説明

幌付乳母車

【課題】 車体剛性を高めた幌付乳母車を提供する。
【解決手段】 乳母車1は、座席の基本的形態を形作る車体フレーム10と、幌30とを備える。車体フレーム10は、一対の手摺部材11と、一対の前脚12と、一対の後脚13と、座部支持部材14と、一対の手摺支持部材15と、その下方端部が一対の手摺支持部材15の上方端部に連結されて幅方向に延びる逆U字形状部材16とを備える。逆U字形状部材16は、車体剛性を高めるための車体フレーム10としての機能と、幌33を支持する幌骨としての機能とを併せ持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、幌を備えた乳母車に関し、特に車体剛性を高めた幌付乳母車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
幌付乳母車は、例えば特開昭61−139555号公報(特許文献1)や特開2002−187554号公報(特許文献2)に開示されている。これらの公報に開示された幌付乳母車では、幌は、平板状の複数の幌骨と、複数の幌骨間に渡された幌布とを備え、車体フレームに取り外し可能に取り付けられている。
【0003】
従来の幌付乳母車における幌は、必要なときに車体フレームに取り付けられて使用されるものであり、車体フレームの剛性に対して何らの寄与もしていない。
【0004】
乳母車にとって、移動中においても安定した座席形態を維持するためには車体フレームの剛性を高めることが重要である。
【特許文献1】特開昭61−139555号公報
【特許文献2】特開2002−187554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、車体剛性を高めた幌付乳母車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った幌付乳母車は、車体フレームを構成して幅方向に延びる逆U字形状部材を、幌骨として用いて幌布を張っていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、逆U字形状部材が、車体剛性を高めるための車体フレームとしての機能と、幌骨としての機能とを併せ持つので、少ない部品点数で剛性を高めた幌付乳母車を提供できる。
【0008】
一つの実施形態では、乳母車の車体フレームの一部を構成する逆U字形状部材は、その下方端部が残りの車体フレームに取り外し可能に取り付けられている。この実施形態によれば、幌を取り付けることにより車体剛性を高めることができる。
【0009】
逆U字形状部材は、車体剛性を高めるための車体フレームとしての機能を発揮するために、好ましくは剛性のあるパイプによって作られている。
【0010】
一つの実施形態では、乳母車の車体フレームは、一対の手摺部材と、その上方端部が手摺部材に連結され、その下方端部に前輪を有する一対の前脚と、その上方端部が手摺部材に連結され、その下方端部に後輪を有する一対の後脚と、座部を支持するものであり、その前方端部が一対の前脚に連結された座部支持部材と、一対の手摺部材の後方端部を支持するものであり、その下方端部が座部支持部材に連結された一対の手摺支持部材と、その下方端部が一対の手摺支持部材の上方端部に連結された上記の逆U字形状部材とを備える。逆U字形状部材には、幌布が張られる。
【0011】
好ましくは、逆U字形状部材には、幌布を支持するための幌布支持部材が回動可能に取り付けられている。このようにすれば、幌布の展開角度を適宜調節できるので便利である。一つの実施形態では、幌布支持部材は、逆U字形状部材の前方に位置する第1幌布支持部材と、逆U字形状部材の後方に位置する第2幌布支持部材とを含む。
【0012】
乳母車は、例えば、背面押しの状態と対面押しの状態とに切換え可能な押棒を備える。この種の押棒を備えた乳母車の場合、押棒を対面押しの状態に切換えたときに、座席を形作る車体フレームの剛性が低下することがある。このような乳母車において、幌骨として機能する逆U字形状部材は、押棒を対面押しの状態に切換えたときに、車体剛性を高く維持するのに寄与する。
【0013】
乳母車は、例えば、幅方向寸法が縮小するように折り畳まれるものである。この種の乳母車においては、部材間を回動可能に連結する箇所が多くなるので、車体剛性が低下することがある。このような乳母車において、幌骨として機能する逆U字形状部材は、車体剛性を高く維持するのに寄与する。逆U字形状部材を残りの車体フレームに対して取り外し可能に取り付けたものであれば、乳母車の折り畳み時に逆U字形状部材を取り外しておけばよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、この発明の一実施形態に係る幌付乳母車を図解的に示している。図示する幌付乳母車1は、幅方向の寸法が縮小して折り畳まれるものであり、折り畳み状態においては、前輪と後輪とが近づき自立可能なものである。また、乳母車1を移動操作するための押棒21が、背面押しの状態と対面押しの状態とに切換え可能となっている。
【0015】
幌付乳母車1は、基本的な座席の形態を形作る車体フレーム10と、座席の上部を覆う幌30とを備える。車体フレーム10は、座席の両側面において前後方向に延びる一対の手摺部材11と、その上方端部が手摺部材11に回動可能に連結され、その下端部に前輪を有する一対の前脚12と、その上方端部が手摺部材11に回動可能に連結され、その下端部に後輪を有する一対の後脚13と、座席の座部を支持するように前後方向に延び、その前方端部が一対の前脚12に回動可能に連結された座部支持部材14と、上下方向に延び、その下方端部が転動ブラケット17を介して一対の座部支持部材14に回動可能に連結され、その上方端部が一対の手摺部材11の後方端部に回動可能に連結された一対の手摺支持部材15と、その下方端部が一対の手摺支持部材15の上方端に固定されて幅方向に延びる逆U字形状部材16とを備える。
【0016】
図1においては、車体フレームを構成する部材を実線で示し、車体フレームを構成しない部材を一点鎖線で示している。座部支持部材14の後方には、背もたれ支持部材20が後傾可能に設けられている。この背もたれ支持部材20は、好ましくは、ベッド状の形態になるまで後傾可能である。背面押しの状態と図1に示す対面押しの状態とに切換え可能な押棒21の下方端部は、転動ブラケット17に連結されている。
【0017】
転動ブラケット17は、その下方端部が連結軸18を介して後脚13に転動可能に取り付けられている。図1に示す乳母車1の開状態においては、転動ブラケット17は、連結軸18よりも上に位置する後脚部分に沿うように位置する。前輪と後輪とが前後方向に近づき、幅方向寸法が縮小する乳母車1の折り畳み状態においては、転動ブラケット17は、連結軸18よりも下に位置する後脚部分に沿うように位置する。
【0018】
逆U字形状部材16の下方端部は、一対の手摺支持部材15の上方端部に取り外し可能に取り付けられている。このことを図2および図3を参照して説明する。
【0019】
図2は、逆U字形状部材16の下方端部が手摺支持部材15の上方端部に取り付けられている状態を示しており、ロックピン41の頭が露出している。ロックピン41は、逆U字形状部材16の上方への抜け止めを果たすものである。図3は、逆U字形状部材16を手摺支持部材15に取り付ける前の状態を示している。
【0020】
図3に示すように、手摺支持部材15の上方部には、逆U字形状部材16の下方端部を受け入れるための受入開口部15aが形成されている。受入開口部15aを形成している壁には、ロック穴43が設けられている。
【0021】
図示した実施形態では、逆U字形状部材16はパイプの形態を有しており、その内部に板ばね40を収容している。板ばね40は、その基端がビス44を介して逆U字形状部材16の内壁面に固定されており、その先端にロックピン41を有している。ロックピン41は、逆U字形状部材16のガイド穴42を通過して外部に露出するように設けられている。
【0022】
図3に示す状態から、逆U字形状部材16の下方端部を手摺支持部材15の受入開口部15a内に挿入し、ロックピン41とロック穴43とを係合させる。ロックピン41とロック穴43とが係合している状態では、逆U字形状部材16の上方への抜けが禁止される。逆U字形状部材16を取り外す場合には、ロックピン41の頭部を内側に押し込んでロック穴43との係合を解除し、その状態で逆U字形状部材16を上方に移動させればよい。
【0023】
幅方向寸法を縮小して乳母車1を折り畳むことができるようにするために、一対の前脚12間、一対の後脚13間および一対の座部支持部材14間は、屈曲可能な幅方向連結部材によって連結されている。このような折り畳み式乳母車1の車体剛性を高く維持するために、逆U字形状部材16は、好ましくは、剛性のある屈曲不可能なパイプによって形成される。パイプの形状としては、図4の(a)に示すような角パイプでもよいし、図4の(b)に示すような丸パイプでもよい。また、図4(c)に示すような剛性のある角棒や、図4(d)に示すような剛性のある丸棒によって逆U字形状部材を形成してもよい。乳母車1を折り畳む際には、逆U字形状部材16を残りの車体フレームから取り外しておく。
【0024】
図示した実施形態における重要な特徴は、車体剛性を高めるための車体フレームとして機能する逆U字形状部材16を、幌30の幌骨として利用することにある。具体的には、ドーム形状の幌30を形作るために、逆U字形状部材16上に幌布33を張る。
【0025】
好ましくは、幌布33の展開状態を適宜調節できるようにするために、幌布33を支持する逆U字形状の幌布支持部材の下方端部を逆U字形状部材16に回動可能に取り付ける。図示した実施形態では、幌布支持部材は、逆U字形状部材16の前方に位置する第1幌布支持部材31と、逆U字形状部材16の後方に位置する第2幌布支持部材32とを備える。好ましくは、第1幌布支持部材31および第2幌布支持部材32は、任意の角度位置で固定保持できるように設けられている。
【0026】
上記の実施形態によれば、逆U字形状部材16が、車体剛性を高めるための車体フレームとしての機能と、幌骨としての機能とを併せ持つ。従来の乳母車に取り付けられた幌の構造を見てみると、幌骨として逆U字形状部材を用いたものもあるが、この逆U字形状部材は幌布を支持するための機能を持つだけであり、車体フレームの剛性を高めるのに寄与するものではなかった。
【0027】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変更を加えることが可能である。
【0028】
例えば、図示した実施形態では、逆U字形状部材16を取り外し可能に設けていたが、取り外し不能にしてもよい。また、図示した実施形態では、押棒が背面押しの状態と対面押しの状態とに切換え可能なものであったが、他の実施形態として固定式の押棒を備えたものであってもよい。
【0029】
さらに、実施形態として幅方向寸法が縮小するように折畳まれる折畳式乳母車を説明したが、幅方向寸法が縮小しない折畳式乳母車や、折り畳み不可能な乳母車にも本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、車体剛性を高めた幌付乳母車として有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態を示す図解的側面図である。
【図2】逆U字形状部材の下方端部を手摺支持部材の上方端部に取り付けている状態を示す図である。
【図3】逆U字形状部材の下方端部を手摺支持部材の上方端部に取り付ける前の状態を示す図である。
【図4】逆U字形状部材を形成する部材の断面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 幌付乳母車、10車体フレーム、11 手摺部材、12 前脚、13 後脚、14 座部支持部材、15 手摺支持部材、15a 受入開口部、16 逆U字形状部材、17 転動ブラケット、18 連結軸、20 背もたれ支持部材、21 押棒、30幌、31 第1幌布支持部材、32 第2幌布支持部材、33 幌布、40 板ばね、41 ロックピン、42 ガイド穴、43 ロック穴、44 ビス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幌を備えた乳母車において、
乳母車の車体フレームを構成して幅方向に延びる逆U字形状部材を、幌骨として用いて幌布を張っていることを特徴とする、幌付乳母車。
【請求項2】
乳母車の車体フレームの一部を構成する前記逆U字形状部材は、その下方端部が残りの車体フレームに取り外し可能に取り付けられている、請求項1に記載の幌付乳母車。
【請求項3】
前記逆U字形状部材は、剛性のあるパイプによって作られている、請求項1または2に記載の幌付乳母車。
【請求項4】
乳母車の車体フレームは、
一対の手摺部材と、
その上方端部が前記手摺部材に連結され、その下方端部に前輪を有する一対の前脚と、
その上方端部が前記手摺部材に連結され、その下方端部に後輪を有する一対の後脚と、
座部を支持するものであり、その前方端部が前記一対の前脚に連結された座部支持部材と、
前記一対の手摺部材の後方端部を支持するものであり、その下方端部が前記座部支持部材に連結された一対の手摺支持部材と、
その下方端部が前記一対の手摺支持部材の上方端部に連結された前記逆U字形状部材とを備える、請求項1〜3のいずれかに記載の幌付乳母車。
【請求項5】
前記逆U字形状部材には、前記幌布を支持するための幌布支持部材が回動可能に取り付けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の幌付乳母車。
【請求項6】
前記幌布支持部材は、前記逆U字形状部材の前方に位置する第1幌布支持部材と、前記逆U字形状部材の後方に位置する第2幌布支持部材とを含む、請求項5に記載の幌付乳母車。
【請求項7】
当該乳母車は、背面押しの状態と対面押しの状態とに切換え可能な押棒を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の幌付乳母車。
【請求項8】
当該乳母車は、幅方向寸法が縮小するように折り畳まれるものである、請求項1〜7のいずれかに記載の幌付乳母車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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