説明

平面放電ランプ

【課題】 2種類の情報を何れも点灯状態で表示可能で、設置スペースが小さく、安価で故障も生じにくい表示装置を提供する。
【解決手段】 高電圧が印加される第1電極24および第2電極26が各々によって発光させる第1発光区画群または第2発光区画群の一方に属する発光区画20のみを通るように設けられると共に、それら第1電極24および第2電極26の間を通って蛇行する共通電極28が全ての発光区画20を通るように設けられていることから、第1発光区画群の発光区画20から発光させる際には、第2発光区画群の発光区画20には、フローティングとされた第2電極26とGNDレベルの共通電極28のみが存在する。そのため、その第2発光区画群の発光区画20内で放電が発生し、延いては漏れ発光が生ずることが好適に抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの表示パターンを切り替えて発光表示可能な平面放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内や屋外の各種施設・設備において、例えば2〜4種類程度の複数種類の表示パターンを切り替えて情報を表示することが行われている。表示装置においては、一般に、視認性を高めることを目的として表示パターンを発光させるものが広く使用されている。このような表示装置としては、例えば、以下のA〜Dに示すようなものがある。
【0003】
A.点灯状態と消灯状態とで異なる情報を表示するもの
この形態の表示装置は、点灯時に表示しようとする表示パターンを透光性を有するガラス板や樹脂板等に形成し、その表示板を蛍光ランプや電球等の発光体が内部に備えられた箱形の灯具の前面に装着して構成される。点灯状態では、表示パターンが内部から照らされることでその表示パターンに示される状態であることが表され、消灯状態では、暗転することでその状態では無いことが表される。例えば、スタジオ等における「ON AIR」の表示や、手術室における「手術中」の表示等で用いられている。
【0004】
B.上記Aの表示装置を2個並べて一体化させたもの
この形態の表示装置では、2個並べたうちの一方が点灯中は他方が消灯し、点灯中の表示パターンで何れの状態であるかを表示する。例えば、駐車場における「満車|空車」の表示等で用いられている。
【0005】
C.幕に形成した複数の表示パターンを切り替えて表示するもの
この形態の表示装置は、例えば、複数種類の表示パターンを幕に並べて形成し、これを灯具の前面に配置すると共に、その幕を一方向および反対方向に巻き取ることで表示パターンを変化させる。例えば、鉄道車両における「自由席/指定席」の表示の切り替えや、駅や百貨店等の広告を順次に変更して表示する場合等に用いられている。
【0006】
D.フルドットディスプレイを用いたもの
この形態の表示装置は、縦横に矩形に配置した多数のドットから入力データ信号に従って発光させて表示するもので、複数の入力データを用意して手動或いは自動的に切り替えることで表示される情報を変化させる。例えば、鉄道車両において、LED等を用いて「特急」「急行」「普通」を表示させる場合等に用いられている。
【特許文献1】特開2006−147251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記Aの表示装置では、消灯状態のときに表示状態にあるのか否かの判断が困難である。Bの表示装置は、この不都合を改善するものであるが、1個の表示に必要なスペースに対して表示パターン数に応じた倍数のスペースが装置の設置に必要になるため、空間の利用効率が悪い問題がある。また、Cの表示装置は、装置が機械仕掛けになって大がかりであると共に、その機械部分に故障が生じ易い問題がある。また、Dの表示装置は、多様な表示が可能に構成されているにも拘わらず限定的な表示パターンのみを表示することから、その表示パターンの焼き付きが生じ易くなる。また、多様な表示を可能とするために複雑な構造や駆動回路が必要であるから装置が高価になり、単純な使用態様に比較して割高になる問題がある。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、2種類の情報を何れも点灯状態で表示可能で、設置スペースが小さく、安価で故障も生じにくい表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、透光性を有する表面板と、その表面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記表面板を通して射出する形式の平面放電ランプであって、(a)前記気密空間を複数の発光区画に区分するために前記背面板上に突設された隔壁と、(b)前記複数の発光区画の各々に設けられた蛍光体層と、(c)前記複数の発光区画の各々が重複して属することなく且つ各々に属する複数の発光区画の分布範囲が互いに重なるように定められたそれぞれ複数の発光区画から成る互いに異なる表示パターンを形成するための第1発光区画群および第2発光区画群と、(d)前記複数の発光区画のうち前記第1発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に設けられた第1電極と、(e)前記複数の発光区画のうち前記第2発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に前記第1電極と絶縁して設けられた第2電極と、(f)前記複数の発光区画の各々を通って前記背面板内面に設けられ且つ前記第1電極および前記第2電極との間で択一的に放電するための共通電極と、(g)前記第1電極、前記第2電極、および前記共通電極を覆う誘電体層とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0010】
このようにすれば、表面板および背面板間に扁平な気密空間を備えてその気密空間内から発光させる形式の平面放電ランプにおいて、その気密空間内がそれぞれ蛍光体層が設けられた複数の発光区画に隔壁で区分されると共に、複数の発光区画でそれぞれ構成される2つの発光区画群によって、互いに異なる2つの表示パターンが形成される。このとき、第1発光区画群および第2発光区画群の発光区画を通る第1電極および第2電極は、互いに絶縁されていることから、それらの一方と共通電極との間に電圧を印加することにより、互いに異なる2つの表示パターンを選択的に表示させることができる。複数の発光区画の各々は第1発光区画群および第2発光区画群の一方だけに属し、重複して属しないので、複雑な配線や制御回路を必要とすることなく、発光させる発光区画群を選択できる。また、2つの発光区画群は、各々に属する発光区画の分布範囲が互いに重なるように定められるので、表面板の面方向において互いに完全に分離する位置関係にはないことから、2つの表示パターンの各々をその重なりの程度に応じた広い範囲で、例えば、何れも表面板全体を利用して表示することができる。したがって、2種類の情報を何れも点灯状態で表示しながら、それら2種類の情報は1つの表示面内で発光区画を分割することで形成していることから、1つの表示装置の大きさで2種類の表示パターンを得ることができる。また、機械的な駆動部分が無用であるからそれによる故障を避けることができ、構造や駆動回路も簡単にできるので、安価な装置が得られる。また、全ての発光区画が何れかの表示パターンで点灯するように構成できるので、フルドットディスプレイで限定的な表示パターンのみを表示させる場合のような表示パターンの焼き付きも生じない。
【0011】
しかも、第1電極、第2電極、および共通電極は何れも背面板上に設けられていることから面放電させられるため、表面板に配置された電極によって開口率が低下し、延いては輝度が低下することが抑制される。また、製造過程において表面板と背面板との位置ずれによって不点灯や漏れ発光が生ずることがない。因みに、平面放電ランプの電極構成としては、表面板上と背面板上に互いに対向して配置された電極間で放電させる対向放電構造とすることもできるが、この構造では、表面板上の電極によって遮光されて輝度低下する問題や、アッセンブリ時に表面板上の電極と背面板上の電極が位置ずれし得る問題がある。
【0012】
また、放電は第1電極および第2電極の一方と共通電極との間で行われるため、消灯させる発光区画には、高電圧が印加された電極か接地された電極の一方と、電源回路との接続が断たれたフローティング電極とのみが存在する駆動方法を採ることができる。そのため、漏れ発光が好適に抑制される。
【0013】
なお、本発明において、「分布範囲が互いに重なる」とは、第1発光区画群に属する発光区画の相互間に第2発光区画群に属する発光区画が存在することを意味する。この結果、2つの表示パターンの各々が形成される範囲には他方の表示パターンを形成するための発光区画が存在することになる。そのため、表示パターンの各々にはそのような発光区画によって非発光部分が生じることから、表示しようとする文字や図形等の本来の形状を表すためには発光しなければならない部分が非発光状態になり得る。例えば、連続すべき線が途切れて断続し、或いは、塗り潰しパターン内に空白が生じ得る。しかしながら、このような断続或いは空白部分が存在しても、近傍の発光区画から発生する光量が十分に多ければ、非発光部分は目立たず、表示品質を実質的に低下させない。また、仮に非発光部分が目立っていても、観察者はその非発光部分を無意識のうちに補完して表示パターンを認識する。したがって、何れにしても、表示しようとする情報は十分に伝達されることになるから、表示パターン内に他の表示パターンを構成するための非点灯の発光区画が存在することは何ら問題にならない。
【0014】
すなわち、本発明によれば、例えばバックライト、照明ランプ、一般照明等に用いられる平面型放電ランプ(例えば特許文献1を参照。)を利用し、その放電空間を複数に分割して、断続的な発光区画で全体として視認可能な表示パターンを構成することができるのである。このような平面放電ランプを応用して構成したことから、本発明の表示装置は、厚さ寸法が従来のフルドットディスプレイと同程度以下の薄いものになる利点もある。
【0015】
なお、「分布範囲が互いに重なる」には、第1発光区画群および第2発光区画群の各々に属する発光区画の分布範囲が互いに完全に重なる場合の他、部分的に重なる場合も含まれる。例えば、2つの表示パターンの中に表示面全体のうちの一部から全く発光させない方が表示品質上好ましい形状が含まれる場合には、部分的な重なり状態が好ましい。例えば、本発明の平面放電ランプが配置された部分の周囲に備えられた設備との位置関係等により、一方の表示パターンが表示面全体の左方部分を中心に表示し、他方が右方部分を中心に表示することが表示の目的に適う場合などが考えられる。
【0016】
また、前記蛍光体層は、全ての発光区画に設けられることが好ましいが、必須ではない。例えば、ネオン、ナトリウムや水銀灯のガス放電により発生した光をそのまま表示に利用する発光区画が含まれていることを妨げない。また、各発光区画に設けられる蛍光体層の発光色や塗布パターンは形成しようとする表示パターンに応じて定められる。例えば、発光区画の全体に1色に発光する蛍光体が塗布されてもよいが、一つの発光区画内で複数色の蛍光体を塗り分けることもできる。
【0017】
ここで、好適には、前記第1電極および前記第2電極は各々櫛形を成し且つそれらの歯部において互いに嵌め合わされたものであり、前記共通電極はそれら第1電極および第2電極間を蛇行するものである。このようにすれば、櫛形の第1電極および第2電極の間を縫って共通電極が設けられるので、全体で3本の電極および取り出し端子で足りる。
【0018】
また、好適には、前記隔壁は格子状を成すものであり、前記複数の発光区画は前記第1発光区画群に属するものと前記第2発光区画群に属するものとが互いに隣接して位置するものである。このようにすれば、2つの発光区画群の各々に属する発光区画が市松模様に設けられるため、視認性に優れた平面放電ランプが得られる。
【0019】
また、好適には、前記複数の発光区画の各々において前記共通電極と前記第1電極および前記第2電極とは一方が中央部を通り且つ他方が隅部を通るものであって、隅部を通る電極の面積が中央部を通る電極の面積の同一以上且つ1.5倍未満である。中央部に位置する電極の面積が隅部に位置するものよりも大きいと漏れ発光し易くなり、隅部に位置する電極の面積が中央部に位置するものの1.5倍以上の大きさになると、絶縁耐圧が低くなる。なお、上記各電極のうちの一が一つの発光区画内の複数箇所を通るように設けられている場合、例えば、第1電極および第2電極が中央部を通り、共通電極がその側方の2隅を通るような構成では、複数箇所を通る一の電極の面積は、その複数箇所を合計した値である。上記「同一以上且つ1.5倍未満」には、隅部を通る電極の面積が中央部を通る電極の面積よりも僅かに小さいが略同一と言いうる程度のものも含まれる。
【0020】
また、好適には、前記第1電極および前記第2電極は前記複数の発光区画の各々の中央部を通るものであり、前記共通電極は前記複数の発光区画の各々の周縁部を通るものである。このようにすれば、互いに電気的に絶縁させられた第1電極と第2電極とが他方の電極が通る発光区画から最も遠い位置を通ることとなるため、漏れ発光が一層抑制される。
【0021】
また、好適には、前記第1電極および前記第2電極は前記複数の発光区画の各々における幅寸法が前記隔壁の交点における幅寸法よりも大きくされたものである。このようにすれば、第1電極および第2電極は隔壁の交点における幅寸法が発光区画内に対して相対的に細幅にされるため、隔壁の交点に位置する部分と共通電極との間で放電して漏れ発光が生ずることが一層抑制される。
【0022】
また、好適には、前記共通電極は前記隔壁の交点下に一部が位置するものである。このようにすれば、共通電極の一部が隔壁の交点下に位置することから、その交点下に位置する第1電極または第2電極との間の放電が発光区画内で生じ延いては漏れ発光が生ずることが一層抑制される。
【0023】
また、好適には、前記隔壁は交点が前記複数の発光区画の各々の内周側に拡大されることによって前記共通電極の一部を覆うものである。このようにすれば、第1電極および第2電極のうち隔壁の交点下に位置する一方から、消灯させる発光区画の内壁面までの距離が拡大されるので、その内壁面に壁電荷が形成されにくくなり、延いては漏れ発光が一層抑制される。
【0024】
なお、前記複数の発光区画の各々の形状は、所望する表示パターンに応じて適宜定められる。例えば、円形、矩形、三角形等のドット状の他、ストライプ状に構成することもでき、適当な図形パターンに構成することもできる。
【0025】
また、前記複数の発光区画の各々がストライプ状を成す場合において、好適には、前記電極は、そのストライプ状の長手方向に沿って設けられる。このようにすれば、発光区画の形成や蛍光体層の塗り分け等が容易になるため、表示装置を一層安価に製造できる。また、発光区画相互間を隔壁で区分する場合においては、電極が隔壁を跨がない構成とすることができるので、誤放電が生じ難い利点がある。
【0026】
また、前記気密空間は、平面放電ランプを構成し得るような扁平なものであれば、表面板側および背面板側が平坦なものに限られない。例えば、背面板や表面板の内面に光の散乱等の目的で凹凸が設けられているものも、請求の範囲に言う「扁平な気密空間」に含まれる。
【0027】
また、気密空間を形成するための表面板および背面板は、例えばガラス材料で構成されるが、背面板側から光を射出させない場合には、背面板は透光性を有する必要が無いので、セラミックス、琺瑯等の不透明な材料で構成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0029】
図1は、本発明の平面放電ランプ10の一例の構成を説明するための断面を模式的に示す図である。平面放電ランプ10は、例えばキセノン・ガスが放電ガスとして用いられた冷陰極管に分類されるものであって、有害な水銀を含まず、且つ全温度においてmsecオーダで立ち上がる応答性を備えている。
【0030】
図1において、平面放電ランプ10は、背面板12および表面板14が僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置されることにより、全体が薄型平箱状を成している。これら背面板12および表面板14は、それぞれ例えば150×200(mm)程度の大きさを備えたソーダライムガラス製のガラス平板から成るものであり、背面板12の厚さ寸法は1.1(mm)程度、表面板14の厚さ寸法は0.7(mm)程度である。これらはその周縁部に略沿って矩形に設けられた例えばソーダライムガラス製の側壁16を介して相互に気密に固着されており、それらの間に矩形の気密空間18が形成されている。この気密空間18内には、キセノン或いはキセノンを主成分とした混合ガス(例えば、キセノン90(%)、アルゴン10(%))が例えば40(kPa)(≒300(Torr))程度の圧力で封入されている。この封入ガスすなわち放電ガスのガス圧は、気密空間18内の全面で略一様な放電が発生するように定められたものである。このため、気密空間18内には、背面板12および表面板14の相互間隔すなわち気密空間18の高さ寸法を一定に保つと共に、その気密空間18を多数の発光区画20に区分するための例えば格子状の隔壁22が備えられている。
【0031】
上記の背面板12の内面(気密空間18側の一面)には、図2に平面視にて示すようにそれぞれ櫛形を成す第1電極24および第2電極26と、蛇行形成された共通電極28とが設けられている。第1電極24および第2電極26は櫛形の歯部にそれぞれ互いに平行な多数本の枝電極部30を有するもので、それら多数本の枝電極部30が電気的に絶縁させられた状態で互いに嵌め合わされている。前記共通電極28は、第1電極24および第2電極26の何れとも電気的に絶縁させられた状態で、それら多数本の枝電極部30の間を縫うように設けられている。第1電極24および第2電極26は、例えば220(μm)程度の幅寸法を備えたもので、厚膜スクリーン印刷法を用いてパターン形成された厚膜銀や、アルミニウムの蒸着後にエッチングによりパターン形成された薄膜アルミニウム等から成る。また、共通電極28は、例えば300(μm)程度の幅寸法を備えたもので、第1電極24および第2電極26と同様な材料で構成されている。これら第1電極24,第2電極26、共通電極28は例えば白色の誘電体層32に覆われている。誘電体層32は、例えば低融点ガラスおよびアルミナやチタニア等のフィラー等から成るものであって、例えば30〜100(μm)程度の厚さ寸法、例えば50(μm)程度で設けられている。
【0032】
背面板12の図2における上端部には、外部回路と接続するための端子部34,36,38が備えられており、上記第1電極24、第2電極26,共通電極28は、それら端子部34,36,38にそれぞれ接続されている。なお、上記図2は前記誘電体層32等を省略して電極22等の配設状態を表したもので、前記隔壁22の位置を破線で示した。前記図1は、この図2におけるI−I視断面に相当するものである。
【0033】
図3は、発光区画20の一部を拡大して隔壁22と電極24,26,28との位置関係を示す図である。前記第1電極24、第2電極26は、それぞれ隔壁22の格子に対して45度傾斜した向きに沿って設けられており、何れも矩形の発光区画20の対角線上に位置する。すなわち、格子に対して45度傾斜して斜め方向に並ぶ多数の発光区画20の中央部および2つの隅部を通っている。一方、前記共通電極28は、各発光区画20において上記第1電極24および第2電極26の両側に位置し、第1電極24が通る発光区画20の隅部、第2電極26が通る発光区画20の隅部を交互に通るように、すなわち、相互に隣接する発光区画20を順次に通るように形成されている。
【0034】
したがって、複数の発光区画20は、前記図2における上下方向および横方向の何れにおいても、第1電極24が中央部を通るものおよび第2電極26が中央部を通るものが交互に並んでいる。本実施例においては、第1電極24が通る発光区画20が第1発光区画群に属し、第2電極26が通る発光区画20が第2発光区画群に属する。したがって、本実施例においては、第1発光区画群に属する発光区画20が分布する範囲と、第2発光区画群に属する発光区画20が分布する範囲とは、互いに重なった状態にあり、各発光区画20は何れか一方のみに属し、双方に重複して属するものは無い。
【0035】
複数の発光区画20の各々は、中央部を通る電極が第1電極24および第2電極26の何れであるかが異なるが、全て同一の電極配設状態になっている。図3において右下部の発光区画20について例示するように、各発光区画20内には、中央部の1箇所に第1電極24または第2電極26が、隅部の2箇所に共通電極28が備えられているが、それらの発光区画20内に位置する部分の面積Sh、Sgは、中央部を通る電極面積Shが隅部を通る電極面積2Sgに略等しい関係にある。
【0036】
また、上記の隔壁22は、例えば低融点ガラスに適宜白色のフィラー等を添加した材料などで構成された多孔質体であって、例えば、0.1〜1.2(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度の高さ寸法と、0.1〜2(mm)程度の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法とを備え、例えば0.5〜10(mm)程度の範囲内、例えば1.2(mm)程度の中心間隔で設けられている。
【0037】
また、前記誘電体層32の表面であって、上記隔壁22の相互間には、発光区画20毎に予め定められたパターンで塗り分けられた蛍光体層44が備えられている。蛍光体層44の塗布厚みは例えば20〜100(μm)の範囲内、例えば70(μm)程度である。なお、図1においては、背面板12内面のみに蛍光体層44が設けられているが、表面板14内面にも蛍光体層を形成してもよい。表面板側に設ける場合には、光の射出の妨げとならないように5〜20(μm)の範囲内の膜厚とすることが好ましい。第1発光区画群および第2発光区画群でそれぞれ表示する表示パターンは、例えば、上記蛍光体層40の塗り分けによる色相変化にて形成し、補助的に、非点灯としたい発光区画20に蛍光体層40を設けないことで黒を表現する。
【0038】
このように構成される平面放電ランプ10は、例えば、図4に示すように、高周波インバータ回路42等を用いて、第1電極24および第2電極26の一方に例えば700(V)、20(kHz)程度の高周波正弦波またはパルスを印加すると共に、共通電極28を0(V)(すなわちGND)として駆動される。なお、図4において、インバータ46と第1電極24,第2電極26との間には、切換器44が設けられており、インバータ42の高圧側と第1電極24、第2電極26が択一的に接続される。一方が高圧側に接続されている間は、他方はフローティングにされる。この結果、第1電極24,第2電極26の一方と、共通電極28との間に駆動電圧が印加されるので、それらの間で放電が発生させられ、それによって生じた紫外線で蛍光体層40が発光させられる。なお、駆動電流の周波数や電圧、パルスの場合のパルス幅等は、平面放電ランプ10の大きさや封入ガス圧等に応じて適宜設定される。
【0039】
すなわち、本実施例によれば、高電圧が印加される第1電極24および第2電極26が各々によって発光させる第1発光区画群または第2発光区画群の一方に属する発光区画20のみを通るように設けられると共に、それら第1電極24および第2電極26の間を通って蛇行する共通電極28が全ての発光区画20を通るように設けられていることから、第1発光区画群の発光区画20から発光させる際には、第2発光区画群の発光区画20には、フローティングとされた第2電極26とGNDレベルの共通電極28のみが存在する。そのため、その第2発光区画群の発光区画20内で放電が発生し、延いては漏れ発光が生ずることが好適に抑制される。
【0040】
したがって、本実施例によれば、高圧側電極を第1電極24および第2電極26の2系統に分割し、インバータ42から印加される電圧を切換器44を用いて切り替えるだけの簡単な構成で、従来の1種の表示パターンのみが表示される表示面サイズで2種の表示パターンが表示できる利点がある。
【0041】
また、本実施例においては、前記のように電極24,26,28の各発光区画20内に位置する面積がSh≒2Sgの関係にあることから、漏れ発光が一層抑制されると共に、十分に高い絶縁耐圧が得られる。
【0042】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において上述した実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
図5は、異なる形状の隔壁46によって発光区画48を区画形成した平面放電ランプの隔壁46と電極28,50,52との位置関係を説明するための前記図3に対応する図である。
【0044】
図5において、隔壁46は、格子の幅寸法やピッチは前記隔壁22と同一であるが、格子の交点が発光区画48の内周側に拡大されたもので、発光区画48の各々は、隅部が面取りされることによって平面視において八角形を成すものとなっている。上記面取り部分の大きさは、斜め方向に並ぶ発光区画48,48の相互間隔Cが700(μm)となるように定められている。
【0045】
また、本実施例においても、背面板12上に前記図2に示したものと同一の平面形状で電極が設けられているが、第1電極50,第2電極52は、それらの枝電極部の長手方向において太幅部分と細幅部分とを周期的に備えた形状で設けられている。すなわち、発光区画48内においては、例えば220(μm)程度の幅寸法Aで設けられ、隔壁46の格子の交点部分では、例えば120(μm)程度の幅寸法Bで設けられている。なお、共通電極28は前記図3に示したものと同一構成である。
【0046】
図5におけるD−D視断面、E−E視断面を図6、図7にそれぞれ示す。なお、これら図6、図7では前記蛍光体層40の図示を省略した。第2電極52aに注目すると、図6に示す発光区画48内では、第2電極52aの幅寸法がA=220(μm)程度と大きいことから、共通電極28との放電ギャップg1が前記図3等に示した実施例と同一の170(μm)程度の大きさで、これらの間の放電条件には何ら変わりはない。この発光区画48内で電荷Q1が溜まるのは第2電極52a上であるから、電荷形成位置までの距離d1は誘電体層32の厚さ寸法に等しい大きさ、例えば50(μm)程度である。
【0047】
一方、図7に示すように、第2電極52aが隔壁46の下に位置する断面Eで考えると、第2電極52aの幅寸法がB=120(μm)程度すなわち図6に示す場合よりも100(μm)程度小さいため、第2電極52aと共通電極28との放電ギャップg2は220(μm)程度に拡大する。そのため、これらの間の放電が生じ難くなる。しかも、第1電極50が通る発光区画48内において電荷Q2が溜まるのは第2電極52aから最も近い位置にある隔壁46の付け根部分になるが、その第2電極52aから電荷形成位置までの距離d2は例えば294(μm)程度と大きくなる。
【0048】
上記のように、発光区画48内と隔壁46の交点下とでは、電荷形成位置までの距離dが著しく例えば6倍程度相違すると共に、電極面積も発光区画48内の方が大きくなっているので、誘電体層32の誘電率、電極面積、距離dによって決定される静電容量は、図6に示す場合と図7に示す場合とでは、6倍以上相違することとなる。そのため、上記構成では、第2電極52に高電圧を印加し、第1電極50をフローティングとしたとき、消灯させる発光区画48内で溜まる電荷Q2は極めて小さくなるので、隔壁46の交点下で電気力線の殆どが誘電体層32内に形成されることと相俟って、その消灯させる発光区画48内では放電が生じ難い。すなわち、前記図3等に示される場合に比較して漏れ発光が一層抑制される。
【0049】
因みに、前記図3に示す構成例において、幅寸法が一様な前記第1電極24,第2電極26に代えて上記第1電極50,第2電極52を設けた構成では、図7のd2に相当する寸法が142(μm)程度であるが、この条件では、例えば全点灯開始電圧が600(V)程度、漏れ開始電圧が752(V)程度で、動作マージンが152(V)程度である。これに対して、上記と若干条件が異なる例であるが、d2を294(μm)程度とした試験結果では、全点灯開始電圧が613(V)、漏れ開始電圧が876(V)程度で、動作マージンが263(V)まで拡大した。すなわち、格子の交点を発光区画48側に拡大した隔壁46を用いることによって、動作マージンを一層拡大して、漏れ発光が一層生じ難い平面放電ランプを得ることができる。
【0050】
しかも、上述したように第1電極50、第2電極52に細幅部分Bを設けることによって管全体の静電容量が小さくなる。そのため、使用可能なインバータの条件が緩くなる利点もある。
【0051】
また、上記構成によれば、隔壁46の交点部分が細幅とされていることから、印刷位置ズレが生じても前記d2の大きさが十分に大きく保たれるので、製造時の位置合わせマージンが拡大する利点もある。
【0052】
なお、上記図6、図7において、54は、発光区画48の相互間すなわち隔壁46上に設けられた黒色層である。黒色層54は、例えば、前記誘電体層32や隔壁46等を構成するガラス材料に適宜の黒色顔料を添加したガラスペーストを用いて形成される。
【0053】
また、上述した実施例においては、共通電極28をGND側に設定して駆動したが、共通電極28を高電圧側に設定して駆動することもできる。
【0054】
また、前述した駆動方法では、第1電極24に高電圧を印加する際には、第2電極26をフローティングにしたが、GNDとしても駆動可能である。また、図8に示すように、第1電極24,第2電極26に互いに位相が180度異なる正弦波を定常的に印加し、共通電極28に、第1電極24および第2電極26にそれぞれ位相が一致する2種類の正弦波を択一的に印加することで駆動することも可能である。このようにすれば、パターンAに示すように、印加したパルスの位相が共通電極28と第2電極26とで一致するときは、共通電極28と第1電極24との間で放電して第1発光区画群が発光表示され、パターンBに示すように、共通電極28と第1電極24とで一致するときは、共通電極28と第2電極26との間で放電して第2発光区画群が発光表示されるので、共通電極28に印加したパルスの位相反転で表示を切り替えることができる。
【0055】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の平面放電ランプの一例の断面構造を模式的に示す図である。
【図2】図1の平面放電ランプの電極配設形状を示す図である。
【図3】発光区画を拡大して隔壁と電極との位置関係を説明する図である。
【図4】図1の平面放電ランプの点灯方法を説明する図である。
【図5】本発明の他の実施例の平面放電ランプにおける隔壁と電極との位置関係を説明するための図3に対応する図である。
【図6】図5におけるD−D視断面を示す図である。
【図7】図5におけるE−E視断面を示す図である。
【図8】図1の平面放電ランプの点灯方法の他の例を説明するための駆動波形図である。
【符号の説明】
【0057】
10:平面放電ランプ、12:背面板、14:表面板、16:側壁、18:気密空間、20:発光区画、22:隔壁、24:第1電極、26:第2電極、28:共通電極、32:誘電体層、40:蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する表面板と、その表面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記表面板を通して射出する形式の平面放電ランプであって、
前記気密空間を複数の発光区画に区分するために前記背面板上に突設された隔壁と、
前記複数の発光区画の各々に設けられた蛍光体層と、
前記複数の発光区画の各々が重複して属することなく且つ各々に属する複数の発光区画の分布範囲が互いに重なるように定められたそれぞれ複数の発光区画から成る互いに異なる表示パターンを形成するための第1発光区画群および第2発光区画群と、
前記複数の発光区画のうち前記第1発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に設けられた第1電極と、
前記複数の発光区画のうち前記第2発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に前記第1電極と絶縁して設けられた第2電極と、
前記複数の発光区画の各々を通って前記背面板内面に設けられ且つ前記第1電極および前記第2電極との間で択一的に放電するための共通電極と、
前記第1電極、前記第2電極、および前記共通電極を覆う誘電体層と
を、含むことを特徴とする平面放電ランプ。
【請求項2】
前記第1電極および前記第2電極は各々櫛形を成し且つそれらの歯部において互いに嵌め合わされたものであり、前記共通電極はそれら第1電極および第2電極間を蛇行するものである請求項1の平面放電ランプ。
【請求項3】
前記隔壁は格子状を成すものであり、前記複数の発光区画は前記第1発光区画群に属するものと前記第2発光区画群に属するものとが互いに隣接して位置するものである請求項1または請求項2の平面放電ランプ。
【請求項4】
前記複数の発光区画の各々において前記共通電極と前記第1電極および前記第2電極とは一方が中央部を通り且つ他方が隅部を通るものであって、隅部を通る電極の面積が中央部を通る電極の面積の同一以上且つ1.5倍未満である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の平面放電ランプ。
【請求項5】
前記第1電極および前記第2電極は前記複数の発光区画の各々の中央部を通るものであり、前記共通電極は前記複数の発光区画の各々の周縁部を通るものである請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の平面放電ランプ。
【請求項6】
前記第1電極および前記第2電極は、前記隔壁の交点を通るものであり且つ前記複数の発光区画の各々における幅寸法がその隔壁の交点における幅寸法よりも大きくされたものである請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の平面放電ランプ。
【請求項7】
前記共通電極は前記隔壁の交点下に一部が位置するものである請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の平面放電ランプ。
【請求項8】
前記隔壁は交点が前記複数の発光区画の各々の内周側に拡大されることによって前記共通電極の一部を覆うものである請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の平面放電ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−231119(P2009−231119A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76466(P2008−76466)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】