説明

帯板材の防水接合構造

【課題】挟持溝に突縁を嵌合させて挟持溝の可動壁をかしめるだけで、帯板材が一枚板のように接合されるとともに、凸部と当接部材の隙間が水密封鎖される帯板材の防水接合構造を提供すること。
【解決手段】帯板材の防水接合を行う構造であって、上記帯板材1の一側の裏側に設けた挟持溝2は、帯板材1に接合される固定壁5の内面と可動壁4の内面とにそれぞれ複数の凸部7〜11を離隔して形成され、他側の裏側に設けた突縁3は、片側または両側に挟持溝2の可動壁4と固定壁5に設けた凸部7〜11に対応する当接部材14、15、16を、フィン体を組み合わせることで凸部7〜11との係合で変形をし易く形成されて、上記突縁3を上記挟持溝2に嵌合して可動壁4のかしめを行うと、挟持溝2と突縁3の接触部が素材の弾発力によって水密封鎖されるものであること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材の弾発力を効かせることで防水可能な接合を行う板材の防水接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井パネルの接続構造として、隣り合う天井パネルの側端から立ち上がる立ち上がり片の間にバックアップ材を介在させ、同両立ち上がり片の外側から断面コ字形の挟持片を挟持させ、天井部分の内側からコーキング材を充填する技術は知られている。(例えば特許文献1参照)また、パネルの連結構造として、隣接する一方のパネルの一側縁部に設け一方の縁部における一方の係合部材を支柱の前方からスタッドの一方の係合凸部に係合させ、かつ、隣接する他方のパネルの側端部における係合部材を支柱の前方から該スタッドの他方の係合凸部に係合させるとともに、両係合部材間の隙間を目地材にて閉塞してなる技術も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、上記天井パネルの接合構造は、天井パネルの間にコーキングが介在するため、複数の天井パネルを目違いなく一枚物のように接合することは不可能であって、しかも、コーキングは材料費が嵩む上に充填する手数がかかって作業性が悪い。また、上記パネルの連結構造は、パネルに設けた係合部材の間に合成樹脂製の目地材を挟み込むため、接合する各パネルの間には目地材分の隙間ができて、複数の天井パネルを目違いなく一枚物のように接合することは不可能であって、この目地材の挟み込みも材料費が嵩んで手数がかかり、更に、両構造とも防水に有機質の別部材を用いるためリサイクル性が良くないという問題点がある。
【特許文献1】特開平9−13709号
【特許文献2】特開2003−41690号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解消し、挟持溝に突縁を嵌合させて挟持溝の可動壁をかしめるだけで、帯板材が一枚板のように接合されるとともに、凸部と当接部材の隙間が水密封鎖される帯板材の防水接合構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、帯板材を一側の裏側に挟持溝が設けられ、他側の裏側に突縁が設けられるように形成して、これら帯板材の複数を一方の帯板材に設けた挟持溝へ他方の帯板材に設けた突縁を嵌合させて、上記挟持溝の可動壁をかしめることで防水されるように接合する帯板材の防水接合構造であって、上記帯板材の一側の裏側に設けた挟持溝は、帯板材に接合される固定壁の内面と可動壁の内面とにそれぞれ複数の凸部を離隔して形成され、他側の裏側に設けた突縁は、片側または両側に挟持溝の固定壁と可動壁の内面に設けた凸部に対応して、これら凸部へ圧接されると弾性変形を起す形状の当接部材を形成されて、上記突縁を上記挟持溝に嵌合して可動壁のかしめを行うと、挟持溝と突縁の接触部が素材の弾発力によって水密封鎖されるものであること。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記帯板材の挟持溝に形成される凸部を当接部材との係合によって変形し易いフィン状としたこと。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記帯板材の突縁が設けられた裏側に、斜面と段落部とを有するかしめの戻り止めを、挟持溝の可動壁をかしめたとき可動壁の背面へ段落部が当接するように設置してあること。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記帯板材の一側の裏側に設けた突縁に形成される当接部材と、挟持溝の内面に形成される凸部とを、両者が係合すると接合しようとする帯板材の表面が面一に揃うように位置設定されていること。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、一方の帯板材に設けた挟持溝へ他方の帯板材に設けた突縁を嵌合して、挟持溝の可動壁をかしめれば、隣り合う帯板材の側縁が密着されるとともに、凸部と当接部材との係合により面合せされて一枚板のように接合され、しかも、かしめで凸部と当接部材との圧着が強力に行なわれるので、接触部には弾発力が発生して接合部を水密封鎖して水漏れなどが生じないようにする。従って、帯板材の防水接合を至って簡単に行なうことができて、コーキングやパッキング等を装着する必要がないので、資材費、工事費の節約にもなり、加えて、帯板材が廃品となった際のリサイクル性もよいものである。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、挟持溝に形成する凸部をフィン状にして当接部材に係合したとき変形し易くすれば、フィン体を組み合わせで変形し易くしてある当接部材と相俟って、可動壁のかしめで両部材が接触したときの弾発力発生を効果的に行わせることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、挟持溝の可動壁をかしめるとき、可動壁が戻り止めの斜面を滑って帯板材を乗り越えると、その背面に段落部が係合して可動壁を固定するので、可動壁の戻りを防止してこれに起因する防水不良や接合の緩みを防止できる。
【0012】
請求項4に係る発明によれば、挟持溝の可動壁をかしめるとき、挟持溝側の凸部と突縁側の当接部材が係合して隣り合う帯板材の表面を揃えるので、帯板材の側縁の密着と相俟って一枚板のような帯板材の接合ができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明に係る帯板材の防水接合構造の実施形態を図面について説明する。
【0014】
図1、図2は本発明に係る帯板材の防水接合構造の実施形態を示すものであって、この帯板材の防水接合構造は図において符号Aで示され、帯板材1を一側の裏側に挟持溝2が設けられ、他側の裏側に突縁3が設けられるように形成して、これら帯板材1の複数を一方の帯板材1に設けられた挟持溝2へ他方の帯板材1に設けられた突縁3を嵌合させて、上記挟持溝の可動壁4をかしめることで防水されるように接合するものである。
【0015】
上記帯板材1は、図3に示す平面、図4に示すL形、図5に示す円弧形、その他の断面形状であって、一側の裏側に挟持溝2を有し、他側の裏側に突縁3を有するようにアルミニウムの押出し成形で図3、図4、図5に一部分を示す長尺物に形成し、製造する構造体に応じて適当な長さに切断して使用する。
【0016】
帯板材1の一側の裏側に設ける上記挟持溝2は、帯板材1に接合される固定壁5と底部6と外側へ傾く上記可動壁4とでU字形をなしている。そして、固定壁5の内面には3つのフィン状の凸部7、8、9を隔離させて設け、その中央部の凸部8は矩形断面とし、上下の凸部7と9は上側及び下側を斜面とした三角断面にしてある。また、可動壁4の内面には2つの凸部10、11を離隔させて設け、上側の凸部10、を矩形断面とし、下側の凸部11を下側が斜面となる三角断面としてあり、更に、可動壁4の外側の上部にはかしめ用の突起12を設け、可動壁4と底部6との境部にはかしめを決った位置から容易に行わせるための切込13を設けてある。
【0017】
帯板材1の他側の裏側に設ける上記突縁3は、挟持溝2における固定壁5の内面に設けた3つの凸部7、8、9の間に位置させて、一対の円弧状のフィン体が対向するように組み合わせて、凸部の間へ割り込みませるようにした二組の当接部材14、14を設け、可動壁4の内面に設けた2つの凸部10、11の間には、一対の円弧状フィン体が対向するように組み合わせて凸部10、11の間へ割り込みませるようにした一組の当接部材16を設け、また、当接部材15の上側のフィン体には反対向きに円弧形のフィン体を隣接することで、両者の間へ凸部10を割り込ませる当接部材16を設けてある。
【0018】
上記の通り挟持溝2側に設ける凸部7〜11と、突縁3側に設ける当接部材14、15、16とは、可動壁4のかしめを行なうとき、両者が係合すると接合する帯板材1の表面が面一の状態に揃えられるように相互位置を設定してある。
【0019】
また、突縁3が形成される帯板材1の裏側には、可動壁4をかしめたとき、可動壁4に係合してかしめの戻りを防止する戻り止め17を設けるものであって、この戻り止め17は可動壁4をかしめ終わった位置に保持するため、直立する段落部17aと段落の反対側が次第に低くなる斜面17bを有するように形成して、可動壁4をかしめ終わったとき、その背面に段落部17aが一致するように帯板材1へ取り付けられる。
【0020】
上記構成の帯板材の防水接合構造Aによって帯板材1を接合するには、接合しようとする帯板材1の側縁を図2(a)に示す通り近付けて、一方の側縁に設けた挟持溝2へ他方の側縁に設けた突縁3を図2(b)に示す通り嵌合する。そして、外側へ倒れている挟持溝2の可動壁4を、公知のかしめ装置を用いて内側に起すようにかしめると、可動壁4の先端は戻り止め17の斜面17bを滑って帯板材1を反らせながら進み、先端が斜面17bを越えるとその瞬間に反らされた帯板材1が復元して、戻り止め17の段落部17aを可動壁4の背面へ係合させてかしめが戻らないようにする。
【0021】
上記の通り可動壁4をかしめると、接合しようとする帯板材1、1が引き寄せられて相互の側縁1a、1aを図1に示す通り密着させ、挟持溝2側に設けられた凸部7〜11と突縁3側に設けられた当接部材14、15、16とを強力に加圧して係合させ、係合によって隣接する帯板材の表面を面一の状態に揃えられるとともに、加圧によって凸部7、8、9と当接部材14、15、16が弾性変形を起こし、両者の接触部を弾発力で水密封鎖するので、かしめを行うだけで所要数の帯板材1が一枚板のような状態に接合されて、しかも接合部から水漏れを生じない防水接合が容易に行われる。
【0022】
図6(a)(b)(c)は、図1、図2(a)(b)に示した帯板材の防水接合構造Aの一部分を変化させた実施形態を示すものであって、この実施形態は挟持溝2側に設けた凸部7〜11及び突縁3側に設けた当接部材14、15、16の構造が図1、図2(a)(b)に示す実施形態とは相違するので、これらの相違する部分の構造のみに付いてを説明し、他の同一部分については同一の符号を付して説明は省略する。
【0023】
帯板材1の一側の裏側に設ける上記挟持溝2は、固定壁5の内面の上側と中央部に図6(a)(b)(c)示す通り設けた凸部7、8を離隔して設けられて、中央部の凸部8、9はフィン状であつてハの字形をなすものであり、上側の凸部7は下側に仰角の傾斜を付けた梯形をなすものである。また、可動壁4側の内面に離隔して設けた2つの凸部10、11は、何れも先端を円弧面に形成してある。更に、この防水接合構造Aでは、挟持溝2の底部6に向かう斜面18aを突縁3の先端側に設けた斜面19へ係合させる凸部18が設けられる。
【0024】
帯板材1の他側の裏側に設ける突縁3は、挟持溝2における固定壁5の内面に対応す部分に、への字形をなすフィン体がハの字状をなす凸部5を挟み込むようにハの字状に組み合わされた当接部材14と、上側の凸部7とその下側の凸部8との間に形成される逆台形の溝へ割り込むようにフィン体を組み合わせた当接部材15が設けられ、可動壁4に対応する部分には、可動壁4に設けた2つの凸部10、11に対応させてVの字をなす凹部が当接部材15、16として設けられる。
【0025】
上記構成の帯板材の防水接合構造Aによって帯板材1を接合するには、接合しようとする帯板材1の側縁を図6(a)に示す通り近付けて、一方の側縁に設けた挟持溝2へ他方の側縁に設けた突縁3を図6(b)に示す通り嵌合する。そして、外側へ倒れている挟持溝2の可動壁4を、公知のかしめ装置を用いて内側へ起してかしめると、可動壁4の先端は戻り止め17の斜面17bを滑って帯板材1を反らせながら進み、先端が斜面17bを越えるとその瞬間に反らされた帯板材1が復元して、戻り止め17の段落部17aを可動壁4の背面へ係合させてかしめが戻らないようにする。
【0026】
上記の通り挟持溝2の可動壁4をかしめると、接合しようとする帯板材1、1が引き寄せられて図6(c)に示す通り、相互の側縁1a、1aを密着させ、挟持溝2側に設けた凸部7〜11と突縁3側に設けた当接部材14、15、16とは強力に加圧されて係合し、係合によって隣接する帯板材1、1の表面を面一の状態に揃えられるとともに、加圧によって凸部7から11と当接部材14、15、16が効果的に弾性変形を起こし、両者の接触部を弾発力で水密封鎖するので、かしめを行うだけで所要数の帯板材1が一枚板のような状態に接合されて、しかも接合部から水漏れを生じない防水接合が容易に行われる。
【0027】
図7、図8、図9は、本発明に係る帯板材の防水接合構造による帯板材の接合で形成した防水構造体の一例を示すものであって、図7に示す平面の防水構造体21は、図3に示す平面帯板材1をこの発明の防水接合構造Aで接合することによって各帯板材1の側縁が密着して表面は面一の状態に揃い、しかも、接合部は素材の弾発力で水密封鎖されるため水漏れを生ずることがない製品が構成される。また、図8に示す角筒の防水構造体22は、図4に示すL形帯板材1をこの発明の防水接合構造Aで接合することによって、各帯板材1の側縁が密着して表面は面一の状態に揃い、しかも、接合部は素材の弾発力で水密封鎖されるため、水漏れを生ずることがない製品が構成される。更に、図9に示す円筒の防水構造体23は、図5に示す円弧形帯板材1をこの発明の防水接合構造Aで接合することによって、各帯板材1の側縁が密着して表面は面一の状態に揃い、しかも、接合部は素材の弾発力で水密封鎖されるため水漏れを生ずることがない製品が形成される。
【0028】
なお、上記実施形態は、同一の帯板材の両端に突縁3と挟持溝2とを形成したものであるが、1つの帯板材の端部には突縁のみ、他の帯板材の端部には挟持溝のみが形成され、これらの帯板材を接合する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る帯板材の接合構造は、平面、L形、円弧形、その他、各種の帯板材を防水された一枚板の状態に接合して、平面、筒形、その他各種形状の防水構造体を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る帯板材の防水接合構造で帯板材を接合した状態の端面図。
【図2】(a)(b)は、同上接合構造で帯板材を接合する状態の説明図。
【図3】同上接合構造に用いた平面帯板材の一部分を示す斜視図。
【図4】同上接合構造に用いたL形帯板材の一部分を示す斜視図。
【図5】同上接合構造に用いた円弧形帯板材の一部分を示す斜視図。
【図6】(a)(b)(c)は、図1に示す接合構造体の一部変形例で帯板材を接合する状態の説明図。
【図7】平面帯板材を接合して形成した平面の防水構造体を示す斜視図。
【図8】L形帯板材を接合して形成した角筒の防水構造体を示す斜視図。
【図9】円弧形帯板材を接合して形成した円筒の防水構造体を示す斜視図。
【符号の説明】
【0031】
A 帯板材の防水接合構造
1 帯板材
2 挟持溝
3 突縁
4 可動壁
5 固定壁
7、8、9、10、11 凸部
14、15、16 当接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板材を一側の裏側に挟持溝が設けられ、他側の裏側に突縁が設けられるように形成して、これら帯板材の複数を一方の帯板材に設けた挟持溝へ他方の帯板材に設けた突縁を嵌合させて、上記挟持溝の可動壁をかしめることで防水されるように接合する帯板材の防水接合構造であって、
上記帯板材の一側の裏側に設けた挟持溝は、帯板材に接合される固定壁の内面と可動壁の内面とにそれぞれ複数の凸部を離隔して形成され、
他側の裏側に設けた突縁は、片側または両側に挟持溝の固定壁と可動壁に設けた凸部に対応する当接部材を、フィン体を組み合わせることで凸部との係合で変形をし易く形成されて、
上記突縁を上記挟持溝に嵌合して可動壁のかしめを行うと、挟持溝と突縁の接触部が素材の弾発力によって水密封鎖されるものである
ことを特徴とする帯板材の防水接合構造。
【請求項2】
上記帯板材の挟持溝に形成される凸部を当接部材との係合によって変形し易いフィン状とした
ことを特徴とする請求項1に記載の帯板材の防水接合構造。
【請求項3】
上記帯板材の突縁が設けられた裏側に、斜面と段落部とを有するかしめの戻り止めを、挟持溝の可動壁をかしめたとき可動壁の背面へ段落部が当接するように設置してある
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯板材の防水接合構造。
【請求項4】
上記帯板材の一側の裏側に設けた突縁に形成される当接部材と、挟持溝の内面に形成される凸部とを、両者が係合すると接合しようとする帯板材の表面が面一に揃うように位置設定されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の帯板材の防水接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−154449(P2007−154449A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347900(P2005−347900)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)
【Fターム(参考)】