説明

布接着装置

【課題】布接着装置を停止し、再稼働した時にも、布に接着剤の未塗布部分ができるのを防止する布接着装置を提供すること。
【解決手段】使用者が布接着装置に停止を指示した時には、第一ローラ22は反時計回り(矢印D方向)に反転し、ベルト27は、時計回りに回転して接着された上布5及び下布6をベッド7上で矢印E方向に、設定された距離を設定された速度で搬送する。従って、下布6の一部分64はテンション(張力)から解放される。よって、上布5及び下布6はテンションにより移動せず、ノズル17の下部から布の搬送方向下流側には接着剤の未塗布箇所が出来ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融性の接着剤で布と布を接着する布接着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布接着装置は、布を縫糸で縫製する代わりに、接着剤で布と布を接着する装置である(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の接着装置は、液状の接着剤をノズルから直接布に吐出する。接着剤は布に付着する。次に、接着装置は、接着剤が付着した布を移送する。接着装置の押圧部は、接着剤が付着した布の上側にもう1枚の布を合わせた後、外面から加圧しつつ、加熱する。布と布は接着剤によって接着する。布接着装置は、布と布を接着剤で接着することで、縫糸による縫製時に布表面に生じる縫糸の凹凸を無くすことが可能である。布接着装置による加工後の布の表面は平滑である。それ故、布接着装置は、肌ざわりのよい衣服等を作製することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−512129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布接着装置では、伸縮性の高い布を接着する時に、圧着ローラにより移送される布にノズルと下ベルト間の抵抗、接着剤の粘度による抵抗が掛かり、下布が伸ばされる。圧着ローラ停止後、延ばされた下布は搬送方向に縮んでしまい、ノズルの下からずれてしまう。このずれの為に布接着装置が再動作した時に布に接着剤の未塗布部分ができる問題点があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、布接着装置を停止し、再稼働した時にも、布に接着剤の未塗布部分ができることを防止する布接着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明の布接着装置は、対向配置した第一の布及び第二の布の間に接着剤を吐き出して付着させる吐き出し口を備えた棒状のノズルと、前記第一の布を前記ノズルに対して第一方向に搬送する搬送手段と、前記吐き出し口からの接着剤の吐出する処理を開始及び停止する吐出制御手段と、前記ノズルに対して前記第一方向側にあり、且つ、前記吐出口から吐出した前記接着剤が前記布に付着した部位である付着部を押圧し、前記第二の布を前記第一方向に搬送する押圧手段と、前記吐出制御手段が前記接着剤を吐き出す処理を停止した時に、前記第一の布及び前記第二の布を前記第一方向と反対方向である逆方向へ所定量戻すように前記搬送手段及び前記押圧手段を駆動する反転動作処理を行う駆動制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の布接着装置は、請求項1の発明の構成に加えて、前記駆動制御手段は、前記搬送手段及び前記押圧手段を制御して、所定速度で前記第一の布及び前記第二の布を前記逆方向へ前記所定量搬送するようにしてもよい。
【0008】
請求項3の布接着装置は、請求項1又は2の発明の構成に加えて、前記所定量を設定する所定量設定手段と、前記所定速度を設定する速度設定手段とを備えるようにしてもよい。
【0009】
請求項4の布接着装置は、請求項1〜3の何れかの発明の構成に加えて、前記反転動作処理行うか否かを設定するモード設定手段を備るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の布接着装置では、吐出制御手段が接着剤を吐き出す処理を停止したときに、第一の布及び第二の布を第一方向と反対方向である逆方向へ所定量戻すように搬送手段及び押圧手段を駆動する反転動作処理を行うので、布接着装置を停止し、再稼働した時にも、布に接着剤の未塗布部分ができることを防止できる。
【0011】
請求項2の布接着装置では、請求項1の発明の効果に加えて、布の厚みや性質に合わせて所定速度で第一の布及び第二の布を逆方向へ所定量搬送することができる。
【0012】
請求項3の布接着装置では、請求項1又は2の発明の効果に加えて反転動作処理する速度及び量を布の厚みや性質に合わせて任意に設定することができる。
【0013】
請求項4の布接着装置では、請求項1〜3の何れかの発明の効果に加えて、反転動作処理を行いたい時には行うように設定できる。また、布が伸びにくいもので反転動作処理を行いたくない時には行わないように設定できる。従って、布の特性に合わせて反転動作処理を行うか否かを設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】布接着装置1全体の斜視図である。
【図2】接着機2の斜視図である。
【図3】接着機2の正面図である。
【図4】接着機2の左側面図である。
【図5】接着機2の内部構造の斜視図である。
【図6】貯蔵室18、ポンプケース14、支持部16の部分拡大断面図である。
【図7】下移送部37の近傍の斜視図である。
【図8】下移送部37の近傍の左側面図である。
【図9】下移送部37の近傍の正面図である。
【図10】第一位置の下移送部37近傍の左側面図である。
【図11】第二位置の下移送部37近傍の左側面図である。
【図12】布接着装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図13】パラメータの設定処理のフローチャートである。
【図14】反転動作処理のフローチャートである。
【図15】布に接着剤を塗布して接着する処理中の第一ローラ22とベルト27との駆動方向を示す図である。
【図16】反転動作処理をしない時に第一ローラ22とベルト27とを停止した状態の図である。
【図17】反転動作処理をした時の第一ローラ22とベルト27との駆動方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の布接着装置について、図面を参照して説明する。図1〜図4を参照し、本発明の一実施形態の布接着装置1の構成について説明する。以下、図3に示す接着機2のうち紙面上側、下側、右側、左側、表面側、背面側を、夫々接着機2の上側、下側、右側、左側、前側、後側と定義して説明する。布接着装置1では、接着動作の停止時に後述の第一ローラ22とベルト27を所定距離、所定速度で反転動作させて、テンションが掛かっていた布が移動して接着剤の未塗布箇所ができるのを防止する。
【0016】
図1を参照し、布接着装置1全体の構成について説明する。図1に示すように、布接着装置1は、接着機2と、制御ボックス3と、操作パネル210を備えている。接着機2は、対向配置した2層の布の間に接着剤を付着し、布を押圧し移送する。2層の布は、接着機2の前述した動作を経て接着する。接着機2の構成詳細については後述する。
【0017】
接着機2は、テーブル220の上側に固定してある。テーブル220は、接着機2右側に操作パネル210を備える。操作パネル210は、液晶表示部207と、複数のキー209とを備える。液晶表示部207は、各種情報を表示する。キー209は、各種入力をするものである。作業者は、液晶表示部207を見ながらキー209を操作することで、接着機2の各種動作を設定する。
【0018】
テーブル220は、下方に布の移送速度を調整する為のペダル208を備えている。制御ボックス3は、ペダル208の上方且つテーブル220の裏面に設けてある。制御ボックス3は、布接着装置1全体を制御する制御基板を格納する。
【0019】
図2〜図4を参照し接着機2の構成について説明する。図2、図3に示すように、接着機2は、台座部11と、脚柱部12と、アーム部13とを備えている。台座部11は、略直方体状である。脚柱部12は、台座部11右端から鉛直方向に延びている。アーム部13は、脚柱部12上端に接続し、脚柱部12左側面よりも左方に突出している。台座部11は、脚柱部12を支持する土台として機能する。脚柱部12は、アーム部13を支持する。
【0020】
図2に示すように、アーム部13左端部は、前方から順に、ポンプケース14、貯蔵室18、梁部19を支持している。
【0021】
ポンプケース14について説明する。図2、図3に示すように、ポンプケース14は、第一ポンプケース31、第二ポンプケース32を備えている。第一ポンプケース31は、略立方体状の部材である。第一ポンプケース31は、アーム部13の左側面に固定している。第一ポンプケース31は、その内部にギアポンプ124(図5参照)等を備える。ギアポンプ124は、適量の接着剤を高精度でノズル17に供給する。第二ポンプケース32は、略直方体状の部材である。第二ポンプケース32は、第一ポンプケース31左下端面から下方に延びている。
【0022】
第二ポンプケース32は、その左側に軸部45(図3参照)を備えている。軸部45は、支持部16上端右側に接続し、支持部16を揺動可能に支持する。ポンプケース14は、供給路81(図6参照)を備えている。供給路81は、接着剤を貯蔵室18からギアポンプ124へ導く。
【0023】
図2、図3に示すように、支持部16の形状は、略直方体状である。支持部16下端と台座部11の間は、僅かな隙間が存在する。支持部16は、その内部に供給路82(図6参照)を備える。供給路82は、接着剤をポンプケース14からノズル17へ導く。支持部16は、その下端部にノズル17を備えている。ノズル17は、支持部16から布に沿うように左側に延びている。支持部16は、その上端部に駆動伝達部41を備えている。駆動伝達部41は、エアシリンダ24の可動部75下端部を支持する。
【0024】
エアシリンダ24は、エア注入口を備えている。エア注入口には、図示しない吸排気用ホースが接続している。布接着装置1は、エア注入口への圧縮空気の吸気/排気を制御する。エアシリンダ24本体部内にあるピストンの位置は、吸気/排気の制御によって移動する。可動部75は、ピストンに接続している。それ故、ピストンが移動すると、可動部75は前後に移動する。支持部16は、エアシリンダ24の可動部75が前後に移動することで、軸部45を中心軸として前後方向に揺動する。ノズル17は、支持部16の揺動に伴って、布の接着作業を行う時の位置(使用位置)と、保守を行う時の位置(保守位置)とに移動する。
【0025】
ノズル17は円筒形状である。ノズル17は、その下側に接着剤を吐出する吐き出し口(図示略)を備えている。作業者が布の接着作業を行う時、吐き出し口は台座部11と対向する。ギアポンプ124は、支持部16内部の供給路82を介して、接着剤をノズル17に供給する。ノズル17は、吐き出し口から布に接着剤を吐出する。接着剤は、ノズル17下方に位置する布の表面に付着する。
【0026】
図2、図3、図6に示すように、支持部16は、前側にバルブ開閉シリンダ49を備えている。バルブ開閉シリンダ49は、供給路82(図6参照)を遮断するためのバルブ55(図6参照)を開閉する。バルブ開閉シリンダ49の動作は、制御ボックス3内のCPU200(図12参照)が制御する。
【0027】
図2、図3に示すように、貯蔵室18は、略直方体状である。貯蔵室18は、アーム部13左側、且つポンプケース14後方部分から上方に延びている。貯蔵室18は、本体部46、蓋部47、蓋軸部48を備える。本体部46の形状は、その上部が開口した有底筒状である。蓋部47は、本体部46上部開口を覆う。本体部46は、その上端に蓋軸部48を有する。蓋軸部48は、蓋部47を開閉可能に支持する。貯蔵室18は、熱溶融性の接着剤(図示略)を本体部46内部に貯蔵する。貯蔵室18は、貯蔵した接着剤を、必要に応じてギアポンプ124を介してノズル17に供給する。熱溶融性の接着剤は、所定の温度に加熱すると液化し、該所定の温度より低い温度では、固化するものである。
【0028】
図2に示すように、梁部19は、本体部51、シリンダ支持部53、柱部52を備えている。本体部51は、アーム部13左側後端部から左方へ水平方向に延びる部材である。シリンダ支持部53は板状であり、本体部51左側端部から前方へ水平方向に延びる。図2、図4に示すように、柱部52は、水平面に対して約45度の角度で、本体部51から前方斜め下方に延びている。柱部52下端部は、台座部11から離れている。
【0029】
図2に示すように、シリンダ支持部53前方先端部にエアシリンダ21の本体部が設けてある。エアシリンダ21は、エア注入口を備えている。エア注入口には、図示しない吸排気用ホースが接続している。布接着装置1は、エア注入口への圧縮空気の吸気/排気を制御する。エアシリンダ21の本体部内にあるピストンの位置は、吸気/排気の制御によって移動する。可動部15は、ピストンに接続している。ピストンが移動すると、可動部15は上下に移動する。柱部52は、その下端部左側に左右に延びる軸部62を有している。軸部62は、ローラ保持部20後端部を支持している。ローラ保持部20は、軸部62を揺動中心として、その前端部を上下方向に揺動する。本体部51は、シリンダ支持部53よりも右側にエアシリンダ24を備えている。エアシリンダ24は、支持部16の位置を切り替えるものである。
【0030】
ローラ保持部20について説明する。ローラ保持部20前端部は、円柱状の第一ローラ22を回転可能に支持している。第一ローラ22は、支持部16から延びたノズル17の後方近傍にある。
【0031】
ローラ保持部20は、その中央からやや前方上面に、軸支持部33を有する。軸支持部33は、可動部15下端部に接続している。
【0032】
図2に示すように、台座部11は、第一ローラ22下方部分及びノズル17下方部分に穴部26を設けてある。台座部11内のベルト27の一部は、穴部26から上方に僅かに突出している。ベルト27は、接着機2の前方から後方に移動する。ベルト27は、布を前方から後方に移送する。
【0033】
エアシリンダ21のピストンが移動することで、第一ローラ22とベルト27との間の隙間は変化する。図4に示すように、ローラ保持部20は、可動部15が下方に移動した状態で、前方斜め下に傾斜している。故に、第一ローラ22とベルト27との間の隙間は小さい。ローラ保持部20は、可動部15が上方に移動した状態で略水平になる。故に第一ローラ22とベルト27との間の隙間は大きくなる。
【0034】
図5を参照し、接着機2の内部構造について説明する。接着機2は、その内部に第一モータ91、第二モータ92、第三モータ93、下移送部37等を備える。
【0035】
第一モータ91は、回転軸121を介して回転駆動力をギアポンプ124に伝達することで、ギアポンプ124を駆動する。ギアポンプ124は、駆動ギア122と、従動ギア123とを備えている。駆動ギア122は、回転軸121左側端部に固定している。駆動ギア122は、回転軸121と共に回転する。従動ギア123は、駆動ギア122と噛合する。第一モータ91は、アーム部13内部に、且つポンプケース14がアーム部13と接続する部分の右方に位置する。回転軸121は、ポンプケース14内を第一モータ91の回転軸から左方に延びる。駆動ギア122と従動ギア123とは、適量の接着剤をノズル17に供給する。
【0036】
第二モータ92は、回転軸126、127、128、及びベルト129、130を介して、回転駆動力を第一ローラ22に伝達することで、第一ローラ22を駆動する。第二モータ92は、アーム部13内部に、且つ梁部19がアーム部13と接続している部分の右方に位置する。
【0037】
回転軸126は、第二モータ92の回転軸から左方に延び、本体部51内を貫通している。回転軸126左端部は、柱部52内に位置する。回転軸126左端部は、プーリを支持している。回転軸127右端部は、柱部52下端部内に延びている。回転軸127左端部は、ローラ保持部20後端部内に延びている。回転軸127右端部と左端部は、夫々プーリを支持している。回転軸128は、第一ローラ22の回転軸である。回転軸128左端部は、ローラ保持部20前端内部に延び、プーリを支持している。回転軸128右端部は、ローラ保持部20前端部から突出し、第一ローラ22を支持している。ベルト129は、柱部52内で、回転軸126左端部のプーリと回転軸127右端部のプーリとの間に掛け渡してある。ベルト130は、ローラ保持部20内で、回転軸127左端部のプーリと回転軸128左端部のプーリとの間に掛け渡してある。第一ローラ22は、第二モータ92が回転することで回転する。
【0038】
第三モータ93は、台座部11内の右方に設けてある。第三モータ93は、回転軸141とベルト142とを介して、回転駆動力を第一プーリ25に伝達することで、第一プーリ25を回転する。回転軸141は、第一プーリ25の回転軸である。回転軸141は、台座部11内を右方に延びる。回転軸141右端部は、プーリを支持している。台座部11は、その内部に支持台座4を有する。支持台座4は、回転軸141を回転可能に支持している。ベルト142は、台座部11内で、第三モータ93の回転軸のプーリと、回転軸141右端部のプーリとの間に掛け渡してある。第一プーリ25は、第三モータ93が回転することで回転する。
【0039】
図7〜図9を参照し、下移送部37について説明する。図7の右上、左下、左上、右下は、夫々下移送部37の前側、後側、右側、左側に相当する。下移送部37は、第一プーリ25、第二プーリ28、プーリ支持部100、ベルト27、ばね106を備えている。プーリ支持部100は、第二プーリ28を回転可能に支持する。ベルト27は、歯付ベルトである。第一プーリ25及び第二プーリ28の形状は円柱形である。第一プーリ25は、第一ローラ22下方に設けてある。第二プーリ28は、ノズル17の下方斜め前方に設けてある。
【0040】
図7に示すように、プーリ支持部100は、左側面板部101、右側面板部111、架設部108を備えている。板状の左側面板部101は、第一プーリ25と第二プーリ28との左側にある。板状の右側面板部111は、第一プーリ25と第二プーリ28との右側にある。架設部108は、左側面板部101と右側面板部111との間を繋いでいる。
【0041】
左側面板部101は、支持凸部102、輪部103、ばね凸部104を備える。円形板状の輪部103は、第一プーリ25の左端面に平行に位置する。輪部103の中心は、第一プーリ25の回転軸中心と同一位置にある。輪部103は、その中心部分に穴を備える。第一プーリ25の回転軸141は、該穴に挿通している。ばね凸部104は、輪部103後方において水平方向に延びている。支持凸部102は、輪部103前方斜め上約45度の方向に延びている。
【0042】
右側面板部111は、左側面板部101と略同一形状である。右側面板部111は、支持凸部112、輪部113、ばね凸部114を備える。ばね凸部114の前後方向長さは、ばね凸部104の前後方向長さと比較して僅かに長い。輪部113は、その中心部分に穴を備える。第一プーリ25の回転軸141は、該穴に挿通している。
【0043】
支持凸部102と支持凸部112は、夫々その前端部分に穴を有している。第二プーリ28の回転軸は、該穴に挿通している。支持凸部102及び支持凸部112は、第二プーリ28を回転可能に支持している。架設部108は、ばね凸部104後端から右方に延びてばね凸部114に接続する。
【0044】
図7、図8に示すように、第一プーリ25と第二プーリ28には、ベルト27が掛け渡してある。ベルト27は、第一プーリ25が回転することで回転する。
【0045】
エアシリンダ105は、架設部108下方に設けてある。エアシリンダ105は、エア注入口を備えている。エア注入口には、図示しない吸排気用ホースが接続している。布接着装置1は、エア注入口への圧縮空気の吸気/排気を制御する。エアシリンダ105内にあるピストンの位置は、吸気/排気の制御に基づいて移動する。可動部58は、ピストンに接続している。それ故、ピストンが移動すると、可動部58は上下に移動する。可動部58は、架設部108に当接可能である。
【0046】
ストッパ107は、ばね凸部114下方に設けてある。ストッパ107は、棒状である。ストッパ107は、支持台座4から鉛直方向に延びている。ストッパ107は上端にストッパネジがねじ込んである。ストッパ107はストッパネジのねじ込み量を変化させて上下方向の長さを変えることができる。ストッパ107は、ばね凸部114後端部と当接可能である。
【0047】
図7に示すように、ばね106は、ストッパ107前方に設けてある。ばね106下端部は、支持台座4に接続している。ばね106上端部は、ばね凸部114右側面、且つばね凸部114前後方向略中央部分に接続している。ばね106は、ばね凸部114を引き下げる。プーリ支持部100は、回転軸141を軸として揺動する。支持凸部102及び支持凸部112は、ばね106の付勢力に基づいて上昇する。その結果、第二プーリ28は上側に移動する。
【0048】
図8に示すように、ベルト27の一部は、台座部11の穴部26(図2参照)から上方に僅かに突出している。可動部58は、上下方向に移動し、プーリ支持部100の揺動量を調整する。ストッパ107は、上下方向の長さを変え、プーリ支持部100の揺動量を調整する。可動部58及びストッパ107は、ベルト27の前方部分の上方への移動量を調整できる。
【0049】
図10、図11を参照し、接着作業時における第一ローラ22及び下移送部37の近傍の様子について説明する。図10は第一位置を示している。図11は第二位置を示している。第一位置では、エアシリンダ105の可動部58を下方に移動して、ベルト27前方部分を上方に移動している。第一位置では、ベルト27とノズル17とで下布152を挟んでいる。第二位置では、エアシリンダ105の可動部58を上方に移動して、ベルト27前方部分を下方に移動している。第二位置では、ノズル17と下布152とが離隔する。
【0050】
図12を参照し、布接着装置1の電気的構成について説明する。布接着装置1は、CPU200、ROM201、RAM202、記憶装置203を備えている。CPU200は、受信処理、制御処理を実行する。受信処理は、キー209、ペダル208等から入力情報を受信する処理である。制御処理は、モータ等を制御する処理である。
【0051】
ROM201は、CPU200が実行するプログラム、各種初期設定パラメータ等を記憶する。RAM202は、タイマ値、カウンタ値、フラグ等を一時的に記憶する。記憶装置203は、作業者が入力する各種設定情報やフラグ等を記憶するハードディスクやフラッシュメモリ等から構成された不揮発メモリである。
【0052】
CPU200は、ROM201、RAM202、記憶装置203に夫々電気的に接続している。CPU200は、ROM201、RAM202、記憶装置203の記憶領域にアクセスできる。
【0053】
ペダル208は、CPU200と電気的に接続している。作業者は、布の移送速度を調節する時にペダル208を使用する。CPU200は、ペダル208の踏み込み量を認識することができる。CPU200は、認識したペダル208の踏み込み量に比例して、第一ローラ22と第一プーリ25との回転速度、駆動ギア122の回転速度を決定する。
【0054】
キー209は、CPU200と電気的に接続している。作業者は、各種動作設定を行う時にキー209を使用する。CPU200は、作業者によるキー209の押下状態を認識する。CPU200は、認識したキー209の押下状態に基づいて、各種動作設定の情報を記憶装置203に記憶する。
【0055】
表示駆動ドライバ205は、CPU200と電気的に接続している。表示駆動ドライバ205は、液晶表示部207と電気的に接続している。CPU200は、表示駆動ドライバ205を介して所望の情報を液晶表示部207に表示する。
【0056】
モータ駆動ドライバ206は、CPU200と電気的に接続している。モータ91〜93は、夫々モータ駆動ドライバ206と電気的に接続している。CPU200は、モータ駆動ドライバ206を介してモータ91〜93を制御する。
【0057】
エア駆動ドライバ204は、CPU200と電気的に接続している。エア駆動ドライバ204は、エアシリンダ21、24、105、バルブ開閉シリンダ49と電気的に接続している。CPU200は、エア駆動ドライバ204を介して、エアシリンダ21、24、105、バルブ開閉シリンダ49のエア注入口に送り込む空気圧力を制御する。第一ローラ22は、エアシリンダ21の動作に基づいて、上下方向に移動する。支持部16は、エアシリンダ24の動作に基づいて、使用位置と保守位置とに移動する。第二プーリ28は、エアシリンダ105の動作に基づいて、上下方向に移動する。バルブ55は、バルブ開閉シリンダ49の動作に基づいて、上下方向に移動する。
【0058】
図13、図14を参照し布接着装置1の反転動作処理について説明する。図13は反転動作処理のパラメータの設定処理のフローチャートである。図14は作業者がペダル208を離して一時停止する時の反転動作処理のフローチャートである。図13、図14のフローチャート実行するプログラムはROM201に記憶され、CPU200が実行する。反転動作処理は布接着装置1が接着動作中に停止した時に、布にかかっていたテンションにより布がノズル17の下から移動して、次に接着動作を再開した時に接着剤の未塗布部分ができないようにするための処理である。
【0059】
図13を参照して、反転動作処理のパラメータの設定処理ついて説明する。使用者がキー209を操作して反転動作のパラメータの設定処理を選択すると、CPU200は反転動作処理の実施設定になっているか否かを判断する(S11)。この判断は記憶装置203に記憶されている実施設定フラグにより行う。実施設定フラグが「0」(OFF)の時は実施設定になっていないので(S11:NO)、反転動作処理の実施設定をするか否かを判断する(S12)。この判断は、液晶表示部207に実施設定にするか否かを尋ねる画面を表示し、使用者がキー209を操作して実施設定を選択し、キー209の設定キー(図示略)を押下した時にYESと判定される(S12:YES)。使用者がキー209を操作して実施設定を選択しなかった時は(S12:NO)、パラメータ設定を終了する。
【0060】
実施設定をする時には(S12:YES)、実施設定フラグを「1」(ON)にして記憶装置203に記憶する(S13)。次いで、反転動作処理をする時の速度を設定する(S14)。この速度設定処理では、反転動作する時の第一ローラ22及びベルト27を戻す速度(布を戻す速度)を設定する。一例として、液晶表示部207に反転動作速度の初期値:5.0m/分を表示し、使用者がキー209を操作して増減させて記憶装置203に記憶させる(S14)。設定できる速度の範囲は、0.5m/分から10.0m/分である。
【0061】
速度設定処理(S14)に次いで、反転動作の距離設定処理を行う(S15)。この距離設定では、反転動作する時の第一ローラ22及びベルト27を戻す距離を設定する。一例として、液晶表示部207に反転動作距離の初期値:1.5mmを表示し、使用者がキー209を操作して増減させて記憶装置203に記憶させる(S15)。設定できる距離の範囲は、0.5mmから5.0mmである。距離設定処理(S15)が終了すると、パラメータの設定処理は終了する。
【0062】
尚、S11の判断処理で実施設定フラグが「1」(ON)の時は反転動作を行う実施設定になっているので(S11:YES)、反転動作を行わない未実施設定にするか否かを判断する(S18)。この判断は、液晶表示部207に未実施設定にするか否かを尋ねる画面を表示し、使用者がキー209を操作して未実施設定を選択し、設定キーを押下した時にYESと判定される(S18:YES)。未実施設定にすると判断された時は(S18:YES)、実施設定フラグを「0」(OFF)にして記憶装置203に記憶する(S16)。その後、パラメータ設定処理を終了する。使用者がキー209を操作して未実施設定を選択しなかった時は(S18:NO)、実施設定処理(S13)、速度設定処理(S14)、距離設定処理(S15)を行い、パラメータの設定処理を終了する。
【0063】
次いで、図14に示す反転動作のフローチャートを参照して、反転動作処理を行う時と行わない時の動作を説明する。この反転動作処理では、使用者がペダル208を戻し布接着装置1に停止を指示したか否かを判断する(S31)。使用者がペダル208を戻した時には(S31:YES)、接着動作が停止なので反転動作を行う実施設定になっているか否かを判断する(S32)。記憶装置203が実施設定フラグ「1」(ON)を記憶している時には(S32:YES)、CPU200が記憶装置203からパラメータ設定処理で設定した第一ローラ22及びベルト27を戻す距離を読み込む(S33)。次いで、CPU200がモータ駆動ドライバ206を制御して、第二モータ92及び第三モータ93を逆回転させて第一ローラ22及びベルト27をS33で読み込んだ距離だけ読み込んだ速度で戻す(S34)。その後、反転動作処理を終了する。尚、記憶装置203が実施設定フラグ「0」(OFF)を記憶している時には(S32:NO)、反転動作を行わない。尚、使用者がペダル208を戻さない場合には(S31:NO)、S31に戻る。
【0064】
次に、図15〜図17を参照して、反転動作を行わない時(図16)と行う時(図17)の第一ローラ22及びベルト27の動作状態について説明する。図15の如く、布に接着剤を塗布して接着する接着動作中は、第一ローラ22は時計回り(矢印A方向)に回転し、ノズル17の上を越えた上布5を矢印B方向に搬送する。ベルト27は、反時計回りに回転して下布6をベッド7上で矢印C方向に搬送する。このとき、下布6の点線部分61にはテンション(張力)が掛かっている。
【0065】
次いで、使用者がペダル208を戻し、布接着装置1に停止を指示した時には、図16の如く、第一ローラ22及びベルト27は停止する。反転動作を行わない時は、図16の如く、テンション(張力)が掛かっていた部分63は、ノズル17の下から移動し、ノズルの位置から布の搬送方向下流側(図16に於ける左側)に接着剤の未塗箇所が生じる。
【0066】
これに対して、反転動作を行う時は、使用者が布接着装置1に停止を指示した時には、図17の如く、第一ローラ22は反時計回り(矢印D方向)に反転し、ベルト27は、時計回りに回転して接着された上布5及び下布6をベッド7上で矢印E方向に、設定された距離を設定された速度で搬送する。従って、下布6の一部分64はテンション(張力)から解放される。よって、上布5及び下布6はテンションにより移動せず、ノズル17の下部から布の搬送方向下流側には接着剤の未塗布箇所が出来ない。また、反転動作処理の速度及び距離も布の厚みや性質に合わせて設定できる。また、反転動作処理を行うか否かも設定できる。
【0067】
上記実施の形態では、ノズル17は「ノズル」の一例である。下布6は「第一の布」の一例である。上布5は「第二の布」の一例である。ベルト27は「搬送手段」の一例である。第一ローラ22は「押圧手段」の一例である。CPU200、モータ駆動ドライバ206、第一モータ91は「吐出制御手段」の一例である。CPU200、モータ駆動ドライバ206、第二モータ92、第三モータ93は「駆動制御手段」の一例である。図13のS14の処理を実行するCPU200が「速度設定手段」の一例である。図13のS15の処理を実行するCPU200が「所定量設定手段」の一例である。図13のS13及びS16の処理を実行するCPU200が「モード設定手段」の一例である。
【0068】
本発明は上記実施形態に限られず各種の変形が可能である。例えば、反転動作で設定する速度及び距離の上記数値は一例であり、布の厚みや種類に応じて、適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 布接着装置
2 接着機
22 第一ローラ
27 ベルト
91 第一モータ
92 第二モータ
93 第三モータ
200 CPU
201 ROM
202 RAM
203 記憶装置
206 モータ駆動ドライバ
207 液晶表示部
208 ペダル
209 キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置した第一の布及び第二の布の間に接着剤を吐き出して付着させる吐き出し口を備えた棒状のノズルと、
前記第一の布を前記ノズルに対して第一方向に搬送する搬送手段と、
前記吐き出し口からの接着剤の吐出する処理を開始及び停止する吐出制御手段と、
前記ノズルに対して前記第一方向側にあり、且つ、前記吐出口から吐出した前記接着剤が前記布に付着した部位である付着部を押圧し、前記第二の布を前記第一方向に搬送する押圧手段と、
前記吐出制御手段が前記接着剤を吐き出す処理を停止した時に、前記第一の布及び前記第二の布を前記第一方向と反対方向である逆方向へ所定量戻すように前記搬送手段及び前記押圧手段を駆動する反転動作処理を行う駆動制御手段と
を備えたことを特徴とする布接着装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記搬送手段及び前記押圧手段を制御して、所定速度で前記第一の布及び前記第二の布を前記逆方向へ前記所定量搬送することを特徴とする請求項1に記載の布接着装置。
【請求項3】
前記所定量を設定する所定量設定手段と、
前記所定速度を設定する速度設定手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の布接着装置。
【請求項4】
前記反転動作処理行うか否かを設定するモード設定手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の布接着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−67913(P2013−67913A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207472(P2011−207472)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)