説明

平ベルト

【課題】 騒音抑制効果に優れた平ベルトの提供を課題としている。
【解決手段】 研磨ロールにより研磨された平坦伝動面が外周面側もしくは内周面側の少なくとも一方に形成された無端状の平ベルトであって、前記平坦伝動面の周方向のうねりが40μm以下であることを特徴とする平ベルトを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに関し、より詳しくは、平ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンやモーターなどの回転動力を伝達する手段として、駆動側と従動側との回転軸にプーリーなどを固定し、これらのプーリーに伝動ベルトを掛け渡す方法などが広く用いられている。
この伝動ベルトとしては、V溝を有するプーリーに用いられるべく横断断面が逆台形の形状に形成されたVベルトと呼ばれるものや、複数の溝を有するプーリーに用いられるべく周方向に延在するリブを幅方向に複数並べて形成されたVリブドベルトなどと呼ばれるものが知られている。
また、表面に溝などの形成されていない平プーリーに用いられるべく平形のベルト表面に平坦な伝動面(平坦伝動面)が形成された平ベルトと呼ばれるものなどが知られている。また、この平ベルトは、内周面と外周面との両方で摩擦伝動が行われたりしており、例えば、平ベルトをプーリーに掛け渡して、内周面側の平坦伝動面で摩擦伝動を行いつつ、外周面側の平坦伝動面にさらに別の平プーリーを当接させて摩擦伝動させることが行われたりしている。
【0003】
このような平ベルトは、通常、プーリーなどとの摩擦伝動が行われる伝動面にゴム組成物が配されている。また、例えば、繊維や布など摩擦伝動の張力を担う心体が中心部に配されたりもしている。この平ベルトは、その製造時には、未加硫状体のゴムシート、接着処理された心体などを円筒形の金型外周面に所定の順序および厚さとなるよう積層し、さらにこの積層された形成材料の外側にクロロプレンゴムやエチレン−αオレフィンエラストマーなどでできた柔軟な円筒体を被せて、金型と円筒体との間を減圧しつつ、円筒体の外部から加圧して加熱するいわゆる缶加硫と呼ばれる成形方法により製造される。この缶加硫では、通常、ゴム組成物の加硫ならびに心体などとの一体化を行い筒状の予備成形体を作製される。その後、さらにこの筒状の予備成形体を所定幅に輪切りにすることで無端状の平形ベルト形状とされたりしている。このとき製品(平ベルト)に偏肉など厚さの不均一が生じないように、通常、予備成形体を製品の厚さよりも厚く製造した後に、所定の厚さまで研磨ロールを用いた研磨が実施されている(下記特許文献1)。
【0004】
ところで、近年、駆動装置などの各種装置には、その運転時の静音性が求められており、振動や騒音の低減が要望されている。したがって、このような装置に用いられる平ベルトなどにもその運転時の騒音抑制が求められている。
このことに対して、特許文献2には、リブドベルトのリブ形成面に接着剤を用いて短繊維を接着させてその騒音を抑制することが記載されている。しかし、従来、平ベルトの騒音については知られておらず、したがって、その抑制方法についても何等検討がなされていない。すなわち、従来の平ベルトにおいては、騒音の抑制が困難であるという問題を有している。
【0005】
【特許文献1】特開2004−98353号公報
【特許文献2】特開2004−230679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み騒音抑制効果に優れた平ベルトの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、平プーリーと平ベルトとの摩擦伝動においても騒音が発生していること、ならびに、その騒音が平ベルトの表面性状に影響されることを見出した。また、平ベルトの平坦伝動面には、平坦伝動面を研磨ロールにより研磨する時に、高低差が100μm程度のうねりが平坦伝動面の周方向に複数発生していること、および、この周方向のうねりを所定以下とすることでこの平ベルトの騒音を抑制し得ることを見出し本発明の完成に到ったのである。
すなわち本発明は、研磨ロールにより研磨された平坦伝動面が外周面側もしくは内周面側の少なくとも一方に形成された無端状の平ベルトであって、前記平坦伝動面の周方向のうねりが40μm以下であることを特徴とする平ベルトを提供する。
なお、本明細書中における平ベルトの平坦伝動面の周方向のうねりとは、平ベルトの周方向に、通常、数mm〜十数mmの周期で観測されるものを意図し、その大きさについては、図5に例示するように、二次元形状測定器(MITUTOYO製「コントレーサーCR−105」など)を用いて周方向変位を5倍程度の倍率で、厚さ方向変位を200倍程度の倍率で、平ベルト表面を周方向に30mm区間測定したうねりチャートAから測定された値を意図している。
さらに、うねりが40μm以下とは、一つの平ベルトあたりに無作為に選んだ3個所について上記の30mm区間の測定を行い、各測定個所で得られたうねりチャートから観測されるうねりについて、最大値を測定し、全ての測定個所における最大うねりが40μm以下であることを意図している。また、この最大うねりとは、チャートAに見られる各うねりについて、一つのうねりの最下点から次のうねりの最下点までの直線L1、L2、L3を引いて、それぞれの直線に対して垂直な垂線V1、V2、V3を該垂線V1、V2、V3とうねりチャートAとが交わる点が、直線L1、L2、L3からそれぞれ最も離れた位置において交わるように引いて、それぞれの直線L1、L2、L3から、うねりチャートAとの交点までの距離h1、h2、h3を計測しその中の最大値を意図している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平坦伝動面の周方向のうねりが40μm以下であるため、この平坦伝動面での摩擦伝動において騒音が発生することを抑制することができる。
すなわち、平ベルトを騒音抑制効果に優れたものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図1に示すような、中央に心線4が配された外周面2と内周面3の両面を伝動面として用いる平ベルト1を製造する場合を例に説明する。
まず、このような平ベルトを製造するための設備について説明する。
このような平ベルトを製造するための設備としては、例えば、内側から外側に向け、ゴム/心線/ゴムの順に積層され、例えば、1〜2m長さの円筒状の予備成形体を製造するための予備成形体製造設備と、この予備成形体を研磨して厚さを整える研磨設備と、研磨後の予備成形体を例えば数cmなど所定幅に切り出して平ベルトの形状を完成させる切断設備とを用いる。
【0010】
前記予備成形体製造設備には、製造する平ベルトの長さと略同周長(例えば約1m)となる外径と1〜2m程度の長さを有する円筒金型と、この円筒金型と略同長で前記円筒形状金型の外径よりも大きな内径を有しクロロプレンゴム、エチレン−αオレフィンエラストマーなどを用いて形成されたゴム円筒体と、このゴム円筒体に前記円筒形状金型を内包させた状態でゴム円筒体と円筒形状金型とを収容して、ゴム円筒体と円筒形状金型との間の空気を吸引して減圧しつつ、ゴム円筒体の外部から高温水蒸気により加圧し得るように形成された加硫缶とが備えられている。
【0011】
また図2に示すように、前記研磨設備には、回転動力を備えた駆動ロール5と、回転動力が備えられていない従動ロール6とが平行に配され、この駆動ロール5と従動ロール6とは、予備成形体7を駆動ロール5と従動ロール6とに掛け渡して、予備成形体7の張力を調節し得るように、互いの距離を調整し得る位置調整機構(図示せず)が備えられている。さらにこの駆動ロール5と平行に且つ駆動ロール5との距離を数ミリ〜数センチの間で調節し得る研磨ロール8が備えられている。
また、これら駆動ロール5、従動ロール6、研磨ロール8には、予備成形体7の全幅を一度に研磨し得るように、通常、予備成形体7の幅よりも長さの長いものが用いられている。
【0012】
また、前記切断設備には、予備成形体を周動させつつその外周面側から内周面側に貫通するまで切り込みをいれて、予備成形体から平ベルトを所定幅に輪切りの状態で切り出しうるように、駆動ロールと切り出し刃物が備えられている。
【0013】
次に、このような金型や加硫缶を用いて平ベルトを製造する場合に用いる平ベルトの素材について説明する。
平ベルトの外周面と内周面との表面に配されるゴム材料としては、通常、クロロプレンゴム、エチレン−αオレフィンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンなどの未加硫ゴム組成物をカレンダーロールなどにより、例えば、1mm以下の厚さ、1m前後の幅にシーティングされた未加硫ゴムシートが用いられる。また、平ベルトの中心部に配される心線としては、例えば、数百〜数千デニール相当のポリエチレンテエレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、あるいは、アラミド繊維などにRFL処理(接着処理)を施したものなどが用いられる。
【0014】
次にこのような設備と素材とを用いて平ベルトを製造する製造方法について説明する。
まず、円筒金型の外周面に前記未加硫ゴムシートを製造する平ベルトの約半分の厚さとなるまで巻き付ける。次いで、この金型に巻きつけられた未加硫ゴムシートの上に前記心線を所定の間隔を設けつつスパイラル状に巻きつける。さらに、この心線の上に金型表面からの厚みが製造する平ベルトの厚さよりもわずかに厚くなるように未加硫ゴムシートを巻きつけて円筒金型上に未加硫ゴム/心線/未加硫ゴムの積層状態を形成させる。
その後、この積層状体を維持させたまま、ゴム円筒体に挿入して、このゴム円筒体と円筒金型とを加硫缶に導入する。この加硫缶では、円筒金型とゴム円筒体との間の空気を吸引して減圧しつつ、ゴム円筒体の外部から高圧水蒸気により加圧して加熱することで、ゴム/心線/ゴムの積層物を加硫一体化させ、円筒形状のベルト予備成形体を形成させる。
【0015】
さらに、この予備成形体を冷却して円筒金型から取り外した後、この予備成形体の研磨を行う。このとき、まず、予備成形体を駆動ロールと従動ロールとに掛け渡し、駆動ロールと従動ロールとの距離を調節して、予備成形体に適宜テンションを持たせた状態とする。次いで、駆動ロールを回転させて予備成形体を周方向に駆動させる。さらに、研磨ロールを予備成形体の外周面(平坦伝動面)と当接するように駆動ロールに近接させる。
【0016】
このとき予備成形体の周速を制御することで、予備成形体の表面の周方向のうねりを40μm以下とすることができる。なお予備成形体の表面は、ベルトの形態や、素材にもよるが、通常、予備成形体の周速を低いものとすることでうねりの値を低減させることができる。しかし、予備成形体の周速をあまりに減速させると研磨する時間が長大となり生産性を低下させるおそれがある。このような点において、その周速は、4〜10m/s程度とされることが好ましい。
【0017】
この研磨を行った後、予備成形体を切断設備により所定幅に切断する。また、この切断後のベルトを裏返して再度表面研磨を実施し平ベルトを完成させる。
【0018】
本実施形態においては、上記の装置、素材を用いて、内周面と外周面との両面が平坦伝動面とされた平ベルトを例に説明したが、本発明においては、平ベルトをこのような装置を用いて製造されるものに限定するものではなく。また、上記に説明したような素材を用いて製造されるものに限定するものでもない。
さらに、本実施形態においては、平ベルトの表面の研磨速度を制御することで伝動面の周方向のうねりを40μm以下とする方法を例に説明したが、本発明においては、伝動面の周方向のうねりを40μm以下とする方法をこのような方法に限定するものではない。
【実施例】
【0019】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(平ベルトの製造)
クロロプレンゴムとポリエステル心線とを用いて、幅15mm、厚さ6.6mm、長さ
1500mmの平ベルトを作成した。また、平ベルトの表面のうねりとしては、20μm、30μm、60μm、80μmのものを準備した。
(ベルト走行試験)
この平ベルトの走行試験を図2に示すごとく実施した。すなわち、平ベルトを直径120mmの駆動プーリー10と直径120mm従動プーリー11とに、掛け渡し従動プーリーに120kgfのセットウェイトを加えた状態で、駆動プーリーを3000rpmの回転速度で回転させた。
(騒音の測定)
ベルト走行時に、駆動プーリーに接触していた平ベルトが駆動プーリーから脱離する位置から側方約20mmの位置に、騒音計(RION社製、型名「NA−40」)のマイクロホンを設置し、前述のベルト走行試験を実施したときに観測される騒音を測定した。
平ベルトのうねりの大きさと、測定された騒音とをあらわすグラフ(各測定値の3次多項式近似グラフ)を図4に示す。
【0020】
図4より、平ベルトの表面のうねりを40μm以下とすることで、優れた騒音抑制効果を有するものとし得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態の平ベルトを示す幅方向断面図。
【図2】a)研磨設備を示す側面視概略図、b)研磨設備を示す正面視概略図。
【図3】ベルト走行試験方法を示す概略図。
【図4】騒音測定結果を示すグラフ。
【図5】うねり測定方法を示すうねりチャート図。
【符号の説明】
【0022】
1:平ベルト、2:外周面、3:内周面、4:心線、8:研磨ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨ロールにより研磨された平坦伝動面が外周面側もしくは内周面側の少なくとも一方に形成された無端状の平ベルトであって、
前記平坦伝動面の周方向のうねりが40μm以下であることを特徴とする平ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−300288(P2006−300288A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126608(P2005−126608)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)