説明

平板印刷機の被印刷体に放射エネルギーを供給する装置および方法

【課題】溶剤含有印刷インキの乾燥時間を短縮することができるような印刷インキが使用される平板印刷機の内部における装置および方法を提供する。
【解決手段】1つの放射エネルギー源を備え、その光が、印刷ユニットにある1つの印刷間隙の後に配置された位置で、印刷機を通る被印刷体の経路で被印刷体に当たる、平板印刷機の被印刷体に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する装置を提供する。この装置は、上記放射エネルギー源が、波長が水の吸収波長と共振せず、700.00nmから2500.00nmの間である光だけを実質的に放出することができ、水の吸収共振を回避しつつ、上記の周波数領域でエネルギー供給をすることにより、被印刷体の好ましくない乾燥や不要な加熱が少なくなり、印刷インキには、その固有の乾燥プロセスのためのエネルギーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの放射エネルギー源を備え、その光が、印刷ユニットにある少なくとも1つの印刷間隙の後に配置された位置で、印刷機を通る被印刷体の経路上にある被印刷体に当たる、平板印刷機の被印刷体に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する装置に関する。さらに、本発明は、平板印刷機の被印刷体に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキの種類や、基礎となる固有の乾燥プロセスに応じて、印刷機、特に、たとえばシート状またはウェブ状の被印刷体、特に紙、ボール紙、厚紙などを処理する石版印刷機、輪転印刷機、オフセット印刷機といった平板印刷機では、被印刷体の上にある印刷インキに放射エネルギーを供給することによって、被印刷体上でのインキの付着を開始させる、または補助する、さまざまな装置が公知である。
【0003】
いわゆる紫外線硬化型インキは、紫外線の光による光重合によって開始される重合により硬化する。それに対して、いっそう広く普及しているものとして、物理的な乾燥プロセスと化学的な乾燥プロセスをいずれも進行させることができる溶剤含有印刷インキもある。物理的な乾燥には、溶剤の蒸発や被印刷体中への拡散(浸透)が含まれるのに対し、化学的な乾燥ないし酸化乾燥とは、場合により空気中の酸素も関与する、インキの調合成分中に含まれる油、樹脂、結合剤などの重合に基づくものである。それぞれの乾燥プロセスは、一般に、相互に依存し合っている。溶剤の浸透により、結合剤系の内部で溶剤と樹脂の間に分離が起こり、それによって樹脂分子が互いに接近して、場合によっては重合しやすくなるからである。
【0004】
欧州特許出願公開明細書0355473A2により、レーザの形態の放射エネルギー源を含む、印刷製品を乾燥させる装置が公知である。放射エネルギーは、搬送装置によって印刷機を通って軌道上を進む被印刷体の表面に対して、個々の印刷ユニットの間の位置で、または最後の印刷ユニットの後の排紙装置の手前または内部で供給される。このとき放射源は、紫外線硬化型インキに対する紫外のレーザであってよく、または、溶剤含有印刷インキを加熱させる赤外のレーザ光源であってよい。放射エネルギー源は、不可避的または遮蔽不可能な損失熱によって印刷機の部品が熱せられるという不都合を防ぐために、印刷機の外部に配置されている。しかしこの場合の欠点は、追加のシステムコンポーネントを印刷機の利用者に別個に提供しなくてはならないことである。
【0005】
さらに、たとえば米国特許明細書6,026,748により、短波長の赤外線光(近赤外線)または中波長の赤外線光を放出する赤外線ランプを備える乾燥装置が、印刷機に設けられていてよいことが公知である。ランプ光源の放出スペクトルは広帯域であり、したがって、多数の波長が提供される結果となる。このような種類の赤外線の乾燥装置の欠点は、著しい割合のエネルギー吸収が紙で起こり、インキが間接的にしか加熱されないことである。迅速な乾燥は、相応に高いエネルギー注入によってしか可能でない。ところがそのようにすると、特に、被印刷体が不均等に乾燥して、波うちを生じる可能性があるという危険がある。
【0006】
電子写真式の印刷工学では、たとえばドイツ特許出願公開明細書4435077A1により、記録媒体上でのトナーの定着を、ダイオードレーザから放出される近赤外線の放射エネルギーによって行うことが公知である。狭帯域の光源を使用することによってトナー粒子の加熱が実現され、それによってトナー粒子を溶かし、着色層を形成させ、記録媒体の表面に定着させる。このスペクトル領域では、広く普及している多くの種類の紙が、幅広い吸収最小値を有しているので、エネルギーの大部分をトナー粒子に直接吸収させることが可能である。
【特許文献1】欧州特許出願公開明細書0355473A2
【特許文献2】米国特許明細書6,026,748
【特許文献3】ドイツ特許出願公開明細書4435077A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、紙の吸収スペクトル中の窓状の開口部(Fensters)の単なる知見は、溶剤含有印刷インキを用いる印刷工学にそのまま活用することができない。上に述べたように、それ以外の化学的、物理的な乾燥プロセスが根底にあるからである。本発明との関連では、溶剤含有印刷インキという用語は、特に、溶剤成分が水性または有機性の性質であってよく、酸化重合、イオン重合、またはラジカル重合することができる結合剤系を成分とするインキを意味している。溶剤含有印刷インキを乾燥させるためのエネルギー注入は、溶剤の蒸発の効果および/または被印刷体中への浸透の効果および/または重合の効果を補助または促進するのが目的であり、それと同時に、特に、たとえば成分の分解や溶剤の過熱につながる場合がある、溶剤含有印刷インキの強すぎる加熱といった好ましくない付随現象が防止される。エネルギー注入は、トナー定着の場合のように、粒子を溶解させるためだけに行うべきものではない。
【0008】
本発明の目的は、溶剤含有印刷インキの乾燥時間を短縮する、このような印刷インキが使用される平板印刷機の内部における装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備える、平板印刷機の被印刷体に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する装置によって解決され、および、請求項11に記載の特徴を備える、放射エネルギーを供給する方法によって解決される。本発明の有利な発展例は従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
平板印刷機の被印刷体に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する本発明の装置は、少なくとも1つの放射エネルギー源を備えており、その光が、印刷ユニット中にある少なくとも1つの印刷間隙の後に配置された位置で、印刷機を通る被印刷体の経路上にある被印刷体に当たり、特に印刷したばかりの被印刷体に当たり、放射エネルギー源が、波長が水(H2O)の吸収波長と共振しない光だけを実質的に放出し、好ましくはこのような光だけを放出することを特徴としている。水の吸収波長と共振しないという表現は、本発明との関連では、水による光エネルギーの吸収率が摂氏20°で10.0%よりも高くなく、有利な実施形態では1.0%よりも高くなく、特に0.1%以下であることを意味している。本発明の思想との関連では、放射エネルギー源は非常に低い強度の光だけを放出し、水(H2O)の吸収波長と共振する光をまったく放出しないのが好ましい。
【0011】
有利な実施形態では、放射エネルギー源は狭帯域である。このときの放射エネルギー源は、たとえば1つの波長を中心として最大で±50nmの幅で放出を行い、これは、1つまたは複数の個々の分光学的に狭い放出線であってもよい。さらに、有利な実施形態では、狭帯域の放射エネルギー源の放出最大値、ないし放射エネルギーの波長は700.00nmから3000.00nmの間であり、好ましくは700.00nmから2500.00nmの間、特に800.00nmから1300.00nmの間であり、紙の吸収スペクトルのいわゆる窓の部分領域の範囲内にある。870.00±50.00nmおよび/または1050.00nm±50.00nmおよび/または1250.00nm±50.00nmおよび/または1600.00nm±50.00nmの放出が格別に好ましい。
【0012】
本発明の根底には、水の吸収帯が紙の吸収スペクトルに寄与しているという知見がある。水なしの(湿し水を使わない)平版印刷の典型的な水分含有量だけでも、しばしば許容できないほど大きい、好ましくないエネルギー吸収が被印刷体で起こる。この吸収は、湿し水を使う平版印刷では相応にいっそう大きく生じる。当然の帰結として、水の吸収線または吸収帯(吸収波長)と共振しない波長の照射によって、被印刷体への多すぎるエネルギー注入を回避することができる。296Kの温度、1mの吸収区間、15000ppmの水の場合、Hiltranデータバンクによれば、次のような水による吸収、正確には水蒸気による吸収が起こる。すなわち、808nmでは0.5%以下、870±10nmでは0.01%以下、940±10nmでは10%以下、980±10nmでは0.5%以下、1030±30nmでは0.01%以下、1064nmでは0.01nm以下、1100nmでは0.5%以下、1250±10nmでは0.01%以下である。特に紙である被印刷体の1m2の面積と、上側1mの空気の区間に着目すると、絶対湿度が1.5%のとき空気は約12gの量の水を含んでいる。本発明の装置の実施形態では、光源が被印刷体から1m以上離れておらず、絶対湿度が1.5%を明らかに上回っていなければ、上に掲げた水および/または水蒸気による吸収率を上回ることはない。光がインキ層を通過して被印刷体に入った場合や、印刷プロセスによって枚葉紙に転移された湿し水によって、被印刷体の含有水分による追加の吸収が生じる可能性はある。
【0013】
印刷インキ、特に顔料、着色剤または着色料、結合剤(ワニス)、溶剤、油または樹脂、充填剤、助剤、添加剤または添加物などに含まれる個々の成分の官能基に応じて、印刷インキはさまざまな波長を吸収する可能性がある。本発明の装置により、平版印刷機の被印刷体の上にある印刷インキは、たとえば、1つの線スペクトルを放出する光源の少数の波長を照射することで水の吸収波長を回避しながら、近赤外線の光の供給を受ける。
【0014】
発明的な方策として、印刷インキは赤外吸収体物質を有していてよい。印刷インキへの光の注入および/または印刷インキでの放射エネルギーの吸収が、赤外吸収体物質によって生成され、可能にされ、補助され、改善され、もしくは容易にされる。本発明の本明細書との関連では、文章を簡素化するために補助という用語だけを使い、この用語によって、赤外吸収体物質の作用のあらゆる段階を意味することとする。熱の発生を引き起こすことができるエネルギー注入は、印刷インキの迅速な乾燥につながる。一方では、被印刷体上の印刷インキ(インキ層)に高い温度を短時間で生じさることができ、また他方では、場合により印刷インキの組成に応じて化学反応を励起し、もしくは開始させることができる。赤外吸収体、IR吸収体、IR吸収体物質などとも呼ばれる赤外吸収体物質は、一方では、近赤外線で吸収をする官能基を有している印刷インキの成分であってよく、また他方では、印刷の前に印刷インキに添加または混入される添加剤または添加物であってもよい。換言すれば、印刷インキは赤外吸収体物質が補充されていてよく、あるいは赤外吸収体物質に変性される成分を含んでいてよい。このとき赤外吸収体物質は、印刷インキの色印象に影響や変化をわずかしか与えないために、もしくはまったく与えないために、波長の可視領域ではわずかな吸収性しかないか、もしくはまったく吸収性がないという特性を有しているのが好ましい。
【0015】
特に赤外吸収体物質によって補助されながら、印刷インキに比較的高いエネルギー注入を直接行うことが可能になるという利点があり、その際に、被印刷体への好ましくないエネルギー注入が起こることはない。このことは、一方では、光が被印刷体によって直接吸収されることがないという理由によって説明され、また他方では、インキ層によって吸収されたエネルギーが、何分の1秒後かにインキと被印刷体に分配されるという理由で説明される。このとき、熱容量と分量割合は、印刷された枚葉紙全体が均一かつ穏やかに温度上昇する前に、インキ層の短時間での加熱が可能であるように配分されている。それにより、必要な全体のエネルギー供給量が少なくなる。選択的なエネルギー供給は、特に、印刷インキの成分の吸収線と共振または準共振する波長、あるいは、印刷インキ中の赤外吸収体物質の吸収線または吸収最大値と共振または準共振する波長を照射することによって、補助することができる。印刷インキでの放射エネルギーの吸収率は30%以上であり、好ましくは50%であり、特に75%であり、90%以上の場合さえある。
【0016】
さらに、水へのエネルギー吸収を防止することは、被印刷体の乾燥度を低下させる。このことが好ましい理由は、特に、被印刷体の乾燥がその判型の変化につながるからである。被印刷体は、いわゆる膨潤プロセスに基づき、乾燥状態ないし水分含有量に応じて違った判型を有している。個々の印刷ユニットの間での膨潤過程は、個々の印刷ユニットで、異なる判型の版が必要になることにつながる。多大なコストをかけなければ予め判定して修正することができない誤差が生じることになる、放射によって引き起こされた乾燥の影響に基づく印刷ユニット間の水分含有量の変化は、本発明の装置による印刷インキ乾燥によって回避される。
【0017】
換言すれば、本発明の装置は、乾燥に強すぎる影響を与えることなく、被印刷体の上の溶剤含有印刷インキを乾燥させることを可能にする。
【0018】
同時に高いスペクトル出力密度で、できるだけ狭帯域の放出を実現するために、放射エネルギー源はレーザであるのが好ましい。これに代えて、狭帯域の放射エネルギー源が組合せで得られるように適切なフィルタ機構を備えている、たとえばIRカーボン放射器(IR-Carbonstrahler)といった広帯域の光源も利用することができる。フィルタは、特に、干渉フィルタであってよい。平版印刷機の内部での空間的な一体化のために好ましいのは、レーザは半導体レーザ(ダイオードレーザ)または固体レーザ(チタン・サファイア、エルビウム・ガラス、NdYAG、Ndガラスなど)である。固体レーザは、ダイオードレーザによって光ポンピングされるのが好ましい。固体レーザは、ファイバーレーザまたは光導波路レーザであってもよく、作業場において1070nmから1100nmで、300から700Wの光出力を提供することができるイッテルビウムファイバーレーザが好ましい。このような種類のレーザは、限られた範囲内で調節も可能であるのが好ましい。換言すれば、レーザの出力波長が可変である。それにより、たとえば印刷インキ中の成分、特に印刷インキ中の赤外吸収体物質の吸収波長と共振または準共振するように、所望の波長に合わせた調節を実現することができる。
【0019】
ダイオードレーザまたは半導体レーザは、別途のビームフォーミング光学系がなくても、被印刷体への放射エネルギー供給の目的のために利用することができるので、本発明の装置との関連では格別に好ましい。半導体レーザの共振器から出た光は著しく発散性なので、射出ミラーからの距離が長くなるにつれ広がっていく光束が生成される。
【0020】
有利な発展例では、放射エネルギーを供給する装置は、一次元または二次元のフィールド(局所的に湾曲、全体的に湾曲、または平坦)、または三次元のフィールドに配置され、光が複数の位置で被印刷体に当たる複数の放射エネルギー源を有している。被印刷体の個々の領域について個々の複数の放射エネルギー源を使用することで、最大限必要な放射エネルギー源の出力が低く抑えられる。出力が低い光源は、より低コストなのが普通であり、より長い耐用年数を有している。しかも、不必要に高い損失熱の発生が防止される。放射エネルギーの供給によって注入される単位面積当たりエネルギーは100から10,000mJ/cm2であり、好ましくは100から1000mJ/cm2、特に200から500mJ/cm2である。被印刷体への照射は、0.5msから1sの長さの時間だけ行われ、好ましくは1msから50ms、特に5msから25msの長さの時間だけ行われる。
【0021】
被印刷体に1つの位置で当たる光が、その強度と露光時間に関して、各々の放射エネルギー源について他の放射エネルギー源とは関わりなく制御可能であると、格別に好ましい。この目的のために、平版印刷機の機械制御部から独立した、またはこれに一体化された制御ユニットが設けられていてよい。放射エネルギー源パラメータの制御により、被印刷体の異なる位置でのエネルギー供給を調節することが可能である。この場合、エネルギー供給は、被印刷体上の該当位置における被印刷体の被覆状態に合わせて調節することができる。さらに、複数の放射エネルギー源を備える本発明の装置を、被印刷体の1つの位置で少なくとも2つの放射エネルギー源の光が当たるようにセットアップするのも好ましい。これは、一方では、部分的に重ね合わされた光線束であってよく、他方では、全面的に重ね合わされた光線束であってよい。このようにすれば個々の放射エネルギー源の必要な最大出力が低くなり、そのうえ、1つの放射エネルギー源が故障したときに冗長性(Redundanz)がある。
【0022】
少なくとも1つの印刷ユニットを備える本発明の平版印刷機は、放射エネルギーを供給する本発明の装置を有することを特徴としている。本発明の平版印刷機は、直接式または間接式のオフセット印刷機、フレキソ印刷機などであってよい。一方では、平版印刷機を通る経路で光が被印刷体に当たる位置は、複数の印刷ユニットの最後の印刷ユニットの最後の印刷間隙の後、つまり、すべての印刷間隙の後に配置されていてよい。他方では、この位置は第1の印刷間隙の後、かつ第2の印刷間隙の前に配置されていてもよく、つまり、少なくとも2つの印刷ユニットの間であってもよい。
【0023】
平版印刷機で被印刷体に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する方法、厳密に言えば、被印刷体の上の印刷インキに供給する方法も、本発明の思想と関連している。本発明の方法では、少なくとも1つの放射エネルギー源から光が被印刷体に照明され、この光は、印刷ユニットにある少なくとも1つの印刷間隙の後に配置された位置で、印刷機を通る被印刷体の経路上にある被印刷体に当たる。印刷インキに放射エネルギーが吸収されるのを補助するために、または可能にするために、印刷インキには少なくとも1つの赤外吸収体物質が添加される。換言すれば、印刷インキでの放射エネルギーの吸収が、印刷インキに添加された赤外吸収体物質によって補助される。赤外吸収体物質は、特にレーザである光源の波長にふさわしい特定の波長での吸収に合わせて合成されていてよい。特定の波長で吸収をする本発明の赤外吸収体物質のために、この特定の波長で放出をする特別な光源、特にレーザを開発することができる。
【0024】
放射エネルギーを供給する本発明の方法は、好ましいやり方としては、本明細書に記載されている放射エネルギーを供給する装置で実施することができる。特に、発明的な方策として、放射エネルギー源の放出と赤外吸収体物質の吸収が互いに適合するように規定され、または調整され、または設定される。換言すれば、放射エネルギー源は、赤外吸収体物質の吸収に対応する波長を放出するのが望ましい。つまり、放射源から放出される光は、赤外吸収体物質の吸収最大値と準共振し、実質的に共振し、特に共振するのが格別に好ましく、その結果、赤外吸収体物質の吸収最大値と、放射源の放出最大値とをできるだけうまく一致させることができる。使用する赤外吸収体物質の吸収スペクトルは、放射源の放出の領域で、赤外吸収体物質の吸収最大値の少なくとも50%を有しており、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも90%を有している。赤外吸収体物質は、1つまたは複数の局所的な吸収最大値を有していてよい。
【0025】
放射エネルギーを供給する本発明の方法は、印刷インキを乾燥させる方法、または印刷インキの乾燥を補助する方法、または印刷インキの乾燥を促進する方法と呼ぶこともできる。赤外吸収体物質の吸収を利用し、水の吸収波長を回避しながら、同時に被印刷体への少ないエネルギー吸収で、特にごく少ないエネルギー吸収で、印刷インキへの強力なエネルギー吸収が実現されるからである。換言すれば、本発明による方法は、乾燥に強すぎる影響を与えることなく、被印刷体の上の溶剤含有印刷インキを乾燥させることを可能にする。
【0026】
放射エネルギーを供給する本発明の方法は、複数の印刷インキが印刷される複数の印刷ユニットを備える平版印刷機で、格別に有利に実施することができる。複数の印刷インキの少なくとも1つは、印刷の前に赤外吸収体物質で調製される。この調製は、印刷ユニットに印刷インキを入れる前に、または印刷ユニットの内部で行うことができ、たとえば、一定量の赤外吸収体物質を、複数の印刷インキの少なくとも1つに添加または混合することができる。赤外吸収体物質の重量割合は、印刷インキの全重量(赤外吸収体物質を含む)の10%未満、好ましくは3%未満、特に1%未満であってよい。複数の印刷インキの少なくとも2つを調製するときは、その両方の印刷インキについて同じ赤外吸収体物質を使用し、または、両方の印刷インキの第1の印刷インキには第1の赤外吸収体物質を使用して、両方の印刷インキの第2の印刷インキには第2の赤外吸収体物質を使用することができる。第1および第2の赤外吸収体物質は、少なくとも1つの同一または類似の吸収最大値を有することができ、もしくは異なる吸収最大値を有することができる。同様のことは、2つを超える赤外吸収体物質についても当てはまる。使用する赤外吸収体物質が複数の異なる吸収最大値を有しているときは、複数の波長の放射エネルギーを供給することができる。
【0027】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、平版印刷機における本発明の装置の配置を説明するための概略図を示している。放射エネルギー源10、特にレーザ、好ましくはダイオードレーザまたは固体レーザは、平版印刷機の内部で、これによって放出された光12が、印刷間隙18の後に配置された位置116で、平版印刷機を通る被印刷体14の経路16で被印刷体14に当たるように配置されている。図1では、被印刷体14は一例としてシート状に図示されているが、被印刷体はウェブ状に平版印刷機を案内されていてもよい。被印刷体14の経路16の向きは矢印で図示されている。この経路は、一般的には曲線状または非直線状である形状、特に円弧上の形状を限定することなく、ここでは直線状に図示されている。印刷間隙18は、図1に示す実施形態では、印刷胴110と圧胴112の協働によって規定されている。平版印刷機での固有の印刷方法に応じて、印刷胴110は版胴またはブランケット胴であり得る。非印刷体14の上に印刷インキ114が図示されている。放射源10から射出された光12は、位置116で、ビーム状またはカーペット状に被印刷体14に当たる。この位置116の内部にある印刷インキ114は、光12からエネルギーを吸収することができる。水の吸収波長と共振しない、本発明に基づく有利な波長の選択により、被印刷体14への吸収が低減される。
【0029】
図2は、平版印刷機における本発明の装置の有利な発展例の実施形態の概略図を示している。一例として、放射エネルギー源10のフィールド20が図示されており、ここでは3x4個、すなわち12個の放射源10が図示されている。ここに図示した二次元のフィールド20以外にも、被印刷体14の幅全体にわたって方向づけられた、一次元のフィールドまたは一次元のラインを設けることもできる。光が二次元の分布で被印刷体14に当たる二次元のフィールドは、三次元のフィールドと同じく、特に、複数の位置のまとまりをフィールド20の1つの列で並行して、または同時に照射することによって迅速な乾燥が実現されるという利点がある。したがって、被印刷体が放射エネルギー源10のそばを通過する速度が、一次元だけのフィールドの場合よりも速くてよい。フィールド20は、これ以外の数の放射エネルギー源10を有していてもよい。複数の放射エネルギー源10の各々から、光12が被印刷体14に供給される。平版印刷機を通る経路16に従って進む被印刷体14に光12が当たる位置116は、印刷胴110と圧胴112によって規定される印刷間隙118の後に配置されている。このとき、個々の位置116は、図2に放射エネルギー源10の前側の行について図示しているように部分的に重なっていてよく、あるいは実質的に完全に重なり合っていてもよい。放射エネルギー源10のフィールド20には、放射エネルギー源が接続部22によって制御信号を交換することができる制御装置24が付属している。制御装置24によって、位置116で被印刷体14の上にある印刷インキ量に応じてエネルギー供給が行われるように、フィールド20の制御を行うことができる。
【0030】
図3は、複数の印刷ユニットへの配置や、最後の印刷ユニットの後の配置など、本発明の装置がさまざまに異なる配置をされている平版印刷機、本実施形態では枚葉紙を処理する印刷機を概略的に示している。一例として、この平版印刷機は4つの印刷ユニット30と、給紙装置32と、排紙装置34とを有している。平版印刷機34の内部には、一方では機械を通して枚葉紙を案内する役目をし、他方では、版胴として直接的にであれブランケット胴としてであれ平版印刷面を提供する、さまざまな胴が示されている。詳細には図示していないが、平版印刷機の典型的な印刷ユニット30は、さらにインキ装置および場合により湿し装置を有している。それぞれの印刷ユニット30は、印刷間隙18を規定する印刷胴110と圧胴112を含んでいる。第1および第2の印刷ユニット30には中央の放射エネルギー源36が図示されており、この放射エネルギー源から出た光は、たとえば光導波路、鏡、結像光学系などの光案内部材38によって、印刷ユニット30に付属する投影部材310へと案内される。投影部材310は、平版印刷機を通る被印刷体14の経路16に対して、付属の印刷ユニット30のそれぞれの印刷間隙18の後に配置されている位置116で光12を射出する。光案内部材38を用いることにより、放射エネルギー源36を、設計スペースが利用できる平版印刷機内部の適切な位置に配置することが可能である。第3および第4の印刷ユニット30には、放射エネルギー源10が図示されており、これらの放射エネルギー源から出た光12は、それぞれの印刷ユニット30の印刷間隙18の後に配置された位置116で直接、被印刷体14の経路16に供給される。さらに、排紙装置34の内部には、別案の放射エネルギー源312と、さらに異なる別案の放射エネルギー源314とが図示されている。
【0031】
放射エネルギーを供給する本発明の装置は、図3の、枚葉紙を処理する印刷機によって示している構成に準じて、ウェブを処理する印刷機、特にいわゆるウェブ輪転印刷機でも、それが端物印刷用のものであれ新聞印刷用のものであれ、有利に利用することができる。
【0032】
被印刷体に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する本発明の方法の1つの実施形態では、1つまたは複数の吸収最大値の位置が紙の吸収スペクトルのいわゆる窓にあることによって、特に水の吸収スペクトルのいわゆる窓にあることによって適している、赤外吸収体物質が用いられる。赤外吸収体物質の必要量が、添加物または添加剤として印刷インキに添加される。このことは、たとえば平版印刷機の外部または内部で、印刷インキと赤外吸収体物質を混ぜ合わせることによって行うことができる。添加は、通常、いわゆる有彩色についてのみ有意義であり、特にイエロー、マゼンタ、シアン(Y,MおよびG)の色の4色オフセット印刷についてのみ有意義である。4色オフセット印刷ではブラック(K)の色であるコントラスト色のための添加は、通常、不要である。黒色の印刷インキは、通常、請求項に記載されている重要な700nmから2500nmまでの全波長領域で十分に良く吸収をするからである。それでも添加を行うことはできる。赤外吸収体物質の必要量は、ランバート・ベールの消光法則、被印刷体上の印刷インキの層厚、および消光係数に基づいて計算する。ランバート・ベールの消光法則の計算は、本明細書の説明では直接的な共振に基づいており、すなわち、放出波長は吸収最大値のすぐ付近に位置している。レーザ波長が若干異なっていれば同じく若干異なる吸収が得られ、相応に多くの赤外吸収体物質、特に比例的に多くの赤外吸収体物質が必要になる。被印刷体を照明するために、光が赤外吸収体物質の吸収最大値と実質的に共振する放射エネルギー源が使用される。平版印刷機での印刷プロセスは、本実施形態では、それ以外に何の方策もなく、かつ従来の印刷方法からの相違なく行うことができる。
【実施例】
【0033】
本発明による方法の実施形態の第1の実施例では、赤外吸収体物質として、実験式がC4652Cl224、分子重量が767.84gmol-1である3−ブチル−2(2−[−2−(3−ブチル−1.1−ジメチル−1,3−ジヒドロ−ベンゾインドール−2−y−リデン)エチリデン]−2−クロロ−シクロヘキサ−1−エニル)−エテニル)−1,1−ジメチル−1H−ベンゾインドリウム・過塩素酸塩が用いられる。この赤外吸収体物質の構造式は、下記化学式:
【0034】
【化1】

【0035】
によって表される。この赤外吸収体物質は、819nmのところに吸収最大値を有しており、615276(mol*cm)-1の最大消光を有している。この赤外吸収体物質の1.4重量パーセントが、2μmの層厚についてのC,MおよびYの各色中の添加剤として、約90%のレーザ光吸収のために必要である(ランバート・ベールの消光法則に基づく)(比較:約75%のレーザ光吸収のためには0.9重量パーセント、約50%のためには0.4重量パーセント、約30%のためには0.2重量パーセント)。放射エネルギーを供給する装置は、放射エネルギー源として、808nmで放出を行うレーザを含んでおり、たとえばDILAS社のMBシリ−ズのInGa(Al)As Quantum Wellレ−ザ を使用することができる。DILAS社の前記レーザは、24Wの最大光出力を有している。コリメータ通過後のビームジオメトリーは4mmx12mmである。したがって、放出波長は819±15nmの吸収最大値と十分に共振する。この赤外吸収体物質は50%を超える吸収率を示す。本実施例では、2m/sの印刷速度(枚葉紙の長さが50cmのとき1時間あたり14400枚の印刷に相当)で、100mJ/cm2の単位面積あたりエネルギーについて、ビームプロフィルと2msの照射時間が選択されている。空気中の水蒸気による放射の吸収率は0.5%以下である。
【0036】
本発明による方法の実施形態の第2の実施例では、赤外吸収体物質として、実験式がC4244BClF42、分子重量が699.084gmol-1である2[2−(2−[2クロロ−3[2−(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンゾインドール−2イリデン)−エチリデン]−1シクロヘキセン−1−イル]−エテニル)3−エチル−1,1ジメチル−1H−ベンゾインドリウム・四弗化硼酸塩が用いられる。この赤外吸収体物質の構造式は下記化学式:
【0037】
【化2】

【0038】
によって表される。この赤外吸収体物質は、816nmのところに吸収最大値を有しており、898704(mol*cm)-1の最大消光を有している。この赤外吸収体物質の0.9重量パーセントが、2μmの層厚についてのC,MおよびYの各色中の添加剤として、約90%のレーザ光吸収のために必要である(ランバート・ベールの消光法則に基づく)(比較:約75%のレーザ光吸収のためには0.5重量パーセント、約50%のためには0.3重量パーセント、約30%のためには0.1重量パーセント)。放射エネルギーを供給する装置は、放射エネルギー源として、808nmで放出を行うレーザを含んでおり、たとえばLIMO社のダイオードレーザ HLU 100c 10x12を使用することができる。LIMO社の前記レーザは、100Wの最大光出力を有している。コリメータ通過後のビームジオメトリーは10mmx12mmである。したがって、放出波長は816±15nmの吸収最大値と十分に共振する。この赤外吸収体物質は50%を超える吸収率を示す。本実施例では、0.5m/sの印刷速度(枚葉紙の長さが50cmのとき1時間あたり3600枚の印刷に相当)で、833mJ/cm2の単位面積あたりエネルギーについて、ビームプロフィルと40msの照射時間が選択されている。空気中の水蒸気による放射の吸収率は0.5%以下である。
【0039】
本発明による方法の実施形態の第3の実施例では、赤外吸収体物質として、実験式がC6292Cl268、分子重量が1120.37gmol-1であるベンゼンアミニウム−N,N'−2,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジイリデンビス[4−(ジブチルアミノ)−N−[4−(ジブチルアミノ)フェニル]二過塩素酸塩が用いられる。この赤外吸収体物質の構造式は下記化学式:
【0040】
【化3】

【0041】
によって表される。この赤外吸収体物質は、1064nmのところに吸収最大値を有しており、81300(mol*cm)-1の最大消光を有している。この赤外吸収体物質の4.8重量パーセントが、2μmの層厚についてのC,MおよびYの各色中の添加剤として、約50%のレーザ光吸収のために必要である(ランバート・ベールの消光法則に基づく)(比較:約90%のレーザ光吸収のためには15.9重量パーセント、約75%のためには9.6重量パーセント、約30%のためには2.5重量パーセント)。放射エネルギーを供給する装置は、放射エネルギー源として、1075nmで放出を行うレーザを含んでおり、たとえばIPG Photonics社のイッテルビウムファイバーレーザ YLR−100を使用することができる。IPG Photonics社の前記レーザは、100Wの最大光出力を有している。焦点でのビームジオメトリーは3mmx3mmにすることができる。したがって、放出波長は1064±15nmの吸収最大値と十分に共振する。この赤外吸収体物質は50%を超える吸収率を示す。本実施例では、2m/sの印刷速度(枚葉紙の長さが50cmのとき1時間あたり14400枚の印刷に相当)で、417mJ/cm2の単位面積あたりエネルギーについて、ビームプロフィルと5msの照射時間が選択されている。空気中の水蒸気による放射の吸収率は0.1%以下である。
【0042】
本発明による方法の実施形態の第4の実施例では、赤外吸収体物質として、実験式がC3226Cl2NiO44、分子重量が732.4gmol-1であるビス(3,4−ジメトキシ−2'クロロジチオベンジル)ニッケルが用いられる。この赤外吸収体物質の構造式は下記化学式:
【0043】
【化4】

【0044】
によって表される。この赤外吸収体物質は、885nmのところに吸収最大値を有しており、160000(mol*cm)-1の最大消光を有している。この赤外吸収体物質の3.2重量パーセントが、2μmの層厚についてのC,MおよびYの各色中の添加剤として、約75%のレーザ光吸収のために必要である(ランバート・ベールの消光法則に基づく)(比較:約90%のレーザ光吸収のためには5.3重量パーセント、約50%のためには1.6重量パーセント、約30%のためには0.8重量パーセント)。放射エネルギーを供給する装置は、放射エネルギー源として、870nmで放出を行うレーザを含んでおり、たとえばLaser2000社のファイバー結合レーザダイオードシステムDLDFC−50を使用することができる。Laser2000社の前記レーザは、50Wの最大光出力を有しており、連続発振動作でもパルス動作でも使用することができる。したがって、放出波長は885±15nmの吸収最大値と十分に共振する。この赤外吸収体物質は50%を超える吸収率を示す。本実施例では、2m/sの印刷速度(枚葉紙の長さが50cmのとき1時間あたり14400枚の印刷に相当)で、152mJ/cm2の単位面積あたりエネルギーについて、ビームプロフィルと5msの照射時間が選択されている。空気中の水蒸気による放射の吸収率は0.1%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】平版印刷機における本発明の装置の配置を説明するための概略図である。
【図2】平版印刷機における本発明の装置の有利な発展例を示す概略図である。
【図3】複数の印刷ユニットへの配置や、最後の印刷ユニットの後の配置など、本発明の装置がさまざまに異なる配置をされている平版印刷機を示す概略図である。
【符号の説明】
【0046】
10 放射エネルギー源
12 光
14 被印刷体
16 経路
18 印刷間隙
20 フィールド
22 接続部
24 制御装置
30 印刷ユニット
32 給紙装置
34 排紙装置
36 放射エネルギー源
38 光案内部材
110 印刷胴
112 圧胴
114 印刷インキ
116 位置
310 投影部材
312 放射エネルギー源
314 放射エネルギー源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの放射エネルギー源(10)を備え、その光(12)が、印刷ユニット中にある少なくとも1つの印刷間隙(18)の後に配置された位置(116)で、印刷機を通る被印刷体(14)の経路(16)上にある被印刷体(14)に当たる、平板印刷機の被印刷体(14)に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する装置において、前記放射エネルギー源(10)が、波長が水(H2O)の吸収波長と共振しない光(12)だけを実質的に放出することを特徴とする、放射エネルギーを供給する装置。
【請求項2】
前記放射エネルギー源(10)が、波長が700.00nmから2500.00nmの間にある狭帯域の光(12)を放出する、請求項1に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項3】
前記放射エネルギー源(10)がレーザである、請求項1または2に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項4】
前記レーザが半導体レーザまたは固体レーザである、請求項3に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項5】
前記装置が、一次元のフィールド、二次元のフィールド(20)、または三次元のフィールドに配置され、前記光が複数の位置(116)で被印刷体(14)に当たる、複数の放射エネルギー源(10)を有している、請求項1から4までのいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項6】
前記装置に追加的に制御装置(24)が付属しており、かつ、ある1つの位置(116)で被印刷体(14)に当たる光(12)が、その強度と露光時間に関して、各々の放射エネルギー源(10)について他の放射エネルギー源(10)とは関わりなく制御可能である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項7】
波長が870.00±50.00nmおよび/または1050.00nm±50.00nmおよび/または1250.00nm±50.00nmおよび/または1600.00nm±50.00nmである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項8】
ある1つの位置(116)で被印刷体(14)に少なくとも2つの放射エネルギー源(10)の光(12)が当たる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項9】
前記装置の平版印刷機が少なくとも2つの印刷ユニット(30)を有しており、かつ、該平版印刷機を通る前記経路(16)で被印刷体(14)に光が当たる前記位置(116)が、複数の印刷ユニットの最後の印刷ユニット(30)の最後の印刷間隙(18)の後に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する装置。
【請求項10】
少なくとも1つの印刷ユニット(30)を備える平版印刷機において、請求項1から9までのいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する装置を備えていることを特徴とする平版印刷機。
【請求項11】
少なくとも1つの放射エネルギー源(10)の光(12)で被印刷体(14)を照明することによって、平板印刷機の被印刷体(14)に近赤外線の波長の放射エネルギーを供給する方法であって、前記光(12)は、印刷ユニットにある少なくとも1つの印刷間隙(18)の後に配置されたある1つの位置(116)で、印刷機を通る被印刷体(14)の経路(16)上にある被印刷体(14)に当たる、放射エネルギーを供給する方法において、印刷インキに添加された少なくとも1つの赤外吸収体物質によって、印刷インキへの放射エネルギーの吸収を補助することを特徴とする、放射エネルギーを供給する方法。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する装置を使用することを特徴とする、請求項11に記載の放射エネルギーを供給する方法。
【請求項13】
前記放射エネルギー源(10)から放出された光が、赤外吸収体物質の吸収最大値と実質的に共振することを特徴とする、請求項12に記載の放射エネルギーを供給する方法。
【請求項14】
赤外吸収体物質が次の物質、すなわち、ベンゼンアミニウム−N,N’−2,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジイリデンビス[4−(ジブチルアミノ)−N−[4−(ジブチルアミノ)フェニル]二過塩素酸塩、ビス(3,4−ジメトキシ−2’クロロジチオベンジル)ニッケル、3−ブチル−2(2−[−2−(3−ブチル−1.1−ジメチル−1,3−ジヒドロ−ベンゾインドール−2−y−リデン)エチリデン]−2−クロロ−シクロヘキサ−1−エニル)−エテニル]−1,1−ジメチル−1H−ベンゾインドリウム・過塩素酸塩、および2[2−(2−[2クロロ−3[2−(3−エチル−1,3−ジヒドロ−1,1−ジメチル−2H−ベンゾインドール−2イリデン)−エチリデン]−1シクロヘキセン−1−イル]−エテニル)3−エチル−1,1ジメチル−1H−ベンゾインドリウム・四弗化硼酸塩のいずれかであることを特徴とする、請求項11,12または13のいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する方法。
【請求項15】
前記方法が、複数の印刷インキが印刷される複数の印刷ユニット(30)を備える平版印刷機で実施される、請求項11,12,13または14のいずれか1項に記載の放射エネルギーを供給する方法において、印刷インキを印刷する前に複数の印刷インキの少なくとも1つを赤外吸収体物質で調製することを特徴とする、放射エネルギーを供給する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−83505(P2009−83505A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309017(P2008−309017)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【分割の表示】特願2002−296028(P2002−296028)の分割
【原出願日】平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】