説明

幹細胞の分離材および分離方法

【課題】本発明は、体液、または、生体組織の処理液から、幹細胞を選択的に分離し、簡便に回収することが可能な、幹細胞分離材および幹細胞分離フィルター、幹細胞の分離・回収方法、および該方法により得られる幹細胞を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、密度Kが1.0×10≦K≦1.0×10であり、かつ、繊維径が3〜40μmであることを特徴とする幹細胞分離材;上記幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなる幹細胞分離フィルター;上記幹細胞分離材または幹細胞分離フィルターを用いた、幹細胞の分離・回収方法;多分化能を有する細胞画分の生産方法;幹細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄液、末梢血および臍帯血等の体液、または、生体組織の処理液から、幹細胞を選択的に捕捉・回収するための幹細胞分離材、幹細胞分離フィルター、並びにその処理方法、該処理方法により得られた幹細胞に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年になって、骨髄液、臍帯血中には、骨、軟骨、筋肉、脂肪等の多様な細胞に分化し得る性質を持った付着性の幹細胞が存在することが明らかになってきている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。付着性の幹細胞は多種多様な細胞、臓器に分化し得る能力を有しているので、該細胞を効率良く分離・増幅させる方法は再生医療発展の見地から極めて重要である。付着性の幹細胞は骨髄液中に成人で10から10個に1つ程度の数という非常に存在頻度が少ないことが報告されており(非特許文献4)、付着性の幹細胞画分を分離・濃縮後に回収する方法が種々検討されている。例えばPittengerらは、密度勾配分離方法であるフィコールパック分画法を用いて比重1.073の分画に脂肪、軟骨、骨細胞への分化前駆細胞が存在することを見出している(非特許文献4)。関谷らもフィコールパック分画法で比重分画した細胞を用いて軟骨への分化を試みている(非特許文献5)。また、脇谷らは、デキストランを用いて赤血球以外の画分の細胞を取得し、この細胞での軟骨への分化を試みている(非特許文献6)。しかしながら、上記フィコールは、医薬品GMPに準拠して製造されておらず、実際の治療を目的として用いることはできない。また、デキストランを用いた自然沈降方法は、医薬品準拠したデキストランを用いることができるが、赤血球層以外の画分に付着性の幹細胞が他の有核細胞と共存して分離され、必ずしも分離という観点からは最善の方法ではない。またこれらの方法は、付着性の幹細胞の回収率は高いものの、分離液と細胞を分けるために遠心分離器を使用して細胞を数回洗浄する操作が必要であり、操作性が煩雑、遠心操作による細胞のダメージや、開放系での操作によるコンタミネーションの危険がともなう。さらに遠心分離器等による細胞の洗浄操作を必要としない、付着性の幹細胞を選択的に分離するデバイス製品は存在しないのが現状である。このような理由から、実際に付着性の幹細胞を分離、回収する場合には、骨髄液や臍帯血をそのまま培養して、非付着性の細胞を洗浄し、付着性の細胞を得るという例が多数報告されている(例えば非特許文献7)。
【0003】
また、生体組織、例えば、脂肪、皮膚、血管、角膜、口腔、腎臓、肝臓、膵臓、心臓、神経、筋肉、前立腺、腸、羊膜、胎盤、臍帯等には、その生体組織の源となる幹細胞が存在すると言われている。しかしながら、近年、これら幹細胞の中には、同組織系統の細胞だけでなく別系統の細胞にまで分化する能力を有する幹細胞が存在することが明らかとなってきた(非特許文献8)。例えば、脂肪組織から採取した間葉系幹細胞は成熟脂肪細胞だけでなく、骨細胞、軟骨細胞、筋芽細胞、血管内皮細胞等へと分化可能であり(非特許文献9、10)、皮膚幹細胞は神経細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞等へと分化可能であると報告されている(非特許文献11)。このような多分化能を有する生体組織由来幹細胞を効率良く分離・採取する方法は再生医療発展の見地から極めて重要であり、難治性の幹細胞疲弊疾患、骨疾患、軟骨疾患、虚血性疾患、組織陥没症、心不全等に対する根治療法となる可能性を秘めている。生体組織由来幹細胞を分離・採取する方法としては、一般的に消化酵素で組織を分解せしめた後に遠心分離により細胞を得る方法が汎用されているが(非特許文献8)、その他にも種々検討されており、例えば、Hedrickらは、装置内で脂肪組織から幹細胞を回収、処理、抽出、濃縮するシステムおよび方法(特許文献2)や、自動装置を用いて組織から幹細胞を遠心分離・濃縮するシステムと方法(特許文献3)等を開示している。吉村らは、脂肪吸引時に生ずる水溶液層から密度勾配遠心方法、もしくはASTEC204(AMCO社製)を用いて脂肪組織由来の幹細胞を採取する方法(特許文献4)や、Ficoll等種々の方法を用いて回収する方法(特許文献5)を開示している。畑中は、生体由来材料から遊離させた細胞懸濁液を密度勾配遠心した後、フィルターに通過させて特定型群を捕捉し、回収する方法を開示している(特許文献6)。田畑らは、脂肪組織をコラゲナーゼで分解し、遠心操作した後、細胞を培養皿に接着させることにより白血球を除去する方法を開示している(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/83709号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/053346号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/012480号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/042730号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/035738号パンフレット
【特許文献6】特開2003−319775号公報
【特許文献7】国際公開第2003/008592号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pliard A.et al.:Conversion of an Immortilized Mesodermal Progenitor Cell Towards Osteogenic,Chondrogenic,or Adipogenic Pathways.J.Cell Biol.130(6):1461−72(1995)
【非特許文献2】Mackay A.M.et al.:Chondrogenic differentiation of cultured human mesenchymal Stem Cells from Marrow,Tissue Engineering 4(4):415−428(1998)
【非特許文献3】Angele P.et al.:Engineering of Osteochondoral Tissue with Bone Marrow Mesenchymal Progenitor Cells in a Derivatived Hyaluronan Geration Composite Sponge,Tissue Engineering 5(6):545−553(1999)
【非特許文献4】Pittenger.et al.Multilineage Potential of Adult Human Mesenchymal Stem Cells,Science 284:143−147(1999)
【非特許文献5】Sekiya.et al.In vitro Cartilage Formation by human adult Stem Cells from Bone Marrow Stroma defines the sequence cellular and molecular events during chondrogenesis,Developmental Biology 7(99):4397−4402(2002)
【非特許文献6】Wakitani.et al.Human autologus culture expanded Bone Marrow Mesenchymal Cell Transplantation for repair of Cartilage defects in Osteoarthritic Knees,OsteoArthritis Reserch Society International (2002)10,199−206
【非特許文献7】Tsutsumi.et al.Retention of Multilineage Differentiation Potential of Mesenchymal Cells During Proliferation in Response to FGF,Biochemical and Biophysical Reserch Communications 288,413−419(2001)
【非特許文献8】田畑泰彦、ここまで進んだ再生医療の実際(2003年)
【非特許文献9】Patricia A.Zuk,et al.:Multilineage cells from human adipose tissue:Implications for cell−based therapies.Tissue Engineering Vol.7(2):211−228(2001)
【非特許文献10】Ying Cao,et al.:Human adipose tissue−derived stem cells differentiate into endothelial cells in vitro and improve postnatal neovascularization in vivo.Biochemical and Biophysical Research Communications 332:370−379(2005)
【非特許文献11】Toma JG,et al.:Isolation of multipotent adult stem cells from the dermis of mammalian skin.Nature cell biology 3:778−784(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の従来技術では達成され得なかった、骨髄液、末梢血および臍帯血等の体液から、または、生体組織の処理液から、幹細胞を選択的に分離し、簡便に回収することが可能な、幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを提供すること、並びに、該幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを用いて幹細胞を分離・回収する方法、および該方法により得られる幹細胞を提供することにある。
【0007】
本発明者らは、骨髄液、末梢血および臍帯血等の体液中に存在する付着性の幹細胞と、密度K、材質、目開き、繊維径等を変えた幹細胞分離材との相互作用について、鋭意検討した。また、本発明者らは、生体組織の処理液の特徴である、分解処理によって生じる膨大な組織由来夾雑物から、含まれる生体組織幹細胞を分離するための、幹細胞分離材の密度K、材質、目開き、繊維径等について鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、幹細胞分離材の密度Kと繊維径の違いにより、さらには材質、目開きの違いにより、上記各幹細胞との親和性が大きく異なり、特定の範囲内で当該幹細胞の分離・回収率が非常に高くなり、捕捉された幹細胞は細胞回収液にて簡便に回収され、回収された幹細胞は多分化能があることを見出し、本発明に至った。さらに、該幹細胞分離材を容器に入れた幹細胞分離フィルターは、体液中に分離剤を添加する必要もなく、遠心分離操作なしに、非常に簡便で、しかも閉鎖系で目的の幹細胞を分離、回収することが可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって、本発明は以下の通りである。
〔1〕
密度Kが1.0×10≦K≦1.0×10であり、かつ、繊維径が3〜40μmであることを特徴とする幹細胞分離材。
〔2〕
ポリエステル、レーヨン、ポリオレフィン、ビニロン、ポリスチレン、アクリル、ナイロンおよびポリウレタンから選ばれる少なくとも1種の合成高分子からなる〔1〕記載の幹細胞分離材。
〔3〕
ポリエステルおよびポリプロピレン;レーヨンおよびポリオレフィン;またはポリエステル、レーヨンおよびビニロンの合成高分子の組み合わせからなる〔1〕または〔2〕記載の幹細胞分離材。
〔4〕
目開きの短径が3μm以上かつ長径が120μm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔5〕
不織布の形態である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
【0009】
〔6〕
幹細胞が、体液由来の付着性の幹細胞である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔7〕
体液が、骨髄液、末梢血および臍帯血から選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔8〕
赤血球、白血球が実質的に通過可能であることを特徴とする〔6〕または〔7〕に記載の幹細胞分離材。
〔9〕
幹細胞が、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚および血管からなる群より選択される1種以上の生体組織由来の幹細胞である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の幹細胞分離材。
〔10〕
密度Kが1.0×10≦K≦2.0×10であることを特徴とする請求項〔9〕記載の幹細胞分離材。
【0010】
〔11〕
〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなることを特徴とする幹細胞分離フィルター。
〔12〕
液流入部あるいは、液流入部以外の液流入側に、幹細胞分離材内にとどまっている不要細胞および不要物を洗浄するための洗浄液流入部を備え、かつ、液流出部あるいは、液流出部以外の液流出部側に、幹細胞分離材に捕捉された細胞を回収するための細胞回収液流入部を備えてなる〔11〕に記載の幹細胞分離フィルター。
〔13〕
幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックを、液流入部または洗浄液流入部、あるいは、液流入部および洗浄液流入部以外の液流入側に備えてなる〔12〕記載の幹細胞分離フィルター。
〔14〕
幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックが、細胞培養可能なバックであることを特徴とする〔13〕記載の幹細胞分離フィルター。
〔15〕
〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の幹細胞分離材、または〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載の幹細胞分離フィルターを使用して、体液または生体組織の処理液中から、幹細胞を分離、回収する方法。
【0011】
〔16〕
体液または生体組織の処理液を、〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載の幹細胞分離フィルターの液流入部より幹細胞分離フィルターに導入し、液流入側から洗浄液を流して洗浄し、次に液流出側から細胞回収液を流すことにより、幹細胞分離材に捕捉した幹細胞を回収することを特徴とする幹細胞回収方法。
〔17〕
体液が、骨髄液、末梢血および臍帯血から選ばれる少なくとも1種である〔16〕記載の幹細胞回収方法。
〔18〕
生体組織の処理液が、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚および血管からなる群より選択される1種以上の生体組織を分解して得られる処理液である〔16〕記載の幹細胞回収方法。
〔19〕
体液または生体組織が哺乳動物由来である〔16〕〜〔18〕のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
〔20〕
〔16〕〜〔19〕のいずれかに記載の幹細胞回収方法によって回収された幹細胞を、さらに増幅することを特徴とする、多分化能を有する細胞画分の生産方法。
〔21〕
〔16〕〜〔19〕のいずれかに記載の幹細胞回収方法により得られた幹細胞。
【発明の効果】
【0012】
本発明の幹細胞回収方法によれば、体液、または、生体組織の処理液から、幹細胞を選択的に分離し、簡便に回収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1〜5、比較例3、参考例1の軟骨形成評価の結果を示す図。
【図2】実施例で使用したウサギの皮下脂肪組織(処理前)を示す図。
【図3】実施例で使用したウサギの皮下脂肪組織の処理液を示す図。
【図4】実施例・比較例で使用した通液前液と、実施例7〜8、比較例6〜8の回収液それぞれに含まれる細胞のコロニー形成能試験結果を示す図。
【図5】実施例7の通液前液(A)、回収液(B)、洗浄液を含む通過後液(C)のフローサイトメーターによる解析結果を示す図。
【図6】実施例7および8の回収液中の組織由来細胞の脂肪細胞への分化と骨分化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の幹細胞分離材は、密度Kが1.0×10≦K≦1.0×10であり、かつ、繊維径が3〜40μmであることを特徴とするものである。
【0015】
幹細胞としては、特に限定されないが、体液由来の付着性の幹細胞、生体組織由来の幹細胞等が好適に挙げられる。
【0016】
本発明の幹細胞分離材は、はじめに体液を通液することにより、赤血球、白血球、血小板等の不要細胞を通過させ、有用細胞である付着性の幹細胞を捕捉することが可能である。次に、体液を通過させた方向と同方向に、幹細胞分離材中に留まっている不要細胞を洗浄するための洗浄液を通液することにより、幹細胞分離材中に留まっている赤血球や白血球、血小板を洗浄除去することが可能である。さらに、体液および洗浄液を流した方向と逆方向から、目的細胞の回収液を流すことにより、付着性の幹細胞を簡便に、高収率で分離・回収することが可能である。
【0017】
本発明における体液とは、血液(末梢血、G−CSF動員末梢血を含む)、骨髄液、臍帯血等であり、付着性の幹細胞を含むものを指す。
また、本発明における体液には、上記体液の稀釈液;フィコール、パーコール、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、バクティナーチューブ、リンフォプレップ等を使用し、比重密度遠心分離法により、上記体液に前処理を施して調製された細胞懸濁液等も含まれる。
【0018】
本発明における付着性の幹細胞とは、培養皿に付着して増殖し、分化能を有することを特徴とする細胞をいう。具体的には、間葉系幹細胞、多能性成体幹細胞(Multipotent Adult Progenitor Cells:MAPCs)、骨髄ストローマ細胞等、多分化能を有する細胞等を指す。
【0019】
間葉系幹細胞とは、体液中から分離され、自己増殖を繰り返す能力を有し、下流の細胞系譜への分化が可能な細胞を指す。この間葉系幹細胞は、分化誘導因子により中胚葉系の細胞、例えば、骨芽細胞や軟骨細胞、血管内皮細胞、心筋細胞等、あるいは、脂肪、歯周組織構成細胞であるセメント芽細胞、歯周靱帯繊維芽細胞等へ分化する細胞である。心筋梗塞や拡張型心筋症の心筋に移植すると、心筋に分化し、また、VEGF等サイトカイン分泌により心筋保護、心機能改善効果を生じる。ラット骨髄由来間葉系幹細胞は、拡張性心筋症モデルの心筋に移植すると5週間後に心筋や血管内皮細胞に分化し、血管密度の増強、線維化の抑制を生じ、心機能を改善することが報告されている(Nagaya N et al. Circulation. 2005 Aug 23;112(8):1128−35)、(Nagaya N et al. Am J Physiol Heart Circ Physiol(July 29, 2004).10.1152)。
ヒト間葉系幹細胞を用いても、上記と同様の効果が認められる。即ち、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞をマウス心筋に移植すると心筋に分化し、デスミン、beta−ミオシン重鎖、alpha−アクチニン、心筋トロポニンT、フォスフォランバン等の心筋特異的蛋白質を発現する(Toma C et al. Circulation. 2002 Jan 1;105(1):93−8)。ヒト間葉系幹細胞をブタ心筋梗塞病変に移植すると生着し、alpha−ミオシン重鎖やトロポニンI陽性の心筋が出現し、心機能の改善効果を生じる(Min JY Ann Thorac Surg. 2002 Nov;74(5):1568−75)。また、心筋ペースメーカー遺伝子mHCN2を強制発現させたヒト間葉系幹細胞をイヌ心筋に移植すると電気的シグナルを伝達する(Potapova I et al. Circ Res. 2004 Apr 16;94(7):952−9)。上記のように、間葉系幹細胞の移植により、心疾患における心機能の改善を生じることができる。
【0020】
多能性成体幹細胞とは、分化誘導因子により中胚葉系以外の細胞、例えば、神経細胞、肝細胞にも分化する可能性のある細胞をいうが、これらに限定されるものではない。
骨髄ストローマ細胞とは、骨髄細胞中、未熟および成熟血液細胞を除く全ての付着性細胞成分を指す。以上に挙げた付着性の幹細胞に共通する特徴的な細胞表面抗原として、CD13,29,44,49b,49d,49e,71,73,90,105,166,classIMHC,classIIMHC等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここでいう培養皿とは、一般的に細胞培養に使用されているポリスチレン製の細胞培養シャーレやフラスコ等が挙げられ、また、該シャーレやフラスコに、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等の細胞外マトリックス成分のタンパク質や、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等の多糖類をコーティングしたものでもよい。
【0021】
また、本発明の幹細胞分離材は、生体組織の処理液(つまり、生体組織を含んだ処理液)を通液することにより、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物や分解に使用した酵素等の不要物を通過させ、有用細胞である生体組織幹細胞を捕捉することが可能である。次に、上記処理液を通過させた方向と同方向に、幹細胞分離材に溜まっている不要物を洗浄するための洗浄液を通液することにより、幹細胞分離材に溜まっている脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物や分解に使用した酵素等の不要物を洗浄除去した後に、処理液および洗浄液を流した方向と逆方向から、目的細胞の回収液を流すことにより、生体組織幹細胞を簡便に、高収率で回収することが可能である。
【0022】
本発明における生体組織の処理液とは、例えば、上記、生体組織を酵素により分解せしめた処理液(酵素分解処理液)、破砕により分解せしめた処理液(破砕処理液)、擦過により分解せしめた処理液(擦過処理液)、振盪抽出により分解せしめた処理液(浸透抽出処理液)、美容形成で行なわれる脂肪吸引法により分解せしめた処理液(脂肪吸引処理液)等が挙げられる。当該生体組織の処理液は、上記分解方法を単独で用いた処理液であってもよいし、上記分解方法を組み合わせた処理液であってもよい。また、上記処理と遠心分離操作を組み合わせた濃縮懸濁液であってもよい。
【0023】
具体的には、酵素分解処理液とは、コラゲナーゼ、メタロプロテアーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、キモトリプシン、ヒアルロニダーゼ、ペプシン、アミノペプチダーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、またはそれらのリコンビナント等の消化酵素やその混合物で生体組織を分解せしめた処理液を意味する。当該分解は、任意の濃度、温度の水溶液中で達することができる。生体組織を短時間に、かつ低侵襲で分解するという観点から、好ましくは、消化酵素として、コラゲナーゼ、メタロプロテアーゼ、ディスパーゼ、トリプシンを使用するのがよい。
破砕処理液とは、水溶液中で超音波もしくは鋭利な刃等で生体組織を粉々に破砕することにより、生体組織を分解せしめた処理液を意味する。
擦過処理液とは、濾し器等を使用して生体組織を粉砕せしめた処理液を意味する。
振盪抽出処理液とは、生体組織を水溶液中で激しく振盪することにより、生体組織を含んだ処理液を調製することを意味する。
脂肪吸引処理液とは、超音波脂肪吸引、パワードリポサクション、シリンジ吸引等、一般的な美容形成で行なわれている方法で、脂肪等の生体組織を採取・分解処理した処理液を意味する。
さらに、適時これらの方法に遠心分離等の操作を加えても良い。例えば、酵素分解処理液を遠心分離し、含まれる細胞を沈降させた後、上澄みを除去し、沈降した細胞塊を緩衝液等で懸濁させた処理液(濃縮懸濁液)であってもよい。
【0024】
しかしながら、本発明の生体組織の処理液としては、上記のものに限定されず、上記生体組織の処理液の稀釈液;フィコール、パーコール、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、バクティナーチューブ、リンフォプレップ等を使用し、比重密度遠心分離法により、上記生体組織の処理液に前処理を施して調製された、生体組織を含んだ細胞懸濁液等も使用できる。
【0025】
本発明における生体組織とは、生体組織幹細胞(つまり、生体組織由来の幹細胞)を含む、体液以外のあらゆる生体組織を意味し、具体的には、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚、血管、角膜、口腔、腎臓、肝臓、膵臓、心臓、神経、筋肉、前立腺、腸、羊膜、胎盤、臍帯等が挙げられる。生体組織幹細胞を多く含むという観点では、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚、血管のいずれか、あるいはそれらの混合物が好ましい。本発明においては、末梢血、骨髄液、臍帯血等の体液そのものは生体組織としては除外されるが、生体組織中に若干量の体液が混入していることを妨げない。
【0026】
本発明における生体組織幹細胞とは、培養皿に接着した後にコロニーまたはクラスターを形成しながら増殖する細胞、またはフィーダーレイヤーの上でコロニーまたはクラスターを形成しながら増幅する細胞であり、かつ多分化能を有する細胞をいう。具体的には、脂肪組織由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間質幹細胞、表皮幹細胞、真皮幹細胞、血管内皮幹細胞、角膜輪部幹細胞、口腔上皮幹細胞、腎臓体性幹細胞、肝幹細胞、膵臓β細胞の幹細胞、心臓の幹細胞、神経幹細胞、筋肉幹細胞、前立腺幹細胞、腸管上皮幹細胞、羊膜由来間葉系幹細胞、胎盤由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞等、組織の源となる幹細胞を指す。これら幹細胞は、自己増殖を繰り返す能力を有し、下流の細胞系譜への分化が可能な細胞であり、また、その由来系統の細胞だけでなく、別系統の細胞にまで分化する能力を有する細胞である。
また、ここでいう培養皿とは、上記と同様のものが挙げられる。
【0027】
本発明における組織由来夾雑物とは、生体組織を上記手法で分解せしめた際に生ずる、生体組織由来の生体組織幹細胞成分以外の成分をいう。具体的には、組織を構成するコラーゲン、多糖類、脂質、膜成分、およびその複合体や分解物、その不溶性残渣等の他、生体組織中に含まれる赤血球、白血球、血小板等を指す。本発明における脂肪滴とは、生体組織を分解せしめた際に生ずる脂質由来の油滴を指し、生体組織の処理液を顕微鏡等で観察することにより容易に確認できる。
【0028】
本発明の幹細胞分離材の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン、レーヨン、ビニロン、ポリスチレン、アクリル(ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリレート等)、ナイロン、ポリウレタン、ポリイミド、アラミド、ポリアミド、キュプラ、ケブラー、カーボン、フェノール、テトロン、パルプ、麻、セルロース、ケナフ、キチン、キトサン、ガラス、綿等から選ばれる少なくとも1種からなるものが好ましい。より好ましくは、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル、レーヨン、ポリオレフィン、ビニロン、ナイロン、ポリウレタン等から選ばれる少なくとも1種からなる合成高分子である。
2種以上の合成高分子を組み合わせる場合は、その組み合わせに特に限定はないが、ポリエステルおよびポリプロピレン;レーヨンおよびポリオレフィン;またはポリエステル、レーヨンおよびビニロンからなる組み合わせ等が好ましく挙げられる。
【0029】
2種類以上の合成高分子を組み合わせて繊維とする場合の繊維の形態としては、1本の繊維が異成分同士の合成高分子よりなる繊維、あるいは異成分同士が剥離分割した分割繊維でもよい。また成分の異なる合成高分子単独よりなる繊維をそれぞれ複合化した形態でもよい。ここでいう複合化とは、特に限定はなく、2種類以上の繊維が混在した状態より構成される形態、あるいは合成高分子単独よりなる形態をそれぞれ張り合わせたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
当該幹細胞分離材の形態は、特に限定されず、連通孔構造の多孔質体、繊維の集合体、織物等が挙げられる。好ましくは繊維で構成されるものであり、より好ましくは不織布である。
【0031】
本発明の幹細胞分離材の密度K、つまり目付(g/m)/厚み(m)は、赤血球、白血球、血小板等の除去効率、および目的細胞の回収率から、1.0×10≦K≦1.0×10であることが必要である。赤血球、白血球、血小板等の除去効率から、好ましくは2.5×10≦K≦7.5×10、より好ましくは5.0×10≦K≦5.0×10である。
【0032】
また、生体組織の処理液を用いる場合は、幹細胞分離材の密度Kは、1.0×10≦K≦2.0×10を満たすことが好ましい。密度Kが2.0×10を超えると、組織由来夾雑物や脂肪滴により目詰まりを生じ易くなる傾向があり、1.0×10より小さいと目的細胞の捕捉率が低くなる傾向がある。脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物の除去効率および目詰まりという観点からは、密度Kは、2.5×10≦K≦1.95×10がより好ましく、5.0×10≦K≦1.9×10がさらに好ましい。
【0033】
なお、密度Kは、目付(g/m)/厚み(m)を示すが、これは、重量(g)/単位体積(m)と表すこともできる。そこで、密度Kは、幹細胞分離材の形態にかかわらず、幹細胞分離材の単位体積(m)あたりの重量(g)を測定することにより求めることができる。
また、測定の際には、圧力等を加えないよう、変形のない状態で測定する。例えば、CCDレーザー方位センサー(KEYENCE,LK−035)等を使用することで、非接触状態での厚みの測定が可能である。
もちろん、用いる材料のカタログ等に目付や厚みの記載がある場合には、それをそのまま使用して、それらを式(目付(g/m)/厚み(m))に当てはめて計算することにより求めても構わない。
【0034】
幹細胞分離材の繊維径は、目的細胞の回収率から、3〜40μmであることが必要である。3μmより細いと、白血球との相互作用が高まり、赤血球、白血球、血小板の除去効率が低くなり、また、組織由来夾雑物、特に脂肪滴による目詰まりが起こりやすくなる。40μmより太いと、有効接触面積の低下やショートパスが起こりやすくなり、目的細胞の回収率の低下につながり易い。目的細胞と幹細胞分離材との相互作用を上げ、回収率を上げ、組織由来夾雑物、特に脂肪滴との相互作用を低く押さえるためには、好ましくは3μm〜35μm、より好ましくは5μm〜35μm、さらに好ましくは5μm〜30μmである。
【0035】
当該繊維径は、幹細胞分離材が繊維で構成される場合、例えば、幹細胞分離材を走査型電子顕微鏡にて写真撮影し、任意の30ポイント以上を測定し、写真に記載されたスケールから求めた繊維径の計算値を平均することにより、求めることができる。
なお、幹細胞分離材が多孔質体等の場合、繊維径とは、多孔質体の断面部分において、樹脂部分(孔でない部分)の平均幅を意味し、上記と同様にして測定する。
つまり、本発明において繊維径とは、上記のように測定した繊維径の平均値を意味し、当該平均値が上記範囲内(3〜40μm)であることが必要である。
【0036】
幹細胞分離材の目開きは、目的細胞の捕捉性から、短径3μm以上かつ長径120μm以下が好ましい。短径が3μmより小さいと、赤血球、白血球、血小板の除去効率が低下する傾向があり、また、組織由来夾雑物、特に脂肪滴による目詰まりが起こりやすくなる傾向がある。長径が120μmより大きいと、目的細胞の捕捉が困難となる傾向がある。脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の除去効率から、より好ましくは5μm〜80μm、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の除去効率、および目的細胞の回収率から、さらに好ましくは5μm〜70μmである。
なお、長径とは、幹細胞分離材の形成する孔周囲の最も離れた2点間の距離を、短径とは、該長径を求めた2点間の中間点を通り、孔に接する最短の2点間の距離をいう。
【0037】
幹細胞分離材の目開きは、幹細胞分離材が繊維で構成される場合、例えば下記方法により求めることができる。幹細胞分離材を走査型電子顕微鏡にて写真撮影し、異なる2本以上の繊維が交差することにより形成される実質的な孔の長径および短径を、画像解析装置にて50ポイント以上測定し、それぞれの平均値を求める。すなわち、目開きの範囲とは、下限値が上記のようにして求めた短径の平均値を、上限値が長径の平均値を示す。
なお、幹細胞分離材が多孔質体等の場合、目開きとは、多孔質体の孔径の長径部分と短径部分のそれぞれの平均値で規定され、上記と同様にして測定する。
【0038】
当該幹細胞分離材は、赤血球、白血球が実質的に通過可能であることが好ましい。
ここで、赤血球、白血球が実質的に通過可能とは、該幹細胞分離材に対する赤血球の通過率が80%以上、白血球の通過率が30%以上を意味する。幹細胞分離材の性能面から、通過率は、より好ましくは、赤血球が85%以上、白血球が45%以上、さらに好ましくは、赤血球が90%以上、白血球が60%以上である。
【0039】
幹細胞分離材の性能をより向上させるために、幹細胞分離材の親水化処理を行ってもよい。親水化処理することにより、必要細胞以外の細胞の非特異的な捕捉の抑制、体液や生体組織の処理液を偏りなく幹細胞分離材中に通過させ、性能の向上、必要細胞の回収効率の向上等を付与することができる。
【0040】
親水化処理方法としては、水溶性多価アルコール、または水酸基やカチオン基、アニオン基を有するポリマー、あるいはその共重合体(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、あるいはその共重合体等)を吸着させる方法;水溶性高分子(ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等)を吸着させる方法;疎水性膜に親水性高分子を固定化する方法(例えば、表面に親水性モノマーを化学的に結合させる方法等);幹細胞分離材に電子線照射する方法;含水状態で幹細胞分離材に放射線を照射することで親水性高分子を架橋不溶化する方法;幹細胞分離材を乾燥状態で熱処理することにより、親水性高分子を不溶化し固定化する方法;疎水性膜の表面をスルホン化する方法;親水性高分子と、疎水性ポリマードープとの混合物から膜をつくる方法;アルカリ水溶液(NaOH,KOH等)処理により膜表面に親水基を付与する方法;疎水性多孔質膜をアルコールに浸漬した後、水溶性ポリマー水溶液で処理、乾燥後、熱処理や放射線等で不溶化処理する方法;界面活性作用を有する物質を吸着させる方法等が挙げられる。
【0041】
親水性高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、多糖類(セルロース、キチン、キトサン等)、水溶性多価アルコール等が挙げられる。
疎水性ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アクリル、ウレタン、ビニロン、ナイロン、ポリエステル等が挙げられる。
【0042】
界面活性作用を有する物質としては、非イオン性の界面活性剤、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、エデト酸ナトリウム、セスキオレイン酸ソルビタン、D−ソルビトール、デヒドロコール酸、グリセリン、D−マンニトール、酒石酸、プロピレングリコール、マクロゴール、ラノリンアルコール、メチルセルロース等が挙げられる。
非イオン性の界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル系とポリオキシエチレン系とに大別される。多価アルコール脂肪酸エステル系の界面活性剤としては、ステアリン酸グリセリンエステル系、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンアシルエステル等が挙げられる。ポリオキシエチレン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアシルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、 ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等が挙げられる。
これらは各々単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0043】
さらに目的細胞の幹細胞分離材への付着性を向上させるために、細胞付着性のタンパク質や、目的細胞上の発現されている特異的抗原に対する抗体を、幹細胞分離材上に固定化してもよい。
細胞付着性のタンパク質としては、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、コラーゲン等が挙げられる。
抗体としては、CD133,CD90,CD105,CD166,CD140a等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、固定化方法としては、例えば、一般的なタンパク質の固定化方法である、臭化シアン活性化法、酸アジド誘導体法、縮合試薬法、ジアゾ法、アルキル化法、架橋法等の方法を任意に用いることができる。
【0044】
上記幹細胞分離材の仕様形態は、幹細胞分離材を容器等に入れずに、そのまま分離材として使用してもよいし、任意の大きさの幹細胞分離材を体液の入口および出口を有する容器に入れて使用することができるが、実用性から後者のほうが好ましい。
幹細胞分離材は、適切な大きさに切断した平板状で体液を処理してもよいし、またロール状に巻いた形状で体液の処理を行ってもよい。
【0045】
次に、本発明の幹細胞分離フィルターについて説明する。
本発明の幹細胞分離フィルターは、上記幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなるものである。
このとき、幹細胞分離材は、圧縮せず容器に充填してもよいし、圧縮して容器に充填してもよい。
【0046】
幹細胞分離材は、前記の条件を満たせば、形状等の限定はない。
幹細胞分離フィルターの好ましい具体例としては、不織布状の幹細胞分離材を、充填した状態での厚み0.1cm〜5cm程度で、下記に示す幹細胞分離フィルター用容器に充填して得られたもの等が挙げられる。この場合、幹細胞分離材の厚み(充填した状態で)は、0.1cm〜5cmが好ましいが、細胞の回収率および脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の除去効率の点から、0.15cm〜4cmがより好ましく、さらに好ましくは0.2cm〜3cmである。幹細胞分離材の厚みが、前記厚みに満たない時は、幹細胞分離材を積層して条件を満たしてもよい。
【0047】
また、幹細胞分離材をロール状に巻いて、幹細胞分離フィルター用容器内に充填してもよい。ロール状で使用する場合、該ロールの内側から外側に向け体液を処理することにより、目的細胞の捕捉を行ってもよいし、あるいはこの逆に、ロールの外側から内側に体液を流入させ、目的細胞の捕捉を行ってもよい。
【0048】
幹細胞分離フィルターに用いる容器の形態、大きさ、材質には特に限定はない。
容器の形態は、球、コンテナ、カセット、バッグ、チューブ、カラム等、任意の形態であってよい。好ましい具体例としては、例えば、容量約0.1〜400ml程度、直径約0.1〜15cm程度の透明または半透明の筒状容器;一片の長さ0.1cm〜20cm程度の正方形または長方形で、厚みが0.1cm〜5cm程度の四角柱状容器等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
容器は、任意の構造材料を使用して作製することができる。構造材料としては、具体的には、非反応性ポリマー、生物親和性金属、合金、ガラス等が挙げられる。
非反応性ポリマーとしては、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー等のアクリロニトリルポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー;ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリドアクリルコポリマー、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。容器の材料として有用な金属材料(生物親和性金属、合金)としては、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、およびそれらの合金、並びに金メッキ合金鉄、白金メッキ合金鉄、コバルトクロミウム合金、窒化チタン被覆ステンレス鋼等が挙げられる。
特に好ましくは耐滅菌性を有する素材であるが、具体的には、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0050】
該幹細胞分離フィルターの使用方法の概略を次に記す。
まず該幹細胞分離フィルターに、液入口側から、体液または生体組織の処理液を通液することにより、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板、分解に使用した酵素等の不要細胞および不要物は、実質的に捕捉されずに液出口側より流出し、幹細胞分離材内に目的細胞を捕捉することが可能である。次に、洗浄液を同方向から通液することにより、幹細胞分離材内に溜まっている脂肪滴、赤血球、白血球、血小板、分解に使用した酵素等の不要細胞および不要物の大多数を洗浄除去することが可能である。さらに、液出口側から、すなわち、体液または生体組織の処理液および洗浄液を流した方向とは逆方向から、細胞回収液を流すことにより、上記目的細胞を高い効率で分離回収することが可能である。
【0051】
幹細胞分離フィルターは、体液または生体組織の処理液の入口および出口を有する容器に幹細胞分離材が充填されてなるものであるが、さらには細胞洗浄液や細胞回収液の入口および出口を有する容器内に、さらには回収した細胞をそのまま培養するための培養用バック等を備えた容器内に、幹細胞分離材が充填されてなるものが好ましい。
【0052】
具体的には、幹細胞分離フィルターは、体液または生体組織の処理液を送液するための液流入部、および幹細胞分離材を通過した体液または生体組織の処理液を排出するための液流出部を有しており、さらに液流入部あるいは、液流入部以外の液流入側に独立して、幹細胞分離材内に留まっている不要細胞および不要物を洗浄するための洗浄液流入部を備え、かつ、液流出部あるいは、液流出部以外の液流出部側に独立して、幹細胞分離材に捕捉された細胞を回収するための細胞回収液流入部(体液または生体組織の処理液および洗浄液の流れとは逆方向から細胞回収液を流すため)を備えてなるものが好ましい。
【0053】
また、幹細胞分離フィルターは、幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックを、液流入部または洗浄液流入部、あるいは、液流入部および洗浄液流入部以外の液流入側に備えてなるものも好ましい。
さらに、幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックが、細胞培養可能なバックであることが好ましい。
つまり、幹細胞分離フィルターは、回収された細胞を培養するための培養用バックを備えていてもよい。培養用バックは、幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を閉鎖系で回収できるように、液流入部または洗浄液流入部に、あるいは液流入側に独立して備えることができる。また、細胞懸濁液を回収した後は、バックを幹細胞分離フィルターから切り離して培養することができる。
【0054】
バック素材としては、酸素透過性が高く、細胞の付着性が高い素材が好ましい。酸素透過性が高い素材としては、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、細胞の付着性が高い素材としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等が挙げられる。上記酸素透過性が高いバックに細胞付着性が高い素材を固定化する等の方法で、高い酸素透過性を維持したまま、細胞接着性を付与すること等ができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、該バックは、一般的に使用されている血液バックのような形状をしていてもよいが、平板状のカートリッジ方式等でもよい。
【0055】
次に、本発明の幹細胞を分離、回収する方法は、上記幹細胞分離材または幹細胞分離フィルターを使用して、体液または生体組織の処理液中から、幹細胞を分離、回収する方法である。
なお、体液または生体組織の処理液から、幹細胞を上記幹細胞分離材または幹細胞分離フィルターに捕捉することにより、幹細胞を分離することができる。
【0056】
また、本発明の幹細胞回収方法は、体液または生体組織の処理液を、上記幹細胞分離フィルターの液流入部より幹細胞分離フィルターに導入した後、液流入側から洗浄液を流して洗浄し、次に液流出側から細胞回収液を流すことにより、幹細胞分離材に捕捉した幹細胞を回収することを特徴とするものである。
【0057】
幹細胞回収方法について以下に説明する。なお、通液する液体としては、上記体液または生体組織の処理液のいずれも用いることができるが、以下の説明では、体液を例に挙げて説明する。
1)体液送液工程;
該幹細胞分離フィルターに、液流入側から体液を通液する際には、体液を入れた容器から送液回路を通じて自然落下で送液しても、ポンプにより通液しても良い。また体液を入れたシリンジを直接、該フィルターに接続し、手でシリンジを押して注入してもよい。ポンプにより通液する場合の流速は、0.1ml/min〜100ml/min程度が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0058】
2)細胞洗浄工程;
該幹細胞分離フィルターに、液流入側から洗浄液を通液する際には、洗浄液は、回路を通じて自然落下で送液しても、ポンプにより通液しても良い。ポンプにより通液する場合の流速は、0.1ml/min〜100ml/min程度が挙げられる。洗浄量は、幹細胞分離フィルター容量により異なるが、該フィルター容積の約1〜100倍程度の体積で洗浄することが好ましい。
細胞洗浄液としては、生理的食塩液、リンゲル液、細胞培養に使用する培地、リン酸緩衝液等の一般的な緩衝液等が挙げられるが、安全面から生理的食塩液が好ましい。
【0059】
3)細胞回収工程;
該幹細胞分離フィルターに、体液および洗浄液を流した方向とは逆方向(液流出側)から細胞回収液を入れ、幹細胞を回収する。
細胞回収液を幹細胞分離フィルターに注入し、目的細胞を回収する時は、細胞回収液をシリンジ等に予め入れておき、シリンジのプランジャーを手等で勢いよく押し出すこと等により実現できる。回収液量および流速は、フィルター容量により異なるが、フィルター容積の1〜100倍量程度の細胞回収液を、流速0.5ml/sec〜20ml/sec程度で注入することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0060】
細胞回収液としては、等張液であれば特に限定はないが、生理的食塩液やリンゲル液等の注射用剤として使用実績のあるものや、緩衝液、細胞培養用の培地等が挙げられる。
また、幹細胞分離フィルターに捕捉された幹細胞の回収率を上げるため、細胞回収液の粘張度を上げてもよい。そのために上記細胞回収液に、アルブミン、フィブリノーゲン、グロブリン、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルセルロース、コラーゲン、ヒアルロン酸、ゼラチン等を添加することができるが、これらに限定されるものではない。
バック内に回収した幹細胞を増幅させる場合は、細胞回収液に培養液(例えば、DulbeccoMEM(日水),α−MEM(GIBCO BRL社製),MEM(日水),IMEM(日水),RPMI−1640(日水)培地等)を使用し、フィルター付属の培養用バックに直接回収する方法等が挙げられる。この培養液には、必要に応じて血清を5〜20%程度添加しても良い。
培養工程を経ずにそのまま、回収細胞を患部等に注入する場合は、生理食塩液等の点滴等に使用実績のある等張液等、安全性が保障されている細胞回収液を使用することが好ましい。
【0061】
次に、バックに幹細胞を回収後、必要に応じて、必要量の培養液をバックに満たし、フィルターから取り外し、そのまま培養する。
バック内に回収された幹細胞をバックのまま培養する際の条件としては、特に限定されないが、例えば、培地としてGIBCO BRL社製のαMEM培地に15〜20%の牛胎児血清を添加したものを用い、37℃にてCOインキュベーター内で7〜14日間、培養することが望ましい。
細胞数を増やすために、この後さらに経代を行ってもよい。この場合、幹細胞はキレート剤やディスパーゼ、コラゲナーゼ等の細胞剥離剤、好ましくはトリプシンを用いて、培養皿等から幹細胞を剥離、回収することができる。
培地交換は、培地を吸い取り、新しい培地を等量加えてもよいが、培地を抜き取らずに、新しい培地を適宜加えていってもよい。特にバック培養の場合は、新しい培地を加えていくことにより、幹細胞の分離から増幅までの一連の工程を閉鎖系で実施することが出来、コンタミネーションの防止や作業効率の大幅な向上につながる。
【0062】
また、上記培養にあたっては、分化誘導剤を添加し、各種細胞に分化させることができる。分化誘導剤としては特に限定されないが、軟骨への分化誘導剤としてはデキサメサゾン、TGFβ、インシュリン、トランスフェリン、エタノールアミン、プロリン、アスコルビン酸、ピルビン酸塩、セレン等が挙げられ;骨への分化誘導剤としてはデキサメサゾン、β−グリセロリン酸、ビタミンC、アスコルビン酸塩等が挙げられ;心筋への分化誘導剤としてはEGF、PDGF、5−アザシチジン等が挙げられ;神経への分化誘導剤としてはEGF、bFGF、bHLH等が挙げられ;血管への分化誘導剤としてはbFGF、VEGF等が挙げられる。
【0063】
次に、本発明の多分化能を有する細胞画分の生産方法は、上記幹細胞回収方法によって回収された幹細胞を、さらに増幅することを特徴とするものである。具体的には、下記(a)〜(c)工程を含有することを特徴とするものである。
(a)上記幹細胞分離フィルターを使用して体液を処理する、
(b)該幹細胞分離フィルターにおいて捕捉された細胞画分を回収する、
(c)該回収した幹細胞を増幅する。
なお、増幅方法としては、特に限定されないが、例えば、細胞回収液に培養液(例えば、Dulbecco MEM(日水),α−MEM(GIBCO BRL社製),MEM(日水),IMEM(日水),RPMI−1640(日水)培地等)を使用し、フィルター付属の培養用バックに直接回収し、37℃、5%COインキュベーター内で増幅する方法等が挙げられる。この培養液には、必要に応じて血清を5〜20%程度添加しても良い。
【0064】
なお、上記各方法において、体液および生体組織は、哺乳動物由来のものが好ましい。つまり、哺乳動物対象から、上記体液および生体組織を取得することができる。また、哺乳動物としては、特に限定されないが、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ等が挙げられる。
【0065】
また、上記幹細胞回収方法により得られた幹細胞も、本発明の範囲である。当該幹細胞は、多分化能を有するものである。
【0066】
本発明においては、上記幹細胞分離材または幹細胞分離フィルターを用いて得られた幹細胞は、未分化の状態で細胞を増幅して提供することも、増幅させずに使用することも可能である。また、上記分化誘導剤等により分化誘導することにより、軟骨損傷患者に移植する細胞、骨疾患患者に移植する細胞、心筋疾患患者または血管疾患患者に移植する細胞、神経組織を損傷した患者に移植する細胞として使用することもできるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
また、本発明においては、上記幹細胞分離材または幹細胞分離フィルターを用いて得られた幹細胞を、治療用細胞として使用しうる。
さらに、当該治療用細胞を、さまざまな疾患や組織増大術に適用して、これらを治療することができる。具体的な治療対象としては、幹細胞疲弊疾患、骨疾患、軟骨疾患、虚血性疾患、血管系疾患、神経病、やけど、慢性炎症、心疾患、免疫不全、クーロン病等の疾患;豊胸、しわとり、美容成形、組織陥没症等の組織増大術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本発明の幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを使用することにより、骨髄液、末梢血および臍帯血等の体液中から多種多様な細胞、臓器に分化し得る能力を有している付着性の幹細胞を簡便に、しかも赤血球、白血球、血小板をほとんど除去した状態で、分離・回収することが可能になる。また、本発明の幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを使用することにより、生体組織の処理液中から多種多様な細胞、臓器に分化し得る能力を有している生体組織幹細胞を簡便に、しかも脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物や、分解に使用した酵素等を実質的に除去した状態で、分離・回収することが可能になる。さらに、該幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを用いた方法で得られる付着性の幹細胞や、生体組織幹細胞は、血管再生や組織増大術等の再生医療や細胞医療に用いる治療用細胞として有用である。
また、本発明の幹細胞分離材を容器に充填してなる幹細胞分離フィルターを使用した分離方法で回収した幹細胞は、増幅させずにそのまま、あるいは閉鎖系で増幅させることが可能となり、心筋再生や血管再生等の再生医療や細胞医療に用いる治療用細胞を調製するためのフィルターとして提供することが可能となる。さらに、当該幹細胞分離フィルターを使用することにより、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の混在比率が少なく、再生医療用の細胞ソースとして極めて有効であり、副作用を生じさせにくい幹細胞の提供が可能となる。また、培養用バックを幹細胞分離フィルターと一体化することにより、目的細胞の採取から増幅まで、閉鎖系での調製が可能になり、安全性の高い治療用細胞の調製が可能となる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、幹細胞分離材の密度K(目付け(g/m)/厚み(m))、繊維径、目開きは、前述のようにして求めた。
【0070】
〔実施例1〕幹細胞分離フィルターを使用した、骨髄液中からの付着性の幹細胞分離
(1)細胞ソース
体重約30Kgの家畜ブタに筋肉注射にてケタラール、セラクタールを注入し、その後ネンブタールを静脈注射にて追加することにより麻酔を行った。10mlのシリンジに約20IU/mlになるように予めヘパリンを入れておき、腸骨より15Gの穿刺針を用いて骨髄液を採取した。次に採取した骨髄液プールに、ヘパリンを最終濃度で50IU/mlになるように添加して、十分に転倒混和を行った。
【0071】
(2)幹細胞分離フィルターの作製
出入口を供えた内径1cmの円筒状のポリプロピレン製の筒に、幹細胞分離材としてポリエステルとポリプロピレンからなる分割繊維不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.3×10(73/(5.5×10−4))、繊維径=8±5μm(つまり平均値8μm、以下同様)、目開き=5〜50μm(短径〜長径、以下同様)]を12枚積層し、不織布の上下を外径1cm、内径7mm、高さ5mmのストッパーにて挟み込むことにより、幹細胞分離材を固定した幹細胞分離フィルターを作製した。
【0072】
(3)細胞分離性能評価
該幹細胞分離フィルター体積の約6倍量の生理食塩液にて不織布の洗浄を行った。次にシリンジポンプにて骨髄液2mlを流速0.5ml/minで通液し、フィルター出口側細胞数の測定を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)にて実施した。次に同方向から生理食塩液2mlを同流速にて流すことにより、赤血球や白血球、血小板の洗浄除去を行った。次に牛胎児血清15%を含む細胞培養液(α−MEM培地)2mlを、骨髄液を流した方向と逆方向から勢いよく流すことにより、目的とする細胞画分を回収し、回収溶液中の細胞数を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)にて求めた。細胞の通過率は、フィルター通過後の各種細胞数を、フィルター通過前の各種細胞数で割ることにより求めた。また細胞の回収率は、回収溶液中の各種細胞数を、フィルター通過前の各種細胞数で割ることにより求めた。その結果、赤血球、血小板の通過率は95%以上を示し、白血球の通過率は約75%であった。また回収率は、赤血球が 0.5%、血小板が約3%であり、白血球は約20%であった。このことから、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板はほとんど除去され、白血球は80%以上が除去されることが示された。
【0073】
次に回収した細胞懸濁液2mlに、牛胎児血清15%を含む細胞培養液(α−MEM培地)を5ml加え、ポリスチレンシャーレ(直径35mm)に移し、37℃、COインキュベーター内で培養を行った。2〜3日ごとに培地交換し、培養開始9日後にクリスタルバイオレットでコロニーを染色して、出現したコロニー数を測定した。その結果、出現コロニー数は、33個/シャーレであった。
【0074】
次に幹細胞分離フィルターで回収した細胞を10日間培養した細胞を用いて、軟骨形成評価を行った。上記方法にて分離、回収した細胞を培養にて増幅させて得られた細胞を、GIBCO BRL社製DMEM−ハイグルコース培地20mlで1回洗浄し、遠心分離操作(1000rpm,10min,4℃)で集めた。再度GIBCO BRL社製DMEM−ハイグルコース培地に、軟骨分化誘導を促す添加物(TGFβ3ヒトリコンビナント,最終濃度10ng/ml,フナコシ;デキサメサゾン,最終濃度100nM,Sigma;アスコルビン酸リン酸エステル,最終濃度50μg/ml,WAKO;ピルビン酸ナトリウム,最終濃度100μg/ml;L−プロリン,最終濃度40μg/ml,コスモバイオ;ITS−プラス(インシュリン、トランスフェリン、セレン、牛血清アルブミン),培地に市販原液を1/100量添加)を加えた培地で、細胞濃度が4×10個/mlになるように懸濁した。この細胞懸濁液を0.5ml取り、15mlファルコンチューブに入れた。その後、遠心分離操作(1000rpm,10min,4℃)を行ったところ、細胞がペレット状になったが、そのままチューブの蓋を緩めて、37℃,5%COインキュベーター中で3週間培養した。なお、この間に培地交換は週2回実施した。培養終了後は、球形となった細胞塊を回収し、組織固定用ホルマリンで固定し、軟骨基質染色剤であるトルイジンブルー染色を行った。組織切片を顕微鏡観察した結果、軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。
【0075】
また、幹細胞分離フィルターにて分離した細胞を、上記と同様の培養方法にて増幅させた細胞を用いて、骨組織形成試験を行った。培養によって得られた間葉系幹細胞を最終濃度1×10個/mlになるようにGIBCO BRL社製αMEM培地+15%ウシ胎児血清培地に懸濁し、12穴培養プレートに2×10個/Wellになるように細胞を播種(各Wellに2ml細胞懸濁液を入れた)した。24時間経過後に、骨への分化誘導を促す3種類の添加物(β−グリセロリン酸,CALBIOCHEM 35675;アスコルビン酸リン酸エステル,WAKO 013−12061;デキサメサゾン,SIGMA AD8893)をそれぞれ10mM、50FLg/ml、100nMになるように添加し、これを骨分化誘導群とした。非誘導群はβ−グリセロリン酸のみを添加したものとした。これらを5%CO、37℃インキュベーター中で2週間培養した。また培地交換は週に3回全量(2ml)交換した。最終培地交換日(解析日の2日前)にカルセイン(DOjin 344−00431)を1FLg/mlになるように添加し、培養を行った。解析日に骨化がどれだけ進行したかを、カルシウムの沈着量で評価した。具体的にはカルシウムと結合したカルセインの蛍光強度を測定することで、骨化進行度合いが求められる。蛍光測定装置タイフーン8600(アマシャムファルマシア社製)を用いて、単位面積あたりの蛍光強度(Volume/Area)を測定した。その結果、カルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4080であった。
【0076】
〔実施例2〕
幹細胞分離材をレーヨンとポリオレフィンからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=2.0×10(110/(5.5×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球、血小板の通過率は、約95%を示し、白血球の通過率は約78%であった。また回収率は、赤血球が0.3%、血小板が約4%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約16%であり、8割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、48個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4700であった。
【0077】
〔実施例3〕
幹細胞分離材をポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=5.0×10(250/(5.0×10−4))、繊維径=18±11μm、目開き=8〜43μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の通過率は約93%、血小板の通過率は約79%、白血球の通過率は約81%であった。また回収率は、赤血球が0.4%、血小板が約8%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約8%であり、9割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、33個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4320であった。
【0078】
〔実施例4〕
幹細胞分離材をポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=5.9×10(200/(3.4×10−3))、繊維径=14±8μm、目開き=7〜100μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の通過率は約96%、血小板の通過率は約78%、白血球の通過率は約86%であった。また回収率は、赤血球が1%、血小板が約10%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約9%であり、9割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、34個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には、軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4510であった。
【0079】
〔実施例5〕
幹細胞分離材をポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.2×10(85/(7.0×10−4))、繊維径=11±4μm、目開き=5〜52μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球、血小板の通過率は約95%であり、白血球の通過率は約90%であった。また回収率は、赤血球が約1%、血小板が約5%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約7%であり、9割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、31個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には、軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、3740であった。
【0080】
〔参考例1〕
培地に上記の軟骨分化誘導因子を添加しない以外は実施例1と同様の方法で、軟骨基質形成能を評価した。その結果、軟骨基質が紫色に染まる異染色性は観察されなかった。
【0081】
〔参考例2〕
培地に上記の骨組織形成因子を添加しない以外は実施例1と同様の方法で、骨組織形成能を評価した。その結果、カルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、250であった。
【0082】
〔比較例1〕
幹細胞分離材をポリプロピレン製不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.1×10(1100/(1.0×10−3))、繊維径=8±3μm、目開き=3〜20μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、およびコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の通過率は約80%、血小板の通過率は約1%、白血球の通過率は約1%であった。また回収率は、赤血球が約10%、血小板および白血球は回収できなかった。また出現したコロニー数は、0個/フラスコであった。
【0083】
〔比較例2〕
幹細胞分離材を綿製不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=8.3×10(25/(3.0×10−3))、繊維径=11±4μm、目開き=3〜25μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、およびコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の通過率は約99%、血小板の通過率は約99%、白血球の通過率は約96%であった。また回収率は、赤血球が0.3%、血小板が0.1%であり、白血球は約1%であった。また出現したコロニー数は、0個/フラスコであった。
【0084】
〔比較例3〕
実施例1と同様の方法で採取した骨髄液2mlをリン酸緩衝液PBS(−)2mlと混合(2倍希釈)した。次に、15ml遠沈管にFicoll paque plus(アマシャム)を3ml添加し、該溶液の上層に、先に調製した希釈骨髄液4mlを積層した。1400rpm、30min、室温にて遠心分離することにより、得られた単核球画分層を回収した。PBS(−)を約10ml入れ、1300rpm、5minで細胞の洗浄を行った。次に同様にPBS(−)を約10ml入れ、1200rpm、5minで細胞の再洗浄を行った。再洗浄液を2mlのPBS(−)に懸濁し、上記自動血球計測装置を用いて各種細胞数の測定を行い、細胞回収率を求めた。また実施例1と同様の方法でコロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の回収率は1%、血小板の回収率は11%、白血球の回収率は83%であった。また出現したコロニー数は、46個/シャーレであった。また細胞を増幅させた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4210であった。
【0085】
〔比較例4〕
実施例1と同様の方法で採取した骨髄液2mlにPBS(−)2mlを添加してよく混合した。この赤血球沈降用骨髄原液(4ml)に対して1/5量のHES(Nipro製、6%ヒドロキシエチルデンプン水溶液、分子量40万)を添加し、終濃度を1%にした。530rpm(50g)にて5min遠心分離し、2層(上層の比較的透明な層と下層の赤血球層)に分かれ、最上層(透明な層のみ)を回収した。これに、約10mlのPBS(−)を添加し、1300rpm、5minにて細胞の洗浄を行った。次に2mlのPBS(−)に細胞を再懸濁し、上記自動血球計測装置を用いて各種細胞数の測定を行い、細胞回収率を求めた。また実施例1と同様の方法でコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の回収率は6%、血小板の回収率は51%、白血球の回収率は74%であった。また出現したコロニー数は、29個/シャーレであった。
【0086】
なお、実施例1〜5、比較例1〜2の赤血球、血小板、白血球の通過率を表1に示した。実施例1〜5、比較例1〜4の赤血球、血小板、白血球の回収率を表2に示した。実施例1〜5、比較例1〜4のコロニー出現数を表3に示した。実施例1〜5、比較例3、参考例2の骨組織形成評価の結果を表4に示した。また、実施例1〜5、比較例3、参考例1の軟骨形成評価の結果(つまり、軟骨基質染色剤(トルイジンブルー)による染色結果)を図1に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
以上の結果から、本幹細胞分離材を用いた幹細胞分離フィルターは、現時点で付着性の幹細胞回収のスタンダードであるフィコール法と、同等の付着性細胞の回収率であることが示された。また、回収した細胞を増幅し、軟骨、骨分化誘導すると、フィコールと同レベルの軟骨基質、骨組織を形成することが示された。本幹細胞分離材を用いた幹細胞分離フィルターを使用することにより、赤血球、白血球、血小板等の混入を著しく抑制し、分化能を有する付着性の幹細胞を簡便に、しかも選択的に分離、回収することが可能となったことがわかる。しかも本幹細胞分離フィルターは、体液中から付着性の幹細胞を分離、回収、増幅まで閉鎖系で処理することができ、コンタミネーションの防止という観点からも有用なフィルターであることがわかる。
【0092】
〔実施例6〕
幹細胞分離材をレーヨンとポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.8×10(95/(5.2×10−4))、繊維径=15±10μm、目開き=5〜50μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、コロニー出現数、異染色性の観察、およびカルセインの蛍光強度を求めた。その結果、赤血球の通過率は約96%、血小板の通過率は約73%、白血球の通過率は約84%であった。また回収率は、赤血球が0.2%、血小板が約5%であり、本幹細胞分離フィルターにより、赤血球、血小板がほとんど除去されることが示された。また白血球の回収率は、約15%であり、8割以上の白血球が除去されることが示された。出現したコロニー数は、50個/シャーレであった。また細胞を増幅して得られた細胞塊には軟骨基質が紫色に染まる異染色性(メタクロマジー)が観察された。さらにカルシウム沈着量指標である蛍光強度(Volume/Area)は、4680であった。
【0093】
〔比較例5〕
幹細胞分離材をポリエステル製不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=2.0×10(60/(3.0×10−4))、繊維径=2.3μm、目開き=3〜20μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、細胞通過率、回収率、およびコロニー出現数を求めた。その結果、赤血球の通過率は約75%、血小板の通過率は約15%、白血球の通過率は約10%であった。また回収率は、白血球が約75%、赤血球が約15%、血小板は約5%であった。また出現したコロニー数は、6個/シャーレであった。白血球の7割以上を捕捉し、コロニー出現率もあまり高くないことから、幹細胞を選択的に捕捉したとはいえない結果であった。
【0094】
〔実施例7〕幹細胞分離材を使用した、皮下脂肪組織からの生体組織幹細胞分離
(1)皮下脂肪組織を酵素により分解せしめた処理液の調製
体重3.5kgのウサギ(日本白色種)をケタラール/セラクタールの過剰投与にて安楽死させ、背側の皮下脂肪50グラムを採取した(図2)。この白色脂肪を手術用ハサミで細かく刻み、0.075w/v%コラゲナーゼ/リン酸塩緩衝液(pH=7.4)100mLと共に、37℃で振盪した(一時間)。この操作により皮下脂肪は分解され、流動性を有する粘性液体となった。この酵素処理液を37℃に保持しながら静置することで溶液を2層に分離せしめ(図3;上層:脂肪層、下層:水溶液層)、下層の水溶液層(酵素処理液)を採液した。
【0095】
(2)幹細胞分離フィルターの作製
出入口を供えた内径12mmの円筒状の筒に、幹細胞分離材としてポリエステルとポリプロピレンからなる分割繊維不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.1×10(73/(6.7×10−4))、繊維径=8±5μm、目開き=5〜50μm]を12枚積層し、不織布の上下を外形12mm、内径7mm、高さ5mmのストッパーにて挟み込むことにより、幹細胞分離材を固定した幹細胞分離フィルターを作製した。
【0096】
(3)細胞分離性能評価
該幹細胞分離フィルター体積の約6倍量の生理食塩液にて不織布の洗浄を行った。次に37℃のインキュベーター内において、シリンジポンプにて皮下脂肪組織を酵素にて分解せしめた処理液8mlを流速0.5ml/minで通液した。次に同方向から生理食塩液2.5mlを同流速で流すことにより、細胞フィルター内に存在する残存物;分解に使用した酵素、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物の洗浄除去を行った後、牛胎児血清15%を含む細胞培養液(α−MEM培地)4mlを、酵素処理液を流した方向と逆方向から勢いよく流すことにより、目的とする細胞画分を回収した。
細胞の回収率は、回収液の有核細胞数を、フィルター通過前の有核細胞数で割ることにより求めた。細胞の通過率は、フィルター通過後の有核細胞数を、フィルター通過前の有核細胞数で割ることにより求めた。なお、ここでいう有核細胞とは、核が細胞膜により取り囲まれる構造を有する細胞である。具体的には、幹細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、周細胞等であってよく、赤血球、血小板、成熟脂肪細胞は含まれない。また、有核細胞数の測定は、溶液に含まれる赤血球を塩化アンモニウムで溶血させた後に血球計算盤を用いて求めた。また、赤血球と血小板の除去率を求めるために、フィルター通液前液と回収液に含まれる赤血球、血小板数を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)を用いて測定した。その結果、有核細胞回収率は82%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下であった(表5、6、7)。
【0097】
このことから、本幹細胞分離フィルターにより、有核細胞を高収率で回収可能であり、かつ、赤血球と血小板はほとんど除去されることが示された。
【0098】
次に、通液前液(8ml)と回収液(約4ml)を遠心分離(1200rpm,5分間)し、細胞を沈降させた。上澄みを捨て、細胞塊を8mlの増殖培地(牛胎児血清15%含有α−MEM培地)でそれぞれ再懸濁し、増殖培地を入れたポリスチレン製培養皿(φ60mm)に各1μlづつを加えた。9日間、5%CO、37℃インキュベーター中で培養を行い、形成されたコロニーを0.5%w/v%クリスタルバイオレットで染色し、その個数を数えた(図4)。その結果、通液前液と比較した場合の出現コロニー形成率は61%であった。このことから、本分離フィルターにより、コロニー形成細胞を高収率で回収可能であることが示された。
【0099】
次に、フローサイトメーター(BD社FACS Canto)を用いて、通液前液、回収液、洗浄液を含む通過後液に含まれる細胞集団と夾雑微粒子の割合をそれぞれ求めた(図5)。なお、図5において、P1:脂肪由来幹細胞を含む細胞集団、P2:主に白血球からなる細胞集団、P3:脂肪滴等の組織由来夾雑物を示す。その結果、通液前液(図5A:P1/P2=5.13)と比較して、回収液(図5B:P1/P2=7.81)では脂肪由来の幹細胞を多く含む画分(P1)の割合が高くなり、白血球を多く含む画分(P2)の割合が低くなった。また、洗浄液を含む通過後液(図5C:P1/P2=0.66)では白血球を多く含む画分の割合が非常に高くなり、かつ脂肪滴等と考えられる組織由来夾雑物の割合(図5C:P3エリア)が非常に高くなった。このことから、幹細胞分離フィルターにより、脂肪由来幹細胞は選択的に捕捉・回収されたが、白血球の一部は除去されることが明らかとなった。更に、洗浄液を含む通過後液では白血球を含む画分の割合が非常に高くなり、かつ脂肪滴等と考えられる組織由来夾雑物の割合が非常に高くなったので、実質的にこれら夾雑物がフィルターを通過し、除去されたことが示された。
【0100】
(4)脂肪への分化能の評価
上記(3)の回収液に含まれる脂肪由来細胞を、増殖培地で数日間、5%CO、37℃インキュベーター中で培養した。そこに脂肪への分化誘導を促す3種類の添加物(ハイドロコルチゾン:SIGMA、イソブチルメチルキサンチン:SIGMA、インドメタシン:SIGMA)をそれぞれ0.1μM、0.5mM、50μg/ml添加し、脂肪分化誘導を行った。同時にコントロールとしてそれらを加えなかったものを実施した(コントロール1)。その結果、図6上段に示すように、分化誘導を行った細胞には脂肪滴の蓄積が観察された。これにより、幹細胞分離フィルターで捕捉・回収した脂肪由来細胞は、脂肪への分化能を有していることが確認された。
【0101】
(5)骨への分化能の評価
上記(4)と同様に回収液中の脂肪由来細胞を培養後、骨への分化誘導を促す3種類の添加物(β−グリセロリン酸:CALBIOCHEM、アスコルビン酸リン酸エステル:WAKO、デキサメサゾン:SIGMA)をそれぞれ10mM、50FLg/ml、100nMを添加し、骨分化誘導を行った。同時にコントロールとしてそれらを加えなかったものを実施した(コントロール2)。培地交換は3日おきに行い、2週間後に骨分化の指標であるアリザリンレッド染色を実施した。その結果、図6下段に示すように、コントロールの細胞はアリザリンレッド染色に対し陰性であったが、骨分化誘導を行った細胞は陽性となった。これにより、幹細胞分離フィルターで捕捉・回収した脂肪由来細胞は、骨への分化能を有していることが確認された。
【0102】
上記(4)、(5)の結果より、実施例7の幹細胞分離フィルターによって分離、回収された脂肪由来細胞には、生体組織幹細胞が多く含まれていることが確認された。
【0103】
〔実施例8〕
幹細胞分離材を、レーヨンとポリオレフィンからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.5×10(110/(7.3×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]に変えた幹細胞分離材を用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は53%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は74%であった(表5、6、7)。
また、回収液に含まれる脂肪由来細胞を、それぞれ実施例7の(4)と(5)と同様に培養し、脂肪分化、骨分化誘導を行ったところ、脂肪滴の蓄積とアリザリンレッド染色陽性が確認された(図6)。
フローサイトメーターの解析では、実施例7と同様な結果が得られた。
【0104】
〔実施例9〕
幹細胞分離材を、ポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=5.9×10(200/(3.4×10−3))、繊維径=14±8μm、目開き=7〜100μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は59%、通過率は25%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は60%であった(表5、6、7)。また、培養して得られた細胞に骨分化誘導を行ったところ、アリザリンレッド染色は陽性であった。フローサイトメーターの解析では、実施例7と同様な結果が得られた。
【0105】
〔実施例10〕
幹細胞分離材を、ポリエステルからなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.6×10(85/(5.3×10−4))、繊維径=12±2μm、目開き=10〜26μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は30%、通過率は45%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は45%であった(表5、6、7)。また、培養して得られた細胞に骨分化誘導を行ったところ、アリザリンレッド染色は陽性であった。
【0106】
〔比較例6〕
幹細胞分離材を、ポリプロピレン製不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.1×10(1100/(1.0×10−4))、繊維径=8±3μm、目開き=3〜20μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は42%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は39%であった(表5、6、7)。
【0107】
〔比較例7〕
幹細胞分離材を、綿製不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=8.3×10(25/(3.0×10−3))、繊維径=11±4μm、目開き=3〜25μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は29%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は30%であった(表5、6、7)。
【0108】
〔比較例8〕
幹細胞分離材を、ポリプロピレン製不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=8.3×10(30/(3.6×10−3))、繊維径=11±4μm、目開き=3〜25μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は5%、回収液中の赤血球・血小板はそれぞれ検出限界以下、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は5%であった(表5、6、7)。
【0109】
〔比較例9〕
幹細胞分離材を、ポリエステル製不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=2.3×10(80/(3.5×10−4))、繊維径=2.3±0.5μm、目開き=2〜13μm]に変えた幹細胞分離フィルターを用いた以外は、実施例7と同様の方法で実験を行った。しかしながら、酵素で分解せしめた処理液を70%通液した時に目詰まりを起こし、評価出来なかった。
【0110】
〔実施例11〕幹細胞分離材を使用した、皮下脂肪組織からの生体組織幹細胞分離
(1)皮下脂肪組織由来細胞の濃縮懸濁液の調製
上記実施例7〜10、比較例6〜9とは別に、体重3.5kgのウサギ(日本白色種)をケタラール/セラクタールの過剰投与にて安楽死させ、背側の皮下脂肪50グラムを採取した。この白色脂肪を手術用ハサミで細かく刻み、0.075w/v%コラゲナーゼ/リン酸塩緩衝液(pH=7.4)100mLと共に、37℃で振盪した(一時間)。この酵素処理液から脂肪3gに相当する液を取り、遠心分離(1200rpm、5min)することにより、含まれる細胞集団を沈降させた。上澄みを除去した後、αMEM培地1mlで細胞集団を懸濁し、細胞濃縮懸濁液を調製した。
【0111】
(2)幹細胞分離フィルターの作製
出入口を供えた内径20mmの円筒状の筒に、幹細胞分離材としてレーヨンとポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混紡)からなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.6×10(95/(5.9×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]を24枚積層し、不織布の上下を外形12mm、内径7mm、高さ5mmのストッパーにて挟み込むことにより、幹細胞分離材を固定した幹細胞分離フィルターを作製した。
【0112】
(3)細胞分離性能評価
該幹細胞分離フィルター体積の約6倍量の生理食塩液にて不織布の洗浄を行った。次に室温下、シリンジポンプにて上記の濃縮懸濁液1mlを流速1ml/minで通液した。次に同方向からリン酸緩衝液4mlを同流速で流すことにより、幹細胞分離フィルター内に存在する残存物の洗浄除去を行った後、リン酸緩衝液24mlを、酵素処理液を流した方向と逆方向から勢いよく流すことにより、目的とする細胞画分を回収した。
細胞の回収率は、回収液の有核細胞数を、フィルター通過前の有核細胞数で割ることにより求めた。なお、有核細胞数の測定は、溶液に含まれる赤血球を塩化アンモニウムで溶血させた後に血球計算盤を用いて求めた。また、赤血球と血小板の除去率を求めるために、フィルター通液前液と回収液に含まれる赤血球、血小板数を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)を用いて測定した。その結果、有核細胞回収率は66%、赤血球・血小板の除去率は88%、86%であった。また実施例7と同じく、通液前液と比較した場合の出現コロニー形成率は70%であった。
【0113】
〔実施例12〕
幹細胞分離材を、レーヨンとポリオレフィン(ポリエチレンとポリプロピレンの混紡)からなる不織布[密度K(目付け(g/m)/厚み(m))=1.5×10(110/(5.63×10−4))、繊維径=15±9μm、目開き=5〜48μm]に変えた幹細胞分離材を用いた以外は、実施例11と同様の方法で、有核細胞回収率、赤血球・血小板除去率、コロニー形成率を求めた。その結果、該幹細胞分離フィルターでの有核細胞回収率は69%、赤血球・血小板の除去率は93%、75%、コントロールと比較した場合のコロニー形成率は75%であった。
【0114】
上記実施例7〜12および比較例6〜9の有核細胞回収率、コロニー形成率を表5にまとめた。総合評価としてコロニー形成率が60%以上であり、かつ、有核細胞回収率が60%以上であるものを◎、コロニー形成率が40%以上であるものを○、コロニー形成率が40%未満であるものを△、コロニー形成率が20%未満または目詰まりを生じたものを×とした。また、赤血球除去率、血小板除去率をそれぞれ表6、7にまとめた。
また、図2に、実施例で使用したウサギの皮下脂肪組織(処理前)を;図3に、実施例で使用したウサギの皮下脂肪組織の処理液を;図4に、実施例・比較例で使用した通液前液と、実施例7〜8、比較例6〜8の回収液それぞれに含まれる細胞のコロニー形成能試験結果を;図5に、実施例7の通液前液(A)、回収液(B)、洗浄液を含む通過後液(C)のフローサイトメーターによる解析結果(P1:脂肪由来幹細胞を含む細胞集団、P2:主に白血球からなる細胞集団、P3:脂肪滴等の組織由来夾雑物)を;図6に、実施例7および8の回収液中の組織由来細胞の脂肪細胞への分化(上段、左:実施例7のコントロール1、中央:実施例7の分化誘導処理細胞、右:実施例8の分化誘導処理細胞)と骨分化(下段、左:実施例7のコントロール2、中央:実施例7の分化誘導処理細胞、右:実施例8の分化誘導処理細胞)を示した。
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
以上の結果から、本幹細胞分離材を使用することにより、遠心分離装置等を用いることなく、非常に簡便にかつ効率よく多分化能を有する生体組織幹細胞を選択的に分離することが出来ることが示された。また、本幹細胞分離材を使用することにより、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物や分解に使用した酵素等が除去された、純度の高い細胞を提供することが可能になったことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを使用することにより、骨髄液、末梢血および臍帯血等の体液中から多種多様な細胞、臓器に分化し得る能力を有している付着性の幹細胞を簡便に、しかも赤血球、白血球、血小板をほとんど除去した状態で、分離・回収することが可能になる。また、本発明の幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを使用することにより、生体組織の処理液中から多種多様な細胞、臓器に分化し得る能力を有している生体組織幹細胞を簡便に、しかも脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の組織由来夾雑物や、分解に使用した酵素等を実質的に除去した状態で、分離・回収することが可能になる。さらに、該幹細胞分離材および幹細胞分離フィルターを用いた方法で得られる付着性の幹細胞や、生体組織幹細胞は、血管再生や組織増大術等の再生医療や細胞医療に用いる治療用細胞として有用である。
【0120】
また、本発明の幹細胞分離材を容器に充填してなる幹細胞分離フィルターを使用した分離方法で回収した細胞は、増幅させずにそのまま、あるいは閉鎖系で増幅させることが可能となり、心筋再生や血管再生等の再生医療や細胞医療に用いる治療用細胞を調製するためのフィルターとして提供することが可能となる。さらに、当該幹細胞分離フィルターを使用することにより、脂肪滴、赤血球、白血球、血小板等の混在比率が少なく、再生医療用の細胞ソースとして極めて有効であり、副作用を生じさせにくい細胞の提供が可能となる。また、培養用バックを幹細胞分離フィルターと一体化することにより、目的細胞の採取から増幅まで、閉鎖系での調製が可能になり、安全性の高い治療用細胞の調製が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液または生体組織の処理液を、密度Kが1.0×10≦K≦1.0×10であり、かつ、繊維径が3〜40μmである幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなる幹細胞分離フィルターの液流入部より導入し、次に液流出側から細胞回収液を流すことにより、幹細胞分離材に捕捉した付着性の幹細胞を回収することを特徴とする幹細胞回収方法。
【請求項2】
体液または生体組織の処理液を、密度Kが1.0×10≦K≦1.0×10であり、かつ、繊維径が3〜40μmである幹細胞分離材を、液流入部と液流出部を有する容器に充填してなる幹細胞分離フィルターの液流入部より幹細胞分離フィルターに導入し、液流入側から洗浄液を流して洗浄し、次に液流出側から細胞回収液を流すことにより、幹細胞分離材に捕捉した付着性の幹細胞を回収することを特徴とする幹細胞回収方法。
【請求項3】
体液が、骨髄液、末梢血および臍帯血から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の幹細胞回収方法。
【請求項4】
生体組織の処理液が、皮下脂肪、内臓脂肪、白色脂肪、褐色脂肪、皮膚および血管からなる群より選択される1種以上の生体組織を分離して得られる処理液である、請求項1または2に記載の幹細胞回収方法。
【請求項5】
体液または生体組織が哺乳動物由来である、請求項1〜4のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項6】
付着細胞が、間葉系幹細胞、多能性成体幹細胞および骨髄ストローマ細胞から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項7】
幹細胞分離材の目開きの短径が3μm以上かつ長径が120μm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項8】
幹細胞分離材が不織布の形態である請求項1〜7のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項9】
幹細胞分離材が、ポリエステル、レーヨン、ポリオレフィン、ビニロン、ポリスチレン、アクリル、ナイロンおよびポリウレタンから選ばれる少なくとも1種の合成高分子からなる請求項1〜8のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項10】
幹細胞分離材が、ポリエステルおよびポリプロピレン;レーヨンおよびポリオレフィン;またはポリエステル、レーヨンおよびビニロンの合成高分子の組み合わせからなる請求項1〜8のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項11】
幹細胞分離材が、赤血球、白血球が実質的に通過可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項12】
幹細胞分離フィルターが、液流入部あるいは、液流入部以外の液流入側に、幹細胞分離材内にとどまっている不要細胞および不要物を洗浄するための洗浄液流入部を備え、かつ、液流出部あるいは、液流出部以外の液流出部側に、幹細胞分離材に捕捉された細胞を回収するための細胞回収液流入部を備えてなる、請求項1〜11のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項13】
幹細胞分離フィルターが、幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックを、液流入部または洗浄液流入部、あるいは、液流入部および洗浄液流入部以外の液流入側に備えてなる、請求項1〜12のいずれかに記載の幹細胞回収方法。
【請求項14】
幹細胞分離材に捕捉された細胞を含む細胞回収液を収納するためのバックが、細胞培養可能なバックであることを特徴とする、請求項13に記載の幹細胞回収方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の幹細胞回収方法によって回収された幹細胞を、さらに増幅することを特徴とする、多分化能を有する細胞画分の生産方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143256(P2012−143256A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108737(P2012−108737)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2007−541062(P2007−541062)の分割
【原出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】