説明

平面アンテナ

【課題】地導体1と給電基板3の間隔および給電基板3と地導体4の間隔の精度に優れ、利得と指向性に優れた平面アンテナを提供する。
【解決手段】地導体1と、誘電体2と、一定の配列規則に従って配置された複数の放射素子5とその放射素子5に接続された給電線路6とを形成した給電基板3と、誘電体21と、放射素子5に対応する位置にスロット7を複数形成した地導体4とを、この順に積層配置して構成する平面アンテナであって、アンテナの最外周に配置された放射素子5のうち、少なくとも対向する2辺から選択した箇所の放射素子5に代えて固定用の孔を設け、それに対応するスロット7の箇所にもスロット7に代えて固定用の孔を設け、この孔を用いて上記、地導体1と、誘電体2と、給電基板3と、誘電体21と、地導体4とを固定した平面アンテナ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波やミリ波帯の送受信に用いられる平面アンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】平面アンテナのアンテナ効率を高める方法として、トリプレート線路を用いて給電損失の低損失化を図ることが知られている。この種のアンテナの基本構成は、図4(a)に示すように、地導体1と、誘電体2と、一定の配列規則に従って配置された複数の放射素子5とその放射素子5に接続された給電線路6とを形成した給電基板3と、誘電体21と、放射素子5に対応する位置にスロット7を複数形成した地導体4とを、この順に積層配置して構成する平面アンテナであり、放射素子5の形状がパッチ状であるが、図4(b)に示すように、放射素子5を無給電素子とし、スロット7を形成した地導体4と同一平面に形成したものもある。
【0003】このようなアンテナは、いずれも、給電線路6が地導体1と地導体4とに囲まれ、電磁的にシールドされたトリプレート線路となっており、給電線路6の曲がりや分岐部分などの不連続な箇所からの不要放射を抑制でき、効率の高いアンテナを構成することができる。
【0004】この種のアンテナでは、アンテナの特性を初期の設計時の設定を維持するために、給電基板3と地導体1との間隔や給電基板3と地導体4との間隔を一定に保つ必要がある。このために、通常は、図5(a)に示すように、放射素子5、給電線路6およびスロット7の無い箇所に固定用の孔を設け、地導体1に上記固定用孔に対応する箇所に穴または孔をあけ、雌ねじを形成しておき、地導体4の上から雄ねじを通し、地導体1の雌ねじを形成した穴または孔で締めつけるように固定している。また、使用周波数が高くなり放射素子5の間隔が狭くなると、放射素子5や給電線路6を形成している箇所では、固定用の孔を設ける面積がなくなり、図5(b)に示すように、放射素子5に代えて固定用の孔を設けるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このようなアンテナを、準ミリ波やミリ波帯等の周波数の高いところで使うには、放射素子5や給電線路6等の物理的形状が小さくなり、しかも高い精度を要求され、地導体1と給電基板3の間隔や給電基板3と地導体4との間隔を精度よく維持できる構造としなければならない。そこで、図6に示すように、全体にバランスよく固定できるように、ねじを配置することが考えられるが、このようにすると、放射素子5の無い箇所が多く、放射電力の配分に乱れを生じ、アンテナ利得の低下とともにサイドローブが大きく指向性まで低下する。
【0006】本発明は、地導体1と給電基板3の間隔および給電基板3と地導体4の間隔の精度に優れ、利得と指向性に優れた平面アンテナを提供することを目的とする。
【0007】
【発明を解決するための手段】本発明の平面アンテナは、地導体1と、誘電体2と、一定の配列規則に従って配置された複数の放射素子5とその放射素子5に接続された給電線路6とを形成した給電基板3と、誘電体21と、放射素子5に対応する位置にスロット7を複数形成した地導体4とを、この順に積層配置して構成する平面アンテナであって、アンテナの最外周に配置された放射素子5のうち、少なくとも対向する2辺から選択した箇所の放射素子5に代えて固定用の孔を設け、それに対応するスロット7の箇所にもスロット7に代えて固定用の孔を設け、この孔を用いて上記、地導体1と、誘電体2と、給電基板3と、誘電体21と、地導体4とを固定したことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】放射素子5に代えて設ける固定用の孔と、それに対応するスロット7に代えて設ける固定用の孔を、アンテナのほぼ中心にも1つ設けることはできる。
【0009】固定手段がねじであり、地導体1と誘電体2の間に、ねじの貫通するスペーサを設け、地導体1に上記固定用孔に対応する箇所に穴または孔をあけ、雌ねじを形成しておき、地導体4の上から雄ねじを通し、地導体1の雌ねじを形成した穴または孔で締めつけるように固定することもできる。
【0010】
【実施例】地導体1として、厚さ5mmのアルミニウム板を用い、給電基板3として、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたフレキシブル基板の不要な銅箔をエッチング除去してパッチ状の放射素子5と給電線路6とを形成した。放射素子5は、利用周波数60GHzの自由空間波長λ0の0.26倍を一辺の長さとする正方形のパッチ状とし、配列は、間隔を自由空間波長λ0の0.8倍として縦16×横16の配列とした。地導体4として、厚さ1mmのアルミニウム板を用い、放射素子5の配列間隔と同じ自由空間波長λ0の0.26倍の間隔で、スロット7を形成した。誘電体2および誘電体21として、厚さ0.5mm、比誘電率1.1のポリエチレンフォームを用いた。図2に示すように、放射素子5を形成しない箇所を、アンテナのほぼ中心1箇所と、対向する2辺のなかから8箇所選択した。スペーサ10には、アルミニウムの円環状のものを用いた。このようにして作製したアンテナの利得は、周波数60GHzで、29〜30dBが得られ、効率として、約40%の良好な特性が得られた。このときの、アンテナサイズは、75mm×75mmであった。また、指向性も図3に示すように理想的なパターンが得られた。
【0011】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によって、精度に優れ、利得と指向性に優れた平面アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)(b)は、ともに、本発明の一実施例を示す。
【図2】本発明の他の実施例を示す上面図である。
【図3】本発明の効果を説明するための線図である。
【図4】(a)(b)は、ともに、従来例を示す分解斜視図である。
【図5】(a)(b)は、ともに、他の従来例を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の課題を説明するための上面図である。
【符号の説明】
1.地導体 2、21.誘電体
3.給電基板 4.地導体
5.放射素子 6.給電線路
7.スロット 8.ねじ
9.固定具 10.スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】地導体1と、誘電体2と、一定の配列規則に従って配置された複数の放射素子5とその放射素子5に接続された給電線路6とを形成した給電基板3と、誘電体21と、放射素子5に対応する位置にスロット7を複数形成した地導体4とを、この順に積層配置して構成する平面アンテナであって、アンテナの最外周に配置された放射素子5のうち、少なくとも対向する2辺から選択した箇所の放射素子5に代えて固定用の孔を設け、それに対応するスロット7の箇所にもスロット7に代えて固定用の孔を設け、この孔を用いて上記、地導体1と、誘電体2と、給電基板3と、誘電体21と、地導体4とを固定したことを特徴とする平面アンテナ。
【請求項2】放射素子5に代えて設ける固定用の孔と、それに対応するスロット7に代えて設ける固定用の孔を、アンテナのほぼ中心にも1つ設けたことを特徴とする請求項1に記載の平面アンテナ。
【請求項3】固定手段がねじであり、地導体1と誘電体2の間に、ねじの貫通するスペーサを設け、地導体1に上記固定用孔に対応する箇所に穴または孔をあけ、雌ねじを形成しておき、地導体4の上から雄ねじを通し、地導体1の雌ねじを形成した穴または孔で締めつけるように固定したことを特徴とする請求項1または2に記載の平面アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平11−27033
【公開日】平成11年(1999)1月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−181933
【出願日】平成9年(1997)7月8日
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)