説明

帯電ロール

【課題】耐汚れ性に優れ、均一な帯電性を確保できると共に、材料選択の幅が広く、製造が容易な帯電ロールを提供する。
【解決手段】軸体2と、該軸体2の外周に沿って形成され、表面に凹凸部41が設けられている弾性層4と、該弾性層4の表面を被覆する表層5とを備える帯電ロール1であって、前記弾性層4の凹凸部41が弾性層4表面の凹凸加工により形成されたものであり、前記弾性層4の表面の、十点平均粗さRzを1.5μm以上、8μm未満、負荷長さ率tp(50%)を60%以上、負荷長さ率tp(40%)を80%以下に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電ロールに関し、さらに詳しくは、電子写真機器などに好適な帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器が広く使用されている。これら電子写真機器の内部には、感光ドラムなどの感光体が組み込まれている。そして、この感光体に接触或いは近接して、該感光体を帯電させるために、帯電ロールが用いられている。
【0003】
帯電ロールは、感光体と接触した際に、表面にトナーが付着して汚れることがある。転写されずに感光体に残っているトナー粒子は、ブレードで除去されるが完全には除去されずに残存する。除去されなかったトナー粒子は、ブレードをすりぬけて帯電ロールに付着することになる。帯電ロールにトナー粒子が付着していると、その付着部分に別のトナー粒子が付着し易くなる。トナー粒子が付着した部分には、次々にトナーが堆積し、いわゆるブリッジと呼ばれる汚れが発生する。帯電ロールの汚れを防止するためには、帯電ロールの表面をトナーが付着し難いように形成する必要がある。また帯電ロールは、感光体を帯電させる際に、感光体を均一に帯電させることが要求される。
【0004】
従来、帯電ロールにおいて、表面の汚れを防止し、感光体を均一に帯電するために、帯電ロールの表面にバインダー樹脂及び凹凸形成用粒子などを含む組成物を塗工して、表面に微細な凹凸による凹凸形状を設けて粗面化を行うことが公知である(例えば、特許文献1〜2参照)。特許文献1は、表面の導電性樹脂層に大粒径、及び小粒径の2種類の凹凸形成用粒子を添加することで、表面粗さが10〜25μmの凹凸形状を有する表層を設けた帯電ロールが開示されている。特許文献2は、表面に粒子径が3μm以下の有機又は無機粒子からなる凹凸形成用粒子を含む塗膜を設け、凹凸形状を有する表層を形成した帯電ロールが開示されている。
【0005】
帯電ロールの表面が平滑に形成されていると、帯電ロールと感光体が接触する場合、帯電ロールは感光体と面接触の状態となり、摩擦力が発生して汚れが付着し易くなる。これに対し、上記特許文献に記載された帯電ロールの様に、表層に微細な凹凸があると、帯電ロールは感光体と点で接触するため、汚れが堆積し難くなり、耐汚れ性が向上する。また、帯電ロールの表面に凹凸形状があると、帯電ロールと感光体との間に隙間が形成されることから、放電がし易くなって均一な帯電性を確保できる。
【0006】
しかし、上記帯電ロールは、表層に凹凸形成用粒子を含有しているため、帯電ロールの使用中に、表層から粒子が脱落するおそれがあった。表層から凹凸形成用粒子が脱落すると、該粒子に起因する感光ドラム削れが発生したり、帯電ロールの表層が削れることになり、長期間使用した後の帯電ロールの性能低下が懸念される。
【0007】
上記の問題を解決するために、帯電ロールの表層に凹凸形成用粒子を含有させずに、表層の下層の中間層のみに凹凸形成用粒子を含有させたものが公知である(例えば特許文献3の段落0005及び図4参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2003−316111号公報
【特許文献2】特開2006−91675号公報
【特許文献3】特開2005−274768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、中間層に凹凸形成用粒子を含有せしめた帯電ロールは、凹凸形成用粒子を添加した塗工組成物を使用するため以下の問題があった。凹凸形成用粒子を添加した塗工組成物は、使用する凹凸形成用粒子がバインダー樹脂に対する分散性が良好である必要があり、使用できるバインダー樹脂が限定されてしまう。また、塗工組成物中の凹凸形成用粒子が、塗工前に沈降してしまい、塗工組成物が不均一になるおそれがあり、塗工組成物を製造した後、直ちに塗工する必要がある。このように、上記帯電ロールは、凹凸形状を有する中間層を製造する際に、製造上の制約が大きいという問題があった。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、耐汚れ性に優れ、均一な帯電性を確保できると共に、材料選択の幅が広く、製造が容易な帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る帯電ロールは、電写真機器に用いられるものであり、軸体と、該軸体の外周に沿って形成され、表面に凹凸部が設けられている弾性層と、該弾性層の表面を被覆する表層とを備える帯電ロールであって、前記弾性層の凹凸部が表面の凹凸加工により形成されたものであり、前記弾性層の表面の、十点平均粗さRzが1.5μm以上、8μm未満、負荷長さ率tp(50%)が60%以上、負荷長さ率tp(40%)が80%以下であることを要旨とするものである。
【0012】
ここで、前記弾性層表面の凹凸部が、表面に凹凸部の凹凸形状に対応する凹凸形状が設けられた型の転写により形成されたものであると良い。
【0013】
また、前記表層の厚みが、1〜13μmであると良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る帯電ロールによれば、弾性層表面の、十点平均粗さRzが1.5μm以上、8μm未満、負荷長さ率tp(50%)が60%以上、負荷長さ率tp(40%)が80%未満としたことにより、耐汚れ性に優れ、均一な帯電性を確保でき、帯電ロールとして要求される特性を良好に発揮できる。
【0015】
さらに本発明に係る帯電ロールによれば、弾性層に凹凸部が形成されたものであり、表層に凹凸形成用粒子を含有する必要がないので、従来の表層に凹凸形成用粒子を含有する帯電ロールと比較して、使用後に凹凸形成用粒子が表層から脱落することがなく、経時的に表面の粗さが変化せず、良好な耐汚れ性及び均一な帯電性を長期間にわたり維持できる。
【0016】
さらに本発明に係る帯電ロールによれば、弾性層形成の際にバインダー樹脂の選択の幅が広がるという利点がある。すなわち、従来、弾性層の組成物に凹凸形成用粒子を添加した際は、凹凸形成用粒子の分散性などを考慮してバインダー樹脂を選択する必要があり、使用できるバインダー樹脂が限定されていた。これに対し本発明によれば、弾性層の凹凸部が表面の凹凸加工により形成されたものであるから、弾性層に凹凸形成用粒子を含有させる必要がなく、弾性層の組成物においてバインダー樹脂を選択する際に、凹凸形成粒子の分散性を考慮しなくても良い。
【0017】
また、弾性層を形成する組成物中に凹凸形成用粒子を含有させる必要がないので、塗工組成物が凹凸形成用粒子の沈降により不均一になるおそれがなく、均一な弾性層を形成することができる。しかも、弾性層形成の際に組成物の調整から塗工までの時間が制限されることもなく、製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本実施形態に係る帯電ロールについて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。本発明の帯電ロールは、例えば図1に示すように、軸体2の外周に沿ってベース層3が形成され、該ベース層3の外周に沿って弾性層4が形成され、さらに該弾性層4の外周に沿って表層5が形成されて構成されている。
【0020】
図2は本発明の帯電ロールの他の例を示す周方向断面図である。本発明の帯電ロール1は、図1に示す態様に限定されず、図2に示すように、少なくとも軸体2の外周に、表面に凹凸加工を施してなる凹凸部を備える弾性層4を有し、該弾性層4の表面を被覆し帯電ロール1の最表面に位置する表層5を有しておればよく、そのロール構造は、特に限定されるものではない。例えば、ベース層3は複数層から構成されていてもよい。
【0021】
軸体2は、アルミニウム、ステンレスなどの金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、又はこれらにめっきが施された導電性シャフトが用いられる。また必要に応じ、軸体2表面に接着剤、プライマーなどを塗布してもよい。上記接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行ってもよい。
【0022】
ベース層3は、非発泡体(ソリッド状)又は発泡体(スポンジ状)のいずれの形態でも良い。ベース層3の形成材料としては、特に限定されるものではなく、具体的には、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、などを例示することができる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0023】
また、ベース層3には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤を、上記材料中に適宜添加することができる。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加してもよい。
【0024】
なお、軸体2の外周にベース層3を形成するには、軸体2の表面にベース層形成組成物を押出成形する、あるいは、軸体2をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、ベース層形成組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型するなどすれば良い。また、ベース層3を複数層形成する場合には、上記方法に準じた操作を繰り返し行えば良い。
【0025】
図3は図1の帯電ロールの軸方向断面の表面付近を示す拡大断面図である。図3に示すように、帯電ロール1の弾性層4は、表面に微細な凹凸よりなる凹凸部41が設けられて、弾性層4の表面全体が粗面化されている。弾性層4は凹凸形成用粒子を含有せず、凹凸部41は弾性層4表面の凹凸加工により形成されたものである。そして弾性層4の表面の表面粗さは、後述するように、特定の範囲となるように形成されている。
【0026】
さらに弾性層4の表面に、前記弾性層4の凹凸部41に沿うように被覆されている、表面に凹凸形状51を有する表層5が設けられている。表層5は帯電ロール1の最表面となるように形成されている。表層5の表面の凹凸部51は、弾性層4の表面の凹凸部41の表面形状に沿った形状に形成されており、表層5の表面の表面粗さは、弾性層4の表面の表面粗さとほぼ同じ数値範囲を有している。表層5は凹凸形成用粒子を含有しない。
【0027】
本発明の帯電ロール1は、凹凸部41が設けられている弾性層4の表面が、表面粗さのパラメータである、十点平均粗さRz、負荷長さ率tp(50%)、負荷長さ率tp(40%)が特定の条件を満たしている。なお、これらの表面粗さのパラメータは、ロール軸方向について、JIS B 0601−1994に準拠して測定される値である。
【0028】
本発明の帯電ロール1において、弾性層4の表面の十点平均粗さRzは、1.5μm以上〜8μm未満の範囲内にある。このRzは、概ね、弾性層4の表面に形成されている凹凸部41の高低差に対応している。
【0029】
弾性層4の表面の十点平均粗さRzが8μm以上になると、粗面化の度合いが大きくなりすぎて、帯電ロール1の表層5と接触する感光ドラムの削れが発生し易くなるおそれがある。一方、弾性層4の表面の十点平均粗さRzが1.5μm未満になると、表層5の表面の凹凸部41の凹凸が小さくなりすぎて、凹凸部41の形成による粗面化の効果が十分発揮できず、良好な耐汚れ性及び均一帯電性が得られない。
【0030】
弾性層4の表面の十点平均粗さRzの上限は、ドラム削れを良好に防止できるなどの観点から、好ましくは6μm未満であると良い。
【0031】
一方、弾性層4の表面の十点平均粗さRzの下限は、耐汚れ性に優れるなどの観点から、好ましくは3μm以上であると良い。
【0032】
本発明の帯電ロール1において、弾性層4の表面の負荷長さ率tp(c%)(c:切断レベル%)は、上記JISに準拠して、次の通り求めることができる。
【0033】
すなわち、図4に示すように、弾性層4の表面の軸方向における粗さ曲線を求め、その粗さ曲線の平均線の方向に基準長さLだけ抜き取る。そして、この抜き取り部分の粗さ曲線を、山頂線に平行な切断レベルで切断したときに得られる切断長さの和(負荷長さηp=b1+b2+…+bn)の基準長さLに対する比を百分率で表したものが負荷長さ率tp(=ηp/L×100)である。なお、負荷長さ率tpを求める場合の切断レベルcは、抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔となる最大高さRに対する比を百分率で表し、最高山頂が0%、最低谷底が100%とした場合の値を示したものである。
【0034】
本発明の帯電ロール1において、弾性層4の表面の負荷長さ率tp(50%)は60%以上であり、負荷長さ率tp(40%)は80%以下に形成されている。この上記負荷長さ率tp(50%)及び負荷長さ率tp(40%)を上記特定範囲とすることで、弾性層4の表面の凹凸部41における凸部の高さと凹部の深さが、概ね適切な範囲とすることができる。
【0035】
弾性層4は、表面の負荷長さ率tp(50%)が60%未満であるか、又は負荷長さ率tp(40%)が80%を超えるなどして上記範囲を外れると、弾性層4の表面の十点平均粗さRzが1.5μm以上〜8μm未満の範囲内であっても、帯電ロールとして使用した際にドラム削れが生じるおそれが大きくなり、所定の効果を発揮できなくなる。
【0036】
弾性層4の表面の負荷長さ率tp(50%)は60%以上であればよいが、その上限は、ドラム削れを良好に防止できるなどの観点から、95%以下であるのが好ましい。また、負荷長さ率tp(50%)の下限は、安定した効果が得られるなどの観点から、70%以上であるのが好ましい。
【0037】
弾性層4の表面の負荷長さ率tp(40%)は80%以下であればよいが、その下限は、耐汚れ性に優れるなどの観点から、20%以上であるのが好ましい。また、負荷長さ率tp(40%)の上限は、安定した効果が得られるなどの観点から、75%以下であるのが好ましい。
【0038】
弾性層4の厚みは、特に限定されないが、通常、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは1〜5mmの範囲内から選択することができる。
【0039】
弾性層4の表面に凹凸部41を形成する手段は、弾性層形成組成物中に凹凸形成用粒子を含有させず、弾性層4自体に直接凹凸加工を施して、弾性層4の表面に凹凸形状を形成する方法が用いられ、上記表面粗さのパラメータが特定の条件を満たすことができれば、特に限定されず、何れの方法で製造してもよい。凹凸部41を形成する手段としては、例えば、弾性層4の表面を直接研磨する方法や、弾性層4の表面に型の凹凸形状を転写する、いわゆる転写方法などが挙げられる。
【0040】
上記の型を用いた転写方法は、具体的には、弾性層4の凹凸部41の凹凸形状に対応する所定の凹凸形状が設けられた型を用い、弾性層4を形成する際に型の表面に弾性層4の表面を接触させて、型の表面の凹凸形状を転写することで、型の表面の所定の凹凸形状に対応する凹凸形状を弾性層4の表面に賦形することができる。
【0041】
上記の型を用いて弾性層4の表面に凹凸形状を転写する方法は、型の表面形状を変えることによって、弾性層4の表面の表面粗さのパラメータを精密に調節することができ、さらに弾性層4を形成する場合、表面の凹凸形状を安定して製造することができる等の理由から好ましい。
【0042】
上記の型の表面に所定の凹凸形状を形成する手段として、例えば、ブラスト法を用いることができる。ブラスト法は、ショットなどの研削材を圧縮空気などの気体と混合し、ノズル先端から高速で型の表面に噴射させることで、型の表面に凹凸加工を施すものである。ブラスト法では、用いるショット材の選択、ブラスト条件などを適宜調節することで、弾性層4の表面の十点平均粗さRz、負荷長さ率tp(50%)、負荷長さ率tp(40%)が、特定の条件を満たすように、型の表面の凹凸形状が所定の凹凸形状になるように形成することができる。
【0043】
弾性層4は、弾性を有する材料を主成分とし、導電剤(電子導電剤及び/又はイオン導電剤)を含有し、凹凸形成用粒子を含有しない弾性層形成組成物から、ソリッド体(非発泡体)として形成されている。
【0044】
弾性層4の主成分としては、具体的には、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴム(ECO、CO)、ウレタン系エラストマー、天然ゴム(NR)などを例示することができる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0045】
上記主成分としては、低へたり性、導電性、柔軟性などの観点から、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、ウレタン系エラストマーなどを好適なものとして例示することができる。
【0046】
なお、上記弾性層形成組成物は、導電剤以外にも、必要に応じて、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、加硫促進剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シリコーンオイル、滑剤、助剤、界面活性剤などの各種添加剤を1種又は2種以上適宜含有していても良い。
【0047】
本発明では凹凸部41が弾性層4表面の凹凸加工により形成されているので、凹凸形成粒子により凹凸部41を形成する必要がなく、弾性層形成組成物中に凹凸形成粒子を添加しないことが好ましい。上記凹凸形成粒子は、粒径が1〜30μm程度の、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの絶縁性の有機粒子、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカなどの絶縁性の無機粒子である。
【0048】
表層5は、帯電ロール1の表面保護層として形成されるものであり、その厚みは、弾性層41の表面の凹凸部41に沿った凹凸部51が形成可能であり、耐摩耗性などが得られる範囲で、適宜選択することができる。
【0049】
表層5の厚みの上限は、電気抵抗を上昇させないなどの観点から、好ましくは、13μm以下、より好ましくは5μm以下であると良い。一方、表層5の厚みの下限は、耐摩耗性などの観点から、好ましくは、1μm以上、より好ましくは3μm以上であると良い。
【0050】
表層5は、具体的には、表層の主成分となるポリマーを構成するモノマー及び/又はオリゴマーなどの成分を少なくとも含む表層形成組成物を、凹凸部41が形成された弾性層4の表面にコーティングし、硬化させることにより形成することができる。表層形成組成物には、凹凸形成用粒子を含まないことが好ましい。
【0051】
上記ポリマーとしては、具体的には、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂、ニトリルゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴムなどのゴム、これら樹脂やゴムをシリコーン、フッ素などで変性した変性物などを例示することができる。これらは1種又は2種以上含まれていても良い。
【0052】
なお、上記表層形成組成物中には、導電剤(カーボンブラックなどの電子系導電剤、及び/又は、第4級アンモニウム塩などのイオン系導電剤)、離型剤、硬化剤などの添加剤が1種又は2種以上含有されていても良い。
【0053】
上述した表層形成組成物のコーティング方法としては、具体的には、例えば、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法などを適用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0055】
実施例1〜7
導電性シャフトからなる軸体の外周に、ベース層(厚み約3.5mm)、弾性層(厚み約0.5mm)、表層(厚み約5μm)をこの順に積層して、実施例1〜7の帯電ロールを作製した。
【0056】
<ベース層形成組成物の調製>
主成分としてEPDM(三井化学(株)製、「EPT4045」)100重量部と、酸化亜鉛5重量部と、ステアリン酸(花王(株)製、「ルーナックS30」)5重量部と、導電剤(ケッチェンブラックインターナショナル(株)製、「ケッチェンブラックEC)6重量部と、プロセスオイル(出光石油化学(株)製、「ダイアナプロセスPW−380」)30重量部と、架橋促進剤としてジベンゾチアゾールジスルフィド2重量部と、架橋促進剤としてテトラメチルチウラムモノサルファイド1重量部と、架橋剤としてイオウ1.05重量部と、発泡剤としてジニトロソペンタメチレンテトラミン15重量部とを、ニーダーで混練することにより、ベース層形成組成物を調製した。
【0057】
<弾性層形成組成物の調製>
主成分としてエピクロルヒドリンゴム(日本ゼオン(株)製、「ハイドリンT3102」)100重量部と、酸化亜鉛5重量部と、ステアリン酸(花王(株)製、「ルーナックS30」)1重量部と、受酸剤(協和化学工業(株)製、「DHT4T」)8重量部と、導電剤としてテトラブチルアンモニウムクロライド1.0重量部と、充填材(日本シリカ(株)製、「ニプシールVN3」)50重量部と、架橋促進剤としてジベンゾチアゾールジスルフィド1.5重量部と、架橋促進剤としてテトラメチルチウラムモノサルファイド0.5重量部と、架橋剤としてイオウ1.05重量部とを、ニーダーで混練することにより、弾性層形成組成物を調製した。
【0058】
<表層形成組成物の調製>
アクリルフッ素樹脂(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、「カイナーSL」)100重量部と、グラフトカーボン30重量部と、MEK200重量部を配合し、サンドミルを用いて分散処理し、表層形成組成物を調製した。
【0059】
(ベース層の形成)
芯金として直径6mm、長さ260mmのステンレス製(SUS304)芯金を準備し、円筒状のベース層成形用金型内にセットし、円筒状の金型と芯金との空隙部に、上記ベース層形成組成物を注型した後、金型に蓋をし、150℃で60分間加熱して、架橋させて、芯金の外周にベース層を有するベースロールを作製した。
【0060】
(弾性層の形成)
次いで、弾性層形成用金型を準備し、上記ベースロールを金型内にセットし、ベースロールと金型との空隙部に、上記弾性層形成組成物を注型した後、金型に蓋をし、180℃で60分間加熱して架橋させて、ベースロールの外周に弾性層を形成した。上記弾性層形成用金型は、弾性層形成組成物と接するキャビティ面側にショットブラスト処理を行い、所定の凹凸形状を形成したものを用いた。実施例1〜7では、この金型に凹凸形状を形成する際に、ショットブラスト処理の条件を変えて、成形後の弾性層の表面の表面粗さのパラメータが変化するようにして、各弾性層形成用金型を作成した。
【0061】
(表面粗さパラメータの測定)
各実施例の弾性層表面について、JIS B0601に準拠し、接触式表面粗さ計(東京精密(株)製、「サーフコム1400D」)を用いて、十点平均粗さRz、負荷長さ率tp(50%)、負荷長さ率tp(40%)を測定した。なお、負荷長さ率tp(50%)及び負荷長さ率tp(40%)は、ロール軸方向の粗さ曲線より算出した値である。得られた結果を表1に示す。また図5は、実施例1の弾性層の負荷長さ率を測定した結果を示すグラフである。
【0062】
(表層の形成)
弾性層の表面に、表層形成組成物をロールコート法により塗工した後、オーブンを用いて、130℃で60分間熱処理を行い表層形成組成物を硬化させて、帯電ロールを得た。得られた各実施例の帯電ロールを、市販のカラーレーザープリンター(キヤノン(株)製、「LBP5600」)のカートリッジ内に組み込み、下記の評価試験を行った。
【0063】
(画像の濃度ムラ(初期)の評価)
23℃×53%RHの環境下で、100枚(A4サイズ、縦方向)5%印字比率相当の画像の画像出しを行った後、得られた画像について、ハーフトーン画像を目視にて確認し、濃度のムラを評価した。濃度のムラがほとんどないものを○とし、濃度のムラが若干あるものを△とし、濃度のムラが多数あるものを×とした。
【0064】
(画像の濃度ムラ(耐久後)の評価)
各帯電ロールを、上記同様の条件で12000枚画出し耐久試験を行った後、得られた画像について、ハーフトーン画像を目視にて確認し、濃度ムラを初期と同じ基準で評価した。
【0065】
(ロール汚れの評価)
各帯電ロールを、上記同様の条件で画出し耐久試験を行った後、耐久試験後の帯電ロールの表面をウエスで乾拭きし、ロール汚れ性を評価した。評価は、帯電ロールを軽く拭いた場合及び強く拭いた場合のいずれもウエスにトナーが全く付着しなかったものを○とし、強く拭いた場合にウエスにトナーが付着したものを△とし、軽く拭いた場合にウエスにトナーが付着したものを×とした。
【0066】
(感光ドラム削れの評価)
膜厚計を用いて、1000枚印刷後の感光ドラムの厚み変化量を測定した。厚みの変化量が、0.2μm未満の場合を○とし、0.2μm以上〜0.25μm未満の場合を△とし、0.25μm以上の場合を×とした。なお上記感光ドラムの厚みの測定は、渦電流式膜厚計を用いた。
【0067】
表1に、作製した各帯電ロールの弾性層の表面粗さのパラメータと帯電ロールの評価結果をまとめて示す。表1に示すように、実施例1〜7の帯電ロールは、いずれも、画像の濃度ムラ、ロール汚れ、ドラム削れの評価結果は○であり、良好なものであった。
【0068】
【表1】





【0069】
比較例1〜4
下記の凹凸形成用粒子を添加した表層形成組成物を用いて凹凸部を表層に形成し、弾性層形成の際に、金型のキャビティ面に凹凸部が形成されていないものを用いた以外は、実施例1と同様にして帯電ロールを作製して、評価試験を行った。得られた帯電ロールの表層の表面粗さのパラメータ及び帯電ロールの評価結果を表1に示す。
【0070】
<比較例1〜4の表層形成組成物の調製>
アクリルフッ素樹脂(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、「カイナーSL」)100重量部と、グラフトカーボン30重量部と、粒子(大日本インキ化学工業(株)製、「バーノックCFB100」)15重量部と、MEK200重量部を配合し、サンドミルを用いて分散処理し、表層形成組成物を調製した。
【0071】
比較例5〜11
弾性層の表面の表面粗さのパラメータが、表1に示す値となるように、弾性層形成用金型のショットブラスト処理を行ったものを用いて、弾性層を形成した以外は、実施例と同様にして帯電ロールを作製し、評価試験を行った。得られた帯電ロールの弾性層の表面の表面粗さのパラメータ及び評価結果を表1に示す。また図6に比較例5の弾性層の負荷長さ率を測定した結果のグラフを示す。
【0072】
比較例12
弾性層形成用金型として、キャビティ面にショットブラスト処理を行わないものを用いた以外は実施例と同様にして帯電ロールを作製し、評価試験を行った。得られた帯電ロールの弾性層の表面の表面粗さのパラメータ及び評価結果を表1に示す。
【0073】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。
【図2】本発明の帯電ロールの他の例を示す周方向断面図である。
【図3】図1の帯電ロールの軸方向断面の表面付近を示す拡大断面図である。
【図4】表面粗さパラメータのうち、tp(50%)、tp(40%)の求め方を説明するための図である。
【図5】実施例1の弾性層の負荷長さ率を測定した結果を示すグラフである。
【図6】比較例5の弾性層の負荷長さ率を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 帯電ロール
2 軸体
3 ベース層
4 弾性層
41 弾性層の凹凸部
5 表層
51 表層の凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、該軸体の外周に沿って形成され、表面に凹凸部が設けられている弾性層と、該弾性層の表面を被覆する表層とを備える電子写真機器用の帯電ロールであって、
前記弾性層の凹凸部が表面の凹凸加工により形成されたものであり、
前記弾性層の表面の、
十点平均粗さRzが1.5μm以上、8μm未満、
負荷長さ率tp(50%)が60%以上、
負荷長さ率tp(40%)が80%以下であることを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
前記弾性層表面の凹凸部が、表面に凹凸部の凹凸形状に対応する凹凸形状が設けられた型の転写により形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の電子写真機器用の帯電ロール。
【請求項3】
前記表層の厚みが、1〜13μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真機器用の帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−233442(P2008−233442A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71742(P2007−71742)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】