説明

帳票読取り装置、方法およびシステム

【課題】 ICチップを実装した帳票とICチップを実装していない帳票が混在している場合であっても、帳票を読み取るときの作業性を向上することのできる帳票読取り装置を提供する。
【解決手段】 帳票読取り装置2は、旅券Pに設けられた読取り領域の画像を光学的に読み取るカメラ6と、旅券PにICチップが実装されているか否かを判定するチップ有無判定部16と、判定の結果を表示するチップ有無表示部10と、旅券PにICチップが実装されていると判定された場合に、ICチップに記録されたデータを無線通信で読み取るアンテナ部8とを備える。チップ有無判定部10は、カメラ6が旅券Pの読取り領域の画像を読み取る前に、旅券PにICチップが実装されているか否かの判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帳票の読取り機能を備えた帳票読取り装置に関し、特に、帳票を読み取るときの作業性を向上する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、旅券などの帳票を読み取る帳票読取り装置が知られており、空港の入国審査などで用いられている(例えば特許文献1参照)。従来の帳票読取り装置は、旅券に設けられた読取り領域を光学的に読み取って、読取り結果を画面に表示する機能を備えている。
【特許文献1】特開2006−146328号公報
【0003】
近年、ICチップを実装した旅券が使用されるようになり、それに伴って、帳票読取り装置は、ICチップに記録されたデータを読み取る機能を備えるものが使用されるようになってきた。このICチップのデータを読み取るためには、光学的な読取り結果を用いてICチップの内容を読み出す場合も想定される。そこで、従来の帳票読取り装置では、まず、旅券の読取り領域を光学的に読み取り、その後に、その旅券がICチップを実装しているか否かの判定が行われる。そして、ICチップを実装した旅券であった場合には、先の読取り結果を用いてICチップのデータの読取りが行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、世界には、まだICチップを実装した旅券への切り換えが行われていない国(まだICチップを実装していない旅券を使用している国)も少なからず存在している。したがって、入国者が所持する旅券は、ICチップを実装した旅券とICチップを実装していない旅券が混在しているのが実情である。ところが、従来の帳票読取り装置では、ICチップを実装した旅券とICチップを実装していない旅券が混在している状況について考慮がなされていないという問題があった。
【0005】
ICチップを実装していない旅券であれば、読取り領域を光学的に読み取るだけでよく、この光学的な読取り処理は比較的短い時間で完了する。一方、ICチップを実装した旅券の場合には、読取り領域の読取り後に、ICチップのデータの読取りが行われる。このICチップの読取り処理には比較的長い時間を要し、その処理が完了するまでの間、作業者は旅券を読取り面上に保持しておく必要がある。
【0006】
しかし、ICチップを実装した旅券とICチップを実装していない旅券が混在している場合には、ICチップを実装した旅券であるにもかかわらず(旅券を読取り面上にしばらく保持しておく必要があるにもかかわらず)、ICチップを実装していない旅券であると思って作業者が旅券を読取り面上から離してしまい、ICチップの読取りに失敗することがあった。そして、そのような場合には、もう一度、旅券の読取りを最初から行わなければならないという問題あった。
【0007】
あるいは、ICチップを実装していない旅券であるにもかかわらず(読取り処理は短い時間で完了しているにもかかわらず)、ICチップを実装した旅券であるか否かが作業者には不明であるため、旅券を読取り面上にしばらく保持しておくこととなり、作業効率が低い(作業時間が長い)という問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、ICチップを実装した帳票とICチップを実装していない帳票が混在している場合であっても、帳票を読み取るときの作業性を向上することのできる帳票読取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の帳票読取り装置は、帳票に設けられた読取り領域の画像を光学的に読み取る光学読取り手段と、前記帳票にICチップが実装されているか否かを判定するチップ有無判定手段と、前記判定の結果を表示するチップ有無表示手段と、前記帳票にICチップが実装されていると判定された場合に、前記ICチップに記録されたデータを無線通信で読み取る無線読取り手段と、前記読取り領域の画像を読み取る前に、前記ICチップが実装されているか否かの判定を行うように判定タイミングを制御する判定タイミング制御手段と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、ICチップを実装した帳票とICチップを実装していない帳票が混在している場合であっても、事前に(読取り領域の読取りが行われる前に)ICチップが実装されているか否かの判定が行われ、その判定結果が表示される。したがって、ICチップを実装した帳票の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ有の表示)によって予め知ることができるので、ICチップのデータの読取りに十分な時間が経過するまで帳票を読取り面上に保持するようになる。すなわち、ICチップを実装していない帳票であると思って帳票を読取り面上から離してしまう(ICチップの読取りに失敗する)のを防ぐことができる。また、ICチップを実装していない帳票の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ無の表示)によって予め知ることができるので、帳票の光学的な読取りが完了したら、すぐに次の作業に取り掛かることができる。すなわち、帳票を読取り面上にしばらく保持するようなことがなくなり、作業効率が高くなる(作業時間が短くなる)。
【0011】
また、本発明の帳票読取り装置は、前記帳票が読取り面上に載置されているか否かを判定する帳票載置判定手段と、前記帳票が読取り面上に載置されていると判定されたときに、前記帳票を載置した状態で保持すべき旨を示す帳票保持表示を行う保持表示手段と、前記帳票にICチップが実装されていないと判定された場合には、前記帳票保持表示をオフにするように表示タイミングを制御する表示タイミング制御手段と、を備えた構成を有している。
【0012】
この構成により、帳票が読取り面上に載置されると帳票保持表示が行われ、ICチップが実装されていないと判定されると、帳票保持表示がオフにされる。例えば、光学的な読取りが完了した後に、帳票保持表示がオフにされる。あるいは、帳票の載置後にICチップの有無が検出され、載置後短時間で読取り結果が表示されるので、ICチップを実装していない場合には、操作者を幻惑しないように帳票保持表示を行なわない(帳票保持表示を当初からオンしない)ように制御しても良い。このような帳票保持表示に従って作業を行うことよって、ICチップを実装していない帳票の場合には、すぐに次の作業に取り掛かることができ、作業効率が高くなる(作業時間が短くなる)。一方、ICチップを実装している帳票の場合には、帳票保持表示がオンのままになり、この帳票保持表示に従って作業を行う(帳票を読取り面上に載置したままにしておく)ことによって、ICチップの読取りに失敗するのを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の帳票読取り装置では、前記無線読取り手段は、前記読取り領域の画像の読取り結果を用いて、前記ICチップのデータを読み取る構成を有している。
【0014】
このように、光学的な読取り結果を用いてICチップのデータを読み取るような場合であっても、事前に(読取り領域の読取りが行われる前に)ICチップが実装されているか否かの判定が行われる。そして、その判定結果を事前の表示によって予め知ることができるので、ICチップを実装した帳票とICチップを実装していない帳票が混在している場合であっても、ICチップの有無に応じた読取り作業を行うことができ、帳票を読み取るときの作業性が向上する。
【0015】
本発明の帳票読取り方法は、帳票にICチップが実装されているか否かを判定して、その判定結果を表示し、前記判定の後に、前記帳票に設けられた読取り領域の画像を光学的に読み取り、前記帳票にICチップが実装されていると判定された場合に、前記ICチップに記録されたデータを無線通信で読み取る。
【0016】
この方法によっても、上記と同様に、ICチップを実装した帳票の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ有の表示)によって予め知ることができ、ICチップを実装していない帳票であると思って帳票を読取り面上から離してしまう(ICチップの読取りに失敗する)のを防ぐことができる。また、ICチップを実装していない帳票の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ無の表示)によって予め知ることができるので、帳票の光学的な読取りが完了したら、すぐに次の作業に取り掛かることができ、作業効率が高くなる(作業時間が短くなる)。
【0017】
また、本発明の帳票読取り方法は、前記帳票が読取り面上に載置されているか否かを判定し、前記帳票が読取り面上に載置されていると判定されたときに、前記帳票を載置した状態で保持すべき旨を示す帳票保持表示を行い、前記帳票にICチップが実装されていないと判定された場合には、前記帳票保持表示をオフにする。
【0018】
この方法により、ICチップを実装していない帳票の場合には、帳票保持表示がオフにされる。例えば、帳票が読取り面上に載置されると帳票保持表示がオンになり、光学的な読取りが完了した後に帳票保持表示がオフにされる。あるいは、帳票の載置後にICチップの有無が検出され、載置後短時間で読取り結果が表示されるので、ICチップを実装していない場合には、操作者を幻惑しないように帳票保持表示を行なわない(帳票保持表示を当初からオンしない)ように制御しても良い。このような帳票保持表示に従って作業を行うことより、すぐに次の作業に取り掛かることができ、作業効率が高くなる(作業時間が短くなる)。一方、ICチップを実装している帳票の場合には、帳票保持表示がオンのままになり、この帳票保持表示に従って作業を行う(帳票を読取り面上に載置したままにしておく)ことによって、ICチップの読取りに失敗するのを防ぐことができる。
【0019】
また、本発明の帳票読取り方法では、前記読取り領域の画像の読取り結果を用いて、前記ICチップのデータを読み取る。
【0020】
この方法により、光学的な読取り結果を用いてICチップのデータを読み取るような場合であっても、事前に(読取り領域の読取りが行われる前に)ICチップが実装されているか否かの判定が行われる。そして、その判定結果を事前の表示によって予め知ることができるので、ICチップを実装した帳票とICチップを実装していない帳票が混在している場合であっても、ICチップの有無に応じた読取り作業を行うことができ、帳票を読み取るときの作業性が向上する。
【0021】
本発明の帳票読取りシステムは、帳票に設けられた読取り領域の画像を光学的に読み取る光学読取り手段と、前記読取り領域の画像の読取り結果を表示する第1表示手段と、前記帳票にICチップが実装されているか否かを判定するチップ有無判定手段と、前記判定の結果を表示するチップ有無表示手段と、前記帳票にICチップが実装されていると判定された場合に、前記ICチップに記録されたデータを無線通信で読み取る無線読取り手段と、前記ICチップのデータの読取り結果を表示する第2表示手段と、前記読取り領域の画像を読み取る前に、前記ICチップが実装されているか否かの判定を行うように判定タイミングを制御する判定タイミング制御手段と、を備えた構成を有している。
【0022】
このシステムによっても、上記と同様に、ICチップを実装した帳票の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ有の表示)によって予め知ることができ、ICチップを実装していない帳票であると思って帳票を読取り面上から離してしまう(ICチップの読取りに失敗する)のを防ぐことができる。また、ICチップを実装していない帳票の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ無の表示)によって予め知ることができるので、帳票の光学的な読取りが完了したら、すぐに次の作業に取り掛かることができ、作業効率が高くなる(作業時間が短くなる)。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、帳票の光学的な読取りを行う前に、その帳票にICチップが実装されているか否かを判定するチップ有無判定手段を設けることにより、ICチップを実装した帳票とICチップを実装していない帳票が混在している場合であっても、帳票を読み取るときの作業性を向上することができるという効果を有する帳票読取り装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の帳票読取り装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、空港の入国審査で使用される旅券の読取り装置の場合を例示する。なお、本発明の帳票読取り装置は、これに限定されるものではなく、飛行機の搭乗券の読取り装置、ホテルのフロントで使用される旅券の読取り装置、あるいは、その他の身分証の読取り装置などが含まれてよい。
【0025】
まず、本発明の実施の形態の帳票読取りシステムの全体の構成について、図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態の帳票読取りシステムの構成の説明図である。図1に示すように、帳票読取りシステム1は、旅券を読み取る帳票読取り装置2と、その帳票読取り装置2から読み取ったデータ(読取り結果のデータ)が送られる上位装置3(例えばパーソナルコンピュータなど)を備えている。上位装置3は、読取り結果のデータを表示する画面4を備えている。なお、本実施の形態では、上位装置3が、帳票読取り装置2と別体になっている場合について例示するが、この上位装置3と帳票読取り装置2は一体であってもよい(この上位装置3の機能が、帳票読取り装置2に組み込まれていてもよい)。
【0026】
つぎに、図1および図2を参照して、帳票読取り装置2の構成について説明する。図2は、帳票読取り装置2の斜視図である。図1および図2に示すように、帳票読取り装置2の上面には、旅券を載せるための読取り面5が設けられている。この読取り面5上に、旅券が開いた状態で下向きに載置される。
【0027】
帳票読取り装置2には、読取り面5上に置かれた旅券の記載内容を光学的に読み取るカメラ6と、読取り面5上に置かれた旅券を下側から照らす照明部7が内蔵されている。旅券には、機械で読み取るための読取り領域が設けられており、カメラ6は、照明部7によって照らされた旅券の読取り領域の画像を、透明なガラス板を通して下側から撮影できるように構成されている。ここでは、カメラ6が、本発明の光学読取り手段に相当する。
【0028】
また、帳票読取り装置2には、旅券に実装されたICチップと無線通信をするためのアンテナ部8が内蔵されている。アンテナ部8は、読取り面5に置かれた旅券の周囲を囲むように、読取り面5の直下に配置されている。このアンテナ部8によって、旅券のICチップに記録されたデータを無線通信で読み取ることができる。ここでは、このアンテナ部8が、本発明の無線読取り手段に相当する。
【0029】
帳票読取り装置2の上面の端部には、二つの表示部(帳票保持表示部9とICチップ有り表示部10)が設けられている。帳票保持表示部9では、旅券を読取り面5上に載置した状態で保持すべきであることを示す帳票保持表示が行われる。この場合、帳票保持表示部9は、LEDで構成されており、旅券を読取り面5上に載置した状態で保持すべきであるときには、LEDが点灯(オン)するように制御されている。この帳票保持表示部9が、本発明の保持表示手段に相当する。
【0030】
ICチップ有り表示部10では、読取り面5上に載置された旅券にICチップが実装されていることを示すICチップ有り表示が行われる。この場合、ICチップ有り表示部10は、LEDで構成されており、読取り面5上に置かれた旅券にICチップが実装されている場合には、LEDが点灯(オン)するように制御されている。このICチップ有り表示部10が、本発明のチップ有無表示手段に相当する。なお、後述するように、帳票保持表示部9は、読取り面5上に置かれた旅券にICチップが実装されていない場合には、LEDが消灯(オフ)するように制御されている。また、作業性を考慮しいづれかのLEDが短時間でも点灯すると作業者を幻惑することも考えられるため、ICチップが搭載されていない場合は表示を2つとも点灯しないことも好ましい。したがって、帳票保持表示部9は、本発明のチップ有無表示手段に相当するともいえる。
【0031】
そして、帳票読取り装置2には、CPUやマイコンなどで構成された制御部11が内蔵されている。この制御部11は、カメラ6、照明部7、アンテナ部8、表示部(帳票保持表示部9とICチップ有り表示部10)の動作を制御する機能を有している。
【0032】
図3は、制御部11の各機能を実現するための構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御部11は、カメラ6や照明部7の動作を制御するための撮影制御部12と、アンテナ部8の動作を制御するための通信制御部13を備えている。また、制御部11は、カメラ6によって撮影された読取り領域の画像に文字認識処理(OCR処理)を施す文字認識処理部14を備えている。
【0033】
また、制御部11は、カメラ6によって撮影された画像に基づいて、読取り面5上に旅券が載置されたか否かを判定する帳票載置判定部15と、アンテナ部8からの無線通信結果(ポーリングに対するICチップからの応答の有無)に基づいて、旅券にICチップが内蔵されているか否かを判定するチップ有無判定部16を備えている。ここでは、帳票載置判定部15が、本発明の帳票載置判定手段に相当し、チップ有無判定部16が、本発明のチップ有無判定手段に相当する。また、前述のようにICチップが実装されていない場合は表示をオンしないことが好ましい場合もある。
【0034】
この制御部11は、チップ有無判定部16によるICチップの有無の判定処理を行うタイミングを制御する判定タイミング制御部17を備えている。この判定タイミング制御部17によるタイミング制御に基づいて、撮影制御部12と通信制御部13は、読取り領域の画像を光学的に読み取る処理を行う前に、ICチップが実装されているか否かの判定を行うように、カメラ6とアンテナ部8の動作タイミングを制御する。ここでは、この判定タイミング制御部17が、本発明の判定タイミング制御手段に相当する。
【0035】
また、制御部11は、表示部(帳票保持表示部9とICチップ有り表示部10)が表示のオン・オフを行うタイミングを制御する表示タイミング制御部18を備えている。この表示タイミング制御部18によるタイミング制御に基づいて、帳票保持表示部9とICチップ有り表示部10では、表示のオン・オフが制御される。具体的には、帳票保持表示部9は、読取り面5上に旅券が載置されたときに表示がオンになるように制御される。また、帳票保持表示部9は、ICチップが実装されている旅券の場合には、ICチップの読取りが完了した後に表示がオフになり、ICチップが実装されていない旅券の場合には、光学的な読取りが完了した後に表示がオフになるように制御される。一方、ICチップ有り表示部10は、ICチップが実装されていると判定されたときに表示がオンになり、ICチップの読取りが完了した後に表示がオフになるように制御される。ここでは、この表示タイミング制御部18が、本発明の表示タイミング制御手段に相当する。
【0036】
つぎに、上位装置3の画面表示について説明する。図4は、画面表示の一例を示す図である。図4に示すように、画面4には、二つの表示フレームが設けられている。第1表示フレーム19(図4の上側のフレーム)には、旅券の読取り領域の読取り結果が表示され、第2表示フレーム20(図4の下側のフレーム)には、ICチップの読取り結果(ICチップに記録されているデータ)が表示される。作業者は、この二つの表示フレームに表示された読取り結果を見ることによって、旅券の所持者が本人であることや旅券が本物であること等の確認作業を行う。ここでは、第1表示フレーム19が、本発明の第1表示手段に相当し、第2表示フレーム20が、本発明の第2表示手段に相当する。
【0037】
以上のように構成された帳票読取りシステム1について、図5を用いてその動作を説明する。
【0038】
本実施の形態の帳票読取りシステム1を用いて旅券の読取り作業を行うときには、まず、帳票読取り装置2の読取り面5上に旅券を開いた状態で下向きに載置する。そうすると、帳票載置判定部15が、カメラ6によって撮影された画像に基づいて、読取り面5上に旅券が載置されたか否かを判定する(S1)。旅券が載置されたと判定されると、帳票保持表示部9のLEDがオンになり(S2)、アンテナ部8がICチップへのポーリングを開始する(S3)。
【0039】
ポーリングに対してICチップからの応答があった場合には(S4)、旅券にICチップが実装されていると判定され、ICチップ有り表示のLEDがオンになる(S5)。このICチップ有り表示のLEDがオンにされると、作業者は、旅券にICチップが実装されていることを知ることができ、その表示に従って旅券を読取り面5上に載置したままで保持する。また、図示しないが、ICチップが実装されていない場合には、ステップ2(S2)をステップ4(S4)の後として、帳票保持表示を表示しないことも作業者を幻惑する可能性が減少し、好ましい。
【0040】
その後、帳票読取り装置2は、旅券の読取り領域の画像をカメラ6で撮影し(S6)、撮影された画像に文字認識処理を施す(S7)。このようにして読取り領域から読み取られた情報(読取り結果)は、上位装置3の画面4の第1表示フレーム19に表示される。
【0041】
つぎに、帳票読取り装置2は、ICチップに記録されているデータの読取りを実行する(S8)。ICチップのデータの読取りが完了すると(S9)、その読取り結果のデータが、上位装置3の画面4の第2表示フレーム20に表示される。そして、帳票保持表示のLEDがオフになり(S10)、また、ICチップ有り表示がオフになる(S11)。
【0042】
一方、ポーリングに対して応答がなかった場合には(S4)、旅券にICチップが実装されていないと判定され、旅券の読取り領域の画像がカメラ6で撮影される(S12)。このとき、帳票保持表示のLEDがオフになる(S13)。その後、撮影された画像に文字認識処理が施されて(S14)、その読取り結果が、上位装置3の画面4の第1表示フレーム19に表示される。このように(ICチップ有り表示がオンにならずに)、帳票保持表示のLEDがオフになると、作業者は、旅券にICチップが実装されていなかったことを知ることができる。すなわち、帳票保持表示のオフは、ICチップ無しの表示であるともいえる。
【0043】
このような本発明の実施の形態の帳票読取り装置2によれば、旅券の光学的な読取りを行う前に、その旅券にICチップが実装されているか否かを判定するチップ有無判定手段を設けることにより、ICチップを実装した旅券とICチップを実装していない旅券が混在している場合であっても、旅券を読み取るときの作業性を向上することができる。
【0044】
すなわち、本実施の形態では、ICチップを実装した旅券とICチップを実装していない旅券が混在している場合であっても、事前に(読取り領域の読取りが行われる前に)ICチップが実装されているか否かの判定が行われ、その判定結果が表示される。したがって、ICチップを実装した旅券の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ有の表示)によって予め知ることができるので、ICチップのデータの読取りに十分な時間が経過するまで旅券を読取り面5上に保持するようになる。すなわち、ICチップを実装していない旅券であると思って旅券を読取り面5上から離してしまう(ICチップの読取りに失敗する)のを防ぐことができる。また、ICチップを実装していない旅券の場合には、そのことを事前の表示(ICチップ無の表示)によって予め知ることができるので、旅券の光学的な読取りが完了したら、すぐに次の作業に取り掛かることができる。すなわち、旅券を読取り面5上にしばらく保持するようなことがなくなり、作業効率が高くなる(作業時間が短くなる)。
【0045】
また、本実施の形態では、旅券が読取り面5上に載置されると帳票保持表示が行われ、ICチップが実装されていないと判定されると、光学的な読取りが完了した後に帳票保持表示がオフにされる。このような帳票保持表示に従って作業を行うことよって、ICチップを実装していない旅券の場合には、すぐに次の作業に取り掛かることができ、作業効率が高くなる(作業時間が短くなる)。一方、ICチップを実装している旅券の場合には、帳票保持表示がオンのままになり、この帳票保持表示に従って作業を行う(旅券を読取り面5上に載置したままにしておく)ことによって、ICチップの読取りに失敗するのを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施の形態では、光学的な読取り結果を用いてICチップのデータを読み取るような場合であっても、事前に(読取り領域の読取りが行われる前に)ICチップが実装されているか否かの判定が行われる。そして、その判定結果を事前の表示によって予め知ることができるので、ICチップを実装した旅券とICチップを実装していない旅券が混在している場合であっても、ICチップの有無に応じた読取り作業を行うことができ、旅券を読み取るときの作業性が向上する。
【0047】
なお、本実施の形態では、旅券の読取りを行っているときの作業者の視線の動きが円滑になる。まず、作業者は、旅券を読取り面5の上に載せて、帳票読取り装置2に視線を向けると、帳票保持表示がオンになった後、ICチップが実装されているか否かの判定結果に応じて、ICチップ有の表示がオンされるか、または、帳票保持表示がオフされる。作業者は、ICチップ有の表示がオンされた後、または、帳票保持表示がオフされた後、視線を画面4に向ければよい。ICチップ有の表示がオンされた場合には、すぐに読取り領域の画像が第1フレームに表示され、しばらくしてからICチップのデータが第2フレームに表示される。一方、帳票保持表示がオフされた場合には、すぐに読取り領域の画像が第1フレームに表示される。このように、本実施の形態では、旅券の読取りを行うときに、無駄な視線の往復(帳票読取り装置2と画面4との間で視線を行ったり来たりすること)がなくなる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0049】
例えば、以上の説明では、ICチップ有の表示をオン・オフした場合を例示して説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、ICチップ有とICチップ無の二つの表示を行ってもよく、または、ICチップ無の表示をオン・オフしてもよい。また、ICチップ有やICチップ無を示すのに、他の表示(帳票保持表示や電源表示など)を利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる帳票読取り装置は、ICチップを実装した帳票とICチップを実装していない帳票が混在している場合であっても、帳票を読み取るときの作業性を向上することができるという効果を有し、旅券を読み取るための旅券読取り装置等として使用され、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態における帳票読取りシステムの全体構成を示す説明図
【図2】本実施の形態における帳票読取り装置の斜視図
【図3】帳票読取り装置の制御部の構成を示すブロック図
【図4】読取り結果の表示画面の一例を示す図
【図5】本実施の形態における帳票読取り装置の動作の流れを説明するためのフロー図
【符号の説明】
【0052】
1 帳票読取りシステム
2 帳票読取り装置
3 上位装置
4 画面
5 読取り面
6 カメラ
7 照明部
8 アンテナ部
9 帳票保持表示部
10 ICチップ有り表示部
11 制御部
12 撮影制御部
13 通信制御部
14 文字認識処理部
15 帳票載置判定部
16 チップ有無判定部
17 判定タイミング制御部
18 表示タイミング制御部
19 第1表示フレーム
20 第2表示フレーム
P 旅券

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票に設けられた読取り領域を光学的に読み取る光学読取り手段と、
前記帳票にICチップが実装されているか否かを判定するチップ有無判定手段と、
前記判定の結果を表示するチップ有無表示手段と、
前記帳票にICチップが実装されていると判定された場合に、前記ICチップに記録されたデータを読み取る無線読取り手段と、
前記読取り領域の画像を読み取る前に、前記ICチップが実装されているか否かの判定を行うように判定タイミングを制御する判定タイミング制御手段と、
を備えたことを特徴とする帳票読取り装置。
【請求項2】
前記帳票が読取り面上に載置されているか否かを判定する帳票載置判定手段と、
前記帳票が読取り面上に載置されていると判定されたときに、前記帳票を載置した状態で保持すべき旨を示す帳票保持表示を行う保持表示手段と、
前記帳票にICチップが実装されていないと判定された場合には、前記帳票保持表示をオフにするように表示タイミングを制御する表示タイミング制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の帳票読取り装置。
【請求項3】
前記無線読取り手段は、前記読取り領域の画像の読取り結果を用いて、前記ICチップのデータを読み取ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帳票読取り装置。
【請求項4】
帳票にICチップが実装されているか否かを判定して、その判定結果を表示し、
前記判定の後に、前記帳票に設けられた読取り領域の画像を光学的に読み取り、
前記帳票にICチップが実装されていると判定された場合に、前記ICチップに記録されたデータを読み取ることを特徴とする帳票読取り方法。
【請求項5】
前記帳票が読取り面上に載置されているか否かを判定し、
前記帳票が読取り面上に載置されていると判定されたときに、前記帳票を載置した状態で保持すべき旨を示す帳票保持表示を行い、
前記帳票にICチップが実装されていないと判定された場合には、前記帳票保持表示をオフにすることを特徴とする請求項4に記載の帳票読取り方法。
【請求項6】
前記読取り領域の画像の読取り結果を用いて、前記ICチップのデータを読み取ることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の帳票読取り方法。
【請求項7】
帳票に設けられた読取り領域の画像を光学的に読み取る光学読取り手段と、
前記読取り領域の画像の読取り結果を表示する第1表示手段と、
前記帳票にICチップが実装されているか否かを判定するチップ有無判定手段と、
前記判定の結果を表示するチップ有無表示手段と、
前記帳票にICチップが実装されていると判定された場合に、前記ICチップに記録されたデータを無線通信で読み取る無線読取り手段と、
前記ICチップのデータの読取り結果を表示する第2表示手段と、
前記読取り領域の画像を読み取る前に、前記ICチップが実装されているか否かの判定を行うように判定タイミングを制御する判定タイミング制御手段と、
を備えたことを特徴とする帳票読取りシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−134736(P2010−134736A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310647(P2008−310647)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【特許番号】特許第4309960号(P4309960)
【特許公報発行日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】