説明

平面型放電ランプ及びその製造方法

【課題】 リークを抑制可能な平面型放電ランプ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の平面型放電ランプは、板状ガラス2、板状ガラス3及び枠状ガラス4にフリットガラス51を形成してなる放電容器1と、放電容器1内に封入された放電媒体と、放電容器1に形成された電極81、82とを具備し、フリットガラス51は、板状ガラス2と枠状ガラス4、及び板状ガラス3と枠状ガラス4の端面21、31、41を互いにずらすことで形成された段状部12に形成されている。また、フリットガラス51は、板状ガラス2と枠状ガラス4、及び板状ガラス3と枠状ガラス4の間には実質形成されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイのバックライトや一般照明などに用いられる平面型放電ランプ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平面型放電ランプは、特開11−135065号公報(以下、特許文献1)、特開2005−340199号公報(以下、特許文献2)などで知られているように、内部に放電媒体が封入された平板状の放電容器に電極が形成されてなるのが一般的である。
【0003】
この放電容器は、一般に2枚のガラス部材を接合することで構成される。その接合には、フリットガラスなどの接合部材を2枚のガラス部材間に形成することにより行われている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−135065号公報
【特許文献2】特開2005−340199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や2のように構成された平面型放電ランプにおいて、ランプが点灯しないという問題が発生した。この問題について発明者が検討を行った結果、放電媒体が放電容器の外部にリークしたことが原因であることがわかった。
【0006】
本発明は、リークを抑制可能な平面型放電ランプ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の平面型放電ランプは、複数のガラス部材に接合部材を形成してなる放電容器と、前記放電容器内に封入された放電媒体と、前記放電容器に形成された電極とを具備する平面型放電ランプであって、前記接合部材は、接合する前記ガラス部材の端面を互いにずらすことで形成された段状部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リークを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の第1の実施の形態の平面型放電ランプについて図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の平面型放電ランプの斜視図、図2は、図1のX−X’部分の断面を矢印方向から見た図である。
【0010】
平面型放電ランプの放電容器1は、板状ガラス2、板状ガラス3、枠状ガラス4がフリットガラス51によって接合されてなり、内部には気密性が保たれた放電空間11が形成されている。
【0011】
板状ガラス2は、透光性の軟質ガラス、例えばソーダガラスからなる平板状のガラス部材である。板状ガラス3も板状ガラス2と同様である。
【0012】
なお、板状ガラス2には、端部には、排気・ガス導入を行うための穴(図示なし)が形成されており、この穴には排気チップ21が形成されている。この排気チップ21は、当初は筒状であるが、容器内部の排気・ガス導入後にチッピングされて、図のような形状で残存している。なお、排気チップ21と放電容器1との接合は、それらの接触部分にフリットガラス52を形成することによって行われている。
【0013】
枠状ガラス4は、放電容器1の四方の側壁を形成する額縁状のガラス部材である。枠状ガラス4としては、板状ガラス2、3と同様の材料を用いることが望ましい。
【0014】
フリットガラス51は、各ガラス部材を接合する接合部材である。フリットガラス51としては、各ガラス部材の熱膨張係数に近い部材を使用することが望ましく、例えばガラス部材の熱膨張係数αが約80×10−7/℃であるソーダガラスの場合は、熱膨張係数αが約60〜80×10−7/℃である酸化ビスマス(Bi)や五酸化バナジウム(V)などを使用するのが望ましい。
【0015】
放電容器1の内部には、図2のように、対向配置された板状ガラス2、3の間にビーズガラス6が複数介在されている。このビーズガラス6は、放電容器1内部の脱ガス及び放電媒体封入時等における放電空間11と外部空間との内外圧力差による放電容器1の爆縮を防止する目的で設けている。ビーズガラス6の材料としては、板状ガラス2、3と同様、ソーダガラスなどを用いることができる。なお、ビーズガラス6は、板状ガラス3との間にフリットガラス53を形成することによって固着されている。
【0016】
また、放電容器1の内部には、水銀と希ガスとを含む放電媒体が封入されている。希ガスとしては、ネオンとアルゴンの混合ガスとして封入している。その際、ネオン:アルゴン=50:50〜99:1とすれば、発光効率及びランプの低電圧始動性の特性を向上させることができ、ネオン:アルゴン=1:99〜50:50とすれば、発光の立ち上がり特性を向上させることができるので、用途・目的にあわせてその比率を変化させるのが望ましい。なお、ガス圧に関しては、発光効率、低電圧始動性、寿命の特性を考慮して、1〜700torr、好適には20〜100torrであるのが良い。
【0017】
放電容器1の内面、すなわち、板状ガラス2、3の放電空間11側には、蛍光体層71、72が形成されている。蛍光体層71、72としては、例えば、一般照明や冷陰極蛍光ランプに使用されている単色の蛍光体やRGBの複数種の蛍光体を使用することができる。
【0018】
ここで、本平面型蛍光ランプをバックライトに配置した場合、板状ガラス2側は発光面側、板状ガラス3側は底部側となるので、前面側は光の透過効率を高め、背面側は光の反射効率を高める蛍光体構成とするのが望ましい。そこで、例えば、蛍光体層71は平均粒径を約2.5μm以上、厚さを5〜15μm、蛍光体層72は、平均粒径を約2.5μm以下、厚さを30〜200μmとするのがよい。また、背面側の反射効率や水銀拡散を抑制する目的で、板状ガラス3と蛍光体層72との間に酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどからなる微粒子の金属酸化物層を形成しても良い。
【0019】
放電容器1の外部には、帯状の外部電極81、82が形成されている。この外部電極81、82は、スズ、インジウム、ビスマス、鉛、亜鉛、アンチモン、銀を少なくとも一種類以上含む半田を、超音波振動を加えながらディスペンサー又は浸漬により形成することができる。
【0020】
なお、外部電極81、82は半田に限らず、導電性の接着剤によってアルミニウムなどの導電性テープを貼り付けたり、銀などの金属粉と溶剤とバインダーを混合させてなる導電性ペーストをスクリーン印刷によって形成したものであってもよい。また、外部電極81、82は、板状ガラス3側に形成しても良いし、両方のガラスに形成しても良い。また、外部電極タイプに限らず、内部電極タイプであっても良い。
【0021】
ここで、放電容器1の接合状態について、図3を参照してさらに詳しく説明する。図3は、図2の一点鎖線部分の拡大図である。
【0022】
図3からわかるように、フリットガラス51は放電容器1の端辺に形成されている。具体的には、板状ガラス2の端面21、板状ガラス3の端面31及び枠状ガラス4の端面41を一致させず、互いにずらすことで形成された段状部12にフリットガラス51を形成している。これにより、板状ガラス2と枠状ガラス4の間、及び板状ガラス3と枠状ガラス4の間にフリットガラス51を形成しなくても、各ガラス部材の接合が可能となる。このとき、段状部12を形成するガラス部材の幅Xと厚さYとの関係X/Yが、0.5≦X/Y≦2.0であれば、最も効率よく強固な接合状態を実現できる。
【0023】
次に、本実施の形態の平面型放電ランプの一製法について説明する。
【0024】
まず、板状ガラス2、板状ガラス3及び枠状ガラス4を、それらの端面21、31、41が一致しないように、かつ端面41、31、21の順に外側に位置されるようにずらして配置する。そして、図4のようにそれらの端面とガラス部材の面によって形成された段状部12付近にフリットペースト54をディスペンサー9により形成していく。その際、フリットペースト54は、フリットの塗布性を良好にするために、酸化ビスマス(Bi)にPEO溶剤や有機溶剤などの溶剤とポリエチレンオキサイドやエチルセルロースなどの増粘剤を混合させて得た半液体状のフリットであるため、端面が最も外側に位置している板状ガラス3を下にした状態でフリットペースト54を上から形成するようにして、フリットを段状部12付近全体に広げるとともに、フリットが垂れ流れるのを抑制するのが望ましい。
【0025】
その後、フリットが焼き固められる温度雰囲気の加熱炉(図示なし)に、フリットペースト54形成後の放電容器1を投入し、フリットを加熱する。フリットを加熱すると、フリットペースト54中の増粘剤が熱分解して気化するが、フリットはガラス部材間に介在しておらず、大部分が大気と接している状態であるため、気化した増粘剤は大気に放出され、融着したフリット内部に気泡として残存してしまうことを回避することができる。そして、排気管を介して放電空間11の脱ガス及びガス導入を行ったのち、封止して排気チップ21を形成することにより、内部が気密に保たれた平面型放電ランプが完成する。
【0026】
以下に本発明の平面型放電ランプの寸法、材料等の一仕様を示す。
【0027】
放電容器1;730mm×405mm、厚み=4.4mm、
板状ガラス2;ソーダガラス製、710mm×385mm、厚み=1.0mm、
板状ガラス3;ソーダガラス製、730mm×405mm、厚み=1.0mm、
枠状ガラス4;ソーダガラス製、内寸=700mm×375mm、外寸=720mm×395mm、厚み=2.4mm、
ビーズガラス;高さ=2.4mm、
フリットガラス51〜53;酸化ビスマス(Bi
放電媒体;水銀、ネオン:アルゴン=9:1、50torr、
蛍光体層71;粒径=5.0μm、層の厚さ=10μm、
蛍光体層72;粒径=2.4μm、層の厚さ=150μm、
外部電極81、82;半田電極。
【0028】
この実施例のランプを20本作成し、通常の点灯を行ったところ全てのランプが正常に点灯し、リークなどの問題が発生していないことが確認された。これは、段状部12にフリットガラス51を形成する構成にしたことにより、フリットガラスの焼成工程時、フリットペースト54に含まれる増粘材がフリット内部に気泡として残存しなかったためである。すなわち、気泡による封着密度の低下が抑制されため、放電媒体のリークには至らなかったと考えられる。
【0029】
また、本発明により、爆縮によるランプの破損が抑制されるという効果も得ることができる。すなわち、本実施の形態のような平面型放電ランプでは、爆縮のためにビーズガラス6のようなスペーサを設けているが、従来のように接合部剤をガラス部材間に形成する方法では、その形成量のばらつきによってスペーサとガラス部材との間に隙間が生じてしまうことがある。スペーサ−ガラス部材間に隙間が生じていると、内外に圧力差が発生し、容器が外側から内側に潰される力が発生する容器内部の脱ガス及びガス導入工程時において、その隙間分だけガラス部材を撓ませてしまうことになるため、容器が爆縮して破損しやすかった。これに対し、本発明では、例えば、枠状ガラス4の高さとビーズガラス6の高さとを同じにし、フリットガラス51をガラス部材間にほとんど流れ込まないようにすれば隙間の発生を確実に防止することができるため、爆縮による容器の破損を防止することができる。
【0030】
したがって、本実施の形態では、フリットガラス51を板状ガラス2、板状ガラス3及び枠状ガラス4の端面21、31及び41を互いにずらすことで形成された段状部12に形成することにより、フリット中の気泡が大気に放出されやすくなり、フリットの封着密度が高くなるため、リークなどの問題を抑制することができる。
【0031】
また、フリットガラス51は、板状ガラス2と枠状ガラス4、及び板状ガラス3と枠状ガラス4の間には実質形成されていないため、フリットガラス51の形成量のばらつき等により、ビーズガラス6と板状ガラス2、3との間に隙間が生じにくくすることができるため、爆縮によるランプの破損を防止することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0033】
放電容器1を構成するに、板状ガラスのみで構成するに限られない。例えば、図5のように、有底開口形状の箱状ガラス3を用いて構成してもよい。この場合、第1の実施の形態のランプよりもフリットガラス51によって接合が必要な箇所が減少するという利点がある。また、図のように箱状ガラス3の端面31を傾斜させて、フリットガラス51の形成面積を増大させるとさらに望ましい。また、図6のように、波状ガラス3を用いて放電容器1を構成してもよい。この場合、波部32がスペーサ6、枠部33が枠状ガラス4の機能を兼ねているので、部材の削減を行うことができる。なお、このような特殊形状のガラス部材は、所望の成形型により熱プレスし、型の表面形状をガラスに転写することで得ることができる。また、波部32は、半楕円状、矩形状、台形状、多角形状等などでもよい。
【0034】
フリットガラス51の形成範囲は、段状部12にのみ形成される場合に限らず、図7のように板状ガラス3の端面31にも形成されていてもよい。つまり、段状部12による接合面積が小さすぎて十分な接合強度を維持できないときにはこのように形成範囲を増やすのが好適である。また、段状部12を形成する面の全面にフリットガラス51が形成されている必要もなく、形成されていない部分が存在していても良い。
【0035】
また、各ガラス部材間にはフリットガラス51が介在されていないのが最適であるが、フリットガラス51が多少介在された状態も許容される。これは、ガラス部材の表面状態は必ずしも完全な平面ではないため、ガラス部材を合わせると多少の隙間が生じ、図8のようにその隙間にフリットガラスが流れ込むのを防止するのは困難であるからである。しかし、このような程度の状態ではリーク等の問題に発展しないため、フリットガラス51が各ガラス部材間に実質介在されていない状態であれば問題は無い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態の平面型放電ランプの斜視図。
【図2】図1のX−X’部分の断面を矢印方向から見た図。
【図3】図2のY−Y’部分の断面図。
【図4】フリットガラスの形成方法について説明するための図。
【図5】ガラス部材の他の実施例1。
【図6】ガラス部材の他の実施例2。
【図7】フリットガラスの形成範囲の他の実施例1。
【図8】フリットガラスの形成範囲の他の実施例2。
【符号の説明】
【0037】
1 放電容器
11 放電空間
12 段状部
2 板状ガラス
21 端面
3 板状ガラス
31 端面
4 枠状ガラス
41 端面
51〜53 フリットガラス
54 板状フリット
6 ビーズガラス
71、72 蛍光体層
81、82 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス部材に接合部材を形成してなる放電容器と、前記放電容器内に封入された放電媒体と、前記放電容器に形成された電極とを具備する平面型放電ランプであって、
前記接合部材は、接合する前記ガラス部材の端面を互いにずらすことで形成された段状部に形成されていることを特徴とする平面型放電ランプ。
【請求項2】
前記接合部材は、前記ガラス部材間には実質形成されていないことを特徴とする請求項1に記載の平面型放電ランプ。
【請求項3】
複数のガラス部材に接合部材を形成してなる放電容器と、前記放電容器内に封入された放電媒体と、前記放電容器に形成された電極とを具備する平面型放電ランプの製造方法であって、
接合する前記ガラス部材の端面を互いにずらして配置することで段状部を形成したのち、前記端面が外側に位置する方の前記ガラス部材を下にした状態で前記段状部に前記接合部材を形成することを特徴とする平面型放電ランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−93921(P2009−93921A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263353(P2007−263353)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】