説明

平ベルト

【課題】平ベルトの摩耗度合いを目視或いは触覚にて判断できること。
【解決手段】平ベルトのプーリーとの接触面に摩耗を検知する凹部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリー間に架けられて用いられる平ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
産業界で広く用いられている平ベルトは、動力伝動形態が摩擦伝動であるため、常に微小スベリ(弾性スベリ)をおこす形態で使用されている。そのため、動力を伝達する際には、常に摩耗という現象が発生している。
平ベルトが使用される結果、生じる一般的な故障で代表されるクラックやセパレーションの場合、割れ等を伴うため目視にて異常等を発見することが可能であり、異常を発見した場合にはベルトの交換等を行うことができる。
【0003】
しかし、平ベルトを使用し続け、該平ベルトの表面部分が均一に摩耗した場合には、摩耗の進行状況を判断することが非常に困難となり、該平ベルトの交換時期を見定めることができないという問題がある。
【0004】
例えば、平ベルトにおける摩耗の進行状況を調べるに際し、ノギス等の測定機器を用いて該平ベルトの厚みを測定する手段がよく用いられている。しかし、両面を用いて動力を伝達する場合等では、片面ごとの摩耗スピードが異り、単に厚みを測定しただけでは、どちらの面が摩耗しているのか判断できないという問題もある。
【0005】
そのため、摩耗度合いを目視或いは触覚にて判断できる平ベルトが要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記要望に鑑み、摩耗度合いを目視或いは触覚にて判断できる平ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、下記の発明によって上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、プーリーとの接触面に摩耗を検知する凹部が設けられてなることを特徴とする平ベルトを提供する。
【0009】
平ベルトの表面が摩耗することにより該平ベルトの厚みが減少する。平ベルトの厚みが減少することで、該平ベルトの表面に設けてある凹部の深さが浅くなり或いは凹部の幅が短くなる等により目視或いは触覚により摩耗具合を判断できる。
【0010】
また、本発明においては、前記凹部が底に向けて凹部幅が縮小するように斜面を有しているものが好ましい。
かかる構成によれば、深さではなく凹部の凹部幅を見て摩耗状態を判断することができる。
【0011】
更に、前記凹部は、溝であっても孔であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の平ベルトは、プーリーとの接触面に摩耗を検知する凹部を設けてあるため、凹部の状態を目視或いは触覚で確認することで摩耗状況を知ることができ、交換時期を容易に判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、従来より用いられている平ベルトの断面斜視図であり、この平ベルト1は、例えば、ブロア、コンプレッサ、工作機械等に動力を伝達するために使用される。
前記平ベルトは、例えば、心線10が埋設された接着ゴム層20を備えている。
該接着ゴム層20の表面及び裏面側には、伝動ゴム層30がそれぞれ積層されている。
図2は、本実施形態の平ベルト1の断面斜視図である。
図2に示すように本実施形態の平ベルトは、構成としては、図1に示したような従来の平ベルト1と同様であるが、前記伝動ゴム層30の表面に摩耗を検知する凹部40が設けられている。
尚、前記凹部40は、前記接着ゴム層20の表面或いは裏面側に積層されている伝動ゴム層30の一方或いは両方に設けることができる。
【0014】
前記伝動ゴム層30の表面に設けられる凹部40の形状としては、溝41、孔42が挙げられる。
前記溝41としては、例えば、底に向けて溝幅が同一である溝、底に向けて溝幅が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の溝等が挙げられる。
該溝41の深さとしては、適宜調整することができる。交換時期に合わせて深さを適宜調整することができる。
摩擦により伝動ゴム層30が摩耗して接着ゴム層20が現れたところが交換時期とされることより、該溝の深さは、最大で該伝動ゴム層30の厚みと同等である。
尚、摩耗により現れる接着ゴム層20は、動力伝動に使用する役割を有していないため、該接着ゴム層20が現れた時点が交換時期とされるが、それ以前に交換してもよい。
【0015】
該溝41を設ける位置としては、該平ベルトの長手方向に沿って設けてもよく、また平ベルトの幅方向に沿って設けてもよい。
長手方向に沿って設ける場合には、該平ベルト全長に設けてもよく、該平ベルトの長手方向に沿って部分的に設けてもよい。また、長手方向に向かって徐々に溝幅が狭くなり且つ溝の深さが浅くなるように設けてもよい。
同様に、幅方向に沿って設ける場合も全幅に設けることもできるし、幅方向に沿って部分的に設けることもできる。また、幅方向に向かって徐々に溝幅が狭くなるように設けてもよい。
更に、長手方向に設ける場合と幅方向に設ける場合とを組み合わせることもできる。
設ける溝の本数等も適宜調整することができ、例えば、それぞれ深さの違う溝を設けることもできる。深さの違う溝を設けることでどれだけ摩耗が進んだのかを確認することが容易となる。
【0016】
前記孔42としては、例えば、底に向けて等間隔の径の孔、底に向けて孔の径が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の孔(例えば、逆円錐状の孔等)が挙げられる。
該孔42の深さとしては、適宜調整することができる。交換時期に合わせて深さを適宜調整することができる。
摩擦により伝動ゴム層30が摩耗して接着ゴム層20が現れたところが交換時期とされることより、該孔42の深さは、最大で該伝動ゴム層30の厚みと同等である。
【0017】
前記孔42を設ける位置としては、該平ベルトの長手方向に沿って設けてもよく、平ベルトの幅方向に沿って設けてもよい。
長手方向に沿って設ける場合には、該平ベルトの長手方向の全長に亘り所定間隔で設けてもよく、該平ベルトの長手方向に沿って部分的に設けてもよい。
同様に幅方向に沿って設ける場合も幅方向に所定間隔で設けることもできる。
更に、長手方向に設ける場合と幅方向に設ける場合とを組み合わせることもできる。
設ける孔の数及び孔の孔径等も適宜調整することができるものであり、例えば、孔の孔径が同一で、それぞれ深さの違う孔を設けることもできる。深さの違う孔を設けることでどれだけ摩耗が進んだのかを確認することが容易となる。
【0018】
図3(a)〜(f)に示すのは、本実施形態の平ベルト1の一実施例である。
図3(a)は、平ベルト1の長手方向に沿って設けられた溝41(例えば、底に向けて溝幅が同一である溝、底に向けて幅が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の溝或いは長手方向に沿って溝幅が狭くなり且つ溝の深さが浅くなっていく溝等)の断面斜視図である。
伝動ゴム層30に前記溝を設けることで、摩耗の度合いを目視或いは触覚をもって知ることができる。例えば、前記溝が、底に向けて幅が縮小するように傾斜を有しているテーパー状であれば、触ることで傾斜面の摩耗度合いがわかり、交換時期を見定めることができる。
また、長手方向に沿って溝幅が狭くなり且つ溝の深さが浅くなっていく溝であれば、伝動ゴム層30がどれくらいまで摩耗しているか判断できる。
【0019】
図3(b)は、平ベルト1の幅方向に沿って設けられた溝41(例えば、底に向けて溝幅が同一である溝、底に向けて幅が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の溝或いは幅方向に沿って溝幅が狭くなり且つ溝の深さが浅くなっていく溝等)の断面斜視図である。
伝動ゴム層30に前記溝を設けることで、摩耗の度合いを目視或いは触覚をもって知ることができる。
【0020】
図3(c)は、平ベルト1の長手方向或いは幅方向に沿って設けられた溝41(例えば、底に向けて溝幅が同一である溝、底に向けて幅が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の溝或いは長手方向に沿って溝幅が狭くなり且つ溝の深さが浅くなっていく溝等)であり、溝の深さの相違する溝を複数設けた断面斜視図である。
伝動ゴム層30に前記溝を設けることで、該伝動ゴム層30の摩耗度合いを知ることができる。即ち、深さの違う溝を設けることで、摩耗状態が判断できる。
【0021】
図3(d)は、平ベルト1の長手方向及び幅方向に沿って設けられた溝41(例えば、底に向けて溝幅が同一である溝、底に向けて幅が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の溝或いは長手方向に沿って溝幅が狭くなり且つ溝の深さが浅くなっていく溝等)を組み合わせた断面斜視図である。
長手方向及び幅方向に沿って設けられた溝を組み合わせることで均一に摩耗が進行していない場合に、伝動ゴム層30のどの部分の摩耗がどれくらい進行しているかを判断することができる。
【0022】
図3(e)は、平ベルト1の長手方向或いは及び幅方向に沿って設けられた孔42(例えば、底に向けて等間隔の径の孔、底に向けて孔の径が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の孔)の断面斜視図である。
伝動ゴム層30に前記孔を設けることで、前記溝を設けた場合と同様の効果を奏するものとなる。
【0023】
図3(f)は、平ベルト1の長手方向或いは及び幅方向に沿って設けられた孔42(例えば、底に向けて等間隔の径の孔、底に向けて孔の径が縮小するように傾斜を有しているテーパー状の孔)であり、深さの相違する孔を複数設けた断面斜視図である。この場合も前記溝の場合と同様の効果を奏するものである。
【0024】
次に、本実施形態の平ベルト1の製造に用いる素材及び製造方法について説明する。
平ベルトの製造には、通常、クロロプレンゴム、エチレン−α−オレフィンエラストマー或いはクロロスルホン化ポリエチレン等の未加硫ゴム組成物をカレンダーロールなどにより、例えば、1mm以下の厚さ、1m前後の幅にシーティングされた未加硫ゴムシートが用いられる。また、平ベルトの中心部に配される心線としては、例えば、数百〜数千デニール相当のポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維或いはビニロン繊維等にRFL処理(接着処理)を施したものなどが用いられる。
【0025】
該平ベルト1の製造方法としては、まず、円筒金型の外周面に未加硫ゴムシートを製造する平ベルトの約半分の厚さとなるまで巻き付ける。次いで、この円筒金型に巻きつけられた未加硫ゴムシートの上に心線を所定の間隔を設けつつスパイラル状に巻きつける。この心線の上に、金型表面からの厚みが製造する平ベルトの厚さよりもわずかに厚くなるように、さらに未加硫ゴムシートを巻きつけて円筒金型上に未加硫ゴム/心線/未加硫ゴムの積層状態を形成させる。
その後、この積層状体を維持させたまま、ゴム円筒体に挿入して、このゴム円筒体と円筒金型とを加硫缶に導入する。この加硫缶では、円筒金型とゴム円筒体との間の空気を吸引して減圧しつつ、ゴム円筒体の外部から高圧水蒸気により加圧して加熱することで、ゴム/心線/ゴムの積層物を加硫一体化させ、円筒形状のベルト予備成形体を形成させる。
【0026】
さらに、この予備成形体を冷却して円筒金型から取り外した後、この予備成形体の研磨を行う。この研磨を行った後、予備成形体を切断設備により所定幅に切断すれば、平ベルトが得られる。
【0027】
該平ベルトの長手方向或いは幅方向に、溝或いは孔を設ける手段としては、伝動ゴム層30の表面を、例えば、砥石や刃具等を備えたバフ或いはドリル等により切削加工する手段が挙げられる。また、該伝動ゴム層30の表面をレーザー等により切削加工する手段も挙げられる。前記各手段を用いることで、平ベルトの任意の箇所に溝或いは孔を設けることができる。
【0028】
平ベルトの表面が摩耗することにより該平ベルトの厚みが減少する。平ベルトの厚みが減少することで、該平ベルトの表面に設けてある凹部の深さが浅くなり或いは凹部の幅が短くなる等により目視或いは触覚により摩耗具合を判断できる。
【0029】
平ベルトは、通常、プーリー間に掛け渡して使用されるものである。該平ベルトにおいては、掛け渡すプーリーの個数或いはプーリーの形状等により、該平ベルトの表面側と裏面側との強度等が異なるものが使用される場合があり、表面側と裏面側とを判別する必要がある。
その際、平ベルトのどちらか一面に凹部を設けることで、該凹部が設けられた面が、該平ベルトの表面側或いは裏面側であるかを容易に判別できる。更に、平ベルトの両面に異なった形状の凹部を設けることでも、該平ベルトの表面側或いは裏面側であるかを容易に判別できる。このように凹部を設けることで、平ベルト交換時に、表面側或いは裏面側であるかを目視或いは触覚により容易に判別でき、また、使用することで生じる各面の摩耗具合を目視或いは触覚により容易に判断できるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、従来より用いられている平ベルトの断面斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態の平ベルトの断面斜視図である。
【図3】図3(a)〜(f)は、本実施形態の平ベルトの一実施例である。
【符号の説明】
【0031】
1 平ベルト
10 心線
20 接着ゴム層
30 伝動ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリーとの接触面に摩耗を検知する凹部が設けられてなることを特徴とする平ベルト。
【請求項2】
前記凹部は、底に向けて凹部幅が縮小するように斜面を有してなることを特徴とする請求項1記載の平ベルト。
【請求項3】
前記凹部が、溝又は孔であることを特徴とする請求項1又は2に記載の平ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−316966(P2006−316966A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142760(P2005−142760)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)