説明

布類投入機における布類の乱れ除去方法

【課題】包布やシーツのようなリネン製品その他の布類に発生している皺やめくれなどの乱れを確実に除去できるようにする。
【解決手段】布類を工程に投入するために、正面に布類を吊下げて左右方向へ展開する展開クランプを有する布類投入機において、布類に生じている乱れを除去する方法として、布類を吊り下げた状態とし、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも一方向へ揺動させ、布類を揺さぶることで布類に生じている乱れを揺動除去し、揺動除去の前後又は揺動除去と同時並行的に、布類に対して下部から気流を作用させることで布類に生じている乱れを除去することを特徴とする
布類投入機における布類の乱れ除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布類を工程に投入するために、その正面に布類を吊下げて左右方向へ展開する展開クランプを有する布類投入機において、布類に生じている乱れを除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるリネンサプライ業では、例えば、包布やシーツのようなリネン製品その他の布類を顧客先から回収し、洗濯、アイロン掛け、折り畳み等の処理工程を経た後、商品として配送するサービスが繰り返される。処理工程には投入機から布類を投入するが、投入される布類に皺(しわ)やめくれなどの乱れの存在しないことが望まれる。乱れの存在する布類が折り畳み機に投入されると、乱れたまま折り畳まれるのでサービス品質の低下につながるとともに、乱れの状態や個所によっては折り畳みの障害にもなるなど、様々な不都合を生じることになる。特に包布など2重の品物は、張り付いて乱れを生じやすい。
【0003】
このため、布類を工程に投入する際には、布類に生じている乱れを除去する作業を十分に慎重に行なう必要がある。投入される布類の乱れを整形する作業は、従来、専ら人手に頼っており、熟練した作業者であれば、乱れの状態や箇所等を瞬時に判断して対応することができる。しかし、熟練者ばかりとは限らず、未熟練者には負担の大きい作業者であるので、疲労が重なると様々な問題も発生して来る。例えば、注意力の低下により不十分な作業が増え、見逃しが起こり、或いは作業者の行なった行為により、却って皺やめくれなどが誘発されるという問題も起こり得る。
【0004】
これに対し、先行技術には例えば特開2005−58414号があり、1辺が開口部になった包布類を、その開口部を振ることによってずれやしわを修正する発明を開示している。同号の発明は、表裏の布が張り付くという包布に特有の問題を解決することを目的とするが、布類一般に生じているしわや乱れの除去を目的とするものではない。また、特開2005−312478号は額縁包布を対象として、その額縁構造特有の乱れを確実かつ容易に整姿状態とすることを目的としたものである。従って、これも布類一般に生じているしわや乱れの除去を保証するものではない。なお、上記の先行技術は本件発明の出願人によるもので、他に類似の発明を見出すことはできなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−58414号
【特許文献2】特開2005−312478号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、例えば、包布やシーツのようなリネン製品その他の布類に発生している皺やめくれなどの乱れを確実に除去できるようにすることである。また、本発明の他の課題は、布類に対して上部と下部の両方から乱れ除去のための動作を重複的に付与し、布類に生じている乱れを確実に除去することが可能な布類投入機における布類の乱れ除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、布類を工程に投入するために、正面に布類を吊下げて左右方向へ展開する展開クランプを有する布類投入機において、布類に生じている乱れを除去する方法であって、布類を吊り下げた状態とし、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも一方向へ揺動させ、布類を揺さぶることで布類に生じている乱れを揺動除去し、揺動除去の前後又は揺動除去と同時並行的に、布類に対して下部から気流を作用させることで布類に生じている乱れを除去するという手段を講じたものである。
【0008】
本発明の乱れ除去方法は、布類を工程に投入するための布類投入機について実施するものである。現行の布類投入機は、正面に布類を吊下げて左右方向へ展開する展開クランプを有している。展開クランプは、布類の先端部(この場合、吊り下げであるから上端部になる。)を挟んで、或いは摘んで保持するが、クランプによる保持方向は、上方から下方(縦方向)、左右から布類の中心部の方向(横方向)などがある。
【0009】
本発明の乱れ除去方法では、布類を吊り下げた状態とし、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも一方向へ揺動させ、布類を揺さぶることで布類に生じている乱れを揺動除去する。この展開クランプの揺動動作は、吊り下げている布類の上部に対して加えられる作用である。展開クランプを用いて布類を揺らせ、それによって乱れを除去するという思想及び構成はこれまでに存在が確認されていない。従って、展開クランプ自体を揺動させることによって布類を揺らせ、乱れを除去する点は本発明の一つの特徴を構成する。
【0010】
本発明の乱れ除去方法には、もう一つの要件として、布類に対して下部から気流を作用させ、それによって布類に生じている乱れを除去することが加えられる。気流を作用させる要件は、揺動除去の前又は後若しくは揺動除去と同時平行的に実施することができる。布類に対する、気流を用いた揺動作用によるしわ除去動作を、布類の下部にて実行することは、本発明のもう一つの特徴である。布類に作用させる気流は、主として吸引気流又は噴射気流であり、このどちらも適用することが可能である。
【0011】
揺動除去と気流による除去の要件を実施するには、前記のように3通りのケースが考えられ、かつ、何れも実施可能である。現在主流の布類投入機によれば、布類投入機の正面に展開機構を配置したものが一般的であるが、本発明を現在主流の布類投入機に適用する場合、揺動除去を先にし、気流による除去を後にする方法が好都合である。しかし、このことは、本発明を上記のケースに限定するものではないことは上記したとおりである。
【0012】
より具体的な本発明の乱れ除去方法としては、布類投入機の正面に展開機構を有し、展開機構は布類を吊下げて左右方向へ展開する少なくとも左右一対の展開クランプを有し、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向へ動作させ、展開クランプに吊り下げられている布類を前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも一方向へ揺さぶることで、揺動除去によるしわ除去作用を行い、布類投入機の正面下部に上部が開口した吸引手段を設けて、しわ除去作用を受けた布類に対して下方への吸引気流を作用させ、布類を下方へ吸引することで布類に生じている乱れを除去するという構成を取ることができる。
【0013】
展開クランプを用いて布類を揺らせ、それによって乱れを除去するという要件は、吊り下げている布類に対して上部から加えるもので、作業者が手作業で布類のしわを除去する際に取る動作に似ており、これによって布類をほぐしたりならしたりして布類全体の性質などを平均的にする効果が期待される。もう一つの、布類に対して下部から気流を作用させ、それによって布類に生じている乱れを除去するという要件は、揺さぶられ乱れが除去されている布類に下方への吸引力を加えることで、引き延ばすとともに布類全体の平均化をさらに高め、布類の乱れが最終的に除去された状態にする効果がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、例えば、包布やシーツのようなリネン製品その他の布類に対する揺動除去及び気流の振動による振動除去作用を加えることで、布類に発生している皺やめくれなどの乱れを確実に除去できるようにすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、布類に対して上部と下部の両方から乱れ除去のための動作を重複的に付与し、布類に生じている乱れを確実に除去することが可能な布類投入機における布類の乱れ除去装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施形態により本発明を詳細に説明する。本発明は、布類Wを工程に投入するために、正面に布類Wを吊下げて左右方向へ展開する展開クランプを有する布類投入機において、布類Wに生じている乱れを除去する方法である。展開クランプは、後述するように布類投入機の正面上部に設置されている展開機構に装備されている。展開機構が布類投入機の正面上部に設置されることは、展開クランプによって布類Wを吊り下げるという本発明の構成に基づく必然的な要求である。また、本発明は、布類Wに対して下部から気流を作用させる構成を取るので、上位の展開クランプに対し、下位にて気流作用を加えることは合理的な要件の組み合わせと言える。
【0016】
ここで、本発明の布類投入機における布類の乱れ除去方法の作業手順について、段階を追って開示すると以下のとおりとなる。
S1: 開始(簡易整形)
S2: 布類の投入クランプへの取り付け
S3: スタートボタン・オン
S4: 投入クランプ上昇
S5: 投入クランプから展開クランプへの預け渡し
S6: 展開クランプ位置合わせ
S7: 布類先端の水平化(展開クランプを移動)
S8: しわ取り
S9: 再度布類先端の水平化
S10: 受け渡し機構前進
S11: 受け部との間で布類を挟む
S12: 布類先端部の受け渡し機構への預け渡し(簡易整形)
S13: 布類後端の吸引ボックスへの引き込み
S14: 受け渡し機構の後退
S15: 受け渡し機構から投入コンベアへの移載
S16: 布類の次工程への投入
【0017】
上記作業手順において、ステップS1とステップS12に、簡易整形とあるのは、例えば、布類Wの下部を広げたり、包布内部に空気を入れて、張り付いた箇所を剥がしたりするような作業のことであり、作業者による軽作業を指している(図2参照)。その後、布類投入機に備わっているスタートボタンを押すことで、ステップS4以降の作業が、所定のシーケンスにしたがって、順次自動的に進行する。即ち、布類Wは投入クランプから展開クランプに預け渡され、展開クランプは布類Wを吊り下げて左右へ開き、ステップS7にて上辺がほぼ直線に近付けるように緊張させられるとともに、揺動除去による乱れの除去工程が実行に移される(ステップS8)。上記揺動除去によって布類Wをほぐしたりならしたりすることで、布類全体の性質などを平均的にし、しわやめくれなどの乱れが除去される。次いで、布類Wは投入工程へ移行するがその過程のステップ13において、布類の後端部(下部)に吸引気流を作用させ、引き延ばすとともに布類全体の平均化がさらに高められる。この整形処理の後、布類Wは投入コンベアに投入される。
【0018】
このような本発明に係る布類の乱れ除去方法は、前述したように布類投入機を使用して実施することができる。そこで、本発明の乱れ除去方法を適用する布類投入機について、図1〜図5を参照して説明しておく。図示の布類投入機10は投入機正面に設置された左右及び中央の3箇所に投入機構12を具備しており、夫々の投入機構12に布類Wの左右端部を保持する、左右一対の投入クランプ11が設けられている。図示の布類投入機10の操作のために、3箇所の投入機構12に操作盤12aが夫々設置されている。
【0019】
投入機構12には周回式移送装置13が設けられ、投入クランプ11は周回式移送装置13によって、作業者Pに近い下部から、展開機構15に近い上部まで移送される。周回式移送装置13は、下部回転輪13aと上部回転輪13b及びこれらに掛け回した周回索13cから成り、投入クランプ11は上記周回索13cに複数個ずつ取り付けられている(図2等参照)。投入クランプ11は保持レバー11aを有し、そのカム輪11bが、後述する固定側のガイド片19bと係合することで、保持している布類Wが離されるように構成される。
【0020】
周回式移送装置13によって上方へ移送される布類Wを受け取るために、布類Wを吊下げて左右方向へ展開する展開機構15が投入コンベア14の正面上部に設置されている。展開機構15は、布類Wを左方向へ展開する展開クランプ16Lと、右方向へ展開する展開クランプ16Rとを具備し、展開クランプ16L、16Rは、周回式移送装置13によって移送されて来た、布類Wを投入クランプ11から受け取るように構成されている。即ち、投入クランプ11は周回軌道を有しているが、展開クランプ16L、16Rは左右方向の展開軌道を有し、周回軌道と展開軌道の交差点付近にて布類の授受が行なわれる。
【0021】
上記布類Wの授受構成については図3、図4に詳細に記載されており、図中、符号20はモノレール式の展開機構を示している。この展開機構20は、上下の転輪17、17を有する車台を備えており、転輪17、17が投入コンベア14の正面上部に、左右方向に設置されている展開レール18の上下端部を移動するように構成されている。展開クランプ16L、16Rは、この車台の前部に取り付けられ、下向きに開閉可能な前後一対の挟持片19、19′から成り、一対の挟持片19、19′は開閉軸19aによって開閉可能に結合されている。図示の場合は一方の挟持片19のみが開閉し、他方の挟持片19′は固定の構造である。かくして、展開クランプ16L、16Rは開いた状態で待機し、周回軌道を上昇して来る投入クランプ11から、布類Wを受け取りその後閉じて展開のために移動するという動作を繰り返す。
【0022】
布類投入機10は、上記の如き構成によって、その正面に展開機構20を用いて布類Wを吊り下げ、左右方向へ展開することができるが、本発明に係る布類の乱れ除去方法は、上記展開機構20を利用して、布類Wの左方向への展開を担当する展開クランプと右方向への展開を担当する展開クランプとを制御する。ここでは便宜上、展開クランプ16Lが布類Wの左方向への展開を担当し、展開クランプ16Rが布類Wの右方向への展開を担当する。なお、展開クランプ16L、16Rに渡された布類Wは広げられながら投入コンベア14と中心を合わせられ、上辺がほぼ水平になる位置に配置したセンサーSを用いて布類投入機10の正面に展開される(図6、図7参照)。
【0023】
<揺動除去のための装置構成>
そして、本発明に係る布類の乱れ除去装置では、展開クランプ16L、16Rを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも1方向へ揺動させることで布類に生じている乱れを揺動除去するために、各展開クランプ16L、16Rに展開クランプ揺動手段を具備している。展開クランプ揺動手段としては様々な実施形態を取り得る。実施形態の第1の例は、展開クランプ16L、16Rを夫々左右方向へ移動させる展開クランプ移動手段21と、上記展開クランプ移動手段21の動作を制御する移動手段制御部22とを具備して構成され、上記移動手段制御部22が、展開クランプを左右方向へ揺動させる展開クランプ揺動手段を兼ねているというものである。
【0024】
実施形態の第1の例は図8Aに示されており、展開クランプ移動手段21は、左展開クランプ16Lを取り付けた移動索23a、それを掛け回した駆動輪23b、従動輪23cから成る移動機構23及び駆動源24Lのモーター並びに右展開クランプ16Rを取り付けた移動索25aとそれを掛け回した駆動輪25b、従動輪25cから成る移動機構25及び駆動源24Rのモーターから成る。上記移動手段制御部22は駆動源24L、24Rのモーターに接続されており、モーターの回転方向と回転速度を制御する所定の動作プログラムによって構成される。動作プログラムは、例えば、緊張力と弛緩力、それらの力を加えるべき周期とストローク、回数(動作時間)等、布類Wに加える力に関する幾つかのパラメーターを選択して構成する。
【0025】
実施形態の第1の例の場合、布類Wの最終広げ完了後、センサーSの信号により、所定のシーケンスにしたがって、布類Wの左右両端部を挟持している展開クランプ16L、16Rが夫々左右外方に移動すると緊張力が加わり、展開クランプ16L、16Rが夫々左右内方に移動すると弛緩力が加わるので、布類Wは左右に揺さぶられることになる。展開クランプ16L、16Rの揺さぶりの動作については、上記のパラメーターの実行パターンをプログラム制御することによって、任意に選択することができ、従って、布類Wに生じている皺やめくれ等の乱れを除去することができる。
【0026】
図8Bは図8Cに示した第1の例の変形例であり、展開クランプ移動手段21が、ループ状の一条の移動索26aとそれを掛け回した一組の駆動輪26b及び従動輪26cを有する移動機構26から成るものである。その移動索26aの平行する部分に、左右の展開クランプ16L、16Rが夫々取り付けられ、移動手段制御部22は駆動源24のモーターに接続されている。モーターの回転方向と回転速度を制御する所定の動作プログラムによって構成され、動作プログラムは、上記緊張力と弛緩力、それらの力を加えるべき周期とストローク、回数(動作時間)等、布類Wに加える力等をパラメーターとして構成することができる。
【0027】
変形例の場合、モーターを或る方向に回転させると、左右の展開クランプ16L、16Rが外方へ移動して布類Wに緊張力が加わり、モーターを上記と逆方向に回転させると、左右の展開クランプ16L、16Rが内方へ移動して布類Wに弛緩力が加わり、布類Wは左右に揺さぶられることになる。この場合も上記のパラメーターの実行パターンをプログラム制御することによって、任意に選択可能であり、布類Wに生じている皺やめくれ等の乱れを揺動除去により除去することができる。なお、この変形例の装置では、布類Wの動きが広げるか閉じるかになるため、布類Wは中央の投入機構12から投入される。
【0028】
図9A〜図9Cに本発明の乱れ除去方法を適用する装置の実施形態の第2の例を示す。図9Aは布類Wを前後方向及び上下方向に揺さぶる例である。展開クランプ16L、16Rは、布類Wを挟持するために下部に設けた前後一対の挟持片19、19′を有し、上記挟持片19、19′は、直動シリンダーより成る開閉手段27によって開閉可能に設けられている。また、クランプ16L、16Rは、左右方向の横軸に相当する取付け軸19aによって前後方向へ揺動可能に設けられ、上記取付け軸19aの上位にて、支軸19bによって展開クランプ16L、16Rに接続され、かつ、支軸19cによって展開機構15に接続しており、展開クランプ揺動手段28を構成している。
【0029】
実施形態の第2の例の場合、布類Wの最終広げ完了後、センサーSの信号により、所定のシーケンスにしたがって、展開クランプ揺動手段28のアクチュエーター28aが作動し、布類Wの左右両端部を挟持している展開クランプ16L、16Rが、取付け軸19aを中心として数十度余りの範囲で往復回転運動を繰り返す。つまり、展開クランプ16L、16Rの横軸周りの回転は前後方向と上下方向の移動を含むので、布類Wは前後方向のみならず上下方向にも揺さぶられることになる。従って、例2によれば布類Wを前後方向と上下方向に揺さぶることで、布類Wの乱れを揺動除去により除去することができる。
【0030】
図9Bに示す例3は布類Wを上下方向にのみ揺さぶる例である。展開クランプ16L、16Rは布類Wを挟持するために下部に設けた前後一対の挟持片19、19′を有し、上記と同様に直動シリンダーより成る開閉手段27によって開閉可能に設けられている。また、クランプ16L、16Rは、展開機構15の車台下部に突き出した支持部15bに配置されている。展開機構15の正面には、展開クランプ揺動手段29が取付け部材29bを介して設置されており、そのアクチュエーター29aは上下動可能に設けられている。例3の場合も、布類Wの最終広げ完了後、センサーSにより、所定のシーケンスにしたがって、展開クランプ揺動手段29が上下方向へ移動する。よって、布類Wを上下方向に揺さぶることで布類Wの乱れを揺動除去により除去することができる。
【0031】
図9Cに、本発明の乱れ除去方法の実施形態の例4を示す。例4の場合、左右の展開クランプ16L、16Rは展開機構15の正面に前後方向の支軸30aによって軸支されており、挟持片19、19′は上記と同様に直動シリンダーより成る開閉手段27によって開閉可能に設けられている。また、展開クランプ16L、16Rは逆L字型のアーム30の下部に設けられ、角部にて展開機構15に軸支され、上端部は展開クランプ揺動手段31のアクチュエーター31aに接続されている。このため、布類Wの最終広げ完了後、センサーSにより、所定のシーケンスにしたがって、展開クランプ揺動手段31が作動すると、左右の展開クランプ16L、16Rは、アクチュエーターの作動により支軸30bを中心として左右方向と上下方向へ回転し、布類Wを上記2方向へ揺さぶり、布類Wの乱れを揺動除去により除去することができる。
【0032】
本発明の乱れ除去方法は、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも1方向へ揺動させ、それによって、布類Wに生じている乱れを揺動除去により除去するものである。しかし、それのみならず、例2のように布類Wを前後方向と上下方向に揺さぶることで、布類Wの乱れを揺動除去により除去することができ、また、例4のように布類Wを左右方向と上下方向へ揺さぶり、布類Wの乱れを揺動除去により除去することができるものである。故に、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向の3方向全ての方向へ揺動させ、それによって、布類Wに生じている乱れを除去可能であることも各実施形態から自明であろう。
【0033】
<気流による除去のための装置構成>
布類Wは、次の段階において、投入コンベア14への投入の準備に移り(図5参照)、それに伴って、本発明の方法におけるもう一つの要件である気流による除去を実行する。ここで適用する気流は吸引機流であり、布類Wに下方への吸引力を加える。そのために、左右の展開クランプ16L、16Rによる布類Wの挟持位置の外方直下に受け部32が設けてあり、また、内方には受け部32に対して前進後退可能に設けた受け渡し機構33が設置されている。その前端部34と受け部32との間で布類Wが挟持され、展開クランプ16L、16Rが布類Wを放し、それと同時に、エアノズルから成る付勢手段35によって、布類Wは受け渡し機構33に吹き付けられ、受け渡し機構上に落された布類Wは吸引機構36によって吸引されつつ、挟持部材37によってその上面に固定される。
【0034】
布類Wが受け渡し機構上に固定された後、展開クランプ16L、16Rを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも一方向へ揺する作用を受けた布類Wに対して下方への吸引気流を作用させるために、布類投入機には投入コンベアの下方に吸引手段40が設けられている(図2参照)。吸引手段40は、投入コンベア14の前端部下方にて上部が開口した吸引ボックス38と、吸引ボックス38に接続された吸引ブロワ39とを有し、吸引力を受けると布類Wは下部から可動壁38aを乗り越えて吸引ボックス38の内部に吸い込まれ、下方への吸引力を受ける。この吸引力による作用は、布類Wを平坦なシート形状に引き伸ばす作用であり、展開クランプ16L、16Rによって実行した揺動除去による乱れ除去作用をより確実にする。
【0035】
即ち、揺動除去という工程では布類Wを揺さぶることでしわやめくれを除去するので除去に寄与する力は重力が主体であるが、もう一工程の気流による除去では新たな気流という要因を布類Wに及ぼすことが可能になる。このため、揺動除去に加えて、例えば気流による吸引力により布類Wを引っ張ることができるので、一工程だけでは十分ではなかったとしても、二つの工程の併用によって、より効果的な乱れの除去が実現する。なお、本発明の方法では噴射気流を利用することも可能であり、その場合は、例えば、ブロワの噴射ノズルをボックス38の上部に配置し、その開口から下方へ向けてエアを噴射することで布類Wに乱れ除去作用を及ぼすことが可能になる。
【0036】
このように、本発明の乱れ除去方法では、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも1方向へ揺動させ、それによって、布類Wに生じている乱れを揺動除去により除去する工程とともに、上記吸引による布類Wを平坦なシート形状にする工程を行うことで、乱れの除去をさらに確実にするものである。上記揺動除去と吸引除去の二つの工程を併用することにより、布類に生じている乱れをより完全に除去することができる。包布などの2重構造を有する布類は、特に、しわその他の乱れを生じ易いが、本発明の装置によればそれらの乱れに対する除去に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る布類の乱れ除去方法を適用する布類投入機の一例を示す正面説明図である。
【図2】同上の装置の側面断面説明図である。
【図3】同上における布類を展開クランプに受渡す前の状態を示す側面図である。
【図4】同じく布類を展開クランプに受渡した後の状態を示す側面図である。
【図5】同じく布類を投入コンベアに受渡した後の状態を示す側面図である。
【図6】同じく展開クランプを前後、左右、上下の各方向へ揺動させる実施形態の例を示す正面図である。
【図7】同上に対応する側面断面図である。
【図8】同じく展開クランプの実施形態を示すもので、Aは例1に関する説明図、Bは変形例に関する説明図、Cは作用を示す正面図である。
【図9】同じく展開クランプの実施形態を示すもので、Aは例2、Bは例3、Cは例4を示す説明図である。
【図10】本発明の方法により怒の類の下部に吸引気流を作用させている状態を示す正面図である。
【図11】同じく図10に対応する側面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 布類投入機
11 取付けクランプ
12 投入機構
13 周回式移送装置
14 投入コンベア
15 展開機構
16L、16R 展開クランプ
17 転輪
18 展開レール
19、19′ 挟持片
20 展開機構
21、28、29、31 展開クランプ揺動手段(展開クランプ移動手段)
22 移動手段制御部
23、25、26 移動機構
24L、24R 駆動源
27 横軸
30 アーム
32 受け部
33 受け渡し機構
40 吸引手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
布類を工程に投入するために、正面に布類を吊下げて左右方向へ展開する展開クランプを有する布類投入機において、布類に生じている乱れを除去する方法であって、
布類を吊り下げた状態とし、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも一方向へ揺動させ、布類を揺さぶることで布類に生じている乱れを揺動除去し、
揺動除去の前後又は揺動除去と同時並行的に、布類に対して下部から気流を作用させることで布類に生じている乱れを除去することを特徴とする
布類投入機における布類の乱れ除去方法。
【請求項2】
布類投入機の正面に展開機構を有し、展開機構は布類を吊下げて左右方向へ展開する少なくとも左右一対の展開クランプを有し、展開クランプを前後方向、左右方向又は上下方向へ動作させ、展開クランプに吊り下げられている布類を前後方向、左右方向又は上下方向の少なくとも一方向へ揺さぶることで、揺動除去によるしわ除去作用を行い、
布類投入機の正面下部に上部が開口した吸引手段を設けて、しわ除去作用を受けた布類に対して下方への吸引気流を作用させ、布類を下方へ吸引することで布類に生じている乱れを除去する
請求項1記載の布類投入機における布類の乱れ除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−85767(P2013−85767A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230130(P2011−230130)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000201548)