説明

帯鋸の調整装置及び調整方法

【課題】帯鋸の収縮・伸長があっても、帯鋸が掛け渡されたプーリーどうしを接近または離間させて、帯鋸の張り/張力を調整する。
【解決手段】切断対象が冷たくて、帯鋸10が縮むと、被動プーリー5、被動プーリー軸36及びプーリー軸受け37が下降し、作用ピン41が下へ押され、支点軸27を通じてテコ板28が上へ回動する。よって、帯鋸10の収縮が吸収され、帯鋸10の張りが強くなり過ぎず、帯鋸10が破損せず、帯鋸10の張りが一定に保たれ、切断対象がきれいに切断される。切断対象が熱いとこの逆になる。支点軸受け19のアリ溝42及びプーリー規制スライダー43のアリ堤44によって、プーリー規制スライダー43、プーリー軸受け37及び被動プーリー軸36の移動方向は、2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。よって、この被動プーリー5の移動によって帯鋸10が傾かず、切断対象が斜めに切断されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋸を有する装置または方法に関し、特に帯鋸の長さが変化したり切断したりするなどの帯鋸に変化または異常が有った時に対応する装置または方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の帯鋸を有する装置では、例えばドライアイスや氷を切断するものがあった。このような装置では、切断する対象が低温であるため、金属製の帯鋸が切断中に冷えて縮み、帯鋸の張力が強くなりすぎてしまい、逆にきれいにドライアイスや氷を切断できないことがあった。
【0003】
また、作りたての高温の食品や、材木またはプラスチックなどの切断時に帯鋸との間に摩擦熱を発生するものなど、逆に高温の熱いものを切断する場合には、帯鋸が温まってまたは熱くなって伸び、帯鋸の張力が弱くなってしまい、やはりきれいに切断できないがあった。このようなことは切断する対象だけでなく、帯鋸を有する装置の周囲の気温の上昇または下降といった変化によっても生じる。さらには、上述の帯鋸の縮みによって、極端な場合には帯鋸が切断してしまうこともあった。
【0004】
【特許文献1】実願昭59−158512(実開昭61−075923号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願昭61−058959(実開昭62−172515号)のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、このような帯鋸の長さの変化があっても、帯鋸の張力をほぼ一定に保ち、極端な場合には帯鋸の切断があっても、装置を損傷しないことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本件発明は、 帯鋸装置に回動可能に取り付けられるとともに、この回動の軸を支点としたテコ体と、 このテコ体の力点に力を加える力点機構と、 上記テコ体の作用点から力を受けて、上記プーリーを互いに離間させる方向に付勢するとともに、上記プーリーの軸を受けるプーリー軸受けと、 このプーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制する、上記帯鋸装置に取り付けられたプーリー軸受け規制機構とを備えた。
【0007】
また、上記プーリーの軸に固定され、当該プーリーと一体回転するブレーキ体と、 このブレーキ体に対向して配置され、当該ブレーキ体に当接可能な当接体と、 この当接体と上記テコ体とを連結し、上記プーリーが互いに離間し、これに沿って上記テコ体が動いたとき、当該当接体を上記ブレーキ体に当接させて、上記プーリーの回転を停止させる連結体とを備えた。
【発明の効果】
【0008】
これにより、熱収縮または熱膨張によって帯鋸の長さが変化すると、帯鋸の張力が変化するので、この張力の変換が上記テコ体の作用点に働き、テコ体が動いて、テコ体の力点とのバランスがとられ、帯鋸の張力が一定に保たれる。
【0009】
また、プーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制するから、プーリーの移動によって帯鋸が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0010】
さらに、帯鋸が切断すると上記テコ体の作用点の受け力がほぼ無くなり、上記テコ体が大きく動いて、上記当接体が上記ブレーキ体に当接して、上記プーリーの回転が停止される。これにより、帯鋸が切断したり外れたりした時、プーリーの回転が停止され、帯鋸装置が損傷しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)帯鋸装置
図1は帯鋸装置1の全体外観を示す。帯鋸装置1の土台フレーム2の中央には、縦に伸びる支柱フレーム3が固定されている。この支柱フレーム3の下には駆動プーリー4が回転可能に支持され、同じく支柱フレーム3の上には被動プーリー5が回転可能に支持されている。
【0012】
下側の駆動プーリー4の回転軸には被動ベルト車6が一体回動可能に固定されている。この被動ベルト車6の傍らの上記土台フレーム2の上には駆動モーター7が固定され、この駆動モーター7の回転軸には駆動ベルト車8が一体回動可能に固定されている。これら、駆動ベルト車8及び被動ベルト車6にはベルト9が掛け渡されて、駆動モーター7の駆動によって、上記駆動プーリー4が回転される。
【0013】
上記駆動プーリー4及び被動プーリー5に渡ってエンドレスの帯鋸10が所定または一定の張力で掛け渡され、上記駆動モーター7の駆動による駆動プーリー4の回転によって、帯鋸10が送られて移動し、上記被動プーリー5も回転される。この駆動プーリー4と被動プーリー5とは同形同大である。この帯鋸10は金属製であるが、場合によって樹脂製、ガラス製、セラミック製、これらと金属との混合物製でもよい。
【0014】
(2)メイン調整機構
図2は帯鋸装置1の中のメイン調整機構及びその周辺の分解図を示す。図5は長尺支柱(長尺体)16、支点軸受け19、プーリー規制スライダー(プーリー軸受け規制機構)43及びその周辺の縦断面を示す。図6は支点軸受け19及びその周辺の縦断面を示す。
【0015】
上記支柱フレーム3の上には、縦に伸びる長尺支柱16が固定されている。この長尺支柱16の上には方形板状の支え板17が固定され、この支え板17は側方に突出し、この突出部分の中央には穴が形成されている。この穴にスラストベアリング32を介して細長い台形ねじの調整台形雄ねじ18が回転可能に支持されている。
【0016】
この調整台形雄ねじ18は、支え板17の下で、縦長のほぼ正方形柱状の支点軸受け19の中心を挿通しており、この調整台形雄ねじ18の下端には台形雌ねじ20が螺合固定されている。この台形雌ねじ20の下面は全周にわたって外方に突出して、上記支点軸受け19の下から当接してねじ留めされ、支点軸受け19が調整台形雄ねじ18から抜け落ちないように保持されている。
【0017】
この台形雄ねじ18の上端にはギアボックス33を介して環状の調整ハンドル21が横向きに固定され、この調整ハンドルが回転されると、支え板17に対して、調整台形雄ねじ18が回転する。この調整台形雄ねじ18が回転すると、台形雌ねじ20の調整台形雄ねじ18に対する螺合位置が上下動し、これにより台形雌ねじ20が上下動し、この結果支点軸受け19も同様に一体的に上下動する。これに対して、支え板17及び長尺支柱16は上下動せず、帯鋸装置1に固定されている。
【0018】
上記長尺支柱16の側面にはアリ堤22(支点軸受け規制機構)が形成され、一方上記支点軸受け19の側面にアリ溝23(支点軸受け規制機構)が形成され、このアリ溝23はアリ堤22にスライド可能に嵌め込まれている。このアリ堤22とアリ溝23との間には、場合によってスライドを円滑にする油等が注入される。
【0019】
このアリ堤22及びアリ溝23のスライド方向は、上記駆動プーリー4及び被動プーリー5の両中心を結ぶ方向または外周に接して結ぶ方向(以下「駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向)という)と一致しており、この結果さらに調整台形雄ねじ18の方向及び支点軸受け19の移動方向にも一致しており、支点軸受け19の移動方向は、2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。
【0020】
したがって、テコ板28が動いたり被動プーリー5が動いたりしても、テコ板28の支点、作用点及び力点の被動プーリー5及び被動プーリー軸36に対する作用点及びモーメント位置は変化せず、テコ板28の力点から伝えられる力もモーメントも変化しないで済む。
【0021】
また、被動プーリー5及びプーリー軸受け37並びに支点軸受け19の移動方向は、上記2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制されるから、被動プーリー5の移動によって帯鋸10が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0022】
上記支点軸受け19の支点軸受け19と反対側の側面の下方には直方体状の軸受け部26が突設されており、この軸受け部26を貫通して支点軸27(支点)が回転可能に受けられ支持されている。この支点軸27の手前端には、途中で若干折れ曲がった細長い板状の直線状のテコ板28(テコ体)の一端が固定連結されている。したがって、このテコ板28は支点軸27とともに帯鋸装置1に対して一体回動可能に取り付けられている。
【0023】
このテコ板28の他端には数キログラムの重量の錘29(力点)が固定されており、テコ板28を下方に付勢している。この錘29はテコ板28の長手方向に沿ってスライド可能となっている。この錘29はテコ板28の力点に力を加える力点機構となっており、上記支点軸27をテコの支点としている。
【0024】
この支点軸27の奥端には、張力受け部30が取り付けられ固定されている。この張力受け部30の、上記支点軸27の中心からずれた位置には、頭部がテーパー状(すり鉢状)に凹んだピン受け31(作用点)が取り付けられ固定されている。このピン受け31が上記テコ板28の作用点となる。この作用点の力は上記錘29の数倍乃至数十倍の大きさとなり、数千キログラム乃至数トンの力となる。
【0025】
(3)サブ調整機構
図2は帯鋸装置1の中のサブ調整機構及びその周辺の分解図を示す。上記被動プーリー5の被動プーリー軸36は手前側に長く延出され、この延出された被動プーリー軸36は筒状のプーリー軸受け37(プーリー軸受け)内に回転可能に受けて、上下左右前後にいずれにも傾かないように水平に保持され支持される。このプーリー軸受け37の下には、被動プーリー軸36と直交する方向に横連結穴38があけられ、この横連結穴38には横連結ピン39が挿通されている。
【0026】
上記プーリー規制スライダー43の奥の下面には、頭部がテーパー状(すり鉢状)に凹んだピン受け40が下方から上向きに取り付けられ固定されている。このピン受け40と、上記張力受け部30のピン受け31と間には、両端が尖った作用ピン41が介在されて挟まれ、これらのピン受け31、40の奥底は尖って、ここに尖った作用ピン41の両端が当接するので、ピン受け31、40と作用ピン41との当接位置は、テコ板28が動いて傾きが変わっても、変化せず移動せず一定である。
【0027】
このように、上記プーリー規制スライダー43と上記テコ板28の作用点と間は、微小な一点で連結されている。したがって、上記テコ板28が動いて傾きが変わっても、テコ板28の錘29の力及びモーメントが、プーリー規制スライダー43、プーリー軸受け37及び被動プーリー軸36に上向きに正確に伝えられ、伝えられる位置も力もモーメントも変化せず、帯鋸10の張力が一定に保たれる。したがって、テコ板28の作用点から力を受けて、上記被動プーリー5は上記駆動プーリー4から互いに離間される方向に付勢される。
【0028】
上記プーリー軸受け37の上記横連結穴38の手前側の下面には、傾斜調整ねじ45が縦向きに螺合固定され下方へ突出している。一方、上記プーリー規制スライダー43の手前側には方形板状の調節板46が延出され、この調節板46の中央を、上記傾斜調整ねじ45が貫通しており、この傾斜調整ねじ45の下方の頭部は、この調節板46の下面に当接して調節板46が抜け落ちないようになっている。
【0029】
この調節板46と上記プーリー軸受け37との間の傾斜調整ねじ45の周囲には螺旋バネが巻回されており、調節板46及びプーリー規制スライダー43と、プーリー軸受け37及び被動プーリー軸36とが、互いに離間される方向に付勢されている。この傾斜調整ねじ45を回すと、横連結ピン39を回動軸として、プーリー規制スライダー43に対してプーリー軸受け37及び被動プーリー軸36が上昇したり下降したりするように回動する。
【0030】
これにより、被動プーリー軸36及び被動プーリー5の手前と奥とにわたる方向に沿った傾きが調整される。つまり、プーリー規制スライダー43及び帯鋸装置1全体に対してプーリー軸受け37及び被動プーリー5の傾斜を、被動プーリー5面に直交する面でかつ垂直方向にそって調整できる。
【0031】
また、被動プーリー5を被動プーリー軸36から外した場合には、横連結ピン39を回動軸として、プーリー軸受け37が下降回動しようとするが、傾斜調整ねじ45の周囲の螺旋バネでプーリー軸受け37が受け止められているので、さらにはこの螺旋バネ圧は調節板46、プーリー規制スライダー43、作用ピン41、テコ板28を通じて錘29で受け止められ、プーリー軸受け37はほとんど下降回動せず安定する。
【0032】
また、被動プーリー軸36に被動プーリー5が取付られ固定されると、プーリー軸受け37が上昇回動しようとするが、傾斜調整ねじ45の頭部が調節板46の下面に当接して、傾斜調整ねじ45が調節板46から抜けないので、さらにはこの調節板46にかかる力はプーリー規制スライダー43、作用ピン41、テコ板28を通じて錘29で受け止められ、プーリー軸受け37はほとんど上昇回動せず安定する。
【0033】
上記軸受け部26の上にはアリ溝42(長尺体/プーリー軸受け規制機構)が形成され、このアリ溝42には、プーリー規制スライダー43(プーリー軸受け規制機構)のアリ堤44(長尺体/プーリー軸受け規制機構)がスライド可能に嵌め込まれている。このアリ堤44とアリ溝42との間には、場合によってスライドを円滑にする油等が注入される。
【0034】
したがって、プーリー軸受けとプーリー軸受け規制機構とは、上記支点軸受け19に設けられたアリ溝42(長尺体/プーリー軸受け規制機構)と、このアリ溝42(長尺体/プーリー軸受け規制機構)に対して、アリ堤44(長尺体/プーリー軸受け規制機構)を介して、上記2つの駆動プーリー4と被動プーリー5とを結ぶ方向にのみスライド可能に取り付けられた、上記被動プーリー軸36を受けるプーリー軸受け37及びプーリー規制スライダー43とを備えていることになる。
【0035】
上記プーリー規制スライダー43の奥側には、横連結穴47が形成され、この横連結穴47には、上記プーリー軸受け37の横連結ピン39の先端が嵌め込まれ固定されるまたは螺合固定される。これにより、プーリー規制スライダー43とプーリー軸受け37と被動プーリー軸36と上記被動プーリー5とは一体的に移動する。また、プーリー軸受け37、被動プーリー軸36、被動プーリー5とプーリー規制スライダー43とが垂直方向にずれないように連結される。
【0036】
上記アリ堤44及びアリ溝42のスライド方向は、上記駆動プーリー4及び被動プーリー5の中心を結ぶ方向または外周に接して結ぶ方向と一致しており、この結果さらにプーリー規制スライダー43とプーリー軸受け37と被動プーリー軸36と上記被動プーリー5の移動方向にも一致しており、プーリー軸受け37の移動方向は、2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。
【0037】
このスライド方向の規制は、上記長尺支柱16のアリ堤22と支点軸受け19のアリ溝23のスライド方向の規制と同じである。したがって、プーリー軸受け37及びプーリー規制スライダー43などの、被動プーリー軸36のプーリー軸受け規制機構の移動方向は、上記支点軸受け19などの、テコ板28の支点軸27の支点軸受け規制機構に対して、上記2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。
【0038】
この結果、プーリー軸受け37の移動方向が、上記2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制されるから、被動プーリー5の移動によって帯鋸10が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0039】
上記テコ板28の作用点の有る作用ピン41の位置と、プーリー規制スライダー43がプーリー軸受け37を支える横連結ピン39の連結位置つまり前後方向(被動プーリー軸36に沿った方向)の位置とは同じで一致、またはテコ板28が動いてもほぼ同じでほぼ一致している。したがって、テコ板28の動きによって作用点が移動しても、被動プーリー軸36及び被動プーリー5が前後方向に傾斜せず、帯鋸10に斜めの無理な力がかかって破損することがなくなる。
【0040】
また、上記テコ板28の作用点の有る作用ピン41の位置と、横連結ピン39の中心線とは同じで一致、またはテコ板28が動いてもほぼ同じでほぼ一致している。したがって、テコ板28の動きによって作用点が移動しても、横連結ピン39の真上の被動プーリー軸36及び被動プーリー5が左右方向(被動プーリー軸36に直交する方向)に傾斜せず、帯鋸10が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0041】
(4)ブレーキ機構
図7は帯鋸装置1のブレーキ機構を示す。上記被動プーリー軸36のプーリー軸受け37のさらに先端には、円盤状のブレーキディスク51(ブレーキ体)の中心が嵌め込まれて固定され、被動プーリー軸36及び被動プーリー5とともに一体回転される。一方、上記プーリー軸受け37の側面のブレーキディスク51の傍には、ブレーキ杆52が立設されており、このブレーキ杆52の先端は折れ曲がって上記ブレーキディスク51の真上に達している。
【0042】
このブレーキ杆52の先端には自転車のブレーキと同じ構造のブレーキシステムが取り付けられている。すなわち、ブレーキ杆52の先端にはブレーキ支軸53が突設され、このブレーキ支軸53には2つの当接杆54、54の中央が回動可能に嵌め込まれており、この2つの当接杆54、54は互いに交差して、その下端はブレーキディスク51の上両面に達している。
【0043】
この当接杆54、54の下端には当接ゴム体55、55(ブレーキ体)がねじ留めなどで取り付けられ固定されている。この当接ゴム体55、55は、互いに対向するとともに、間に上記ブレーキディスク51の上縁を挟み、この当接ゴム体55、55が、ブレーキディスク51に対して対向して配置され、当該当接ゴム体55、55は、ブレーキディスク51に前後両面から当接可能となっている。
【0044】
中にブレーキワイヤー56(連結体)を内蔵したブレーキチューブ57(連結体)の中のブレーキワイヤー56一端は、上記一方の当接杆54の上端に固定され、ブレーキチューブ57の一端は上記他方の当接杆54の上端に固定される。また、このブレーキチューブ57の他端は、上記ブレーキ杆52に固定され、ブレーキワイヤー56の他端は、上記テコ板28の中央の折り曲げ個所付近の上側に固定される。このようにして、テコ板28と当接ゴム体55、55とが連結される。
【0045】
上記テコ板28の折り曲げ個所付近の下側において、支点軸受け19の下方の側面にはリミットスイッチ58が設けられている。このリミットスイッチ58が作動すると、上記駆動モーター7への電源の供給が遮断され、場合によって駆動モーター7は発電制動回路または回生制動回路(図示せず)に切り替えられて接続され、駆動モーター7の回転駆動が停止され、駆動プーリー4の回転が急速に停止され、帯鋸装置1が損傷しない。
【0046】
帯鋸10が切断するまたは駆動プーリー4または被動プーリー5から外れるなど、帯鋸装置1に大きな異常が生じて、被動プーリー5を下の駆動プーリー4側に付勢する力が無くなると、被動プーリー5、プーリー軸受け37及び被動プーリー軸36がテコ板28の錘29の重量の作用によって持ちあがり、テコ板28は下方へ大きく回動する。
【0047】
そうすると、ブレーキワイヤー56の一端が引っ張られ、当接杆54が回動して、当接ゴム体55がブレーキディスク51に当接する。この時同時に、ブレーキワイヤー56が引っ張られる反作用によって、ブレーキチューブ57の一端が上記ブレーキワイヤー56の一端とは反対方向に引っ張られ、もう一つの当接杆54が回動して、もう一つの当接ゴム体55がブレーキディスク51に当接する。
【0048】
これにより、ブレーキディスク51の前後両側から当接ゴム体55、55が当接して、ブレーキディスク51の回転が急速に停止されるとともに、被動プーリー軸36及び被動プーリー5の回転も停止される。こうして、帯鋸10が切断したり外れたりして、駆動プーリー4と被動プーリー5とが互いに離間し、これに沿ってテコ板28が動いた時、被動プーリー5の回転が急速に停止され、帯鋸装置1が損傷しない。
【0049】
なお、図示していないが、土台フレーム2、支柱フレーム3の上の被動プーリー5と駆動プーリー4との間には、載置台が前後に移動可能に設置され、この載置台の中央には前後に伸びるスリットが形成され、このスリット内を上記帯鋸10が挿通している。載置台の切断対象物を乗せて、載置台と切断対象物とを前後に動かすと、切断対象物に帯鋸10が当たり、切断対象物が切断されていく。
【0050】
(5)帯鋸10のメイン調整及びサブ調整
上記帯鋸10の張り具合/張力を調整したり、帯鋸10を交換したり入れ替えたりするには、帯鋸10上述のメイン調整機構を使って調整する。調整ハンドル21を回して、駆動プーリー4に被動プーリー5に近づければ、帯鋸10が緩むので、帯鋸10を外して別の帯鋸10を駆動プーリー4及び被動プーリー5に掛け渡したり、切断された帯鋸10に代えて新たな帯鋸10を駆動プーリー4及び被動プーリー5に掛け渡したりすることができる。
【0051】
次いで、調整ハンドル21を反対方向に回すと、支点軸受け19及びプーリー規制スライダー43が一体的に持ち上がって上昇し、これに応じて作用ピン41、プーリー軸受け37、被動プーリー軸36及び被動プーリー5も同様に同じ高さ分持ち上がって上昇する。これにより、被動プーリー5が駆はられる動プーリー4から遠ざかり、帯鋸10が被動プーリー5及び駆動プーリー4から外れなくなり、帯鋸10が張られる。
【0052】
このとき、上記テコ板28は向きを変えず回動せず、支点軸受け19及び支え板17とともに、同様に同じ高さ分持ちあがって上昇する。これにより、テコ板28が被動プーリー軸36及び被動プーリー5に作用するモーメント及び力が変化せず、上記帯鋸10に対する張力/張りが不用意に変化してしまうことがない。
【0053】
また、上記リミットスイッチ58(作動機構)、ブレーキワイヤー56(連結体)、ブレーキチューブ57(連結はられる体)も、上記テコ板28、支点軸受け19、支え板17及びプーリー規制スライダー43とともに、同様に同じ高さ分持ちあがって上昇する。
【0054】
これにより、リミットスイッチ58(作動機構)、ブレーキワイヤー56(連結体)、ブレーキチューブ57(連結体)のテコ板28に対する相対的位置が変化せず、誤ってブレーキディスク51に当接ゴム体52が当接せず、また誤ってリミットスイッチ58が作動して駆動モーター7が停止してしまうことがなく、駆動プーリー4及び被動プーリー5並びに帯鋸10が円滑に駆動される。
【0055】
この調整において、長尺支柱16のアリ堤22及び支点軸受け19のアリ溝23によって、支点軸受け19の移動方向は、2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。したがって、この場合の被動プーリー5の移動によって帯鋸10が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0056】
また、テコ板28及び被動プーリー5が上下動しても、テコ板28の支点、作用点及び力点の被動プーリー5及び被動プーリー軸36に対する作用点及びモーメント位置は変化せず、テコ板28の力点から伝えられる力もモーメントも変化しないで済む。
【0057】
ここで、調整ハンドル21をさらに反対方向に回すと、プーリー軸36及びプーリー軸受け37はこれ以上上昇できないので、プーリー軸受け37から、作用ピン41を通じて、支点軸27及びテコ板28を上向きに回動させる力が働き、テコ板28及び錘29が図3のやや下向きに傾いた状態から図4の水平状態になる。
【0058】
図3及び図4は、このときの変化を示す。この図4の状態になれば、テコ板28及び錘29の作用によって、帯鋸10が強く張られる、帯鋸10の張力が増す。このテコ板28が水平状態にあるときが、錘29のモーメントがもっとも大きく、帯鋸10が最も強く張られ、帯鋸10の張力ももっとも大きくなる。
【0059】
ここで、さらに錘29を、支点軸27から離れる方向に、テコ板28に沿ってスライドさせると、錘29のモーメントが大きくなり、テコ板28が図3のやや下向きの状態に戻る。そして、調整ハンドル21をまたさらに反対方向に回すと、同様にして、テコ板28及び錘29が図4の水平状態になる。
【0060】
この場合、帯鋸10はさらに強く張られ、より強い張力が得られる。以上を繰り返すと、帯鋸10はまたさらに強く張られ、さらにより強い張力が得られる。以上の操作を逆にして、調整ハンドル21をさらに正方向に回し、錘29を支点軸27に近づけると、帯鋸10は緩められ、張力が弱められる。
【0061】
このように、調整ハンドル21の回転と、錘29のスライドとによって、帯鋸10の張りと張力を調整できるし、帯鋸10の張力を切断対象に合わせて最適に調整できる。このような調整ハンドル21の回転と、錘29のスライドによる、調整は次述する帯鋸10の伸縮時に置いても可能である。
【0062】
帯鋸10の張り/張力を調整した後、調整しながらまたはこの前に、テコ板28の錘29をテコ板28に沿って左右に動かし、テコ板28の傾きを調整することもできる。帯鋸10の切断対象が冷たく、帯鋸10が縮むと予想される場合には、テコ板28の傾きを下側にする。帯鋸10の切断対象が温かくまたは熱く、帯鋸10が伸びると予想される場合には、テコ板28の傾きを上側にする。切断対象が冷たいもの及び熱いものの両方の場合には、この下側と上側の中間にされる。
【0063】
このようなテコ板28の上下の調整によって、被動プーリー5、被動プーリー軸36及びブレーキディスク51は若干上下するが、このとき、ブレーキ杆52、ブレーキ支軸53、当接杆54、当接ゴム体55、55、ブレーキワイヤー56、ブレーキチューブ57、リミットスイッチ58も連動して同じ量上下動する。
【0064】
この結果、ブレーキディスク51から当接ゴム体55、55がずれてしまうことがない。また、このようなテコ板28の上下の調整によって、ブレーキワイヤー56は若干引っ張られたり緩められたりされて、当接ゴム体55、55の間隔が若干広がったり狭まったりされるが、当接ゴム体55の間隔は余裕をもった配置とされる。
【0065】
切断対象が冷たくて、帯鋸10が縮むと、被動プーリー5が下降する。すると、被動プーリー軸36及びプーリー軸受け37が同様に下降し、作用ピン41が下へ押され、支点軸27が回動され、テコ板28が上へ回動する。これにより、帯鋸10の収縮が吸収されるとともに、帯鋸10の張り/張力が強くなり過ぎず、帯鋸10が破損せず、帯鋸10の張り/張力が一定に保たれ、切断対象がきれいに切断される。
【0066】
また、切断対象が温かいまたは熱くて、帯鋸10が伸びると、帯鋸10が被動プーリー5を下方へ引っ張る力が弱まる。すると、テコ板28の錘29の力で、支点軸27が逆向きに回動され、作用ピン41が上へ押し上げられ、プーリー軸受け37及び被動プーリー軸36が同様に上昇する。これにより、帯鋸10の伸長が吸収されるとともに、帯鋸10の張り/張力が弱くなり過ぎず、帯鋸10が弛まず、帯鋸10の張り/張力が一定に保たれ、切断対象がきれいに切断される。
【0067】
この自動調整において、支点軸受け19のアリ溝42及びプーリー規制スライダー43のアリ堤44によって、プーリー規制スライダー43、プーリー軸受け37及び被動プーリー軸36の移動方向は、2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。したがって、この場合の被動プーリー5の移動によって帯鋸10が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0068】
以上のように、プーリー規制スライダー(プーリー軸受け規制機構)43とテコ板28の支点軸受け19とを別体として、両者の動きを独立にしたので、テコ板28自体がテコの働きをせずに、被動プーリー5が上下動して帯鋸10を調整する作業と、テコ板28自体がテコの働きをして被動プーリー5が上下動して帯鋸10を調整する作業とを独立にして、多重の複合的な調整ができる。
【0069】
(6)他の実施の形態
本発明は、上記実施例に限定されず、種々変更可能である。例えば、帯鋸10は垂直向きだけではなく、水平方向、前後または左右に斜め方向になっていてもよい。帯鋸10は掛け渡される駆動プーリー4及び被動プーリー5は同形同大であったが、径が異なっていても良い。この場合、二列の帯鋸10のうち、切断対象物が切断される帯鋸10の方だけが、上記垂直方向若しくは上記水平方向または斜め方向にされる。このような場合でも、上述したように、帯鋸10の収縮・膨張が有っても方向が変化しないように維持される。
【0070】
プーリー4、5の数は2つ以外に3つ以上でもよい。この場合でも1つのプーリーを他の1つのプーリーに接近させる方向または離間させる方向に、同様にして調整できる。上記載置台の上面及び切断対象物は、水平であるが、前後または左右に傾斜していてもよいし、帯鋸10が水平に配置される時には、帯鋸10に対して平行に配置されたり、斜めに配置されたり、直交する方向に配置される。
【0071】
上記テコ板28の力点は錘29のほか、コイルバネ等の弾性体、モーター・電磁ソレノイド等の動力源による押圧・牽引等でもよい。支点軸受け19または長尺支柱16(長尺体)は省略されてもよい。帯鋸10の全体調整は別の手段で実行されたり、帯鋸10は予め正確な長さに設定されたりする。
【0072】
錘(力点/力点機構)29は、テコ板(テコ体)28を下方へ付勢する引っ張りばね、または押圧ばね等の付勢弾性体、油圧ばね、空気圧ばねなど、何でもよい。テコ板(テコ体)28は、歯車機構、ロープ及び滑車機構など、テコの機能を発揮できれば何でもよい。
【0073】
また、テコ板28の作用点は支点と力点の間に位置してもよい。この場合、テコ板28の作用点の力は上向きの持ち上げではなく下向きの押し下げとなり、図1の被動プーリー5と駆動プーリー4とは上下入れ替わり、図2の調整機構は下側の被動プーリー5側に設けられ、テコ板28及びピン受け31は支点軸27をとおる垂直軸で左右対称に反転され、軸受け部26は支点軸受け19の上方に位置し、横連結穴38、ピン受け40、作用ピン41及び横連結ピン39は、プーリー軸受け37の上側に位置する。
【0074】
上記ブレーキチューブ(連結体)57は省略され、ブレーキワイヤー(連結体)56の先端が2つに分岐されて、当接杆54、54の上端にそれぞれ固定され、テコ板28が下動したとき、2つの当接杆54、54の上端が互いに接近するように、引っ張られてもよい。ブレーキ杆52はプーリー規制スライダー43に固定されてもよい。
【0075】
この場合、当接杆(当接体)54の上端の間において、プーリー規制スライダー43、支え板17または支点軸受け19に対してリングが固定され、このリングを上記ブレーキワイヤー56が挿通されて2つに分岐される。またこのような連結体は、ブレーキワイヤー56等以外に、ボルト、ナット、リンク機構、クランク機構など、テコ板28とブレーキ体を連結できれば何でもよい。
【0076】
ブレーキ体は、ブレーキディスク51のほか、被動プーリー5、被動プーリー軸36または駆動プーリー4の側面または周面そのものでもよく、これらに当接ゴム体(当接体)55が当接する。当接ゴム体(当接体)55は、金属製でも樹脂製でも良く、当接面は平坦でも湾曲して凹んでも湾曲して膨らんでもたわしのように剛毛状でもよい。
【0077】
上記のようなブレーキ機構を支えるブレーキ杆52は、プーリー規制スライダー43ではなく、支え板17または支点軸受け19に取り付けられてもよい。この場合、ブレーキディスク51に対して当接ゴム体55、55が上下に若干移動するが、これに対応できるように、当接ゴム体55及びブレーキディスク51は十分な大きさと余裕をもった配置とされる。
【0078】
上記プーリー規制スライダー43は省略され、プーリー規制スライダー43と支点軸受け19とは一体化されてもよい。上記支点軸受け19は省略され、支点軸受け19と長尺支柱(長尺体)16とは一体化されてもよい。駆動モーター7は交流モーター、直流モーター、リニアモーター、内燃機関、エンジンなど、駆動プーリー4を回転できれば何でもよい。
【0079】
プーリー規制スライダー43とプーリー軸受け37との連結は、被動プーリー軸36の上、下、真横等どこでもよく、この連結は横連結穴38、横連結ピン39、傾斜調整ねじ45及び調節板46のほか、ボルト、ナット、リンク機構、クランク機構、ワイヤー、溶接など、なんでもよい。
【0080】
リミットスイッチ58が設けられる個所は、支点軸受け19のほか、長尺支柱(長尺体)16、プーリー規制スライダー(プーリー軸受け規制機構)43等、検出できればどこに設けられても良いし、リミットスイッチ(作動手段)58が当接するのは、テコ板28のほか、錘29、支点軸(支点)27、張力受け部30など検出できれば何でもよい。
【0081】
上記ピン受け31、ピン受け40は省略され、張力受け部30上面と横連結穴38の下面にテーパー状の凹部が形成されてもよい。作用ピン41は作用点の機能を発揮できれば、ピンのほか、張力受け部から上に突出した突起、横連結穴38の下面から突出した突起、リンク機構、クランク機構など作用点の機能を発揮できれば何でもよい。
【0082】
テコ板28の作用点の力の伝達は、作用ピン41のほか、ボルト、ナット、リンク機構、クランク機構、頑丈なコイルバネ等でもよい。この作用ピン41の形状は、卵形、角錐形でも良いし、上端または下端がとんがった山状ではなく尖った屋根状/山脈状でも良いし、張力受け部30の完全に一体化されてもよいし、プーリー軸受け37に完全に一体化されてもよい。
【0083】
テコ板28は円板状、立体状、ワイヤー状、紐状など、梃子作用が可能であればどのような形状でもよい。アリ堤(長尺体/支点軸受け規制機構)22、アリ溝(長尺体/支点軸受け規制機構)23、アリ溝(長尺体/プーリー軸受け規制機構)42、アリ堤(長尺体/プーリー軸受け規制機構)44は、スライド杆とこれを間に挟んでスライド可能に保持するスライダー、ピニオン及びラック機構、移動方向を規制できれば何でもよい。
【0084】
上記支点軸(支点)27及び軸受け部26は、軸のほか、軸受け部26の上に形成された断面「V字状」の凹溝と、この凹溝内に揺動可能に当接する、断面「V字状」の凸堤であっても良く、支点の機能を発揮できれば何でもよい。この場合、テコ板28は支点軸27の反対側にも延出されて錘などが連結される。
【0085】
支点軸受け19の上下動は、支え板17、調整台形雄ねじ18、台形雌ねじ20のほか、スクリューの雄ねじ及び雌ねじ、万力機構、リンク機構、クランク機構など、支点軸受け19を上下動できれば何でもよい。被動プーリー5及び駆動プーリー4は、帯鋸10を掛け渡すことができれば、歯車など、なんでもよい。
【0086】
上述の土台フレーム2、支柱フレーム3、駆動プーリー4、被動プーリー5、被動ベルト車6、駆動モーター7、駆動ベルト車8、ベルト9、1帯鋸10、長尺支柱(長尺体)16、支え板17、調整台形雄ねじ18、支点軸受け19、台形雌ねじ20、調整ハンドル21、アリ堤(長尺体/支点軸受け規制機構)22、アリ溝(長尺体/支点軸受け規制機構)23、軸受け部26、支点軸(支点)27、テコ板(テコ体)28、錘(力点/力点機構)29、張力受け部30、ピン受け31、スラストベアリング21、ギアボックス33、被動プーリー軸36、プーリー軸受け37、横連結穴38、横連結ピン39、ピン受け40、作用ピン41、アリ溝(長尺体/プーリー軸受け規制機構)42、プーリー規制スライダー(プーリー軸受け規制機構)43、アリ堤(長尺体/プーリー軸受け規制機構)44、傾斜調整ねじ45、調節板46、横連結穴47、ブレーキディスク(ブレーキ体)51、ブレーキ杆52、ブレーキ支軸53、当接杆(当接体)54、当接ゴム体(当接体)55、ブレーキワイヤー(連結体)56、ブレーキチューブ(連結体)57、リミットスイッチ(作動手段)58の一部または全体は省略されてもよいし、その数が増えても減ってもよいし、その形状は任意に変更可能であり、均等の他の物に置き換えられてもよいし、これらの2つまたは3つ以上が合体または一体化されて兼用されてもよいし、材質は木製、竹製、樹脂製、金属製、ガラス製、綿製、布製、糸性、繊維製、ゴム製、紙製、セラミック製、カーボン製、硬質ウレタン製、これらの合成物製/混合物製/多層積層物製でもよい。
【0087】
(7)他の発明の効果
[1]帯鋸装置に回転可能に支持された少なくとも2つのプーリーと、 この少なくとも2つのプーリーに掛け渡された帯鋸と、 上記帯鋸装置に回動可能に取り付けられるとともに、この回動の軸を支点としたテコ体と、 このテコ体の力点に力を加える力点機構と、 上記テコ体の作用点から力を受けて、上記プーリーを互いに離間させる方向に付勢するとともに、上記プーリーの軸を受けるプーリー軸受けと、 このプーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制する、上記帯鋸装置に取り付けられたプーリー軸受け規制機構とを備えたことを特徴とする帯鋸の調整装置。
【0088】
[2]上記テコ体の支点の回動軸を受ける支点軸受けと、 この支点軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制する、上記帯鋸装置に取り付けられた支点軸受け規制機構とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の帯鋸の調整装置。
【0089】
これにより、テコ体が動いたり被動プーリーが動いたりしても、テコ体の支点、作用点及び力点のプーリー及びプーリーの軸に対する作用点及びモーメント位置は変化せず、テコ体の力点から伝えられる力もモーメントも変化せず、帯鋸の張力が一定に保たれる。 また、テコ体の動きは回動であるにもかかわらず、これを2つのプーリーを結ぶ直線方向に規制でき、モーメント及び力の変化がなくバランスをとることができる。
【0090】
さらに、プーリー軸受け(43)とテコ体の支点軸受け(19)とを別体として、両者の動きを独立にしたので、テコ体自体がテコの働きをせずに、プーリー(5)が上下動して帯鋸を調整する作業と、テコ体自体がテコの働きをしてプーリー(5)が上下動して帯鋸を調整する作業とを独立にして、多重の複合的な調整ができる。
【0091】
[3]上記プーリー軸受け規制機構の移動方向は、上記支点軸受け規制機構に対して、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制されることを特徴とする請求項2記載の帯鋸の調整装置。 これにより、プーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制するから、プーリーの移動によって帯鋸が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0092】
[4]上記支点軸受けと支点軸受け規制機構とは、 上記帯鋸装置に固定された長尺体と、この長尺体に対して上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみスライド可能に取り付けられた、上記テコ体の支点の回動軸を受ける支点軸受けとを備えたことを特徴とする請求項2記載の帯鋸の調整装置。
【0093】
これにより、テコ体が動いたり被動プーリーが動いたりしても、テコ体の支点、作用点及び力点のプーリー及びプーリーの軸に対する作用点及びモーメント位置は変化せず、テコ体の力点から伝えられる力もモーメントも変化せず、帯鋸の張力が一定に保たれる。
【0094】
[5]上記プーリー軸受けとプーリー軸受け規制機構とは、 上記支点軸受けに設けられた長尺体と、この長尺体に対して上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみスライド可能に取り付けられた、上記プーリーの軸を受けるプーリー軸受けとを備えたことを特徴とする請求項4記載の帯鋸の調整装置。
【0095】
これにより、プーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制するから、プーリーの移動によって帯鋸が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0096】
[6]上記プーリー軸受けと上記テコ体の作用点と間は、微小な一点で連結されていることを特徴とする請求項5記載の帯鋸の調整装置。
[6−2]上記プーリー軸受けと上記テコ体の作用点と間には、両端が尖ったピンが介在され、このプーリー軸受け及びテコ体の作用点には、このピンの尖った先端が当接して移動しない凹部が形成されていることを特徴とする請求項5記載の帯鋸の調整装置。
【0097】
これにより、上記テコ板が動いて傾きが変わっても、上記テコ板の力点の力が、プーリー軸受け及び被動プーリー軸に正確に伝えられ、伝えられる位置も力も変化せず、帯鋸の張力が一定に保たれる。
【0098】
[7]上記テコ体の作用点の位置と、上記プーリー軸受けとプーリー軸受け規制機構との連結位置とはほぼ一致していることを特徴とする請求項1記載の帯鋸の調整装置。 これにより、テコ体の動きによって作用点が移動しても、上記プーリー及びこのプーリーの軸がこの軸に沿った方向に傾斜せず、帯鋸に斜めの無理な力がかかって破損することがなくなる。
【0099】
[8]上記プーリーの軸に固定され、当該プーリーと一体回転するブレーキ体と、 このブレーキ体に対向して配置され、当該ブレーキ体に当接可能な当接体と、 この当接体と上記テコ体とを連結し、上記プーリーが互いに離間し、これに沿って上記テコ体が動いたとき、当該当接体を上記ブレーキ体に当接させて、上記プーリーの回転を停止させる連結体とを備えたことを特徴とする請求項1記載の帯鋸の調整装置。
【0100】
これにより、帯鋸が切断したり外れたりして、プーリーが互いに離間し、これに沿ってテコ体が動いた時、プーリーの回転が急速に停止され、帯鋸装置が損傷しない。 また、テコ体を、上記帯鋸の収縮・伸長に対する調整と、帯鋸の切断時またはプーリーからの離脱時の緊急停止との両方に兼用できる。
【0101】
[9]上記テコ体が動いたとき作動され、上記プーリーの駆動モーターの駆動を停止させる作動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の帯鋸の調整装置。 これにより、帯鋸が切断したり外れたりして、プーリーが互いに離間し、これに沿ってテコ体が動いた時、プーリーの回転が急速に停止され、帯鋸装置が損傷しない。
【0102】
[10]上記テコ体の支点の回動軸を受ける支点軸受けを備え、上記連結体または作動手段は、上記テコ板またはこの支点軸受けとともに移動することを特徴とする請求項8または9記載の帯鋸の調整装置。
【0103】
これにより、作動機構、連結体のテコ体に対する相対的位置が変化せず、誤ってブレーキ体に当接体が当接せず、また誤って作動機構が作動して駆動モーターが停止してしまうことがなく、プーリー及び帯鋸が円滑に駆動される。
【0104】
[11]帯鋸装置に回転可能に支持された少なくとも2つのプーリーと、 この少なくとも2つのプーリーに掛け渡された帯鋸と、 上記帯鋸装置に回動可能に取り付けられるとともに、この回動の軸を支点としたテコ体と、 このテコ体の力点に力を加える力点機構と、を備えた帯鋸装置において、
上記テコ体の作用点から力を受けて、上記プーリーを互いに離間させる方向に付勢するとともに、上記プーリーの軸を受け、 このプーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制することを特徴とする帯鋸の調整方法。
【産業上の利用可能性】
【0105】
帯鋸の収縮または伸長があっても、帯鋸が掛け渡されたプーリーを他のプーリーに接近または離間させて、帯鋸の張り/張力を調整する。切断対象が冷たくて、帯鋸10が縮むと、被動プーリー5が下降し、被動プーリー軸36及びプーリー軸受け37が同様に下降し、作用ピン41が下へ押され、支点軸27が回動され、テコ板28が上へ回動する。これにより、帯鋸10の収縮が吸収されるとともに、帯鋸10の張り/張力が強くなり過ぎず、帯鋸10が破損せず、帯鋸10の張り/張力が一定に保たれ、切断対象がきれいに切断される。切断対象が熱いとこの逆になる。
【0106】
支点軸受け19のアリ溝42及びプーリー規制スライダー43のアリ堤44によって、プーリー規制スライダー43、プーリー軸受け37及び被動プーリー軸36の移動方向は、2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。したがって、この場合の被動プーリー5の移動によって帯鋸10が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0107】
調整ハンドル21を回して、駆動プーリー4に被動プーリー5に近づければ、帯鋸10が緩むので、帯鋸10を外して別の帯鋸10を駆動プーリー4及び被動プーリー5に掛け渡したり、切断された帯鋸10に代えて新たな帯鋸10を駆動プーリー4及び被動プーリー5に掛け渡したりすることができる。調整ハンドル21を反対方向に回すと、この逆になる。
【0108】
このとき、長尺支柱16のアリ堤22及び支点軸受け19のアリ溝23によって、支点軸受け19の移動方向は、2つの駆動プーリー4及び被動プーリー5を結ぶ方向にのみ規制される。したがって、この場合の被動プーリー5の移動によって帯鋸10が傾いてしまうことがなく、切断対象が斜めに切断されることもなくなる。
【0109】
またこのとき、上記テコ板28は向きを変えず回動せず、支点軸受け19及び支え板17とともに、同様に同じ高さ分持ちあがって上昇する。これにより、テコ板28が被動プーリー軸36及び被動プーリー5に作用するモーメント及び力が変化せず、上記帯鋸10に対する張力/張りが不要に変化してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】帯鋸装置1の全体外観を示す。
【図2】帯鋸装置1のメイン調整機構及びサブ調整機構の分解図を示す。
【図3】帯鋸装置1の被動プーリー5付近の正面を示す。
【図4】帯鋸装置1の被動プーリー5付近のテコ板28が上動した状態の正面を示す。
【図5】長尺支柱(長尺体)16、支点軸受け19、プーリー規制スライダー(プーリー軸受け規制機構)43及びその周辺の縦断面を示す。
【図6】支点軸受け19及びその周辺の縦断面を示す。
【図7】帯鋸装置1のブレーキ機構を示す。
【符号の説明】
【0111】
1…帯鋸装置、2…土台フレーム、
3…支柱フレーム、4…駆動プーリー、
5…被動プーリー、6…被動ベルト車、
7…駆動モーター、8…駆動ベルト車、
9…ベルト、10…帯鋸、
16…長尺支柱(長尺体)、17…支え板、
18…調整台形雄ねじ、19…支点軸受け、
20…台形雌ねじ、21…調整ハンドル、
22…アリ堤(長尺体/支点軸受け規制機構)、
23…アリ溝(長尺体/支点軸受け規制機構)、
26…軸受け部、27…支点軸(支点)、
28…テコ板(テコ体)、29…錘(力点/力点機構)、
30…張力受け部、31…ピン受け、
32…スラストベアリング、33…ギアボックス、
36…被動プーリー軸、37…プーリー軸受け、
38…横連結穴、39…横連結ピン、
40…ピン受け、41…作用ピン、
42…アリ溝(長尺体/プーリー軸受け規制機構)、
43…プーリー規制スライダー(プーリー軸受け規制機構)、
44…アリ堤(長尺体/プーリー軸受け規制機構)、
45…傾斜調整ねじ、46…調節板、47…横連結穴、
51…ブレーキディスク(ブレーキ体)、52…ブレーキ杆、
53…ブレーキ支軸、54…当接杆(当接体)、
55…当接ゴム体(当接体)、56…ブレーキワイヤー(連結体)、
57…ブレーキチューブ(連結体)、58…リミットスイッチ(作動手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯鋸装置に回転可能に支持された少なくとも2つのプーリーと、
この少なくとも2つのプーリーに掛け渡された帯鋸と、
上記帯鋸装置に回動可能に取り付けられるとともに、この回動の軸を支点としたテコ体と、
このテコ体の力点に力を加える力点機構と、
上記テコ体の作用点から力を受けて、上記プーリーを互いに離間させる方向に付勢するとともに、上記プーリーの軸を受けるプーリー軸受けと、
このプーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制する、上記帯鋸装置に取り付けられたプーリー軸受け規制機構とを備えたことを特徴とする帯鋸の調整装置。
【請求項2】
上記テコ体の支点の回動軸を受ける支点軸受けと、 この支点軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制する、上記帯鋸装置に取り付けられた支点軸受け規制機構とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の帯鋸の調整装置。
【請求項3】
上記プーリー軸受け規制機構の移動方向は、上記支点軸受け規制機構に対して、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制されることを特徴とする請求項2記載の帯鋸の調整装置。
【請求項4】
上記支点軸受けと支点軸受け規制機構とは、 上記帯鋸装置に固定された長尺体と、この長尺体に対して上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみスライド可能に取り付けられた、上記テコ体の支点の回動軸を受ける支点軸受けとを備えたことを特徴とする請求項2記載の帯鋸の調整装置。
【請求項5】
上記プーリー軸受けとプーリー軸受け規制機構とは、 上記支点軸受けに設けられた長尺体と、この長尺体に対して上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみスライド可能に取り付けられた、上記プーリーの軸を受けるプーリー軸受けとを備えたことを特徴とする請求項4記載の帯鋸の調整装置。
【請求項6】
上記プーリー軸受けと上記テコ体の作用点と間は、微小な一点で連結されていることを特徴とする請求項5記載の帯鋸の調整装置。
【請求項7】
上記テコ体の作用点の位置と、上記プーリー軸受けとプーリー軸受け規制機構との連結位置とはほぼ一致していることを特徴とする請求項1記載の帯鋸の調整装置。
【請求項8】
上記プーリーの軸に固定され、当該プーリーと一体回転するブレーキ体と、
このブレーキ体に対向して配置され、当該ブレーキ体に当接可能な当接体と、
この当接体と上記テコ体とを連結し、上記プーリーが互いに離間し、これに沿って上記テコ体が動いたとき、当該当接体を上記ブレーキ体に当接させて、上記プーリーの回転を停止させる連結体とを備えたことを特徴とする請求項1記載の帯鋸の調整装置。
【請求項9】
上記テコ体が動いたとき作動され、上記プーリーの駆動モーターの駆動を停止させる作動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載の帯鋸の調整装置。
【請求項10】
上記テコ体の支点の回動軸を受ける支点軸受けを備え、上記連結体または作動手段は、上記テコ板またはこの支点軸受けとともに移動することを特徴とする請求項8または9記載の帯鋸の調整装置。
【請求項11】
帯鋸装置に回転可能に支持された少なくとも2つのプーリーと、
この少なくとも2つのプーリーに掛け渡された帯鋸と、
上記帯鋸装置に回動可能に取り付けられるとともに、この回動の軸を支点としたテコ体と、
このテコ体の力点に力を加える力点機構と、を備えた帯鋸装置において、
上記テコ体の作用点から力を受けて、上記プーリーを互いに離間させる方向に付勢するとともに、上記プーリーの軸を受け、
このプーリー軸受けの移動方向を、上記2つのプーリーを結ぶ方向にのみ規制することを特徴とする帯鋸の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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