説明

平面繭に芳香を付けた素材の加工方法とその製品

【課題】 抗菌性、抗酸化性、保湿性、吸臭性、抗紫外線など、人間の肌に有効に作用する特性を有する絹蛋白質であるセリシンを失うことなく、さらに加工を容易にし、装飾的にかつ日常手軽にアロマテラピー効果が得られる製品を提供する。
【解決手段】 絹蛋白質であるセリシンを損なうことなく容易に加工可能な平面繭を、造花、アクセサリー、インテリア用品等に加工し、これに多孔構造を有する平面繭にエッセンシャルオイルを含ませた素材を、開閉自在の金属容器、もしくは金属製の筒を用いて、着脱自在に出来るように取り付けるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔構造を有する平面繭の吸着性を利用し、エッセンシャルオイルを含ませた新しい芳香の素材である。容易に加工可能なこの素材を造花、アクセサリー、インテリア用品などに加工し、装飾的かつ日常、手軽にアロマテラピー効果を得る事ができるものである。
【背景技術】
【0002】
ストレスの多い現代社会において、近年、脳医学は目覚しい進歩をとげ、芳香の効果が客観的に解明されている。アロマテラピーとは芳香療法、すなわち香りを使った療法であり、花や果実、葉、枝等から抽出した香り豊かなエッセンシャルオイルによって脳を刺激し、人間が生まれつき持っている自然治癒力を呼び覚ますものである。一般的なアロマテラピーとしては、ルームフレグランス、マッサージ、湿布、アロマバス、スキンケア、ヘアケア等が挙げられる。また、アロマテラピーで使用するエッセンシャルオイルとは、ハーブやスパイスの葉の表面にある香りの成分を含んでいる油胞という微細な球状の袋を、主として水蒸気蒸留法、圧搾法、溶剤抽出法のいずれかで植物から抽出したものである。このエッセンシャルオイルは成分が濃いため、直接衣服や肌に付着すると刺激が強すぎ、油染みになる場合もある。
【0003】
一方、繭糸の吸着性を利用した芳香剤には蛹を取り除いた一端に開口部を有する繭から成る担持体に、脱臭性成分及び芳香性成分の中から選ばれた少なくとも1種の消臭成分を保持させたことを特徴とする消臭剤が提供されているのは公知である。(例えば、特許文献1参照。)。繭糸は大まかにフィブロンとセリシンの2種類の絹蛋白質に分けられる。蚕の体内にある左右一対の絹糸腺から吐糸される2本のフィブロンがセリシンで覆われ固着され1本の繭糸を構成している。フィブロンを覆ったセリシンは抗菌性、抗酸化性、保湿性、吸臭性、抗紫外線等、人間の肌に有効に作用する特性を有している。
【0004】
【特許文献1】 特開平10−225509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に述べた一般的なアロマセラピー(ルームフレグランス、マッサージ、湿布、アロマバス、スキンケ、ヘアケア等)は、いずれも時間と場所の確保が必要であり、簡便さに欠けている。また、エッセンシャルオイルは成分が濃いために、直接衣服や肌に付着すると油染みになる場合があるという問題点も有している。さらに、繭糸の吸着性を利用し、蛹を取り除いた一端に開口部を有する繭から成る担持体に、脱臭性成分及び芳香性成分の中から選ばれた少なくとも1種の消臭成分を保持させたことを特徴とする前出の消臭剤は、蚕が蛹となった時に自身を保護する目的でその周囲に作る多重繊維層から成る中空の殻である繭を使用しており、その硬度から加工の容易性に欠けている。その加工に際しては薬品や石鹸水等で煮溶かす必要があり、その過程において抗菌性、抗酸化性、保湿性、吸臭性、抗紫外線等、人間の肌に有効に作用する特性を有する絹蛋白質であるセリシンは、水溶性であるために流失する。
【0006】
本発明は、抗菌性、抗酸化性、保湿性、吸臭性、抗紫外線等、人間の肌に有効に作用する特性を有する絹蛋白質であるセリシンを損なうことなく、さらに加工を容易なものにし、装飾的にかつ日常、手軽にアロマテラピー効果が得られる製品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するため、絹蛋白質であるセリシンを損なうことなく、さらに加工が容易である平面繭に着目した。通常、蚕が繭を作るためにはある程度の突起が必要でそこに楕円形の繭を作るが、平面繭は特別に手をかけ、蚕に絹糸を平らに吐かせることにより作られたシート状の繭である。水平かつ平面な板状の吐糸座を作成し、1mあたり250頭の蚕を振り込み、蚕が重層に移動しながら吐糸することで、シート状の繭である平面繭が作られる。平面繭の厚さは振り込む蚕の頭数によって調整可能であり、用途におうじて様々な厚みの平面繭を作ることが出来る。以上から、既にシート状である平面繭は加工の際に薬品や石鹸水等で煮溶かす必要がなく、絹蛋白質であるセリシンを損なうことなく加工が可能である。さらに、平面繭には蚕が吐糸する際に不規則な空間が生じ多孔構造となり、空気や湿気、臭いの吸着性に優れている。これに着目し、エッセンシャルを含ませ芳香を保持させた。
【0008】
以上の、容易に加工可能な平面繭を造花、アクセサリー、インテリア用品等に加工し、これに多孔構造を持つ平面繭にエッセンシャルオイルを含ませた素材を、開閉自在の金属容器もしくは金属製の筒を用いて着脱自在に出来るように取り付ける。
【発明の効果】
【0009】
前述の通り本発明は絹繊維の特性である抗菌性、抗酸化性、保湿性、吸臭性、抗紫外線等を損なうことなく容易に装飾性を有する造花、アクセサリー、インテリア用品等に加工することが出来る。
【0010】
また、上記の造花、アクセサリー、インテリア用品等に、エッセンシャルオイルを含ませた平面繭を着脱自在に出来るように取り付けることで、装飾性を有し、かつ日常、手軽で様々な場面に応じたアロマテラピーが可能になるのである。
【0011】
なお、開閉自在の金属容器もしくは金属製の筒を使用することで、エッセンシャルオイルの問題点である、衣服や肌に直接付着すると刺激が強すぎ油染みになることを防ぐことが出来る。また、時間の経過によりエッセンシャルオイルの芳香が弱くなった場合でも、改めてエッセンシャルオイルを補うことにより、繰り返し芳香の持続を維持することが可能である。さらに、通常、一旦芳香を付けると芳香が自然に消えるのを待たねばならないが、芳香がふさわしくない場面に遭遇した場合でも、すぐに芳香を取り外すことが出来る。かつ、別のエッセンシャルオイル、もしくは2種類以上を調合したエッセンシャルオイルを含ませた平面繭と入れ替えることも可能なので、そのときの心身の状態に適したアロマテラピー効果を持つものを適宜選択することが可能である。
【0012】
以上の様な平面繭と芳香をあわせた利用方法を展開することで、平面繭の需要を促進し、衰亡の一途をたどる養蚕業に活気をもたらすことが期待できる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0014】
図1のアクセサリーにおいては、1の金属製の開閉自在用容器の一面に穴をあけ、薬用植物にて染色した平面繭で作った造花2を1の外部に取り付ける。逆面の外部にコサージュピン等のアクセサリー用金具4を取り付け、内部にエッセンシャルオイルを含ませた平面繭3を入れる。時間の経過によりエッセンシャルオイルの芳香が弱くなった場合は、3の平面繭にエッセンシャルオイルを補充することが出来る。または、エッセンシャルオイルを含ませた平面繭と交換することが出来る。
【0015】
図2における造花は、6の薬用植物にて染色した平面繭を立体的な造花に加工し、その造花の背後に金属製の筒5を取り付ける。この金属製の筒5にエッセンシャルオイルを含ませた平面繭3を差し込む。芳香が弱くなったら、改めて3の平面繭にエッセンシャルオイルを含ませるか、新しくエッセンシャルオイルを含ませた平面繭と差し替える。
【0016】
図3におけるランプシェードは、支柱7に5の金属製の筒を取り付け、エッセンシャルオイルを含ませた平面繭3を5の金属製の筒に差し込む。薬用植物にて染色した平面繭でランプシェード8を作り、7の支柱に取り付ける。芳香が弱くなったら、改めて3の平面繭にエッセンシャルオイルを含ませるか、新しくエッセンシャルオイルを含ませた平面繭と差し替える。電球の発するほのかな熱で温められたエッセンシャルオイルは揮発性が高まり、芳香を周囲に拡散させ、ルームフレグランスを楽しむことが出来、さらに平面繭の多孔構造により光の不規則な屈折が生じ、まろやかな光を得ることが出来る。
【0017】
図4におけるタペストリーは、薬用植物にて染色した平面繭でタペストリー9を作り、その一部に5の金属製の筒を取り付け、エッセンシャルオイルを含ませた平面繭3を5の金属製の筒に差し込む。芳香が弱くなったら、改めて3の平面繭にエッセンシャルオイルを含ませるか、新しくエッセンシャルオイルを含ませた平面繭と差し替える。
【0018】
以上、3の平面繭に含ませるエッセンシャルオイルは、スイートオレンジ、マンダリン、ベルガモット、グレープフルーツ、レモン、レモングラス、レモンバーベナ、レモンユーカリ、レモンバーム、ラベンダー、カモマイル、ローズ、ゼラニウム、ネロリ、ジャスミン、プチグレン、イランイラン、パチュリー、サンダルウッド、ベチバー、ブラックペッパー、ジュニパー、カユプテ、シダー、ウインターグリーン、ユーカリ、ティートゥリー、ペパーミント、スペアミント、クラリーセージ、ローズウッド、ローズマリー、フェンネル、等が挙げられる。これらのエッセンシャルオイルを1種類、もしくは2種類以上を調合し、心身の状態に適したアロマセラピー効果の得られるものを選択して使用する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明であるエッセンシャルオイルを含ませた平面繭を開閉自在の金属容器に収めて使用するアクセサリーの開いた状態の図。
【図2】 本発明であるエッセンシャルオイルを含ませた平面繭を金属製の筒に収めて使用する造花の図
【図3】 本発明であるエッセンシャルオイルを含ませた平面繭を金属製の筒に収めて使用するランプシェードの内部図および外部図。
【図4】 本発明であるエッセンシャルオイルを含ませた平面繭を金属製の筒に収めて使用するタペストリーの図。
【符号の説明】
【0020】
1 開閉自在の金属容器
2 薬用植物で染色した平面繭で作った造花
3 エッセンシャルオイルを含ませた平面繭
4 アクセサリー用金具
5 金属製の筒
6 薬用植物で染色した平面繭で作った立体的な造花
7 ランプシェードの支柱
8 薬用植物で染色した平面繭で作ったランプシェード
9 薬用植物で染色した平面繭で作ったタペストリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性、抗酸化性、保湿性、吸臭性、抗紫外線など、人間の肌に有効に作用する特性を有する絹蛋白質であるセリシンを失うことなく、さらに加工が容易な平面繭の多孔構造に着目し、これにエッセンシャルオイルを含ませ、芳香を保持させた新しい芳香の素材。
【請求項2】
「請求項1」記載の素材を、開閉自在の金属容器もしくは金属製の筒を用いて、平面繭にて造作された造花、アクセサリー、インテリア用品等に取り付けたアロマテラピー効果と装飾性を併せ持った製品。
【請求項3】
「請求項1」記載の素材及び「請求項2」記載の製品の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52515(P2006−52515A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263060(P2004−263060)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(504343627)
【出願人】(503425894)
【出願人】(504343650)
【出願人】(504343672)
【Fターム(参考)】