説明

帽子

【課題】 風による脱落を防止することが可能で、しかもファッション性を損なうことがなく、着用感の良好な帽子を提供する。
【解決手段】 帽子1の右側面の中心位置より1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で後方に、弾性体の紐8の一端部を取り付け、帽子の左側面の中心位置より1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で後方に、弾性体の紐8の他端部を取り付ける。弾性体の紐8は、着用時に後頭部に沿って装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帽子に関する。特に、クラウンの下縁部の全周に亘って鍔が設けられている帽子や、クラウンの下縁部の一部に庇が設けられている帽子が、風等で脱げることを防止できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鍔や庇のある帽子は、運動時や風にあおられた時に、脱げてしまうことがあった。そこで、このような脱落を防ぐために、クラウンの左右の下縁部にゴム紐を架け渡し、顎紐を設けた帽子が知られている。帽子の着用者は、顎にこのゴム紐をかけることで帽子を脱げにくくすることができる。
【0003】
しかし、帽子の顎紐には通常白色又は黒色のゴム紐が用いられているために、着用時に側頭部や下顎部で非常に目立ってしまい、帽子全体のファッション性を損なうために、外観上問題となる場合があった。又、帽子の顎紐は、着用時に側頭部や顎を締め付けるため、不快感を与えることがあった。
【0004】
特許文献1には、風による脱落を防ぐことのできる帽子として、帽子の左右の側頭部に掛止板を設け、後頭部にバンドを掛け渡してこの掛止板に固定する帽子が開示されている。後頭部に掛けられたバンドは、正面から見えにくいので、顎紐に比べて外観上の問題となるおそれが少ない。
【0005】
しかし、特許文献1の帽子は、着用する度に毎回バンドを後頭部に回して掛け止めする必要がある。このため着用に非常に手間がかかり、帽子自体の利便性が損なわれてしまうという問題点があった。又、髪の毛の長い着用者にとって、特許文献1のバンドは、掛止板に固定する際に髪の毛を挟み込んでしまうという問題点があった。更に、特許文献1のバンドは、その取付部の構成や明細書及び図面の記載から判断すると、使用される素材が堅牢で剛性の高いものを用いているようであり、バンドの配置によっては、着用者に顎紐よりも不快感を与える可能性があったり、側面や背後から見たときの外観上の問題が発生する可能性があった。
【0006】
又、特許文献2には、紐を後頭部で結ぶ保安帽(ヘルメット)が開示されている。しかし、この保安帽も、特許文献1の帽子と同様に、着脱時に毎回を紐を結ぶ動作と紐を解く動作が必要となり、着用に手間がかかるという問題点があった。又、紐を結ぶときに髪の毛を巻き込むおそれがあった。更に、ヘルメットは重量があるために風によって飛ばされることは考慮されておらず、外観上の問題についても特段の考慮はされていない。
【特許文献1】実公昭44−1057号公報
【特許文献2】実開昭56−146730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものだって、風による脱落を防止することが可能で、しかも外観上問題となることなく、着用感が良好であり、しかも髪の長い着用者が使用する場合であっても着脱が容易な帽子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、着用者の後頭部を通過させるように装着される弾性体の紐が、帽子の右側面と左側面に架け渡される帽子に関する。本発明の帽子は、弾性体の紐の一端部が、帽子の右側面の中心位置より、1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で後方に取り付けられており、且つ弾性体の紐の他端部が、帽子の左側面の中心位置より、1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で後方に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
発明者は、着用者の後頭部に弾性体の紐を通過させて脱落を防ぐ帽子において、弾性体の紐が帽子に固定される位置が、帽子が風によって脱落することを防止し、しかも着用感を良好に保つ上で重要であることを見いだした。そして弾性体の紐の固定位置の検証を行った結果、弾性体の紐が、帽子の両側面の中心位置の後方1センチメートルよりも前に取り付けられた場合には、弾性体の紐が着用者の後頭部を通過する際に、耳の上部を圧迫することになり、着用感が好ましくなくなることを見いだした。又、弾性体の紐が、帽子の両側面の中心位置の後方5センチメートルよりも後ろに取り付けられた場合には、帽子を支持する力が弱くなり、風等で帽子が脱落することを見いだした。これらの種々の検証の結果から、弾性体の紐が帽子に固定される位置が、弾性体の紐の一端部が、帽子の右側面の中心位置より、1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で後方に取り付けられ、且つ弾性体の紐の他端部が、帽子の左側面の中心位置より、1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で取り付けられるとき、帽子が風によって脱落せず、しかも帽子の着用感が良好であることが特定された。
【0010】
請求項2の発明は、帽子の右側面と左側面に、弾性体の紐を取り付けるための取付部が合計3箇所以上設けられており、弾性体の紐の両端に止め具が設けられており、取付部に止め具を固定することで、弾性体の紐の取付位置を変更できることを特徴とする。
【0011】
本発明の帽子は、右側面と左側面に弾性体の紐の取付部を合計3箇所以上設けられていることで、少なくとも一方の側面で、弾性体の紐の取付け位置を選択することが可能となっている。この結果、本発明の帽子の着用者は、帽子が風によって脱落せず、しかも最も着用感の良い位置を自ら調整し、最も好ましい位置に弾性体の紐を取り付けることが可能となる。更に、弾性体の紐の両端に帽子の取付部に固定することのできる止め具が設けられていることで、着用者は、予め最も好ましい位置に弾性体の紐を容易に固定しておくことができる。帽子の着用の度に弾性体の紐の着脱を行う必要はなく、弾性体の紐を伸縮させることにより、非常に容易かつ迅速に帽子を着用することが可能である。このため、髪の長い着用者が本発明の帽子を使用する場合であっても、着脱は非常に容易で、止め具に髪が挟み込まれるおそれがない。
【0012】
請求項3の発明は、帽子の一方の側面に、弾性体の紐を取り付けるための1又は2以上のループ状の取付部が設けられており、帽子の他方の側面のクラウンとビン皮の間には、弾性体の紐の一端部が挟まれて固定されており、弾性体の紐の他端部がループ状の前記取付部を通過した後に折り返されて、止め具によって固定されることを特徴とする。
【0013】
本発明の帽子は、弾性体の紐の一端部が帽子に固定されていることで、紐が紛失しないという特徴を備えている。又、弾性体の紐の他端部は、ループ状の取り付け部を通過した後に止め具によって固定されるために、止め具の固定位置を調整することによって弾性体の紐の長さを着用者が調整することが可能となる。着用者は、止め具によって予め最も好ましい長さで弾性体の紐を容易に固定しておくことができるために、帽子の着用の度に弾性体の紐の着脱を行う必要はなく、弾性体の紐を伸縮させることにより、非常に容易かつ迅速に帽子を着用することが可能である。このため、髪の長い着用者が本発明の帽子を使用する場合であっても、着脱は非常に容易で、止め具に髪が挟み込まれるおそれがない。
【0014】
請求項4の発明は、帽子に取り付けられた弾性体の紐の長さが、16センチメートル以上25センチメートル以下であって、好ましくは19センチメートル以上21センチメートル以下であることを特徴とする。
【0015】
発明者は、弾性体の紐の長さと、帽子の脱落を防止する力及び好ましい着用感との間に、高い相関関係が存在することを見いだした。即ち、弾性体の紐が短い場合には、帽子の脱落を防止する力が大きい一方で、後頭部や耳の上部が圧迫されて着用感が劣ることが明かとなった。又、弾性体の紐が所定の長さ以上となった場合には、好ましい着用感が得られるものの、帽子が風によって脱落するおそれがあることが明かとなった。このような種々の検討の結果、帽子の脱落を防止するために充分な力が得られ、且つ好ましい着用感のある弾性体の紐の長さは、16センチメートル以上25センチメートル以下であって、より好ましくは19センチメートル以上21センチメートル以下であることが特定された。
【0016】
請求項5の発明は、帽子に取り付けられた弾性体の紐が中空であり、弾性体の紐の幅が3ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする。
【0017】
発明者は、弾性体の紐の形状と幅が、帽子の脱落を防止する力と好ましい着用感とに大きく影響することを見いだした。本発明の弾性体の紐は、中空であることで、着用者の耳の上部や後頭部に接触した場合に容易に柔らかく変形し、圧迫感を低減する作用がある。更に検討を重ねた結果、弾性体の紐は、たとえ中空であっても、幅が3ミリメートルよりも細い場合には、耳の上部や後頭部に局所的にこすれて着用感が好ましくないことが明らかになった。同時に、幅が3ミリメートルよりも細い紐は、帽子の脱落を防止する力が弱いことも明らかとなった。又、弾性体の紐の幅が10ミリメートル以上となった場合は、紐に捩れや折れ曲がりが発生し易くなるという問題点が明らかとなった。同時に、幅が10ミリメートル以上の紐は目立ちやすく、着用時に外観上の問題を発生することがあった。このような種々の検討の結果、弾性体の紐が中空である場合に、好ましい紐の幅は3ミリメートル以上10ミリメートル以下であることが特定された。
【0018】
請求項6の発明は、帽子に取り付けられた弾性体の紐の断面形状が楕円形であり、且つ弾性体の紐の幅が3ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする。
【0019】
断面形状が楕円形の紐を帽子に適用すると、局所的な圧迫感を与えることなく着用者の耳の上部や後頭部に接触することができる。更に検討を重ねた結果、弾性体の紐は、たとえ楕円形であっても、幅が3ミリメートルよりも細い場合に、耳の上部や後頭部に局所的にこすれて着用感が好ましくなくなることが明かとなった。同時に、幅が3ミリメートルよりも細い弾性体の紐は、その引張強さ等の物理特性に拘わらず、帽子の脱落を防止する力が弱くなることも明かとなった。又、弾性体の紐の幅が10ミリメートル以上となった場合は、紐に捩れや折れ曲がりが発生し易くなるという問題点が明かとなった。同時に、幅が10ミリメートル以上の紐は目立ちやすく、着用時に外観上の問題を発生することがあった。このような種々の検討の結果、弾性体の紐の断面形状が楕円形である場合に、好ましい紐の幅は3ミリメートル以上10ミリメートル以下であることが特定された。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、運動時や風にあおられた時であっても脱げることがなく、しかも帽子全体としてのファッション性が損なわれないために外観上の問題の発生が予め防止された帽子が提供される。
【0021】
本発明により、頭部や首を圧迫することなく着用感が良好であり、しかも髪の長い着用者が使用する場合も、髪の短い着用者と同様に、着脱が容易な帽子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に発明を実施するための最良の形態を列記する。ここで記載された形態は例示であり、特許請求の範囲に記載の技術には、以下の形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0023】
弾性体の紐は、複数の細いゴムを楕円状に束ね、断面が楕円形となるようにしたゴムの束の外側を、繊維質(織布)で包んだゴム紐である。このゴムの束の中には、更に繊維を包含させて、紐全体のクッション性と強度が高められている。弾性体の紐の幅は、約5ミリメートルから約6ミリメートルである。弾性体の紐は、帽子の右側面と左側面の間に、約18センチメートルから約25センチメートルの間の長さで架け渡される。
【0024】
弾性体の紐を取り付けるための取付部は、複数のループがビン皮と鍔の間に挟まれて固定されることで構成される。取付部を構成するループは、帽子の右側面と左側面のそれぞれの中心位置よりも約1センチメートルから約5センチメートル後方の領域に、等間隔で取り付けられる。取付部となるループは布製であり、弾性体の紐が通過できるように、直径1センチメートルから3センチメートルの大きさで形成される。
【0025】
弾性体の紐の端部に設けられる止め具は、略直方体状であって、柔軟な素材で構成されている。止め具の内側には断面が長方形の貫通穴が設けられている。止め具の貫通穴は、通常の状態では弾性体の紐を2本同時に通過させず、弾性体の紐を側面で挟み込んだ状態で保持する。しかし、止め具を変形させて貫通穴の断面形状を略円形にした場合と、保持されている紐に大きな引っ張り力を加えた場合には、弾性体の紐は、2本同時に止め具の貫通穴を通過することができる。
【実施例】
【0026】
(実施例1) 以下、クラウンの下縁部の全周に亘って鍔が設けられている帽子に、本発明を適用した実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0027】
図1は本実施例の帽子1の斜視図であり、図2は本実施例の帽子1の下面図である。帽子1は、着用者の頭部と接触するクラウン2と、クラウン2の下縁部の全周に亘って設けられており、クラウンから外側に突き出す鍔4と、クラウンの内側の下縁部の全周に亘って、クラウンに縫いつけられているビン皮6と、一端部がクラウン2とビン皮6間に固定された弾性体の紐8とを備えている。
【0028】
本実施例におけるクラウン2の断面形状は、前後に長く、左右に短い略楕円形をしている。帽子1の前面中央と後面中央を結ぶ直線はクラウン2の断面の長径と一致し、帽子1の右側面中央と左側面中央を結ぶ直線は、クラウン2の断面の短径と一致している。以下、本明細書において、帽子の右側面におけるクラウン2の短径上の位置を帽子1の右側面の中心位置と称し、左側面におけるクラウン2の短径上の位置を帽子1の左側面の中心位置と称する。本実施例における鍔4は、右側面の中心位置と左側面の中心位置で縫い合されており、円錐台形状の立体形状を有している。
【0029】
帽子1の左側面に、弾性体の紐8を取り付けるための取付部10が、1箇所設けられている。取付部10は、テープ状の繊維で形成されている直径約3センチメートルのループで構成される。このループは、テープ状の繊維の両端部が、ビン皮と鍔の間に約3センチメートルの間隔を空けて、挟まれて固定されることで形成されている。取付部10は、その中心位置が帽子1の左側面の中心位置よりも約2センチメートル後方となるように、固定されている。
【0030】
帽子1に一端部が固定される弾性体の紐8は、複数の細いゴムを楕円状に束ね、断面が楕円形となるようにしたゴムの束の外側を、繊維質(織布)で包んだゴム紐である。弾性体の紐8の長径、即ち弾性体の紐8の幅は、約5ミリメートルである。弾性体の紐8の伸び率は170パーセントであって、引張強さは530ニュートンである。ここで、引張強さは、JIS L1096A法に基づいて、長さ10センチメートルの弾性体の紐8を用いて速度毎分10センチメートルで引張試験を行った場合の引張り強さの値である。
【0031】
弾性体の紐8は、帽子1の右側面のクラウン2とビン皮6の間に、一端部が挟まれて固定されている。弾性体の紐8は、帽子1の右側面の、中心位置よりも約2センチメートル後方に固定されている。
【0032】
弾性体の紐8の他端部には、止め具12が設けられている。止め具12は、弾性体の紐の幅よりも若干小さな径を有する円形の穴を2箇所備えている。止め具12によって、弾性体の紐8の他端部が取付部10に固定される方法を、図3の帽子1の取付部10の周辺部の拡大図を参照しつつ説明する。弾性体の紐8の他端部は、最初に止め具12の2箇所の円形の穴のうちの一方を通過し、次に取付部10のループの内部を通過して折り返される。更に弾性体の紐8の他端部は、止め具12の2箇所の円形の穴のうちの残る一方の穴を通過する。最後に、弾性体の紐8の他端部の終端に結び目14が形成される。このように、弾性体の紐8は、止め具12の一方の穴と取付部10のループと止め部12の他方の穴を交互に通過することで、止め具12との間で閉じたループ部16が形成され、このループ部16の位置で取付部10に固定される。止め具12の円形の穴の径は、弾性体の紐8の幅よりも若干小さいために、結び目14を通過させることがなく、弾性体の紐8は、止め具12を用いることによって取付部10に確実に固定される。この結果、弾性体8の紐は、帽子1の右側面の中心位置から2センチメートル後方の位置から、帽子の左側面の中心位置の約2センチメートル後方の位置に架け渡されて固定される。
【0033】
本実施例における弾性体の紐8は、帽子1に固定される際に、右側面の固定位置から左側面の止め具12までの長さが20センチメートルとなるように、その長さが調整される。ここで、帽子1に一端部を固定される際の弾性体の紐8は、止め具12を通過してから結び目14を設けるための長さを考慮して、20センチメートルよりも長くなっている。着用者は、弾性体の紐8を止め具12に通過させる位置を調整したり、弾性体の紐8の結び目14を設ける位置を調整することによって、右側面の固定位置から左側面の止め具12までの長さを、着用に最も適した長さに調整し、着用感を向上させることができる。又、着用者は、一旦最も好ましい位置に弾性体の紐8の長さを固定すると、帽子の着用の度に弾性体の紐を固定する必要はなく、弾性体の紐を伸縮させることにより、非常に容易かつ迅速に帽子を着用することが可能である。
【0034】
図4に示されるように、着用者は、帽子1を着用する際に、最初に弾性体の紐8を帽子1の後側周縁部に沿わせた状態でクラウン2を頭部に着用し、次に弾性体の紐8を後頭部に下ろすことで、帽子1を頭部に固定することができる。着用者の髪の毛が長い場合であっても、着用者は髪の毛の束の下側に弾性体の紐8をくぐらせることによって、非常に容易に帽子1を着用することができる。
【0035】
本実施例において、帽子着用時の弾性体の紐8は、着用者の耳の上部から後頭部の髪の毛の生え際付近に配置される。着用時に、弾性体の紐8は、繊維に包まれているために、着用者の髪の毛や肌に摩擦を生じることなくなめらかに接触する。このため、髪の毛を巻き込むおそれがない。弾性体の紐8は、若干伸長した状態となって着用者の頭部を締め付けるが、その伸び率が170パーセントであることにより、運動時や風にあおられた場合であっても弾性体の紐8が伸びすぎることがなく、帽子1が着用者の頭部から脱落することを防止することができる。また、弾性体の紐8は、着用者の耳から後頭部の髪の毛の生え際を通過するため、従来の顎紐と比較すると特に正面から見えにくく、外観上の問題を起こすことがない。
【0036】
本実施例の帽子1は、弾性体の紐8の固定位置が、帽子1の両側面の中心位置の後方約2センチメートルの位置であることで、風による脱落が防止されている。また、弾性体の紐8の幅が約5センチメートルであり、その断面形状が楕円形であり、前記の配置をとることによって、弾性体の紐8は、着用者の耳の上部や後頭部に局所的な圧迫感を与えることがなく、良好な着用感を得ることができる。
【0037】
(実施例2) 本発明を適用した帽子21の構成を、図5を参照しつつ詳細に説明する。本実施例における帽子21において、帽子1と同一の構成を有しているものについては、同一符号を賦与して重複説明を割愛する。本実施例は、弾性体の紐8の他端部に設けられる止め具22が、第1実施例と異なる構成と作用効果を有している。
【0038】
本実施例の止め具22は、弾性変形する樹脂で形成されており、柔軟性を有している。又、止め具22は幅約10ミリメートル、奥行約4ミリメートル、高さ約4ミリメートルの略直方体であって、内側に断面形状が幅約6ミリメートル、奥行約2ミリメートルの長方形である貫通穴が設けられている。このように止め具22の内側の穴は厚みが薄いために、通常の状態では弾性体の紐8を2本同時に自由に移動させず、貫通穴の壁面が弾性体の紐8を押圧してその摩擦力により保持することができる。しかし止め具22全体を変形させて、内側の穴の形状を円形に近づけた場合には、その直径が弾性体の紐8の幅よりも広くなり、弾性体の紐8を2本同時に通過させることのできる大きさを備えている。また、弾性体の紐8に強い引っ張り力を与えた場合にも、弾性体の紐8は止め具22を通過することができる。
【0039】
弾性体の紐8の他端部は、最初に止め具22を通過し、次に取付部10のループの内側を通過して折り返される。更に弾性体の紐8の他端部は、止め具22を最初に通過した向きと逆向きに通過する。このように、弾性体の紐8は、止め具22の穴と取付部10のループを交互に通過することで、閉じたループ部23が形成され、このループ部23の位置で取付部10に固定される。止め具22の穴の径は、止め具22を変形させない状態では、弾性体の紐8を2本同時に自由に移動させることができない大きさであるため、弾性体の紐8の終端に結び目を形成することは必須ではなく、弾性体の紐8は、止め具22を用いることによって取付部10に確実に固定される。
【0040】
本実施例における止め具22は、構成が非常に簡易であるために、安価に製造することが可能である。また、突起等がないために、着用時に止め具に髪の毛が挟み込まれるおそれが全くなく、優れた着用感を得ることができる。更に、小型であるために着用時に目立ちにくく、外観上の問題が発生しない。
【0041】
(実施例3) 本発明を適用した帽子31の構成を、図6〜図8を参照しつつ詳細に説明する。本実施例における帽子31の中で、実施例1及び実施例2と同一の構成を有しているものについては、同一符号を賦与して重複説明を割愛する。本実施例は、弾性体の紐8の取付部の構成が、第1実施例及び第2実施例と異なっている。
【0042】
本発明の帽子31の右側面には、弾性体の紐8の2個の取付部32aと取付部32bが設けられている。又、帽子31の左側面には、弾性体の紐8の2個の取付部32cと取付部32dが設けられている。取付部32a〜32dは、テープ状の繊維で形成されている直径約2センチメートルのループで構成される。このループは、長さ約4センチメートルのテープ状の繊維の両端部を、ビン皮と鍔の間に約2センチメートルの間隔で、順に固定することで形成されている。取付部32a〜32dの固定位置は右側面と左側面で左右対称である。即ち取付部32aと取付部32cの固定位置の中心は、帽子31の両側面の中心位置から約2センチメートル後方であり、取付部32bと取付部32dの固定位置の中心は、帽子31の両側面の中心位置から約4センチメートル後方となっている。
【0043】
本実施例の弾性体の紐8の両端部には、各々1個ずつ止め具22が設けられている。弾性体の紐8は、止め具22の穴と取付部32a〜取付部32dのいずれかのループを交互に通過することで、閉じたループ部23が形成され、このループ部23の位置で取付部10に固定される。
【0044】
図6には、弾性体の紐8を、取付部32aと取付部32cに固定した様子を示す。又、図7に弾性体の紐8を帽子31の取付部32bと取付部32dに通過させた状態を示し、図8に弾性体の紐8を取付部32bと取付部32dに固定した様子を示す。このように、本実施例の帽子31は、両側面の取付部32a〜32dを選択して取付位置を調整することが可能となっている。しかも、本実施例の弾性体の紐8は、両端部で長さを調整することが可能であり、同一の長さの弾性体の紐8を用いた場合であっても、より微小な着用時の長さの調整が可能である。
【0045】
このように、本実施例の帽子31は、弾性体の紐8の固定位置と、弾性体の紐8の長さを調整することが可能である。着用者は、自ら性体の紐8の長さと固定位置を選択することによって、風によって脱落せず、しかも最も着用感の良い帽子31が提供される。
【0046】
(実施例4) 本発明を適用した帽子41の構成を、図9〜図11を参照しつつ詳細に説明する。本実施例における帽子41の中で、実施例1〜実施例3と同一の構成を有しているものについては、同一符号を賦与して重複説明を割愛する。
【0047】
図9に、本実施例における帽子41の下面図を示す。帽子41の右側面と左側面には、各々弾性体の紐8を取り付けるための取付部42が、3箇所ずつ設けられている。取付部42は、幅約8ミリメートル、長さ3センチメートルのテープ状の繊維で形成されている。このテープ状の繊維は、両側面の中心位置よりも約1センチメートル後方から、両側面の中心位置よりも約4センチメートル後方までの位置に、ビン皮6の下側周縁部に沿って配置されており、ビン皮6にその一部が縫いつけられている。テープ状の繊維が、ビン皮6に縫いつけられている状態を、図10に示す。テープ状の繊維が、ビン皮6に縫いつけられている位置は、その両端部と、両端部から各1センチメートル内側の位置である。テープ状の繊維が、このように両端部を内側の所定の位置でビン皮6に縫いつけられることで、ビン皮6の下側周縁部に沿って約1センチメートルの間隔で、3箇所の取付部42a,42b,42cが形成される。
【0048】
弾性体の紐43は、中が中空のゴムの外側を、繊維質で包んだゴム紐である。弾性体の紐43の直径は、約7ミリメートルである。
【0049】
図11に示すように、弾性体の紐43には、両端部に同一の仕様の止め具44が設けられている。止め具44には先端に開口部が設けられており、開口部は、開状態と閉状態の切り替えが可能である。開口部は、帽子41の取付部42a,42b,42cのいずれか1箇所を挟み込むことができ、挟み込んだ状態で閉状態とすることで、弾性体の紐43を取付部42a,42b,42cのいずれか1箇所に固定することができる。止め具44の間の弾性体の紐43の長さは、20センチメートルである。
【0050】
本発明の弾性体の紐43は、中空であることで、着用者の耳の上部や後頭部に接触した場合に容易に変形し、圧迫感を低減することができる。このため、他の実施例よりも幅が太いにもかかわらず、捩れや折れ曲がりが発生しにくく、良好な装着感を得ることができる。
【0051】
また、本実施例の取付部42の構成は、鍔4がクラウン2の全周に亘って設けられておらず、帽子の前面のみに庇が設けられている帽子に適用が可能である。本実施例の取付部42の構成を、帽子の前面に庇が設けられた帽子に適用した場合には、取付部42と止め具44が外側から見えないため、帽子全体のファッション性を損なうことがなく、外観上の問題を発生させない。
【0052】
(比較例1) 本発明との比較のために、幅2ミリメートルの弾性体の紐と、幅12ミリメートルの弾性体の紐を、前記実施例1の帽子1の構成に適用した例とについて説明する。本比較例における帽子の弾性体の紐の幅以外の構成要素は、実施例1と同一である。
【0053】
幅が2ミリメートルの弾性体の紐を適用した帽子は運動時に脱落しやすく、また自転車等による走行時にも屡々脱落した。一方、幅が12ミリメートルの弾性体の紐は、着用中に耳の上部と後頭部の両方で折れ曲がりが発生し、着用感が悪化した。また、幅が12ミリメートルの弾性体の紐は、後頭部に装着している場合でも目立ちやすく、この弾性体の紐を適用した帽子は、着用者に好まれないことが明かとなった。
【0054】
(比較例2) 本発明との比較のために、弾性体の紐8を、帽子の右側面の中心位置から左側面の中心位置に架け渡した帽子の例について説明する。本比較例の帽子は、右側面の中心位置の、鍔4とビン皮6の間に、弾性体の紐8の一端部が固定されている、また、帽子の左側面の中心位置に取付部10が設けられており、弾性体の紐8の他端部が止め具10によって固定されている。本比較例における弾性体の紐8の固定位置以外の構成要素は、実施例1と同一である。
【0055】
検討の結果、弾性体の紐8を右側面の中心位置から左側面の中心位置に架け渡した帽子は、弾性体の紐8が着用者の後頭部を通過する際に、耳の上部を圧迫することになり、着用感が好ましくないことが確認された。このような問題は、弾性体の紐8の長さや形状を種々変更しても改善されることがなく、弾性体の紐8の取付位置を両側面の中心位置よりも後方に下げることが、着用感を良好に保つ上で重要であることが特定された。
【0056】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。たとえば、実施例においては、紐の取付部を、左右同数設けた帽子について説明したが、一方の側面に1個の取付部を設け、他方の側面に2以上の取付部を設けることが可能である。また、帽子の鍔やビン皮の形状は、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施例の帽子1の斜視図である。
【図2】第1実施例の帽子1の下面図である。
【図3】第1実施例の帽子1の取付部10に弾性体の紐8が固定された状態を示す部分拡大図である。
【図4】第1実施例の帽子1が着用された状態を模式的に示す図である。
【図5】第2実施例の帽子21の取付部10に弾性体の紐8が固定された状態を示すの部分拡大図である。
【図6】第3実施例の帽子31の下面図である。
【図7】第3実施例の帽子31の取付部32bと取付部32dに弾性体の紐8が通過した状態を示す部分拡大図である。
【図8】第3実施例の帽子31の取付部32bと取付部32dに弾性体の紐8が固定された状態を示す部分拡大図である。
【図9】第4実施例の帽子41の下面図である。
【図10】第4実施例の帽子41のビン皮6に取付部42が固定された状態を示すの部分拡大図である。
【図11】第4実施例の弾性体の紐43に止め具44が固定されている状態を示す上面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,21,31,41 ・・帽子
2 ・・クラウン
4 ・・鍔
6 ・・ビン皮
8,43 ・・弾性体の紐
10,32a,32b,32c,32d,42,42a,42b,42c,42d
・・取付部
12,22,44 ・・止め具
14 ・・結び目
16,23 ・・ループ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の後頭部を通過させるように装着される弾性体の紐が、帽子の右側面と左側面に架け渡される帽子であって、
前記弾性体の紐の一端部が、帽子の右側面の中心位置より、1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で後方に取り付けられており、且つ前記弾性体の紐の他端部が、帽子の左側面の中心位置より、1センチメートル以上5センチメートル以下の範囲で後方に取り付けられていることを特徴とする帽子。
【請求項2】
帽子の右側面と左側面に、弾性体の紐を取り付けるための取付部が合計3箇所以上設けられており、弾性体の紐の両端に止め具が設けられており、取付部に止め具を固定することで、弾性体の紐の取付位置を変更できることを特徴とする請求項1に記載の帽子。
【請求項3】
帽子の一方の側面に、弾性体の紐を取り付けるための1又は2以上のループ状の取付部が設けられており、
帽子の他方の側面のクラウンとビン皮の間には、弾性体の紐の一端部が挟まれて固定されており、
弾性体の紐の他端部がループ状の前記取付部を通過した後に折り返されて、止め具によって固定されることを特徴とする請求項1に記載の帽子。
【請求項4】
帽子に取り付けられた弾性体の紐の長さが、16センチメートル以上25センチメートル以下であって、好ましくは19センチメートル以上21センチメートル以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の帽子。
【請求項5】
弾性体の紐が中空であり、弾性体の紐の幅が3ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の帽子。
【請求項6】
弾性体の紐の断面形状が楕円形であり、且つ前記弾性体の紐の幅が3ミリメートル以上10ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の帽子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−204898(P2007−204898A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28200(P2006−28200)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】