説明

常温時のキャンバー量予測方法及びこれを用いる操業方法

【課題】精度の良い熱延鋼板のキャンバーを予測する方法を提供する。
【解決手段】金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法において、ランナウトテーブル冷却後の鋼板の表面温度分布を板幅方向及び圧延方向に対して測定し、当該温度分布がその後冷却されて常温で均一になった時点での熱歪を用いて釣り合い計算を行い熱歪によるキャンバー量を求め、定点温度測定方法で板幅方向及び圧延方向の温度測定と同時に得られる幾何学的キャンバー量または別途設置した変位計によってもたらされる横振れ量から測定した幾何学的キャンバー量を求め、前記熱歪によるキャンバー量と幾何学的キャンバー量を重ね合わせることを特徴とした金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延後の金属のストリップ(金属帯または金属板)をランナウトテーブル上で冷却する際、冷却むらに起因する残留歪に伴うストリップのキャンバー量、あるいは条切り後の条切りキャンバー量の予測方法に関するものである。
さらに、予測したキャンバー量に応じて、その後の処置を決定し、精整工程等の負荷を軽減するといったキャンバー量予測方法を用いた金属ストリップの製造方法に関する技術である。
【0002】
ここで、キャンバーの定義を示す。キャンバーとは、所定の圧延方向長さに対して定義される板幅方向の曲がり量である。図9に幅方向に曲がった板の形状の例を示す。図9で定義されたキャンバー量は圧延方向の位置A−B間の長さに対して定義されたキャンバー量である。
【0003】
図10に、冷間時の鋼板横振れ量と、例として所定の圧延方向長さを10mとして幾何学的キャンバー量を逐次定義する方法を示す。測定される幾何学的キャンバーは、圧延方向に弦を張って、その弦の中央に対して生じる幅方向の横触れ量として定義される。幾何学的キャンバーは弦を圧延方向に所定の長さのままずらしていくことによって逐次測定される。
【0004】
図11に図10で示された方法で求められた幾何学的キャンバーを圧延方向に対してプロットしたものを示す。幾何学的キャンバー量は基準となる所定長さ以降で逐次測定することができる。ここで示した例は幾何学的キャンバー量の変動する例を示している。
【背景技術】
【0005】
現在、例えば鋼板の熱延工程では、冷却後の鋼板キャンバー量が大きくなると、次工程の連続熱処理設備や連続冷延鋼板製造設備等で蛇行を起こし易い鋼板や、ユーザーにおいて条切りする鋼板は全量、矯正工程を通過させているため、コスト増となっている。本来は、全量を矯正することなく、精度良くキャンバー量を予測し、必要な分だけ矯正すればよい。
【0006】
このような状況に対し、特許文献1では、厚鋼板を対象とし、鋼板の幅方向、長手方向の温度を離散的にサーモビュアーで測定し、その測定された温度と、歪の釣り合い式をもとに鋼板面内の任意の点での曲率を求め、それを積算することにより、不均一な温度分布での鋼板全体のキャンバー量を推定する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平4−8128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において開示されている平坦度の評価式を熱延鋼板のキャンバー量の評価に適用しようとしても、圧延で発生したキャンバー(圧延キャンバー)及び蛇行の影響が内在するため、常温で温度均一となった鋼板のキャンバー量は、鋼板が常温で温度均一となった際に生じる熱歪だけによる予測では精度が悪く、実用に供さないと言う問題があった。
【0009】
つまり、実測した鋼板のキャンバー量(幾何学的キャンバー量)は、圧延時に発生したキャンバー(圧延キャンバー)によるものなのか、それとも蛇行による見かけのキャンバーによるものなのか判別が付かないため、これまで幾何学的キャンバー量は精度のよい予測には適用できなかった。
【0010】
そこで本発明では上記課題に鑑み、精度の良く熱延鋼板のキャンバー量を予測する方法を提供し、さらにその予測されたキャンバー量を用いた操業方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、鋭意検討の結果、常温で温度均一状態となった金属ストリップのキャンバー量は、熱歪によるキャンバー量と、金属ストリップの圧延時の形状に起因するキャンバー量の重ね合わせ(加算)により求められることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
さらに、金属ストリップの圧延時の形状に起因するキャンバー量は、ROT後で温度計6により板幅方向及び長手方向の温度測定(定点温度測定方法)と同時に得られるキャンバー量、または鋼板の横振れ変位を測定する変位計(キャンバー計)によってもたらされる横変位量から測定したキャンバー量で求められることを見出した。
【0013】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法において、ランナウトテーブル冷却後の鋼板の表面温度分布を板幅方向及び圧延方向に対して測定し、当該温度分布がその後冷却されて常温で均一になった時点での熱歪を用いて釣り合い計算を行い熱歪によるキャンバー量を求め、定点温度測定方法で板幅方向及び圧延方向の温度測定と同時に得られる幾何学的キャンバー量または別途設置した変位計によってもたらされる横振れ量から測定した幾何学的キャンバー量を求め、前記熱歪によるキャンバー量と前記幾何学的キャンバー量を重ね合わせることを特徴とした金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法。
【0014】
(2)前記熱歪によるキャンバー量を、前記温度分布を用いた有限要素法(以下、FEMともいう)で求めることを特徴とした(1)に記載の金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法。
【0015】
(3)金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法において、ランナウトテーブル冷却後の鋼板の表面温度分布を板幅方向及び圧延方向に対して測定し、当該温度分布がその後冷却されて常温で均一になった時点での熱歪を用いて波座屈を考慮したFEMによる大たわみ解析により鋼板の面外変形を考慮したキャンバー量を求め、定点温度測定方法で板幅方向及び圧延方向の温度測定と同時に得られる幾何学的キャンバー量を求め、前記熱歪によるキャンバー量と前記幾何学的キャンバー量を重ね合わせることを特徴とした金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法。
【0016】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法を用いて、所定のクライテリアを超えると精整工程へ通板させることを特徴とする金属ストリップの製造方法。
【0017】
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載のストリップの常温時のキャンバー量予測方法を用いて、所定のクライテリアを超えた領域を記憶し、次工程の際のストリップ捲き解き時、前記クライテリアを超えた領域をシャーカットして次工程の通板を行うことを特徴とする金属ストリップの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
前記(1)に記載の発明では、冷却後のコイルを捲き解いた際に生じるキャンバーが冷却中に発生した残留ひずみ分布を所定の熱歪の釣り合い式で求めた熱歪によるキャンバー量と、定点温度測定方法もしくは別途設置した変位計によってもたらされる横変位量から求めた幾何学的キャンバー量を重ね合わせることによって精度が良いキャンバー量を予測することが可能となる。
【0019】
前記(2)に記載の発明では、熱歪の釣り合い式を簡易的な手法とせずに、FEMとし、幅方向の連続性の効果を無視せずに厳密に解くことによって更に精度の良いキャンバー量を予測することが可能となる。
【0020】
前記(3)に記載の発明では、FEMの解析を曲がり解析だけでなく弾性波座屈を考慮した大撓み解析とすることで面外変形を考慮したキャンバー予測が可能となり更に精度の良いキャンバー量を予測することが可能となる。
【0021】
前記(4)に記載の発明では、常温時の精度の良いキャンバー予測を用いて精整工程の必要可否判断をおこなうので効率的な精整工程使用となる。
【0022】
前記(5)に記載の発明では、所定のクライテリアを超えた領域を記憶し、次工程の際のストリップ捲き解き時、クライテリアを超えた領域をシャーカットして次工程の通板を行うことによって精整工程自体を使用しなくても良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】熱延鋼板の製造工程における仕上げ圧延機以降の製造設備概要図を示した図である。
【図2】横振れ量とテレスコ量の相関を示した図である。
【図3】熱歪のみによるキャンバー量予測と実測キャンバー量の相関を示した図である。
【図4】本発明による予測と実測キャンバー量の相関を示した図である。
【図5】幾何学的キャンバー測定によるキャンバー予測と実測キャンバー量の相関を示した図である。
【図6】鋼板全長にわたる、本発明により予測したキャンバー量と実測したキャンバー量を示した図である。
【図7】座屈を考慮した本発明によるキャンバー量と実測キャンバー量の相関を示した図である。
【図8】テレスコ量を説明する熱延コイルの断面図である。
【図9】幅方向に曲がった板とキャンバー量の定義を示した図である。
【図10】横振れ量とこのデータから幾何学的キャンバー量を定義する方法を示した図である。
【図11】図10で示された方法で求められた幾何学的キャンバーを圧延方向に対してプロットした図である。
【図12】幾何学的横振れ量と熱歪による横振れ量に基づいて予測されたキャンバー量を求めることを説明する図である。 図12(a)は実際に測定された横振れ量(幾何学的横振れ量)と熱歪による横振れ量(熱歪横振れ量)を同時に図示したものである。 図12(b)は実際に測定された横振れ量と熱歪による横振れ量とを合計した横振れ量を示したものである。 図12(c)は図12(b)から求めたキャンバー量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施のための最良の形態を、鋼のストリップ(鋼板)を例にして以下に説明する。
なお、本発明は、鋼板だけでなく、アルミニウムや銅などのあらゆる金属板に適用できるものであるが、鉄鋼(特に熱延工程後の鋼板)への適用が一番求められていると想定されることから鋼板を例に、以下、図面に基づいて、本発明を説明する。
【0025】
本発明者らは熱延鋼板の製造工程において鋼板の平坦度悪化のメカニズムを把握するために実験を実施した。図1は熱延鋼板の製造工程における仕上げ圧延機以降の製造設備概要図である。まず、熱延された鋼板(熱延鋼板)9は仕上げ圧延機最終スタンド1を通り、事前に圧延板幅サイズに合わせた開度で待機中のサイドガイド7によってガイドされながら、仕上げ圧延機1を経て所定の製造サイズに圧延され、温度計6で幅方向温度分布が測定され、ランアウトテーブル(ROT)2によって通板され、所定の材質に作り込むためにROT冷却装置3によって所定の板温度まで冷却され、ピンチロール4を通過し、ダウンコイラー5によってコイル状に巻き取られる。
【0026】
巻き取る際の鋼板温度は、鋼板の材質によって異なるが100〜750℃である。本発明において問題としているキャンバー量は、このコイル温度が常温(通常の工場内の大気温度)まで下がり、鋼板全体の温度が常温で均一になった時点で巻き解いたとき生じるキャンバー量のことである。前述のように仕上げ圧延機最終スタンド1までで生じる鋼板の形状に起因するキャンバー量(圧延キャンバー量)と、ROT冷却装置の不均一冷却によって生じる熱歪によるキャンバー量(熱歪キャンバー量)との重ね合わせである。
【0027】
しかし、前述のように圧延後の鋼板のキャンバー量を測定して得られる幾何学的キャンバー量からは、蛇行量と圧延キャンバー量の分離ができない。
【0028】
そこで本発明者らは圧延後のランアウトテーブル2、ピンチロール4、ダウンコイラー5までの鋼板6の通板挙動についてピンチロール前に設置した鋼板の板幅方向の横振れ量(板幅方向の変位量)を変位計8やキャンバー計で計測し、コイルのテレスコ量の関係を調べた結果、図2に示すように横振れ量とテレスコ量が強い正の相関を示すことを見出した。
【0029】
ここで、図8にテレスコ量を説明する熱延コイルの断面図を示す。
テレスコ量とは、コイルを巻き取る際、コイルが少しずつずれて望遠鏡(テレスコープ)を伸ばしたように変位する量のことである。
【0030】
変位計で測定した横振れ量には、圧延キャンバー成分と蛇行成分が混在している。一方、テレスコ量は、巻き取り後の鋼板のキャンバー量に相当するものであることから、ダウンコイラー前のピンチロールに鋼板が倣う事によって曲げ曲げ戻し効果が加わり、鋼板が矯正されるため、蛇行による横振れ成分がそのまま塑性変形して圧延キャンバーに加わったため生じたものであることを突き止めた。つまり、巻き取り後の鋼板のキャンバー量は、巻き取り直前の幾何学的キャンバー量となることを見出した。
【0031】
この結果を受けて、ピンチロール前の横振れ量を幾何学的キャンバー量とし、冷却中に発生した残留ひずみ分布を所定の熱歪の釣り合い式で求めた熱歪的キャンバー量を加えて、常温に均一となった時の鋼板のキャンバー量を予測した。
【0032】
図12に、実際に測定された横振れ量(図中には幾何学的横振れ量と表記)と冷却中に発生した残留ひずみ分布を所定の熱歪の釣り合い式で求めた熱歪による横振れ量(図中には熱歪横振れ量と表記)に基づいて常温時のキャンバー量を予測したものを示す。
【0033】
図12(a)は実際に測定された横振れ量と熱歪による横振れ量を同時に図示したものである。ここでは熱歪による横振れ量はコイルTOPで0mmであるとしている。
【0034】
図12(b)は実際に測定された横振れ量と熱歪による横振れ量とを合計した横振れ量を示したものである。この横振れ量に対して10mの長さに対してキャンバー量を求める。図中ではコイルTOPでのキャンバー量を求めている。
【0035】
図12(c)は図12(b)の方法で求めたキャンバー量を示す。キャンバーは基準とする所定の長さ以降から定義できるので、キャンバー量の値は10mのところから始まっている。キャンバー量の値は、図12(b)において先に実際に測定された横振れ量と熱歪による横振れ量とを合計してから求めているが、それぞれの横振れ量をキャンバー量に変換してからこれらを合計しても同じ図12(c)を得ることができる。
【0036】
複数のコイルを捲き解いて各コイルトップ部の10mのキャンバー量を上記のように実測定し、前記予測したキャンバー量と比較した結果を図4に示す。ここでキャンバー量として用いられるデータは図12(c)の●印の値である。
【0037】
図4から、前記熱歪的キャンバー量と幾何学的キャンバー量から、冷却後の鋼板のキャンバー量を予測する本発明は、実測結果と非常に良い一致を示すことがわかる。
【0038】
一方、図3には熱歪だけから予測した結果を、図5には幾何学的キャンバー測定だけから予測した結果を示す。これら従来の方式である熱歪だけや幾何学的キャンバー測定だけでの予測では、値がばらつくことがよくわかる。
【0039】
また変位計による横振れ量測定を定点温度測定方法によって求めたキャンバーで置き換えても同様の精度で幾何学的キャンバー量として求めることが可能なことも分かった。つまり、図1に示した変位計8で計測したキャンバー量は温度計6で計測したキャンバー量で置き換えてもよい。
【0040】
図4に示すフロント10mのキャンバー量予測は一つの例であって、本予測ではコイル全長に亘ったキャンバー量を予測することも可能である。例として、コイル全長に亘って測定したキャンバー量と予測キャンバー量を比較したものを図6に示す。非常に良い一致を示すことが判る。
このような知見を受けて(1)に記載の発明をするに至った訳である。
【0041】
次に(2)について説明する。(1)では熱歪の釣り合いの式を簡易的な手法としているために、幅方向の連続性の効果を無視している。そのため、厳密な熱歪によるキャンバー計算とはなっていない。そこで熱歪によるキャンバー量の予測を有限要素法(FEM)によって解くことにより、更に精度の良いキャンバー量を予測することが可能となる。
【0042】
(3)に記載の発明は、(2)に記載のFEMの解析を曲がり解析だけでなく弾性波座屈を考慮した大撓み解析とすることで面外変形を考慮した熱歪キャンバー量予測が可能となり更に精度の良いキャンバー量を予測することが可能となる。その結果、(2)に記載の予測方法では波形状がある場合は実測と予測がずれており、図4に示すように相関係数R2=0.983であるのに対し、弾性波座屈を考慮した大撓み解析によって波形状がある場合は、図7に示すように相関係数R2=0.9976であり、実測と予測が一致することが分かる。
【0043】
(4)に記載の発明は、客先での要望や熱処理ラインであるFIPLにおいてキャンバー起因で生じる蛇行によって破断が発生するため、熱処理ラインを通過させる鋼板は実際にキャンバーの大小にかかわらず全コイル矯正工程を通す必要があったが(1)、(2)、(3)に記載の精度の良いキャンバー量予測を用いることで、キャンバー量が大きいと予測されたコイルだけ精整工程の増工程することが可能となるため効率的な操業が可能となる。
【0044】
(5)に記載の発明は(1)、(2)、(3)に記載の精度の良いキャンバー量予測ではどの位置にどれほどのキャンバー量が生じているか位置を特定できる(例えば図5を参照)。この予測結果を次工程のFIPLや客先に示すことによって必要によって問題となるキャンバーが発生した位置をシャーカット等で除去すれば精整工程そのものを増工程すること自体がなくなる。
【実施例】
【0045】
熱延鋼板の製造工程を例にとって、金属板の平坦度悪化予測を行い、精整工程への通板可否判定を行った事例を示す。図1は熱延鋼板の製造工程における仕上げ圧延機以降の製造設備概要図である。まず、熱延鋼板6は仕上げ最終圧延機1を経て所定の製造サイズに圧延されランアウトテーブル(ROT)2によって通板され、所定の材質に作り込むためにROT冷却装置3によって所定の板温度まで冷却され、事前に圧延板幅サイズに合わせた開度で待機中のサイドガイド7によってガイドされながら、温度計6で幅方向温度分布が測定され、変位計8で横振れ量を測定しコイラー4によってコイル状に巻き取られる。巻き取る板温度は材質によって色々異なるが100〜750℃まであり、本発明において問題としている平坦度は、このコイル温度が室温まで下がった時点で巻き解くと鋼板センター部には中波、エッジ部には耳波と呼ばれる波状の面外変形を起こした場合である。
この時、冷却後の温度計6を用いて熱歪、熱応力分布を求め、本モデルに入力し、キャンバー量予測を行った。本予測で、コイル全長に渡ったキャンバー量を予測することが可能である。
【0046】
しかし、実用的には、コイルのフロント10m、及びテール10mのキャンバー量が問題となる。そこで、100本分のコイルフロント10m及びテール10mのキャンバー量予測をし、所定のクライテリアとして1σ(ここで、σは標準偏差)を超えるキャンバー量を持つコイルは精整工程に通板し、キャンバー量を矯正させることにより、熱延後の連続焼鈍設備通板時のキャンバー起因の板破断は0%であった。その結果、これまで全数精整通板していたコイル本数が66.6%減ることになった。
【0047】
状況に応じて所定のクライテリアを2σ、3σと拡げていっても良いし、過去の実績に応じてクライテリアを設定してもよい。
【0048】
なお、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明は、その技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明により、金属ストリップの常温時のキャンバー量予測が、精度よくできるため、精整工程や、矯正工程へ通す金属ストリップを高精度で選別することができ、コストの削減だけでなく、生産性の向上にも貢献する。従って、本発明が、鉄鋼業だけでなく、広く金属加工(圧延)業界の発展に寄与するものである。
【符号の説明】
【0050】
1 仕上げ圧延機最終スタンド
2 ROT
3 ROT冷却装置
4 ピンチロール
5 ダウンコイラー
6 温度計
7 サイドガイド
8 変位計
9 鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法において、
ランナウトテーブル冷却後の鋼板の表面温度分布を板幅方向及び圧延方向に対して測定し、
当該温度分布がその後冷却されて常温で均一になった時点での熱歪を用いて釣り合い計算を行い熱歪によるキャンバー量を求め、
定点温度測定方法で板幅方向及び圧延方向の温度測定と同時に得られる幾何学的キャンバー量または別途設置した変位計によってもたらされる横振れ量から測定した幾何学的キャンバー量を求め、
前記熱歪によるキャンバー量と前記幾何学的キャンバー量を重ね合わせることを特徴とした金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法。
【請求項2】
前記熱歪によるキャンバー量を前記温度分布を用いた有限要素法(以下、FEMともいう)で求めることを特徴とした請求項1に記載の金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法。
【請求項3】
金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法において、
ランナウトテーブル冷却後の鋼板の表面温度分布を板幅方向及び圧延方向に対して測定し、
当該温度分布がその後冷却されて常温で均一になった時点での熱歪を用いて波座屈を考慮したFEMによる大たわみ解析により鋼板の面外変形を考慮したキャンバー量を求め、
定点温度測定方法で板幅方向及び圧延方向の温度測定と同時に得られる幾何学的キャンバー量を求め、
前記熱歪によるキャンバー量と前記幾何学的キャンバー量を重ね合わせることを特徴とした金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属ストリップの常温時のキャンバー量予測方法を用いて、所定のクライテリアを超えると精整工程へ通板させることを特徴とする金属ストリップの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のストリップの常温時のキャンバー量予測方法を用いて、所定のクライテリアを超えた領域を記憶し、次工程の際のストリップ捲き解き時、前記クライテリアを超えた領域をシャーカットして次工程の通板を行うことを特徴とする金属ストリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−201466(P2010−201466A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49537(P2009−49537)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)