説明

平板瓦

【課題】瓦尻側に鉤状の係合部を突出形成すると共に、水受けを備えた差込部に上記係合部が係止可能な受け部を形成し、瓦を葺くとき上記係合部が受け部に被さるように葺くことによって強風の吹き込みによる瓦の浮き上がりを防止する平板瓦において、受け部を形成することによって差込部の雨水の流路が狭められ、これにより雨水が溢れ出て瓦間の隙間に流入し、雨洩れを生じるおそれがないようにする。
【解決手段】差込部12の瓦頭に差込部12より低い段をなす受け部13を形成すると共に、瓦尻の水返し15の内側に鉤状の係合部14を形成し、瓦11を葺くときには受け部13上に下段の瓦11の係合部14が被さって強風時における下段の瓦11の浮き上がりを防ぐようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強風の吹き込みによる瓦の浮き上がりを防止し、耐風性を向上させた平板瓦に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の平板瓦として下記特許文献1には、図1に示すように、平板瓦1の瓦尻の水返し2の中央部に鉤状の係合部3を突設すると共に、差込部4の側端部に係合凹部5を形成し、係合部3が係合凹部5に被さるようにして瓦を葺くことにより、係合部3で係合凹部5を押えて瓦の浮き上がりを防止する平板瓦が提案されている。
【0003】
下記特許文献2にも同様の平板瓦が提案されている。
【特許文献1】特開2000−291208号
【特許文献2】特開2003−35011号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述する平板瓦では、瓦を葺いたとき隣の瓦側縁に差込まれた差込部4が瓦間に流入する雨水の流路となっており、流路の外側には水返し7が形成されているが、この水返し7は係合凹部5では図1に示すように、係合凹部5を囲うように形成されているため、係合凹部5において流路が狭くなり、多量の雨水が流入したときには該箇所で雨水が溢れて瓦間の隙間に流入し、雨漏りを生ずるおそれがある。
【0005】
本発明は、鉤状の係合部と、該係合部が係止可能な受け部とを有し、瓦を葺くとき、係合部が受け部に被さるように葺くことによって強風の吹き込みによる瓦の浮き上がりを防止する平板瓦において、上記受け部を形成することによって流路を狭め、上述するような問題を生ずることがないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、瓦尻側に鉤状の係合部を突出形成すると共に、水返しを備えた差込部に上記係合部が係止可能な受け部を形成し、瓦を葺くとき上記係合部が受け部に被さるように葺くことによって強風の吹き込みによる瓦の浮き上がりを防止する平板瓦において、上記受け部を差込部の瓦頭に段又はテーパ状の受け部を形成して係合部を受け部に被せたとき、係合部が雨水の流路となる差込部より突出しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のよると、受け部は瓦頭に流路を狭めることなく形成されるため、差込部に流入した雨水は瓦頭まで滞留することなく流出する。そして瓦頭では係合部は差込部より突出していないため係合部が雨水流出の障害となることはない。したがって雨水は係合部や受け部を有しない瓦と同様に差込部を流出し、係合部や受け部を形成したことにより雨洩れを生ずることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図2は、本発明に係わる平板瓦11について示すもので、差込部12の瓦頭に差込部12より低い段をなす受け部13を突出形成すると共に、鉤状の係合部14を瓦を葺いたとき上記受け部13に対応する箇所の瓦尻の水返し15の内側に形成し、瓦裏面には、図3及び図5に示すように瓦11を積み重ねたとき係合部14が納まる凹部16を形成してなるものである。図中、17は差込部12に形成される水返しである。
【0009】
瓦11を葺くときには、従来と同様、図4に示すように差込部12の上に隣接する瓦11の側縁が重なるように軒に沿って横方向に並べて葺いていき、横一列の葺き合わせが終わると、次にその上に上段の瓦11を横方向にずらせて、係合部14が受け部13上に被さるように千鳥状に葺いていく。図5は図4のB−B線の断面を示すもので、係合部14は、差込部12の高さと同じレベルをなしている。
【0010】
本実施形態の平板瓦によると、瓦を葺いたとき、図4に示すように、係合部14が瓦頭の受け部13に被さっているため、強風が吹き込んでも瓦11が浮き上がるのが抑止されること、図2に示すように水返し17は瓦頭に達するまで流路を狭めることなく形成され、しかも係合部14は受け部13上で差込部12より突出していないため瓦間より差込部12に流入した雨水は流路を受け部13まで流れ、受け部13を通して下段の瓦上に流出するようになり、係合部14や受け部13が雨水流出の障害となることはないこと、雨水が受け部13によって下段の瓦のより下流側に流出するようになり、雨水が強風の吹込みにより吹き上げられて瓦尻に達し、更には水返し15を乗り越えることによる雨洩れが生じにくくなること等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の平板瓦の平面図。
【図2】本発明に係わる平板瓦の平面図。
【図3】瓦を積み重ねたときの図2のA−A線断面図。
【図4】千鳥状に葺いた瓦の一部の平面図。
【図5】図4のB−B線断面図。
【符号の説明】
【0012】
1、11・・瓦
2、15、17・・水返し
3、14・・係合部
4、12・・差込部
5・・係合凹部
13・・受け部
16・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦尻側に鉤状の係合部を突出形成すると共に、水返しを備えた差込部に上記係合部が係止可能な受け部を形成し、瓦を葺くとき上記係合部が受け部に被さるように葺くことによって強風の吹き込みによる瓦の浮き上がりを防止する平板瓦において、上記受け部を差込部の瓦頭に段又はテーパ状の受け部を形成して係合部を受け部に被せたとき、係合部が雨水の流路となる差込部より突出しないようにしたことを特徴とする平板瓦。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−152631(P2006−152631A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343257(P2004−343257)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(591091663)株式会社石州川上窯業 (8)