方向402に移送する処理を停止する(S41)。S41では、CPU201は、上布151と、下布152との移送を停止するように、モータ駆動ドライバ206に指示を出力する。供給制御処理は終了する。
【0079】
布接着装置1において、上移送ローラ22と、下移送ローラ25とは、「移送手段」と「押圧手段」とに相当する。図17のS33と、S36との処理を実行するCPU201は、本発明の「吐出制御手段」として機能する。S37と、S38とを実行するCPU201は、本発明の「第1移送制御手段」として機能する。S39と、S40とを実行するCPU201は、本発明の「第2移送制御手段」として機能する。図12の設定テーブルを記憶するROM202は、本発明の「記憶手段」に相当する。図16のS23を実行するCPU201は、本発明の「特定手段」として機能する。図14のように、吐出口86から吐出する接着剤が終端部432に付着する位置414から、矢印415で図示するノズル17の大きさに基づき定めた距離だけ第1方向に離れた位置は、本発明の「所定位置」に相当する。
【0080】
布接着装置1は、付着部431を押圧しないで付着部431を放置することを確実に回避することができる。布接着装置1は、接着強度が部分的に低下することを抑制することができる。布接着装置1は、終端部432を押圧した後、布を第2方向402に移送することによって、終端部432をノズル17の周囲に配置する。布接着装置1は、接着剤が付着していない部分の量を抑制することによって、接着強度が部分的に低下することを抑制することができる。第2移送量は、ノズル17の大きさを考慮して設定してある。それ故、布接着装置1が布を第2方向402に移送することによって、ノズル17が、押圧によって接着した付着部431をはがすことはない。
【0081】
布接着装置1は、設定処理を実行することによって、設定テーブルに記憶した複数の中から読み出した組合せ条件を特定組合せ条件に設定する。布接着装置1は、ペダル208が供給制御処理を停止する指示を入力した後の移送条件を作業者が設定する際の手間を軽減することができる。布接着装置1は、布の材質と、布の厚みと、接着剤の材質と、接着剤の吐出量との少なくともいずれかを含む条件に基づき、組合せ条件を特定することが好ましい。この場合、布接着装置1は、接着強度が部分的に低下することをより効果的に抑制することができる。
【0082】
本発明の布接着装置は、上記した実施の形態に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、以下の(1)から(5)の変形を適宜加えてもよい。
【0083】
(1)布接着装置1が備える部材は必要に応じて変更してよい。例えば、ギアポンプ124は、適量の接着剤をノズル17に供給又は供給の停止をしていたが、接着剤の供給又は供給の停止はギアポンプ124に限らない。例えば、供給路にバルブを備えてもよい。接着剤の供給又は供給の停止はバルブの開閉で行ってもよい。その他、接着剤の供給は、エアの圧力で行ってもよい。例えば、ノズル17の形状と、ノズル17が備える吐出口86の位置及び大きさとは変更してよい。他の変形例では、例えば、布接着装置は、複数種類のノズルのそれぞれが、支持部16に対して着脱可能であってもよい。複数種類のノズルは、形状と、吐出口の位置と、大きさとが夫々異なる。作業者は、布の種類と材質といった条件に応じたノズルを、支持部16に対して装着して、供給制御処理を開始させてもよい。他の変形例では、例えば、上移送ローラ22と、下移送ローラ25とは、布の移送と、布の押圧との双方を行っていたが、布を移送する部材と、布を押圧する部材とが別の部材であってもよい。他の変形例では、例えば、上移送ローラ22と、下移送ローラ25とは、第1方向への布の移送と、第2方向への布の移送との双方を行っていたが、第1方向への布を移送する部材と、第2方向への布を移送する部材とが別の部材であってもよい。
【0084】
(2)設定処理では、CPU201は、設定テーブルが記憶する組合せ条件の中から、特定組合せ条件を特定していた。例えば、布接着装置1が設定テーブルを記憶しない場合には、CPU201は、作業者によるキー209の操作に基づいて特定組合せ条件を設定してもよい。他の変形例では、例えば、CPU201は、ROM202が記憶する1の組合せ条件を、特定組合せ条件に設定してもよい。
【0085】
(3)CPU201は、図18のように、図17のS39とS40とを省略して供給制御処理を実行してもよい。図18の供給制御処理では、布接着装置1が上布151と、下布152とを第1移送量移送した場合(S38:YES)、CPU201は上布151と、下布152とを第1方向401に移送する処理を停止する(S41)。S41では、CPU201は、上布151と、下布152との移送を停止するように、モータ駆動ドライバ206に指示を出力する。供給制御処理は終了する。布接着装置1が図18の供給制御処理を実行することによって、布接着装置1は、付着部431を押圧しないで付着部431を放置することを確実に回避することができる。変形例(3)では、上移送ローラ22と、下移送ローラ25とは、第1方向へ布を移送する機能を備えていればよい。
【0086】
(4)図17の供給制御処理の各処理の実行順序は必要に応じて変更してよい。例えば、CPU201は、S34を実行した後に、S33を実行してもよい。
【0087】
(5)設定テーブルが記憶する条件の種類と、各条件の内容とは、設定処理と、供給制御処理とに応じて、異なっていてもよい。例えば、CPU201が図18の供給制御処理を実行する場合、設定テーブルは第1移送条件のみを記憶してもよい。ROM202以外の記憶装置が、設定テーブルを記憶してもよい。第2移動量は、図14の所定位置以外の位置に基づき設定した値でもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 布接着装置
2 接着機
16 支持部
17 ノズル
18 貯蔵室
20 ローラ保持部
22 上移送ローラ
24 エアシリンダ
25 下移送ローラ
81,82,83,84 供給路
86 吐出口
91 第一モータ
92 第二モータ
93 第三モータ
101 貯蔵室第一ヒータ
102 貯蔵室第二ヒータ
103 ポンプケースヒータ
104 支持部ヒータ
111 貯蔵室温度センサ
112 ポンプ温度センサ
113 支持部温度センサ
122 駆動ギア
123 従動ギア
124 ギアポンプ
201 CPU
202 ROM
209 キー
210 操作パネル
222 位置センサ
225 押圧部
401 第1方向
402 第2方向
431 付着部
432 終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を有するノズルと、
布を前記ノズルに対して第1方向に移送する移送手段と、
前記吐出口から前記布に向けて接着剤の吐出する処理を開始及び停止する吐出制御手段と、
前記ノズルに対して前記第1方向にあり、且つ、前記吐出口から吐出した前記接着剤が前記布に付着した部位である付着部を押圧する押圧手段とを備えた布接着装置であって、
前記吐出制御手段が前記接着剤を吐出する処理を停止したときに、前記移送手段に指示を出力することによって、前記押圧手段が前記付着部の終端部を押圧する位置まで前記布を前記第1方向に移送する第1移送制御手段を備えた布接着装置。
【請求項2】
前記移送手段は、前記布を前記ノズルに対して前記第1方向及び当該第1方向とは逆の第2方向に移送する機能を有し、
前記布接着装置は、
前記押圧手段が前記終端部を押圧した後、前記移送手段に指示を出力することによって、前記吐出口から吐出する接着剤が前記終端部を含む所定範囲の少なくとも一部に付着する所定位置まで、前記布を前記第2方向に移送する第2移送制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記所定位置は、前記吐出口から吐出する接着剤が前記終端部に付着する位置から前記ノズルの大きさに基づき定めた距離だけ前記第1方向に離れた位置であることを特徴とする請求項2に記載の布接着装置。
【請求項4】
前記第1移送制御手段が前記移送手段に出力する移送条件と、前記第2移送制御手段が前記移送手段に出力する移送条件とを組み合わせた条件である組合せ条件を複数記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する前記複数の組合せ条件の中から、1の組合せ条件を特定組合せ条件として特定する特定手段とを備え、
前記第1移送制御手段及び前記第2移送制御手段は、前記特定手段が特定した前記特定組合せ条件に基づき、前記移送手段に指示を出力することを特徴とする請求項2又は3に記載の布接着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−195977(P2011−195977A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62225(P2010−62225)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)